説明

オクテニジン組成物

本発明は、オクテニジン又はその薬学的塩、具体的にはオクテニジン二塩酸塩に関し、式1:(H−C−OH)(HO−C−OH)(H−C−H)[式中、a、b、cは整数であり、ここで、a+bは少なくとも2であり、好ましくは少なくとも3であり、cは0、1であるか又は2〜a+bの範囲の数から選択される]で表されるポリアルコールであって、該ポリアルコールのヒドロキシ基の1つと(環状)アセタールを形成するという条件で、1以上のアルデヒド基を有するか、場合により該ポリアルコールのヒドロキシ基の1つとアセタールを形成する1以上のケト基を有し、場合により、該ポリアルコールが環状ヘミアセタール若しくはアセタールである場合、好ましくは環サイズが5〜7個の原子を有する環状ヘミアセタール若しくはアセタールである場合、又は、該ポリアルコールが、a+bが2若しくは3であるとき、式1の少なくとも2ユニットを有するポリマー、ポリエーテル若しくはポリエステルとして存在するという条件で、それらのポリマー、ポリエーテル若しくはポリエステルである場合に、1以上のカルボン酸基を有するポリアルコールと、溶液中のオクテニジンとの併用療法投与用に意図される。また、本発明は、これらの成分を含むキット、並びに感染及び創傷を治療するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌製剤及び抗感染製剤、並びにそれらの使用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
オクテニジン二塩酸塩は、具体的には、皮膚、粘膜及び創傷用の抗感染剤において使用されている抗菌剤である。それは商標名としてオクテニセプト(Octenisept)(登録商標)として販売されている。一方において広範囲の活性、他方において良好な耐性のため、この活性剤は、殺菌の分野においてますます重要性が増大し、すでに、適応症のいくつかの分野において、クロルヘキシジン、トリクロサン及びPVP−Iのような従来の殺菌剤と置き換わりつつある。
【0003】
オクテニジンは、陰性の細胞表面に強力に吸収される。そこでは、微生物細胞壁の陰イオン性多糖及び細胞膜のリン脂質と反応し、酵素システムと緩衝し、細胞機能を妨げ、原形質膜の漏れをもたらす。結果として、ミトコンドリアの機能が妨げられる。研究は、高い抗菌作用を説明する細胞膜中の脂質成分(例えば、カルジオリピン)への強力な接着を示し、一方、同時に、ヒト上皮及び外傷性組織によって十分に容認されることを示す。30分の曝露時間で、22又は17mg/l(それぞれ、=0.0022%及び0.0017%)に希釈したオクテニジンは、E.coli及びS.aureusに対して有効である(Kramer A.,Muller G.,Octenidindihydrochlorid,IN:Wallhaussers Praxis der Sterilisation,Desinfektion,Antiseptik und Konservierung,Stuttgart,Thieme,2007)。
【0004】
オクテニジン及びオクテニジン二塩酸塩並びにその誘導体は、抗菌物質として、米国特許第4,206,215号及び第4,442,125号に記載されている。
【0005】
独国第3925540C1号は、オクテニジン、並びに可溶化剤として使用されるフェノキシエタノール及び/又はフェノキシプロパノールを含む水性抗菌組成物に関する。
【0006】
独国第102004052308A1号及びWO2006/039961は、固体糖マトリックス中に提供されるオクテニジンを含むロゼンジに関する。このマトリックスは、担体として利用され、オクテニジンの苦味をマスクする糖固体であり、約70〜99.95%w/wを有する。
【0007】
WO2007/023066A1は、オクテニジン二塩酸塩溶液及び一価若しくは二価アルコール又はグリセリンに関する。これらのアルコールは、先のオクテニジン二塩酸塩調製物の従来のフェノキシエタノール又はフェノキシプロパノールの代替物であると考えられる。
【0008】
WO2007/031519A2は、封入リポソームの形態であるオクテニジン二塩酸塩調製物に関する。オクテニジンの細胞毒性は、リン脂質リポソームの使用によって低減されることが推定されている。
【0009】
EP1683416Aは、オクテニジン溶液へのアルコールの添加に関する。ソルビトール又はグリセリンは試料製剤に添加された。
【0010】
EP1638417Aは、具体的なグリセリンエーテルを含むオクテニジン製剤に関する。試料製剤は、添加剤としてグリセリン又はグルコン酸ナトリウムを示す。
【0011】
米国第4,420,484号は、抗菌性アミノ及びアンモニウム化合物の溶液に関する。PEGとともに製剤中のオクテニジンも示されている。
【0012】
WO2007/023066Aは、創傷及び粘膜の消毒のためのオクテニジン二塩酸塩の溶液に関し、ここで、例えば、フェノキシエタノールとしての添加物を他のアルコールで置換することを1つの目的とした。例えば、ペンタ−1,2−ジオールを添加することが推奨される。グリセリンは添加物として言及されている。
【0013】
Kramerら,Skin Pharmacology and Physiology,17(2004):141−146は、オクテニジン及びポリヘキサニドの抗菌性潜在力の比較に関係している研究に関する。結果は、オクテニジンがポリヘキサニドよりも有効性が僅かに小さいこと、及びこの減少がオクテニセプト(登録商標)に存在するフェノキシエタノールの添加に追跡され得ないことを示した。
【0014】
米国出願第2001/03693A1号は、一価アルコールを有するオクテニジン製剤を記載する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
オクテニジンの利点にも関わらず、特に、創傷及び粘膜抗菌剤の分野における治療的使用に至る場合、改善された効果を有する調製物を得ることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、一態様において、オクテニジン又はその薬学的塩、具体的にはオクテニジン二塩酸塩に関し、式1:
(H−C−OH)(HO−C−OH)(H−C−H)
[式中、a、b、cは整数であり、ここで、a+bは少なくとも2であり、好ましくは少なくとも3であり、cは0、1であるか又は2〜a+bの範囲の数から選択される]
で表されるポリアルコールであって、
該ポリアルコールのヒドロキシ基の1つと(環状)アセタールを形成するという条件で、1以上のアルデヒド基を有するか、及び/又は場合により該ポリアルコールのヒドロキシ基の1つとアセタール(若しくはケタール)を形成する1以上のケト基を有し、
場合により、該ポリアルコールが環状ヘミアセタール若しくはアセタールである場合、好ましくは環サイズが5〜7個の原子を有する環状ヘミアセタール若しくはアセタールである場合、又は、該ポリアルコールが、a+bが2若しくは3であるとき、式1の少なくとも2ユニットを有するポリマー、ポリエーテル若しくはポリエステルとして存在するという条件で、それらのポリマー、ポリエーテル若しくはポリエステルである場合に、1以上のカルボン酸基を有するポリアルコールと、溶液中のオクテニジンとの併用療法投与用に意図される。1つの特に好ましい局面では、本発明は、溶液の併用療法のためのキットにおいて、混合物として又は別々の成分として、オクテニジン及びグルコースを有する医薬組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】オクテニセプト(登録商標)−NaCl−溶液から沈殿したオクテニジン結晶の倒立顕微鏡画像を示す。
【図2】メチルバイオレットを用いた細胞脱着アッセイにおけるNaCl又はグルコースの添加を介したオクテニセプト(登録商標)誘導の細胞脱着の改変。a:結果の図式的バーチャート:バーは4つの独立した実験の平均値±標準偏差を表す。b:細胞層の写真。
【図3A】メチルバイオレットによる細胞脱着アッセイにおける異なる糖質の添加を通じたオクテニセプト(登録商標)誘導の細胞脱着の改変。
【図3B】メチルバイオレットによる細胞脱着アッセイにおける異なる糖質の添加を通じたオクテニセプト(登録商標)誘導の細胞脱着の改変。
【図4】メチルバイオレットアッセイにおける細胞培地からのオクテニセプト(登録商標)誘導の細胞脱着へのグルコース添加物の濃度の濃度依存性。接着細胞を洗浄し、メチルバイオレットによる染色後、吸光度を550nmで測定した(バーは、3回の読み取りの平均値±標準偏差を表す)。希釈は、0.01:200〜1:2の段階で5%グルコース容器を用いて、0.1%オクテニジン溶液(オクテニセプト(登録商標))から開始して行われる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好ましくは、本発明は、一局面では、場合により、担体と組み合わせて、オクテニジン、好ましくはオクテニジン二塩酸塩、又はその医薬として許容される塩の1つ、及びグルコースを含む医薬組成物に関し、グルコース濃度は0.1%〜12%(w/v)、好ましくは0.1%〜10%、より好ましくは0.5%〜7.5%、最も好ましくは2.5〜5%であり、オクテニジン濃度は0.0001%〜5%(w/w)、好ましくは0.001%〜0.1%、より好ましくは0.002%〜0.05%である。本発明の特定の更なる目的は特許請求の範囲に定義されている。
【0019】
オクテニジンは、特に二塩酸塩の形態で、多くの場合、創傷洗浄のため、及び手術前に、手術領域の消毒のために利用される高い有効性の静菌性/殺菌剤である。これまで、0.1%(w/v)の濃度を有する水溶液として、又はNaClphysiolとの1:1の希釈物として、大部分使用されている。しかしながら、原核生物の優れた阻害はまた、十分な接着としっかりとした創縫合を形成するために、正しい創傷治癒のために増殖し、分化しなければならない真核細胞の増殖にとってある種の欠点を有する。細胞縫合の能力は、組織マトリックスと細胞表面分子との分子相互作用の形成に依存する。
【0020】
本発明によれば、NaClphysiolの使用は、有効性を減少させるオクテニセプト(登録商標)の場合に、沈殿を生じさせることが示された。さらに、ポリアルコール、具体的にはグルコースの添加によって、この欠点を避けることができることが示され得た。ある種の濃度で使用した場合、この製剤は、培養した線維芽細胞様細胞において、細胞接着アッセイを用いて測定される細胞−マトリックス−相互作用(後に細胞接着と呼ばれる)の増加した形成を促進する。この測定方法を用いて、本発明の組成物の効果を測定し、最適なポリアルコール濃度、具体的にはグルコース濃度を検証した。
【0021】
オクテニジンと細菌との相互作用は、その有効性の因子である。従前の所見によれば、負に荷電した細菌表面は、主に、正に帯電したオクテニジンの結合に関与すると考えられる。しばしば行われているように、生理学的な塩化ナトリウム溶液で1:1に希釈したオクテニセプト(登録商標)を投与する場合、1つの単一理論に限定されずに、オクテニジン分子の周囲に形成するNaCl及び双極子水からなる混合された水和物殻は、有効な正電荷の減少、その後、細菌壁との相互作用の機能的障害をもたらす。本発明によれば、ポリアルコール、具体的にはグルコースの添加は、殺菌効果を障害しないが、実質的にそれを増加させて、創傷治癒を改善させる。
【0022】
NaClによる希釈物を用いて、沈澱物の形成をもたらすことが実施例に示された。この沈澱物において、オクテニジンは、殺菌作用の利用可能性をマスクし、創傷治癒と不要に相互作用する不活性な結晶性外来物質として見出される。これは、創傷において機械的刺激をさらに発揮するためである。この相互作用は、荷電していない糖質、例えば、5%グルコース溶液を用いた希釈を通じて妨げることができる。
【0023】
オクテニジンは、種として、細菌表面へのその親和性に起因して、抗細菌的に機能する。さらに、オクテニジンは、本発明に係るポリアルコールとともに投与された場合、十分に発現し得る、真菌及びウイルスに対する消毒/殺菌効果を有する。さらに、ポリアルコールは、創傷治癒に望まれる細胞構造の安定化を支持し、こてゃ、実施例に示される細胞接着試験を通じて明確となる。
【0024】
一方、本発明に係る組成物は、1g/l〜25g/l(0.1%〜2.5%)の範囲において特に好ましいことが実験的に証明された細胞接着の改善に関して、有効性を示す。他方、低張オクテニセプト(登録商標)を用いた場合、侵害作用に関与する受容体及びイオンチャネルの効果に起因して、創傷疼痛の発現増加が存在する。ほぼ等張溶液(約5%グルコースに対応する)を有する創傷及び感受性の粘膜の場合、又は僅かに低張溶液(2.5%グルコースに対応する)のいくつかの場合において、提案された相互投与のための本発明に係る組成物の使用を通じて、侵害作用に対する負の効果を減少させ、又は排除する。よって、疼痛がないこと、及び治療の実質的な改善が達成され、具体的には連続反応で、腹膜上への適用の場合において、体液移動が妨げられる。
【0025】
したがって、本発明によれば、オクテニジンは、相互投与のためにポリアルコールとともに提供される。このポリアルコールは、好ましくは、式1:(H−C−OH)(HO−C−OH)(H−C−H)で表される一次構造を含む。好ましくは、a+は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6又は少なくとも7である。単独でaは、好ましくは、0、1、2、3、4、5、6又は少なくとも7である。したがって、一緒になって又は独立して、bは、0、1、2、3、4、5、6又は少なくとも7から選択され得る。a及びbの定義は、本発明に従って、重要であるヒドロキシル基の数を決定する。ポリアルコールは、少なくとも4、好ましくは少なくとも5、6、7又は少なくとも8個のヒドロキシル基を有することが特に好ましい。したがって、a+b=2又は3である場合、またa+b=4又は5である更なる特定の場合、好ましくは、上記式1の構造がポリマー、具体的には重縮合体、ポリエーテル又はポリエステルとして提供される。当然に、また、式1のより大きな構造的要素がポリマー、重縮合体、ポリエーテル又はポリエステルとして提供され得て、ここで、ポリエーテル又はポリエステルの連結部O又はOC(O)は上記式に言及されておらず、追加の連結構造要素として可能である。これに関連して、用語「ポリ」は、少なくとも2倍、好ましくは3倍、より好ましくは4倍、具体的には好ましくは5倍、又は少なくとも6倍で生じ得る上記構造要素の仕様として理解されなければならない。ポリマーの場合、最大5000、最大4000、最大3000、最大2000、最大1000、最大800、最大500、最大300個の式1の要素が提供可能である。
【0026】
そこでは、同じ基本的要素から均一若しくは均質に、又はその混合物から不均一に構築され得る。好ましくは、糖モノマー由来の糖質ポリマー又はその誘導体は不均一である。
【0027】
本発明に係るポリアルコールは、さらに、1以上のアルデヒド基を有して提供され得て、ただし、ヒドロキシ基の1つと(環状)ヘミアセタール若しくはアセタールを形成するという条件であり、又は場合によりヒドロキシ基を有するアセタールを形成する1以上のケト基を有して提供され得る。アセタールとしてのアルデヒドの形成は、アルデヒド基が潜在的に高い反応性に起因して毒性として作用するために特に好ましい。したがって、アルデヒドが、生理的条件下、具体的には37℃で、開環アルデヒド構造と平衡したアセタールとして、好ましくは少なくとも95%、具体的には少なくとも98%、特に好ましくは99%で、そのアセタールとともに平衡して存在することが特に好ましい。ケト基が提供される場合、また好ましい態様において、生理的条件下、具体的には37℃で、ポリアルコール(分子内で)のヒドロキシ基の1つを有する平衡したアセタールとして、少なくとも95%、好ましくは少なくとも98%、少なくとも99%で存在する。好ましくはヘミアセタール又はアセタールは、分子内で5、6、7、8又は9個の原子と環を形成する。好ましくは、ポリアルコールは、特にアセタールの形態で、グリコシドを含む。
【0028】
場合により、式1の基本構造のポリアルコールは、ポリアルコールが好ましくは5〜7個の原子の環サイズを有する環状ヘミアセタール又はアセタールであるという受験で、カルボン酸基を有することができる。酸基がオクテニジンと一緒になって効果が弱いことが独創的に確立されたが、グルクロン酸に基づいて、例えば、有効性の増加(従来のオクテニセプト(登録商標)と比較して)は、それにもかかわらず記録され得たことが示された。グルクロン酸は、6個の原子を有する環状アセタールとしてグルコースに類似して存在するカルボン酸であり、ここで、6個の炭素原子はカルボン酸に酸化される。
【0029】
さらに、オクテニジン又はその薬学的塩に束縛された目的に関して、本発明は、更なる局面において、好ましくは溶液の併用療法投与を意図した、上記で定義されるポリアルコール及びオクテニジン又はその薬学的塩、具体的には、オクテニジン二塩酸塩を含むキットに関する。キットに係る特にオクテニジン又は塩は、溶解したオクテニジンとして提供され得る。それに代えて又はそれに加えて、ポリアルコールはすでに溶解され得る。このような溶液は、可能なオクテニジンの迅速利用、具体的には消毒用に作製される。
【0030】
更なる局面では、本発明は、上記で定義されるポリアルコール及びオクテニジン又はその薬学的塩、具体的にはオクテニジン二塩酸塩を含む溶液の形態の医薬組成物に関する。また、医薬組成物としてのポリアルコールとオクテニジンとの混合物が開示される。固体混合物は、具体的には、投与の直前に後の溶解のために提供され得る。
【0031】
好ましくは、本発明に係るポリアルコールは、化学式2:C(HO)を有する糖質であり、ここで、nは、少なくとも3、好ましくは4、5、6、7、8、9、10、11又は少なくとも12の整数であり、mは、n−15%からn+15%(丸めた整数(rounded integer))の範囲、好ましくはn−1、n又はn−1の整数である。ここで、丸めることは、数学的になされ、即ち、.5の小数点は切り上げられ、.4999は切り捨てられる。当然、また、これらの糖質は、可溶性糖質オリゴマー又は糖質ポリマーに重合化され、具体的には重縮合化され得る。具体的には、ポリアルコールによって引き起こされる濁度を生じさせずに溶液を形成する能力が特に好ましい。特に好ましい態様では、本発明に係る調製物はゲルとして、特にハイドロゲルとして提供されるが、本発明に係るポリアルコールは、ゲル形成剤として理解されず、特に、これは、ゲル形成剤が可溶性物質として理解されないが、溶媒和半固体構造として理解されるためである。
【0032】
特に好ましい態様では、ポリアルコールは荷電されていない。例えば、グルクロン酸のような僅かに酸性のポリアルコールは可能であるが、最良の結果は、荷電されていないポリアルコールを用いて達成される。ポリアルコールは弱酸である場合、ポリアルコールのpKa値は、好ましくは3より大きく、より好ましくは3.5より大きく、4より大きく、4.5より大きく、又は5より大きい。
【0033】
特に好ましい態様では、ポリアルコールは、単糖若しくは二糖、又は単糖若しくは二糖のデオキシ−若しくはモノ−カルボン酸誘導体である。さらに具体的な態様では、ポリアルコールは、アルドース若しくはケトース、好ましくは、アルドヘキソース、アルドペントース、ケトヘキソース又はケトペントースを含む。本発明のポリアルコールの特に好ましい例は、グルコース、ガラクトース、フルクトース、フコース、マルトース、リボース、デオキシリボース、デオキシグルコース、具体的には2−デオキシグルコース、サッカロース、ラクトース、グルクロン酸、デキストロース、イソマルト、マリトール(malitol)シロップ、ポリグルコース、グルカン及びフルクトオリゴ糖である。
【0034】
好ましくは、オクテニジン及びポリアルコールは水溶液、好ましくは純水に溶解される。場合により、少量のアルコールが溶媒として提供され得て、例えば、エタノール、プロパノール又はイソブタノールが挙げられる。このような場合、アルコール濃度は、好ましくは、5%以下、3%以下、2%以下、又は1%以下である。
【0035】
好ましくは、オクテニジンを含む投与用の溶液中のポリアルコールは、少なくとも0.001%、少なくとも0.005%又は少なくとも0.01%、好ましくは少なくとも0.025%、特に好ましくは0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、最も好ましくは2.5%(w/v)の濃度で提供される。この場合の濃度仕様(w/v)は、体積あたりの重量の濃度に関係する。好ましくは、オクテニジンを含む投与用の溶液中のポリアルコールの最大濃度は、12%、好ましくは10%、具体的な最大7.5%、最も好ましくは最大5%(w/v)である。
【0036】
さらに特に好ましい態様では、ポリアルコールを含む投与用の溶液中の、又は組成物の相互溶液中の、又はキット中のオクテニジンは、少なくとも0.0001%、特に好ましくは少なくとも0.001%、特に好ましくは少なくとも0.002%、少なくとも0.005、少なくとも0.01%、又は少なくとも0.05%(w/w)のオクテニジン濃度を有する。さらに特に好ましい態様では、オクテニジン濃度は、最大5%、最大1%、最大0.5%又は最大0.2%(w/w)である。
【0037】
本発明に係るポリアルコールは、オクテニジンに対して、塩、特にNaClのマスク効果を妨げることができることが独創的に決定されたが、塩濃度、特にNaCl濃度は、せいぜい0.5%(w/v)、好ましくはせいぜい0.1%、せいぜい0.05%、せいぜい0.01%、特に好ましくはせいぜい0.005%、最も好ましくはせいぜい0.001%であることが好ましい。
【0038】
特定の態様では、キット又は組成物の目的に束縛されたオクテニジンの調製物中のポリアルコール及び/又はオクテニジンは担体中に提供される。担体は、好ましくは、ゲル、好ましくはハイドロゲル、又は創傷被覆材若しくはスワブ(swab)から選択され、場合により、ポリアルコール及び/又はオクテニジンを含む溶液を用いて含浸される。さらに、担体は、長期に有効な応用が遅延又は原則するような活性剤組成物を放出する持続放出用の担体を含む。対応する担体を有するこのような調製物は特に、局所及び迅速投与に適している。
【0039】
併用療法投与のためのオクテニジン及びポリアルコールを有する本発明に係るオクテニジン、キット又は組成物は、特に外科的処置の場合において又は外科的処置のための予防として、特に皮膚、粘膜、具体的には内部臓器の膣若しくは腹腔に関連した創傷又は熱傷の治療のために、あるいは特に外科的処置の場合において又は外科的処置のための予防として、感染、特に、対象の創傷感染、好ましくは特に皮膚、粘膜、具体的には内部臓器の膣若しくは腹腔の火傷の感染の治療及び予防のために、意図されている。更なる局面では、本発明は、療法的に使用される場合に、オクテニジンの有効性を増加させることを意図したポリアルコール、好ましくはグルコースに関し;ポリアルコール、好ましくは糖との相互療法投与用に意図された、オクテニジン又はその薬学的塩、例えば、オクテニジン二塩酸塩に関する。
【0040】
容易に操作され、どこでも入手可能であり、容易に予測できる希釈としてグルコース5%の使用は、オクテニジンが抑制されない親和性で細菌表面に結合できるようにし、これは、静菌効果が十分に存在し、細胞接着試験から推定し得るように、創傷治癒に望ましい細胞構造の安定化を支持するからである。
【0041】
さらなる局面では、本発明は、グルコース及びオクテニジン又はその薬学的塩、具体的にはオクテニジン二塩酸塩を含むキットに関する。改善された創傷治癒の独創的な効果は、具体的にはこのキットの併用投与の場合に生じる。グルコース及びオクテニジンが別々に提供されるキットもまた提供可能である。成分は、併用投与のために特に意図され得る。好ましくは、グルコース若しくはオクテニジン又はその両方の成分は溶液中にある。溶解したグルコース又はオクテニジン、特に好ましくは溶解したグルコース並びに溶解したオクテニジンの使用は、例えば、両方の物質又は両方の溶液の混合を通じた迅速投与、及びその後の応用を可能にする。
【0042】
本発明に係るキット又は医薬組成物が提供される溶液は、好ましくは水溶液である。特に、水は、純水溶媒として提供され得るが、例えば、アルコールなどの他の溶媒をほとんど含まない。好ましくは、このような溶液のアルコール成分は、10%未満であり、具体的には、5%未満であり、特に好ましくはせいぜい2%又は1%未満である。
【0043】
オクテニジンを用いた投与用のキットのポリアルコール溶液、又は両物質が既に混合されている医薬組成物中のポリアルコール濃度、好ましくはグルコース濃度は、好ましくは少なくとも0.001%、少なくとも0.005%又は少なくとも0.01%、特に好ましくは少なくとも0.05%又は少なくとも0.1%、特別に好ましくは少なくとも0.5%、少なくとも1%又は少なくとも2.5%である(与えられる全てのパーセンテイジはw/vである)。好ましくはポリアルコール濃度、好ましくはグルコース濃度は、せいぜい30%、せいぜい20%、せいぜい10%、せいぜい8%、せいぜい5%(w/v)である。例えば1:1の比で混合することが意図されたポリアルコール溶液及びオクテニジン溶液を含むキットにおける好ましい濃度は適切に増加され、例えば、それらは、1:1の混合比のケースでは2倍にされ、例えば、ポリアルコール溶液に対して5〜10%のポリアルコール濃度、オクテニジン溶液に対して0.004〜1%のオクテニジン濃度がせいぜい好ましい。
【0044】
本明細書中で使用される濃度表示(w/v)は、体積あたりの重量を表す。本明細書中でまた使用される濃度表示(w/w)は、各調製物又は容器の全重量あたりの重量を表す。
【0045】
好ましくは、グルコースを用いた相互投与用のオクテニジン溶液、又はオクテニジンの溶液を含む医薬組成物は、オクテニジン濃度が、少なくとも0.0001%(w/w)、好ましくは少なくとも0.001%、特に好ましくは少なくとも0.002%、少なくとも0.005%、少なくとも0.01%又は少なくとも0.05%である。好ましくはオクテニジンの最大濃度は、最大10%(w/w)、好ましくは最大5%、最大1%、特に好ましくは最大0.5%、特別に好ましくは最大0.2%である。
【0046】
本明細書中ですでに言及され、また実施例で実証されるように、塩の量、具体的には高NaCl濃度は、例えば、生理学的条件下で、オクテニジンの効果を阻害し得る。グルコースは阻害効果を妨げることができるが、このNaCl濃度は、本発明の特定の態様において限定される。好ましくは、グルコースを用いた投与のためのオクテニジン溶液又は本発明に係る医薬組成物は、塩濃度を含む、具体的には、NaCl濃度は、少なくとも0.1%(w/v)未満、好ましくは0.05%未満、又は0.01%未満、特に好ましくは0.05%未満、最も好ましくは0.001%未満である。
【0047】
本発明のキット及びオクテニジンとグルコースを有する医薬組成物によれば、グルコース及び/又はオクテニジンは担体中に提供され得る。好ましくは担体はゲルであり、具体的にはハイドロゲルである。さらに可能な担体は、創傷被覆材又はスワブであり、場合により、グルコース及び/又はオクテニジンを含む溶液で含浸される。このような創傷被覆材又はこのようなゲルは、直接であるか又はグルコース及び/若しくはオクテニジンから選択される他の各成分の投与に添加によって投与され得る。さらに、担体は、例えば、時間遅延又は原則したより長期の効果的投与として、活性剤組成物を放出するマイクロカプセルなどの持続放出担体を含む。ゲル又はハイドロゲルは、例えば、ヒドロキシエチルセルロースのようなセルロース誘導体などの従来のゲル形成剤を用いて製造され得る。さらに可能性のある担体は、エマルジョン、好ましくは水中油型又は油中水型エマルジョン及びリポソームを含む。具体的には、本発明に係る溶液は無菌で提供されることが好ましい。
【0048】
概して、したがって、本発明は、グルコース及びオクテニジンを含む溶液の形態の医薬組成物に関し、好ましくはオクテニセプト(登録商標)組成物におけるようなものである。
【0049】
本発明に係るキット又は組成物は、特に、創傷又は熱傷の治療のため、あるいは感染、特に創傷感染の治療及び予防のための療法投与用薬剤を製造するために使用される。好ましくは、組成物又はキットは、創傷、感染、具体的には創傷感染、皮膚、内部臓器の粘膜の熱傷、具体的には膣、腹腔、具体的には外科的処置における治療のために使用される。したがって、本発明に係る調製物は、外科的処置にいたる場合、殺菌剤として効果的に使用可能である特に有用な治療薬を構成する。
【0050】
本発明に係る医薬組成物、又はキットのグルコース若しくはオクテニジン溶液は、具体的には生理学的pHの場合に意図される。したがって、pH値は、例えば5〜9、好ましくは最大pH8であり得る。ただし、pH値は、例えば、クエン酸、酢酸、フマル酸又はリンゴ酸などの有機酸、並びに例えば、塩酸、リン酸又は硫酸などの無機酸、あるいはそれらのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩、具体的にはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどの適切な緩衝液を通じて、あるいは例えば、NaOHなdの医薬として許容される塩基の緩衝液を通じて提供され得る。
【0051】
具体的には、本発明によれば、オクテニジンの溶液又は完全な医薬組成物は、沈殿したオクテニジンを含まない透明な溶液である。この溶液自体は、例えば、ゲル若しくはハイドロゲル又は創傷被覆材中の本発明の担体材において提供可能である。
【0052】
本発明は、さらに、以下の非制限的な図面及び実施例によって例証される。
【実施例】
【0053】
創傷を治療するための理想的な集団は、I.創傷に対する微生物バイオフィルムの表面的な破壊、及び、II.下部に横たわる組織の固体被覆をもたらす創傷治癒の進行の刺激である。細胞培養では、組織構造における増殖細胞の固定は、細胞骨格、インテグリン及び培養ディッシュの底部でのマトリックスの間の固体連結の形成と対応する。これらのパラメータを定量するために、細胞層の脱着に対する抵抗性が、洗浄のような機械的ストレス下で決定される。残りの細胞層は、メチルバイオレットで染色し、光度吸収測定法を介して定量される。オクテニセプト(登録商標)を用いた所定の希釈における特定のグルコース溶液の使用を通じて達成され、細胞接着を改善し、観察された改善創傷治癒を説明する追加の効果を示す。
【0054】
実施例1:試薬
オクテニセプト(登録商標)(Schulke & Mayr)溶液(0.1%(w/w)オクテニジン二塩酸塩及び2%(w/w)2−フェノキシエタノール(水中));NaCl溶液(0.9%(w/v)(水中));グルコース5%(Mayrhofer Pharmaceuticals)グルコース溶液5%(w/v)(水中));ラクトース、2−ヒドロキシグルコース、サッカロース、フルクトース、ポリエチレングリコール、コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマンタン硫酸及び硫酸デキストランを無菌的にろ過し、最終濃度をHOにより5%(w/v)にして使用した。
【0055】
細胞培養のインキュベーションについて、等量のオクテニセプト(登録商標)と特定の添加物を混合し、4℃にて使用の1週間前まで保存した。
【0056】
実施例2:細胞培養
ヒトのグリア芽腫細胞株U373は、10%PCS(Gibco(商標))、2mMグルタミン(PPA)及び100U/mlペニシリン/ストレプトマイシン(PAA)を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で37℃、5%COにて培養した。細胞を単層で培養し、80%コンフルエンスで継代した。細胞接着実験を実施する前に、細胞を96ウェルプレートに移し、コンフルエンスにした。
【0057】
実施例3:細胞接着の測定
引用(Uchide,N.and Toyoda H.,(2007)J Immunol Methods,328 1−2):215−9)において詳細に記載されたように細胞接着を実施した。U373細胞は、96ウェルプレート中で、オクテニセプト(登録商標)(最終濃度は5%(v/v)オクテニセプト(登録商標)、これは0.005%のオクテニジン二塩酸塩に等しい)を単独で又は特定の添加物(5%v/v)とともに、1時間、グルコース不含Leibovitz培地中でインキュベートされた。上清を除去後、標準的な洗浄手法を3回行い、その後、PBSをモーター制御のピペットで添加し、非接着細胞を脱着させた。後に、マトリックスが固体連結を形成した細胞だけをグルタルアルデヒドで固定し、グルタルアルデヒドの除去後、メチルバイオレットで染色した。沈殿した染色物をSDS緩衝液で溶解し、ELISAプレートリーダー中で550nmで吸光度を測定した。
【0058】
実施例4:沈殿アッセイ
相互作用のための標識として、NaCl溶液中のオクテニセプト(登録商標)の成分の溶解性の安定性を沈澱物の分析を通じて決定した。無菌のAqua Bidest中でオクテニセプト(登録商標)を等量の0.9%NaCl又は5%糖質とともに、3、12、24及び72時間、4℃で同時インキュベーション後、溶液を2500rpmで5分間遠心分離し、存在する場合には沈澱物は、METAVIEWマイクロ写真撮影ドキュメンテーションシステムを備えたデジタルカメラを有するZeiss倒立顕微鏡で分析した。
【0059】
実施例5:オクテニセプト(登録商標)へのNaClの添加により結晶化及び沈殿がもたらされる
正に帯電したオクテニジン、及び細菌表面上の負電荷はその有効性を生じさせる。従来行われているように、生理学的な塩化ナトリウム溶液で1:1に希釈したオクテニセプト(登録商標)を投与する場合、NaCl及び双極子水からなる混合された水和物殻はオクテニジン分子の周囲に形成する。NaClphysiolを含む溶液中中の高いイオン強度は、特定の理論に限定されずに、オクテニジンの正電荷に基づいている抗菌作用の減少をもたらす。よって、NaClを用いた希釈は有効性を損なう。ここでは、これは、わずかな損失を構成するだけでなく、特に誘導される結晶化も構成することを示した。
【0060】
結晶堆積物のマイクロ写真撮影
結晶堆積物(図1)は、60℃に加熱した場合、再度溶解する、4℃にて96時間のインキュベーション後の生理学的な塩化ナトリウム溶液とオクテニセプト(登録商標)との混合物において生じる(20倍レンズ)。5%グルコースとオクテニセプト(登録商標)の混合物(1:1)でゃ、30日後でさえ堆積物は確認できない。希釈物として他の極性負電荷糖質は結晶を形成しないが、しかし、コンドロイチン硫酸、デルマンタン硫酸又はヘパラン硫酸のような硫酸化された高分子炭化水素は、迅速な微結晶又はコロイド状の濁度をもたらす。
【0061】
実施例6:メチルバイオレット染色における培地からのオクテニセプト(登録商標)誘導の細胞接着に対するグルコース及びNaCl添加物の効果
結晶沈澱物は、5%グルコース溶液による希釈を介して妨げられ得る。ここで、この添加が創傷治癒の改善に寄与し得る効果を確実にするかどうかを調べた。U373細胞は、オクテニセプト(登録商標)単独又は添加物(1:1のグルコース5%又はNaCl 0.9%)と伴うLeibovitz培地中で1時間インキュベートされた。各場合において、5μlの各溶液を100μlの培地に添加した。接着細胞を洗浄し、クリスタルバイオレットによる染色後、吸光度を550nmで測定した(図2a)。対照の吸光度を1に設定した。統計有意差は、Bonferroni’s Multiple Comparison Testを用いて決定した(**:p<0,01、***<0,001)。
【0062】
オクテニセプト(登録商標)単独(黒色バー)で処理された細胞は、Leibovitz培地中の培養物と比較して、安定性が50%まで減少し、さらに、NaCl 0.9%(縦縞バー)を用いた希釈を通じて減少した。グルコース5%を用いると、脱着に対する耐性は、対照値(灰色バー)の80%まで非常に有意に改善された。グルコースとの濃度系列は、保存液中で最適添加が2%であるか、又は最終濃度が0.1%であることを示した(図4)。オクテニセプト(登録商標)+グルコースを用いた処理後に基質に接着した細胞数は、オクテニセプト(登録商標)+NaClを用いた処理後よりも有意に高かった。ここで、オクテニセプト(登録商標)+NaClの最大濃度で、全ての細胞は脱着し、一方、オクテニセプト(登録商標)+グルコースは、無傷な細胞層を維持し続けるように、より強い固着を達成した(図2b)。
【0063】
実施例7:種々のポリアルコールを介したオクテニセプト(登録商標)誘導の細胞接着の改変
ポリアルコールは幅広い化合物種を形成し、したがって、単一のサブグループが接着試験において異なる効果を有するのかどうかを調べた。U373細胞は、オクテニセプト(登録商標)単独(−)又は添加物(1:1 with ポリアルコール5%、グルコース、2−デオキシグルコース(2−deoxyG.)、ラクトース、サッカロース、フルクトース、グルクロン酸、ポリエチレングリコール(PEG)、コンドロイチン−4−硫酸(ch.4−s.)、コンドロイチン−6−硫酸(ch.−6−s.)、デルマンタン硫酸(dermatan−s.)又は硫酸デキストラン(dextran−s.))とともに、1時間、各場合において100μlの培地に対して5μlの添加物を有するLeibovitz培地中でインキュベートされた。接着細胞を洗浄し、メチルバイオレットで染色した後、吸光度を550nmで測定した。(バーは、(3点測定で測定した)2つの独立した実験の平均値±SDを表す。)対照の吸光度を1に設定した。統計有意差は、Bonferroni’s Multiple Comparison Testを用いて決定した(**:p<0,01、***<0,001)。
【0064】
図3は、オクテニセプト(登録商標)は、一方で、グルコース、2−デオキシグルコース、フルクトース及びグルクロン酸のような極性モノマーを介して、しかし、さらに、ラクトース、サッカロースのような二糖、及びポリエチレングリコールを有するポリマーを介して、再度改善された細胞接着の有意な減少をもたらしたことを示す。コンドロイチン−4−硫酸、コンドロイチン−6−硫酸、デルマンタン硫酸及び硫酸デキストランのような荷電ポリマーは、この効果を達成できなかったが、NaClの値以下まで接着を有意に減少させた。
【0065】
オクテニジンへの添加物としてのポリアルコールの有効性は、荷電していないか又は僅かに酸性の糖質に関する実験において検証された。しかしながら、試験された高分子性の硫酸化された糖質は効果がなかった。詳細には、アルドヘキソース及びアルドペントースは同等に陽性に作用し、この種類においてアルドースとケトースとの間に差がなかった。アルデヒド基を持たない誘導体では、陽性効果の僅かな減少が記録されなければならない(糖アルコール、PEG)。グリコシドOH基は、それが例としてのサッカロースを用いて示されるように、効果を損失することなしに結合され得る。むしろ、酸性基は、陽イオンを結合するようになる場合に役割を果たすようである。したがって、内部エステルとしてのグルクロン酸は、陽性効果を有するが、リン酸塩又は硫酸塩誘導化された糖質は、陽性効果を有さず、これは、オクテニジン誘導の細胞脱着をさらに強めるためである。これらの所見は、強力なハロゲンと介して達成されるように、減少した殺菌作用が電荷バランスを通じて推定される限りにおいて、有効性の効果の殺菌仮説と合致する。糖質の試料は、応用中の生理学的な塩化ナトリウム濃度を減少させ、すでに十分に証明された殺菌作用を支持する。
【0066】
実施例8:メチルバイオレットアッセイにおける培養液からのオクテニセプト(登録商標)誘導の細胞接着に対するグルコース添加物の濃度依存性
オクテニセプト(登録商標)単独又はNaClで希釈されたオクテニセプト(登録商標)と通じて有意に減少する、グルコース添加物を有する調製物が細胞接着を再平衡させる最適な濃度又は希釈を決定するために、グルコース5%を有する調製物の1:2〜1:200の希釈系列を使用した。U373細胞は、オクテニセプト(登録商標)(培地中1:20)単独(G0)又はオクテニセプト(登録商標)と種々の体積の5%グルコース溶液(結果として、Leibovitz培地中の最終希釈1:200〜1:2)とともに1時間インキュベートした。細胞接着に対する効果は、メチルバイオレット試験を通して決定され、図4に示される。
【0067】
オクテニセプト(登録商標)は、グルコース(1:200又は1:100)の添加を通じて傾向的に改善された細胞接着の実質的な減少を生じさせる。保護作用の最適条件は、1:20の希釈で決定され、さらに増加した濃度の場合に、有意な変化を示すが、一定でなく、実質的に保護作用を増大させた。
【0068】
細胞培養に基づく実験は以下を明らかにすることができた:標準化された洗浄プロセス後に基質に接着した細胞数は、オクテニセプト(登録商標)+グルコースによる処理後、オクテニセプト(登録商標)+NaClによる処理後よりも有意に高かった。ここで、オクテニセプト(登録商標)+NaClの最大濃度で、全細胞は脱着したが、一方、オクテニセプト(登録商標)+グルコースはより強い固着を達成した。インビボでの創傷治癒に類似して、このパラメータは、オクテニセプト(登録商標)+グルコースの希釈が、機械的に強い細胞構造の製造を支持し、したがって、創傷治癒を加速することを示す(Cai et al.,(2008)Invest Ophthalmol Vis Sei,49(5):2163−71;Chiang et al.,(1991)Dev Biol,146(2):377−85;Guo et al.,(2008)Cancer Investigation,26(4):369−374;Wilkinson et al.,(1994)Exp Dermatol,3(5):239−45)。使用の最適な範囲は、オクテニセプト溶液中の1:20の5%グルコース溶液の希釈又は0.25%の絶対グルコースで決定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1:
(H−C−OH)(HO−C−OH)(H−C−H)
[式中、a、b、cは整数であり、ここで、a+bは少なくとも2であり、好ましくは少なくとも3であり、cは0、1であるか又は2〜a+bの範囲の数から選択される]
で表されるポリアルコールであって、
該ポリアルコールのヒドロキシ基の1つと(環状)アセタールを形成するという条件で、1以上のアルデヒド基を有するか、又は場合により該ポリアルコールのヒドロキシ基の1つとアセタールを形成する1以上のケト基を有し、
場合により、該ポリアルコールが環状アセタール若しくはアセタールである場合、好ましくは環サイズが5〜7個の原子を有する環状アセタール若しくはアセタールである場合、又は、該ポリアルコールが、a+bが2若しくは3であるとき、式1の少なくとも2ユニットを有するポリマー、ポリエーテル若しくはポリエステルとして存在するという条件で、それらのポリマー、ポリエーテル若しくはポリエステルである場合に、1以上のカルボン酸基を有するポリアルコールと、溶液中のオクテニジンとの併用療法投与用に意図されたオクテニジン又はその薬学的塩。
【請求項2】
溶液としての併用療法投与用に意図された、請求項1に定義される式1のポリアルコール及びオクテニジン又はその薬学的塩、特にオクテニジン二塩酸塩を含むキット。
【請求項3】
請求項1に定義される式1のポリアルコール及びオクテニジン又はその薬学的塩、特にオクテニジン二塩酸塩を含む、溶液形態の医薬組成物。
【請求項4】
前記ポリアルコールが化学式2:C(HO)を有する糖質であって、ここで、nは少なくとも3の整数であり、mはn−15%からn+15%の範囲の整数(丸めた整数(rounded integer))であり、好ましくはn−1、n又はn+1であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項5】
前記ポリアルコールが非荷電であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項6】
前記ポリアルコールが、単糖若しくは二糖、又は単糖若しくは二糖のデオキシ−若しくはモノ−カルボン酸誘導体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項7】
前記ポリアルコールが、アルドース又はケトース、好ましくはアルドヘキソース、アルドペントース、ケトヘキソース又はケトペントースを含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項8】
前記ポリアルコールが、グルコース、ガラクトース、フルクトース、フコース、マルトース、リボース、デオキシリボース、デオキシグルコース、具体的には2−デオキシグルコース、サッカロース、ラクトース、グルクロン酸から選択されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項9】
前記ポリアルコール及び/又はオクテニジンが溶液中にあり、好ましくは水溶液中にあり、好ましくは唯一の溶媒として水を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項10】
オクテニジンとの投与のための溶液中の前記ポリアルコールが、0.01%〜12%(w/v)、好ましくは0.1%〜10%、より好ましくは0.5%〜7.5%、最も好ましくは2.5%〜5%の濃度を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項11】
前記ポリアルコールとの投与のための溶液中のオクテニジンが、0.0001%〜1%(w/v)、好ましくは0.001%〜0.1%、より好ましくは0.002%〜0.01%の濃度を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項12】
前記ポリアルコールとの投与のための溶液が、0.1%(w/v)以下、好ましくは0.05%以下、より好ましくは0.01%以下、最も好ましくは0.005%以下の濃度のNaClを有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項13】
前記ポリアルコール及び/又はオクテニジンが、好ましくは、ゲル、好ましくはハイドロゲルから選択される担体中にあり、又は創傷被覆材若しくはスワブ(swab)中にあり、場合により、前記ポリアルコール及び/又はオクテニジン、並びに持続放出担体を含む溶液で含浸されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項14】
オクテニジン及び前記ポリアルコールが、特に外科的処置の場合において又は外科的処置のための予防として、特に皮膚、粘膜、具体的には膣若しくは腹腔に関連した創傷又は熱傷の治療のための、あるいは特に外科的処置の場合において又は外科的処置のための予防として、感染、特に、対象の創傷感染、好ましくは特に皮膚、粘膜、具体的には膣若しくは腹腔の火傷の感染の治療及び予防のための、療法投与用に意図されていることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のオクテニジン、キット又は組成物。
【請求項15】
オクテニジン又はその医薬として許容される塩の1つとグルコースとの溶液を含む医薬品であって、グルコース濃度が0.01%〜12%(w/v)、好ましくは0.1%〜10%、より好ましくは0.5%〜7.5%、最も好ましくは2.5%〜5%であり、オクテニジン濃度が0.0001%〜1%(w/w)、好ましくは0.001%〜0.1%、より好ましくは0.002%〜0.01%であり、場合により担体と組み合わせられる医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−508725(P2012−508725A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536025(P2011−536025)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065111
【国際公開番号】WO2010/055122
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(511117484)アルタン ホールディング アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】