説明

オクトレオチドおよび3種の線状ポリラクチド−コ−グリコリドポリマーを含む徐放性製剤

本発明は、活性成分としてオクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩および3つの異なる線状ポリラクチド−コ−グリコリドポリマー(PLGA)を含む、徐放性製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性成分としてオクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩および3つの異なる線状ポリラクチド−コ−グリコリドポリマー(polylactide-co-glycolide polymer)(PLGA)を含む徐放性製剤(sustained release formulation)に関する。
【0002】
これらの本発明の医薬組成物は、とりわけ、先端巨大症患者における長期維持療法ならびに悪性カルチノイド腫瘍および血管作動性腸管ペプチド腫瘍(ビポーマ腫瘍)に伴う重度の下痢および紅潮(flushing)の治療に適応される。
【背景技術】
【0003】
ペプチド薬は、通常、全身的に、例えば非経口的に投与される。しかし、非経口投与は、有痛であり、特に毎日の投与が繰り返されるときには、不快感を引き起こす場合がある。患者への注射の回数を最小限にするためには、原薬(drug substance)をデポー製剤として投与するべきである。注射用デポー製剤の一般的な欠点は、放出期間の全体にわたって、ゼロに近い血漿レベルを伴う高いピークレベルなどの血漿レベルの変動である。
【0004】
活性成分としてオクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩および2つ以上の異なるポリラクチド−コ−グリコリドポリマー(PLGA)を含む徐放性製剤は、例えばWO 2007/071395にも開示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、活性成分(原薬)としてオクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩を含む徐放性製剤を開示する。オクトレオチドは、以下の式を有するソマトスタチン類似体である:
【化1】

【0006】
活性成分は、例えば無機酸、ポリマー酸または有機酸との(例えば、塩酸、酢酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、酒石酸、アスパラギン酸、安息香酸、コハク酸またはパモ(エンボン)酸(pamoic(embonic) acid)との)酸付加塩などの、オクトレオチドの医薬的に許容可能な塩の形態であることができる。酸付加塩は、例えば1または2酸当量が付与されるかによって、一価の塩として存在してもよいし、二価の塩として存在してもよい。好ましいものは、オクトレオチドのパモ酸単塩(pamoate monosalt)である。
【0007】
原薬の粒径分布は、デポー形態からの薬剤の放出プロフィールに影響を与える。デポー製剤の調製に使用される原薬は、結晶であるかまたは非晶質粉末の形態である。好ましいものは、約0.1ミクロンから約15ミクロン(99%>0.1ミクロン、99%<15ミクロン)、好ましくは1から約10ミクロン未満(90%>1ミクロン、90%<10ミクロン)の大きさの粒子を有する非晶質粉末である。原薬は、優先的には、必要な粒径分布を示すために微粉砕処理(micronization process)を受ける。
【0008】
本発明は、さらに、例えば微粒子、インプラントもしくは半固体製剤の形態のポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLGA)のブレンドまたは混合物に組み込まれているオクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩を活性成分として含む、徐放性医薬組成物(デポー(depot))を提供する。
【0009】
PLGAのブレンドの代替として、本発明の別の態様において、医薬組成物は、活性成分を含有するPLGAポリマーの混合物を含み、すなわち、活性成分を、微粒子、インプラントもしくは半固体製剤の形態の1以上のPLGAに組み込むことができ、次に、同様に活性成分および1以上のPLGAを含む別の微粒子またはインプラントまたは半固体製剤と混合する。
【0010】
本発明の医薬組成物は、3カ月を超える、好ましくは3〜6カ月の期間にわたる活性成分の徐放を可能にする。活性成分の放出の際に、オクトレオチドの血漿レベルは治療範囲内である。オクトレオチドの正確な用量は、治療される状態、治療される状態の重症度、被験体の体重および治療期間を含む多数の要因によって決まることが理解される。
【0011】
驚くべきことに、本発明の医薬組成物に3つの異なる線状PLGAの適切な組合せを使用することによって、血漿レベルの変動は有意に低減することができる。
【0012】
原薬は、3つの異なる線状ポリラクチド−コ−グリコリドポリマー(PLGA)からなる生物分解性ポリマーマトリックスに組み込まれる。PLGAは、100:0〜40:60、好ましくは90:10〜40:60、より好ましくは85:15〜65:35のラクチド:グリコリドモノマー比を有する。
【0013】
本発明のPLGAは、1,000〜500,000Da、好ましくは5,000〜100,000Daの範囲の分子量(Mw)を有する。ポリマーの構造は線状である。
【0014】
本発明のPLGAの固有粘度(IV)は、CHCl中で0.9dl/g未満、好ましくはCHCl中で0.8dl/g未満である。固有粘度は、例えば「Pharmacopoee Europeenne」、1997年、17〜18ページ(capillary tube method)に記載されている、流動時間測定の従来の方法により測定することができる。特に記述のない限り、これらの粘度は25℃で0.5%濃度のクロロホルムにおいてまたは30℃で0.5%濃度のヘキサイソフルオロプロパノールにおいて測定されている。
【0015】
本発明のPLGAの末端基は、ヒドロキシ、カルボキシ、エステルなどでありうるが、これらに限定されない。
【0016】
デポー製剤の原薬含有量(装填量(loading))は、1%〜30%、好ましくは10%〜25%、より好ましくは15%〜20%の範囲である。装填量は、遊離塩基としての原薬とPLGA製剤の総質量との重量比として定義される。
【0017】
適切なポリマーは、Boehringer Ingelheim Pharma GmbH&Co.KG、Ingelheim、GermanyのRESOMER(登録商標)、Absorbable Polymers International(API)、Pelham、AL、USAのLACTEL(登録商標)、Alkermes,Inc.、Cambridge、MA、USAのMEDISORB(登録商標)、PURAC biochem BV、Gorinchem、The NetherlandsのPURASORB(登録商標)として市販されているものが一般に知られているが、これらに限定されない。適切なポリマーの例が表1に提示されている。
【表1−1】

【表1−2】

【0018】
上記の表からの単一のポリマーのみを含有する製剤によってではなく、本発明の医薬組成物によってのみ、3カ月を超える、好ましくは3〜6カ月の期間にわたって、変動性が低い血漿レベルを達成することができる。
【0019】
加えて、本発明の医薬組成物は、無菌的または非無菌的に製造することができ、ガンマ放射線により最終的に滅菌することができる。可能な限り最高の無菌状態が確実である生成物をもたらす、ガンマ放射線による最終滅菌が好ましい。
【0020】
本発明の医薬組成物は、放出挙動を調節する1以上の医薬賦形剤を0.1%〜50%の量で含有することもできる。そのような作用物質の例は、以下である:ポリ(ビニルピロリドン)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、デキストリン、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(オキシエチレン−ブロック−オキシプロピレン)としても知られているポロキサマーなどの適切な界面活性剤、既知であり、商品名TWEEN(登録商標)(例えば、Tween 20、Tween 40、Tween 60、Tween 80、Tween 65 Tween 85、Tween 21、Tween 61、Tween 81)で市販されているポリ(オキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エステル、例えば既知であり、商品名SPANで市販されている種類のソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、炭酸亜鉛、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの無機塩、またはプロタミン(例えば、ヒトプロタミンもしくはサケプロタミン)、またはポリリシンのようなアミン残基を有する天然ポリマーもしくは合成ポリマー。
【0021】
本発明の医薬組成物は、デポー混合物であるか、または組成、分子量および/もしくはポリマー構造が異なるポリマーのポリマーブレンドであることができる。ポリマーブレンドは本明細書において、1つのインプラントもしくは微粒子中の3つの異なる線状ポリマーの固溶体または固体懸濁物と定義される。対照的に、デポーの混合物は、本明細書において、異なる組成の、インプラントまたは微粒子または半固体製剤のような、それぞれのデポー剤が1以上のPLGAを含む2つ以上のデポーの混合物と定義される。好ましいものは、3種のPLGAがポリマーブレンドとして存在する医薬組成物である。
【0022】
本発明の医薬組成物は、インプラント、半固体(ゲル)、注射されるとその場で(in situ)凝固する溶液もしくは懸濁液、または微粒子の形態であることができる。好ましいものは微粒子である。オクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩を含む微粒子の調製は公知であり、例えば、US5,445,832またはUS5,538,739に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の以下の部分はポリマー微粒子に焦点を合わせているが、この記載は、インプラント、半固体および液体にも当てはまる。
【0024】
本発明の微粒子は、数サブミクロンから数ミリメートル、例えば、約0.01ミクロンから約2mm、例えば約0.1ミクロンから約500ミクロンの直径を有することができる。医薬用微粒子では、最大約250ミクロン、例えば10〜200ミクロン、好ましくは10〜130ミクロン、より好ましくは10〜90ミクロンの直径である。
【0025】
例えば、予備充填シリンジまたはバイアルにおいて、本発明の微粒子を抗凝集剤と混合するもしくはそれで被覆するか、または抗凝集剤の層で覆うことができる。適切な抗凝集剤には、例えば、マンニトール、グルコース、デキストロース、スクロース、塩化ナトリウム、または例えば上記に記載された特性を有するポリビニルピロリドンもしくはポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマーが含まれる。
乾燥状態の本発明の微粒子では、好ましくは、抗凝集剤は、微粒子の約0.1〜約10重量%、優先的には約3重量%〜5重量%、例えば約4重量%の量で存在する。この点において好ましい抗凝集剤は、マンニトールである。
【0026】
あるいは、抗凝集剤を製造過程の微粒子に適用することができる。例えば、微粒子を濾過/洗浄する工程において、これらを抗凝集剤の水溶液で追加的にすすぐことができる。それにより抗凝集剤の層が微粒子の表面に形成される。好ましくは、抗凝集剤は、微粒子の10重量%未満、より好ましくは2重量%未満、最も好ましくは0.5重量%未満の量で微粒子に存在する。この点において好ましい抗凝集剤は、マンニトールである。
【0027】
本発明のデポー製剤の製造方法を微粒子について詳細に記載する。
【0028】
微粒子は、当該分野で公知の幾つかの方法により、例えば、コアセルベーションまたは層分離、噴霧乾燥、油中水(W/O)または水中油中水(W/O/W)または水中油中固体(solids-in-oil-in-water)(S/O/W)型エマルション/懸濁液法、続く溶媒抽出または溶媒蒸発により製造することができる。エマルション/懸濁液法は、好ましい方法であり、以下の工程を含む:
(i)(ia)ポリマーを適切な有機溶媒または溶媒混合物に溶解する工程;
必要により、適切な添加剤を溶解/分散する工程;
(ib)工程(ia)で得られたポリマー溶液に原薬を溶解/懸濁/乳化する工程
を含む、有機内相(internal organic phase)を調製する工程;
(ii)安定剤および必要によるが好ましくは緩衝塩を含有する水性外相(external aqueous phase)を調製する工程;
(iii)例えば、高剪断力を作り出す装置(例えば、タービンまたは静止混合機(static mixer))により有機内相を水性外相と混合して、エマルションを形成する工程;および
(iv)微粒子を溶媒蒸発または溶媒抽出により硬化し、微粒子を例えば水により洗浄し、微粒子を収集して乾燥させ、例えば凍結乾燥するかまたは真空下で乾燥させ、微粒子を140μmを通す篩にかける工程。
【0029】
ポリマーに適した有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、アセトン、THF、アセトニトリルまたはハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、クロロホルムまたはヘキサフルオロイソプロパノール)が挙げられる。
【0030】
工程(iib)の安定剤に適した例には、0.1〜5%の量のポリ(ビニルアルコール)(PVA)、合計量が0.01〜5%のヒドロキシエチルセルロース(HEC)および/またはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリ(ビニルピロリドン)、ゼラチン、好ましくはブタまたは魚のゼラチンが挙げられる。
【0031】
乾燥微粒子組成物を、必要によりバルクで、または最終容器に充填した後、ガンマ照射により最終的に滅菌(過剰滅菌)して、可能な限り最高の無菌状態を確実にすることができる。あるいは、バルク滅菌微粒子を、適切なビヒクルに再懸濁し、ダブルチャンバーシリンジ(double chamber syringe)のような適切なデバイスに懸濁剤として充填し、続いて凍結乾燥することができる。
【0032】
微粒子を含有する本発明の医薬組成物は、再構成を容易にするために、ビヒクルを含有することもできる。
【0033】
投与の前に、微粒子を、注射に適したビヒクルに懸濁させる。好ましくは、前記ビヒクルは水ベースであり、等張性を確実にするため、そして微粒子の湿潤性および沈降性を改善するために、マンニトール、塩化ナトリウム、グルコース、デキストロース、スクロースまたはグリセリン、非イオン性界面活性剤(例えば、ポロキサマー、ポリ(オキシエチレン)ソルビタン脂肪酸エスエル、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、ソルビトール、ポリ(ビニルピロリドン)またはモノステアリン酸アルミニウムなどの医薬賦形剤を含有している。湿潤性および粘性増強剤は0.01〜1%の量で存在することができ、等張剤は等張性の注射可能な懸濁を確実にするために適した量で添加される。
【0034】
本発明は、さらに、とりわけ、先端巨大症患者における長期維持療法ならびに悪性カルチノイド腫瘍および血管作用性腸管ペプチド腫瘍(ビポーマ腫瘍)に伴う重度の下痢および紅潮の治療のための本発明の医薬組成物の使用を提供する。
【0035】
本発明の医薬組成物の有用性は、標準的な臨床試験または動物試験において示すことができる。
【0036】
本発明は、さらに、必要により移動セット(transfer set)を備えたバイアル中のデポー製剤を、アンプル、バイアルもしくは予備充填シリンジ中の水ベースのビヒクルと一緒に含むか、または、ダブルチャンバーシリンジに分けられるビヒクルと微粒子として含むキットを提供する。
【実施例】
【0037】
[実験部分]
以下の実施例は、例示的であるが、本明細書に記載されている発明の範囲を制限するものではない。実施例は、本発明を実施する方法を示唆することのみが意図される。
【0038】
[実施例1:微粒子の調製]
適切な量のPLGAポリマーを適切な量のジクロロメタンに溶解して、表2の「PLGA濃度」の列に記述されている適切なポリマー濃度を得る。適切な量の原薬を計量してガラスビーカーの中に入れ、ポリマー溶液を原薬の上に注ぎ、それにより得られた微粒子は、「薬剤装填(drug load)」の列に記述された薬剤装填を有する。
【0039】
例えば、20%の薬剤装填および20%のポリマー濃度を有する微粒子では、数値は以下である:3.547gのPLGAポリマーを17.7mlのジクロロメタンに溶解して、20%(w/v)ポリマー溶液を得る。1.453gのオクトレオチドパモ酸塩(octreotide pamoate)(1.00g=20%オクトレオチド遊離塩基に対応)を計量してガラスビーカーの中に入れ、ポリマー溶液を原薬の上に注ぐ。
【0040】
氷/水混合物で冷却しながら、懸濁液をウルトラタラックスローターステーターミキサ(Ultra-Turrax rotor-stator mixer)により20,000rpmで1分間均質化する。この懸濁液をS/O懸濁液と呼ぶ。
【0041】
10.00gのポリビニルアルコールPVA18−88、3.62gのKHPOおよび15.14gのNaHPOを、2.00Lの脱イオン水に溶解させて、pH7.4に緩衝された0.5% PVA18−88溶液を形成する。
【0042】
たわみ管ポンプ(Perpex、Viton tube)の助けを借りて10ml/分の速度でタービンにS/O懸濁液をポンプ注入することによって、および、ギアポンプ(ポンプヘッドP140を有するIsmatec MV-Z/B)により200ml/分の速度で同じタービンに水溶液をポンプ注入することによって、S/O懸濁液を0.5% PVA18−88溶液と混合する。2つの溶液をタービンにおいて4,500rpmで混合する。均質化されたS/O/Wエマルションを、200mlの緩衝PVA溶液が予備充填されている2Lのガラスビーカーに収集する。
【0043】
次にS/O/Wエマルションを、5時間、52℃に加熱する。バッチを再び室温に冷却する前に、52℃の温度をさらに30分間保持する。この処理の際に、逃散するジクロロメタンを真空下で除去し、バッチを4ブレードプロペラ混合機(4 blade-propeller-stirrer)により250rpmで撹拌する。
【0044】
その結果、微粒子がS/O/Wエマルションから形成される。微粒子を濾過(5μm)により収集する。これらを200mlの水で5回洗浄し、20℃および0.030mbarで36時間乾燥させる。乾燥微粒子を、140μmを通す篩にかけ、窒素下でガラスバイアルに充填する。この方法で調製した微粒子を、30kGyの線量のガンマ照射により滅菌する。
【0045】
微粒子の粒径をレーザー光線回析により測定する。超音波を使用してホワイトスピリットに微粒子を再懸濁する。表2は、120秒間の超音波処理後の直径x90(全粒子の90%がこの値よりも小さい)を示す。
【0046】
微粒子のアッセイは、微粒子を超音波によりアセトニトリルおよびメタノールの3:2混合物に溶解し、さらに酢酸ナトリウム緩衝液(pH4)で1:1希釈した後、HPLCにより決定する。溶液は、遠心分離により残留粒状物質が取り除かれる。
【表2】

【0047】
[実施例2:ビヒクル組成A〜G]
表3に示した量のCMC−Na、マンニトールおよびPluronic F68を、温度が約90℃の高温脱イオン水約15mlに、磁気撹拌機で強く撹拌しながら溶解させる。得られた明澄な溶液を20℃に冷却し、20.0mlになるまで脱イオン水を充填する。
【表3】

【0048】
[実施例3:微粒子懸濁液]
実施例1−1の微粒子180mgを、6Rバイアル中の組成D(表3)のビヒクル1.0mlに懸濁する。懸濁液を手で約30秒間振とうすることにより均質化する。再構成した懸濁液は、20ゲージ針を使用して問題なく注射することができる。
【0049】
[実施例4:微粒子の凍結乾燥]
実施例1−1の微粒子180mgを組成F(表3)のビヒクル1mlで再構成し、1〜12時間撹拌することにより均質化し、次に凍結乾燥機により凍結乾燥する。1mlの純水(aqua ad injectabilia)で凍結乾燥微粒子を再構成すると、微粒子の迅速で良好な湿潤がもたらされ、20ゲージ針を使用して問題なく注射することができる。
【0050】
[実施例5:インビボ(ウサギ)での放出プロフィール]
オクトレオチドを含有する微粒子を1mlの適切な水性ビヒクルに懸濁し、得られた懸濁液を、12mg/kgの用量で雄ニュージーランドホワイト雑種ウサギ(male New Zealand White bastard rabbit)に筋肉内(i.m.)注射する。それぞれの投与形態において(試験群)、4匹の動物を使用する。一定時間後(表4に示されている)、血漿サンプルを採取し、オクトレオチド濃度を分析する。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてオクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩および3つの異なる線状ポリラクチド−コ−グリコリドポリマー(PLGA)を含む、徐放性医薬組成物。
【請求項2】
PLGAがポリマーブレンドとして存在する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
PLGAが、90:10〜40:60のラクチド:グリコリドモノマー比を有する、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
PLGAが、85:15〜65:35のラクチド:グリコリドモノマー比を有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
PLGAの固有粘度がCHCl中で0.9dl/g未満である、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
PLGAの固有粘度がCHCl中で0.8dl/g未満である、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
オクトレオチドのパモ酸塩を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
活性成分の放出が3カ月以上である、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
活性成分の放出が3〜6カ月である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
微粒子、半固体またはインプラントの形態である、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
微粒子の形態である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
微粒子が10μm〜90μmの直径を有する、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
微粒子が抗凝集剤で追加的に覆われているかまたは被覆されている、請求項11または12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
微粒子が抗凝集剤で被覆されており、抗凝集剤が微粒子の2重量%未満の量で存在する、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
抗凝集剤がマンニトールである、請求項13または14に記載の医薬組成物。
【請求項16】
ガンマ照射により滅菌される、請求項1〜15のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項17】
先端巨大症患者における長期維持療法ならびに悪性カルチノイド腫瘍および血管作用性腸管ペプチド腫瘍(ビポーマ腫瘍)に伴う重度の下痢および紅潮の治療のための、請求項1から16のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項18】
先端巨大症患者における長期維持療法ならびに悪性カルチノイド腫瘍および血管作用性腸管ペプチド腫瘍(ビポーマ腫瘍)に伴う重度の下痢および紅潮の治療のためにオクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩を投与する方法であって、
オクトレオチドまたは医薬的に許容可能なその塩を必要とする患者に請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項19】
請求項11に記載の微粒子を製造する方法であって、
(i)(ia)ポリマーを適切な有機溶媒または溶媒混合物に溶解する工程;
(ib)工程(ia)で得られたポリマー溶液に原薬を溶解/懸濁/乳化する工程
を含む、有機内相を調製する工程;
(ii)安定剤を含有する水性外相を調製する工程;
(iii)有機内相を水性外相と混合して、エマルションを形成する工程;および
(iv)微粒子を溶媒蒸発または溶媒抽出により硬化し、微粒子を洗浄し、微粒子を乾燥させ、微粒子を140μmを通す篩にかける工程
を含む、前記方法。
【請求項20】
バイアル中の請求項1〜16のいずれかに記載の医薬組成物を、アンプル、バイアルもしくは予備充填シリンジ中の水ベースのビヒクルと一緒に含むか、または、ダブルチャンバーシリンジに分けられるビヒクルと微粒子として含む、投与キット。

【公表番号】特表2011−510951(P2011−510951A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544702(P2010−544702)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/051026
【国際公開番号】WO2009/095450
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】