説明

オゾンの貯蔵方法、オゾンを取り込んだ固体状物質の製造方法、食品保存材料及び食品の保存方法

【課題】オゾンを高濃度で安定的に貯蔵する方法を提供する。
【解決手段】オゾンと水又は氷とを接触させながら所定の温度以下にすることによってオゾンを取り込んだ固体状物質を形成する。具体的には、オゾン製造器1で生成したオゾンを、酸素95容積%、オゾン5容積%の混合ガスとして反応槽3に供給する。このとき反応槽3に、水を供給添加し、温度を低下させるとともに圧力を上げ始めると、水に溶解したオゾンガスが氷に包接され、固体状物質であるオゾン貯蔵材が形成される。このときの温度圧力条件は、270K(−3℃)以下、2MPa以上が好ましい。このようにして生成されたオゾン貯蔵材は、オゾン貯蔵材の貯留槽6に送給される一方、反応槽3に残存した酸素ガスは、オゾン製造器1に返送されることで、オゾン源として再利用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾンを高濃度に含有するオゾンの貯蔵方法、オゾンを高濃度に取り込んだ固体状物質の製造方法、オゾンを取り込んだ固体状物質を用いた食品保存材料、及びオゾンを取り込んだ固体状物質を用いた食品保存方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オゾンは、強力な殺菌作用を発揮するとともに自己分解して酸素となるため、他の殺菌剤、例えば、次亜塩素ソーダ等の塩素系殺菌剤の代替として広く使用されるようになっている。また、半導体デバイス製造プロセスのうち、難酸化性電子材料の酸化処理や400℃以下での電子素子用高品位シリコン酸化膜形成処理等への適用も可能である。
【0003】
このようなオゾンガスは、酸素雰囲気中で無声放電や電気分解を行うことで生成することができるが、生成したオゾンは、オゾン濃度が最大10容量%程度と低く、また、半減期も1.5時間程度と短いため、その取扱いが不便である。
【0004】
このように、濃度が低く貯蔵し難いオゾンガスについて、特許第2835879号公報においては、シリカゲル等を吸着材としてオゾンを吸着させ、濃縮・貯蔵することでオゾンを安定的に利用するオゾンの貯蔵方法が提案されている(特許文献1参照)。また、特開平11−142029号公報においては、オゾンを氷中に気泡として貯蔵することで安定的に利用するオゾンの貯蔵方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2835879号公報
【特許文献2】特開平11−142029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のオゾン貯蔵方法のように、吸着材としてのシリカゲル等にオゾンを吸着させて濃縮し、貯蔵する方法では、最大でもオゾン濃度が14容積%程度とオゾンの吸着能力が低く、しかもシリカゲル吸着剤の回収が困難であるため、適用用途が大きく制限されるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献2に記載されているような装置により製造したオゾン氷は、氷の中にオゾンを気泡として閉じ込めるものであるが、それでもオゾンの貯蔵濃度は3〜6mg/L程度であり、しかも気泡として氷の中に閉じ込められたオゾンは、気泡内でオゾン分子同士が反応して自己分解してしまうため、貯蔵安定性に劣るという問題点があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、オゾンを高濃度に含有することのできるオゾンの貯蔵方法、オゾンを高濃度に取り込んだ固体状物質の製造方法、オゾンを高濃度に取り込んだ固体状物質を用いた食品保存材料、及びオゾンを高濃度に取り込んだ固体状物質を用いた食品保存方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のオゾンの貯蔵方法は、オゾンと水又は氷とを接触させながら所定の温度以下にすることによってオゾンを取り込んだ固体状物質を形成することを特徴とする(請求項1)。かかる発明(請求項1)によれば、固体状物質においては、オゾンを高濃度に貯蔵することができる。しかも、オゾン分子同士が反応して自己分解することもなく、貯蔵安定性にも優れている。
【0009】
上記発明(請求項1)においては、前記オゾンと水又は氷との接触を、オゾンガス雰囲気中に水を添加することで行ってもよいし(請求項2)、前記オゾンと水又は氷との接触を、所定の温度以下のオゾンガス雰囲気中に水を噴霧することで行ってもよいし(請求項3)、前記オゾンと水又は氷との接触を、粉末状の氷を充填した容器にオゾンガスを加圧添加することで行ってもよい(請求項4)。かかる発明(請求項2〜4)によれば、オゾンを取り込んだ固体状物質を効率よく生成することができる。
【0010】
上記発明(請求項1〜4)においては、オゾンを水又は氷に接触させる際の圧力が2MPa以上であり、温度が−3℃以下であるのが好ましい(請求項5)。特に、圧力が13MPa以上であり、温度が−25℃以下であるのが好ましい。
【0011】
また、本発明のオゾンを取り込んだ固体状物質の製造方法は、オゾンと水又は氷とを接触させながら所定の温度以下にすることを特徴とする(請求項6)。かかる発明(請求項6)によれば、このようにして製造された固体状物質は、オゾンを高濃度に貯蔵することができる。しかも、オゾン分子同士が反応して自己分解することもなく、貯蔵安定性にも優れている。
【0012】
さらに、本発明の食品保存材料は、オゾンを取り込んだ固体状物質からなることを特徴とする(請求項7)。かかる発明(請求項7)によれば、オゾンを取り込んだ固体状物質を食品とともに置くと、固体状物質からオゾンが徐放され、オゾンによる殺菌効果により長期間食品の鮮度を保持することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の食品の保存方法は、オゾンを取り込んだ固体状物質とともに食品を包装することを特徴とする(請求項8)。かかる発明(請求項8)によれば、オゾンを取り込んだ固体状物質を食品とともに包装することにより固体状物質からオゾンが徐放され、オゾンによる殺菌効果により長期間食品の鮮度を保持することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のように、オゾンと水又は氷とを接触させながら所定の温度以下にすると、オゾンを取り込んだ氷であるオゾン貯蔵材が形成される。このオゾン貯蔵材は、氷の中にオゾンを気泡として閉じ込めたオゾン氷やシリカゲル等にオゾンを吸着させたオゾン吸着体等と比べると、はるかに高いオゾン吸蔵率を示すとともに、オゾンを高濃度に貯蔵することができる。しかも、貯蔵安定性にも優れており、オゾン貯蔵材を維持できる低温・高圧状態においてオゾン貯蔵材を保持することで、オゾンを長期間安定的に保存することができる。
【0015】
このような効果が得られる理由については必ずしも明らかではないが、オゾンが、水分子を基準とする5角形の12面体構造を有するクラスレートに1分子ずつ取り込まれたような分子構造体が形成され、これによりオゾンを高濃度に貯蔵することができるとともに、このクラスレート中にオゾンが1分子ずつ貯蔵されるので、オゾン分子同士の反応によるオゾン分子の自己分解も起こることがなく、貯蔵安定性にも優れていると考えられる。
【0016】
このような本発明のオゾン貯蔵材を食品保存材料として用いると、オゾン貯蔵材が溶融するのに伴い徐々にオゾンが放出され、オゾンによる殺菌効果により食品の鮮度を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のオゾン貯蔵方法は、基本的には水又は氷にオゾンを高圧及び/又は低温で接触させた状態に維持することによって、オゾンを取り込んだ固体状物質、すなわちオゾン貯蔵材を形成することによりオゾンを貯蔵する。
【0018】
このようにして得られるオゾン貯蔵材は、オゾンを高濃度に貯蔵することができ、また、オゾン分子が自己分解してしまうおそれもない。このことからこのオゾン貯蔵材は、複数の水分子により構成された「籠」の中にオゾンガスを1分子ずつ閉じ込めた構造を有すると考えられる。すなわち、上述したような構造であれば、オゾン氷よりもオゾンの貯蔵濃度は飛躍的に高まり、しかも、オゾン分子同士が接触し得ないため、オゾン分子が自己分解してしまうおそれもないからである。これにより、多数のオゾン分子からなるオゾンガスの気泡を氷の中に閉じ込めたオゾン氷におけるオゾン分子同士の反応による自己分解の問題点を解消することができるようになった。さらに、このオゾン貯蔵材は、水及びオゾンのみにより構成されているため、オゾンを放出させた後は水しか残らない。したがって、シリカゲルのような吸着材等を用いた場合のように回収する必要がないという効果も奏する。
【0019】
このようなオゾン貯蔵材を利用する本発明のオゾンの貯蔵方法の第1の実施形態について以下説明する。
図1は、本実施形態に係るオゾン貯蔵方法におけるオゾン貯蔵材の製造システムを示すフロー図である。図1において、1はオゾン製造器であり、このオゾン製造器1は、混合ガス供給管2を介して、温度調整機構及び圧力調整機構を備えた密閉式の反応槽3に接続されている。また、この反応槽3には、水供給管4が接続されているとともに、反応槽3は、製造されたオゾン貯蔵材の輸送管5を介してオゾン貯蔵材の貯留槽6に接続されている。なお、7は還流管である。
【0020】
このような製造システムにおいて、オゾン製造器1で生成したオゾンは、例えば、酸素95容積%、オゾン5容積%の混合ガスとして混合ガス供給管2から反応槽3に供給される。このとき反応槽3には水が供給添加され、続いて温度を低下させるとともに圧力を上げ始めると、水に溶解したオゾンガスが氷に包接され、固体状物質であるオゾン貯蔵材が形成される。
【0021】
このときの温度圧力条件は270K(−3℃)以下、2MPa以上が好ましく、特に248K(−25℃)以下、13MPa以上が好ましい。温度が270Kを超えるか、又は圧力が2MPa未満では、上述したような本発明の効果を発揮するオゾン貯蔵材が十分に形成されない。また、水とオゾンとを接触させる時間は、特に制限されるものではないが、作業効率等の面から0.01〜24時間程度とすることが好ましい。
【0022】
このようにして生成されたオゾン貯蔵材は、オゾン貯蔵材の輸送管5を介してオゾン貯蔵材の貯留槽6に送給される一方、反応槽3に残存した酸素ガスは、還流管7を介してオゾン製造器1に返送されて、オゾン源として再利用される。
【0023】
上述のようにして得られるオゾン貯蔵材は、オゾンの含有率が100〜1700容積%と高濃度であり、270K(−3℃)以下、2MPa以上の環境下であれば安定的に貯蔵することができる。
【0024】
次に本発明のオゾン貯蔵方法の第2の実施形態について説明する。
図2は、本実施形態に係るオゾンの貯蔵方法におけるオゾン貯蔵材の製造システムを示すフロー図である。図2において、13は温度調整機構及び圧力調整機構を備えた密閉式の反応槽であり、この反応槽13には、オゾン製造器11が混合ガス供給管12を介して接続されている。また、この反応槽13には、製造されたオゾン貯蔵材の輸送管15を介してオゾン貯蔵材の貯留槽16が接続されている。なお、17は還流管である。
【0025】
このような製造システムにおいて、反応槽13には、粉末状の氷が充填されており、オゾン製造器11で生成したオゾンは、例えば、酸素95容積%、オゾン5容積%の混合ガスとして混合ガス供給管12から反応槽13に供給される。このとき反応槽13には、粉末状の氷が充填されているので、温度を低下させるとともに圧力を上げ始めると、オゾンガスが氷に包接され、固体状物質であるオゾン貯蔵材が形成される。
【0026】
このときの温度圧力条件は、270K(−3℃)以下、2MPa以上が好ましく、特に248K(−25℃)以下、13MPa以上が好ましい。温度が270Kを超えるか、又は圧力が2MPa未満では、上述したような本発明の効果を発揮するオゾン貯蔵材が十分に形成されない。また、氷とオゾンとを接触させる時間は、特に制限されるものではないが、作業効率等の面から0.01〜24時間程度とするのが好ましい。
【0027】
このようにして生成されたオゾン貯蔵材は、オゾン貯蔵材の輸送管15を介してオゾン貯蔵材の貯留槽16に送給される一方、反応槽13に残存した酸素ガスは、還流管17を介してオゾン製造器11に返送されて、オゾン源として再利用される。
【0028】
上述のようにして得られるオゾン貯蔵材は、オゾンの含有率が100〜1700容積%と高濃度であり、270K(−3℃)以下、2MPa以上の環境下であれば安定的に貯蔵することができる。
【0029】
次に本発明のオゾン貯蔵方法の第3の実施形態について以下説明する。
図3は、本実施形態に係るオゾンの貯蔵方法におけるオゾン貯蔵材の製造システムを示すフロー図である。図3において、21はオゾン製造器であり、このオゾン製造器21は、混合ガス供給管22を介して、温度調整機構及び圧力調整機構を備えた密閉式の反応槽23に接続されている。また、この反応槽23は、上部に水噴霧器24が付設されているとともに、製造されたオゾン貯蔵材の輸送管25を介してオゾン貯蔵材の貯留槽26に接続されている。なお、27は還流管である。
【0030】
このような製造システムにおいて、オゾン製造器21で生成したオゾンは、例えば、酸素95容積%、オゾン5容積%の混合ガスとして混合ガス供給管22から反応槽23に供給される。
【0031】
このときの温度圧力条件は、270K(−3℃)以下、2MPa以上が好ましく、特に248K(−25℃)以下、13MPa以上が好ましい。温度が270Kを超えるか、又は圧力が2MPa未満では、後述する水噴霧工程において上述したような本発明の効果を発揮するオゾン貯蔵材が十分に形成されない。
【0032】
次に、水噴霧器24により反応槽23の上部から水を噴霧する。そうすると、この水は瞬時に氷化(固化)し、このときオゾンガスが氷に包接され固体状物質であるオゾン貯蔵材が形成される。
【0033】
このようにして生成されたオゾン貯蔵材は、オゾン貯蔵材の輸送管25を介してオゾン貯蔵材の貯留槽26に送給される一方、反応槽23に残存した酸素ガスは、還流管27を介してオゾン製造器21に返送されて、オゾン源として再利用される。
【0034】
上述のようにして得られるオゾン貯蔵材は、オゾンの含有率が100〜1700容積%と高濃度であり、270K(−3℃)以下、2MPa以上の環境下であれば安定的に貯蔵することができる。
【0035】
このようにしてオゾンを貯蔵したオゾン貯蔵材から、オゾンを取り出すためには、オゾン貯蔵材を常温常圧に放置することで溶解させればよい。
【0036】
次に上述したようなオゾンを取り込んだ固体状物質であるオゾン貯蔵材を用いた食品保存材料について説明する。この食品保存材料は、例えば、図4に示すように、オゾン貯蔵材を立方体等に成形し、ガス透過性で水不透過性のフィルム(図示せず)で包んだ塊状体であり、この食品保存材料31を生鮮食品32とともにトレー33上に載せてラップ34で被覆することにより生鮮食品32を保存する。
【0037】
そして、食品保存材料31が徐々に溶融することにより、ガス透過性フィルムを介してオゾンが放出されるので、トレー33内はオゾンガスが充満した状態となり、オゾンの殺菌効果により生鮮食品32が殺菌状態に維持される。しかも、トレー33内は陽圧状態となるため、外部から菌が進入することもないという効果も奏する。なお、オゾンの発生に伴いラップ34が膨張するので、所定の圧力を超えるとトレー33とラップ34との接合面から少しずつオゾンが抜ける程度のラッピング状態にしたり、トレー33に調圧弁を設けたりすることが好ましい。また、オゾン貯蔵材の溶融後は水が残るが、オゾン貯蔵材がガス透過性で水不透過性のフィルムに包まれているため、水が漏れ出して生鮮食品等に触れることもない。なお、本実施形態においては、ガス透過性フィルムの代わりにプラスチック製等の水を透過しないガス透過性容器を使用することもできる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
〔実施例1〕
図1に示すオゾン貯蔵材製造システムを用い、オゾン貯蔵材を製造した。原料ガスとしてオゾン濃度5容積%、酸素濃度95容積%の混合ガスを反応槽3に供給し、反応槽3に水を供給して温度248K、圧力13MPaで保持したところ固体状物質が得られた。
【0040】
この固体状物質を常温常圧条件で溶融させ、放出されるガスの成分及び濃度を分析したところ、固体状物質から放出されたガスはオゾンであり、固体状物質がオゾン貯蔵材であることが確認された。そして、その貯蔵量は1.1mL−O/mL−貯蔵材(=2.3g−O/L−貯蔵材)であり、オゾン濃度は101容積%と非常に高いことが確認された。これは、無声放電で生成したオゾン濃度(10容積%)の10倍である。また、従来技術であるオゾン気泡を含む水を凍らせたオゾン氷(氷中オゾン濃度:3〜6mg−O/L−氷)に比べ380倍以上に濃縮できた。これらの結果から、本発明のオゾン貯蔵方法により、オゾンを高濃度で貯蔵可能であることが確認された。
【0041】
〔実施例2〕
実施例1で製造したオゾン貯蔵材(オゾン濃度:2.3g−O/L−貯蔵材)と、オゾン氷(氷中オゾン濃度:3〜6mg−O/L−氷)とをそれぞれ耐圧容器に入れ、温度248K、圧力13MPaの条件に10日間保持し、その間のオゾン貯蔵材及びオゾン氷中のオゾン濃度変化を分析した。
結果を図5に示す。
【0042】
図5から明らかなように、オゾン氷ではオゾン濃度が経時的に減少し、初期値の20%以下にまで減少したのに対し、オゾン貯蔵材ではオゾン濃度はほとんど減少しなかった。これは、オゾン氷では、気泡中でオゾン同士が反応し、自己分解してしまうのに対し、オゾン貯蔵材の場合、オゾン分子が1分子ずつ水分子で構成された籠の中に包接されており、オゾン同士が反応しないためであると考えられる。この結果から、本発明のオゾン貯蔵方法により、高濃度のオゾンを長期間貯蔵できることが確認された。
【0043】
〔実施例3〕
実施例1で製造したオゾン貯蔵材(オゾン濃度:2.3g−O/L−貯蔵材)を27cmの立方体状に成形して食品保存材料31とし、図4に示すように、生鮮食品32としてのサンマとともに発泡スチロール製のトレー33に載せてラップ34により密封し、2日間のサンマ体表の一般生菌数を測定した。また、比較例として、オゾン氷(氷中オゾン濃度:3〜6mg−O/L−氷)及び普通の氷をそれぞれ27cmの立方体状に成形して食品保存材料とした場合の2日間のサンマ体表の一般生菌数を測定した。
これらの結果を図6に示す。
【0044】
図6から明らかなように、いずれの場合も経時的に生菌増殖が認められたが、オゾン貯蔵材、オゾン氷、氷の順で制菌効果が認められ、特にオゾン貯蔵材は生菌増殖速度が他に比べ著しく低かった。これは、(1)オゾン貯蔵材中に包接されたオゾン量が多い、(2)オゾン貯蔵材から放出されるオゾンにより容器内が陽圧状態になり、外部からの菌の混入が防止される等の理由によるものと考えられる。
【0045】
この結果から、本発明の食品保存材料及び食品保存方法では、高濃度のオゾンにより長期間食品の鮮度を維持できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明のオゾン貯蔵方法は、オゾンを高濃度に含有した状態で長期間安定して貯蔵することができ、他の殺菌剤、例えば、次亜塩素ソーダ等の塩素系殺菌剤の代替として広く使用することができる。また、半導体デバイス製造プロセスのうち、難酸化性電子材料の酸化処理や400℃以下での電子素子用高品位シリコン酸化膜形成処理等へ適用することもできる。さらに、本発明により貯蔵したオゾン貯蔵材は青果類や鮮魚等の鮮度維持、輸送等の分野、飲料貯蔵タンク等における殺菌、脱色、脱臭機能を有する食品保存材料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るオゾン貯蔵方法を行うシステムを示すフロー図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係るオゾン貯蔵方法を行うシステムを示すフロー図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係るオゾン貯蔵方法を行うシステムを示すフロー図である。
【図4】本発明の一実施形態による食品保存方法を示す概略図である。
【図5】実施例2におけるオゾン貯蔵材及びオゾン氷のオゾン濃度変化を示すグラフである。
【図6】実施例3におけるオゾン貯蔵材、オゾン氷及び氷を食品保存剤として用いた場合の2日間のサンマ体表の一般生菌数の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0048】
1,11,21…オゾン製造器
2,12,22…混合ガス供給管
3,13,23…反応槽
4…水供給管
5,15,25…オゾン貯蔵材の輸送管
6,16,26…オゾン貯蔵材の貯留槽
7,17,27…還流管
24…水噴霧器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンと水又は氷とを接触させながら所定の温度以下にすることによって、オゾンを取り込んだ固体状物質を形成することを特徴とするオゾンの貯蔵方法。
【請求項2】
前記オゾンと水又は氷との接触を、オゾンガス雰囲気中に水を添加することで行うことを特徴とする請求項1記載のオゾンの貯蔵方法。
【請求項3】
前記オゾンと水又は氷との接触を、所定の温度以下のオゾンガス雰囲気中に水を噴霧することで行うことを特徴とする請求項1記載のオゾンの貯蔵方法。
【請求項4】
前記オゾンと水又は氷との接触を、粉末状の氷を充填した容器にオゾンガスを加圧添加することで行うことを特徴とする請求項1記載のオゾンの貯蔵方法。
【請求項5】
前記オゾンを水又は氷に接触させる際の圧力が2MPa以上であり、温度が−3℃以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のオゾンの貯蔵方法。
【請求項6】
オゾンと水又は氷とを接触させながら所定の温度以下にすることを特徴とするオゾンを取り込んだ固体状物質の製造方法。
【請求項7】
オゾンを取り込んだ固体状物質からなることを特徴とする食品保存材料。
【請求項8】
オゾンを取り込んだ固体状物質とともに食品を包装することを特徴とする食品の保存方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−210881(P2007−210881A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−363(P2007−363)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】