説明

オゾンガス濃縮方法

【課題】 濃縮時でのオゾン分解反応を抑制し、かつ安全に濃縮できるオゾンガスを生成することを目的とする。
【解決手段】 内部に吸着剤(1)を充填してなる吸着筒(2)にオゾン発生器で生成したオゾン・酸素混合ガスを作用させて、吸着剤(1)にオゾンガスを選択吸着させ、この選択吸着されたオゾンガスを脱離させることでオゾンガスを濃縮精製するオゾンガス濃縮方法において、着筒(2)に供給するオゾン・酸素混合ガスをNOxレスとし、このNOxレスのオゾン・酸素混合ガスを非冷却の状態の吸着剤(1)に作用させてオゾンガスを吸着剤(1)に選択吸着させるとともに、オゾンガス脱離操作時に吸着筒(2)を真空引きすることで吸着剤(1)からオゾンガスを脱離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造設備等のオゾン消費設備に、所定濃度範囲に濃縮されたオゾンガスを供給する方法に関し、特にオゾン発生器(オゾナイザー)で発生させたオゾンガスを精製して所定濃度範囲の濃縮オゾンガスとして供給する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オゾンガスは、酸素ボンベからの酸素ガスや大気分離した酸素ガスをオゾン発生器に供給して発生させているが、酸素ガスボンベからの酸素ガスでオゾンガスを発生させても、オゾンガスは酸素ガス中に5〜10 vol%程度の濃度にしかならない。しかも、オゾンガスは自己分解性が強いことから、オゾンガス供給経路中で自己分解し、オゾンガス消費設備に供給された段階では、もっと低濃度になるうえ、その供給濃度も安定しないという性質がある。近年、半導体の製造分野では、基板等での酸化膜形成にオゾンの酸化力を利用することが増えているが、この場合、短時間のうちに適切な厚みの酸化膜を安定的に製膜するには、安定した中濃度のオゾンガスの供給が望まれる。
【0003】
そこで、近年オゾン発生器から発生するオゾンガスの濃度を少しでも高めるために、原料酸素中に少量の窒素ガスを添加するものが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特許第3628461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、原料酸素中に窒素ガスを添加した場合、オゾンガス供給経路を流れている間にオゾン濃度が低下しやすくなる。これは、オゾン発生時に生じたNOxがオゾン分解触媒として作用するためと考えられる。
さらに、その発生したオゾンガスの濃度が求める濃度に達していない場合には、オゾン吸着剤を使用するなどして濃縮することになるが、窒素ガスを添加させて生成したオゾンガスを濃縮すると、異常分解する危険性が高まるという問題もある。
【0005】
本発明は、このような点に着目して、濃縮時でのオゾン分解反応を抑制し、かつ安全に濃縮できるオゾンガスを生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために請求項1に記載の本発明は、内部に吸着剤を充填してなる吸着筒にオゾン・酸素混合ガスを作用させて、吸着剤にオゾンガスを選択吸着させ、この選択吸着されたオゾンガスを脱離させることでオゾンガスを濃縮精製するオゾンガス濃縮方法において、吸着筒(2)に供給するオゾン・酸素混合ガスをNOxレスとし、このNOxレスのオゾン・酸素混合ガスを非冷却の状態の吸着剤(1)に作用させてオゾンガスを吸着剤(1)に選択吸着させるとともに、オゾンガス脱離操作時に吸着筒を真空引きすることで吸着剤からオゾンガスを脱離させるようにしたことを特徴としている。
【0007】
ここで非冷却状態にある吸着剤とは、吸着剤の吸着性能を高めるために外部から熱エネルギーを供給することをやめる状態を指している。このため、吸着剤がオゾンと反応して発生する反応熱で昇温することを防止するための僅かな冷却は非冷却の範疇にある。
【0008】
請求項2に記載の本発明は、純酸素ガスを原料としてオゾンガスと酸素ガスとの混合ガスを生成することにより、NOxレスの混合ガスとしたことを特徴とし、請求項3に記載の発明は、窒素ガスを添加した原料ガスをオゾン発生器に供給して生成したオゾンガスと酸素ガスとの混合ガスからNOxを除去することによリNOxレスの混合ガスとしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、吸着筒に供給するオゾン・酸素混合ガスをNOxレスとし、冷却をすることなくいわゆる常温状態に保持した吸着剤に、そのNOxレスのオゾン・酸素混合ガスを作用させてオゾンガスを選択吸着させ、この選択吸着されたオゾンガスを吸着剤から脱離させることでオゾンガスを濃縮精製しているので、オゾン発生器でのオゾン発生時にNOxの発生がなくなるから、オゾンガスの自己分解を抑制することができるうえ、オゾンガスの濃縮時にも異常分解反応を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明方法を実施する装置の一例を示す系統図である。このオゾンガス濃縮装置は、内部にオゾンガスを選択吸着するシリカゲル等の吸着剤(1)を充填した吸着筒(2)と、純酸素ガスからなるオゾン原料ガス源(図示略)と吸着筒(2)とを連通接続するガス導入路(3)と、吸着筒(2)から導出された精製オゾンガス導出路(4)と、吸着筒(2)から導出されたスルーガスのガス排出路(5)とを有している。なお、本実施形態では吸着筒(2)は2基並列して配置してあり、一方の吸着筒が吸着工程時には他方の吸着筒が脱離工程になるように構成してある。
【0011】
ガス導入路(3)は各吸着筒(2)にそれぞれガス導入弁を介して接続されており、このガス導入路(3)には上流側から順に、オゾン発生器(6)とマスフローコントローラとが配置してある。そして、オゾン発生器(6)で発生したオゾン・酸素混合ガスを一定の流量で各吸着筒(2)にガス導入弁の切換え制御により択一的に供給するようにしてある。
【0012】
一方、精製オゾンガス導出路(4)は各吸着筒(2)にガス導出弁を介して接続されており、この精製オゾンガス導出路(4)には、ダイアフラム型真空ポンプ(7)、バッファタンク(8)、マスフローコントローラ(9)、流路開閉弁(10)が吸着筒側から順に配置してある。そして、吸着筒(2)とダイアフラム型真空ポンプ(7)とがガス導出弁の切換え制御により択一的に連通するようにしてある。
【0013】
また、ガス排出路(5)は精製オゾンガス導出路(4)から分岐する状態で連出されており、このガス排出路(5)にはオゾン分解器(11)が配置してあり、このオゾン分解器(11)の出口は大気に開口している。そして、また、ガス排出路(5)のオゾン分解器(11)よりも上流側から分岐導出された循環路(12)には循環ポンプ(13)が装着してあり、この循環路(12)はオゾン発生器(6)の上流側に接続されている。
【0014】
このように構成したオゾンガス濃縮装置では、例えば液体酸素を気化させることで得られた純酸素をオゾン発生器(6)に供給することで、オゾン発生器(6)で純酸素ガスをオゾン化してオゾン・酸素混合ガスを生成する。純酸素を原料ガスとしてオゾン化した場合には、生成されたオゾン・酸素混合ガスにはNOxは含まれていない。このオゾン・酸素混合ガスを一方の吸着筒(2)に供給して、吸着筒(2)内を流通させる。このとき、吸着剤(1)は外部から加熱や冷却の熱エネルギーを付与されることなく、いわゆる常温状態(自然放置状態)を維持している。吸着筒(2)に供給されたオゾン・酸素混合ガスは、そのうちのオゾンガス成分が吸着剤(1)に吸着され、吸着され残った一部のオゾンガスとキャリアガスとしての酸素ガスがガス排出路(5)からオゾン分解器(11)に送り込まれる。
【0015】
オゾン・酸素混合ガスを吸着筒(2)に所定時間流して、吸着剤(1)での吸着量が所定量になると、今まで、オゾン・酸素混合ガスを流していた吸着筒(2)でのガス導入弁とガス排出弁とを閉弁するとともに、ガス導出弁を開弁して、吸着筒(2)内を真空ポンプ(7)に連通させて、真空脱離により吸着剤(1)からオゾン成分を脱離し、その脱離した精製オゾンガスをバッファタンク(8)に送給する。
【0016】
バッファタンク(8)に一旦貯留することで、吸着筒(2)からの脱離オゾンガス濃度に濃度変化があっても、バッファタンク(8)内で平均化させることができ、一定範囲の濃度を維持した状態でオゾン消費設備等に供給することができる。
【0017】
この一方の吸着筒(2)が脱離操作を行っている間に他方の吸着筒(2)は吸着操作を行い、2基の吸着筒(2)で吸着−脱離を交互に行うことにより、連続して精製オゾンガスを取り出すようにしている。なお、この吸着筒(2)は3基以上であってもよく、3基以上の吸着筒(2)での各弁切換えタイミングを制御することで、連続的に精製オゾンガスを取り出すことができる。
【0018】
なお、この場合の吸着剤としては、金属成分の少ない高純度シリカゲルが好ましいが、一般的なシリカゲルやゼオライト等の吸着剤であってもよい。
【0019】
また、オゾン生成原料としての純酸素としては、前述の液体酸素を気化させたもののほか、不純物の混合濃度が100ppmよりも少ない高純度酸素ガスを使用することができる。
【0020】
さらに、オゾン生成原料として空気分離等で得られた酸素ガスを用いたり、窒素ガスを微量添加した酸素ガスを用いたりし、オゾン発生器(6)でオゾン−酸素混合ガス生成直後にNOx除去するようにしてもよい。
【0021】
図2は、窒素ガスを0.5 vol%添加した酸素ガスを原料として放電式オゾン発生器に供給して生成したオゾン−酸素混合ガスと、窒素ガスを添加することなく酸素ガスを原料として放電式オゾン発生器に供給して生成したオゾン−酸素混合ガスとをそれぞれ内容積10リットルのステンレス容器に封入圧力約0.147MPa(1100Torr)で封入した場合のオゾンガス濃度の時間変化を示す。
【0022】
図2からも分かるように、窒素ガスを添加した酸素ガスを原料としてオゾンガスを生成すると、時間の経過とともに、オゾンガス濃度が低下しているのに対し、窒素ガスを添加しないものでは、時間経過にかかわらず、ほとんどオゾンガス濃度に変化がない。これは、オゾン発生器でオゾンを発生させる際に、窒素酸化物(NOx)が生成され、このNOxがオゾンの自己分解に対する分解触媒として作用していると考えられる。
【0023】
図3は、オゾン発生器から発生したオゾンを濃縮する場合での異常分解発生状態に関する生成したオゾンガスの発生濃度と添加した窒素濃度との関係を示す関係図である。この場合、オゾン濃度が400g/m(18.7 vol%)となるように濃縮した。
【0024】
図3から分かるように、窒素ガスを100ppm(0.01 vol%)よりも多く添加して、発生時のオゾンガス濃度を高めると、濃縮時に異常分解(爆発)を起こすが、窒素ガスの添加量が100ppm(0.01 vol%)よりも少ない場合には、濃縮しても異常分解は起こらないことが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の技術は、安定した濃度のオゾンガスを必要とする半導体製造設備等のオゾン消費設備に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明方法を実施する装置の一例を示す系統図である。
【図2】発生オゾンガスの時間経過による濃度変化を示すグラフである。
【図3】発生したオゾンガスの濃縮に伴う異常分解発生状況を説明する図である。
【符号の説明】
【0027】
1…吸着剤、2…吸着筒。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に吸着剤(1)を充填してなる吸着筒(2)にオゾン発生器で生成したオゾン・酸素混合ガスを作用させて、吸着剤(1)にオゾンガスを選択吸着させ、この選択吸着されたオゾンガスを脱離させることでオゾンガスを濃縮精製するオゾンガス濃縮方法において、
吸着筒(2)に供給するオゾン・酸素混合ガスをNOxレスとし、このNOxレスのオゾン・酸素混合ガスを非冷却の状態の吸着剤(1)に作用させてオゾンガスを吸着剤(1)に選択吸着させるとともに、オゾンガス脱離操作時に吸着筒(2)を真空引きすることで吸着剤(1)からオゾンガスを脱離させるようにしたことを特徴とするオゾンガス濃縮方法。
【請求項2】
純酸素ガスを原料ガスとしてオゾン発生器に供給してオゾンガスと酸素ガスとの混合ガスを生成することにより、NOxレスのオゾン・酸素混合ガスとした請求項1に記載のオゾンガス濃縮方法。
【請求項3】
窒素ガスを添加した原料ガスをオゾン発生器に供給して生成したオゾンガスと酸素ガスとの混合ガスからNOxを除去することにより、NOxレスのオゾン・酸素混合ガスとした請求項1に記載のオゾンガス濃縮方法。
【請求項4】
吸着剤(1)を高純度シリカゲルで構成した請求項1〜4のいずれか1項に記載のオゾンガス濃縮方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−297130(P2008−297130A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141184(P2007−141184)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000158312)岩谷産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】