説明

オゾン安定化剤、オゾン安定化水溶液とその製造方法

【課題】保管時や運搬時においても、水中でのオゾンの安定性を向上させ、オゾンの気散を抑制するオゾン安定化剤、およびこれを含有するオゾン安定化水溶液とその製造方法を実現する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される四級アンモニウム塩型界面活性剤を含有することを特徴とするオゾン安定化剤。
[化1]


はアルキル基、アルケニル基、ヒドロキシアルキル基、またはエステル基、アミド基、エーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種により分断された分断基を含有するアルキル基であり、Rはアルキル基またはアルケニル基であり、XはCHSO、CSO、CHCOO、CCOO、OH、またはハロゲンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中でオゾンを安定に溶存させるオゾン安定化剤、およびオゾン安定化水溶液とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの分野で殺菌、漂白、脱臭、ウィルスの不活性化、有機物除去などの処理に、オゾン水が利用されている。オゾン水は、水にオゾンガスを吹き込むことで溶け込ませたり、水の電気分解によりオゾンを発生させ、直接水に溶け込ませたりする方法などで調製される。
しかし、オゾンは非常に不安定な気体であり、また水への溶解性が非常に低いため、気液界面が接触することで大気中にオゾンが気散しやすい。従って、オゾン水の効果を発揮させるには大規模なオゾン発生装置や、より高濃度のオゾンガスを発生させる装置が必要であり、その開発が行われている。
【0003】
ところで、オゾン水は通常、有機物と反応しやすいため、殺菌などの処理の際に有機物が混入すると、瞬時に分解してオゾンが消失することが知られている。
そこで、オゾン水に関して多くの研究がなされている。例えば、非特許文献1では、オゾン水にカルシウム等の金属イオンを含有させることにより、有機物との反応性が低くなることが報告されている。このように、金属イオンを用いることで、水中でオゾンを安定に溶存させておくことが期待できる。
また、特許文献1では、オゾン水にアニオンまたはノニオン界面活性剤を添加することにより、オゾンの安定性を向上させた殺菌洗浄剤組成物が開示されている。これによれば、オゾン水が、有機物である界面活性剤を含有していても、界面活性剤を含有していないオゾン水に比べてオゾン濃度の安定性が向上する。
【特許文献1】特開平6−313194号公報
【非特許文献1】Gurol、「Ozone Science & Engineering」、(アメリカ合衆国)、International Ozone Association、1988年、第10号、p.277‐290
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1に記載の手段では、水中でのオゾンの安定性が必ずしも充分ではなかった。
特に、オゾン水の保管時や、振動や撹拌が生じやすい運搬時において、水中でのオゾンの安定性が低下し、オゾンが気散しやすかった。
【0005】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、保管時や運搬時においても、水中でのオゾンの安定性を向上させ、オゾンの気散を抑制するオゾン安定化剤、およびこれを含有するオゾン安定化水溶液とその製造方法の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、四級アンモニウム塩型の界面活性剤が、オゾンの安定化に効果的であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明のオゾン安定化剤は、下記一般式(1)で表される四級アンモニウム塩型界面活性剤を含有することを特徴とする。
【0007】
【化1】

【0008】
式(1)中、Rは炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、またはエステル基、アミド基、エーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種により分断された分断基を含有し、これら分断基も含めて炭素数が2〜24のアルキル基であり、Rは炭素数1〜24のアルキル基または炭素数2〜24のアルケニル基であり、XはCHSO、CSO、CHCOO、CCOO、OH、またはハロゲンである。
【0009】
また、前記一般式(1)のRが、炭素数6〜22のアルキル基、炭素数6〜22のアルケニル基、炭素数6〜22のヒドロキシアルキル基、またはエステル基、アミド基、エーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種により分断された分断基を含有し、これら分断基も含めて炭素数が6〜24のアルキル基であることが好ましい。
【0010】
また、本発明のオゾン安定化水溶液は、前記オゾン安定化剤と、オゾンと、水とを含有することを特徴とする。
さらに、本発明のオゾン安定化水溶液の製造方法は、オゾンが溶存する水中に、前記オゾン安定化剤を添加することを特徴とする。
また、本発明のオゾン安定化水溶液の製造方法は、前記オゾン安定化剤を含む水中に、オゾンを曝気させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、保管時や運搬時においても、水中でのオゾンの安定性を向上させ、オゾンの気散を抑制するオゾン安定化剤、およびこれを含有するオゾン安定化水溶液とその製造方法を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
[オゾン安定化剤]
本発明のオゾン安定化剤は、下記一般式(1)で表される四級アンモニウム塩型界面活性剤を含有する。
【0013】
【化2】

【0014】
は、炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、またはエステル基、アミド基、エーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種により分断された分断基を含有し、これら分断基も含めて炭素数が2〜24のアルキル基(以下、「炭素数が2〜24の分断基含有アルキル基」という場合がある。)である。好ましくは、炭素数6〜22のアルキル基、炭素数6〜22のアルケニル基、炭素数6〜22のヒドロキシアルキル基、または炭素数が6〜24の分断基含有アルキル基である。
【0015】
炭素数6〜22のアルキル基としては、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基などが挙げられる。
炭素数6〜22のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
炭素数6〜22のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシイコシル基、ヒドロキシドコシル基などが挙げられる。
としては、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が好ましく、ドデシル基が特に好ましい。
【0016】
は、炭素数1〜24のアルキル基または炭素数2〜24のアルケニル基である。
炭素数1〜24のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基などが挙げられる。
炭素数2〜24のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。
としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。
【0017】
Xは、CHSO、CSO、CHCOO、CCOO、OH、またはハロゲンである。
ハロゲンとしては、Cl、Br、Iなどが挙げられる。
Xとしては、CHSO、Clが好ましいく、Clが特に好ましい。
【0018】
このような四級アンモニウム塩型界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレン付加アルキルトリメチルアンモニウム塩などが挙げられる。中でもアルキルトリメチルアンモニウム塩が好ましい。さらに好ましくは、アルキル基の炭素数が6〜22のアルキルトリメチルアンモニウム塩である。このようなアルキルトリメチルアンモニウム塩の具体例としては、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、オクタデシルトリメチルアンモニウムクロリド、イコシルデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ドコシルデシルトリメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。中でも、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
これら四級アンモニウム塩型界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
四級アンモニウム塩型界面活性剤の含有量は、オゾン安定化剤100質量%中、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%が最も好ましい。四級アンモニウム塩型界面活性剤の含有量が上記範囲内であれば、オゾンの気散をより抑制し、水中でのオゾンの安定性をより向上できる。
【0020】
本発明のオゾン安定化剤は、上述した四級アンモニウム塩型界面活性剤以外にも、オゾンとの反応性の低い成分を含有してもよい。
オゾンとの反応性の低い成分としては、例えば、無機塩、無機酸、有機酸、界面活性剤などが挙げられる。
無機塩としては、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム、臭化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硼酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化カリウム、フッ化カリウム、臭化カリウム、硫酸カリウム、硼酸カリウム、硝酸カリウム、酢酸カリウム、塩化カルシウム、フッ化カルシウム、臭化カルシウム、硫酸カルシウム、硼酸カルシウム、硝酸カルシウム、酢酸カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
無機酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、ホウ酸などが挙げられる。
有機酸としては、クエン酸、乳酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸、グリコール酸、グルタル酸類、アジピン酸、フタル酸、グリセリン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒドロキシアクリル酸、オキシ酪酸、没食子酸類、グルコン酸類、アミノ酸、タンニン酸類、ベンジル酸類、サリチル酸類、ロスマリン酸類などが挙げられる。
界面活性剤としては、カチオン界面活性剤としてアルキルアミン塩、アルキル四級アンモニウム塩;アニオン界面活性剤としてアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェノールスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、アルキルジフェニルスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、アシルアミドアルキル硫酸塩、アルキル燐酸エステル塩、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、高級脂肪酸塩;非イオン界面活性剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、モノアルキル−ジナトリウムスルホ琥珀酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、アルキルアミンオキサイド、アルキルグリコシド、プルロニック型界面活性剤;両性界面活性剤としてアルキルジメチルアミンオキシド、アルキルジメチルアミノ脂肪酸ベタイン、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリウムベタインなどが挙げられる。
これらオゾンとの反応性の低い成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
オゾンとの反応性の低い成分の含有量は0質量%でもよいが、オゾン安定化剤がオゾンとの反応性の低い成分を含有する場合は、オゾン安定化剤100質量%中、0.01〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.01〜10質量%が特に好ましい。オゾンとの反応性の低い成分の含有量が50質量%を越えると、オゾンと反応する場合がある。
【0022】
[オゾン安定化水溶液]
本発明のオゾン安定化水溶液は、上述したオゾン安定化剤と、オゾンと、水とを含有する。
オゾン安定化剤の濃度は、オゾン安定化水溶液中に1〜50ppmが好ましく、1〜20ppmがより好ましい。オゾン安定化剤の濃度が1ppm未満であると、容器への付着等により、安定化効果が発現されない場合がある。一方、濃度が50ppmを越えると、オゾンとの反応性が促進され、安定化効果を示さなくなる場合がある。
なお、「ppm」は、質量基準の割合を示している。
【0023】
オゾンの濃度は、オゾン安定化水溶液中に0.01〜5ppmが好ましい。また、オゾン発生装置の能力や、環境等への影響を考慮すると、オゾンの濃度は0.05〜0.1ppmがより好ましい。オゾンの濃度が0.01ppm未満であると、オゾンの効果が著しく低下する場合がある。一方、濃度が5ppmを越えると、オゾン臭等の問題により実使用には適さなくなる場合がある。
【0024】
このようなオゾン安定化水溶液は、25℃におけるpHが2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜4である。pHが2未満であると、実使用条件での取り扱いが困難となる可能性がある。一方、pHが8を越えると、オゾンの分解が促進される場合がある。
【0025】
本発明のオゾン安定化水溶液は、オゾン安定化剤の効果を損なわない範囲内で、無機塩、無機酸、有機酸、界面活性剤、香料などのその他の成分を含有してもよい。
無機塩、無機酸、有機酸、界面活性剤としては、先に例示した各種無機塩、無機酸、有機酸、界面活性剤が挙げられる。
香料としては、公知のものを適宜用いることができる。
その他の成分の濃度は、オゾン安定化水溶液中に0.01〜1000ppmが好ましい。
【0026】
<オゾン安定化水溶液の製造方法>
本発明のオゾン安定化水溶液は、オゾンが溶存する水(以下、「オゾン水」という場合がある。)中に、オゾン安定化剤を添加する方法、オゾン安定化剤を含む水中にオゾンを曝気させる方法などにより得られる。
本発明において、オゾン水の調製方法としては特に制限されないが、例えば、オゾン発生器を用いて水にオゾンガスを吹き込み溶け込ませる方法(曝気させる方法)、水の電気分解によりオゾンを発生させ、直接水に溶け込ませる方法などが挙げられる。
【0027】
また、オゾン安定化剤を含む水中にオゾンを曝気させる方法においては、予めオゾン安定化剤を水に溶解させておき、これにオゾンガスを曝気させればよい。オゾンガスの曝気方法は特に制限されないが、例えば、オゾン発生器を用いて水にオゾンガスを曝気させる方法、水の電気分解によりオゾンを発生させ、直接水に溶け込ませる方法などが挙げられる。
【0028】
このようにして得られるオゾン安定化水溶液は、殺菌、漂白、脱臭、ウィルスの不活性化、有機物の除去などの優れた効果を発揮できる。
【0029】
このように、本発明のオゾン安定化剤によれば、特定の構造をもつ四級アンモニウム塩型界面活性剤を含有することにより、水中でのオゾンの安定性を向上させ、オゾンの気散を抑制できる。特に、オゾン水を保管する場合や、オゾン水の運搬の際に振動や撹拌が生じる場合であっても、本発明のオゾン安定化剤を添加させておけば、水中でのオゾンの安定性を向上させ、オゾンの気散を抑制できる。
また、本発明のオゾン安定化剤によれば、オゾン水への添加量を低減でき、コスト面においても有用な添加剤となる。
さらに、本発明のオゾン安定化剤およびオゾン安定化水溶液は、家庭品、食品、農業、医療など多岐にわたる分野への実用化が可能である。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
ここで、以下の実施例と比較例に用いた添加剤および試薬を示す。
四級アンモニウム塩型界面活性剤:ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業株式会社製)。
四級アンモニウム塩型界面活性剤:ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成工業株式会社製)。
ノニオン界面活性剤:ラウリルアミンオキサイド、「Aromox DM12D―W」(ライオン株式会社製)。
アニオン界面活性剤:ドデシル硫酸ナトリウム(東京化成工業株式会社製)。
色素:acidblue92(ACROSORGANICS社製)。
【0032】
[試験例1:オゾン水中のオゾンの残存率の測定]
<実施例1−1>
超純水製造装置(ADVANETC製、「DSR−210」)により製造した水に、オゾン発生器(株式会社ベテル製、「ドクターオゾン」)を用いてオゾンガスを曝気し、平衡濃度のオゾン水(濃度:0.05〜0.1ppm)を調製した。オゾンガスの曝気を停止した後、オゾン安定化剤として表1に示す添加剤(ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド;以下「DTAC」と表記する場合もある。)を、添加剤の濃度が10ppmとなるように添加した。
気相パージ・紫外線吸収式溶存オゾンモニタ(荏原実業株式会社製、「PL―603」)にて、添加剤を添加してから20分経過後のオゾン水中のオゾンの残存率の測定を行った。結果を表1に示す。
【0033】
<実施例1−2、比較例1−1〜1−3>
添加剤の種類を、表1に示すものに変更した以外は、実施例1−1と同様の操作を行い、オゾンの残存率を測定した。結果を表1に示す。
なお、比較例1−1は、添加剤を用いない場合であり、オゾン水を調整してから20分経過後のオゾン水中のオゾンの残存率を測定した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から明らかなように、添加剤として本発明のオゾン安定化剤を用いた場合(実施例1−1、1−2)、20分経過後もオゾンの残存率が高く、水中でのオゾンの安定性が持続していた。
一方、添加剤を添加しない場合(比較例1−1)は、オゾンの残存率が著しく低下した。
また、添加剤として、ノニオン界面活性剤(ラウリルアミンオキサイド)やアニオン界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム)を用い場合(比較例1−2、1−3)は、実施例に比べてオゾンの残存率が低下した。
このように、本発明のオゾン安定化剤は、従来、オゾンの安定化に効果を発揮するとされていた、ノニオン界面活性剤やアニオン界面活性剤に比べて、最大で約2倍のオゾンの安定化効果を示すことが判った。
【0036】
[試験2:色素脱色試験]
<実施例2−1>
オゾン安定化水溶液を用いて、色素脱色試験を下記の手順で実施し、色素の脱色能(吸光度)を測定することにより、経時変化よるオゾンの残存率を評価した。なお、オゾン安定化剤として、DTACを使用した。
予め、実施例1−1と同様にして、平衡濃度のオゾン水(濃度:0.05〜0.1ppm)を調製し、DTACを添加して試験液(オゾン安定化水溶液)とした。
その後、空気ガス(1L/分)を曝気し、曝気開始から1分経過後の試験液を100ml採取し、濃度100ppmの色素(acidblue92)水溶液に添加した。この溶液を分光光度計(株式会社島津製作所製、「UV−160」)にて測定し、波長570nmにおける吸光度を求めた。同様の操作(試験液を採取し、吸光度を測定する操作)を、空気ガスの曝気開始から20分経過するまで5分毎に行った。結果を図1に示す。
なお、波長570nmにおける濃度100ppmの色素水溶液の吸光度は、0.023であった。
【0037】
<比較例2−1>
オゾン安定化剤を添加しなかった以外は、実施例2−1と同様にして、色素脱色試験を行った。結果を図1に示す。
【0038】
図1より明らかなように、オゾン安定剤として四級アンモニウム塩型界面活性剤であるDTACを用いたオゾン安定化水溶液の場合(実施例2−1)、オゾン安定剤を添加しなかった場合(オゾン水の場合、比較例2−1)と比較して、各時間におけるサンプルの吸光度が小さく、色素を脱色することが判った。また、20分経過後のオゾン安定化水溶液であっても、色素の脱色効果を発揮していた。従って、オゾン水にオゾン安定化剤を添加することにより、水中でのオゾンの安定性が持続され、オゾンの気散が抑制されることが判った。
一方、オゾン水の場合は、時間が経つに連れて吸光度が大きくなり、色素の脱色効果が低下した。特に、20分経過後のオゾン水では、色素の脱色効果が発揮されず、色素水溶液の吸光度と同じ値(0.023)を示した。これより、オゾン安定化剤を添加しない場合は、時間の経過と共に水中からオゾンが気散し、約20分で全てのオゾンが気散することが判った。
【0039】
[試験例3:染色布の脱色試験1]
<実施例3−1>
オゾン安定化水溶液を用いて、染色布の脱色試験を下記の手順で実施し、オゾン安定化水溶液の脱色能(Z値)を測定した。なお、オゾン安定化剤として、DTACを使用した。また、染色布として、白色布を色素水溶液(濃度:100ppm)に10分浸漬し、自然乾燥したものを用いた。
予め、実施例1−1と同様にして、平衡濃度のオゾン水(濃度:1ppm)を調製し、DTACを添加して試験液(オゾン安定化水溶液)とした。次いで、試験液を1分間撹拌させた後、染色布にスプレーした。スプレー後の染色布を、色差計(日本電色工業社製、「Z−90」)にて測定し、Z値を求めた。結果を図2に示す。
【0040】
<比較例3−1>
実施例1−1と同様にして製造した水を染色布にスプレーした以外は、実施例3−1と同様にして、染色布の脱色試験を行った。結果を図2に示す。
【0041】
<比較例3−2>
オゾン安定化剤を添加しなかった以外は、実施例3−1と同様にして、染色布の脱色試験を行った。結果を図2に示す。
【0042】
図2より明らかなように、オゾン安定剤として四級アンモニウム塩型界面活性剤であるDTACを用いたオゾン安定化水溶液の場合(実施例3−1)、オゾンガスを曝気していない水(比較例3−1)や、オゾン水(比較例3−2)の場合に比べてZ値が高く、染色布を脱色していることが判った。
一方、オゾン水の場合は、オゾンガスを曝気していない水とほぼ同様の脱色能(Z値)であった。これは、染色布にスプレーする前にオゾン水を撹拌させたため、オゾンが気散したことによるものと考えられる。
このように、本発明のオゾン安定化剤を用いることで、オゾン安定化水溶液を撹拌させてオゾンを気散しやすい状態にしても、水中でのオゾンの安定性を維持でき、オゾンの気散を抑制できた。
【0043】
[試験例4:染色布の脱色試験2]
<実施例4−1>
オゾン安定化水溶液を用いて、染色布の脱色試験を下記の手順で実施し、オゾン安定化水溶液の脱色能(Z値)を測定した。なお、オゾン安定化剤および染色布は、先の試験例3と同様のものを用いた。
予め、実施例1−1と同様にして、平衡濃度のオゾン水(濃度:1ppm)を調製し、DTACを添加して試験液(オゾン安定化水溶液)とした。試験液に染色布を3分間浸漬させた後、染色布を、色差計(日本電色工業社製、「Z−90」)にて測定し、Z値を求めた。結果を図3に示す。
【0044】
<比較例4−1>
実施例1−1と同様にして製造した水に染色布を浸漬させた以外は、実施例4−1と同様にして、染色布の脱色試験を行った。結果を図3に示す。
【0045】
<比較例4−2>
オゾン安定化剤を添加しなかった以外は、実施例4−1と同様にして、染色布の脱色試験を行った。結果を図3に示す。
【0046】
図4より明らかなように、オゾン安定剤として四級アンモニウム塩型界面活性剤であるDTACを用いたオゾン安定化水溶液の場合(実施例4−1)、オゾンガスを曝気していない水(比較例4−1)や、オゾン水(比較例4−2)の場合に比べてZ値が高く、染色布を脱色していることが判った。
一方、オゾン水の場合は、オゾンガスを曝気していない水よりはZ値が高かったが、オゾン安定化水溶液の場合に比べてZ値が低く、脱色能が劣っていた。これは、染色布を浸漬させている間に、徐々にオゾンが気散したことによるものと考えられる。
このように、本発明のオゾン安定化剤を用いることで、オゾン安定化水溶液を3分間放置しておいても、水中でのオゾンの安定性を維持でき、オゾンの気散を抑制できた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】試験例2の結果を示すグラフである。
【図2】試験例3の結果を示すグラフである。
【図3】試験例4の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される四級アンモニウム塩型界面活性剤を含有することを特徴とするオゾン安定化剤。
【化1】

式(1)中、Rは炭素数1〜24のアルキル基、炭素数2〜24のアルケニル基、炭素数1〜24のヒドロキシアルキル基、またはエステル基、アミド基、エーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種により分断された分断基を含有し、これら分断基も含めて炭素数が2〜24のアルキル基であり、Rは炭素数1〜24のアルキル基または炭素数2〜24のアルケニル基であり、XはCHSO、CSO、CHCOO、CCOO、OH、またはハロゲンである。
【請求項2】
前記一般式(1)のRが、炭素数6〜22のアルキル基、炭素数6〜22のアルケニル基、炭素数6〜22のヒドロキシアルキル基、またはエステル基、アミド基、エーテル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種により分断された分断基を含有し、これら分断基も含めて炭素数が6〜24のアルキル基であることを特徴とする請求項1に記載のオゾン安定化剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオゾン安定化剤と、オゾンと、水とを含有することを特徴とするオゾン安定化水溶液。
【請求項4】
オゾンが溶存する水中に、請求項1または2に記載のオゾン安定化剤を添加することを特徴とするオゾン安定化水溶液の製造方法。
【請求項5】
請求項1または2に記載のオゾン安定化剤を含む水中に、オゾンを曝気させることを特徴とするオゾン安定化水溶液の製造方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−201615(P2008−201615A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38404(P2007−38404)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】