説明

オゾン水製造方法及び製造装置

【課題】オゾン水製造方法及び装置を提供する。
【解決手段】オゾン発生手段と、流体を供給する手段と、該供給される流体にオゾンを溶解させるオゾン溶解手段と、該オゾン溶解手段で溶けきれなかったオゾンを分離する気液分離手段を有するオゾン水製造方法において、 前記オゾン溶解手段と前記気液分離手段が同一ライン上でひとつのユニットを構成し、少なくとも2つの該ユニットが、前記流体を供給する手段から並列に分岐した各ライン上にそれぞれ配置され、一方のユニットの該気液分離手段で分離されたオゾンが他方のユニットのオゾン溶解手段に移送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、余剰オゾンを利用したオゾン水製造方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のオゾン水製造の機構は図5に示すように、オゾン発生手段101からのオゾンを含むガスは、オゾン溶解手段102により水中に溶解混合される。このオゾン混合水は気液分離手段103に入り、水に溶解しきれないオゾンは余剰オゾンとして分離される。この余剰オゾンは廃オゾン処理手段104を通り、酸素に還元されて大気中に放出される。そして、気液分離手段103からオゾン水が供給される。
【0003】
しかしながら、上記構成のオゾン水製造装置では、オゾン発生手段101から供給されるオゾンの40〜50%程度が溶解するのみで、溶解しきれないオゾンは廃オゾン処理手段104により酸素に還元され、大気中に放出されてしまうという問題があった。
【0004】
この問題に対して、オゾン発生手段と、加圧供給される水中にオゾンを溶解させる2個のオゾン溶解手段と、オゾン水中の余剰オゾンを分離する余剰オゾン分離手段とから構成され、該余剰オゾン分離手段の給水口に連結する水供給配管に、2列の並列配管部を形成して、それぞれに前記オゾン溶解手段を介装するとともに、一方の前記オゾン溶解手段には前記オゾン発生手段を接続し、他方の前記オゾン溶解手段には、前記余剰オゾン分離手段から排出されるオゾンを帰還させて、オゾン溶解率を高めるようにしたオゾン水製造装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このオゾン水製造装置201(図6参照)は、余剰オゾン分離装置202で分離されたオゾンを、オゾン分解装置228で酸素に還元して大気に放出することなくエジェクタ216に帰還させて溶解させるので、余剰オゾンを効果的に活用して、オゾン溶解率の高いオゾン水を製造することができる。
【0005】
しかし、オゾン帰還パイプ224により帰還したオゾンは水道水に溶解混合され、給水口203の手前で合流し、再び、給水口203から余剰オゾン分離装置202のオゾン水タンク205に溜まることになり、低濃度となった帰還オゾンの余剰オゾンが三度分離されることとなり、帰還オゾンが希釈されるという問題がある。また、並列配管部214aのエジェクタ216のノズルの口径とディヒューザーの直径を、並列配管部214bのものより広げるとともに、並列配管部214aの水道水量を多くすることにより、オゾン混合率を一定としているが、並列配管部214bの水道水量が少なくなればエジェクタ216での帰還オゾンの引き込み力が小さくなり、結果、帰還オゾンが混合溶解できない問題が新たに生じることとなる。
【0006】
また、複数のオゾン溶解手段と気液分離手段を設け、前記オゾン溶解手段の1つでオゾン発生手段から流出するオゾンガスを含む気体を水系統から供給される水中に吹き込んでオゾンを溶解し、得られたオゾン含有水から未溶解のオゾンガスを含む気体成分を気液分離手段で分離し、分離した気体成分を他のオゾン溶解手段に供給し、そこで水系統から供給される水中に吹き込んでオゾンガスを溶解するように構成したことを特徴とするオゾン水製造システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
前記オゾン水製造システムのプロセスの一つとして、水系統304に加えて他の水系統304aを設け、水系統304に設けた気液分離手段302で分離したオゾンを高濃度で含む気体成分を他の水系統304aに設けた他のオゾン溶解手段302aに供給するプロセスがある(図7参照)。図7の上側に示す水系統304には、循環ポンプ329、オゾン溶解手段302、気液分離手段307およびオゾン利用設備305上流側から下流側に順に設けられ、オゾン溶解手段302にはオゾン発生手段301からのオゾンを含む気体が吹き込まれる。さらに循環ポンプ329の入口側には原水供給装置303からの水系統304が合流する。図4の下側に示す他の系統304aには他の循環ポンプ329a、他のオゾン溶解手段302aおよび他のオゾン利用設備305aが上流側から下流側に順に設けられ、他のオゾン溶解手段302aには前記気液分離手段307で分離されたオゾンを高濃度で含む気体成分が吹き込まれる。さらに他の循環ポンプ329aの入口側には他の原水供給装置303aからの他の水系統304aが合流する。循環ポンプ329を運転することにより、水系統304の系統水はオゾン溶解手段302流入し、そこでオゾン発生手段301からのオゾンを含む気体が吹き込まれ、水系統304の下流側にオゾン水と気体成分の気液混合体が流出する。気液混合体は次いで気液分離手段307に流入し、そこでオゾンを高濃度で含む気体成分がオゾン水から分離される。オゾン水はそれより下流側に設けたオゾン利用設備305に流入し、分離された気体成分は配管fから他の水系統304aに設けた他のオゾン溶解手段302aに流入する。一方、他の循環ポンプ329aを運転することにより、他の水系統304aの系統水は他のオゾン溶解手段302aに流入し、そこで前記気液分離手段307からのオゾンガスを含む気体成分が吹き込まれ、その下流側にオゾン水と気体成分の気液混合体が流出する。気液混合体は次いで他のオゾン利用設備305aに流入され、使用済みの比較的低濃度のオゾン水が下流側に排出する。そして排出したオゾン水は他の循環ポンプ329aを経て再び他のオゾン溶解手段302aに循環する。
【0008】
このように構成したオゾン水製造システムによれば、オゾン発生手段で発生したオゾンガスを無駄に捨てることなく再利用するので、従来のシステムより運転コストを大幅に低下することができ、オゾンの利用率が極めて高いのでオゾン発生手段の容量も小さくできるが、他の水系統304aを設ける為に別途他の原水供給装置が必要不可欠であり、システムが増大し且つ複雑となり、結果として設置コスト、ランニングコストも高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2976875号公報
【特許文献2】特開2004−188246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、溶解しきれない余剰オゾンを効果的に活用し、低コストで且つオゾン溶解効率の高いオゾン水製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
オゾン発生手段と、流体を供給する手段と、該供給される流体にオゾンを溶解させるオゾン溶解手段と、該オゾン溶解手段で溶けきれなかったオゾンを分離する気液分離手段を有するオゾン水製造方法において、
前記オゾン溶解手段と前記気液分離手段が同一ライン上でひとつのユニットを構成し、少なくとも2つの該ユニットが、前記流体を供給する手段から並列に分岐した各ライン上にそれぞれ配置され、一方のユニットの該気液分離手段で分離されたオゾンが他方のユニットのオゾン溶解手段に移送されることを第1の特徴とする。
【0012】
各ユニットのオゾン溶解手段を第一オゾン溶解手段、第二オゾン溶解手段とし、該第一オゾン溶解手段の吸込圧力(負圧)と該第二オゾン溶解手段の吸込圧力(負圧)の比が、以下の関係式を満たすことを第2の特徴とする。
A/B≧0.28 (1)
A:第一オゾン溶解手段の吸込圧力(ゲージ圧)
B:第二オゾン溶解手段の吸込圧力(ゲージ圧)
【0013】
前記第一オゾン溶解手段の吸込圧力(ゲージ圧)が−5kPa以下であることを第3の特徴とし、前記第一オゾン溶解手段を通過する流体の最大線速度が5.42m/sec以上、かつ、流体の通過する方向を軸とする軸に対する最大断面積と最小断面積比が、以下の関係式を満たすことを第4の特徴とする。
C/D≧2.2 (2)
C: 断面積の最大値
D: 断面積の最小値
【0014】
オゾン発生器と、流体供給装置と、該供給装置により供給される流体にオゾンを溶解させるオゾン溶解装置と、該オゾン溶解装置で溶けきれなかったオゾンを分離する気液分離装置を有するオゾン水製造装置において、
少なくとも第一オゾン溶解装置と該第一オゾン溶解装置と同一ライン上に配置された第一気液分離装置を具備する第一ユニットと、第二オゾン溶解装置と該第二オゾン溶解装置と同一ライン上に配置された第二気液分離装置を具備する第二ユニットとを備え、前記第一オゾン溶解装置と前記第二オゾン溶解装置の上流側に、第一流量調節弁と第二流量調節弁がそれぞれ配置され、前記第一気液分離装置と前記第二気液分離装置の下流側に気液分離後のオゾン水の背圧を調整する第一背圧調節弁と第二背圧調節弁がそれぞれ配置され、前記流体供給装置から流体が供給されるラインから並列に分岐した各ライン上に、該第一ユニットと該第二ユニットが配置され、前記第一気液分離装置が前記第二オゾン溶解装置と連結されていることを第5の特徴とする。
【0015】
前記第一オゾン溶解装置の吸込圧力(負圧)と、前記第二オゾン溶解装置の吸込圧力(負圧)の比が、以下の関係式を満たすことを第6の特徴とする。
A/B≧0.28 (1)
A:第一オゾン溶解装置の吸込圧力(ゲージ圧)
B:第二オゾン溶解装置の吸込圧力(ゲージ圧)
【0016】
前記第一オゾン溶解装置の吸込圧力(ゲージ圧)が−5kPa以下であることを第7の特徴とし、前記第一オゾン溶解器を通過する流体の最大線速度が5.42m/sec以上、かつ、流体の通過する方向を軸とする軸に対する最大断面積と最小断面積比が、以下の関係式を満たすことを第8の特徴とする。
C/D≧2.2 (2)
C: 断面積の最大値
D: 断面積の最小値
【0017】
また、前記オゾン溶解装置が、エジェクタまたはアスピレータであることを第9の特徴とし、前記エジェクタが、縮径部、スロート部、拡径部が連続して形成されていることを第10の特徴とし、
前記エジェクタが第一入口部と、長手方向に延設された第一通路部とを有し、前記第一入口部から第一通路部にかけて第一入口流路を形成する第一流路形成手段と、
第二入口部と、前記第一通路部の周囲を包囲するテーパ面に沿って延設された第二通路部とを有し、前記第二入口部から前記第二通路部にかけて第二入口流路を形成する第二流路形成手段と、
細径部と、拡径部と、出口部とを有し、前記細径部から前記拡径部および前記出口部にかけて流路面積が拡大され、かつ、前記細径部の端部において前記第一入口流路および前記第二入口流路にそれぞれ連通する出口流路を形成する第三流路形成手段と、
前記第一入口流路および前記第二入口流路の少なくとも一方において旋回流を発生させる旋回流発生手段とを備えることを第11の特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明は以上のような構成からなり、以下の優れた効果が得られる。
【0019】
(1)並列配管部を形成することにより、単一配管よりも加圧供給される液体の圧力が低くなるため、安価な供給手段が使用可能となる。
(2)並列配管部を形成することにより、単一配管よりも加圧供給される液体の圧力が低くなるため、オゾン水を多量に製造できる。
(3)余剰オゾンが効果的に活用されるため、オゾン溶解効率の高いオゾン水を製造することができる。
(4)余剰オゾンが効果的に活用され、排出されるオゾン量が減少するため、余剰オゾンを処理する設備に掛かるコストを低くできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第一の実施形態のオゾン水製造プロセスを示したフロー図である。
【図2】本発明の第一の実施形態のオゾン水製造装置を示したフロー図である。
【図3】本発明の第一の実施形態のエジェクタを示す縦断面図である。
【図4】図3の要部拡大図である。
【図5】従来のオゾン水製造システムのフロー図である。
【図6】他の従来のオゾン水製造装置の概略構成図である。
【図7】他の従来のオゾン水製造システムのプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明における第一の実施形態について図2から図4を基に説明するが、本発明が本実施形態に限定されないことは言うまでもない。また、本実施形態においては水を流体として使用する例で説明する。
【0022】
図2において、本発明のオゾン水製造装置は、オゾン発生器1、流体供給装置2と、2個のガス自吸式オゾン溶解装置3a、3bと、溶けきれなかった余剰オゾン5a、5b等のガスを分離する2個の気液分離装置4a、4bと、オゾン溶解装置3a、3bそれぞれに供給される水の流量を調節する流量調節弁7a、7bと、気液分離装置4a、4b後のオゾン水の背圧を調整する背圧調節弁8a、8bと、余剰オゾン5bを処理する廃オゾン処理装置9で構成されている。余剰オゾンとはオゾン溶解装置で溶けきれなかったオゾンのことである。
【0023】
ポンプ等の流体供給装置2を用いて加圧供給された水は、2並列に配管接続された第一オゾン溶解装置3a、第二オゾン溶解装置3bにそれぞれ供給される。オゾン発生器1から発生したオゾンは第一オゾン溶解装置3aによって自吸され第一オゾン溶解装置3a内で水と混合される。第一オゾン溶解装置3aから吐出されるオゾン混合水は第一気液分離装置4aによって溶存できなかったオゾンを含む第一余剰オゾン5aと第一オゾン水6aに分離され、さらに第一余剰オゾン5aは第二オゾン溶解装置3bによって自吸され、第二オゾン溶解装置3b内で分岐された水と混合される。第二オゾン溶解装置3bから吐出されるオゾン混合水を第二気液分離装置4bによって溶存できなかったオゾンを含む第二余剰オゾンガス5bと第二オゾン水6bに分離され、第一オゾン水6aと第二オゾン水6bは合流する。第二余剰オゾンガス5bは廃オゾン処理装置9によって酸素ガスに還元し放出される。第一オゾン溶解装置3aおよび第二オゾン溶解装置3bへの水の流量を調節するために、第一流量調節弁7aおよび第二流量調節弁7bが使用され、第一気液分離装置4a、第二気液分離装置4bでの圧平衡を保つように第一背圧調節弁8a、第二背圧調節弁8bによって背圧が調整される。
【0024】
ここで、第一オゾン溶解装置3aでの吸込み圧Ps1(ゲージ圧)と第二オゾン溶解装置3bでの吸込み圧Ps2(ゲージ圧)の比Ps1(ゲージ圧)/Ps2(ゲージ圧)は0.28以上が良い。0.28より低い条件において、第一オゾン溶解装置3aの水の流量を低くし、第二オゾン溶解装置3bの水の流量を大きくする、または、第一オゾン溶解装置3aの通水口径を大きくし、第二オゾン溶解装置3bの通水口径を小さくすることになり、第一オゾン溶解装置においてオゾン発生手段からの高濃度オゾンの混合溶解性能が低下し、オゾン水の溶存オゾン濃度が低下する恐れがある。
【0025】
また、第一オゾン溶解装置3aでの吸込み圧Ps1(ゲージ圧)は−5kPa以下であることが好ましい。−5kPa<Ps1(ゲージ圧)<0kPaでは安定した吸込み性能を得られず、0kPa≦Ps1(ゲージ圧)だとブロア等、オゾンを送気する手段が別途必要となるために、コストが増大する。
【0026】
さらに、Ps1(ゲージ圧)を−5kPa以下に維持する為には第一オゾン溶解装置3aにおいて、ある程度の流速および差圧すなわち、ある程度の流速の差が必要であり、最大線速度LV1maxが、LV1max≧ 5.42m/secかつ、流体の通過する方向を軸とする軸に対する最大断面積の最小断面積に対する比が、2.2以上であることが望ましい。
【0027】
LV1maxが 5.42m/sec未満だと、通水部最大断面積/通水部最少断面積が2.2以上においても、Ps1(ゲージ圧)≦−5 kPaを維持するのは困難であり、同様に、通水部最大断面積/通水部最少断面積が2.2未満だと、LV1maxが 5.42m/sec以上であってもPs1(ゲージ圧)≦−5kPaを維持するのは困難となるためである。
【0028】
以下、図3〜図4を参照して本発明の第一の実施の形態に係るエジェクタについて説明する。図3は、本発明の第一の実施の形態に係るエジェクタの構成を示す縦断面図であり、図4は、図3の要部拡大図である。このエジェクタは、略円柱状の本体11と、本体11に嵌合される略円柱状のノズル部材12とを有する。
【0029】
本体11の一端面には、ノズル部材12が嵌挿される受容部16が設けられ、他端面には、出口流路15を形成する出口開口部31が設けられている。受容部16の内周面の開口側には雌ネジ部21が設けられている。受容部16の底面32には円環状溝部20が設けられ、円環状溝部20の外周面は雌ネジ部21の略延長線上に位置している。本体11の内部には、受容部16の底面に形成され、円錐台形状に縮径する縮径部17、縮径部17に連設された円柱状の細径部となるスロート部18、およびスロート部18に連設され、出口開口部31にかけて円錐台形状に拡径する拡径部19が、それぞれ本体11の中心軸上に設けられ、縮径部17から出口開口部31にかけてベンチュリ効果を有する出口流路15が形成されている。
【0030】
本体11の周面には、周方向所定位置に第二入口開口部30が設けられ、第二入口開口部30は円環状溝部20に連通している。受容部16の底面32には、円環状溝部20から縮径部17の周縁にかけて複数の放射曲線状の溝部が周方向等間隔に設けられている。
【0031】
ノズル部材12は、外周面に雄ネジ部24が設けられた円柱部22と、円柱部22の一端面に円柱部22と同軸で円錐台形状に突設された突出部23とを有する。円柱部22の端面には第一入口開口部20が設けられ、突出部23の端面には吐出口25が設けられている。ノズル部材12の内部には、流路の途中から吐出口25にかけて縮径された円錐台形状のテーパ部26がノズル部材12の中心軸上に設けられ、第一入口開口部29から吐出口25にかけて、出口側で絞られる第一入口流路13が形成されている。
【0032】
ノズル部材12の雄ネジ部24は、円柱部22の端面33が本体11の受容部16の底面32に当接するまで本体11の受容部16の雌ネジ部21に密封状態で螺合され、ノズル部材12が本体11の受容部16に嵌挿されている。このとき、本体11の凹部となる縮径部17内に凸部となる突出部23が収容され、本体11の受容部16の底面32に設けられた溝部12とノズル部材12の突出部23側の端面33とによって連通流路27が形成されている。さらに、本体11の縮径部17の内周面(テーパ面)とノズル部材12の突出部23の外周面(テーパ面)との間にはクリアランスが設けられ、このクリアランスによりテーパ面に沿って環状流路28が形成されている。
【0033】
これにより、第二入口開口部30から円環状溝部20、連通流路27、および環状流路
28を通って本体11のスロート部18に連通し、出口側で絞られる第二入口流路14が形成されている。なお、本体11の受容部16の底面32とノズル部材12の突出部23側の端面33は当接していても良いし、適度なクリアランスを持っていても良い。クリアランスを持っている場合、クリアランスの部分と溝部の部分が連通流路27を形成する。
【0034】
なお、本体11およびノズル部材12の材質は、使用する流体によって侵されない材質であれば特に限定されず、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレンなどいずれでも良い。特に流体に腐食性流体を用いる場合は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオロライド、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合樹脂などのフッ素樹脂であることが好ましく、フッ素樹脂製であれば腐食性流体に用いることができ、腐食性ガスが透過しても配管部材の腐食の心配がなくなるため好適である。本体11またはノズル部材12の構成材を透明または半透明な部材としてもよく、この場合には流体の混合の状態を目視で確認できるため好適である。流体混合器に流す物質によっては各部品の材質は鉄、銅、銅合金、真鍮、アルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属や合金であっても良い。特に流体が食品である場合、衛生的で寿命の長いステンレスが好ましい。本体11とノズル部材12との組立方法は螺着、溶接、溶着、接着、ピン止め、嵌め合わせ等の内部流体の密閉性が保たれる方法であればいずれの方法でもよい。第一入口開口部29、第二入口開口部30及び出口開口部31にはそれぞれ流体を導入及び排出するための配管(図示せず)が接続されるが、その接続方法は特に限定されない。
【0035】
本発明のオゾン水製造装置によって製造されたオゾン水は、手・機器・水槽・水・床・空気・温泉・プール水・海水・環境用水・衣類・野菜類・金属部品類の消毒・殺菌・滅菌・抗菌・静菌・除菌、シリコンウエハー・半導体基板・フォトマスク基板・シリコン物質・食材・膜・衣類・野菜類・金属部品類の洗浄、フォトレジストおよび残渣の除去・有機化合物・無機化合物・金属類の酸化、上水・下水・工場等の事業場廃水の水処理、汚染地盤等の浄化・除染、メッキ処理の前処理、食材、膜、衣類、野菜類、金属部品類の表面処理、パルプの漂白、促進酸化処理などに用いられる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の実施形態を用いてオゾン溶解試験を行った。その結果について以下に示す。
【0037】
図2のように、水道水を貯留した水槽からポンプを用いて2並列に配管接続されたオゾン溶解装置にそれぞれ給水される。オゾン発生装置から発生したオゾンは第一オゾン溶解装置によって自吸され第一オゾン溶解装置内で水道水と混合される。第一オゾン溶解装置から吐出されるオゾン混合水を第一気液分離装置によって溶存できなかったオゾンを含む第一余剰オゾンと第一オゾン水に分離された後、さらに第一余剰オゾンは第二オゾン溶解装置によって自吸され、第二オゾン溶解装置内で分岐された水道水と混合される。第二オゾン溶解装置から吐出されるオゾン混合水を第二気液分離装置によって溶存できなかったオゾンを含む第二余剰オゾンと第二オゾン水に分離された後、第一オゾン水と第二オゾン水は合流する。第二余剰オゾンはオゾン分解装置によって酸素ガスに還元し放出される。オゾン発生装置から発生するオゾン濃度は気相オゾン濃度計を用い、合流後のオゾン水のオゾン濃度は液相オゾン濃度計を用いて測定した。
【0038】
本試験においては、製造されたオゾン水の液相オゾン濃度およびオゾン発生装置から発生した気相オゾン濃度から、単位時間あたりのオゾン量を算出し、次式にてオゾン溶解効率を求めた。
溶解効率(%)= 液相のオゾン量/導入された気相オゾン量 ×100
【0039】
[気相オゾン濃度の測定]
気相オゾン濃度計:東亜ディーケーケー社製 OZ−30
[液相オゾン濃度の測定]
液相オゾン濃度計:東亜ディーケーケー社製 OZ−20
【0040】
本発明におけるオゾン溶解試験は実施例1から実施例3及び比較例1から比較例3のそれぞれについて行った。その試験結果を表1〜表3に示す。
【0041】
[実施例1]
オゾン溶解装置が、水道水流量10〜25L/minのときの給水圧が0.01〜0.05MPa、吸込み圧(ゲージ圧)が−1〜−21kPaであるエジェクタを使用してオゾン溶解試験を行い、オゾン溶解効率を表1に示した。
【0042】
[実施例2]
オゾン溶解装置が、水道水流量10〜25L/minのときの給水圧が0.01〜0.09MPa、吸込み圧(ゲージ圧)が−7〜−50kPaであるエジェクタを使用してオゾン溶解試験を行い、オゾン溶解効率を表2に示した。
【0043】
[実施例3]
オゾン溶解装置が、水道水流量10〜25L/minのときの給水圧が0.04〜0.27MPa、吸込み圧(ゲージ圧)が−15〜−72kPaであるエジェクタを使用してオゾン溶解試験を行い、オゾン溶解効率を表3に示した。
【0044】
また、Ps1(ゲージ圧)とPs2(ゲージ圧)の比を一定とした時の、各Ps1(ゲージ圧)におけるオゾン自吸性能を調査し、その時の結果を表4に示した。
【0045】
さらに、PV1とPs1(ゲージ圧)の関係について表5に示した。
【0046】
[比較例1]
実施例1で用いたオゾン溶解装置を使用し、並列配管ではなく単独配管でオゾン溶解試験を行い、その時のオゾン溶解効率を表1に示した。
【0047】
[比較例2]
実施例2で用いたオゾン溶解装置を使用し、並列配管ではなく単独配管でオゾン溶解試験を行い、その時のオゾン溶解効率を表2に示した。
【0048】
[比較例3]
実施例3で用いたオゾン溶解装置を使用し、並列配管ではなく単独配管でオゾン溶解試験を行い、その時のオゾン溶解効率を表3に示した。
【0049】
表1の結果から、同水流量において、実施例1−1〜1−6の給水圧はすべてにおいて比較例1−1〜1−3よりも低いことが分かる。また、オゾン溶解効率はPs1(ゲージ圧)/Ps2(ゲージ圧)=0.11の時のみ減少していた。
表2の結果から、同水流量において、実施例2−1〜2−6の給水圧はすべてにおいて比較例2−1〜2−3よりも低いことが分かる。また、実施例2−1〜2−6のオゾン溶解効率は比較例2−1〜2−3よりも高い。
表3の結果から、同水流量において、実施例3−1〜3−6の給水圧はすべてにおいて比較例3−1〜3−3よりも低いことが分かる。また、実施例3−1〜3−6のオゾン溶解効率は比較例3−1〜3−3よりも高い。
表1〜表2の結果より、エジェクタを単独で使用するよりも、2並列配管を形成し、2個のエジェクタを使用してオゾン水を製造する方が、給水圧が低い。
さらに、Ps1(ゲージ圧)/Ps2(ゲージ圧)が0.28以上の条件下では、同水流量において、7〜19%以上の溶解効率向上が見られ、且つ給水圧が50%以上減少している。
表4から、オゾンが安定して自吸可能となる条件は吸込圧Ps1(ゲージ圧)がPs1≦−5kPaであった。
また、表5より吸込圧Ps1(ゲージ圧)がPs1≦−5kPaの条件を満たす最大線速度LV1maxはLV1max≧ 5.42m/secである。
【0050】
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
【表4】

【0054】
【表5】

【符号の説明】
【0055】
1…オゾン発生器
2…流体供給装置
3a…第一オゾン溶解装置
3b…第二オゾン溶解装置
4a…第一気液分離装置
4b…第二気液分離装置
5a…第一余剰オゾン
5b…第二余剰オゾン
6a…第一オゾン水
6b…第二オゾン水
7a…第一流量調節弁
7b…第二流量調節弁
8a…第一背圧調節弁
8b…第二背圧調節弁
9…廃オゾン処理装置
10…エジェクタ
11…本体
12…ノズル部材
13…第一入口流路
14…第二入口流路
15…出口流路
16…受容部
17…縮径部
18…スロート部
19…拡径部
20…円環状溝部
21…雌ネジ部
22…円柱部
23…突出部
24…雄ネジ部
25…吐出口
26…テーパ部
27…連通流路
28…環状流路
29…第一入口開口部
30…第二入口開口部
31…出口開口部
32…底面
33…端面
101…オゾン発生手段
102…オゾン溶解手段
103…気液分離手段
104…廃オゾン処理手段
201…オゾン水製造装置
202…余剰オゾン分離装置
203…給水口
205…オゾン水タンク
214a,214b…並列配管部
216…エジェクタ
223…オゾン発生器
224…オゾン帰還パイプ
228…オゾン分解装置
301…オゾン発生手段
301a…他のオゾン発生手段
302…オゾン溶解手段
302a…他のオゾン溶解手段
302b…第3 のオゾン溶解手段
303…原水供給装置
303a…他の原水供給装置
304…水系統
304a…他の水系統
305…オゾン利用設備
305a…他のオゾン利用設備
306…排ガス処理装置
307…気液分離手段
329…循環ポンプ
329a…他の循環ポンプ
f…配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾン発生手段と、流体を供給する手段と、該供給される流体にオゾンを溶解させるオゾン溶解手段と、該オゾン溶解手段で溶けきれなかったオゾンを分離する気液分離手段を有するオゾン水製造方法において、
前記オゾン溶解手段と前記気液分離手段が同一ライン上でひとつのユニットを構成し、少なくとも2つの該ユニットが、前記流体を供給する手段から並列に分岐した各ライン上にそれぞれ配置され、一方のユニットの該気液分離手段で分離されたオゾンが他方のユニットのオゾン溶解手段に移送されることを特徴とするオゾン水製造方法。
【請求項2】
前記各ユニットのオゾン溶解手段を第一オゾン溶解手段、第二オゾン溶解手段とし、該第一オゾン溶解手段の吸込圧力(負圧)と該第二オゾン溶解手段の吸込圧(負圧)の比が、以下の関係式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のオゾン水製造方法。
A/B≧0.28 (1)
A:第一オゾン溶解手段の吸込圧力(ゲージ圧)
B:第二オゾン溶解手段の吸込圧力(ゲージ圧)
【請求項3】
前記第一オゾン溶解手段の吸込圧力(ゲージ圧)が−5kPa以下であることを特徴とする請求項2に記載のオゾン水製造方法。
【請求項4】
前記第一オゾン溶解手段を通過する流体の最大線速度が5.42m/sec以上、かつ、流体の通過する方向を軸とする軸に対する最大断面積と最小断面積比が、以下の関係式を満たすことを特徴とする請求項1乃至3に記載のオゾン水製造方法。
C/D≧2.2 (2)
C: 断面積の最大値
D: 断面積の最小値
【請求項5】
オゾン発生器と、流体供給装置と、該供給装置により供給される流体にオゾンを溶解させるオゾン溶解装置と、該オゾン溶解装置で溶けきれなかったオゾンを分離する気液分離装置を有するオゾン水製造装置において、
少なくとも第一オゾン溶解装置と該第一オゾン溶解装置と同一ライン上に配置された第一気液分離装置を具備する第一ユニットと、第二オゾン溶解装置と該第二オゾン溶解装置と同一ライン上に配置された第二気液分離装置を具備する第二ユニットとを備え、前記第一オゾン溶解装置と前記第二オゾン溶解装置の上流側に、第一流量調節弁と第二流量調節弁がそれぞれ配置され、前記第一気液分離装置と前記第二気液分離装置の下流側に気液分離後のオゾン水の背圧を調整する第一背圧調節弁と第二背圧調節弁がそれぞれ配置され、前記流体供給装置から流体が供給されるラインから並列に分岐した各ライン上に、該第一ユニットと該第二ユニットが配置され、前記第一気液分離装置が前記第二オゾン溶解装置と連結されていることを特徴とするオゾン水製造装置。
【請求項6】
前記第一オゾン溶解装置の吸込圧力(負圧)と、前記第二オゾン溶解装置の吸込圧力(負圧)の比が、以下の関係式を満たすことを特徴とする請求項5に記載のオゾン水製造装置。
A/B≧0.28 (1)
A:第一オゾン溶解装置の吸込圧力(ゲージ圧)
B:第二オゾン溶解装置の吸込圧力(ゲージ圧)
【請求項7】
前記第一オゾン溶解装置の吸込圧力(ゲージ圧)が−5kPa以下であることを特徴とする請求項6に記載のオゾン水製造装置。
【請求項8】
前記第一オゾン溶解装置を通過する流体の最大線速度が5.42m/sec以上、かつ、流体の通過する方向を軸とする軸に対する最大断面積と最小断面積比が、以下の関係式を満たすことを特徴とする請求項5乃至7に記載のオゾン水製造装置。
C/D≧2.2 (2)
C: 断面積の最大値
D: 断面積の最小値
【請求項9】
前記オゾン溶解装置が、エジェクタまたはアスピレータであることを特徴とする請求項5乃至8に記載のオゾン水製造装置。
【請求項10】
前記エジェクタが、縮径部、スロート部、拡径部が連続して形成されていることを特徴とする請求項9に記載のオゾン水製造装置。
【請求項11】
前記エジェクタが第一入口部と、長手方向に延設された第一通路部とを有し、前記第一入口部から第一通路部にかけて第一入口流路を形成する第一流路形成手段と、
第二入口部と、前記第一通路部の周囲を包囲するテーパ面に沿って延設された第二通路部とを有し、前記第二入口部から前記第二通路部にかけて第二入口流路を形成する第二流路形成手段と、
細径部と、拡径部と、出口部とを有し、前記細径部から前記拡径部および前記出口部にかけて流路面積が拡大され、かつ、前記細径部の端部において前記第一入口流路および前記第二入口流路にそれぞれ連通する出口流路を形成する第三流路形成手段と、
前記第一入口流路および前記第二入口流路の少なくとも一方において旋回流を発生させる旋回流発生手段とを備えることを特徴とする請求項9に記載のオゾン水製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86011(P2013−86011A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227795(P2011−227795)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000117102)旭有機材工業株式会社 (235)
【Fターム(参考)】