説明

オゾン濃縮装置

【課題】気化部で万一オゾン分解が生じても液体オゾンの気化量を大幅に少なくして連鎖的なオゾン分解を抑制し装置の破損の虞が無いオゾン濃縮装置を提供する。
【解決手段】オゾナイザ10で生成されたオゾンガスをオゾン沸点以下の温度まで冷却し液体オゾンと非凝縮気体とに分離する冷却手段1と、冷却手段1により分離された液体オゾンを加熱して気化し濃縮オゾンを得る気化部2と、を具備し、液体オゾンと非凝縮気体との分離境界面7から気化部2までを、液封を可能とする配管6のみで接続することで、液体オゾンが配管6内に存在すると共に液体オゾンの分離境界面7が配管6内に位置する構成とし、従来に比して液体オゾンの量を大幅に低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾナイザで生成されたオゾンガスを濃縮するオゾン濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体等の製造に用いられる高濃度オゾンガスは、オゾンを含有するオゾンガスをオゾン濃縮装置で濃縮することで生成される。このオゾン濃縮装置としては、空気や酸素を基にオゾン発生器で生成されたオゾンガスを、タンク状のオゾン液化室で冷却し液体オゾンと酸素とに分離境界面を境として分離し、オゾン液化室の上部から酸素を排気すると共にオゾン液化室の底部に液体オゾンを貯え、この液化室に貯えられた液体オゾンを、当該液体オゾンにより液封する連通管(U字管)を経由してタンク状のオゾン気化室に導入し、当該オゾン気化室で液体オゾンを加熱して気化し濃縮オゾン(高濃度オゾンガス)を得る装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平1−257103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、高濃度オゾンガス(一般的にはオゾンの体積比率が10%以上)は、例えば、金属微粒子の触媒作用、高温、衝撃力、オゾンで分解する有機性ガス等のトリガーがあると、自己分解して発熱し(O→1.5O+143kJ/mol)、その分解時の発熱で他のオゾンガスが加熱されて自己分解したり、液体オゾンが加熱されて気化し自己分解するという連鎖反応を起こす虞がある。
【0004】
従って、上記濃縮装置にあっては、上記トリガー等が要因となってオゾン気化室で万一オゾン分解が生じると、これにより、連通管内の液体オゾン及び液化室に貯えられている液体オゾンが加熱されて気化し連鎖的にオゾン分解が生じる結果、温度が急上昇すると共に体積が急膨張して圧力が急上昇し、装置の破損を招く虞がある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、気化部で万一オゾン分解が生じても液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解を抑制でき、装置の破損の虞を無くすことが可能なオゾン濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここで、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、上記構成のオゾン濃縮装置にあっては、液体オゾンが液化室の底部及び連通管に存在し液体オゾンの量が多いため、気化部で万一オゾン分解が生じると、大量の液体オゾンが気化して連鎖的なオゾン分解が生じ装置の破損等を抑制することは難しいが、液体オゾンの量を少なくし、また、液体オゾンの気化量を出来るだけ少なくすれば、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解の影響を抑制できることを見出した。
【0007】
そこで、本発明によるオゾン濃縮装置は、オゾナイザで生成されたオゾンガスをオゾン沸点以下の温度まで冷却し液体オゾンと非凝縮気体とに分離する冷却手段と、冷却手段により分離された液体オゾンを加熱して気化し濃縮オゾンを得る気化部と、を具備し、液体オゾンと非凝縮気体との分離境界面から気化部までを、液封を可能とする配管のみで接続したことを特徴としている。
【0008】
このようなオゾン濃縮装置によれば、液体オゾンが配管内に存在すると共に分離境界面が配管内に位置しているため、従来に比して液体オゾンの量が大幅に低減される。このため、気化部で万一オゾン分解が生じても、液体オゾンの気化量が大幅に少なくされて連鎖的なオゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が無くされる。
【0009】
ここで、配管内には、毛細管力を発現する充填材が充填されているのが好ましい。このような構成を採用した場合、配管内の充填材の毛細管力により液体オゾンは気化部に良好に導かれて気化する一方で、気化部で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は配管内にあっては充填材の熱容量により吸収されると共に当該充填材により液体オゾンの量が一層低減されることになり、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされる。
【0010】
また、気化部の入口は分離境界面以上の高さにあり、充填材の上端が気化部の入口を通して内部に進入していると、液体オゾンは、その液面が気化部に進入すること無く充填材の毛細管力により気化部内に進入して良好に気化する。このように、気化部内での液体オゾンは極めて少量であるため、気化部で万一オゾン分解が生じても、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされる。
【0011】
また、気化部内には、濃縮オゾンの通過を可能とする充填材が充填されていると、気化部で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は気化部内の充填材の熱容量により吸収されるため、気化部内での濃縮オゾンの連鎖的なオゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が一層無くされる。
【0012】
また、配管は、冷却手段により冷却されるのが好ましい。このような構成を採用した場合、気化部で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は配管では冷却手段により冷却されるため、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされる。また、配管内に毛細管力を発現する充填材が充填されている場合には、液体オゾンの気化により生じる気泡によって毛細管作用が途切れる虞があるが、配管が冷却手段により冷却されるため、気泡の発生が抑制され、毛細管作用が確実に働くことになる。
【0013】
また、冷却手段の冷却部、配管、気化部は真空断熱容器内に収容され、オゾン分解が生じた際の配管内の圧力上昇に応じて当該配管内の圧力を真空断熱容器内に開放する圧力開放弁を備えているのが好ましい。このような構成を採用した場合、液体オゾンの全部が万一オゾン分解して圧力開放弁が圧力を真空断熱容器内に開放した場合に配管内の圧力がオゾンガスの供給圧以下となるように、真空断熱容器内の空隙部の容積を設定することで、オゾン分解時のガス圧が圧力開放弁を介して真空断熱容器内の空隙部に良好に開放され、装置の破損の虞が一層無くされる。また、真空断熱状態により、冷却手段による冷却及び気化部での加熱が効率的に成される。
【0014】
また、冷却手段の冷却部により冷却され配管に接続されるオゾンの流路が、配管との接続部側に向かって下り勾配とされていると、当該流路に液体オゾンが貯留することが防止され、装置の破損の虞が一層無くされる。
【0015】
ここで、配管の入口側(分離境界面側)の液体オゾンの液位は、オゾン分解のことを考慮すると、規定以上としないことが必要である。従って、そのような手段としては、オゾナイザの放電圧調整や原料ガス(主に酸素)の流量調整によって行うことが考えられる。しかし、発明者らは、このような調整方法では、放電圧や流量調整を行った時点では既に冷却手段の冷却部とオゾナイザとの間にオゾンガスが存在しているため、調整にタイムラグが発生し、十分な応答性を確保することができないことを見出した。
【0016】
そこで、本発明によるオゾン濃縮装置は、冷却手段の冷却部により冷却され配管に接続されるオゾンの流路に、オゾンガスを取り出すための排出口を1以上設けることを特徴としている。このような構成を採用した場合、液体オゾンの生成量を減少させる必要が生じたときに、オゾンの流路内のオゾンガスを排出口によって取り出すことができる。このため、オゾナイザからオゾンの流路内のオゾンガスを減少させることができるので、調整のタイムラグが減少し、配管の入口側に液体オゾンが規定以上貯まることが確実に防止される。
【0017】
また、排出口が、オゾンの流路の後半部に設けられていると、当該流路の出口付近ではオゾンガスの冷却が十分に進行しており、液化する直前段階にあるオゾンガスを直接取り出すことができるので、調整のタイムラグが更に減少し、配管の入口側に液体オゾンが規定以上貯まることが一層確実に防止される。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明によるオゾン濃縮装置によれば、気化部で万一オゾン分解が生じても、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解を抑制でき、装置の破損の虞を無くすことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明によるオゾン濃縮装置の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。なお、各図において、同一又は相当要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るオゾン濃縮装置を備えた高濃度オゾンガス生成装置を示す概略構成図、図2は、図1中のオゾン濃縮装置の冷却部、液封配管、気化部を示す概略構成図であり、本実施形態の高濃度オゾンガス生成装置は、例えば半導体製造装置の酸化膜の形成等に用いる高濃度オゾンガス(一般的にオゾンの体積比率が約10%以上)を生成するもので、この高濃度オゾンガスを連続して生成するのが可能な装置である。
【0021】
図1に示すように、高濃度オゾンガス生成装置200は、オゾンガス(オゾンの体積比率が約10%程度)を生成するオゾナイザ10と、冷却手段1及び気化部2を備えオゾナイザ10からのオゾンガスを濃縮し高濃度オゾンガスを生成するオゾン濃縮装置100と、を具備している。
【0022】
オゾナイザ10は、配管27を介して導入される酸素又は空気を基に、オゾンガス(オゾンの体積比率が約10%程度)を生成するものである。
【0023】
冷却手段1は、オゾナイザ10からのオゾンガスを冷却し液体オゾンと非凝縮気体とに分離するものである。この冷却手段1は、オゾナイザ10に接続されて当該オゾナイザ10からのオゾンガスを導入する導入配管3を、極低温に冷却する極低温冷凍機4を備えている。
【0024】
ここでは、極低温冷凍機4としてクライオ冷凍機が用いられ、当該クライオ冷凍機4のクライオヘッド4aに取り付けられた下部銅板4bと上部銅板4cとを冷却部4xとして、この冷却部4xを構成する銅板4b,4c間に導入配管3を密着状態で挟み冷却する。これにより、銅板4b,4c間の導入配管3が、オゾンガスを液体オゾンと非凝縮気体とに分離するための冷却管3c、すなわち冷却部4xにより冷却され、後述の液封配管6に接続されるオゾンの流路である冷却管3cとされる。冷却部4xは、冷却管3c中のオゾンガスを、オゾンの沸点(−111.9°C)以下で、且つ、酸素の沸点(−183°C)より高い温度に冷却し、液体オゾンと、酸素を主体とする非凝縮気体とに分離する。また、この冷却部4xは、気化部2側まで延出する延出部4yを備えている。
【0025】
冷却管3cは、冷却部4xでの入口3aから出口3bに向けて下り勾配とされており、当該冷却管3c内に液体オゾンが貯留してしまうことが防止されている。
【0026】
冷却管3cの出口3bには、上方に向かう気体配管5と下方に向かう液封配管6とが合流して接続されている。気体配管5は、冷却管3cで分離された酸素を主体とする非凝縮気体を、出口3bから上方に導くものである。この気体配管5は、その出口が配管27に接続され、分離された非凝縮気体をオゾナイザ10に戻す構成とされている。
【0027】
一方、液封配管6は、図1及び図2に示すように、冷却管3cの出口3bと気化部2の入口2aとを接続し、冷却管3cで分離され出口3bより液下する液体オゾンを気化部2に導くためのものであると共に、当該液体オゾンにより、導入配管3及び気体配管5側と、気化部2側とを液封するものである。
【0028】
ここでは、液封配管6としてU字管が用いられ、当該U字管6内であって導入配管3の出口3bより多少下方位置に、液体オゾンと非凝縮気体との分離境界面7が位置する構成とされている。
【0029】
この液封配管6内には、毛細管力を発現し、液封配管6内の液体オゾンを気化部2内に導く充填材8が充填されている。ここでは、充填材8は、金網状充填材であり、毛細管力を発現すべく密に構成されていると共に、気化部2の入口2aを通して気化部2内に進入する構成とされている。
【0030】
この充填材8としては、金網状充填材に限定されるものではなく、例えば密に配置される細い金属材料やガラス繊維、例えば多数配置される細かいシリカゲルやポーラスシリカ等であっても良く、要は、毛細管力を発現する充填材であれば良い。そして、液封配管6は、冷却部4xの延出部4y内を通されて銅板4b,4c間に密着状態で挟まれ、当該延出部4yにより冷却される。
【0031】
気化部2は、液封配管6からの液体オゾンを気化するためのもので、円筒状の胴部を有し、下部が下細りの擂り鉢状に閉じられて下端に入口2aが設けられていると共に、上部が上細りの擂り鉢状に閉じられて上端に出口2bが設けられている。
【0032】
この気化部2の入口2aは、分離境界面7以上の高さにあり、この入口2aを通して内部に進入する金網状の充填材8が、液体オゾンを毛細管力により気化部2の底部内に供するように、当該気化部2の底部内面に沿って広がるように配置されている。
【0033】
また、気化部2の下部に対しては、当該下部を包囲する包囲壁9が設けられている。この包囲壁9内には、気化部2の底部に供される液体オゾンを加熱して気化させるように、常温空気が通される。なお、加熱の方式は、例えば加熱器等による加熱であっても良い。
【0034】
この気化部2内の下部より上側には、気化により生成される高濃度の濃縮オゾン(高濃度オゾンガス)の通過を可能とする充填材20が充填されている。ここでは、充填材20は、金網状充填材とされているが、例えば、金属波板状充填材や、シリカゲルやポーラスシリカ等であっても良く、要は、濃縮オゾンの通過を可能とする充填材であれば良い。なお、気化部2内の金網状充填材20は、液封配管6内の金網状充填材8より粗に構成されている。因みに、液封配管6及び気化部2内の両方に多数のシリカゲルやポーラスシリカを充填する場合には、気化部2内に、液封配管6内より大きいシリカゲルやポーラスシリカを充填することが好ましい。
【0035】
この気化部2の出口2bには、図1に示すように、バルブV1を有する高濃度オゾンガス配管11が接続され、この高濃度オゾンガス配管11のバルブV1より上流には、バルブV2、オゾンキラー13を有する排気管12が接続されている。高濃度オゾンガス配管11は、気化部2で生成された高濃度オゾンガスを後段に供するためのものであり、排気管12は、余剰高濃度オゾンガスをオゾンキラー13により酸素に分解し大気に放出するためのものである。
【0036】
そして、冷却手段1の冷却部4x、導入配管3における冷却部4x側の部分、気体配管5における冷却部4x側の部分、液封配管6、気化部2、高濃度オゾンガス配管11におけるバルブV1より気化部2側の部分は、容器14内に収容され、当該容器14は、真空ポンプ15の駆動により内部が真空状態とされた真空断熱容器とされている。
【0037】
この真空断熱容器14内における高濃度オゾンガス配管11及び気体配管5には、オゾン分解が生じた際の配管内の圧力上昇に応じて圧力が設定圧以上になると当該配管内の圧力を開放する圧力開放弁16,17が各々配設されている。ここでは、圧力開放弁16,17として安全弁が用いられているが、配管内の圧力上昇に応じて圧力が設定圧以上になると一部が破壊し圧力を開放する破壊弁等であっても良い。そして、液体オゾンの全部が万一オゾン分解して圧力開放弁16,17が圧力を真空断熱容器14内に開放した場合に配管内の圧力がオゾンガスの供給圧以下となるように、真空断熱容器14内の空隙部の容積が設定されている。
【0038】
このように構成された高濃度オゾンガス生成装置200によれば、酸素又は空気を基にオゾナイザ10でオゾンガスが生成され、このオゾンガスは導入配管3を通してオゾン濃縮装置100に導入され、冷却手段1の冷却部4xで極低温に冷却される。このオゾンガスは、冷却管3cの出口3b付近で、液体オゾンと、酸素を主体とする非凝縮気体とに分離され、非凝縮気体は気体配管5を通してオゾナイザ10に戻されオゾンガスの生成に供され、一方、液体オゾンは液封配管6に流れ込む。
【0039】
この液封配管6内に流れ込んだ液体オゾンは、液封配管6内の充填材8の毛細管力により気化部2側へ進行していく。ここで、液体オゾンと非凝縮気体との分離境界面7は、液封配管6内であって導入配管3の出口3bより多少下方に位置し、一方、液体オゾンの気化部2側の液面は、気化部2の入口2aが分離境界面7以上の高さにあるため、入口2a以下の位置にある。
【0040】
この液封配管6内の液体オゾンは、毛細管力によりさらに充填材8を伝っていき、入口2aを通して気化部2の底部内に良好に導かれて進入する。この気化部2の底部内に充填材8を伝って進入した液体オゾンは、常温空気による加熱によって、気化部2の底部内に溜まる前に気化して高濃度オゾンガスが生成され、この高濃度オゾンガスは、充填材20を通過して出口2bから排出される。
【0041】
そして、本実施形態にあっては、オゾンの体積比率が100%近くの高濃度オゾンガスが生成される。この高濃度オゾンガスは、後段の使用に供す場合には高濃度オゾンガス配管11に流され、一方、余剰高濃度オゾンガスは排気管12に流されオゾンキラー13により酸素に分解されてから大気に放出される。
【0042】
このように、本実施形態のオゾン濃縮装置100にあっては、液体オゾンと非凝縮気体との分離境界面7から気化部2までが、液封を可能とする液封配管6のみで接続され、液体オゾンが液封配管6内に存在すると共に分離境界面7が液封配管6内に位置している。このため、従来に比して液体オゾンの量が大幅に低減されている。従って、気化部2で万一オゾン分解が生じても、液体オゾンの気化量が大幅に少なくされて連鎖的なオゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が無くされている。
【0043】
また、液封配管6内には毛細管力を発現する充填材8が充填されているため、当該充填材8の毛細管力により液体オゾンは気化部2に良好に導かれて気化する一方で、気化部2で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は液封配管6内にあっては充填材8の熱容量により吸収されると共に当該充填材8により液体オゾンの量が一層低減される結果、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0044】
また、気化部2の入口2aが分離境界面7以上の高さにあり、充填材8の上端が気化部2の入口2aを通して内部に進入しているため、液体オゾンは、その液面が気化部2に進入すること無く充填材8の毛細管力により気化部2内に進入して良好に気化し、このように、気化部2内での液体オゾンは極めて少量であるため、気化部2で万一オゾン分解が生じても、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0045】
また、気化部2内には、濃縮オゾンの通過を可能とする充填材20が充填されているため、気化部2で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は気化部2内の充填材20の熱容量により吸収される。このため、気化部2内での濃縮オゾンの連鎖的なオゾン分解が抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0046】
また、液封配管6は冷却手段1により冷却されるため、気化部2で万一オゾン分解が生じても、発生する熱は液封配管6では冷却手段1により冷却される。このため、液体オゾンの気化による連鎖的なオゾン分解が一層抑制され、装置の破損の虞が一層無くされている。また、液封配管6内の液体オゾンの気化により気泡が生じると充填材8の毛細管作用が途切れる虞があるが、液封配管6が冷却手段1により冷却されるため、気泡の発生が抑制され、毛細管作用が確実に働くことになっている。
【0047】
また、冷却部4x、液封配管6、気化部2、圧力開放弁16,17が真空断熱容器14内に収容され、液体オゾンの全部が万一オゾン分解して圧力開放弁16,17が圧力を真空断熱容器14内に開放した場合に配管内の圧力がオゾンガスの供給圧以下となるように、真空断熱容器14内の空隙部の容積が設定されているため、オゾン分解時のガス圧が圧力開放弁16,17を介して真空断熱容器14内の空隙部に良好に開放され、装置の破損の虞が一層無くされている。また、真空断熱状態14により、冷却手段1による冷却及び気化部2での加熱が効率的に成されるようになっている。
【0048】
さらにまた、冷却手段1の冷却部4xにより冷却され液封配管6に接続されるオゾン流路である冷却管3cが、液封配管6との接続部側、すなわち出口3b側に向かって下り勾配にされているため、当該流路に液体オゾンが貯留することが防止され、装置の破損の虞が一層無くされている。
【0049】
なお、本実施形態にあっては、気化部2での万一のオゾン分解以外のトリガーによるオゾン分解も抑制されているのは言うまでもない。
【0050】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係るオゾン濃縮装置を備えた高濃度オゾンガス生成装置を示す概略構成図である。この第2の実施形態が第1の実施形態と違う点は、導入配管3内のオゾンガスを取り出すための排出配管(排出口)21を、冷却管3cに対して設けた点である。この排出配管21は冷却管3cの後半部に設けられ、バルブV5を介して気体配管5に接続され、この排出配管21には圧力チャンバ22が接続されている。また、排出配管21を設けたのに伴い、気体配管5の排出配管21との接続先より下流にはバキュームポンプPが設けられると共に、接続先より上流側にはバルブV4が設けられ、更に、導入配管3の冷却管3cより上流側にはバルブV3が設けられている。
【0051】
このような第2の実施形態によれば、オゾン分解のことを考慮し、液封配管6の入口側(分離境界面7側)の液体オゾンの液位を規定以上としない(異常貯留を防止する)ようにする場合には、通常時閉としているバルブV5を開とすると共に、バキュームポンプPを駆動し、更にバルブV3を閉とする。すると、導入配管3内のオゾンガスが、排出配管21から直接取り出され、オゾナイザ10へと導かれ、オゾナイザ10から冷却管3c内のオゾンガスが減少する。従ってオゾナイザ10の放電圧調整や原料ガスの流量調整により液位を調整する場合に比して、調整のタイムラグが減少し、配管6の入口側に液体オゾンが規定以上貯まること(異常貯留)が確実に防止されている。
【0052】
また、出口3b付近のオゾンガスは、冷却が十分に進行しているため液化する直前段階にあるが、この液化直前段階にあるオゾンガスは、冷却管3cの後半部に設けられている排出配管21により、液化する直前段階にある高濃度オゾンガスが直接取り出される。これによって、調整のタイムラグが更に減少し、配管6の入口側に液体オゾンが規定以上貯まることが一層確実に防止されている。
【0053】
また、導入配管3の内部がバキュームポンプPの吸引により減圧されているため、液化中のオゾンが気化して排出され、調整のタイムラグが更に減少し、配管6の入口側に液体オゾンが規定以上貯まることが一層確実に防止されている。
【0054】
また、本実施形態においては、排出配管21に圧力チャンバ22が接続されており、排出配管21の容積が小さい場合でも、圧力チャンバ22がある程度の容積を確保しているため、バルブV5の調整による急激な圧力の変動が防止されている。なお、通常時にあっては、バキュームポンプPの駆動により冷却管3c内を減圧した状態で冷却すると、凝縮時の酸素ガスの密度が低下し液体オゾンに溶解する酸素濃度が減少するため、分離される液体オゾンへの酸素の溶解が防止され、液体オゾンにおける気泡破裂がトリガーとなるオゾン分解が防止されている。
【0055】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、気化部2の底部内に液体オゾンが貯まらない構成としているが、多少貯まる構成に対しても適用可能である。
【0056】
また、排出配管21を1個としているが、2個以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るオゾン濃縮装置を備えた高濃度オゾンガス生成装置を示す概略構成図である。
【図2】図1中のオゾン濃縮装置の冷却部、液封配管、気化部を示す概略構成図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るオゾン濃縮装置を備えた高濃度オゾンガス生成装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0058】
1…冷却手段、2…気化部、2a…気化部の入口、3a…入口、3b…出口、3c…冷却管(オゾンの流路)、4x…冷却部、6…液封配管(配管)、7…分離境界面、8…配管内の充填材、10…オゾナイザ、14…真空断熱容器、16,17…安全弁(圧力開放弁)、20…気化部内の充填材、21…排出配管(排出口)、100…オゾン濃縮装置、200…高濃度オゾンガス生成装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾナイザで生成されたオゾンガスをオゾン沸点以下の温度まで冷却し液体オゾンと非凝縮気体とに分離する冷却手段と、
前記冷却手段により分離された液体オゾンを加熱して気化し濃縮オゾンを得る気化部と、を具備し、
前記液体オゾンと前記非凝縮気体との分離境界面から前記気化部までを、液封を可能とする配管のみで接続したことを特徴とするオゾン濃縮装置。
【請求項2】
前記配管内には、毛細管力を発現する充填材が充填されていることを特徴とする請求項1記載のオゾン濃縮装置。
【請求項3】
前記気化部の入口は前記分離境界面以上の高さにあり、
前記充填材の上端が前記気化部の前記入口を通して内部に進入していることを特徴とする請求項2記載のオゾン濃縮装置。
【請求項4】
前記気化部内には、濃縮オゾンの通過を可能とする充填材が充填されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のオゾン濃縮装置。
【請求項5】
前記配管は、前記冷却手段により冷却されることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のオゾン濃縮装置。
【請求項6】
前記冷却手段の冷却部、前記配管、前記気化部は真空断熱容器内に収容され、
オゾン分解が生じた際の前記配管内の圧力上昇に応じて当該配管内の圧力を前記真空断熱容器内に開放する圧力開放弁を備えていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のオゾン濃縮装置。
【請求項7】
前記冷却手段の冷却部により冷却され前記配管に接続されるオゾンの流路が、前記配管との接続部側に向かって下り勾配とされていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載のオゾン濃縮装置。
【請求項8】
前記冷却手段の冷却部により冷却され前記配管に接続されるオゾンの流路に、前記オゾンガスを取り出すための排出口を1以上設けることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載のオゾン濃縮装置。
【請求項9】
前記排出口は、前記オゾンの流路の後半部に設けられていることを特徴とする請求項8記載のオゾン濃縮装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−197299(P2007−197299A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176674(P2006−176674)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】