説明

オゾン発生管の製造方法

【課題】 冷却効果を高め、かつ低い電圧で安定した放電を維持し、オゾン発生効率の優れたオゾン発生管の製造方法を提供する。
【解決手段】 円筒状をなす接地電極と、接地電極の内側に配置された高圧電極と、接地電極と高圧電極との間に放電空間となるギャップを形成するスペーサーと、接地電極の内面に絶縁層を備え、放電空間に酸素を含むガスを供給し、接地電極と高圧電極の間に電圧を印加して放電空間内において放電を発生させてオゾンガスを生成するオゾン発生管の製造方法であって、絶縁層を形成するために、接地電極の内面に絶縁材原料を塗布する絶縁材原料塗布工程と、絶縁材原料を高温で焼き付ける焼付工程とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接地電極管と高圧電極管との間の空間に放電を発生させてオゾンを発生させるオゾン発生管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オゾン発生装置は、オゾンの持つ殺菌効果・脱色効果・脱臭効果などを利用するために、上下水処理施設、パルプ漂白処理施設、殺菌処理施設などにおいて広く利用されている。人工的にオゾンを生成する方法の一つに放電を利用する放電法があり、放電法を利用したオゾン発生装置が提案されている。
【0003】
オゾンは、空気あるいは酸素含むガス中で無声放電を起こさせることによって、生成することができる。以下、図を用いて従来技術について説明する。
【0004】
図1は、無声放電を利用したオゾン発生管の原理を示す概念図である。図1に示すように、オゾン発生管は、ステンレス製の円筒状の接地電極10と、その内部に設置された円筒状の高圧電極管17で構成される。接地電極10の内面には、高電圧電極管17との間で絶縁を保つために誘電体12の薄層が形成されている。接地電極10と高圧電極管17の間は、原料ガス13を導入し無声放電を起こさせる放電空間15となる。
【0005】
この構成により、円筒状の接地電極管10と高圧電電極管の間の放電空間15に、空気あるいは酸素を含む原料ガス13を流入し、接地電極管10と高圧電極管との間に、例えば5000〜12000Vの高周波高電圧を高電圧電源16より印加させ、無声放電を放電空間15で生じさせることにより、高電界下における放電エネルギーを酸素に授与することによりオゾンを含むオゾン化ガス14を発生することができる。
【0006】
従来は、このオゾン発生装置において、接地電極管10の内面に、セラミック材料であるガラス管を密着させて、絶縁層を形成していた。その製造方法は、円筒状の金属管21にガラス管を挿入し、ガラス管内部を空気により加圧しながら金属管21外周部全体を加熱し、ガラスを軟化させて金属管21の内面に密着させる方法であった(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−121012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図1のオゾン発生管においては、誘電体12の膜厚を薄くし、また放電空間15を狭くすることにより、オゾン発生効率を維持したままで印加電圧を低くすることが出来る。
【0009】
しかしながら、従来の円筒状の金属管にガラス管を挿入して接地電極10を製造するオゾン発生管の製造方法においては、ガラス管の製管段階でガラスの肉厚を薄くするとガラス管の湾曲や変形の度合いが大きくなる。ガラス管の製造では、ガラスを溶融し、その溶融した高温のガラスを管状に引き出し、冷却しながら管とすることが一般的であり、管の径、肉厚、曲がりの制御が難しく、これらの径や肉厚のバラツキにより、湾曲や変形が生ずる。ガラスの肉厚が特に薄くなると高温での自重や成形するガラスの表面温度のバラツキにより湾曲や変形が大きくなる。このため、ガラスの肉厚を薄くすることは困難であり、薄い誘電体12を有する接地電極を製造できなかった。このため、誘電体12の膜厚を薄くできなかった。
【0010】
またオゾン発生管においては、電極表面を冷却し放電面の温度を低くすることにより生成したオゾンの分解を抑制することができるので、オゾン発生濃度や発生量を向上することができる。しかしながら、誘電体12であるガラス管が厚いと、このガラスの熱伝導が悪いため、接地電極管10の外周部を冷却しても、誘電体12の表面が十分に冷却されず、オゾンの発生効率の低下を招く問題があった。
【0011】
さらに、接地電極管10には、耐オゾン性の高いステンレスが用いられており、ステンレスの熱膨張係数16×10-6/℃に対して、ガラスの熱膨張係数は3〜10×10-6/℃と小さい。かつ、ガラスの熱膨張係数が小さい程、ガラスの軟化点温度が高い傾向にある。このため、接地電極10の内側にガラスを挿入し、加熱して密着させた後で冷却すると、熱膨張係数の小さいガラス材ではガラス全体に割れが発生する。また8×10-6/℃以上の熱膨張係数を有するガラスにおいても、接地電極10端部付近で割れ、剥離、ヒビ等が発生する場合があった。また、この熱膨張係数差により、接地電極管10の歪が大きくなり、高圧電極管15との間の放電ギャップの間隔を一定にできず、ギャップ間での放電が不均一となって、放電の不安定とオゾン発生効率の低下の原因ともなっていた。
【0012】
また接地電極10の内面にガラス管を挿入する製造方法では、接地電極10の表面とガラス管との間に空気を巻き込み、空気による空隙や気泡が生じ、高電圧を印加すると、この空隙や気泡内で分部放電や異常放電が生じ、放電による熱によりガラスが熱破壊を起こす恐れがあった。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、絶縁層を薄く成形し、その絶縁層内のおよび界面に緻密で気泡の極めて少ない絶縁層を形成し、絶縁層表面での冷却効果を高め、かつ低い電圧で安定した放電を維持し、オゾン発生効率の優れたオゾン発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明は、円筒状をなす接地電極と、接地電極の内側に配置された高圧電極と、接地電極と高圧電極との間に放電空間となるギャップを形成するスペーサーと、接地電極の内面に絶縁層を備え、放電空間に酸素を含むガスを供給し、接地電極と前記高圧電極の間に電圧を印加して放電空間内において放電を発生させてオゾンガスを生成するオゾン発生管の製造方法であって、絶縁層を形成するために、接地電極の内面に絶縁材原料を塗布する絶縁材原料塗布工程と、絶縁材原料を所定の温度で焼き付ける焼付工程を有することを特徴とするオゾン発生管の製造方法を提供する。
【0015】
この構成によれば、接地電極の内面に絶縁層を薄く均一に形成することができるので、オゾン発生効率の優れたオゾン発生管を製造することができる。
【0016】
また、本発明において、絶縁材原料塗布工程は、絶縁材原料をスラリー状にする拡散工程と、スラリー状の絶縁材原料を接地電極の内面に分散塗布する分散塗布工程と、スラリー状の絶縁材原料を分散塗布した接地電極を所定の回転数で回転する緻密化工程と、分散塗布されたスラリー状の絶縁材原料を乾燥する乾燥工程を有することを特徴とするオゾン発生管の製造方法を提供する。ここでの絶縁材原料としては、粉体を挙げることができる。
【0017】
この構成によれば、絶縁層を薄く均一に形成し、さらに遠心力で分散塗布された絶縁材原料である例えば粉体を緻密化することにより気泡の少ない絶縁層を形成することができる。
【0018】
また、本発明においては、スラリー状の絶縁材原料の例えば粉体に乾燥時の付着強度を上げるための接着剤を付加することを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、接地電極の内面に塗布された絶縁材原料の例えば粉体の付着強度をあげることができるので、安定した製造方法を提供することができる。
【0020】
また、本発明においては、絶縁層は、セラミックス材料または金属酸化物であることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、絶縁層表面での冷却効果を高めることができる。
【0022】
また、本発明においては、絶縁層の熱膨張係数は、5×10-6/℃以上であることを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、焼成後の冷却時において、電極と絶縁膜との間の応力が小さくなることで歪、割れ、剥がれなどの不良が少なくなる。
【0024】
また、本発明においては、絶縁材原料の例えば粉体塗布工程の前に、接地電極の内面を粗面化処理、清浄化処理および酸化処理の内の少なくとも1の処理をする前処理工程を有することを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、接地電極の内面と形成された絶縁層との付着強度をあげることができる。そして、本発明においては、内面塗布での絶縁層を形成する方法において、塗布・乾燥の工程で、接地管を100〜4000rpmの回転数で回転させながら行うことが良く、1000〜4000rpmで行うことがより好ましい。塗布・乾燥時においては、回転により接地管の内面に塗布するガラススラリーをダレることなく、均一な膜厚とし、乾燥されれば、焼成時に回転をしなとも、均一なガラス層が得られる。このことは、付着したガラス粉を高温に加熱し、溶融するが流動性のある状態以下の温度で加熱・焼付け、ガラス層として固着するためである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、この構成による塗布および焼成によれば、気泡が少なく、緻密な絶縁層が得られる。従って、この絶縁層内での部分放電は発生し難く、かつ耐電圧破壊電圧は高いことから、絶縁層を薄く形成できる。薄い絶縁層により、オゾンを発生するための印加電圧が低く設定でき、かつ絶縁層が薄いため、冷却効果が向上し、オゾン発生効率も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の最良の実施形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図2および図3は、本発明に係る製造方法を模式的に示したものである。
【0028】
図2は、円筒状の金属管21を、駆動部34を有する回転台33に設置し、ノズル36にてスラリー41を分散塗布する状態を側面から見た概念図である。スラリー41は、可動スラリー供給管31によりノズル36に供給される。可動スラリー供給管31は金属管21の管長方向に可動となっており、ノズル36を金属管21の管長方向に移動させて分散塗布することにより、金属管21の全長に渡って均一な塗布が可能となっている。絶縁材原料の粉体をスラリー化したスラリー41はタンク40に充填され、加圧ガス管38の入口より注入される高圧ガスにて可動スラリー供給管31に送り込まれる。
【0029】
図3は、金属管21を回転台33に設置した状態を、金属管21の端面方向から見た概念図である。金属管21は、2つのローラ35と駆動部34と一体となったローラにより3点を指示されて固定される。この固定は、管長方向に2か所でなされる(図2参照)。駆動部34によりローラが回転し、金属管21が回転する。
【0030】
以下、実施手順について説明する。まず最初に接地電極10に相当する金属管21を回転台33に設置し、駆動部34により低速で回転させる。この金属管21の内部に、絶縁層となるセラミックス材料又は金属酸化物の無機物を水または有機溶剤で分散したスラリー41を一定量、ノズル36を移動させながら内面全面に塗布する。
【0031】
金属管21内面にスラリー41を排出する時の金属管21の回転数は、スラリー41を管内面に展開するためのものである。スラリー41を排出するノズル36は、スプレーガンが最も均一に排出および管内面に展開できる。またノズル36は、管内面に直角に対面している方が良い。均一にスラリー41を展開できれば、滴下や流し入れでもよく、ノズル36の形状や種類は問わない。
【0032】
ノズル36へのスラリー41の供給は、密閉式のタンク40内に収められたスラリー41をタンク40内に空気圧により加圧し、この圧力により、ノズル36に供給し、かつ排出量を制御する。
【0033】
スラリー41の供給は、回転ポンプ式やピストンポンプ式による方法でも良く、スラリー41を供給できるものであれば良い。
【0034】
塗布後、駆動部34により金属管21を高速で回転させ、スラリー41を金属管21の内面に密着させる。これにより、塗布したスラリー41が、金属管21の内面に均一で一定の塗布厚の塗布層22となる。
【0035】
金属管21の高速回転を一定時間行った後、回転しながら、金属管21の内部または外部を加熱する。ここでは、熱風23を用いる。そして、スラリー41中の水または溶剤を飛ばし、塗布層22を乾燥する。
【0036】
塗布、乾燥した金属管21を加熱炉でセラミックス材料又は金属酸化物の無機物の固着できる温度で加熱し、緻密な絶縁層を形成する。
【0037】
この塗布層22および絶縁層の形成方法により、スラリー41内にあるスラリー41作製時および塗布時にスラリー41内に取り込まれた気泡が遠心力の作用により、表面に浮上し、スラリー41内の気泡を取り除くことができる。また遠心力の作用により、塗布層22のスラリー41中の粉末が沈降し、金属管21の内面表面側に緻密化、密着する。更に、乾燥により、より緻密な粉体の層を形成される。これらの塗布層22を高温で焼成することにより、緻密で均一な絶縁層が得られる。
【0038】
尚、図2に示す回転台33は、本装置構成にこだわらず、金属管21を高速に回転できる構成を有するものであれば良く、旋盤の様に、金属管21の外周部をチャッキングし回転する方法や管端部を駆動部34と直結し、モータ等で駆動する方法でも良い。
【0039】
また、絶縁層の膜厚を厚くする必要がある場合は、これらの塗布・焼成を数回、繰り返すことにより、膜厚を制御した任意の絶縁層が得られる。更に、数回の塗布・焼成操作において、熱膨張係数や組成などの材質の異なるガラス材料のスラリー41を塗布・焼成し、絶縁層を形成できるため、より熱膨張係数の小さな材質のガラス層の形成や絶縁層の電気的な特性向上も可能となる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明する。
【0041】
円筒状の金属管21を、回転台33の上に設置する。ここで金属管21は、高速回転時の振動を防止するために、3方の回転するローラ35で保持される。
【0042】
金属管21は、不錆鋼であるステンレス材または鉄、鉄−ニッケル材、アルミニユウム材を用いることができ、これら金属管21の内周面に、たとえば、アルミナ、シリカ、カルシユウム、マグネシウム、チタン、バリウム、ジルコニアを主剤とする酸化物にナトリウム、カリウム、リチウム、ホウ素を溶剤とする酸化化合物を金属管21の内周面に被覆することもできる。この場合、金属管21の材質や耐熱性、熱膨張係数により、金属管21の内面に誘電体12として被覆する材料を選択する必要がある。
【0043】
金属管21の内面には、金属表面と無機系化合物との密着性を高めるため、必要に応じて素管金属内表面をブラストやエッチング等による粗面化や清浄化、または予備酸化処理を施す。
【0044】
セラミックス材料又は金属酸化物の無機物材料の粉末を水または有機溶剤で分散およびスラリー化したものをタンク40に入れ、ガス圧供給部39から加圧ガス管38を介しガス注入を行い、タンク40の中を加圧する。タンク40内のスラリー41は、スラリー供給管31によりノズル36に供給される。金属管21を100〜300rpmで回転させながら、金属管21の片端部の開放部より管内に挿入されたノズル36の先端よりスラリー41を吐出し、金属管21の内面に排出する。
【0045】
スラリー41の吐出と共にノズル36を電極管の長手方向に一定時間で移動させ、金属管21の内面全体にスラリー41を吐出させ、塗布層22を形成させる。次に、内面全体にスラリー41を供給しノズル36を引き出した後、金属管21の回転数を徐序に上げ1000〜4000rpmとする。
【0046】
回転数が設定値に達したらば、電極管の内部に管片端部よりドライヤーにより熱風23を送風し、80℃および130℃に段階的に上昇させ、塗布したセラミックス材料又は金属酸化物の無機物を金属管21内面に乾燥固着させ、乾燥状態の塗布層22とする。この乾燥加熱は、金属管21の外周部から、加熱しても良い。
【0047】
金属管21に塗布される膜厚は、スラリー41の濃度、ノズル36からの排出量、金属管21の回転数をノズル36の移動速度、乾燥後の密度や焼成収縮率により、予備試験による決定がされ、塗布する材料や粒度によっても異なる。
【0048】
この塗布時の金属管21の回転数は、100〜300rpm程度が良く、供給するスラリー41を金属管21の内面にほぼ均一にスラリー41が展開されれば良く、100rpm以下では、内面でのスラリー41ダレが生じ、膜厚が不均一になる。
【0049】
300rpm以上になると金属管21内の最初に塗布したスラリー41が管の長手方向に移動する様になり、ノズル36から排出され、展開されるスラリー41と管縦方向に移動するスラリー41との重なり合いにより、管内表面での塗布量が安定しない。従って、これら回転数は、管の管径とノズル36からの排出量によって適正値を決定する。スラリーは液状であるため、塗布したスラリーは、管の回転により、円周方向に塗布が展開されるが、これらは、塗布したスラリーに厚さがあり、管内であるため、回転数が高くなると、そのスラリーは、長手方向に移動する。
【0050】
金属管21の内面にスラリー41を塗布後、塗布層22とし、回転数を徐々に1000〜4000rpmに上げ、スラリー41状の塗布層22を均一に展開する。この回転数を上げる時、低速より、徐々に高速回転に移行させる。高速回転になると、この回転により、塗布されたスラリー41状の塗布層22は遠心力により、スラリー41中のセラミックス材料又は金属酸化物の無機物材料の粉末が金属管21の内表面に移動し、一方、気泡や水分または溶剤分が表面に移動する。
【0051】
回転数が高すぎると、この水分および溶剤が表面流れをおこし、塗布したスラリー41状の塗布層22が内面に保持できなくなり、管の端部より、流れ出すこととなる。また回転数を高くすると、管のブレによる振動が生じやくす、振動により予備塗布したスラリー41が流動性の増加や、内面に付着した粉末が振動やスラリー41の流動性の増加により、再び流れ出し、膜厚の均一性が失わせる場合がある。これらは、スラリー41の粘性によっても影響される。
【0052】
所定の回転数値になったならば、金属管21の内部を熱風23で塗布層22のスラリー41を乾燥させる。2段階に昇温するのは、高い温度で急激に乾燥すると、塗布された粉体層に亀裂や剥がれが生じるためである。一段目の温度80℃は、過剰にある水分または溶剤分を飛ばし、金属管21内のスラリー41の流動性を失わせ、粉体の塗布密度を向上させるものである。
【0053】
この状態で、更に130℃に上昇させ、完全に水または溶剤を飛ばし、金属管21内に粉末を付着させる。この乾燥は、金属管21の外周面を赤外線ランプ、電熱線ヒータ等で、加熱しても良い。
【0054】
または、一段目の温度80℃の乾燥後、塗布層22のスラリー41の流動性が失われているため、回転台33から、金属管21を取り外し、130℃に昇温された連続乾燥機または、焼成時の連続される予備乾燥で乾燥することもできる。
【0055】
誘電体12となる絶縁層の具体的な材料としては、アルミナ、ムライト、ステアタイトなどのセラミックス材料、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラスなどのガラス材料、シリカ、ナトリウム、カリユウムを含むホウロウ材料などがあり、これらは塗布される金属材料の耐熱性、熱膨張係数、形成する膜の厚さにより、選択される。
【0056】
本例では、金属管21としてステンレス管SUS304やSUS316を用い、誘電体12材料としてガラス材を用いた。ガラス材は、ソーダライムガラス、BaやTi酸化物を含むホウロウ材およびホウケイ酸ガラスで熱膨張係数は、3.2〜10×10-6/℃のものであった。
【0057】
これらのガラス材のカレットを水または有機溶剤中でボールミルを用い粉砕し、粒径50μm前後の粒度とし、スラリー41を製作する。必要に応じ、そのスラリー41中に、乾燥時の付着強度を得るために、水溶媒では、メチルセルロースやポリビニルアルコール、尿素を、有機溶媒では、エチルセルロースやポリビニルブチラール、アクリル樹脂等を、また分散剤や泡消剤等を必要量添加する。
【0058】
これらスラリー41の粘度は、粉体の粒度、分散剤。吐出方法やノズル36形状や供給方法、また予備塗布時での管内面でのスラリー41の広がり、膜厚の均一性によっても異なるが、およそ100〜500cPの範囲であった。スラリー41粘性を高く設定することにより、スラリー41塗布時のダレを押さえ、厚い塗布層22が得られ、より厚い誘電体12の絶縁層が得られるが、塗布後の乾燥での塗布層22の割れが発生することから、予め適正な粘度に調整する必要がある。
【0059】
このスラリー41で予備乾燥後に塗布できる乾燥膜厚は、0.6mm以下で、この0.6mm以上では、予備塗布でスラリー41ダレが生じ、膜厚が不均一になった。
【0060】
また塗布する材料や粉体の粒度、スラリー41密度により、異なるが、焼成後の絶縁層の膜厚は、乾燥膜厚の40〜60%の0.24〜0.36mmであった。従って、この絶縁層の膜厚が不足する場合は、塗布・焼成の操作を数回繰り返し、必要とする膜厚とした。
【0061】
管内に塗布したセラミックス材料又は金属酸化物の無機物を焼き付ける場合は、例えばホウロウ材での施工の様に、金属と接する第1層には、金属と反応し、ガラスとの密着強度が高く、熱膨張係数の大きい、アルカリ成分の含有量が多く、かつコバルト、マンガン、ニッケルなどの酸化物を有するガラス材を用い、金属素地との密着性を強化してから、耐候性や耐摩耗性等、必要特性を有するホウロウ層を更に第2層・第3層として形成することも可能である。
【0062】
これらの塗布した管の焼成では、用いたガラス材の軟化点温度から作業温度の範囲の600℃〜1000℃において電気炉、ガス炉または高周波炉を用い、大気中で焼成した。
【0063】
φ40〜φ80のステンレス管SUS304および316において、3.2〜10×10-6/℃のガラス材を用いて、スラリー41塗布と焼成を1〜3回繰り返し行い0.2〜1mmの絶縁層を形成した。熱膨張係数3.2×10-6/℃のガラス材では、膜厚に関係なく、ひび割れが生じた。また焼成温度も950℃以上で、ステンレス管の表面に過剰の酸化膜が生成し、ガラスの付着性も悪く、かつステンレス管表面外観も悪い。
【0064】
熱膨張係数5×10-6/℃のガラス材では、膜厚0.8mm以下であれば割れ等の発生もなく、かつ焼成温度も900℃以下とすることができ、金属表面の酸化も押さえられた。
【0065】
熱膨張係数7〜10×10-6/℃のガラス材では、焼成後の絶縁層1mmにおいても割れは無く、かつ焼成温度も800℃以下とすることができた。ただし、これらの膜厚を得られるには、少なくとも2回の塗布・焼成が必要であった。
【0066】
この内面塗布での絶縁層を形成する方法において、回転数を100〜300rpmで塗布・乾燥したものと、1000〜4000rpmで乾燥・焼成したものと、同質のガラス材料で、膜厚0.5mmでの耐電圧破壊値を比較したところ、12kVpから18kVp以上に向上した。このことから、回転数は100〜4000rpmで行なうことが好ましく、1000〜4000rpmとすることがより好ましい。
【0067】
これらは、絶縁層に含まれる50μm以上の気泡がほとんど無く、パッシセンの法則でしめされる気泡内で生じる部分放電が低減したためと考えられた。
【0068】
従来、このオゾン発生機において、通常0.5〜10kHzの正弦波の交流高電圧5kV〜12kVが印加される。この耐電圧の向上により、膜厚を薄くすることができる。
【0069】
従って、かつ絶縁層と放電空間15での分担電圧が、より放電空間15に加えることができるため、接地電極と高電圧電極との間に印加する電圧を低く設定することができた。また誘電体12の絶縁層での熱伝達が良好なり、これにより、オゾン発生量と濃度を一定条件で従来のガラス管を誘電体12とする膜厚1.5mmの接地電極管10と本法で作成した誘電体12の膜厚0.5mmと比較したところ、オゾン発生効率が10〜20%向上した。
【0070】
以上、本発明の好ましい実施例について詳述したが、本実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】無声放電型オゾン発生装置の概念図
【図2】本発明の実施態様を示す概念図
【図3】本発明の実施態様を示す概念図
【符号の説明】
【0072】
10・・接地電極管
12・・誘電体
13・・原料ガス
14・・オゾン化ガス
15・・放電空間
16・・高電圧電源
17・・高電圧電極管
21・・金属管
22・・塗布層
23・・熱風
31・・可動スラリー供給管
33・・回転台
34・・駆動部
35・・ローラ
36・・ノズル
38・・加圧ガス管
39・・ガス供給部
40・・タンク
41・・スラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなす接地電極と、前記接地電極の内側に配置された高圧電極と、前記接地電極と前記高圧電極との間に放電空間となるギャップを形成するスペーサーと、前記接地電極の内面に絶縁層を備え、前記放電空間に酸素を含むガスを供給し、前記接地電極と前記高圧電極の間に電圧を印加して前記放電空間内において放電を発生させてオゾンガスを生成するオゾン発生管の製造方法であって、
前記絶縁層を形成するために、前記接地電極の内面に絶縁材原料を塗布する絶縁材原料塗布工程と、
前記絶縁材原料を所定の温度で焼き付ける焼付工程と、
を有することを特徴とするオゾン発生管の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁材原料塗布工程は、前記絶縁材原料をスラリー状にする拡散工程と、
前記スラリー状の絶縁材原料を前記接地電極の内面に分散塗布する分散塗布工程と、
前記スラリー状の絶縁材原料を分散塗布した前記接地電極を所定の回転数で回転する緻密化工程と、
前記分散塗布された前記スラリー状の絶縁材原料を乾燥する乾燥工程と、
を有する請求項1に記載のオゾン発生管の製造方法。
【請求項3】
前記スラリー状の絶縁材原料に乾燥時の付着強度を上げるための接着剤を付加することを特徴とする請求項2に記載のオゾン発生管の製造方法。
【請求項4】
前記絶縁層は、セラミックス材料または金属酸化物であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のオゾン発生管の製造方法。
【請求項5】
前記絶縁層の熱膨張係数は、5×10-6/℃以上であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のオゾン発生管の製造方法。
【請求項6】
前記絶縁材原料塗布工程の前に、前記接地電極の内面を粗面化処理、清浄化処理および酸化処理の内の少なくとも1の処理をする前処理工程を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のオゾン発生管の製造方法。
【請求項7】
前記塗布工程と前記焼付工程は、回転数100〜4000rpmで行うことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のオゾン発生管の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−221076(P2009−221076A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−69495(P2008−69495)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(507214083)メタウォーター株式会社 (277)
【Fターム(参考)】