説明

オゾン発生装置

【課題】放電用電極と接地電極との間の放電による放電用電極の熱膨張によって、ガラス層にクラックが発生し易く、且つ放電用電極とガラス層との全体の交換が必要な従来のオゾン発生装置の課題を解消する。
【解決手段】放電用電極16の円柱状部16aの放電面が、ガラス繊維布帛28によって覆われている。ガラス繊維布帛28は、その両端部が積層されるように放電用電極16の円柱状部16aの放電面に巻き付けられている。ガラス繊維布帛28の積層された部分が、ガラス繊維糸41によって縫着されている。
【選択図】図5

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオゾン発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水の殺菌や室内空気の消臭等に用いられるオゾンを発生するオゾン発生装置としては、無声放電方式のオゾン発生装置が用いられている。
かかるオゾン発生装置としては、従来、図7に示すオゾン発生装置が提案されている(例えば、下記特許文献1〜3参照)。
図7に示すオゾン発生装置は、円筒状の接地用電極100内に、表面が誘電体としてのガラス層104によって覆われた円筒状の放電用電極102が同心円状に配設されている。かかる接地用電極102の内壁面とガラス層104の表面との間には、放電ギャップ108が形成される。図7に示すオゾン発生装置では、放電用電源102に外部電源106が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭51-145489号公報
【特許文献2】特開平7−277707号公報
【特許文献3】特開平8−231206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図7に示すオゾン発生装置では、放電用電極102に外部電源106から電荷を印加すると、放電用電極102と接地電極100との間に放電が惹起され、放電ギャップ108内に存在する酸素がオゾン化される。
また、かかる放電によって放電用電極102から発生する金属ダクトも、ガラス層104によって放電ギャップ108に進入することを防止できる。
しかし、図7に示すオゾン発生装置では、放電用電極102と接地電極100との間の放電によって発生する熱により、放電用電極102が加熱されて膨張(以下、放電による放電電極の熱膨張と称することがある)し、ガラス層104にクラックが発生することがある。この様に、ガラス層104にクラックが発生すると、放電用電極102及びガラス層104の全体を交換することを要する。
一方、電用電極102と接地電極100との間に印加する印加電圧を低下できれば、放電によって発生する熱量も低下し、ガラス層104に発生するクラックを防止可能である。この様に、印加電圧を低下するためには、ガラス層104の厚さを薄くすることが必要である。
しかし、放電用電極102の外周面に、薄く且つ均一厚さのガラス層104を形成することは至難のことである。このため、従来のオゾン発生装置では、印加電圧の低下を図ることが困難な厚さのガラス層104を、放電電極102の外周面に形成している。
従って、ガラス層104にクラックが発生したとき、放電用電極102及びガラス層104を交換しているのが現状である。
そこで、本発明は、放電用電極と接地電極との間の放電による放電用電極の熱膨張によって、ガラス層にクラックが発生し易く、且つ放電用電極とガラス層との全体の交換が必要な従来のオゾン発生装置の課題を解消することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決すべく、オゾンや酸に耐久性を有するステンレス製であって、その放電面が露出する放電電極を具備するオゾン発生装置を試みた。
しかし、かかるオゾン発生装置では、放電面に所定厚さのガラス層を形成した放電電極を用いた図7に示すオゾン発生装置で発生したオゾン発生量に比較して、オゾン発生量が低減した。放電電極の露出する放電面からの強過ぎる放電が発生し、放電ギャップ内に既に発生しているオゾンを消滅させたからである。更に、放電電極の露出する放電面から金属ダストも発生した。
このため、本発明者は、更に検討を重ね、外周面にガラス繊維布帛を巻き付けた放電用電極を用い、放電用電極と接地電極との間に電荷を印加したとき、放電用電極の放電面から放電ギャップ内に程よい放電が発生すること、放電電極の熱膨張が許容されること、及び放電電極の放電面から金属ダストが殆ど発生しないことを見出した。また、使用頻度が高くなると、ガラス繊維布帛が損傷してしまうことも見出した。
【0006】
そこで、誘電体材料から成る筒状体と、前記筒状体の外周面に配設された接地用電極と、前記筒状体内に、空気が流れる放電ギャップを介して配設された柱状の放電用電極とを具備し、前記放電ギャップ中の酸素を放電用電極の放電面と接地用電極との間の放電によってオゾン化するオゾン発生装置であって、前記放電用電極の放電面が、ガラス繊維布帛によって覆われており、前記ガラス繊維布帛は、その両端部が積層されるように前記放電用電極の放電面に巻き付けられており、前記ガラス繊維布帛の積層された部分が、ガラス繊維糸によって縫着されている(縫い付けられている)オゾン発生装置を提案できる。これにより、ガラス繊維糸を抜き取ることでガラス繊維布帛を簡単に交換できる。
本発明者らが提供した課題を解決する手段において、下記の好ましい態様を上げることができる。
前記放電用電極の放電面に、ガラス繊維布帛の縫着用の凹溝が形成されている。これにより、ガラス繊維布帛を放電用電極の放電面に容易に縫着でき、縫着することによって、放電用電極の放電面にガラス繊維布帛を簡単に装着でき、且つ簡単に交換できる。
【0007】
また、放電用電極として、放電面が形成された本体部の両端部から、前記本体部よりも細いシャフト体が延出された放電用電極を用い、前記放電用電極を挿入した筒状体の両端の各々から突出する前記シャフト体の端部を、前記筒状体の両端部に被着した、オゾンに耐久性を有する樹脂から成るキャップ部によって支承している。これにより、放電用電極を容易に抜き出すことができる。
かかる筒状体の一端部に被着したキャップ部内に、酸素含有流体を前記筒状体内に導入する導入流路を形成し、前記筒状体の他端部に被着されたキャップ部内に、オゾン含有流体を前記筒状体内から導出する流路を形成することによって、酸素含有流体を放電ギャップに容易に導入でき、オゾン含有流体を放電ギャップから容易に導出できる。
更に、放電用電極の両端部の各々に装着したシャフト体の一方の端部に、前記放電用電極に電荷を印加する電極を設けることによって、放電用電極に容易に電荷を印加できる。
かかる放電用電極として、ステンレス製の放電性電極を用いることによって、オゾンや酸等に耐久性を有する放電用電極とすることができる。
尚、接地用電極として、筒状体の円周方向に複数のフィン体が放射状に形成されている接地用電極を用いることによって、放電用電極と接地用電極との間の放電によって発生する熱を迅速に放熱できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明者が提案したオゾン発生装置では、誘電体材料から成る筒状体の外周面に配設した接地用電極と、放電ギャップを介して配設した柱状の放電用電極の放電面がガラス繊維布帛によって覆われている。
かかるガラス繊維布帛には、ガラス繊維間に形成された微小隙間が形成されている。このため、接地用電極と放電用電極との間に電荷を印加したとき、ガラス繊維布帛の微小隙間から放電が発生する。かかる微小隙間は、ガラス繊維布帛に均一に形成されているため、放電用電極の放電面の全面に亘って均一に放電が発生し、放電ギャップ内の酸素をオゾン化できる。
更に、放電用電極からの金属ダストは、ガラス繊維布帛によって放電ギャップに進入することを防止している。
しかも、ガラス繊維布帛は、ガラス繊維間の微小間隙によって伸縮性を有するため、放電による放電用電極の熱膨張を充分に許容できる。
また、ガラス繊維布帛は、ガラス繊維糸を用いて縫着されて、放電用電極の放電面を覆っているため、ガラス繊維糸を抜き取ることでガラス繊維布帛のみを容易に交換でき、放電用電極を交換することを要しない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明者が提案したオゾン発生装置の一例を説明する部分断面図である。
【図2】図1に示すX−Xでの断面図である。
【図3】図1に示す放電用電極の部分断面図である。
【図4】放電用電極の放電面にガラス繊維布帛を装着する方法を説明する部分断面図である。
【図5】放電用電極の放電面にガラス繊維布帛を装着する方法を説明する部分断面図である。
【図6】図5に示すY−Yでの断面図である。
【図7】従来のオゾン発生装置を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者が提案したオゾン発生装置の一例を図1に示す。図1に示すオゾン発生装置には、誘電体材料としての石英ガラスから成る筒状体10と、筒状体10の外周面に配設されたアルミニュウムから成る接地用電極12と、筒状体10内に挿入された、ステンレス製の放電用電極16との間に、放電ギャップ14が形成されている。
かかる接地用電極12は、図2に示す様に、筒状体10の円周方向に複数のフィン体12a,12a・・が放射状に形成されている。この接地用電極12のフィン体12a,12a・・は、放電用電極16と接地用電極12との間の放電によって発生した熱を迅速に放熱するためである。
【0011】
また、放電用電極16は、図3に示す様に、放電ギャップ14に対応する部分は、円柱状部16aであり、その表面には、長手方向に凹溝30が形成されている。この円柱状部16aの両端部は、円錐状部16b,16bに形成されている。かかる円錐状部16b,16bの各々には、シャフト体18a,18bの一端部が螺着されている。
これにより、放電用電極16よりも細いシャフト体18a、18bが、放電用電極16の両端部から延出されている。なお、シャフト体18a、18bが放電面として寄与しないように放電用電極16より細いシャフト体18a、18bを用いている。
このシャフト体18a,18bが円錐状部16b,16bに螺着された放電用電極16は、シャフト体18a,18bの各他端部が、筒状体10の端部から突出するように、筒状体10内に挿入される。
筒状体10の端部の各々から突出するシャフト体18a,18bの各他端部は、図1に示す様に、筒状体10の端部の各々に被着されているキャップ部20a,20bに、ネジ22a,22bによって接続されている。このため、放電用電極16は、キャップ部20a,20bに支承されている。
従って、ネジ22a,22bをキャップ部20a,20bから取り外すことによって、キャップ部20a,20bを筒状体10から取り外し、放電用電極16を筒状体10から容易に抜き出すことができる。
尚、ネジ22bは、外部電源26と放電用電極16とを接続する接続ネジでもある。
【0012】
かかるキャップ部20a,20bは、オゾンや酸に対して耐久性を有するフッ素樹脂によって形成されている。また、キャップ部20a,20bと筒状体10とのシールは、パッキン21,21によってシールされている。
更に、キャップ部20a内には、筒状体10の端面に開口する導入流路24aが形成されている。導入流路24aは、酸素含有流体として空気を外部から筒状体10内の放電ギャップ14に導入する流路である。
また、キャップ20b内にも、筒状体10の端面に開口する導出流路24bが形成されている。導出流路24bは、筒状体10内の放電ギャップ14のオゾン含有流体を外部に導出する流路である。
【0013】
放電用電極16の円柱状部16aに形成された放電面は、図1に示す様に、ガラス繊維布帛28によって覆われている。ガラス繊維布帛28は、その両端部が積層されるように放電用電極16の放電面に巻き付けられており、ガラス繊維布帛28の積層された部分が、ガラス繊維糸41によって縫着されている(図5参照)。ガラス繊維布帛28の縫着部からガラス繊維糸41が盛り上がっているが、凹溝30内に盛り上がったガラス繊維糸41が入り込むことで、円柱状部16aに形成された放電面、すなわちガラス繊維布帛28が円柱状に放電面を確保することができる。
かかるガラス繊維布帛28は、織物、編物、不織布のいずれであってもよいが、織物、特に平織のガラス繊維布帛28を好適に用いることができる。その厚さは、0.2〜0.3mmであることが好ましい。図7に示すガラス層104では、その厚さは0.5〜1mm程度が限界である。
図1に示すオゾン発生装置では、ガラス繊維布帛28として、(株)寺岡製作所製の「ガラスクロス粘着テープNo.540S」を用いた。
かかるガラス繊維布帛28は、平織であって、一面側に薄いシリコーン系の粘着剤から成る粘着テープが付着している。しかし、後述する様に、この粘着テープは、ガラス繊維布帛28の放電用電極16の放電面への装着に用いなかった。このため、粘着テープが付着していないガラス繊維布帛28を用いることができる。
【0014】
本実施形態では、ガラス繊維布帛28を放電用電極16の円柱状部16aに形成された放電面に装着する際には、図4に示す様に、ガラス繊維布帛28を、その両端部が凹溝30上に積層されるように、放電用電極16の放電面に巻き付ける。
次いで、凹溝30を利用して、ガラス繊維布帛28の積層された部分を針40とガラス繊維糸41を用いて縫着する(縫い付ける)。
図5および図6に示す様に、ガラス繊維糸41によってガラス繊維布帛28を放電用電極16の放電面に装着することによって、放電用電極16の放電面がガラス繊維布帛28に直接接触できる。このように、凹溝30が、縫着する際の、針40を通すための空間となっているため、ガラス繊維布帛28を放電用電極16の放電面に容易に装着することができる。
なお、放電用電極16の放電面にガラス繊維布帛28を装着するにあたり、本実施形態では、巻き付けた後、その積層部分を縫着しているが、予めガラス繊維糸41によって縫着したガラス繊維布帛28を放電用電極16の放電面に装着しても良い。この場合、縫着部からガラス繊維糸41が盛り上がっているが、凹溝30内に盛り上がったガラス繊維糸41が入り込むことで、容易にガラス繊維布帛28を放電用電極16の放電面に装着することができる。
また、放電による放電用電極16の熱膨張は、ガラス繊維布帛28の自身の伸縮性とガラス繊維糸41による縫着とが相俟って、その熱膨張を充分に許容できる。
更に、放電用電極16の放電面に巻き付けられているガラス繊維布帛28の交換も、ガラス繊維糸41を抜き取ることで、容易に行うことができる。
【0015】
図1に示すオゾン発生装置を用いてオゾン含有空気を得るには、キャップ部20aの導入流路24aを経由して外部から導入した空気流を、放電用電極16の放電面と筒状体10との間に形成された放電ギャップ14に流す。
更に、外部電源26から放電用電極16に電荷を印加し、放電用電極16の放電面と接地用電極12との間で放電を惹起させる。かかる放電によって、放電ギャップ14内に存在する空気流中の酸素はオゾン化され、オゾンを含有するオゾン含有空気流は、キャップ部20bの導出流路24bから外部に導出される。導出されたオゾン含有空気流は、室内のたばこ臭等の消臭やオゾン水の製造に用いられる。
【0016】
図1に示すオゾン発生装置では、放電用電極16の放電面と接地用電極12との間での放電は、ガラス繊維布帛28で覆われている放電用電極16の放電面の全面に亘って均一に放電ビームが発生し、放電ギャップ14内の酸素を効率的にオゾン化でき、且つ金属ダストが放電ギャップ14内に放出されることも防止できる。
つまり、ガラス繊維布帛28には、ガラス繊維間に形成された微小隙間が形成されている。このため、接地用電極12と放電用電極16との間に電荷を印加したとき、ガラス繊維布帛28の微小隙間から放電が発生する。かかる微小隙間は、ガラス繊維布帛28に均一に形成されているため、ガラス繊維布帛28で覆われている放電用電極16の放電面の全面に亘って均一に放電が発生する。
一方、放電用電極16の放電面を覆うガラス繊維布帛18を除去し、放電面が露出している放電用電極16と接地用電極12との間での放電は、局部的に太い放電が発生し、金属ダストが放電ギャップ14内に放出された。
【符号の説明】
【0017】
10 筒状体
12 接地用電極
12a フィン体
14 放電ギャップ
16 放電用電極
16a 円柱状部
16b 円錐状部
18a,18b シャフト体
20a,20b キャップ部
21 パッキン
22a,22b ネジ
24a 導入流路
24b 導出流路
26 外部電源
28 ガラス繊維布帛
30 凹溝
40 針
41 ガラス繊維糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体材料から成る筒状体と、
前記筒状体の外周面に配設された接地用電極と、
前記筒状体内に、空気が流れる放電ギャップを介して配設された柱状の放電用電極と
を具備し、
前記放電ギャップ中の酸素を前記放電用電極の放電面と前記接地用電極との間の放電によってオゾン化するオゾン発生装置であって、
前記放電用電極の放電面が、ガラス繊維布帛によって覆われており、
前記ガラス繊維布帛は、その両端部が積層されるように前記放電用電極の放電面に巻き付けられており、
前記ガラス繊維布帛の積層された部分が、ガラス繊維糸によって縫着されていることを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
前記放電用電極の放電面には、前記ガラス繊維布帛の縫着用の凹溝が形成されている請求項1記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
前記放電用電極シャフト体が、前記放電用電極の両端部から延出されており、
前記筒状体の両端部に、オゾンに耐久性を有する樹脂から成るキャップ部が被着されており、
前記筒状体の両端の各々から突出する前記シャフト体の端部が、前記キャップ部によって支承されている請求項1または2記載のオゾン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−285337(P2010−285337A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13755(P2010−13755)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【特許番号】特許第4499187号(P4499187)
【特許公報発行日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(307024598)株式会社FLC (1)
【Fターム(参考)】