説明

オゾン発生装置

【課題】オゾン発生装置のサイズを小型化し、製造コストが低廉で簡易な製造方法に刷新する。
【解決手段】オゾン発生装置1は、ガラス基板2と駆動電極3A,3Bとを備える。ガラス基板2は、放電空間2A,2B,2Cとなる開口部が主面の面内方向に配列して形成される。駆動電極3A,3Bは、開口部に充填された電極であり、放電空間2A,2B,2Cを挟んで対向配置され、駆動電圧が印加される。これにより、放電空間2A,2B,2Cでは誘電体バリア放電が発生し、オゾンが発生することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体バリア放電を利用してオゾンを発生させるオゾン発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来のオゾン発生装置(例えば特許文献1参照。)の構成を説明する図である。
オゾン発生装置100は、第1金属板101、第2金属板102、第1硝子板103、第2硝子板104、および、スペーサ105を備える。第1金属板101は第1硝子板103上に配置され、第2金属板102は第2硝子板104上に配置される。第1硝子板103と第2硝子板104とはスペーサ105を介して接合される。第1金属板101と第2金属板102との間には駆動電圧が印加され、第1硝子板103と第2硝子板104との間に形成される放電空間で放電が生じてオゾンが発生する。放電空間は外部と通気し、オゾンを排出可能に構成されている。第1硝子板103と第2硝子板104とは誘電体であり、このような放電空間に露出する誘電体を介して生じる放電現象は誘電体バリア放電と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2983153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のオゾン発生装置は、上記したように2つの金属板と2つの硝子板とをスペーサを介して積層接合する構造であるため、その製造に多数の工程が必要で製造工程が全体として複雑であり、製造コストを低廉にすることが難しかった。また、放電空間を大きくする場合には基板主面方向にサイズを大型化させる必要があり、本質的に小型化に不適な構成であった。また、構造強度の観点から硝子板の薄化には限界があり、電極間隔が広がることから駆動電圧の低電圧化が困難で、電源コストが大きくならざるを得なかった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、小型化や低電圧化が容易で、製造工程を簡易なものに刷新することができる、オゾン発生装置を提供にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るオゾン発生装置は、放電空間となる開口部が主面に形成される基板と、前記放電空間を介して前記基板の面内方向に対向し、駆動電圧が印加される駆動電極対と、を備え、駆動電極と放電空間との間に誘電体層を設けた構成である。
または、誘電体材料で構成され、複数の開口部が主面の面内方向に配列して形成される基板と、放電空間となる開口部の両脇の開口部に充填され、前記放電空間を介して前記基板の面内方向に対向し、駆動電圧が印加される駆動電極対と、を備える構成である。
【0007】
これらの構成では、誘電体および放電空間を介して基板の面内方向に対向する駆動電極対に駆動電圧を印加することにより、放電空間で誘電体バリア放電を生じさせてオゾンを発生させることができる。放電空間のサイズを拡張する場合、放電空間を面内方向に大きくすれば基板主面方向にサイズを拡張する必要がなく、オゾン発生装置の小型化に好適である。また、駆動電極と放電空間との間に介在する誘電体層や基板を極めて薄化することができ、駆動電圧を低電圧化できる。さらには、基板に設ける開口部に電極を充填するのみでオゾン発生装置の要部を構成することができ、製造工程の簡易化と製造コストの低廉化を進めることができる。
【0008】
上述のオゾン発生装置において、前記放電空間となる開口部を複数備え、隣接する開口部の間に駆動電極を一つずつ配置し、複数の駆動電極を配列の1つおきに導通させると好適である。
この構成では、2つの放電空間に挟まれる駆動電極を、両側の放電空間に対する共通の駆動電極とすることができ、基板面積の低減と構成の簡易化を進めることができる。
【0009】
上述のオゾン発生装置において、前記複数の開口部の配列方向に延設され、複数の駆動電極を配列の1つおきに導通させる接続電極を備え、前記駆動電極と前記放電空間との間隔を、前記接続電極と前記放電空間との間隔よりも狭いものにすると好適である。
【0010】
この構成では、接続電極と放電空間との間の基板表面で沿面放電が生じることや、接続電極から誘電体バリア放電が生じることを防ぐ(抑制する)ことができる。
【0011】
上述のオゾン発生装置において、基板の主面に並行電極と導通して形成される端子電極と、基板の両主面に放電空間および端子電極の形成位置を除いて形成される絶縁膜と、を備えると好適である。
【0012】
この構成では、基板表面での沿面放電などが発生することをより防ぐ(抑制する)ことができる。
【0013】
上述のオゾン発生装置において、最端に配置される並行電極は、隣接する並行電極に近接する内側の領域を前記絶縁膜で覆い、外側の領域に前記端子電極を接続した構成であると好適である。
【0014】
この構成では、端子電極と放電空間との間に基板表面での沿面放電が発生することを防ぐ(抑制する)ことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、誘電体および放電空間を介して基板の面内方向に駆動電極を対向させ、その間に駆動電圧を印加することにより、放電空間で誘電体バリア放電を生じさせてオゾンを発生させることができる。また、基板に開口部を設けてそれに電極を充填するのみでオゾン発生装置の要部を構成でき、製造工程の簡易化と製造コストの低廉化を進めることができる。また、放電空間のサイズを拡張する場合、放電空間を面内方向に大きくすれば基板主面方向にサイズを拡張する必要がなく、オゾン発生装置の小型化に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のオゾン発生装置の構成例を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態に係るオゾン発生装置の構成例を説明する図である。
【図3】図2のオゾン発生装置の製造方法を説明する図である。
【図4】実施例における開口部周辺の電界強度分布を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は実施形態に係るオゾン発生装置1の構成例を説明する図であり、図2(A)は要部断面図、図2(B)は要部平面図である。
オゾン発生装置1は、ガラス基板2、駆動電極3A,3B、絶縁膜4A,4B、端子電極5A,5B、および、駆動電圧源6を備える。
【0018】
ガラス基板2は平面視して長方形状であり、厚み約1mmで、両主面間を貫通する放電空間2A,2B,2Cを備える。なお、ガラス基板2の厚みはより厚いほうが放電空間の体積を確保でき、チップサイズの小型化に貢献する。放電空間2A,2B,2Cは、平面視して基板2の短手方向の長さが約1mm程度で幅が100μm程度の長方形状に形成され、それぞれ基板2の長手方向に放電空間2A,2B,2Cの順に配列される。
【0019】
駆動電極3A,3Bは、平面視して基板の短手方向に開口したコの字状の電極であり、基板2に同形状で設けられた開口部に充填される。平面視した線路幅は約100μmである。駆動電極3A,3Bは、基板2の長手方向に延設される接続電極部3A1,3B1と、接続電極部3A1,3B1の両端部から基板2の短手方向に延設される並行電極部3A2,3A3,3B2,3B3と、を備える。並行電極部3A2、放電空間2A、並行電極部3B2、放電空間2B、並行電極部3A3、放電空間2C、並行電極部3B3は、それぞれ間隔約100μmで並行し、記載順に基板2の長手方向に配列される。接続電極部3A1,3B1と放電空間2A,2B,2Cとの間隔は、並行電極部3A2,3A3,3B2,3B3と放電空間2A,2B,2Cとの間隔である100μmよりも十分に広くしていて、これにより、接続電極部3A1,3B1から放電が生じることを防いでいる。
【0020】
端子電極5Aは、基板2の上面における並行電極部3A2に一部重なる領域に形成される。端子電極5Bは、基板2の上面における並行電極部3B3に一部重なる領域に形成される。駆動電圧源6は、端子電極5A,5Bの間に高周波バイアスを印加する。絶縁膜4Aは基板上面に、放電空間2A,2B,2Cおよび端子電極5A,5Bの形成位置を除いて形成される。絶縁膜4Bは基板2の下面における放電空間2A,2B,2Cの形成位置を除いて形成される。絶縁膜4A,4Bにより駆動電極3A,3Bの表面を被覆することで、基板2と上下空間との界面で沿面放電が生じることを防ぐことができる。また、端子電極5A,5Bを、並行電極部3A2,3B3の配列方向外側の位置に接続し、並行電極部3A2,3B3の配列方向内側の領域を絶縁膜4Aで被覆している。これにより、端子電極5A,5Bと隣接する放電空間2A,2Cとの間隔を離し、それらの間に沿面放電が生じることを防いでいる。
【0021】
このオゾン発生装置1では、放電空間2A,2B,2Cと並行電極部3A2,3A3,3B2,3B3との間に基板2による誘電体層が介在し、隣接する並行電極間に高周波バイアスを印加することで、放電空間2A,2B,2Cにて誘電体バリア放電が生じる。放電空間2A,2B,2Cは基板2の上方空間と下方空間とに通気し、誘電体バリア放電により放電空間2A,2B,2Cに発生するオゾンは、上方空間または下方空間に排出される。
【0022】
この構成は、基板2の厚み程度に全体の高さを抑えることができ、従来構成に比べてチップサイズの大幅な低背化を実現することができる。また、放電空間2Aと放電空間2Bとの間に配置される並行電極部3A3と、放電空間2Bと放電空間2Cとの間に配置される並行電極部3B2と、は両脇の放電空間に対して高周波バイアスを印加する共通電極として機能するので、各放電空間に対して個別の電極で高周波バイアスを印加する場合よりも基板面積を抑制でき、オゾン発生装置1の面内方向でのサイズを低減できる。また、各放電空間と並行電極部との間の間隔を従来よりも大幅に薄くでき、駆動電圧の低電圧化や電源コストの低廉化を進めることができる。
【0023】
図3は、オゾン発生装置1の製造方法の一例を説明する図であり、製造過程の各段階での断面図を例示している。
【0024】
まず、開口未形成のガラス基板12を用意する(S1)。
次に、ガラス基板12に対してエッチング等の処理を施し、後に駆動電極3A,3Bが充填されるコの字状開口部13A,13Bを、基板12の上下面間を貫通するように形成する(S2)。
次に、開口部13A,13Bにメッキ等で金属を充填した後にCMP法を用いて表面を研磨し、駆動電極3A,3Bを形成する(S3)。
次に、基板12および駆動電極3A,3Bの表面に絶縁膜4A,4Bを形成する(S4)。
次に、絶縁膜4Aを所定パターンでエッチングし、後に端子電極5A,5Bが形成される矩形状開口部15A,15Bを形成する(S5)。
次に、矩形状開口部15A,15Bにメッキ等で金属を充填し、端子電極5A,5Bを形成する(S6)。
最後に、ガラス基板12および絶縁膜4A,4Bに対してエッチング等の処理を施し、放電空間2A,2B,2Cとなる開口部を、基板の上下面間を貫通するように形成し、基板2を構成する(S7)。
以上の製造方法で、本実施形態のオゾン発生装置1を製造することができる。この製造方法では、基板に開口部を設けてそれに電極を充填するのみでオゾン発生装置の要部を構成でき、製造工程の簡易化と製造コストの低廉化を進めることができる。
【0025】
次に、放電空間の開口周辺での電界分布について説明する。図4は、駆動電極対に対して6kVの駆動電圧を印加した状態での電界強度を説明する図である。
【0026】
図4(A)は絶縁膜を省いて放電空間22A、誘電体層22B、電極23を設けた構成を示している。この構成では放電空間22A内部だけでなく、上方空間における放電空間22Aと誘電体層22Bと電極23との近傍にも比較的強い電界が分布している。したがって、この構成では上方空間に露出する誘電体層22Bの界面で沿面放電が発生する危険性がある。
【0027】
図4(B)は絶縁膜24、放電空間22A、誘電体層22B、電極23を設けた構成を示している。絶縁膜24としてはスパッタやCVDによる酸化膜や窒化膜、スピン塗布によるポリイミド膜を約1〜2μmの厚みで形成している。この場合、放電空間22A内部と上方空間における放電空間22A近傍とに比較的強い電界が分布しているが、誘電体層22Bや電極23の近傍には殆ど電界が分布していない。したがって、この構成では上方空間に露出する絶縁膜24の界面で沿面放電が発生する危険性は極めて低いものになる。
【0028】
このように、絶縁膜を設ける構成によって沿面放電の発生を防げることが電界分布により確認できる。
【0029】
なお、上記した実施形態はあくまで例示であり、本発明の作用効果は特許請求の範囲の構成であれば、どのような構成であっても得ることができる。例えば、放電空間や開口内電極は必ずしも基板を貫通する必要はなく、基板の一方主面に形成された溝により構成してもよい。また、放電空間に露出する誘電体層は、基板と一体でなくてもよく、例えば電極に積層形成された誘電体膜で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…オゾン発生装置
2…ガラス基板
2A,2B,2C…放電空間
3A,3B…駆動電極
3A1,3B1…接続電極部
3A2,3A3,3B2,3B3…並行電極部
4A,4B…絶縁膜
5A,5B…端子電極
6…駆動電圧源
22A…放電空間
22B…誘電体層
23…電極
24…絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間となる開口部が主面に形成される基板と、
前記放電空間を介して前記基板の面内方向に対向し、駆動電圧が印加される駆動電極と、
を備え、
前記駆動電極と前記放電空間との間に誘電体層を設けた、オゾン発生装置。
【請求項2】
誘電体材料で構成され、複数の開口部が主面の面内方向に配列して形成される基板と、
放電空間となる開口部の両脇の開口部に充填され、前記放電空間を介して前記基板の面内方向に対向し、駆動電圧が印加される駆動電極と、
を備えるオゾン発生装置。
【請求項3】
前記放電空間となる開口部を複数備え、隣接する開口部の間に前記駆動電極を一つずつ配置し、複数の駆動電極を配列方向の1つおきに導通させた、請求項2に記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
前記複数の開口部の配列方向に延設され、前記複数の駆動電極を配列の1つおきに導通させる接続電極を備え、前記駆動電極と前記放電空間との間隔を、前記接続電極と前記放電空間との間隔よりも狭いものにした、請求項3に記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
最端に配置される駆動電極と導通して前記基板の主面に形成される端子電極と、前記放電空間および前記端子電極の形成位置を除いて、前記基板の主面に形成される絶縁膜と、を備える、請求項2〜4のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
前記最端に配置される駆動電極は、隣接する駆動電極に近接する内側の領域を前記絶縁膜で覆い、外側の領域に前記端子電極を接続した、請求項5に記載のオゾン発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−176869(P2012−176869A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41157(P2011−41157)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】