説明

オゾン養液生成装置

【課題】所望濃度のオゾン養液を容易に得ることができるとともに、オゾンが周囲に飛散してしまうのを回避することができるオゾン養液生成装置を提供する。
【解決手段】養液栽培で使用されべく肥料が溶解された養液中にオゾンを溶解してオゾン養液を得るためのオゾン養液生成装置であって、内部に酸素を流通させる酸素流通路が形成されるとともに当該酸素流通路を挟んで対向した部位に電圧を印加して放電させることによりオゾンを発生させるオゾン発生手段2と、養液を所定量収容し得るオゾン溶解タンク4と、オゾン発生手段2から延びてオゾン溶解タンク4に連結され、当該オゾン発生手段2により発生したオゾンを当該オゾン溶解タンク4に供給し得るオゾン供給路L2とを備え、オゾン溶解タンク4内の養液に対してオゾン供給路L2から供給されたオゾンを溶解させてオゾン養液を得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オゾン発生手段で発生したオゾンを養液に溶解させてオゾン養液を得るためのオゾン養液生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水耕栽培など養液栽培(土を使わない無土壌栽培)においては、肥料が溶解された養液を植物に与えるものとされているが、病気発生の抑制を目的として当該養液中にオゾン水を混入させて使用することが提案されるに至っている(特許文献1参照)。即ち、オゾンを水に溶解させたオゾン水は、その殺菌消毒効果が顕著であることから、立ち枯れ病などの原因菌に対し消毒可能とされているのである。かかるオゾン水は、対向する電極に電圧を印加させて放電させ、その間に酸素を流通させることによりオゾンを発生させた後、当該オゾンを水に溶解させることにより得られるものである。
【特許文献1】特開2002−191244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の如く生成したオゾン水を養液に混ぜてオゾン養液を生成するものにあっては、大量のオゾン養液を生成しようとする場合、オゾン濃度が著しく低下して殺菌効果を得ることができない虞があった。また、オゾン水を得る際、通常、水中にオゾンをバブリングさせて溶解させるため、当該オゾンが周囲に飛散してしまい作業環境が悪化してしまう虞もあった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、所望濃度のオゾン養液を容易に得ることができるとともに、オゾンが周囲に飛散してしまうのを回避することができるオゾン養液生成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、養液栽培で使用されるべく肥料が溶解された養液中にオゾンを溶解してオゾン養液を得るためのオゾン養液生成装置であって、内部に酸素を流通させる酸素流通路が形成されるとともに当該酸素流通路を挟んで対向した部位に電圧を印加して放電させることによりオゾンを発生させるオゾン発生手段と、前記養液を所定量収容し得るオゾン溶解タンクと、前記オゾン発生手段から延びて前記オゾン溶解タンクに連結され、当該オゾン発生手段により発生したオゾンを当該オゾン溶解タンクに供給し得るオゾン供給路とを備え、前記オゾン溶解タンク内の養液に対して前記オゾン供給路から供給されたオゾンを溶解させてオゾン養液を得ることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のオゾン養液生成装置において、前記オゾン溶解タンクの上部から延びて前記オゾン発生手段に連結され、当該オゾン溶解タンク内の未溶解のオゾンを当該オゾン発生手段に送り込み可能な戻り流路を具備し、前記戻り流路及びオゾン供給路により未溶解のオゾンを前記オゾン溶解タンクとオゾン発生手段との間で循環可能としたことを特徴とする。
【0007】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のオゾン養液生成装置において、酸素供給源と接続される酸素吸入口から延びて前記戻り流路の途中と連結され、当該戻り流路を介して前記オゾン発生手段の酸素流通路に酸素を供給可能な酸素供給路を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によれば、オゾン溶解タンク内の養液に対してオゾン供給路から供給されたオゾンを溶解させてオゾン養液を得るので、所望濃度のオゾン養液を容易に得ることができるとともに、オゾンが周囲に飛散してしまうのを回避することができる。
【0009】
請求項2の発明によれば、戻り流路及びオゾン供給路により未溶解のオゾンをオゾン溶解タンクとオゾン発生手段との間で循環可能としたので、オゾンの周囲への飛散をより確実に回避することができるとともに、未溶解のオゾンを再利用でき、装置のランニングコストを低減させることができる。
【0010】
請求項3の発明によれば、酸素供給源と接続される酸素吸入口から延びて戻り流路の途中と連結され、当該戻り流路を介してオゾン発生手段の酸素流通路に酸素を供給可能な酸素供給路を具備したので、酸素と共に未溶解のオゾンがオゾン発生手段に供給されて効率よくオゾンを発生させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るオゾン養液生成装置は、養液栽培で使用されべく肥料が溶解された養液中にオゾンを溶解してオゾン養液を得るためのものであり、図1〜図3に示すように、オゾン発生手段2と、オゾン溶解タンク4と、冷却液収容タンク5と、酸素をオゾン発生手段2に供給するための酸素供給路L1と、オゾン発生手段2で発生したオゾンをオゾン溶解タンク4に供給するためのオゾン供給路L2と、オゾン溶解タンク4に接続されて養液が流通する養液供給路L4と、オゾン溶解タンク4に接続されて当該オゾン溶解タンク4内のオゾン養液を排出するオゾン養液排出路L5と、冷却液が流通する流路L6及びL7等とから主に構成されている。
【0012】
尚、図中符号L1aは、不図示の酸素供給源(酸素ボンベ等)と接続される酸素吸入口、L4aは養液栽培の栽培槽と連結され、当該栽培槽内の養液が導入される養液吸入口、符号L5aは養液栽培の栽培槽と連結され、当該栽培槽内へオゾン養液が吐出される吐出口をそれぞれ示しているとともに、養液供給路L4の途中の符号V2は、バルブを示している。また、本オゾン養液生成装置における種々構成要素は、筐体1内に配設されている。
【0013】
養液栽培とは、土を使わない栽培(無土壌栽培)をいい、例えば水耕の他、固形培地耕、噴霧耕などが挙げられる。水耕には、主に湛液型水耕、NFTなどがあり、固形培地耕には、主に無機培地耕及び有機培地耕などがある。噴霧耕には噴霧水耕、噴霧耕などがある。本発明においては何れの養液栽培にも適用可能である。
【0014】
オゾン発生手段2は、3重管方式の石英管から成り、図2及び図3に示すように、主に第1管状部材2a、第2管状部材2b及び第3管状部材2cにて構成されている。即ち、第1管状部材2aの外周を間隙を有しつつ覆う如く第2管状部材2bが形成され、更に当該第2管状部材2bの外周を間隙を有しつつ覆う如く第3管状部材2cが形成されており、第1管状部材2aの内部が第1冷却液流通路W1、第1管状部材2aと第2管状部材2bとの間の間隙が酸素流通路O、第2管状部材2bと第3管状部材2cとの間の間隙が第2冷却液流通路W2を構成している。
【0015】
酸素流通路Oの一端は、酸素供給路L1が接続された戻り流路L3と接続されているとともに、他端はオゾン供給路L2と接続されている。また、酸素流路供給路Oを挟んで対向した部位(即ち、第1管状部材2a及び第2管状部材2b)には、図示しない電極が形成されているとともに、これら電極に所定の電圧を印加し得る電圧印加手段3が接続されており、当該電圧印加手段3による電圧の印加で酸素流通路Oにおいて放電がなされるよう構成されている。
【0016】
これにより、戻り流路L3を介して酸素供給路L1から供給された酸素(O)は、酸素流通路Oを流通する過程で放電により反応し、オゾン(O)が発生することとなり、その得られたオゾンがオゾン供給路L2に排出される。一方、冷却液を導入する流路L6は、第1冷却液流通路W1、接続流路L6a、第2冷却液流通路W2を介して流路L7と接続されており、これら流路を流通する冷却液によりオゾン発生手段2を冷却し得るようになている。
【0017】
ところで、オゾン供給路L2の先端は、図1に示すように、養液供給路L4に配設されたエジェクタ7に接続されており、オゾン発生手段2で発生したオゾンがエジェクタ7を介して養液と共にオゾン溶解タンク4に至るよう構成されている。即ち、エジェクタ7により養液とオゾンとが良好に混合し、養液にオゾンが溶解してオゾン養液が得られるとともに、その得られたオゾン養液がオゾン溶解タンク4に所定量収容されるのである。かかるオゾン溶解タンク4内のオゾン養液は、オゾン養液排出路L5の吐出口L5aから吐出可能とされ、例えば水耕栽培などの養液栽培に使用されることとなる。
【0018】
また、オゾン溶解タンク4の上部(気層側)からは、戻り流路L3、排気流路L9が延設されるとともに、下部からは液位監視管L8が上方に向かって延設されている。然るに、戻り流路L3は、その途中に液位監視管L8の分岐管L8a、L8bを介して延設され、オゾン発生手段2の酸素流通路Oに連通するよう構成されている。戻り流路L3の途中には、バルブV4が接続されている。これにより、バルブV4を開状態とすれば、オゾン溶解タンク4の気層中に放出された酸素やオゾン等がオゾン発生手段2の酸素流通路Oに再び導かれることとなる。
【0019】
尚、図中の符号11、V3は、排気流路L9に接続された圧力センサ及びバルブを示しており、これらによって、装置の使用初期におけるオゾン溶解タンク4内の圧力監視及び圧力の逃がしを行い得るようになっている。また、排気流路L9の先端は、オゾン養液排出路L5の途中に接続されている。
【0020】
更に、液位監視管L8は、上端の分岐管L8a、L8bにて戻り流路L3の途中と接続されているため、オゾン溶解タンク4内のオゾン養液が何らかの理由(原料水と同一配管上で稼動する電磁弁等の急閉による急激なオゾン溶解タンク4内部の圧力上昇などの理由)で吹き上がり、戻り流路L3に至った場合でも当該オゾン溶解タンク4内に戻し得るよう構成されている。尚、オゾン溶解タンク4内の圧力が過大となり、オゾン養液が戻り流路L3に至った状態で一定時間(予め設定された時間)経過しても戻らない場合には、液位センサ6が信号を発し、安全のために装置全体が停止されるとともに、異常を知らせるべくアラーム等が鳴るよう構成されている。
【0021】
また更に、液位監視管L8の途中には、液位センサ6が配設されており、かかる液位センサ6にてオゾン溶解タンク4内の液位が所定より上昇したことを検知すると、酸素供給路L1の途中に配設されたバルブV1を開け、オゾン発生手段2の酸素流通路Oに酸素を供給し得るよう構成されている。これにより、酸素の使用量を抑制することができ、より効率的にオゾンを発生させることができる。
【0022】
また、オゾン発生手段2の冷却液流通路W1、W2を流路の一部とした閉鎖型循環流路を成し、冷却液を循環して流通させ得る冷却液循環流路が構成されている。この冷却液循環流路は、流路L6、L7、冷却液流通路W1、W2及び冷却液収容タンク5から成るとともに、冷却液収容タンク5内の冷却液がポンプPの駆動力により流路L6を介して冷却液流通路W1、W2に至り、オゾン発生手段2を冷却した後、流路L7を介して冷却液収容タンク5内に戻るようになっている。
【0023】
上記の如き冷却液循環流路の途中(流路L7)には、ファン9からの送風により当該冷却液循環流路内を流通する冷却液を大気との間で熱交換させ放熱可能なラジエータ8が形成されている。即ち、ラジエータ8は、流路が細く且つ格子状等に形成されて冷却液を流通させる一方、モータMにより駆動されるファン9から送られた風がラジエータ8に当たり、当該ラジエータ8内の冷却液が効率よく冷却されるのである。
【0024】
また、冷却液循環流路の途中(流路L7であってラジエータ8より上流側)には、冷却液の温度を検知する温度センサ10が配設されており、当該温度センサ10にて検知された温度に基づきファン9のモータMが制御されるよう構成されている。これにより、冷却循環流路を循環する冷却液の温度を最適値とすることができ、オゾン発生手段2を効率的に冷却させることができる。
【0025】
ここで、本実施形態に係るオゾン養液生成装置を養液栽培に適用した場合について説明する。例えば、図4に示すように、培養液タンクT1、殺菌タンクT2及び戻り液タンクT3を用意し、培養液タンクT1と栽培槽Yとをポンプを介して連結させるとともに、戻り液タンクT3と栽培槽Yとを連結させたものとすることができる。この場合、培養タンクT1と殺菌タンクT2、及び戻り液タンクT3と殺菌タンクT2とをポンプを介して連結させ、当該殺菌タンクT2と本オゾン養液生成装置が連結されている。尚、同図中符号Rは、ロックウールを示している。
【0026】
また、図5に示すように、培養液タンクT1及び戻り液タンクT3を用意し、培養液タンクT1と栽培槽Yとをポンプを介して連結させるとともに、戻り液タンクT3と栽培槽Yとを連結させたものとすることができる。この場合、培養タンクT1と本オゾン養液生成装置、及び戻り液タンクT3と本オゾン養液生成装置とをそれぞれ連結されている。尚、同図中符号Rは、ロックウールを示している。
【0027】
また、図6に示すように、培養液タンクT4を用意し、培養液タンクT4と栽培槽Yとを連結させるとともに、当該溶媒タンクT4に直接本オゾン養液生成装置を連結させたものとすることができる。更に、図7に示すように、培養液タンクT4を用意し、培養液タンクT4と栽培槽Yとを連結させるとともに、養液の戻り側の経路の途中に本オゾン養液生成装置を連結して介在させたものとすることができる。尚、図6、7中符号Sは、スチロール板を示している。
【0028】
次に、本発明の技術的優位性を示すための実験結果について説明する。
(実験1)
図8に示すように、250リットルの養液を収容可能なタンクAa内に、養液に見立てた試供液を収容し、オゾン養液生成装置(或いは従来のオゾン生成装置)と当該タンクAaとを連結する経路Ab及びAcを形成するとともに、ポンプPで循環可能な経路Adを形成した実験装置を用意した。
【0029】
タンクAaは、直径70(cm)、高さ86.5(cm)の円筒形タンクから成るものであり、試供液は、トマト溶液栽培現地の排養液を想定し、水に市販の粉末緑茶(植物に無害な有機物、肥料などによる微量な汚れを想定)を0.005(g/L)溶解して使用した。尚、殺菌対象の菌(供試菌)として、トマト根腐萎凋病菌10(個/L)の分生子菌懸濁液を水1(L)あたり1(mL)入れた(以下、供試養液という)。
【0030】
(実施例1)
本実施形態に係るオゾン養液生成装置にて経路Acで導入した供試養液を直接オゾン化させるとともに、その養液を経路AbにてタンクAaに戻した。このとき、ポンプPの駆動により、タンクAd中央の養液は、経路Adにて循環される。そして、タンクAdの略中央における液面近傍(養液内)の採取部位αにて養液を経時的に採取し、その殺菌率について測定した。尚、オゾン養液の温度は、26℃に設定した。
【0031】
(比較例1)
オゾン養液生成装置の代わりに単にオゾン(O)を発生し得るオゾン発生装置を接続し、当該オゾン発生装置にて得られたオゾンを経路Abを介して供試養液が入るタンクAaに供給した。供給したオゾンは、経路Abの先端から気泡として放出(バブリング)されることとなる。この場合、経路Acによる養液の戻りはないが、ポンプPの駆動による経路Adの循環作用は維持される。そして、タンクAdの略中央における液面近傍(養液内)の採取部位αにて養液を経時的に採取し、その殺菌率について測定した。尚、オゾン養液の温度は、21℃に設定した。
【0032】
(比較例2)
比較例1と同様、オゾン養液生成装置の代わりに単にオゾン(O)を発生し得るオゾン発生装置を接続し、当該オゾン発生装置にて得られたオゾンを経路Abを介して供試養液が入るタンクAaに供給した。供給したオゾンは、経路Abの先端から気泡として放出(バブリング)されることとなる。この場合、経路Acによる養液の戻りはないが、ポンプPの駆動による経路Adの循環作用は維持される。そして、タンクAdの略中央における液面近傍(養液内)の採取部位αにて養液を経時的に採取し、その殺菌率について測定した。尚、オゾン養液の温度は、23℃に設定した。
【0033】
実施例1、比較例1、2において、5分毎に採取部位αにおける養液を採取し、その殺菌率(%)を測定した。その結果について図9に示す。この実験で分かるように、実施例1のものは、極めて短時間で養液中の殺菌率が100(%)に達するのに対し、比較例1、2のものは、殺菌率100(%)に到達するのに比較的長時間が必要である。
【0034】
(実験2)
図10に示すように、1800リットルの養液を収容可能なタンクBa内に、養液に見立てた供試養液を収容し、オゾン養液生成装置(或いは従来のオゾン生成装置)と当該タンクBaとを連結する経路Bb及びBcを形成するとともに、ポンプPで循環可能な経路BAdを形成した実験装置を用意した。
【0035】
タンクBaは、縦、横及び高さが200(cm)、100(cm)及び100(cm)の立方体タンクから成るものであり、試供液は、実験1と同様、トマト養液栽培現地の排養液を想定し、水に市販の粉末緑茶(植物に無害な有機物、肥料及び微量な汚れを想定)を0.005(g/L)溶解して使用した。尚、殺菌対象の菌(試供菌)として、トマト根腐萎凋病菌10(個/L)の分生子菌懸濁液を水1(L)あたり1(mL)入れた(以下、供試養液という)。
【0036】
(実施例2)
本実施形態に係るオゾン養液生成装置にて経路Acで導入した供試養液を直接オゾン化させるとともに、その養液を経路BbにてタンクBaに戻した。このとき、ポンプPの駆動により、タンクBa中央の養液は、経路Bdにて循環される。そして、タンクBaの略中央における液面近傍(養液内)の採取部位βにて養液を経時的に採取し、その殺菌率について測定した。
【0037】
(実施例3)
本実施形態に係るオゾン養液生成装置にて経路Acで導入した供試養液を直接オゾン化させるとともに、その養液を経路BbにてタンクBaに戻した。このとき、ポンプPの駆動により、タンクBa中央の養液は、経路Bdにて循環される。そして、タンクBaの端における液面近傍(養液内)の採取部位γにて養液を経時的に採取し、その殺菌率について測定した。
【0038】
(比較例3)
オゾン養液生成装置の代わりに単にオゾン(O)を発生し得るオゾン発生装置を接続し、当該オゾン発生装置にて得られたオゾンを経路Bbを介して供試養液が入るタンクBaに供給した。供給したオゾンは、経路Bbの先端から気泡として放出(バブリング)されることとなる。この場合、経路Bcによる養液の戻りはないが、ポンプPの駆動による経路Bdの循環作用は維持される。そして、タンクBdの略中央における液面近傍(養液内)の採取部位βにて養液を経時的に採取し、その殺菌率について測定した。
【0039】
(比較例4)
オゾン養液生成装置の代わりに単にオゾン(O)を発生し得るオゾン発生装置を接続し、当該オゾン発生装置にて得られたオゾンを経路Bbを介して供試養液が入るタンクBaに供給した。供給したオゾンは、経路Bbの先端から気泡として放出(バブリング)されることとなる。この場合、経路Bcによる養液の戻りはないが、ポンプPの駆動による経路Bdの循環作用は維持される。そして、タンクBdの端における液面近傍(養液内)の採取部位γにて養液を経時的に採取し、その殺菌率について測定した。
【0040】
実施例2、3、比較例3、4において、5分毎に採取部位β或いはγにおける養液を採取し、その殺菌率(%)を測定した。その結果について図11に示す。この実験で分かるように、実施例2、3のものは、極めて短時間で養液中の殺菌率が100(%)に達するのに対し、比較例3、4のものは、殺菌率100(%)に到達しない。また、実施例2、3を比較しても分かるように、タンクBaの略中央でも端でも、殺菌率が100(%)に達する時間は略同一であり、タンクBa全体に亘って均一な殺菌を行うことができる。
【0041】
(実験3)
図8に示す250リットル収容のタンクAaにおいて、採取部位αの上方略5(cm)程度に採取部位α’を設定し、実施例1と同様、本実施形態に係るオゾン養液生成装置にて経路Acで導入した供試養液を直接オゾン化させるとともに、その養液を経路AbにてタンクAaに戻した。このとき、ポンプPの駆動により、タンクAd中央の養液は、経路Adにて循環される。そして、採取部位α、α’におけるオゾン濃度(ppm)について経時的に測定した。
【0042】
当該実験3の実験結果について図12に示す。尚、同様の実験を図10で示すタンクBaにて行い、採取部位β、γ、β’(採取部位βの上方略5(cm)程度に設定した採取部位)のオゾン濃度(ppm)について経時的に測定した。当該実験について図13に示す。これら実験結果からも明らかなように、本実施例によれば、外気に飛散するオゾンが極めて少なく、養液をオゾン化する上での作業環境を著しく改善することができる。
【0043】
上記実施形態によれば、オゾン溶解タンク4内の養液に対してオゾン供給路L2から供給されたオゾンを溶解させてオゾン養液を得るので、従来の如く一旦オゾン水(オゾンを水に溶解させたもの)を作製し、そのオゾン水を養液に溶解させるものやバブリングによりオゾンを溶解させるもの等に比べ、所望濃度のオゾン養液を容易に得ることができるとともに、オゾンが周囲に飛散してしまうのを回避することができる。
【0044】
また、本実施形態によれば、戻り流路L3及びオゾン供給路L2により未溶解のオゾンをオゾン溶解タンク4とオゾン発生手段2との間で循環可能としたので、オゾンの周囲への飛散をより確実に回避することができるとともに、未溶解のオゾンを再利用でき、装置のランニングコストを低減させることができる。
【0045】
更に、本実施形態によれば、酸素供給源と接続される酸素吸入口L1aから延びて戻り流路L3の途中と連結され、当該戻り流路L3を介してオゾン発生手段2の酸素流通路に酸素を供給可能な酸素供給路L1を具備したので、酸素と共に未溶解のオゾンがオゾン発生手段2に供給されて効率よくオゾンを発生させることができる。
【0046】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば3重管方式の石英管に代えて2重管方式のオゾン発生手段を具備したもの、或いはその他の形態のオゾン発生手段を具備したものに適用してもよい。また、冷却液循環流路の構成要素は、汎用的な何れのものであってもよく、或いは当該冷却循環流路を具備しないものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
養液栽培で使用されべく肥料が溶解された養液中にオゾンを溶解してオゾン養液を得るためのオゾン養液生成装置であって、内部に酸素を流通させる酸素流通路が形成されるとともに当該酸素流通路を挟んで対向した部位に電圧を印加して放電させることによりオゾンを発生させるオゾン発生手段と、養液を所定量収容し得るオゾン溶解タンクと、オゾン発生手段から延びてオゾン溶解タンクに連結され、当該オゾン発生手段により発生したオゾンを当該オゾン溶解タンクに供給し得るオゾン供給路とを備え、オゾン溶解タンク内の養液に対してオゾン供給路から供給されたオゾンを溶解させてオゾン養液を得るオゾン養液生成装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係るオゾン養液生成装置の構成を示す概略図
【図2】同オゾン養液生成装置におけるオゾン発生手段を示す縦断面図
【図3】図2におけるIII−III線断面図
【図4】本発明の実施形態であって、バッチ処理殺菌方式のロックウール耕(循環式)のものに適用した場合を示す模式図
【図5】本発明の実施形態であって、ワンパス処理殺菌方式のロックウール耕(循環式)のものに適用した場合を示す模式図
【図6】本発明の実施形態であって、バッチ処理殺菌方式の湛液型水耕(循環式)のものに適用した場合を示す模式図
【図7】本発明の実施形態であって、ワンパス処理殺菌方式の湛液型水耕(循環式)のものに適用した場合を示す模式図
【図8】本発明の技術的優位性を示すための実験で用いられた装置の模式図
【図9】本発明の技術的優位性を示すための実験結果としてのグラフ
【図10】本発明の技術的優位性を示すための実験で用いられた装置の模式図
【図11】本発明の技術的優位性を示すための実験結果としてのグラフ
【図12】本発明の技術的優位性を示すための実験結果としてのグラフ
【図13】本発明の技術的優位性を示すための実験結果としてのグラフ
【符号の説明】
【0049】
1 筐体
2 オゾン発生手段
3 電圧印加手段
4 オゾン溶解タンク
5 冷却液収容タンク
6 液位センサ
7 エジェクタ
8 ラジエータ
9 ファン
10 温度センサ
11 圧力センサ
O 酸素流通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
養液栽培で使用されるべく肥料が溶解された養液中にオゾンを溶解してオゾン養液を得るためのオゾン養液生成装置であって、
内部に酸素を流通させる酸素流通路が形成されるとともに当該酸素流通路を挟んで対向した部位に電圧を印加して放電させることによりオゾンを発生させるオゾン発生手段と、
前記養液を所定量収容し得るオゾン溶解タンクと、
前記オゾン発生手段から延びて前記オゾン溶解タンクに連結され、当該オゾン発生手段により発生したオゾンを当該オゾン溶解タンクに供給し得るオゾン供給路と、
を備え、前記オゾン溶解タンク内の養液に対して前記オゾン供給路から供給されたオゾンを溶解させてオゾン養液を得ることを特徴とするオゾン養液生成装置。
【請求項2】
前記オゾン溶解タンクの上部から延びて前記オゾン発生手段に連結され、当該オゾン溶解タンク内の未溶解のオゾンを当該オゾン発生手段に送り込み可能な戻り流路を具備し、前記戻り流路及びオゾン供給路により未溶解のオゾンを前記オゾン溶解タンクとオゾン発生手段との間で循環可能としたことを特徴とする請求項1記載のオゾン養液生成装置。
【請求項3】
酸素供給源と接続される酸素吸入口から延びて前記戻り流路の途中と連結され、当該戻り流路を介して前記オゾン発生手段の酸素流通路に酸素を供給可能な酸素供給路を具備したことを特徴とする請求項2記載のオゾン養液生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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