説明

オリゴヌクレオチドプローブのセットならびにそれに関連する方法および使用

本発明は、対象のゲノム標的配列に対する少なくとも100種類の異なる一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含むオリゴヌクレオチドプローブのセット、該オリゴヌクレオチドプローブのセットを用いて対象のゲノム標的配列を検出する方法、該オリゴヌクレオチドプローブのセットを作製する方法、ならびに該オリゴヌクレオチドプローブのセットおよび少なくとも1つのさらなる構成要素を含むキットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の態様では、本発明は、対象のゲノム標的配列に対する少なくとも100種類の異なる一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含むオリゴヌクレオチドプローブのセットに関し、ここで、個々のオリゴヌクレオチドのそれぞれは、少なくとも1個の標識を含む。さらなる態様では、本発明は、ゲノム標的配列の検出のための前記オリゴヌクレオチドプローブのセットの使用に関する。別の態様では、本発明は、対象のゲノム標的配列を検出する方法に関し、該方法は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットをサンプルと共に、該対象のゲノム標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブのセットの結合をもたらす条件下でインキュベートするステップ、および該ゲノム標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブの結合を検出するステップを含む。さらなる態様では、本発明は、対象のゲノム標的配列に対するオリゴヌクレオチドプローブのセットを作製する方法を提供し、該方法は、対象のゲノム標的配列の少なくとも100箇所の異なる領域に相補的なオリゴヌクレオチドプローブのセットを設計するステップおよび該オリゴヌクレオチドプローブのセットを合成するステップを含む。またさらなる態様では、本発明は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットと、それに加えて、脱パラフィン剤、前処理剤、洗浄剤、検出剤および製品シートからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる構成要素とを含むキットに関する。
【背景技術】
【0002】
in situハイブリダイゼーション(ISH)は、様々な研究領域および臨床診断において不可欠なツールとなっている。in situハイブリダイゼーション(ISH)は、特定の細胞でのDNAおよびRNA両方の検出および局在決定を可能にするので、組織切片または細胞標品での遺伝子発現を研究するために、分子生物学的技術と組織化学的技術が組み合わされた独自の技術である。ISH分析は、1969年に最初に報告され、標識ヌクレオチドプローブと相補的DNAまたはRNAとのハイブリダイゼーション反応を含み、それらのハイブリッドは、取り込まれた標識の性質に依存して種々の手順により検出することができる。1970年代後期の非放射性プローブ標識および検出系の導入により、in situハイブリダイゼーション分析は、分子診断ツールとして診断病理学検査室で利用可能なものとなっている。ISHにより、不均一な組織内での細胞の完全性を保持しながら、遺伝子配列がin situで局在決定され、遺伝子発現産物が可視化される。ISH法の主な利点は、不均一な組織または細胞集団での個々の標的に対する特異度、ならびに細胞での低コピー数の遺伝子発現の検出または染色体マッピングでの感度である。ISHは、プローブ調製および標識化、組織調製、ハイブリダイゼーション、ならびにシグナル検出をはじめとする複数のステップからなる(総説として、例えば、Jin et al., 2001, Morphology Methods: Cell and Molecular Biology Techniques: 27-46を参照されたい)。
【0003】
サザンブロッティングおよびスロットブロッティングが、乳癌標本で用いられた最初の遺伝子ベースのHER-2検出法であった。FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)技術(形態学主導であり、IHCと同様に自動化することができる)は、より客観的なスコア付けシステムおよび標本中のすべての非新生物細胞に存在する2種類のHER-2遺伝子シグナルからなる組み込み型内部対照の存在という利点を有する。FISH試験の欠点としては、各試験の高いコスト、スライドスコア付けに要する比較的長い時間、蛍光顕微鏡の必要性、保管および再検査のためにスライドを保存できないこと、ならびに浸潤性腫瘍細胞を特定できない場合があることが挙げられる。現在までに、ISHアッセイの2種類のバージョンがFDAにより承認されている:Ventana InformTMテスト(HER-2遺伝子コピーのみを測定する)およびAbbott-Vysis PathvysionTMテスト(二色形式での17番染色体プローブを含む)、これらの両方が、非常に相関性が高いことが報告されている(総説として、例えば、Ross et al., 2004, Molecular and Cellular Proteomics 3.4: 379-398を参照されたい)。
【0004】
発色in situハイブリダイゼーション法(CISH技術とも称される)は、免疫組織化学(すなわち、慣用の顕微鏡法、低コスト)およびFISH(すなわち、組み込み型内部対照、客観的スコア付け、より堅牢なDNA標的)の両方の利点を特徴とする。例えば、FISH法およびCISH法の両方を用いて、2つの機関で検査室において行なった試験により浸潤性乳癌の31症例を比較し、症例のうち26症例(84%)で両方の方法について同一の結果が見られた(Gupta et al., 2003, Am. J. Clin. Pathol., 119: 381-387)。CISHおよびIHC検出法を組み合わせて、遺伝子コピー数およびタンパク質発現の同時評価をもたらすことができるが、そのような方法は臨床実務には適合化されていない。
【0005】
(i)二本鎖相補性DNAプローブ、(ii)一本鎖アンチセンスRNAプローブ、および(iii)合成オリゴヌクレオチドプローブを含む3種類の基本的なタイプのプローブを、in situハイブリダイゼーションのために用いることができる。他のハイブリダイゼーション技術と同様に、プローブ設計、合成、および標識化が、特異度および感度に関して、in situハイブリダイゼーションの成功にとって重要な役割を果たす。標準的な標識化手順は、一般的に、酵素法の採用を含む。二本鎖DNAプローブは、酵素的ニックトランスレーションまたはランダムプライマー法により標識することができ、アンチセンスRNAプローブは、通常は、in vitro転写法により合成および標識される。しかしながら、これらの方法は、成分未知のプローブの生成をもたらし、そのようなプローブでは、標識の位置および数が規定されておらず、かつ実施者に知られていない。さらに、取り込まれる標識の量は、例えば、酵素活性および/または存在する標識の量をはじめとする一連の可変量によって変わるので、酵素的標識化は、標識化を行なう人物の高い実験スキルを必要とする。最後に、標識化反応はランダムな手続きの結果であるので、取り込まれる標識の厳密な位置および量に関して、それぞれの標識化は異なる結果を有し得る。
【0006】
しかしながら、オリゴヌクレオチドプローブは、一般的に、例えば、比較的少ない標識オリゴヌクレオチドの取り込みによるプローブの「テール化(tailing)」をはじめとする5’または3’末端標識化法によって標識される。プローブ当たりの限られた標識の量のために、末端標識プローブの感度は、非常に低い。
【0007】
in situハイブリダイゼーションのために用いられるオリゴヌクレオチドプローブは、ほとんどの場合、長さが短く、多くの場合、より長いcDNAまたはアンチセンスRNAプローブよりも感度が低い。したがって、現在までに、オリゴヌクレオチドプローブは、ほとんどの場合、非常に量が多くかつ/もしくは反復的な遺伝子標的の検出のために、または脳内での特定の遺伝子ファミリーの発現をマッピングするために用いられてきた(例えば、Wisden and Morris, 2002, International Review of Neurobiology, Vol. 47, Chapter 1を参照されたい)。オリゴヌクレオチドプローブを用いたin situハイブリダイゼーション法により解析されてきた遺伝子標的としては、さらに、例えば、以下のものが挙げられる:β-アクチンなどの高存在量のmRNA転写産物(Perlette and Tan, 2001, Anal Chem 73: 5544-5550)、神経内分泌細胞および分泌顆粒を含む腫瘍で豊富に発現される遺伝子のmRNA転写産物(Lloyd, R., 1995, Diagnostic Molecular Pathology 4(2): 143-151)、およびリボソームrRNA(Behrens et al., 2004, Systematic and Applied Microbiology, 27, 565-572;Silverman and Kool, 2007, Advances in Clinical Chemistry, Vol. 43: 79-115)、ならびにヒト染色体のセントロメア領域などの非常に反復性の高い標的配列(例えば、WO 96/00234を参照されたい)。
【0008】
しかしながら、オリゴヌクレオチドプローブは、多量かつ低コストで容易に合成することができるので、ハイブリダーゼーション法の慣用かつハイスループットな応用により、例えば、低存在量の腫瘍マーカー遺伝子をはじめとする低い程度までしか存在しない遺伝子の検出および/または解析のためのオリゴヌクレオチドプローブの使用は、近代医学、診断および癌治療において特に注目されているであろう。つまり、オリゴヌクレオチドプローブを用いた高感度検出法に対する必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、特に、高感度検出法を必要とする低存在量の標的配列に対する、遺伝子の検出のための代替法を提供することが、本発明の1つの目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の文脈において、標的分子の異なる領域に相補的な少なくとも100種類の異なる一本鎖オリゴヌクレオチドプローブの「カクテル」を用いた方法が、低存在量の遺伝子を検出するために特に好適であることが見出された。特に、そのようなカクテルが、当技術分野で公知かつ報告されている検出方法と比較して、短時間で(図1を参照されたい)、少量のプローブを必要として(図2を参照されたい)かつより高い特異度で(図1〜3を参照されたい)、対象のゲノム標的配列を検出するために特に好適であることが見出された(例えば、Weiss et al., 1990, American Journal of Pathology, Vol. 137, No. 4: 979-988;Lloyd, R., 1995, Diagnostic Molecular Pathology 4(2): 143-151を参照されたい)。したがって、そのような方法は、より迅速で、安価で、より感度が高く、かつ/またはより予測性が高いという点で、当技術分野で公知かつ報告されているものよりも優れていることが明らかである。
【0011】
したがって、第1の態様では、本発明は、対象のゲノム標的配列に対する少なくとも100種類の異なる一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含むオリゴヌクレオチドプローブのセットを提供し、ここで、個々のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、少なくとも1個の標識を含む。
【0012】
一本鎖オリゴヌクレオチドプローブは、(i)二次構造の分解を確かにするための加熱ステップが必要なく、また(ii)プローブの相補鎖の再アニーリングが省略されるので、対象となるゲノム配列を検出するために特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】様々な濃度でDNP標識オリゴヌクレオチドプローブを用いたin situハイブリダイゼーションにより調べた、Calu3細胞、ZR-75-1細胞、およびMCF7細胞由来の異種移植片でのHER-2ゲノム遺伝子増幅の可視化を示す図である。(A)遺伝子増幅なし。左パネル:Ventana InformTM検出システム(Cat. No. 780-001, Ventana Medical Systems Inc., USA)を用いたHER-2ゲノム遺伝子配列の検出;Ventana HER-2/neuプローブ:10μg/mlの濃度;右パネル:4μg/mlの濃度で1440種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブのセットを用いたHER-2ゲノム遺伝子配列の検出。オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、それぞれ、81個のヌクレオチドおよび6個の標識を含む。標識の合計数:8640個。(B)低レベル遺伝子増幅。左パネル:Ventana InformTM検出システム;10μg/mlのVentana HER-2/neuプローブ濃度;右パネル:(A)の右パネルを参照されたい。(C)高レベル遺伝子増幅。左パネル:Ventana InformTM検出システム;10μg/mlのVentana HER-2/neuプローブ濃度;右パネル:(A)の右パネルと同様。
【図2】酵素金属組織学的検出を用いて様々なハイブリダイゼーション時間後にDNP標識オリゴヌクレオチドプローブを用いたin situハイブリダイゼーションにより調べた、ZR-75-1細胞由来の異種移植片でのHER-2ゲノム遺伝子配列の可視化を示す図である。(A)ハイブリダイゼーション時間:32分;左パネル:Ventana InformTM検出システム(Cat. No. 780-001, Ventana Medical Systems Inc., USA)を用いたHER-2ゲノム遺伝子配列の検出;右パネル:1440種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブのセットを用いたHER-2ゲノム遺伝子配列の検出、プローブのそれぞれが81個のヌクレオチドおよび6個の標識を含む。標識の合計数:8640個。(B)ハイブリダイゼーション時間:1時間;左パネル:Ventana InformTM検出システムを用いたHER-2遺伝子検出;右パネル:(A)の右パネルを参照されたい。(C)ハイブリダイゼーション時間:2時間;左パネル:Ventana InformTM検出システムを用いたHER-2遺伝子検出;右パネル:(A)の右パネルを参照されたい。
【図3】様々な合計数の取り込まれた標識を含むDNP標識オリゴヌクレオチドプローブの異なるセットを用いたin situハイブリダイゼーションにより調べた、ZR-75-1細胞由来の異種移植片でのHER-2ゲノム遺伝子配列の可視化を示す図である。in situハイブリダイゼーションは、図2に記載したように行なった。(A)HER-2遺伝子検出のために用いたオリゴヌクレオチドプローブ組成物の種々のセットの模式図。異なる96ウェルプレート由来の様々なオリゴヌクレオチドプローブを組み合わせることにより、オリゴヌクレオチドプローブの異なるサブセットを作製した。各ボックスは、96種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む96ウェルプレートを示す。(B)本発明のオリゴヌクレオチドプローブの種々のセットを用いて得られた結果と比較した、約15000個の標識を含むVentana InformTM検出システムを用いたin situハイブリダイゼーション(左上パネル)。本発明のオリゴヌクレオチドプローブを96ウェルプレート形式で作製し(合計15プレート)、異なるプレートを組み合わせることによりオリゴヌクレオチドプローブの異なるセット(例えば、異なるプール)を作製した。プール1:プレート1〜15の組み合わせ;標識の合計数:8640個;プール2:プレート1〜4および12〜15の組み合わせ;標識の合計数:4608個;プール4:プレート1、3、5、7、9、11、13および15の組み合わせ;標識の合計数:4608個。
【図4】間接的蛍光検出を用いてDNP標識オリゴヌクレオチドプローブを用いたin situハイブリダイゼーションにより調べた、MCF7細胞およびCalu細胞由来の異種移植片でのHER-2遺伝子増幅の可視化を示す図である。HER-2遺伝子座にハイブリダイズしたプローブを、Cy5フィルターを用いて可視化し(Cy5フィルター)、対比染色はDAPIフィルターを通して可視化した(DAPI)。重ね合わせ:Cy5フィルターおよびDAPIフィルター。(A)遺伝子増幅なし。MCF7細胞由来の異種移植片でのDyLightTM649コンジュゲート化抗ウサギIgGを用いたHER-2ゲノム配列の検出。(B)高レベル遺伝子増幅。Calu細胞由来の異種移植片でのDyLightTM649コンジュゲート化抗ウサギIgGを用いたHER-2ゲノム配列の検出。
【図5】in situハイブリダイゼーションのために用いた例示的な標識オリゴヌクレオチドプローブの模式図を示す図である。(A)ヒトHER-2遺伝子座に対する5種類の異なる87mer DNAオリゴヌクレオチドプローブの一次配列および設計。各プローブは、81個のヌクレオチドおよび6個のDNPホスホルアミダイト標識(5’末端に1個、内部に組み込まれた5個)を含む。各標識の位置は、「X」で示され、Xは、2,4-ジニトロフェニル(DNP)を表す。DNPは、3’末端から数えて2、19、36、53、70および87位に、16ヌクレオチド間隔で配置されている。(B) 2,4-ジニトロフェニル(X)に連結されたホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックの化学構造。DMPは、ジメトキシトリチルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中で用いる場合、「オリゴヌクレオチドプローブ」との用語は、一般的に、分子レベルで対象のヌクレオチド配列を検出、分析、および/または可視化するために用いることができる、該ヌクレオチド配列にマッチするように合成されたいずれかの種類のヌクレオチド分子を意味する。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、一般的に、(i)数個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも15個、最も好ましくは少なくとも20個のヌクレオチド、および(ii)少なくとも1個の標識、を含む分子を意味する。場合によっては、オリゴヌクレオチドプローブは、いずれかの好適な非ヌクレオチド単位および/または標的を取り込むために好適であり得る連結試薬も含むことができる。オリゴヌクレオチドプローブが、必要な特異性をもたらすために好適な長さを有することは、当業者には明らかであろう。一般的に、プローブは、DNAオリゴヌクレオチドプローブまたはRNAオリゴヌクレオチドプローブ、好ましくはDNAオリゴヌクレオチドプローブであり得る。つまり、ヌクレオチドには、核酸塩基(すなわち、窒素塩基)、五炭糖(リボース、2’-デオキシリボース、またはそれらのいずれかの誘導体であり得る)、およびリン酸基から構成されるすべての種類の構造が含まれる。核酸塩基および糖は、ヌクレオシドと呼ばれる単位を構成する。リン酸基は、糖の2位、3位、または5位炭素、特に3位および5位炭素と結合を形成し得る。本発明の文脈では、「ヌクレオチド」との用語は、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを等しく意味する。リボヌクレオチドは糖部分としてリボースを含み、デオキシリボヌクレオチドは糖部分としてデオキシリボースを含む。ヌクレオチドは、プリン塩基またはピリミジン塩基のいずれかを含有し得る。つまり、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、リボヌクレオチドもしくはデオキシリボヌクレオチドから、またはそれらのいずれかの組み合わせから構成することができ、1個以上の修飾ヌクレオチドをさらに含んでもよい。場合によっては、オリゴヌクレオチドプローブはさらに、修飾ヌクレオチドのみを含み得る。修飾ヌクレオチドのリボ型およびデオキシ型としては、例えば、限定するものではないが、5-プロピニル-ウリジン、5-プロピニル-シチジン、5-メチル-シチジン、2-アミノ-アデノシン、4-チオウリジン、5-ヨードウリジン、N6-メチル-アデノシン、5-フルオロウリジン、イノシン、7-プロピニル-8-アザ-7-デアザプリンおよび7-ハロ-8-アザ-7-デアザプリンヌクレオシドが挙げられる。本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、例えば、2’-O-メチル(2’-OMe)RNA、2’-フルオロ(2’-F)DNA、ペプチド核酸(PNA)、またはロックド核酸(LNA)などの骨格修飾をさらに含むことができる。2’-OMe RNAは、DNAよりも強くハイブリダイズし、天然RNAとは異なり、RNaseおよびDNaseに対して極めて安定であるので、特に好適な骨格修飾である。LNAは、構造的に制限されたオリゴヌクレオチドアナログのクラスであり、リボヌクレオシドが2’-Oと4’-Cとの間でメチレン基により連結されている。これは、塩基対形成および二本鎖形成に関して天然の核酸と類似しているが、LNA二本鎖は、対応するDNAまたはRNA二本鎖と比較して、熱的により安定である(Silverman and Kool, 2007, Advances in Clinical Chemistry, Vol. 43: 79-115)。場合によっては、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、例えば、ホスホロチオエート(phosphothioate)またはメチルホスホネートなどのリン酸骨格に対する1箇所以上の修飾をさらに含むことができ、これは、ヌクレアーゼに対する安定性を増大させる。
【0015】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、少なくとも100種類の異なるオリゴヌクレオチドのプールを意味する。これらのオリゴヌクレオチドは、1箇所以上のヌクレオチド位置において異なるか、またはそれらの完全な配列において互いに異なっていることができる。好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、100種類超の異なるオリゴヌクレオチド、特に少なくとも150、200、250、300、350、400、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、または1000種類の異なるオリゴヌクレオチドを含む。より好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブのセットは、少なくとも1000種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブ、特に少なくとも1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む。
【0016】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、少なくとも200、300または400種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブ、特に、少なくとも500種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブ、さらに特に少なくとも1000種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む。より多くの数の異なるオリゴヌクレオチドプローブを用いると、検出法の感度および特異度が増大する(図3を参照されたい)。
【0017】
さらに、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが所定の長さを有することをさらに特徴とする。この長さは、所定の数のヌクレオチドから構成され、任意により、所定の数の非ヌクレオチド連結試薬をさらに含む。所定の長さを有するオリゴヌクレオチドプローブの作製は、当技術分野で公知の方法、すなわち断片化ステップを用いておりしたがってランダムな長さ分布を有するオリゴヌクレオチドプローブの生成をもたらす当技術分野で公知の方法と比較して、利点を有する。好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、20〜200ヌクレオチド、または40〜175ヌクレオチド、または60〜150ヌクレオチド、または80〜120ヌクレオチドの所定の長さを有する点を特徴とする。しかしながら、異なる範囲に到達するために、上記の上限および下限を組み合わせることもできることが当業者には明らかである。つまり、オリゴヌクレオチドプローブは、20〜150、または60〜120、または80〜150、または30〜180の長さを有することもできる。本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、すべて同じ長さを有するオリゴヌクレオチドプローブを含むことができ、または、適切とみなされる場合は、異なる長さを有するオリゴヌクレオチドプローブを含むことができる。
【0018】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、20〜200ヌクレオチド、好ましくは40〜175ヌクレオチド、より好ましくは60〜150ヌクレオチド、特に80〜120ヌクレオチドの長さを有する点を特徴とする。
【0019】
約80〜120ヌクレオチドの長さを有するオリゴヌクレオチドプローブは、本発明に従ってゲノム標的配列を検出するために特に好適であることが見出されている。
【0020】
本発明の文脈で記載された結果を取得するための必要条件として、オリゴヌクレオチドプローブのセットは、最小合計数の取り込まれた標識をさらに含まなければならない。つまり、本明細書中に記載される条件下で対象のゲノム標的配列を検出するために好適なオリゴヌクレオチドプローブのセットをもたらすために、オリゴヌクレオチドプローブの長さが短いほど、オリゴヌクレオチド1個につきより多くの標識が、個々の分子のそれぞれに取り込まれ、結合し、コンジュゲート化され、かつ/または連結していなければならず、あるいは、より多くのオリゴヌクレオチドプローブを用いなければならない。標識の取り込みを制御するために、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを、好ましくは化学合成によって生成する。酵素的アプローチの採用と比較した化学合成の利点は、迅速かつ経済的なプローブ生成プロセス、ならびに厳密な断片長、配列、標識の数および位置に対する制御である。例えば、本発明の文脈では、オリゴヌクレオチドプローブが、約80〜90ヌクレオチドの存在下で少なくとも5個の標識を含む場合、特に好ましいことが見出されている。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブは、約80〜90ヌクレオチドの存在下で少なくとも8個以上の標識さえ含む。本発明に従う所定の数の取り込まれた標識を含むオリゴヌクレオチドは、例えば、図5に例示されている。
【0021】
したがって、別の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブのセットは、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが少なくとも2または3個の標識、特に少なくとも5個の標識、より詳細には少なくとも10個の標識、最も詳細には少なくとも15個の標識を含む点を特徴とする。
【0022】
本発明の文脈で見出された通り、より多くの標識の取り込みを有するオリゴヌクレオチドプローブには、より高い感度が示される。しかしながら、多すぎる標識の存在がハイブリダイゼーションの成功を妨げず、したがって機能性を妨げないことに留意すべきである。つまり、オリゴヌクレオチド1個当たり5〜15個の標識の存在(個々の分子の長さに応じて異なる)が、最適な結果を達成することが見出されている。
【0023】
最も好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、以下の点を特徴とする:(i)オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、20〜200ヌクレオチド、好ましくは40〜175ヌクレオチド、より好ましくは60〜150ヌクレオチド、特に80〜150ヌクレオチドの長さを有すること、および(ii)オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、少なくとも2または3個の標識、特に少なくとも5個の標識、より詳細には少なくとも10個の標識、最も詳細には少なくとも15個の標識を含む。
【0024】
特に、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれは、少なくとも5個の標識を含み、かつ20〜200ヌクレオチド、好ましくは40〜175ヌクレオチド、より好ましくは60〜150ヌクレオチド、特に80〜150ヌクレオチドの長さを有する。
【0025】
より好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれは、少なくとも10個の標識を含み、かつ20〜200ヌクレオチド、好ましくは40〜175ヌクレオチド、より好ましくは60〜150ヌクレオチド、特に80〜150ヌクレオチドの長さを有する。
【0026】
さらにより好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれは、少なくとも15個の標識を含み、かつ20〜200ヌクレオチド、好ましくは40〜175ヌクレオチド、より好ましくは60〜150ヌクレオチド、特に80〜150ヌクレオチドの長さを有する。
【0027】
あるいは、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれは、60〜150ヌクレオチドの長さを有し、かつ少なくとも2または3個の標識、特に少なくとも5個の標識、より詳細には少なくとも10個の標識、最も詳細には少なくとも15個の標識を含む。
【0028】
より好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれは、80〜150ヌクレオチドの長さを有し、かつ少なくとも2または3個の標識、特に少なくとも5個の標識、より詳細には少なくとも10個の標識、最も詳細には少なくとも15個の標識を含む。
【0029】
本発明の文脈で示される場合、「に対する」との用語は、一般的に、本発明のオリゴヌクレオチドプローブが、相補的塩基対によって対象の標的配列に結合することができることを意味する。相補的塩基対は、互いに相補的な2つのヌクレオチド分子(任意により修飾を含む)の間で形成される。本発明の文脈では、オリゴヌクレオチドプローブと標的配列との間で形成される相補的塩基対としては、限定するものではないが、ワトソン・クリック型A-U、ワトソン・クリック型A-T、ワトソン・クリック型G-C、G-Uゆらぎ塩基対(wobble base pair)、A-UおよびA-C逆向きフーグステン型塩基対、またはせん断G-A塩基対もしくはG-Aイミノ塩基対などのプリン-プリンおよびピリミジン-ピリミジン塩基対をはじめとするすべての種類のカノニカルあるいは非カノニカルな塩基対が挙げられる。
【0030】
本明細書中で用いる場合、「ゲノム標的配列」との用語は、一般的に、真核生物のゲノムの特定の領域を意味する。本発明の文脈では、ゲノム標的配列は、好ましくは、ヒトゲノムの所定の領域を意味する。半数体ヒトゲノムは、総数30億超のDNA塩基対から構成され、推定約30,000個のタンパク質コード配列を含む。つまり、ゲノムの約1.5%のみがタンパク質をコードし、残りの部分は、tRNA、リボソームRNA、マイクロRNAまたは他の非コードRNA、調節配列、イントロンおよび反復配列をコードする遺伝子などの数千のRNA遺伝子を含有する。ヒトゲノムの反復配列としては、限定するものではないが、セントロメア、テロメア、タンデム反復配列、例えばサテライトDNA、ミニサテライトDNA、マイクロサテライトDNAなど、ならびに散在反復、例えばSINE(short interspersed nuclear element:短鎖散在反復配列)およびLINE(long interspersed nuclear element:長鎖散在反復配列)などが挙げられる。つまり、本発明のゲノム標的配列は、限定するものではないが、特定の遺伝子またはその一部分の配列を含むことができ、さらに調節配列、非コード配列、反復または非反復配列を含むことができる。好ましくは、本発明のゲノム標的配列は、特定の遺伝子を含む所定の遺伝子座を意味する。
【0031】
一般的に、遺伝子は、生物のゲノムにわたって、すなわち、異なる染色体にわたって、不均一に分布している。つまり、本発明のゲノム標的配列は、種々の長さの一領域および/または1本の染色体の異なる領域にわたって広がっているか、かつ/もしくは異なる染色体にさえわたって広がっている一領域を意味する場合がある。特に、ゲノム標的配列は、1箇所以上の個別の領域を意味する場合がある。好ましくは、本発明のゲノム標的配列は、遺伝子座、すなわち、遺伝子が局在する染色体上の特定の領域を意味する。本発明のゲノム標的配列は、限定するものではないが、1MBまでのサイズを有する領域をはじめとする、様々なサイズの領域を含み得る。
【0032】
しかしながら、オリゴヌクレオチドプローブ同士は、本発明のゲノム標的配列内の異なる標的配列、すなわち異なる領域に対するものであることが理解されるべきである。つまり、少なくとも100種類の異なるそれぞれのオリゴヌクレオチドプローブを含むオリゴヌクレオチドプローブのセットは、全体としては、好ましくは特定の遺伝子座を含むゲノム標的配列に対するものであり、個々のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれは、この領域内に存在する特定の部分配列に対するものである。
【0033】
本明細書中で用いる場合、「標識」との用語は、一般的に、本発明のオリゴヌクレオチドプローブに組み込まれ、かつ/もしくは連結することができ、かつ、その標的配列に結合した場合にオリゴヌクレオチドプローブを可視化、検出、分析および/もしくは定量化するために用いることができる、いずれかの種類の物質または薬剤を意味する。本発明の標識としては、限定するものではないが、放射性同位体(例えば、35硫黄(35S)、32リン(32P)、33リン(33P)、3Hまたは14Cなど)、蛍光分析によって検出および/または可視化することができるいずれかの蛍光分子または蛍光団、例えばフルオレセイン色素(限定するものではないが、カルボキシフルオレセイン(FAM)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、およびヘキサクロロフルオレセインなど)、ローダミン色素(例えば、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、テキサスレッドおよびテトラメチルローダミン(TAMRA)など)、シアニン色素(ピリリウムシアニン色素、DY548、Quasar 570、またはCy3、Cy5、Alexa 568など)などが挙げられる。蛍光標識の選択は、典型的には、そのスペクトル特性および画像取得のための設備の利用可能性により決定される。蛍光標識は、例えば、InvitrogenTM社(USA)をはじめとする様々な供給業者から市販されている。本発明の標識は、ジゴキシゲニン(DIG)、ビオチン、または2,4-ジニトロフェニル(DNP)などのハプテンでもあり得る。これらの標識ならびにその検出方法は、当業者に周知であり、例えば、Jin et al., 2001(Morphology Methods: Cell and Molecular Biology Techniques, 27-48)、Krick, 2002(Ann. Clin. Biochem. 39: 114-12)、またはGrzybowski et al., 1993(Nucleic Acids Research, Vol. 21, No. 8: 1705-1712)に記載されている。
【0034】
さらに、本発明の標識は、ヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド連結試薬への化学的コンジュゲート化(すなわち、直接標識化)によるか、または標識に結合することができる分子へのヌクレオチドもしくは非ヌクレオチド連結試薬の化学的コンジュゲート化(すなわち、間接標識化)により、オリゴヌクレオチドプローブに結合させることができる。間接標識化では、オリゴヌクレオチドプローブに直接的に結合した分子は、典型的には、2,4-ジニトロフェニル(DNP)、ジゴキシゲニン(DIG)、またはビオチンなどのハプテンである。直接標識化では、オリゴヌクレオチドプローブに結合した分子は、典型的には、蛍光色素である。本発明の種々の標識の検出方法は、以下でさらに詳細に説明する。
【0035】
本発明の標識は、オリゴヌクレオチドプローブの5’末端および/もしくは3’末端にさらに結合させることができるか、または、1以上のヌクレオチドもしくはリン酸への連結を介してオリゴヌクレオチドプローブの内部に取り込ませることができる。あるいは、本発明の標識は、1以上の非ヌクレオチド連結試薬への連結を介して、オリゴヌクレオチドプローブに取り込ませることもできる。場合によっては、標識は、例えば、アミン、アジドまたはアルキン基などの反応基をオリゴヌクレオチドプローブに導入し、かつアミド結合形成またはクリックケミストリー(click chemistry)を介して第2ステップで標識をカップリングさせることにより、2ステップ法でオリゴヌクレオチドプローブに取り込ませることができる。本明細書中で用いる場合、「クリックケミストリー」との用語は、一般的に、非常に複雑な化学的環境内で特定の生成物の効率的な形成を可能にする任意の双直交(bioorthogonal)反応を意味する。特に、この用語は、生体分子標的への1以上の反応性タグの取り込みおよびそれに続く複合生物学的サンプル中でのタグ誘導体化の高選択性を意味する。クリックケミストリーの原理は当業者に公知であり、例えば、Best, M.D.(Biochemistry 2009, 48(28): 6571-6584)に記載されている。本発明の標識を導入する別の方法は、例えば、WO 2007/059816に記載されているように、ホスホルアミダイト法に基づくオリゴヌクレオチド合成中の酸化ステップを介して、標識をカップリングさせることである。
【0036】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、個々のオリゴヌクレオチドのそれぞれが、1コピー以上、好ましくは複数コピーで存在するように設計することができる。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブのセットは、個々のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、等モル量で、かつ/または同等の濃度で存在するように設計される。核酸分子の濃度および/またはモル濃度を算出する方法は、当業者の標準的な知識である。さらに、オリゴヌクレオチドプローブのセットは、好ましくは、1種類の個々のオリゴヌクレオチドプローブのすべてのコピーが同じ配列を有し、同一の位置に1個以上の標識を含むように設計する。1コピーまたは複数コピーで存在する個々のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、オリゴヌクレオチドプローブの1つのサブセットを構成する。
【0037】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、オリゴヌクレオチドプローブの1以上のサブセットを含み、ここで、それぞれのサブセットは、同一の位置に標識を有する同じ配列のオリゴヌクレオチドプローブからなる。
【0038】
本発明の文脈で見出されるように、同じ配列を有し、かつ同一の位置に標識を含むオリゴヌクレオチドプローブのサブセットは、それらの生化学的特性が実験者に既知であるので、結果として、標識の取り込みのための最も好ましい位置を選択することができ、さらに、好ましくない位置(例えば、蛍光シグナルの不利なクエンチングをもたらすであろう位置)を防ぐことができ、特に有利である。
【0039】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、オリゴヌクレオチドの化学合成中に所定の位置に標識が挿入されるという点をさらに特徴とする。つまり、標識が結合、連結および/もしくはコンジュゲート化する所定の位置で修飾ヌクレオチドを取り込ませることにより、または標識結合のプラットフォームとして機能し得る非ヌクレオチド連結試薬を取り込ませることにより、所定の数の標識を分子に取り込ませることができる。所定の位置での標識の挿入には、ホスホルアミダイト法に基づくオリゴヌクレオチド合成における酸化ステップ中に標識を取り込ませる手順も含まれる(例えば、WO 2007/059816を参照されたい)。好ましくは、標識の取り込みは、標識がオリゴヌクレオチドプローブにわたって均一に分布するようなものである。より好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブは、互いに等しい距離を有する位置で、特に、互いに少なくとも5、10、15、または20ヌクレオチド以上のスペーサー距離を有する位置で標識が分子に挿入されるように設計する。このスペーサー距離は、オリゴヌクレオチドプローブのサブセット毎に異なることができ、個々のオリゴヌクレオチドプローブの全長に依存する場合もある。すなわち、個々の標識同士の間のスペーサー距離は、オリゴヌクレオチドプローブの全長と共に増大する場合がある。
【0040】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、ほぼ等間隔の位置に、特に少なくとも5、10、15または20ヌクレオチドのスペーサー距離で、標識を含む。
【0041】
別の好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブは、既定の位置に、場合によっては互いに既定の距離に存在する位置に、標識を含むことができる。
【0042】
特定の間隔を有する距離で標識を配置する利点は、標識が他の標識の近くに位置し過ぎている場合に生じるであろういかなる悪影響(例えば、蛍光標識を用いる場合の干渉および/またはクエンチング)も回避することができることである。さらに、標識取り込みの制御により、一部の位置に過剰な標識が導入されること(これは、ハイブリダイゼーション効率に影響を及ぼすであろう)をさらに回避することができる。
【0043】
本明細書中で用いる場合、「既定された」との用語は、一般的に、個々のオリゴヌクレオチドプローブを設計する際に、標識が組み込まれ、結合、コンジュゲート化または連結される位置を規定することができることを意味する。つまり、「既定された」との用語は、例えば、酵素的標識化アプローチの場合のように標識がランダムに分布し、かつ/または取り込まれるのではないことを意味する。既定された標識位置を認知および/または決定する1つの可能性は、1分子内の標識の分布が一定のパターンに従う場合である。また、既定の位置は、例えば、1以上のサブセットのオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、取り込まれた標識の同じパターンを示す場合に、1つのサブセット内の標識の分布を分析する際にも明らかとなる場合がある。
【0044】
上記で既に詳細に述べた通り、標識は、直接的または間接的に、個々のオリゴヌクレオチドプローブに取り込ませ、結合、コンジュゲート化または連結させることができる。
【0045】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、標識が、直接的またはリンカーを介して間接的に、ヌクレオチドの塩基、糖、またはリン酸部分に結合している点を特徴とする。
【0046】
標識を塩基、糖、またはリン酸部分に結合させることにより、(i)標的配列に対する相補的塩基対形成の潜在的な破壊および/または不具合を最小限に減少させることができ、かつ(ii)短鎖オリゴヌクレオチドプローブを用いて、効率的な結合親和性を達成することができる。
【0047】
例えば、2,4-ジニトロフェニル(DNP)標識を、シチジンのN4位に直接連結させることができる。あるいは、標識の連結を可能にし、かつ/または促進するためにヌクレオチドを修飾することができる。つまり、例えば、ピリリウムシアニン色素を、5-アミノアルキル修飾ピリミジンヌクレオチドに共有結合させることができる。プローブへの標識の直接結合は、好ましくは、相補的塩基対形成の水素結合相互作用に通常は関与するプリンまたはピリミジン塩基上の部位を直接的に修飾しない。
【0048】
本明細書中で称される場合、「リンカー」との用語は、一般的に、標識を、ヌクレオチドの核酸塩基、糖またはリン酸部分にカップリング、コンジュゲート化、共有結合または結合させるために機能することができる任意の化学構造を意味する。好ましくは、本発明のリンカーとしては、限定するものではないが、例えば、エチレングリコールリンカー、ヘキサエチレングリコールリンカー、プロパルギルアミノリンカー、アミノアルキルリンカー、シクロヘキシルリンカー、アリールリンカー、エチレングリコールエチニルおよびエチルオキシエチルアミノリンカー、またはアルキルアミンリンカーなどの柔軟性または剛性構造が挙げられる。典型的には、標識は、活性化エステルを介してリンカーに結合させることができる。
【0049】
また別の好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、標識が非ヌクレオチド単位に結合しているという点を特徴とする。
【0050】
標識を非ヌクレオチド単位に結合させることの1つの利点は、個々のオリゴヌクレオチドプローブの設計および合成が、配列に依存しないことである。つまり、オリゴヌクレオチドプローブのすべてを、それらが同じ位置で標識を含有するように設計することができる。さらに、当技術分野での一般的了解事項とは対照的に、驚くべきことに、標識を非ヌクレオチド単位に結合させる場合にも、標的配列への結合効率は最適のままであることが、本発明の文脈において見出されている。
【0051】
本明細書中で用いる場合、「非ヌクレオチド単位」との用語は、一般的に、標識またはインターカレーターなどの単一または複数の部分を、いずれかの予め選択された特定の位置でヌクレオチドプローブに連結させることを都合よく可能にする、任意の試薬あるいは分子を意味する。本発明の非ヌクレオチド単位は、好ましくは、ヌクレオチド試薬由来の特定のヌクレオチドモノマー単位と合成的にカップリングして、ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドモノマー単位から構成される骨格を有する所定の配列のポリマーをもたらすことができるモノマー単位である。つまり、本発明の非ヌクレオチド単位は、ヌクレオチドの骨格配列内のいずれの所望の位置にも配置することができる。本発明の非ヌクレオチド単位は、標識を担持するかまたはリンカーアームが脱保護されればコンジュゲート化反応に加わることができるリンカーアーム部分であるリガンドを含むことができる。本発明の非ヌクレオチド単位は、クリックケミストリーに好適なアジドまたはアルキン部分をさらに含むことができる(Best, M.D., Biochemistry 2009, 48(28): 6571-6584)。ポリマー形成中にリンカーアーム官能基を保護するために用いることができる好適な保護基は、当技術分野で公知である。
【0052】
本発明の非ヌクレオチド単位は、ヌクレオチドおよび非ヌクレオチドモノマー単位のポリマーへのその段階的包有を可能にするように、2個のカップリング基をさらに含むことができ、ここで、このカップリング基のうちの一方は、モノマー単位の伸長鎖の末端に効率よくカップリングすることができるように規定され、第2のカップリング基は、混合ヌクレオチド/非ヌクレオチドモノマーの伸長鎖を段階的にさらに伸長させることが可能である。本発明の非ヌクレオチド単位は当技術分野で周知であり、例えば、EP 0313219に記載されている。
【0053】
さらなる好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、発色反応による、金属組織反応による、または直接的もしくは間接的蛍光分析による検出のために好適な標識を含む。
【0054】
本明細書中で用いる場合、「発色反応」との用語は、限定するものではないが、酵素活性の部位での発色団の形成をもたらす、当技術分野で公知のすべての標準的方法を含む。つまり、シンプルな一段階または複数段階の発色反応において、無色の基質を酵素的に着色生成物に変換することができる。本発明の文脈では、発色反応としては、目視検査により調査、測定および/または解析することができる酵素活性の個別の領域、スポットまたはバンドを明らかにするいずれかの反応群または反応のセットが挙げられる。ビオチン化オリゴヌクレオチドプローブの検出は、例えば、一般的に、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などのレポーター酵素にコンジュゲート化されたアビジンまたはストレプトアビジンを介する比色可視化または化学発光可視化を用いる。例えば、4-ニトロブルーテトラゾリウム塩化物(NBT)およびリン酸5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル(BCIP)は、アルカリホスファターゼのための有効な発色基質であることが当技術分野で一般的に知られており、青色着色生成物に変換される。化学発光可視化を介した検出としては、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)および過酸化水素により触媒されるルミノールの酸化中の発光を含む、任意の増強化学発光(ECL)反応が挙げられる。発生した光は、フィルムまたはCCDカメラにより捕捉することができ、定量的または半定量的解析のために機能することができる。そのような検出系は、当技術分野で日常的に用いられており、例えば、GEヘルスケア社(USA)から購入することができる。
【0055】
本明細書中で称される場合、「金属組織反応」との用語は、一般的に、適切な金属供給源および活性化剤の存在下で、金属が選択的に沈着し、黒色の非常に限局された染色をもたらす、任意の種類の酵素的または非酵素的反応を意味する。つまり、金属組織反応とは、酵素により触媒されたかまたは金属により触媒された溶液からの金属の沈着を意味する。好ましくは、本発明の酵素的金属組織反応は、抗体にカップリングされた西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)および溶液中の銀(I)イオンの使用を含む。あるいは、金属粒子(例えば、金粒子)は、好適な還元剤の存在下で、適切な銀塩溶液からの非常に特異的な銀の沈着の核をなすことができる。好ましくは、本発明の非酵素的金属組織反応は、金粒子で直接的または間接的に標識されたオリゴヌクレオチドプローブおよび銀(I)イオン溶液の使用を含む。そのような金属組織反応は、in situハイブリダイゼーション(ISH)および免疫組織化学(IHC)検出法の両方のために非常に感度が高いことが示されており、単一遺伝子の内在性コピーを容易に可視化する。これは慣用の明視野顕微鏡で用いられるので、蛍光光学系、または使用者側の暗順応を必要としない。シグナルは永続的であり、蛍光染色に伴う光退色の問題は有しない。そのような検出系(例えば、EnzMetTM、NanoGoldTM)は当技術分野で日常的に用いられており、例えば、Nanoprobes社(USA)をはじめとする様々な供給業者から購入することができる。
【0056】
本明細書中で用いる場合、「蛍光分析」との用語は、一般的に、蛍光シグナルを可視化、検出、分析および/または定量化するために好適な、当技術分野で公知のすべての種類の画像化法を意味する。特に、本発明の蛍光分析としては、限定するものではないが、すべての公知のデコンボリューション法および共焦点蛍光顕微鏡法、例えば、多蛍光プローブ顕微鏡法などが挙げられる。オリゴヌクレオチドプローブを蛍光色素で直接標識して、蛍光顕微鏡を用いて可視化することができ(直接的蛍光分析)、またはオリゴヌクレオチドプローブをハプテンで標識して、ハプテンに対する蛍光標識抗体を用いて検出し、続いて蛍光顕微鏡を用いて可視化することができる(間接的蛍光分析)。間接的蛍光分析はまた、蛍光標識二次抗体と組み合わせた非コンジュゲート化抗体の使用も含む。
【0057】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、標識が、蛍光標識またはハプテン、特にフルオレセイン色素、ローダミン色素、もしくはシアニン色素、またはビオチン、ジゴキシゲニンもしくは2,4-ジニトロフェニル部分である点を特徴とする。
【0058】
個々のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれに存在する標識の数に依存して、オリゴヌクレオチドプローブのセットは、様々な合計数の標識を含む。例えば、実施例3に例示されている通り、オリゴヌクレオチドプローブのセットが少なくとも1000〜2000個の合計数の標識、好ましくは少なくとも4000〜8000個の合計数の標識を含む場合に、最適な結果が得られる。
【0059】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、少なくとも1000個、好ましくは少なくとも2000個、より好ましくは少なくとも4000個、最も好ましくは少なくとも8000個の合計数の標識を含む。
【0060】
合計で多数の標識を含むオリゴヌクレオチドプローブのセットを準備することにより、個々のオリゴヌクレオチドプローブのそれぞれに取り込まれる標識の数を減らすことができ、結果として、それぞれの標識が最適な様式で分子内に位置することができる。つまり、限られた数の標識のみを取り込ませることにより、例えば、蛍光標識の場合には、望ましくないクエンチング効果を回避することができ、あるいはハプテンは、最適な抗体結合により、引き続く検出を最適化するように配置することができる。
【0061】
現在までに、豊富に発現されるmRNAまたは例えばセントロメア配列をはじめとする反復ゲノム配列などの非常に高存在量の標的配列の検出のために、オリゴヌクレオチドプローブを用いることが成功しているが、低存在量の配列の検出のためのオリゴヌクレオチドプローブの使用は、不利であることが記載されている(例えば、Jin et al., 2001; Morphology Methods: Cell and Molecular Biology Techniques: 27-46を参照されたい)。
【0062】
しかしながら、本発明の文脈では、非反復性ゲノム配列を検出するためにオリゴヌクレオチドプローブを用いることに成功している。つまり、非反復領域に対するオリゴヌクレオチドプローブは、対象のゲノム標的配列を検出するために最も好適である。
【0063】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、ゲノム標的配列の非反復領域に相補的である。
【0064】
ゲノム標的配列の非反復領域に相補的なオリゴヌクレオチドプローブのセットを用いることの利点の1つは、低存在量の遺伝子を高感度で検出および/または可視化できることである。
【0065】
本明細書中で用いる場合、「非反復領域」との用語は、一般的に、対象となるゲノム中の反復DNAエレメント以外のいずれかの配列を意味する。特に、本発明において非反復領域は、限定するものではないが、セントロメア、テロメア、タンデム反復配列(例えば、サテライトDNA、ミニサテライトDNA、およびマイクロサテライトDNA)、および散在反復エレメント(SINE(short interspersed nuclear element:短鎖散在反復配列)およびLINE(long interspersed nuclear element:長鎖散在反復配列)など)をはじめとするゲノム(例えば、ヒトゲノム)の反復配列以外のいずれかの領域を意味する。反復エレメントは、解析されたほとんどの真核生物ゲノムで見出されており、ほとんどの場合に複数コピーで存在し、タンパク質またはRNAをコードしていない。散在反復エレメントは、通常は単一コピーとして存在し、ゲノム全体にわたって広く分布している。
【0066】
さらなる好ましい実施形態では、オリゴヌクレオチドプローブのセットは、ゲノム標的配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに相補的であり得る。ゲノム標的配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを用いることにより、プローブが再アニーリングできないので、最適なハイブリダイゼーションが確実になる。
【0067】
本明細書中で用いる場合、「センス」との用語は、オリゴヌクレオチドプローブの配列が、標的配列と(例えば、ゲノム配列のコード鎖と)同じであることを意味する。対照的に、「アンチセンス」との用語は、反対側の鎖の配列を意味する。本発明の文脈では、ゲノム標的配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖のいずれかに相補的であるオリゴヌクレオチドプローブを用いて、対象のゲノム標的配列を検出できることが見出されている。
【0068】
ヒト上皮増殖因子受容体(HER-2)癌遺伝子は、上皮増殖因子受容体またはerb遺伝子ファミリーの一員であり、浸潤性乳癌の主要な分類因子として、かつ癌治療の標的として発展してきた膜貫通型チロシンキナーゼ受容体をコードする。HER-2(C-erbB-2)遺伝子は、17q染色体上に局在する。HER-2は、進行型転移性乳癌の患者での、抗HER-2ヒト化モノクローナル抗体(トラスツヅマブ)を用いた療法に対する予後および応答に関連付けられている。HER-2状態は、ホルモン療法、トポイソメラーゼ阻害剤、およびアントラサイクリンをはじめとする他の療法に対する乳癌の応答を予測するその能力についても試験されている。形態学に基づく技術および分子に基づく技術の両方が、乳癌臨床サンプルでのHER-2状態を測定するために用いられてきた。現在までに、免疫組織化学(IHC)染色は、利用されている主要な方法であった。しかしながら、HER-2はすべての乳房上皮細胞で発現しているので、大多数のIHCアッセイとは異なり、HER-2状態の評価は定性的というよりもむしろ定量的である。注意深く固定、処理、および包埋された標本に対して標準化されたIHCアッセイを実施した場合、遺伝子コピー状態とタンパク質発現レベルとの間には非常に優れた相関が見られることが、研究により示されている。
【0069】
本発明の文脈において、驚くべきことに、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットが、ヒト上皮増殖因子受容体2(ヒトHER-2)遺伝子座を検出するために特に好適であることが見出されている。ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)は、乳癌患者の約30%で高発現されており、無視できない数の知見が、HER-2過剰発現と全生存率の悪さとの関連性を支持している。つまり、正常または異常なHER-2遺伝子発現を検出する改善された方法に対する必要性が常に存在する。本発明に従うヒト上皮増殖因子受容体2遺伝子座の検出は、例えば、実施例1〜3に例示されている。
【0070】
オリゴヌクレオチドプローブのセットが、対象の標的配列のクラスター化した領域に対するものである場合、ゲノム標的配列の金属組織学的検出が特に好ましいことが、本発明の文脈でさらに見出されている。本明細書中で用いる場合、「クラスター化した」との用語は、異なるオリゴヌクレオチドプローブが、互いに近傍に位置する場合がある個々の標的配列に対するものであることを意味する。この近傍としては、限定するものではないが、約50〜500ヌクレオチドの距離が挙げられる。オリゴヌクレオチドプローブのクラスター化とはさらに、これらの領域が対象のゲノム標的配列にわたって均一に分布しておらず、オリゴヌクレオチドプローブが不均一に分布して、したがって遺伝子座内の近傍の複数領域(すなわち、クラスター)ならびにより遠位に位置する領域に及ぶ場合があることを意味する。本発明のオリゴヌクレオチドプローブのクラスター化は、図3に例示されている(例えば、プール2および4を参照されたい)。
【0071】
したがって、別の好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、オリゴヌクレオチドプローブがゲノム標的配列内でクラスター化している点を特徴とする。
【0072】
本発明の文脈において、驚くべきことに、クラスター化したオリゴヌクレオチドプローブおよび金属組織学的検出手法を用いる場合に、ゲノム標的配列の解析および/または可視化が特に高感度となることが見出された。
【0073】
別の好ましい実施形態では、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、オリゴヌクレオチドプローブがゲノム標的配列に対するものである点を特徴とし、ここで、ゲノム標的配列は、ヒト上皮増殖因子受容体2(ヒトHER-2)遺伝子座を含む。
【0074】
本明細書中で称される場合、「ヒト上皮増殖因子受容体2(ヒトHER-2)遺伝子座」との用語は、一般的に、ヒト上皮増殖因子受容体2(HER-2)をコードする遺伝子を構成するすべてのゲノム配列および/またはゲノム領域を含む。これらの配列は、遺伝子発現に必須であっても、必須でなくてもよい。ヒト上皮増殖因子受容体2(ヒトHER-2)遺伝子座を構成する配列は、当業者に公知であり、例えば、限定するものではないが、NCBI(米国国立生物工学情報センター)GenBankデータベースをはじめとするデータベース検索により特定することができる。
【0075】
本発明の文脈において、驚くべきことに、金属組織学的検出法を採用する場合に、オリゴヌクレオチドプローブのクラスター化が特に好ましいことが見出された。つまり、酵素により媒介される金属の沈着は、標識同士が近傍にあることにより促進されることが推測されるので、オリゴヌクレオチドプローブのクラスター化は、遺伝子配列の非常に高感度な検出を可能にする。
【0076】
本発明の文脈において、少なくとも100種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含むオリゴヌクレオチドプローブのセットを、ゲノム標的配列、特にHER-2遺伝子座を含むゲノム標的配列を検出するために成功裏に用いることができることが実証された。ゲノム標的配列、特に本発明に従うHER-2遺伝子座を含む標的配列の検出は、例えば、図1〜4に例示されている。
【0077】
したがって、別の態様では、本発明は、ゲノム標的配列の検出のための本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットの使用を提供する。
【0078】
本発明の文脈では、「検出」または「検出ステップ」との用語は、一般的に、その標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブの結合を可視化、分析および/または定量化することを意味する。本発明の検出としては、限定するものではないが、標準的な顕微鏡観察技術ならびにいずれかの種類の蛍光分析の使用を含む、プローブ結合したサンプルの目視検査が挙げられる。特に、サンプルの目視検査は、オリゴヌクレオチドプローブがその標的配列にハイブリダイズした後に行なう。放射性標識の場合には、検出または検出ステップとは、オートラジオグラムの生成をはじめとする、X線フィルムへのプローブ結合したサンプルの曝露を意味する。好ましくは、本発明の検出または検出ステップは、発色反応、金属組織反応により、または直接的もしくは間接的蛍光分析により行なう。
【0079】
本発明の文脈において、驚くべきことに、少なくとも100種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含むオリゴヌクレオチドプローブのセットが、現行技術に対する様々な利点を提供する検出法を可能にすることが見出された。つまり、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットを用いると、当技術分野で公知かつ利用可能な方法と比較して、(i)より少量のプローブを用いて、(ii)より短いハイブリダイゼーション時間後に、かつ/または(iii)より少ないバックグラウンドで、対象のゲノム標的領域を検出することができる。ゲノム標的配列を検出するための公知の標準的な方法は、例えば、発色in situハイブリダイゼーション(CISH)および免疫組織化学(IHC)技術を利用する(Ventana InformTM, Ventana Medical Systems Inc., USA;SpotLightTM, Zymed Laboratories Inc., CA, USA)。
【0080】
したがって、さらなる態様では、本発明は、対象のゲノム標的配列を検出する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
(a)本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットをサンプルと共に、該対象のゲノム標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブのセットの結合をもたらす条件下でインキュベートするステップ;および
(b)該ゲノム標的配列への該オリゴヌクレオチドプローブの結合を検出するステップ。
【0081】
上記で規定したすべての態様および実施形態は、対象のゲノム標的配列を検出する方法にも関する。
【0082】
「結合をもたらす条件下で」との用語は、一般的に、本発明の標識オリゴヌクレオチドプローブがその標的配列にハイブリダイズできる条件、すなわち、オリゴヌクレオチドプローブがその標的配列に結合できる条件を意味する。特に、本発明の文脈では、結合をもたらす条件とは、オリゴヌクレオチドプローブと標的配列との間の相補的塩基対の形成を意味する。オリゴヌクレオチドプローブと標的配列との間のハイブリダイゼーション、つまり相補的塩基対の形成は、平衡状態での水素結合および疎水性相互作用により定義される。つまり、2本の相補鎖のアニーリングおよび分離は、温度、塩濃度、pH、プローブおよび標的分子の性質、ならびにハイブリダイゼーションおよび洗浄溶液の組成をはじめとする様々な因子に依存する。ハイブリダイゼーションのための至適温度は、好ましくは、ハイブリッドの融解温度(Tm)を規定するTm値(すなわち、二本鎖核酸鎖の50%が分離する温度)未満で、15〜25℃の範囲内である。Tm値を算出するための種々の数式が、当業者に公知である。RNA-RNAハイブリッドは、一般的に、DNA-DNAまたはDNA-RNAハイブリッドよりも10〜15℃安定であり、したがって、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のためによりストリンジェントな条件を必要とする。本発明に従う結合をもたらす条件はまた、二本鎖の形成を最大化し、かつ組織または細胞へのプローブの非特異的結合を阻害する試薬を含有するハイブリダイゼーションバッファーの使用も含む。プローブの濃度は、各プローブについて、および各組織について、最適化しなければならない。結合をもたらす条件とはまた、1以上の洗浄ステップの採用による未結合プローブの除去を含む最適なハイブリダイゼーションを可能にするように、十分な時間、プローブを標的配列と共にインキュベートすることも意味する。
【0083】
特に、本発明の文脈では、本発明に従う結合をもたらす条件とは、オリゴヌクレオチドプローブを溶液中で標的サンプルと共にインキュベートするハイブリダイゼーション条件を意味する。つまり、結合をもたらす条件とは、例えば、DNAアレイとの関連などでの固定化された標的サンプルと共にオリゴヌクレオチドプローブをインキュベートするいずれの条件も意味しない。本発明に従う結合をもたらす条件は、例えば、実施例3に記載されている。
【0084】
遺伝子発現の解析は、疾患の存在、疾患の様々なステージの評価、または治療的処置の成功もしくは失敗を示すものであり得る。例えば、HER-2遺伝子過剰発現は、比較的高いグレードおよび広汎型の乳管癌と関連することが報告されており、HER-2遺伝子増幅は、浸潤性小葉癌での有害帰結と関連付けられている。さらに、HER-2遺伝子増幅およびタンパク質過剰発現は、一貫して、高い腫瘍グレード、DNA異数性、高い細胞増殖速度、エストロゲンおよびプロゲステロンに対する核タンパク質受容体についての陰性アッセイ、p53突然変異、トポイソメラーゼIIa増幅、ならびに乳癌浸潤性および転移の種々の他の分子バイオマーカーの変化に関連付けられてきた(例えば、Ross et al., 2004を参照されたい)。HER-2遺伝子発現の状態はさらに、抗HER-2ヒト化モノクローナル抗体であるトラスツヅマブ(Herceptin(登録商標), Genentech, CA, USA)を用いた療法に対する予後および応答に関連付けられている。
【0085】
したがって、好ましい実施形態では、本発明のゲノム標的配列を検出する方法はさらに、検出が、特にヒト疾患についてかつ/または患者での治療的処置の有効性についての診断目的である点を特徴とする。
【0086】
診断目的での使用のための、および医療処置の評価のための高感度検出法の信頼性は、特に重要である。
【0087】
別の好ましい実施形態では、本発明の使用または本発明の方法は、検出または検出ステップがin situハイブリダイゼーションにより行われる点を特徴とする。
【0088】
in situハイブリダイゼーションは標準的な方法であり、したがって、特に重要である。
【0089】
本発明の文脈で用いる場合、「in situハイブリダイゼーション」との用語は、一般的に、標識オリゴヌクレオチドプローブを用いて、組織(in situ)、細胞の一部分もしくは切片において、または、組織が十分に小さい場合(例えば、植物種子もしくはショウジョウバエ胚)器官全体において、特定のDNAまたはRNA配列を局在決定する、いずれかの種類の核酸ハイブリダイゼーションアッセイを意味する。つまり、本発明のin situハイブリダイゼーションとは、対象の配列にヌクレオチドプローブの相補鎖をハイブリダイズさせることにより、形態学的に保存された組織切片または細胞標品で特定のヌクレオチド配列を局在決定および検出するいずれかの方法を意味する。
【0090】
一般的に、in situハイブリダイゼーション法で用いることができる2種類の標識プローブ、すなわち直接または間接標識オリゴヌクレオチドがある。例えば、ビオチンなどの二次分子または抗体により検出することができる分子にコンジュゲート化することにより、オリゴヌクレオチドを間接的に標識することができる。ビオチン標識オリゴヌクレオチドは、in situハイブリダイゼーション技術のためにしばしば用いられ、例えば、ビオチン標識しかつハイブリダイズしたプローブに蛍光色素コンジュゲート化アビジンを結合させることにより検出することができる。別のタイプの間接標識オリゴヌクレオチドとしては、ジゴキシゲニンまたはジニトロフェニルにコンジュゲート化されたものが挙げられる。これらの標識は、例えば、蛍光色素コンジュゲート化抗ジゴキシゲニンまたは抗ジニトロフェニル抗体により検出することができる。他のオリゴヌクレオチドは、所定の位置で個々のヌクレオチドまたは非ヌクレオチド連結試薬に蛍光色素を共有結合させることにより、直接的に標識することができ、これにより、二次検出分子の必要性が排除される。DNA合成に続くオリゴヌクレオチドプローブの標識化は、多くの場合、合成中に標識ヌクレオチドを取り込ませることよりも容易である。逆に、直接標識プローブの検出は、二次検出分子の使用を省略することができるので、比較的時間がかからない。したがって、直接標識プローブと間接標識プローブの両方に対して、明らかな利点および欠点がある。
【0091】
好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、ジニトロフェニルを用いて標識されており、抗ジニトロフェニル抗体の使用により検出される。
【0092】
in situハイブリダイゼーションのために用いられるオリゴヌクレオチドプローブは、DNAもしくはRNAまたはその両者の組み合わせであり得、蛍光標識されていてもされていなくてもよい。つまり、本発明のin situハイブリダイゼーションは、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)ならびに発色in situハイブリダイゼーション(CISH)技術のすべての公知の方法の両方を含み、これらは、例えば、染色体の完全性を評価するための医学的診断で用いることができる。in situハイブリダイゼーションは、ハプテン標識または放射性標識オリゴヌクレオチドプローブを用いて行なうこともでき、この場合、検出は、例えば、蛍光団標識抗体、アビジン、またはX線曝露を用いて行なわれる。in situハイブリダイゼーション法は当業者に周知であり、例えば、Silverman and Kool, 2007, Advances in Clinical Chemistry, Vol. 43: 79-115に記載されている。
【0093】
本発明においてin situハイブリダイゼーションはさらに、多重もしくは多色in situハイブリダイゼーションのすべての公知の手順、すなわち、異なる色の蛍光標識を有するオリゴヌクレオチドプローブを用いるか、または異なるハプテンおよび異なる酵素/基質系を有するオリゴヌクレオチドプローブを用いるすべての手順を含む。これらの多重標識は、同時に、または一連の検出ステップで検出することができる。そのような方法は当業者に公知であり、例えば、Wiegant et al., 1993(Cytogenet Cell Genet 63: 73-76)に記載されている。
【0094】
例えば、本発明の実施例1に例示されている通り、ゲノム標的配列の検出を、短い時間で、すなわち、4時間よりも著明に短いハイブリダイゼーション時間後に、達成することに成功した。さらに、当技術分野で公知の方法(例えば、Ventana InformTM検出法)と比較して、1時間または30分のハイブリダイゼーション時間の後でさえ、改善された結果が得られた。
【0095】
したがって、好ましい実施形態では、本発明の方法は、ステップ(b)の検出ステップが、発色反応による、金属組織反応による、または直接的もしくは間接的蛍光分析によるものであり;かつ/あるいはステップ(a)のインキュベーションステップが、最大で4時間、3時間または2時間後、特に最大で1時間または30分後に完了する点をさらに特徴とする。
【0096】
本発明の文脈で意外にも見出された通り、ゲノム標的配列の検出は、当技術分野で公知の標準的な検出法と比較して、より短いハイブリダイゼーション時間で達成することができた(例えば、図2を参照されたい)。間接的蛍光分析によるゲノム標的配列の検出は、例えば、図4に例示されている。
【0097】
本明細書中で用いる場合、「完了する」との用語は、ステップ(a)のインキュベーションステップが本質的に終了することとして理解されるべきではない。この用語は、インキュベーション時間の延長が、シグナルの著明な改善または増大をもたらさないであろうことを意味する。対照的に、「完了する」との用語はむしろ、検出可能な結果が得られるように、対象の標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブのハイブリダイゼーションが完了することを意味する。
【0098】
実施例3に例示されている通り、種々のオリゴヌクレオチドプローブ「カクテル」組成物をもたらす異なるオリゴヌクレオチドプローブのサブセットの選択が、当技術分野で公知の方法(例えば、Ventana InformTM)と比較して改善された検出を可能にすることが、本発明の文脈でさらに観察された。
【0099】
さらなる態様では、本発明は、対象のゲノム標的配列に対するオリゴヌクレオチドプローブのセットを作製する方法を提供し、該方法は、以下のステップを含む:
(a)対象のゲノム標的配列の少なくとも100箇所の異なる領域に相補的なオリゴヌクレオチドプローブのセットを設計するステップであって、特に、該領域は、非反復配列を含むステップ;および
(b)本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットを合成するステップ。
【0100】
上記で規定したすべての態様および実施形態は、対象のゲノム標的配列に対するオリゴヌクレオチドプローブのセットを作製する方法にも関する。
【0101】
本発明の方法の利点の1つは、再現性の高い様式でオリゴヌクレオチドプローブを作製することができることである。さらに、オリゴヌクレオチドプローブの設計は、種々の異なる遺伝子配列に適合させることができる。
【0102】
本明細書中で用いる場合、「設計する」との用語は、オリゴヌクレオチドプローブが相補的である様々な標的配列の特定を意味する。上記で詳細に述べた通り、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、標的配列のセンス鎖またはアンチセンス鎖に相補的であり得るように設計することができる。好ましくは、ヒトゲノムのいずれの反復領域とも相補的でないように、オリゴヌクレオチドプローブを設計する。設計とは、オリゴヌクレオチドプローブが、限定するものではないが、カノニカル/非カノニカルな塩基対および塩基ミスマッチをはじめとする、対象の標的配列とのいずれかの種類の相補的塩基対を形成することができることをさらに意味する。つまり、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは、しかし必ずしも必要なわけではなく、標的配列に対する100%の相補性を示すように設計することができる。オリゴヌクレオチドプローブはまた、適切と考えられる場合、標的配列に対する100%未満の相補性を示すように設計することもできる。オリゴヌクレオチドプローブと対象の標的配列との相補性は、しかしながら、対象の標的配列への結合および、結果として、その検出をもたらすのに十分である必要がある。クローニングした遺伝子の数が増加すれば、いずれかの公開されたcDNA配列および/または遺伝子バンク登録に基づいて、容易にオリゴヌクレオチドプローブを設計することができる。様々な生物に由来するゲノム配列を含むデータベースは当業者に公知であり、例えば、NCBI(米国国立生物工学情報センター、米国)からのすべての公開データベースが挙げられる。
【0103】
本明細書中で用いる場合、「合成する」との用語は、好ましくは、限定するものではないが、自動化DNAおよび/またはRNA合成機ならびにホスホルアミダイト化学の使用をはじめとする、化学合成によるオリゴヌクレオチドプローブの生成を意味する。自動化DNAまたはRNA合成機は当業者により日常的に用いられており、例えば、Applied Biosystems社(Darmstadt, Germany)、Biolytic社(Newark, CA, USA)、またはBioAutomation社(Plano, TX, USA)などの様々な供給業者から市販されている。好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、1以上の96ウェルプレートで合成し、それにより、迅速かつ堅牢なハイスループット合成がもたらされる。96ウェルプレート形式でのオリゴヌクレオチドプローブの化学合成は、種々の異なるオリゴヌクレオチドの迅速合成ばかりでなく、異なるオリゴヌクレオチドサブセットの非常に効率的かつコンビナトリアルな選択も可能にする。上記で既に詳細に述べた通り、本発明に従う対象のゲノム標的配列を検出する方法は、多重96ウェル形式の合成により生成されたオリゴヌクレオチドの大きなプールからの少なくとも100種類の異なるオリゴヌクレオチドサブセットの個別およびコンビナトリアルな選択により、さらに最適化することができ、これらのオリゴヌクレオチドのサブセットは、続いて、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットを構成するために用いることができる。本発明の種々のオリゴヌクレオチドプローブのサブセットのコンビナトリアルな選択は、例えば、実施例3に例示されている。この最適化プロセスは、実験から得られる情報によりさらに評価することができる。
【0104】
場合によっては、オリゴヌクレオチドプローブは、適用可能かつ当技術分野で公知のいずれかの種類の標準的な方法により、さらに精製することができる。そのような方法としては、限定するものではないが、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのクロマトグラフ法が挙げられる。場合によっては、オリゴヌクレオチドプローブの精製は、例えば、DMT(ジメトキシトリチル)などの1個以上の結合した保護基を介して行なわれる。DMT基は、オリゴヌクレオチド合成でのヌクレオシドの保護のために広く用いられている。原則として、オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれは、個別にかつ/または別個に精製することができる。好ましくは、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、セットとして、または異なるサブセットのプールとして精製される。例えば、96種類の粗製オリゴヌクレオチドからなるMWPプローブプールのアリコートを、0.1M酢酸トリエチルアンモニウム pH7/アセトニトリル勾配を用いてRP18 HPLCカラム(Hypersil、8×240mm)で精製することができる。ピークのDMTを回収し、透析により脱塩し、蒸発させて、10mM Tris pH8.0に溶解することができる。OD260mmは、UV測定により決定することができる。
【0105】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、ステップ(b)の合成ステップが、
(i)ホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックを介して、または
(ii)ホスホルアミダイト法に基づくオリゴヌクレオチド合成中の酸化ステップを介して、
少なくとも1種の標識の取り込みを含む点をさらに特徴とする。
【0106】
本明細書中で用いる場合、「ホスホルアミダイト修飾ビルディングブロック」との用語は、一般的に、オリゴヌクレオチド分子に1個以上の標識を導入するために用いることができるホスホルアミダイトまたはホスホルアミダイト誘導体を含むいずれかの化学構造を意味する。特に、ホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックを用いて、従来の合成と同じ手順により増大する合成オリゴヌクレオチドに該ビルディングブロックを共有結合させることにより、自動化合成機で直接的に単一標識または多標識オリゴヌクレオチドを成功裏かつルーチンに調製することができる。好ましくは、本発明のホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックとは、例えば、N4-アミノアルキル-2’-デオキシ-シチジンまたはC-5置換ピリミジンなどのデオキシヌクレオシドホスホルアミダイトを意味する。デオキシヌクレオシドホスホルアミダイトは、ピリミジンのC-5位もしくはC-4位、デオキシアデノシンもしくはデオキシグアノシンのC-8位、または7-デアザプリンのC-7位にN-保護アミノアルキル基を有することができる。あるいは、デオキシヌクレオシドホスホルアミダイトは、クリックケミストリーに基づく標識の取り込みに好適なアジドまたはアルキン部分を有することができる。特に、本発明のホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックはさらに、非ヌクレオチド部分を含む。場合によっては、ホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックは、オリゴヌクレオチドに取り込まれる前に標識することができる。本発明のホスホルアミダイトビルディングブロックに結合させることができる標識としては、限定するものではないが、蛍光団、ビオチン、および2,4-ジニトロフェニル(DNP)が挙げられる。蛍光標識されたホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックの例としては、限定するものではないが、フルオレセイン-dTホスホルアミダイト、cx-FAMホスホルアミダイト、およびQuasar 570-dTホスホルアミダイトが挙げられる。これらの化合物は当業者に公知であり、例えば、Invitrogen社(Carlsbad, CA, USA)、Biosearch Technologies社(Novato, CA, USA)、Biogenex Laboratories社(San Ramon, CA, USA)、またはGlen Research社(Sterling, CA, USA)などの様々な供給業者から購入することができる。
【0107】
特に好ましい実施形態では、ホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックは、2,4-ジニトロフェニル(DNP)-ホスホルアミダイトである。
【0108】
2,4-ジニトロフェニル(DNP)-ホスホルアミダイトは、2,4-ジニトロフェニル(DNP)に連結されたホスホルアミダイトである。2,4-ジニトロフェニル(DNP)は、安価な小分子標識であり、モノクローナルIgG抗DNP抗体を用いて免疫学的に検出することができる。2,4-ジニトロフェニルは、固相合成中にホスホルアミダイトに連結したオリゴヌクレオチドに取り込ませることができる。様々な構造のDNPホスホルアミダイトが当技術分野で報告されている(例えば、Grzybowski et al., 1993, Nucleic Acid Research, Vol. 21, No. 8: 1705-1712を参照されたい)。抗体検出で最大の感度を得るために、好ましくは、DNP部分を、リンカーを介してホスホルアミダイトビルディングブロックに結合させ、このリンカーは、様々なサイズのものであり得る。複数の2,4-ジニトロフェニルレポーター基を含有するオリゴヌクレオチドの合成および抗体媒介検出は当業者には一般的な知識であり、例えば、Grzybowski et al., 1993に記載されている。
【0109】
本発明の標識はさらに、ホスホルアミダイト法に基づくオリゴヌクレオチド合成中の酸化ステップを介して、オリゴヌクレオチドプローブに取り込ませることができる。ホスホルアミダイト法に基づくオリゴヌクレオチド合成中の酸化のプロセスは、当業者に公知の手順であり、例えば、WO2007/059816に記載されている。
【0110】
また別の態様では、本発明は、本発明に従うオリゴヌクレオチドプローブのセットと、それに加えて、脱パラフィン剤、前処理剤、洗浄剤および製品シートからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる構成要素とを含むキットを提供する。
【0111】
本発明のキットが、バッファー、抗体、および/または特定の反応を停止させるための試薬などの様々な標準的構成要素を含み得ることは、当業者には明らかである。当業者は、例えば、検出系、検査対象の細胞または組織、標的配列、標識、検査対象のサンプルなどに依存する、一般的な意図される使用にキットの構成要素を適合させることができるであろう。特に、構成要素の一部を、下記に例示する。
【0112】
本明細書中で用いる場合、「脱パラフィン剤」との用語は、一般的に、ワックス包埋生物学的サンプルからワックスを除去するのに好適ないずれかの種類の物質を意味する。本発明の脱パラフィン剤は、1種以上のパラフィン溶解化有機溶媒、1種以上の極性有機溶媒、1種以上の界面活性剤を含むことができ、任意により水をさらに含むことができる。
【0113】
本明細書中で用いる場合、「前処理剤」との用語は、一般的に、溶液中で非特異的結合部位をブロックするために用いることができるか、またはハイブリダイゼーションバッファーにオリゴヌクレオチドプローブを添加する前にサンプルと共にインキュベートした場合に、標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブの結合を改善するのに好適である、いずれかの種類の薬剤または物質を意味する。
【0114】
「洗浄剤」との用語は、一般的に、ハイブリダイゼーション後に未結合のオリゴヌクレオチドプローブを除去するために用いることができるいずれかの種類の液体組成物を意味する。本発明の洗浄剤は、例えば、NaClなどの一価もしくは二価塩、クエン酸ナトリウムなどの緩衝塩、および/またはホルムアミドを種々の濃度で含有することができる。これに関して、通常は、より高いホルムアミド濃度およびより低いNaCl濃度が、より高いストリンジェンシーのために用いられる。本発明の洗浄剤は当技術分野で公知であり、例えば、WO 93/06245に記載されている。
【0115】
本明細書中で称される場合、「検出剤」との用語は、一般的に、標的配列へのハイブリダイゼーション後にオリゴヌクレオチドプローブの標識セットを検出するために必要または重要であり得るいずれかの物質または薬剤を意味する。本発明の検出剤としては、限定するものではないが、蛍光もしくは非蛍光標識抗体、酵素反応のための基質(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼもしくはアルカリホスファターゼのための発色基質など)、またはアビジンもしくはストレプトアビジンなどの物質が挙げられる。
【0116】
以下の図面および実施例は、本発明の種々の実施形態を例示することを意図するものである。したがって、記載された特定の改変は、本発明の範囲に対する限定と理解されるべきではない。種々の等価物、変更および改変を本発明の範囲から逸脱することなくなし得ること、ならびに、したがって、そのような等価な実施形態が本明細書中に包含されるべきであることが理解されるべきであることが、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0117】
プローブ合成
6個のDNPで標識された87merオリゴヌクレオチドの15×96ウェルプレートDNAプローブ合成は、Biolytic Dr. Oligo 192 MWP DNA合成機で、50nmolスケールで、標準的なホスホルアミダイト化学およびBiolytic社の合成サイクルを用いて行なった。合成は、DMTオンモードで行なった。2000 A CPG dT支持材(Glen ResearchTM、カタログ番号20-2032)を、マイクロウェル合成プレート(OrochemTMフィルタープレート96ウェル、カタログ番号OF1100)のすべてのウェルにロードした。ホスホルアミダイト法に基づくオリゴヌクレオチド合成に必要なすべての他の標準的な試薬は、ProligoTMまたはGlen ResearchTMから購入し、アセトニトリルはBakerTMから購入した。オリゴヌクレオチド合成の品質は、放出されるDMTカチオンの色検出により定期的にチェックした。合成が完了した後、アンモニアを用いてオリゴヌクレオチドを切断および脱保護し(20時間、40℃)、続いてspeed vac濃縮器で蒸発させ、600μlの10mM Tris pH8.0に再懸濁した。続いて、OD260nm測定により濃度を測定した。収量:7〜16 OD260nm。この粗製品質を、異なるプローブプールを構成するために用いた。
【0118】
in situハイブリダイゼーション
in situハイブリダイゼーションアッセイは、脱パラフィン、前処理、洗浄およびストリンジェント洗浄のためにVentanaTM試薬を用いて、Ventana Discovery XTシステム(カタログ番号750-701)で行なった。サンプルは、本発明のプローブ組成物と、またはVentana INFORM HER2 DNAプローブTM(Ventana社、カタログ番号780-4332)とハイブリダイズさせた。特に記載しない限り、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、それぞれが81個のヌクレオチドを含み、互いに16ヌクレオチドの距離の同一の位置に6個の非ヌクレオチドDNP標識を有する1440個のオリゴヌクレオチドプローブからなっていた。このプローブの標識の合計数は、8640個であった。
【0119】
プローブは、酵素金属組織学的検出により、発色検出により、または間接的蛍光検出により検出した。本発明のプローブ組成物を、最終濃度4μg/mlまでハイブリダイゼーションバッファー(ホルムアミド、硫酸デキストラン、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウムをTrisバッファー中に含有する)で希釈した。Ventana INFORM HER2 DNAプローブTM(Ventana社、カタログ番号780-4332)は、最終濃度10μg/mlで、ハイブリダイゼーションバッファー中の即時使用溶液として製造業者から供給される。サンプルは、ホルマリン固定パラフィン包埋HER-2 3-in-1異種移植片対照スライド(Ventana社、カタログ番号783-4332)であった。各スライドは、それぞれCalu3細胞(高レベルHER-2遺伝子増幅)、ZR-75-1細胞(中等度HER-2遺伝子増幅)およびMCF7(HER-2遺伝子増幅なし)由来異種移植片の3枚の組織切片を含む。
【0120】
EZ Prep(Ventana社、カタログ番号950-102)を用いて、65℃で20分間、続いて75℃で4×4分間、スライドを脱パラフィンした。スライドを、反応バッファー(Ventana社、カタログ番号950-300)を用いて90℃で3×8分間前処理し、続いてプロテアーゼ3(Ventana社、カタログ番号760-2020)で37℃、20分間消化した。特に記載しない限り、プローブは、52℃で2時間ハイブリダイズさせた。ストリンジェント洗浄は、SSC(VentanaTM、カタログ番号950-110)を用いて、78℃で3×8分間行なった。続いて、スライドを、ウサギ抗DNP抗体(VentanaTM、カタログ番号780-4335)と共に、37℃で20分間インキュベートした。
【0121】
図2に示された実験について、ハイブリダイゼーション時間が、それぞれ32分(A)、1時間(B)および2時間(C)となるように、上記のプロトコールを改変した。
【0122】
酵素金属組織学的検出
プローブの酵素金属組織学的検出は、ultra View SISH検出キット(Ventana社、カタログ番号780-001)を用いて行ない、ultra View SISH-HRP(Ventana ultra View SISH検出キットTM、カタログ番号780-001)との37℃で16分間のインキュベーションで開始した。続いて、スライドをultra View SISH銀発色剤A、ultra View SISH銀発色剤Bおよびultra View SISH銀発色剤C(Ventana ultra View SISH検出キットTM、カタログ番号780-001)と共に37℃で12分間インキュベートした。スライドを、ヘマトキシリンII(Ventana社、カタログ番号790-2208)で37℃にて4分間、続いて青味試薬(Ventana社、カタログ番号760-2037)で37℃にて4分間、対比染色した。次に、スライドを、弱界面活性剤溶液中で2回洗浄し、アルコール希釈系列(70%、96%、100%)で脱水し、続いてキシレンで2回洗浄し、パーマウント(Fisher ScientificTM、カタログ番号SP15-100)で封入した。
【0123】
発色検出
プローブの発色検出は、Ventana BlueMapTM試薬(Ventana社、カタログ番号760-120)を用いて行なった。スライドを、アルカリホスファターゼコンジュゲート化UltraMap抗ウサギIgG(Ventana社、カタログ番号760-4314)と共に37℃で12分間インキュベートし、続いて、アクチベーター、BlueMap1およびBlueMap2(Ventana社、カタログ番号760-120)と共に50℃で20分間インキュベートした。次に、スライドを、弱界面活性剤溶液中で2回洗浄し、アルコール希釈系列(70%、96%、100%)で脱水し、続いてキシレンで2回洗浄し、パーマウント(Fisher ScientificTM、カタログ番号SP15-100)で封入した。
【0124】
蛍光分析
プローブの間接的蛍光検出は、DyLightTM649コンジュゲート化抗ウサギIgGを37℃で20分間用いて行なった。スライドを、DAPI(Ventana社、カタログ番号760-4196)を用いて室温で8分間、対比染色した。次に、スライドを、弱界面活性剤溶液中で2回洗浄し、アルコール希釈系列(70%、96%、100%)で脱水し、続いてキシレンで2回洗浄し、パーマウント(Fisher ScientificTM、カタログ番号SP15-100)で封入した。蛍光顕微鏡観察は、ハロゲン蛍光ランプ(Leica EL6000)、ならびにHER-2遺伝子配列シグナルの可視化のためにCy5蛍光フィルターキューブ(励起620nm、二色ミラー660nm、抑制(suppression)700nm)および対比染色の可視化のためにDAPI蛍光フィルターキューブ(励起360nm、二色ミラー400nm、抑制(suppression)470nm)を用いて、蛍光顕微鏡(Leica DM5500)で行なった。60倍対物レンズを用いて、CCDカメラ(Leica DFC 350FX)で画像を取得した。
【0125】
実施例1
図1に示した実験は、2時間のハイブリダイゼーション時間で、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットが、Ventana INFORM HER2 DNAプローブTM(Ventana Medical Systems Inc., USA)と比較した場合に、より低いプローブ濃度(10μg/mlに対して4μg/ml)でさえ、同様のシグナル強度をもたらしたことを示している。
【0126】
実施例2
本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットを用いて、Ventana INFORM HER2 DNAプローブTMと比較して、より低い濃度(10μg/mlに対して4μg/ml)で、32分後または1時間後に、より強い強度の染色シグナルが観察された。本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットは、たった32分のハイブリダイゼーション時間後に最適な染色をもたらしたが、INFORMTM HER2 DNAプローブを用いた最適染色は2時間後でのみ達成され、1時間後では最適未満の染色が達成された(図2を参照されたい)。
【0127】
実施例3
図3に概要を示した実験は、金属組織学的検出を用いた場合、標的遺伝子座の両端でのオリゴヌクレオチドプローブサブセットのクラスター化(標的遺伝子座の中央部は染色されない)により、標的遺伝子座全体にわたるオリゴヌクレオチドプローブサブセットの均一分布よりも強度の強い染色がもたらされることを示している(図3、プール2とプール4を参照されたい)。しかしながら、標識の合計数は両方のプールで等しいことに留意されたい。この結果は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットが、必要なオリゴヌクレオチドプローブのサブセットの数を最小化しながら、最適なシグナル強度を得るために、オリゴヌクレオチドサブセットの最適な組成物を設計するための可能性をもたらすという、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットの利点を明らかに説明している。
【0128】
実施例4
図4に示した実験は、間接的蛍光検出を用いて、本発明のオリゴヌクレオチドプローブのセットを可視化することができることを明らかにしている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のゲノム標的配列に対する少なくとも100種類の異なる一本鎖オリゴヌクレオチドプローブを含むオリゴヌクレオチドプローブのセットであって、個々のオリゴヌクレオチドのそれぞれが少なくとも1個の標識を含む、上記オリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項2】
少なくとも200種類、300種類または400種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブ、特に少なくとも500種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブ、より詳細には少なくとも1000種類の異なるオリゴヌクレオチドプローブを含む、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項3】
(i)前記オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、20〜200ヌクレオチド、好ましくは40〜175ヌクレオチド、より好ましくは60〜150ヌクレオチド、特に80〜120ヌクレオチドの長さを有し、かつ/または
(ii)該オリゴヌクレオチドプローブのそれぞれが、少なくとも2または3個の標識、特に少なくとも5個の標識、より詳細には少なくとも10個の標識、最も詳細には少なくとも15個の標識を含む、
請求項1または2に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項4】
(i)前記オリゴヌクレオチドプローブのセットが、オリゴヌクレオチドプローブの1以上のサブセットを含み、各サブセットが、同一の位置に標識を有する同一の配列を有するオリゴヌクレオチドプローブからなるか、または
(ii)前記オリゴヌクレオチドプローブが、ほぼ等間隔の位置に、特に少なくとも5、10、15、もしくは20ヌクレオチドのスペーサー距離で標識を含むか、または
(iii)前記オリゴヌクレオチドプローブが、既定の位置に、任意により互いに既定の距離で局在する位置に標的を含む、
請求項1〜3のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項5】
前記標識が、
(i)直接的もしくはリンカーを介して間接的に、ヌクレオチドの塩基、糖、もしくはリン酸部分に結合しているか、または
(ii)非ヌクレオチド単位に結合しており、
特に、該標識が、発色反応による、金属組織反応による、または直接的もしくは間接的蛍光分析による検出に好適である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項6】
前記標識が、蛍光標識またはハプテン、特にフルオレセイン色素、ローダミン色素、もしくはシアニン色素、またはビオチン、ジゴキシゲニンもしくは2,4-ジニトロフェニル部分である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項7】
少なくとも1000個、好ましくは少なくとも2000個、より好ましくは少なくとも4000個、最も好ましくは少なくとも8000個の合計数の標識を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項8】
(i)前記オリゴヌクレオチドプローブが、前記ゲノム標的配列の非反復領域に相補的であるか、または
(ii)前記セットのオリゴヌクレオチドプローブが、該ゲノム標的配列のセンス鎖もしくはアンチセンス鎖のいずれかに相補的である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項9】
(i)前記オリゴヌクレオチドプローブが、前記ゲノム標的配列内にクラスター化しているか、または
(ii)該ゲノム標的配列が、ヒト上皮増殖因子受容体2(ヒトHER-2)遺伝子座を含む、
請求項1〜8のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセット。
【請求項10】
ゲノム標的配列の検出のための、請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットの使用。
【請求項11】
対象のゲノム標的配列を検出する方法であって、以下のステップ:
(a)請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットをサンプルと共に、該対象のゲノム標的配列へのオリゴヌクレオチドプローブのセットの結合をもたらす条件下でインキュベートするステップ;および
(b)該ゲノム標的配列への該オリゴヌクレオチドプローブの結合を検出するステップ
を含む、上記方法。
【請求項12】
前記検出が、特にヒト疾患についてかつ/または患者での治療的処置の有効性についての診断目的である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記検出または検出ステップが、in situハイブリダイゼーションにより行われる、請求項10に記載の使用、または請求項11もしくは12に記載の方法。
【請求項14】
(i)ステップ(b)の検出が、発色反応による、金属組織反応による、または直接的もしくは間接的蛍光分析によるものであり、かつ/あるいは
(ii)ステップ(a)のインキュベーションが、最大で4時間、3時間、または2時間後、特に最大で1時間または30分後に完了する、
請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
対象のゲノム標的配列に対するオリゴヌクレオチドプローブのセットを作製する方法であって、以下のステップ:
(a)対象のゲノム標的配列の少なくとも100箇所の異なる領域に相補的なオリゴヌクレオチドプローブのセットを設計するステップであって、特に、該領域が非反復配列を含む、上記ステップ;および
(b)請求項1〜9のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットを合成するステップ
を含む、上記方法。
【請求項16】
ステップ(b)の合成が、
(i)ホスホルアミダイト修飾ビルディングブロックを介するか、または
(ii)ホスホルアミダイト法に基づくオリゴヌクレオチド合成中の酸化ステップを介して、
少なくとも1個の標識の取り込みを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
請求項1〜10のいずれか1項に記載のオリゴヌクレオチドプローブのセットと、それに加えて、脱パラフィン剤、前処理剤、洗浄剤、検出剤および製品シートからなる群より選択される少なくとも1つのさらなる構成要素とを含むキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2013−500027(P2013−500027A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522019(P2012−522019)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004570
【国際公開番号】WO2011/012280
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】