オリゴヌクレオチドプローブ
【課題】 担体上に強固に固定化され、かつ相補的な標的核酸を効率よく保持するオリゴヌクレオチドプローブを提供する。
【解決手段】 一般式1:
B−D−A (1)
(式中、Aはオリゴヌクレオチドを表し、Dは少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表す)
で表されるオリゴヌクレオチドプローブ。
【解決手段】 一般式1:
B−D−A (1)
(式中、Aはオリゴヌクレオチドを表し、Dは少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表す)
で表されるオリゴヌクレオチドプローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族基を有するリンカーとオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドプローブ、該オリゴヌクレオチドプローブが固定化された担体及び該オリゴヌクレオチドプローブを合成するための化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAチップ又はビーズ等を用いた遺伝子解析においては、合成オリゴヌクレオチド又はPCR産物などをプローブとして担体上に固定化する必要がある。当該担体上に固定化されたプローブと、蛍光などで標識された標的核酸とが相補的に結合することによって、標的核酸が担体上に保持され、標識に由来する蛍光強度を測定することによって、標的核酸量を検出することができる。DNAチップは、平板状の担体上に数千〜数十万種類のプローブが、あらかじめ決まった場所に固定化されているため、他種類の遺伝子の発現量を一度に定量することができ、遺伝子間の複雑なネットワークの解明に極めて有用である。そのため、遺伝子診断のための有力な手法の一つとして期待されている。
【0003】
合成オリゴヌクレオチドプローブを担体上に固定化するには、担体上でオリゴヌクレオチドを直接合成する方法(非特許文献1及び非特許文献2)、及び合成したオリゴヌクレオチドを精製後、担体上に固定化する方法とがある。後者の方法においては、オリゴヌクレオチドプローブの合成中に、アミノ基などの官能基を導入し、スポット後にこれらの官能基が担体上にコーティングされた官能基と共有結合を形成させることによって、不可逆的にプローブを固定化する方法が知られている。また、プラス電荷を有するポリLリジンなどをコーティングした担体上にオリゴヌクレオチドプローブを静電的に結合させる方法なども報告されている。静電的な結合は、オリゴヌクレオチドのマイナス電荷に依存するため、オリゴヌクレオチドプローブの鎖長が短くなるはど、固定化効率が低下してしまう。そのため、共有結合を介して担体上にオリゴヌクレオチドを固定化する方法が広く用いられている。
【0004】
アミノ基などの官能基は、リンカーを介してオリゴヌクレオチドに導入することが知られている(非特許文献3及び非特許文献4)。アミノ基が結合したリンカーとして、現在、最も頻繁に用いられるものは、炭素数6のリンカーである。このリンカーを介してアミノ基が結合したオリゴヌクレオチドプローブは、DNAチップのプローブライブラリーとしても市販されている(例えば、MWG社、シグマジェノシス社など)。
【0005】
オリゴヌクレオチドプローブをチップなどの担体上に固定化する場合、アミノ基又はメルカプト基などの官能基をオリゴヌクレオチド合成時に導入する。現在用いられているオリゴヌクレオチドへのアミノ基導入のための試薬には、アミノ基をトリフルオロアセチル基又はモノメトキシトリチル基で保護したアミダイト化合物がある。しかし、上記のような試薬は、オリゴヌクレオチドへのアミノ基の導入効率が低いという問題を有する。また、N−トリフルオロアセチル−6−アミノヘキシルアミダイト化合物を用いる場合、アミノ基の導入されたオリゴヌクレオチド(アミノ基導入オリゴヌクレオチド)と未導入オリゴヌクレオチドを分離精製することが困難であり、これらが混在することが問題となっていた。一方、N−モノメトキシトリチル−6−アミノヘキシルアミダイト化合物を用いる場合、分離精製は可能なものの、分離後の酸性条件下におけるモノメトキシトリチル基の除去に時間を要し、高純度にオリゴヌクレオチドを精製することが困難であった。遺伝子診断では、多数のオリゴヌクレオチドプローブが必要なため、より容易かつ高純度に精製することが望まれていた。
【0006】
さらに、上記で得られる精製アミノ基導入オリゴヌクレオチドを担体上に固定化する場合、アミノ基と担体表面上のコーティング剤との反応性が低く、十分なオリゴヌクレオチドを担体上に固定化するには、高濃度のオリゴヌクレオチドをスポットする必要があった。結果として多くのオリゴヌクレオチドを必要とし、チップの価格を上げる原因となっていた。従って、オリゴヌクレオチドプローブを担体上に効果的に固定化することが望まれていた。
【0007】
また、DNAチップ等において高い感度を得るためには、検出すべき標的核酸をオリゴヌクレオチドプローブ上に効率よく保持することが重要である。オリゴヌクレオチドと標的核酸との結合の安定性は、オリゴヌクレオチドの長さに依存するため、結合安定性を高めるためには長鎖のオリゴヌクレオチドを合成する必要があった。しかし、DNAチップのように多数のオリゴヌクレオチドプローブを必要とするような場合には、長鎖オリゴヌクレオチドプローブを合成することはコストの観点から適当でないという問題があった。
【0008】
【非特許文献1】Nucleic Acids Res.,vol.20,1675−1678(1992)
【非特許文献2】Trends Biotechnol.,vol.12,19−26(1994)
【非特許文献3】Coull et al.,Tetrahedron,vol.27,3991−3994(1986)
【非特許文献4】Connolly,B.A.,Nucleic Acids Res.,vol.15,3131−3139(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、担体上に強固に固定化され、合成後の精製が容易であり、かつ相補的な標的核酸を効率よく保持するオリゴヌクレオチドプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、担体への固定化に必要な反応性官能基を芳香族基と連結した新規化合物を合成し、これをオリゴヌクレオチドに導入することによって上記課題が解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)一般式1:
B−D−A (1)
(式中、Aはオリゴヌクレオチドを表し、Dは少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表す)
で表されるオリゴヌクレオチドプローブ。
【0012】
(2)芳香族基が置換又は無置換の1〜5環性芳香族炭化水素基である(1)記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(3)芳香族基が置換又は無置換のフェナントレン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環又はピレン環を含むものである(2)記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(4)Dが複素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐の置換又は無置換の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの芳香族基を有する(1)〜(3)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【0013】
(5)Dが主鎖に二価の芳香族基を含む(1)〜(4)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(6)Dが側鎖に芳香族基を有する(1)〜(4)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(7)Dが一般式2で表される(6)記載のオリゴヌクレオチドプローブ:
【0014】
【化1】
(式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す)。
【0015】
(8)R2が一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表され、
R3が一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表され、
R4は、直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−であり、
R5及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【0016】
【化2】
を表し、
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、
n、w、i、qはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、
R7は水素原子又はリン酸保護基を表す、
(7)記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【0017】
(9)Lが置換又は無置換のフェニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基又はピレニル基である(7)又は(8)記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(10)Dが側鎖にさらなるオリゴヌクレオチドを有する、(1)〜(6)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【0018】
(11)Dが一般式2’で表される(5)記載のオリゴヌクレオチドプローブ:
【化3】
(式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、A’は水酸基又はオリゴヌクレオチドを表す)。
【0019】
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブが固定化された担体。
【0020】
(13)一般式5:
【化4】
(式中、D’は少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表し、Oは酸素原子を表し、Pはリン原子を表し、R8はリン酸保護基を表し、R9及びR10は有機基であり、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい)
で表される化合物。
【0021】
(14)芳香族基が置換又は無置換の1〜5環性芳香族炭化水素基である(13)記載の化合物。
(15)芳香族基が置換又は無置換のフェナントレン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環又はピレン環を含むものである(14)記載の化合物。
【0022】
(16)D’が複素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐の置換又は無置換の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの芳香族基を有する(13)〜(15)のいずれかに記載の化合物。
【0023】
(17)D’が主鎖に二価の芳香族基を含む(13)〜(16)のいずれかに記載の化合物。
(18)D’が側鎖に芳香族基を有する(13)〜(16)のいずれかに記載の化合物。
【0024】
(19)D’が一般式2で表される(18)記載の化合物:
【化5】
(式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す)。
【0025】
(20)R2が一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表され、
R3が一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表され、
R4は、直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−であり、
R5及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【0026】
【化6】
を表し、
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、
n、w、i、qはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、
R7は水素原子又はリン酸保護基を表す、
(19)記載の化合物。
【0027】
(21)Lが置換又は無置換のフェナントリル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基又はピレニル基である(19)又は(20)記載の化合物。
【0028】
(22)D’が一般式6で表される請求項(17)記載の化合物:
【化7】
(式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、R15は水酸基保護基を表す)。
【発明の効果】
【0029】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、担体への反応効率が高いために、固定化に要するオリゴヌクレオチド量を低減することができる。さらに、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸との結合効率が高いために、従来と同じ鎖長のものでも高い感度で検出することが可能である。また、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、合成後の精製が容易であり、複数種のプローブを作製した場合でも、自動化によって精製可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、反応性官能基及び芳香族基を有するリンカーとオリゴヌクレオチドが結合した構造を有する。すなわち、以下の一般式1で表される。
B−D−A (1)
式中、Aはオリゴヌクレオチドを表し、Dは少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表す。
【0031】
本発明においてオリゴヌクレオチドは、天然のものでも合成のものでもよく、ポリヌクレオチドをも包含する。また、オリゴヌクレオチドは、DNA及びRNA等の核酸、二本鎖オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド誘導体を包含する。PCR産物も包含される。オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホアミダイト結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体 、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体 、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−メトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、及びオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等を挙げることができる。
【0032】
本発明においてオリゴヌクレオチドの塩基数は、通常1〜500、より好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100である。
【0033】
一般式1においてBは、反応性官能基又はその保護された形態を表す。反応性官能基とは、オリゴヌクレオチドプローブを固定化しようとする担体上に存在する官能基と共有結合を形成しうる基を意味し、例えば、活性エステル基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基又はイソシアネート基と共有結合しうる基(例えば、アミノ基など)、あるいはマレイミド基又はジスルフィド基と反応しうる基(例えば、メルカプト基など)等が挙げられる。本発明においては、メルカプト基及びアミノ基が好ましい。アミノ基としては、1級アミノ基が好ましい。
【0034】
Bは反応性官能基の保護された形態でもよい。保護された形態とは、官能基の水素原子が保護基で置換された形態を意味する。アミノ基の保護基としては、特に制限されないが、アシル基、カルバメート基、トリアルキルシリル基、フタリル基、カルボキシアルキルカルボニル基、トシル基、トリフルオロアセチル基、トリチル基、及びモノ又はジ置換トリチル基が挙げられる。モノ置換トリチル基としては、例えば、モノアルコキシトリチル基、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1のアルコキシ基を有するモノアルコキシトリチル基、具体的には、モノメトキシトリチル基、モノエトキシトリチル基、モノプロポキシトリチル基、モノイソプロポキシトリチル基及びモノブトキシトリチル基が挙げられる。トリチル基又はモノ若しくはジ置換トリチル基は疎水性が強いため、合成したオリゴヌクレオチドプローブを逆相カラムによって容易に精製できるという点で有利である。通常、アミノ基をトリチル基又はモノ若しくはジ置換トリチル基で保護した場合、脱保護するためには強い酸性条件下で長時間反応させる必要がある。このような条件は、核酸に損傷を与えることも考えられ、また時間を要するという点でも好ましくない。しかし、本発明のオリゴヌクレオチドプローブにおいて、アミノ基をトリチル基又はモノ若しくはジ置換トリチル基で保護した場合は、緩和な酸性条件下、短時間で脱保護可能なため、核酸を傷つけることもなく、また、脱保護時間を短縮することもできる。例えば、pH2〜6、あるいは5〜80体積%の酢酸存在下、5〜20分処理することにより脱保護することができる。
【0035】
メルカプト基の保護基としては、特に制限されないが、t−ブチル基、アラルキル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基及びアシル基等が挙げられる。
【0036】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブにおいて、オリゴヌクレオチドは、一般式1においてDとして表されるリンカー部分を介して、反応性官能基と連結されている。Dは、少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表す。
【0037】
二価の有機基としては、オリゴヌクレオチドプローブの担体との結合性及び標的オリゴヌクレオチドとの相補的結合を阻害するものでなければ特に制限されないが、好ましくは複素原子を含んでいてもよい置換又は無置換の二価の炭化水素基である。二価の炭化水素基としては、鎖員2〜50、好ましくは鎖員3〜30、より好ましくは鎖員1〜5のアルキル基、鎖員2〜50、好ましくは鎖員3〜30、より好ましくは鎖員1〜5のアルキレン基、鎖員2〜50、好ましくは鎖員3〜30、より好ましくは鎖員1〜5のアルケニレン基、鎖員2〜50、好ましくは鎖員3〜30、より好ましくは鎖員1〜10の二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。上記炭化水素基においては、炭素の一部が複素原子で置換されていてもよい。複素原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子が挙げられる。
【0038】
置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれるハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換又は無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルケニル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のシクロアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基又はカルボキシル基等を挙げることができる。
【0039】
本発明の一態様において、リンカー部分Dは、好ましくは以下の一般式2で表される基である。
【0040】
【化8】
【0041】
式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す。ここで置換基は、上記と同様である。また、二価の炭化水素基としては、上記と同様のものが挙げられる。一般式2において、R2が反応性官能基Bと結合し、R2’がオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と結合する。R2’が直接結合の場合は、一般式2における炭素原子が、オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と直接結合する。
【0042】
R2は、好ましくは一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表される。R3は好ましくは一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表される。R2’は好ましくは直接結合又は−R2’’−(CH2)j−である。
【0043】
R2において、R4が反応性官能基Bと結合し、R3において、−(CH2)w−が芳香族基Lと結合し、R2’において−(CH2)j−がオリゴヌクレオチドと結合する。
R4は、好ましくは直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−である。
【0044】
R5、R6及びR2’’は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【化9】
から選択される。
【0045】
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜3の整数を表し、n、w、i、q及びjはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3の整数を表す。
【0046】
ここで、m+nは通常1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5であり、t+wは、通常1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5であり、i+qは通常2〜40、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜5であり、R7は水素原子又はリン酸保護基を表す。リン酸保護基としては、特に限定されないが、メチル基、2−シアノエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、4−オキシペンチル基などを好ましい基として挙げることができる。
R4は、好ましくは直接結合である。
【0047】
R5は好ましくは
【化10】
であり、R6は好ましくは−O−である。
【0048】
本発明においては、芳香族基としては、置換又は無置換の芳香族炭化水素基、置換又は無置換の芳香族複素環基、置換又は無置換の多環性芳香族基が挙げられる。本発明においては、疎水性の高い芳香族基が好ましい。また、本発明において芳香族基には核酸塩基は含まれない。
【0049】
芳香族基の置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれるハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換又は無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルケニル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のシクロアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基等を挙げることができる。
【0050】
置換又は無置換の芳香族炭化水素基としては、置換又は無置換の単環性芳香族炭化水素基、具体的には、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基などが挙げられる。
【0051】
芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基等が挙げられる。
【0052】
置換又は無置換の芳香族複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基、2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、ピラジニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、2−メチル−3−ピリジル基、6−メチル−3−ピリジル基、2−クロロ−3−ピリジル基、6−クロロ−3−ピリジル基、2−メトキシ−3−ピリジル基、6−メトキシ−3−ピリジル基、2,6−ジクロロ−3−ピリジル基、2,6−ジメトキシ−3−ピリジル基、などを挙げることができる。好ましい置換又は無置換の芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基が挙げられる。
【0053】
多環性芳香族基としては、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、アントリル基、ピレニル基、インダニル基、テトラヒドロナフチル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基が挙げられる。
【0054】
置換又は無置換の多環性芳香族基の具体例としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−インダニル基、5−インダニル基、5−テトラヒドロナフチル基、6−テトラヒドロナフチル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、2,3−メチレンジオキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、2,3−エチレンジオキシフェニル基、3,4−エチレンジオキシフェニル基、4−フルオロ−1−ナフチル基、4−クロロ−1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、5−メトキシ−1−ナフチル基、6−メトキシ−1−ナフチル基、7−メトキシ−1−ナフチル基、2−エトキシ−1−ナフチル基、5−エトキシ−1−ナフチル基、6−エトキシ−1−ナフチル基、7−エトキシ−1−ナフチル基、1−メトキシ−2−ナフチル基、3−メトキシ−2−ナフチル基、5−メトキシ−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、1−エトキシ−2−ナフチル基、3−エトキシ−2−ナフチル基、5−エトキシ−2−ナフチル基、6−エトキシ−2−ナフチル基、2−クロロ−5−キノリル基などを挙げることができる。好ましい置換又は無置換の多環性芳香族基としては、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基が挙げられる。
【0055】
芳香族基がDの主鎖部分に存在する場合、上記芳香族基の二価の形態となる。例えば、フェニレン基、ピリジレン基、ピリダジニル基、ピリミジニレン基、ピラジニレン基、フリレン基、チエニレン基、ピロリレン基、イミダゾリレン基、チアゾリレン基、オキサゾリレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ピレニレン基、インダニレン基、テトラヒドロナフチレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、シンノリニレン基、キナゾリニレン基、キノキサリニレン基、ナフチリジニレン基、フタラジニレン基、インドリレン基、イソインドリレン基、ベンゾフリレン基、ベンゾチエニレン基、インダゾリレン基、ベンゾイミダゾリレン基、ベンゾチアゾリレン基が挙げられ、好ましくはナフチレン基、アントリレン基又はピレニレン基である。上記二価の芳香族基は置換でも無置換でもよい。
【0056】
本発明において、芳香族基は、1〜5環性芳香族炭化水素基が好ましい。特に、好ましくは2〜4環性芳香族炭化水素基、より具体的には置換又は無置換のナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基及びピレニル基、特に1−ナフチル基及び9−アントリル基である。
【0057】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブには、リンカー部分Dの側鎖に、さらなるオリゴヌクレオチドを有するものも包含される。さらなるオリゴヌクレオチドはもう一方のオリゴヌクレオチドと同一でも異なっていてもよい。
【0058】
本発明の別の態様において、オリゴヌクレオチドプローブとして、一般式1においてDが以下の一般式2’で表されるものが挙げられる。
【0059】
【化11】
【0060】
式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、A’は水酸基又はオリゴヌクレオチドを表す。
【0061】
ここで置換基は、上記と同様である。また、複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基としては、上記と同様のものが挙げられる。一般式2’において、R11が反応性官能基Bと結合し、R14がオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と結合する。R14が直接結合の場合は、一般式2’における炭素原子が、オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と直接結合する。A’がオリゴヌクレオチドの場合も同様に、R13がオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と結合し、R13が直接結合の場合は、一般式2’における炭素原子が、オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と直接結合する。
【0062】
R11は、好ましくは、一般式3’:
−(CH2)a−R5’−(CH2)b− (3’)
で表される。R12は好ましくは一般式4’:
−(CH2)c−R6’−(CH2)d− (4’)
で表される。R13は好ましくは、直接結合又は−(CH2)e−であり、R14は好ましくは、直接結合又は−(CH2)f−である。
【0063】
R11において、−(CH2)a−が反応性官能基Bと結合し、R12において、−(CH2)c−が芳香族基Lと結合する。
【0064】
R5’及びR6’は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【化12】
から選択される。
【0065】
e及びfは、それぞれ独立して1〜20の整数を表し、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3の整数を表し、a〜dはそれぞれ独立して0〜20の整数を表し、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜3の整数を表す。
【0066】
ここで、a+bは通常1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5であり、c+dは、通常1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5である。R7は水素原子又はリン酸保護基を表す。リン酸保護基としては、特に限定されないが、メチル基、2−シアノエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、4−オキシペンチル基などを好ましい基として挙げることができる。
【0067】
R13及びR14は、好ましくは直接結合である。
R5’は好ましくは−NH−CO−であり、R6’は好ましくは−CO−NH−である。
【0068】
二価の芳香族基Lとしては、特に限定されないが、疎水性の高い二価の芳香族基、好ましくは、置換又は無置換のフェナントリレン基、フルオレニレン基、ナフチレン基、アントリレン基又はピレニレン基、特にナフチレン基及びアントリレン基が挙げられる。より具体的には、置換又は無置換の2,6−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、2,6−アントリレン基、1,8−アントリレン基、9,10−アントリレン基、1,5−アントリレン基、2,7−フェナントリレン基、2,8−フェナントリレン基、1,5−フェナントリレン基、1,6−フェナントリレン基、1,7−フェナントリレン基、1,8−フェナントリレン基、1,7−9H−フルオレニレン基、1,6−9H−フルオレニレン基、2,7−ピレニレン基、2,6−ピレニレン基、又は1,8−ピレニレン基などが挙げられる。
【0069】
上記のような芳香族基を採用することにより、環数の増加に伴ってこれら芳香族基に結合したオリゴヌクレオチドの水への溶解性が低下するのを抑制することができる。また、担体上に固定化されたプローブ間の疎水的相互作用によってプローブ同士が絡み合うこともなく、標的遺伝子の検出を容易に実施できる。
【0070】
本発明はまた、オリゴヌクレオチドプローブを合成するための中間体化合物に関する。一実施形態において本発明の中間体は、上記オリゴヌクレオチドプローブにおいて、オリゴヌクレオチド部分がホスホロアミダイトになった構造を有する化合物である。従って、一実施形態において本発明の中間体化合物は、以下の一般式5で表される。
【0071】
【化13】
【0072】
式中、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表し、D’は少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Oは酸素原子を表し、Pはリン原子を表し、R8はリン酸保護基を表し、R9及びR10は有機基であり、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい。
【0073】
R9及びR10は、特に制限されないが、好ましくは炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基が挙げられる。
【0074】
あるいは、R9及びR10は、それらが結合している窒素原子と一緒になって環基を形成していてもよい。該環はR9及びR10が結合している窒素原子の他にさらに複素原子を含んでいてもよい。そのような環は、好ましくは環員5〜8、好ましくは6の環であり、例えば、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、チオモルホリン環等が挙げられ、好ましくはモルホリン環である。
【0075】
ここでリン酸保護基は、ホスホロアミダイト法に使用されるものであればどのようなものでもよいが、メチル基、2−シアノエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、4−オキシペンチル基などを好ましい基として挙げることができる。
【0076】
一実施形態において本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、一般式5においてD’が上記Dと等しい中間体化合物を使用して作成することができる。例えば、Dが一般式2で表される一般式1のオリゴヌクレオチドプローブは、一般式5においてD’がDと等しい中間体化合物を使用して作成することができる。また、Dが一般式2’で表される一般式1のオリゴヌクレオチドプローブは、一般式5においてD’が以下の一般式6で表される中間体化合物を使用して作成することができる。
【0077】
【化14】
【0078】
式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14は上記と同義であり、R15は水酸基保護基を表す。水酸基保護基としては、DNA合成においてリボースの5’位の保護に使用される保護基を使用することができ、例えば、アセチル基、5’−O−4,4’,4’’−トリス(4−ベンゾイルオキシ)トリチル基及びジメトキシトリチル基が挙げられ、ジメトキシトリチル基が好ましい。一般式6においては、R11がBと結合し、R14が酸素原子に結合する。好ましい中間体化合物の具体例を図11に示す。
【0079】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、上記中間体化合物をオリゴヌクレオチドと連結させることにより合成することができる。オリゴヌクレオチドへの中間体化合物の導入は、DNA自動合成機上でオリゴヌクレオチド合成と同時に実施することができる。
【0080】
D’が一般式6で表される一般式5の中間体化合物をオリゴヌクレオチドに導入した後、さらに、オリゴヌクレオチド合成を行うことにより、R13及びR14にオリゴヌクレオチドが連結したオリゴヌクレオチドプローブを製造することができる。また、D’が一般式6で表される一般式5の中間体化合物のオリゴヌクレオチドへの導入と、オリゴヌクレオチドの合成を繰り返し行うことにより、中間体化合物を複数含むオリゴヌクレオチドプローブ、すなわち複数の芳香族基を有するオリゴヌクレオチドプローブを合成することもできる。
【0081】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブ及び上記中間体化合物は、D体及びL体のいずれも合成及び使用することができ、またそれらの混合物でもよい。
【0082】
本発明はまた、上記オリゴヌクレオチドプローブが固定化された担体に関する。該担体は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブが有する反応性官能基と共有結合しうる官能基をその表面に有するものであれば特に制限されない。
【0083】
担体の基材としては、例えば、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス及びソーダライムガラスなどのガラス、シリコン、繊維、木材、紙、セラミックス、プラスチック(例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene 樹脂)、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)が挙げられる。本発明においては、ガラス、シリコン、セラミックス、プラスチックを使用するのが好ましい。上記基材の表面に官能基を導入したものを担体として用い、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを固定化する。オリゴヌクレオチドプローブの反応性官能基が保護されているときは、保護基を除去してから固定化することが好ましい。
【0084】
オリゴヌクレオチドプローブが有する反応性官能基と共有結合しうる官能基としては、例えば、活性エステル基、エポキシ基、アミノ基、クロロ基、ジスルフィド基、アルデヒド基、マレイイミド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0085】
アミノ基又はその保護された形態を有するオリゴヌクレオチドプローブを固定化する場合は活性エステル基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基、イソシアネート基が導入された担体を用いるのが好ましく、メルカプト基又はその保護された形態を有するオリゴヌクレオチドプローブを固定化する場合は、マレイミド基、ジスルフィド基が導入された担体を用いるのが好ましい。
【0086】
担体の形状は、特に制限されず、基盤状、糸状、球状、ビーズ状、多角形状、粉末状、多孔質状などが挙げられ、本発明においては基盤状が好ましい。
【0087】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、ビオチン及び蛍光色素などの標識に結合させることができる。蛍光色素としては、例えば、Cy3及びCy5などのCyDye、FITC、RITC、ローダミン、テキサスレッド、TET、TAMRA、FAM、HEX、ROX、GFPなどが挙げられる。本発明のオリゴヌクレオチドプローブはまた、医薬に結合させることもできる。
【0088】
本発明においては、オリゴヌクレオチドなどの核酸を担体上に固定化する場合、固定化する核酸と、担体への結合に必要な反応性官能基との間に芳香族基を導入することで核酸を担体上に効率よく固定化することができる。また、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは従来のプローブよりも標的核酸との結合効率が高い。また第三に、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、その合成と精製が容易である。
【実施例】
【0089】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブを合成するための中間体化合物(以下、アミダイト化合物と称する)を合成し、それをオリゴヌクレオチドに導入し、得られたオリゴヌクレオチドプローブの能力を評価した。
【0090】
オリゴヌクレオチドへ芳香族基を導入するためのユニット(アミダイト化合物:Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11)を、図2〜7及び13に示す方法により合成した。
【0091】
Y2は、アミノ基をもたず芳香族基のみを有するアミダイト化合物であり、DNA自動合成機によりY2をオリゴヌクレオチドに導入後、続けて市販品のN−モノメトキシトリチル−6−アミノヘキシルホスホロアミダイト化合物又はトリフルオロアセチル−6−アミノヘキシルホスホロアミダイト化合物(グレンリサーチ社)を用いてアミノ基を導入し、オリゴヌクレオチドの末端に、アミノ基と芳香族基を有する50塩基からなるオリゴヌクレオチドプローブ(X2−Sp;図8)を合成した。
【0092】
Y3、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11のアミダイト化合物は、分子内にアミノ基を有している。従って、合成アミダイト化合物をオリゴヌクレオチドに導入後に、別途市販のアミノ基結合ホスホロアミダイト化合物を用いてアミノ基を導入する必要がなく、オリゴヌクレオチドプローブの合成が従来よりも一工程短くなるという利点を有している。Y3とY5は、アミノ基と芳香族基の連結部位の構造が異なるものであり、Y6はY5よりもアミノ基と芳香族基の間に、より長い直鎖リンカーを導入したものであり、オリゴヌクレオチドプローブの担体表面からの距離を保つことができる。Y7は、Y6の芳香族基がナフチル基ではなくアントリル基であるアミダイト化合物である。Y8はY5の直鎖リンカーの導入部位が異なるアミダイト化合物であり、アミノ基と芳香族基が近接している。これらを5’末端に有するオリゴヌクレオチドプローブをそれぞれDNA自動合成機により合成した(X3−Sp、X5−Sp、X6−Sp、X7−Sp、X8−Sp、X9−Sp;図8)。
【0093】
芳香族基を有しないオリゴヌクレオチドプローブとして、市販の上記アミノ基結合ホスホロアミダイト化合物を用い、オリゴヌクレオチドの末端にアミノ基を導入したもの(X1−Sp;図8)、オリゴヌクレオチドとアミノ基の間に芳香族基を有しないオリゴヌクレオチドプローブ(X4−Sp;図8)を用い、比較例とした。
【0094】
合成したオリゴヌクレオチドは、逆相カラムを用いて高純度に精製後、オリゴチップ作製のためのスポット溶液に一定濃度に溶解し、ガラス基盤上にスポットし、固定化した。
【0095】
基盤への固定化後、固定化されたオリゴヌクレオチドプローブの3’末端を蛍光標識し、その蛍光強度を測定することで各オリゴヌクレオチドプローブの基盤上での固定化量を定量した。実験の結果から、従来のプローブであるX1−Spよりも芳香族基を有するオリゴプローブ(X2−Sp、X3−Sp、X5−Sp、X6−Sp、X8−Sp)は、固定化量の多いことが明らかとなった(図9a)。
【0096】
次に各オリゴヌクレオチドプローブの溶液中での活性エステル基との反応効率を調べるため、フルオレセインイソチオシアナート及びCy3スクシンイミジルエステルとの反応を行った。その結果、本発明の芳香族基を有するオリゴヌクレオチドプローブは、いずれの蛍光色素とも、従来のオリゴヌクレオチドプローブと比べて高い反応性を示し、溶液中においても化学物質との反応性が向上することが明らかとなった(図9b、c)。
【0097】
Y9アミダイト化合物は、オリゴヌクレオチドの末端でも、又は鎖内にも導入可能な誘導体である(図7)。Y9アミダイト化合物を、末端(X9−Sp25)と鎖内(X9−Sp35)それぞれに導入したオリゴヌクレオチドを合成した。それらについて、他のアミダイトと同様に蛍光色素との反応性(図9c)及びガラス基盤上への固定化効率(図12)について調べた。
【0098】
以下に各アミダイト化合物及びオリゴヌクレオチドプローブの合成方法及び試験方法を具体的に示す。
【0099】
(実施例1)アミダイト化合物の合成
薄層クロマトグラフィーは、Kieselgel 60F254 プレート(Merck)上で行った。カラムクロマトグラフィーにはWakogel C−200(和光純薬工業)を用いた。紫外可視スペクトルは島津UV-2500PC分光光度計を用いて測定した。
【0100】
1H−NMRはテトラメチルシランを内部標準とし、JEOL JNM−EX270を用いて測定した。31P−NMRは無機リン酸を内部標準とし、JEOL JNM−EX270を用いて測定した。
【0101】
(1)アミダイト化合物(Y2)の合成(図2)
(R)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物c)
アルゴン雰囲気下、1−(クロロメチル)ナフタレン(化合物a)2.40ml(16.0mmol)及び(S)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(化合物b)1.85ml(15.0mmol)をトルエンとジオキサンの混合溶液(2:1)90mlに溶解し、粉末状に砕いた水酸化カリウム4.5gを加えて120℃で2.5時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷ました後、酢酸エチル300mlを加えて、水100mlで4回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、得られた黄色オイル状物質に80%酢酸水溶液100mlを加えて溶解し、室温で15時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮した後トルエンとの共沸により酢酸を除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物c)3.24g(収率93%)を白色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 8.12-8.09 (m, 1 H), 7.95-7.86 (m, 2 H), 7.59-7.44 (m, 4 H), 4.93 (s, 2 H), 4.67 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 4.48 (t, 1 H, J = 5.5 Hz), 3.66 (ddddd, 1 H, J = 3.5, 4.8, 5.2, 5.3, 5.9 Hz), 3.56 (dd, 1 H, J = 4.8, 9.7 Hz), 3.45 (dd, 1 H, J = 3.5, 9.7 Hz), 3.39 (ddd, 1 H, J = 5.2, 5.5, 10.9 Hz), 3.34 (ddd, 1 H, J = 5.5, 5.9, 10.9 Hz).
【0102】
(S)−1−O−ジメトキシトリチル−3−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物d)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物c)2.20g(9.50mmol)をピリジン80mlに溶解し、塩化ジメトキシトリチル3.90g(1.2当量)を加え、室温で1時間撹拌した。エタノール10mlを加えて反応を止めた後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル300mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで1回、水100mlで2回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物d)4.59g(収率90%)を淡黄色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.03-7.86 (m, 3 H), 7.55-7.19 (m, 13 H), 6.85-6.81 (m, 4 H), 4.94 (d, 1 H, J = 5.6 Hz), 4.91 (s, 2 H), 3.82 (dddt, 1 H, J = 4.9, 5.3, 5.6, 5.9 Hz), 3.71 and 3.71 (each s, each 3 H), 3.59 (dd, 1 H, J = 4.9, 9.9 Hz), 3.54 (dd, 1 H, J = 5.9, 9.9 Hz), 2.98 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.2 Hz), 2.94 (dd, 1 H, J = 5.9, 9.2 Hz).
【0103】
(S)−1−O−ジメトキシトリチル−3−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール 2−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y2)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−O−ジメトキシトリチル−3−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物d)270mg(0.50mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン0.26ml(3当量)、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト0.22ml(2当量)を加え、室温で30分撹拌した。反応液にクロロホルム60mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液25mlで1回、水25mlで1回、飽和食塩水25mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物Y2)271mg(収率74%)を白色泡状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 149.06, 148.64.
【0104】
(2)アミダイト化合物(Y3)の合成(図3)
(S)−1−アジド−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物e)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物c)1.90g(8.18mmol)をピリジン80mlに溶解し、塩化トシル2.32g(1.5当量)を加えて室温で4時間撹拌した。反応液にエタノール10mlを加えて過剰の試薬を分解した。減圧下溶媒を留去した後、残渣を酢酸エチル300mlに溶解し、水100mlで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで1回、水100mlで1回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られたオイル状物質をアルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアミド80mlに溶解し、アジ化ナトリウム1.60g(3当量)及び塩化アンモニウム1.75g(4当量)を加えて80℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷ました後、酢酸エチル300mlを加えて、水100mlで5回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物e)1.30g(収率62%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.11-8.06 (m, 1 H), 7.96-7.87 (m, 2 H), 7.59-7.44 (m, 4 H), 5.29 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 4.94 (s, 2 H), 3.83 (dddt, 1 H, J = 3.6, 5.3, 6.3, 6.4 Hz), 3.51 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.9 Hz), 3.46 (dd, 1 H, J = 6.3, 9.9 Hz), 3.29 (dd, 1 H, J = 3.6, 12.6 Hz), 3.21 (ddd, J = 6.4, 12.6 Hz).
【0105】
(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)
(S)−1−アジド−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物e)1.30g(5.05mmol)をエタノール60mlに溶解し、パラジウム−炭素(10%)330mgを加えて、常圧の水素雰囲気化、室温で15時間撹拌した。パラジウム触媒をセライトろ過により除去した後、溶液を減圧下濃縮し、標記化合物(化合物f)1.17g(収率100%)を得た。当化合物は更なる精製をすることなく、後の反応に用いた。
【0106】
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキサノイル]アミノプロパン−2−オール(化合物g)
アルゴン雰囲気下、N−トリフルオロアセチル−6−アミノカプロン酸(化合物f)360mg(1.3当量)と1,1’−カルボニルジイミダゾール235mg(1.2当量)をジメチルホルムアミド、10mlに溶解し、室温で2時間撹拌した。この反応液に(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)280mg(1.21mmol)のジメチルホルムアミド溶液(5ml)を加え、室温でさらに16時間撹拌した。反応液に酢酸エチル70mlを加えて、水25mlで4回、飽和食塩水25mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物g)417mg(収率79%)を白色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.39 (br t, 1 H, J = 4.6 Hz), 8.12-8.08 (m, 1 H), 7.96-7.86 (m, 2 H), 7.73 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 7.59-7.44 (m, 4 H), 4.94 (br s, 1 H), 4.93 (s, 2 H), 3.69 (m, 1 H), 3.45-3.42 (m, 2 H), 3.21 (dt, 1 H, J = 5.6, 13.3 Hz), 3.17 (dt, 2 H, J = 4.6, 7.0 Hz), 3.00 (ddd, 1 H, J = 5.6, 6.6, 13.3 Hz), 2.06 (t, 2 H, J = 7.4 Hz), 1.52-1.41 (m, 4 H), 1.22 (m, 2 H).
【0107】
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキサノイル]アミノプロパン−2−オール 2−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y3)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキサノイル]アミノプロパン−2−オール(化合物g)881mg(2.00mmol)を塩化メチレン20mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト1.27ml(2.0当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液4.9ml(0.45M、1.1当量)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液にクロロホルム100mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40mlで1回、飽和食塩水40mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y3)831mg(収率65%)を無色オイル状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 148.79.
【0108】
(3)アミダイト化合物(Y5)の合成(図4)
(R)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物h)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物c)1.16g(5.00mmol)をジメチルホルムアミド35mlに溶解し、tert-ブチルジメチルクロロシラン2.26g(3当量)、イミダゾール2.04g(6当量)を加えて室温で21時間撹拌した。反応液にエタノール5mlを加えて過剰の試薬を分解した後、酢酸エチル200mlを加えて、水70mlで4回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られたオイル状物質を塩化メチレン75mlに溶解して0℃に冷却し、トリフルオロ酢酸2.1ml(90%水溶液)を加えて、0℃で1時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液80mlを加えて室温に戻した後、更にクロロホルム150mlを加えて分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液80mlで1回、飽和食塩水80mlで1回洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物h)1.70g(収率98%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.10-8.07 (m, 1 H), 7.95-7.85 (m, 2 H), 7.54-7.43 (m, 4 H), 4.95 (d, 1 H, J = 12.3 Hz), 4.90 (d, 1 H, J = 12.3 Hz), 4.60 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 3.79 (dddd, 1 H, J = 4.0, 5.6, 6.0, 6.3 Hz), 3.58 (dd, 1 H, J = 4.0, 9.9 Hz), 3.44 (dd, 1 H, J = 6.3, 9.9 Hz), 3.36 (ddd, 1 H, J = 5.6, 6.0, 11.1 Hz), 3.31 (dt, 1 H, J = 5.6, 11.1 Hz), 0.83 (s, 9 H), 0.02 and 0.00 (each s, each 3 H).
【0109】
(S)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール(化合物i)
アルゴン雰囲気下、(R)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物h)695mg(2.00mmol)及びDMAP50mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド35mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール195mg(0.6当量)を加えて室温で撹拌した。2時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール195mg(0.6当量)を追加してさらに2時間撹拌した。この反応液に1,6−ヘキサンジアミン1.16g(5当量)を加えて室温で15時間撹拌した。反応液に酢酸エチル150mlを加えて、水60mlで4回、飽和食塩水60mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られた残渣をメタノール35mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル1.19ml(5当量)及びトリエチルアミン1.39ml(5当量)を加えて、室温で14時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物i)1.07g(収率92%)を淡黄色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.37 (br s, 1 H), 8.09-8.05 (m, 1 H), 7.95-7.86 (m, 2 H), 7.55-7.43 (m, 4 H), 7.06 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 4.96 (d, 1 H, J = 12.2 Hz), 4.91 (d, 1 H, J = 12.2 Hz), 4.03-3.87 (m, 3 H), 3.56-3.46 (m, 2 H), 3.15 (t, 2 H, J = 6.9 Hz), 2.93 (q, 2 H, J = 6.5 Hz), 1.47-1.34 (m, 4 H), 1.23 (m, 4 H), 0.81 (s, 9 H), 0.15 and -0.01 (each s, each 3 H).
【0110】
(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール(化合物j)
アルゴン雰囲気下、(S)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール(化合物i)1.00g(1.71mmol)をテトラヒドロフラン35mlに溶解して氷冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液2.57ml(1.0M テトラヒドロフラン溶液、1.5当量)を加えた。反応液を室温に戻した後、1時間撹拌した。酢酸0.15ml(1.5当量)を加えて中和した後、反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物j)734mg(収率91%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.38 (br s, 1 H), 8.10-8.06 (m, 1 H), 7.96-7.84 (m, 2 H), 7.58-7.44 (m, 4 H), 7.10 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 5.00 (br s, 1 H), 4.93 (s, 2 H), 3.96 (dd, 1 H, J = 4.6, 10.6 Hz), 3.85 (dd, 1 H, J = 5.9, 10.6 Hz), 3.83 (m, 1 H), 3.50 (m, 2 H), 3.15 (dt, 2 H, J = 5.6, 7.0 Hz), 2.94 (q, 2 H, J = 6.4 Hz), 1.48-1.35 (m, 4 H), 1.24 (m, 4 H).
【0111】
(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール 2−O−(2−シアノエチル−N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y5)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール(化合物j)134mg(0.28mmol)を塩化メチレン6.0mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.12ml(1.3当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液0.76ml(0.45M、1.2当量)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液にクロロホルム30mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで1回、飽和食塩水10mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y5)153mg(収率82%)を無色オイル状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 149.53.
【0112】
(4)アミダイト化合物(Y6)の合成(図4)
(S)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物k)
アルゴン雰囲気下、(R)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物h)790mg(2.28mmol)及びDMAP56mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド35mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール222mg(0.6当量)を加えて室温で撹拌した。1.5時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール222mg(0.6当量)を追加してさらに2.5時間撹拌した。この反応液に4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン2.50ml(5当量)を加えて室温で20時間撹拌した。反応液に酢酸エチル200mlを加えて、水70mlで4回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られた残渣をメタノール40mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル1.36ml(5当量)及びトリエチルアミン1.59ml(5当量)を加えて、室温で24時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物k)1.44g(収率92%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.36 (br s, 1 H), 8.09-8.05 (m, 1 H), 7.96-7.84 (m, 2 H), 7.55-7.43 (m, 4 H), 7.05 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 4.96 and 4.90 (each d, each 1 H, J = 12.2 Hz), 4.06-3.86 (m, 3 H), 3.50-3.34 (m, 14 H), 3.22 (t, 2 H, J = 7.1 Hz), 3.00 (q, 2 H, J = 6.6 Hz), 1.69 (m, 2 H), 1.59 (m, 2 H), 0.81 (s, 9 H), 0.12 and -0.01 (each s, each 3 H).
【0113】
(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物l)
アルゴン雰囲気下、(S)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物k)1.32g(1.92mmol)をテトラヒドロフラン35mlに溶解して氷冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液2.90ml(1.0M テトラヒドロフラン溶液、1.5当量)を加えた。反応液を室温に戻した後、2時間撹拌した。酢酸0.17ml(1.5当量)を加えて中和した後、反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物l)1.07g(収率97%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.36 (br s, 1 H), 8.10-8.06 (m, 1 H), 7.96-7.87 (m, 2 H), 7.58-7.44 (m, 4 H), 7.09 (t, 1 H, J = 5.5 Hz), 4.99 (d, 1 H, J = 4.9 Hz), 4.94 (s, 2 H), 4.00-3.77 (m, 3 H), 3.51-3.35 (m, 14 H), 3.23 (q, 2 H, J = 6.6 Hz), 3.01 (q, 2 H, J = 6.4 Hz), 1.70 (m, 2 H), 1.61 (m, 2 H).
【0114】
(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール 2−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y6)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物l)260mg(0.45mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.19ml(1.3当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液1.20ml(0.45M、1.2当量)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液にクロロホルム30mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで1回、飽和食塩水10mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y6)226mg(収率64%)を無色オイル状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 149.54.
【0115】
(5)アミダイト化合物(Y7)の合成(図5)
(R)−1−O−(9−アントリルメチル)グリセロール(化合物n)
アルゴン雰囲気下、9−(クロロメチル)アントラセン(化合物m)1.36g(6.0mmol)及び(S)−(+)−2,2−ジメチル1,3−ジオキソラン−4−メタノール(化合物b)0.82ml(0.66mmol)をトルエンとジオキサンの混合溶液(2:1)60mlに溶解し、粉末状に砕いた水酸化カリウム2.0gを加えて120℃で1.5時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷ました後、酢酸エチル200mlを加えて、水70mlで3回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、得られた黄色オイル状物質に80%酢酸水溶液60mlを加えて溶解し、室温で18時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮した後トルエンとの共沸により酢酸を除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物n)1.41g(収率83%)を淡黄色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.62 (s, 1 H), 8.45-8.42 (m, 2 H), 8.12-8.09 (m, 2 H), 7.62-7.50 (m, 4 H), 5.46 (s, 2 H), 4.70 (d, 1 H, J = 5.0 Hz), 4.50 (t, 1 H, J = 5.7 Hz), 3.69-3.54 (m, 3 H), 3.36 (ddd, 1 H, J = 4.9, 5.7, 11.2 Hz), 3.31 (ddd, 1 H, J = 5.3, 5.7, 11.2 Hz).
【0116】
(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−(ジメトキシトリチル)グリセロール(化合物o)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(9−アントリルメチル)グリセロール(化合物n)1.25g(4.43mmol)をピリジン35mlに溶解し、塩化ジメトキシトリチル1.80g(1.2当量)を加え、室温で1.5時間撹拌した。エタノール5mlを加えて反応を止めた後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル200mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液70mlで1回、水70mlで2回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物o)2.47g(収率95%)を淡黄色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.63 (s, 1 H), 8.39-8.36 (m, 2 H), 8.12-8.08 (m, 2 H), 7.54-7.46 (m, 4 H), 7.34-7.15 (m, 9 H), 6.78-6.73 (m, 4 H), 5.45 (s, 2 H), 4.92 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 3.79 (m, 1 H), 3.72-3.66 (m, 2 H), 3.69 and 3.68 (each s, each 3 H), 2.93 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.3 Hz), 2.88 (dd, 1 H, J = 5.6, 9.3 Hz).
【0117】
(R)−1−O−(9−アントリルメチル)−2−O−(トリイソプロピルシリル)グリセロール(化合物p)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−(ジメトキシトリチル)グリセロール(化合物o)760mg(1.30mmol)をジメチルホルムアミド10mlに溶解し、トリイソプロピルシリルクロリド0.71ml(2.5当量)、イミダゾール450mg(5当量)を加えて室温で2日間撹拌した。反応液にエタノール5mlを加えて過剰の試薬を分解した後、酢酸エチル200mlを加えて、水70mlで4回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られたオイル状物質をクロロホルム10mlに溶解し、80%酢酸水溶液20mlを加えて、室温で1時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物p)523mg(収率92%)を淡黄色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.62 (s, 1 H), 8.44-8.41 (m, 2 H), 8.12-8.06 (m, 2 H), 7.59-7.49 (m, 4 H), 5.49 and 5.44 (each d, each 1 H, J = 11.5 Hz), 4.59 (t, 1 H, J = 5.4 Hz), 3.81-3.71 (m, 2 H), 3.61 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.7 Hz), 3.37 (dd, 2 H, J = 5.4, 5.6 Hz), 0.91-0.84 (m, 21 H).
【0118】
(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]−2−O−(トリイソプロピルシリル)グリセロール(化合物q)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(9−アントリルメチル)−2−O−(トリイソプロピルシリル)グリセロール(化合物p)520mg(1.18mmol)及びDMAP30mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール120mg(0.6当量)を加えて室温で撹拌した。2時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール120mg(0.6当量)を追加してさらに2時間撹拌した。この反応液に4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン1.30ml(5当量)を加えて室温で20時間撹拌した。反応液に酢酸エチル130mlを加えて、水50mlで4回、飽和食塩水50mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られた残渣をメタノール20mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル0.71ml(5当量)及びトリエチルアミン0.84ml(5当量)を加えて、室温で24時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物q)773mg(収率84%)を淡黄色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.36 (br s, 1 H), 8.63 (s, 1 H), 8.43-8.40 (m, 2 H), 8.12-8.08 (m, 2 H), 7.59-7.50 (m, 4 H), 7.01 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 5.48 (s, 2 H), 3.99-3.88 (m, 3 H), 3.69 (dd, 1 H, J = 4.9, 9.9 Hz), 3.64 (dd, 1 H, J = 4.6, 9.9 Hz), 3.51-3.35 (m, 12 H), 3.23 (t, 2 H, J = 6.9 Hz), 3.00 (q, 2 H, J = 6.6 Hz), 1.70 (m, 2 H), 1.60 (m, 2 H), 0.90-0.83 (m, 21 H).
【0119】
(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物r)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]−2−O−(トリイソプロピルシリル)グリセロール(化合物q)500mg(0.64mmol)をテトラヒドロフラン12mlに溶解して氷冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液0.96ml(1.0M テトラヒドロフラン溶液、1.5当量)を加えた。反応液を室温に戻した後、1時間撹拌した。酢酸55μl(1.5当量)を加えて中和した後、反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物r)383mg(収率95%)を淡黄色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.37 (br s, 1 H), 8.63 (s, 1 H), 8.44-8.41 (m, 2 H), 8.12-8.09 (m, 2 H), 7.61-7.50 (m, 4 H), 7.09 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 5.47 (s, 2 H), 5.00 (d, 1 H, J = 4.6 Hz), 3.95 (m, 1 H), 3.89-3.79 (m, 2 H), 3.64 (m, 2 H), 3.50-3.36 (m, 12 H), 3.23 (q, 2 H, J = 6.6 Hz), 3.01 (q, 2 H, J = 6.5 Hz), 1.70 (m, 2 H), 1.61 (m, 2 H).
【0120】
(S)−3−O−(9-アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール 2−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y7)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物r)350mg(0.56mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.21ml(1.2当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液1.38ml(0.45M、1.1当量)を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応液にクロロホルム60mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液25mlで1回、水25mlで1回、飽和食塩水25mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y7)293mg(収率64%)を淡黄色オイル状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 149.51, 149.43.
【0121】
(6)アミダイト化合物(Y8)の合成(図6)
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン−2−オール(化合物s)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)900mg(3.89mmol)をメタノール50mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル0.93ml(2当量)及びトリエチルアミン1.09ml(2当量)を加えて、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物s)860mg(収率68%)を白色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.34 (br t, 1 H, J = 5.7 Hz), 8.12-8.08 (m, 1 H), 7.96-7.87 (m, 2 H), 7.59-7.45 (m, 4 H), 5.12 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 4.94 (s, 2 H), 3.83 (dddt, 1 H, J = 4.6, 5.3, 5.6, 7.7 Hz), 3.50 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.9 Hz), 3.45 (dd, 1 H, J = 5.6, 9.9 Hz), 3.32 (ddd, 1 H, J = 4.6, 5.7, 13.2 Hz), 3.17 (ddd, 1 H, J = 6.1, 7.7, 13.2 Hz).
【0122】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン(化合物t)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン−2−オール(化合物s)510mg(1.56mmol)及びDMAP38mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール190g(0.75当量)を加えて室温で撹拌した。2時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール190mg(0.75当量)を追加してさらに2時間撹拌した。この反応液に6−アミノ−1−ヘキサノール550mg(3当量)を加えて室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル150mlを加えて、水50mlで4回、飽和食塩水50mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物t)487mg(収率67%)を白色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.48 (br s, 1 H), 8.09-8.06 (m, 1 H), 7.96-7.88 (m, 2 H), 7.59-7.44 (m, 4 H), 7.17 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 5.01 (m, 1 H), 4.97 (d, 1 H, J = 11.9 Hz), 4.91 (d, 1 H, J = 11.9 Hz), 4.33 (t, 1 H, J = 5.2 Hz), 3.68-3.57 (m, 2 H), 3.42-3.34 (m, 4 H), 2.93 (dt, 2 H, J = 5.6, 6.9 Hz), 1.42-1.33 (m, 4 H), 1.27-1.20 (m, 4H).
【0123】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン 6’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y8)
アルゴン雰囲気下、(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン(化合物t)188mg(0.40mmol)を塩化メチレン8mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.15ml(1.2当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液0.98ml(0.45M、1.1当量)を加え、室温で20分撹拌した。反応液にクロロホルム30mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで1回、水10mlで1回、飽和食塩水10mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y8)170mg(収率63%)を白色固体状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 147.21.
【0124】
(7)アミダイト化合物(Y9)の合成(図7)
(R)−1−O−トシル−3−O−ジメトキシトリチルグリセロール(化合物u)
アルゴン雰囲気下、(S) −(+) −2,2−ジメチル1,3−ジオキソラン−4−メタノール(化合物b)1.24ml(10.0mmol)をピリジン50mlに溶解し、塩化トシル3.81g(2.0当量)を加えて室温で17時間撹拌した。反応液に水15mlを加えて過剰の試薬を分解した。減圧下溶媒を留去した後、残渣を酢酸エチル350mlに溶解し、水100mlで1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで1回、水100mlで1回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られたオイル状物質に80%酢酸水溶液70mlを加えて溶解し、室温で20時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮した後トルエンとの共沸により酢酸を除き、さらにピリジンと共沸した。アルゴン雰囲気下、この残渣をピリジン60mlに溶解し、塩化ジメトキシトリチル4.07g(1.2当量)を加え、室温で2時間撹拌した。エタノール10mlを加えて反応を止めた後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル350mlに溶解し、水100mlで1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで1回、水100mlで1回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物u)4.51g(収率82%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 7.74 (m, 2 H), 7.45 (m, 2 H), 7.29-7.13 (m, 9 H), 6.88-6.84 (m, 4 H), 5.28 (d, 1 H, J = 5.6 Hz), 4.04 (dd, 1 H, J = 3.6, 9.6 Hz), 3.96 (dd, 1 H, J = 5.4, 9.6 Hz), 3.78 (m, 1 H), 3.74 (s, 6 H), 2.94 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.2 Hz), 2.83 (dd, 1 H, J = 6.9, 9.2 Hz), 2.39 (s, 3 H).
【0125】
(R)−3−ジメトキシトリチルオキシ−1−アジドプロパン−2−オール(化合物v)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−トシル−3−O−ジメトキシトリチルグリセロール(化合物u)930mg(1.70mmol)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、アジ化ナトリウム440mg(4当量)及び塩化アンモニウム455mg(5当量)を加えて80℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷ました後、酢酸エチル150mlを加えて、水50mlで4回、飽和食塩水50mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物v)690mg(収率96%)を黄色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 7.41-7.18 (m, 9 H), 6.91-6.86 (m, 4 H), 5.31 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 3.81 (dtdd, 1 H, J = 3.6, 5.3, 6.3, 6.6 Hz), 3.73 (s, 6 H), 3.36 (dd, 1 H, J = 3.6, 12.5 Hz), 3.28 (dd, 1 H, J = 6.3, 12.5 Hz), 3.00 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.2 Hz), 2.88 (dd, 1 H, J = 6.6, 9.2 Hz).
【0126】
(R)−3−ジメトキシトリチルオキシ−1−アミノプロパン−2−オール(化合物w)
(R)−3−ジメトキシトリチルオキシ−1−アジドプロパン−2−オール(化合物v)620mg(1.48mmol)をエタノール20mlに溶解し、パラジウム−炭素(10%)120mgを加えて、常圧の水素雰囲気化、室温で6時間撹拌した。パラジウム触媒をセライトろ過により除去した後、溶液を減圧下濃縮し、標記化合物(化合物w)548mg(収率94%)を白色泡状物質として得た。当化合物は更なる精製をすることなく、後の反応に用いた。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 7.42-7.21 (m, 9 H), 6.90-6.86 (m, 4 H), 4.71 (br s, 1 H), 3.73 (s, 6 H), 3.55 (dddd, 1 H, J = 4.0, 5.3, 6.0, 6.9 Hz), 2.94 (dd, 1 H, J = 5.3, 8.9 Hz), 2.83 (dd, 1 H, J = 6.0, 8.9 Hz), 2.68 (dd, 1 H, J = 4.0, 12.8 Hz), 2.46 (dd, 1 H, J = 6.9, 12.8 Hz).
【0127】
6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}ナフタレン−2−カルボン酸ペンタフルオロフェニルエステル(化合物x)
アルゴン雰囲気下、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジペンタフルオロフェニルエステル822mg(1.5mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン0.70ml(4.0mmol)をテトラヒドロフラン70mlに溶解し、この溶液に(R)−3−ジメトキシトリチルオキシ−1−アミノプロパン−2−オール(化合物w)520mg(1.32mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10ml)を10分かけて滴下した。室温でさらに1時間撹拌した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物x)664mg(収率67%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 9.01 (m, 1 H), 8.65 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 8.51 (m, 1 H), 8.32 (d, 1 H, J = 8.6 Hz), 8.26 (d, 1 H, J = 8.6 Hz), 8.19 (dd, 1 H, J = 1.7, 8.6 Hz), 8.02 (dd, 1 H, J = 1.7, 8.6 Hz), 7.45-7.42 (m, 2 H), 7.31-7.17 (m, 7 H), 6.87-6.83 (m, 4 H), 5.12 (d, 1 H, J = 5.6 Hz), 3.94 (m, 1 H), 3.69 (s, 3 H), 3.68 (s, 3 H), 3.56 (m, 1 H), 3.29 (m, 1 H), 3.05-2.96 (m, 2 H).
【0128】
6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}−2−{N−[N−(トリフルオロアセチル)−3’’−アミノプロピル]カルバモイル}ナフタレン(化合物y)
アルゴン雰囲気下、6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}ナフタレン−2−カルボン酸ペンタフルオロフェニルエステル(化合物x)640mg(0.84mmol)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、1,3−プロパンジアミン0.70ml(10当量)を加えて室温で30分撹拌した。反応液に酢酸エチル150mlを加えて水50mlで5回洗浄し、有機層を減圧下濃縮した。得られた残渣をアルゴン雰囲気下メタノール15mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル0.50ml(5当量)及びトリエチルアミン0.59ml(5当量)を加えて、室温で14時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物y)440mg(収率70%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 9.46 (br s, 1 H), 8.72 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 8.55 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 8.47 (m, 1 H), 8.41 (m, 1 H), 8.09-8.05 (m, 2 H), 7.99-7.91 (m, 2 H), 7.44-7.41 (m, 2 H), 7.31-7.16 (m, 7 H), 6.86-6.82 (m, 4 H), 5.10 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 3.93 (m, 1 H), 3.68 (s, 3 H), 3.67 (s, 3 H), 3.53 (m, 1 H), 3.41-3.23 (m, 5 H), 2.99 (m, 2 H), 1.81 (m, 2 H).
【0129】
6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}−2−{N−[N−(トリフルオロアセチル)−3’’−アミノプロピル]カルバモイル}ナフタレン 2’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y9)
アルゴン雰囲気下、6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}−2−{N−[N−(トリフルオロアセチル)−3’’−アミノプロピル]カルバモイル}ナフタレン(化合物y)298mg(0.40mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.15ml(1.2当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液0.98ml(0.45M、1.1当量)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液にクロロホルム30mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液15mlで2回、飽和食塩水15mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y9)255mg(収率68%)を白色泡状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6)δ: 149.20, 148,95.
【0130】
(8)アミダイト化合物(Y10及びY11)の合成(図13)
(S)−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物α)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)1.82g(7.85mmol)をピリジン75mlに溶解し、塩化モノメトキシトリチル3.15g(1.3当量)を加え室温で7時間撹拌した。エタノール15mlを加えて反応を止めた後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル200mlに溶解し、水70mlで1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液70mlで1回、水70mlで1回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物α)2.80g(収率71%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.03-8.00 (m, 1 H), 7.94-7.85 (m, 2 H), 7.54-7.34 (m, 8 H), 7.28-7.12 (m, 8 H), 6.82-6.77 (m, 2 H), 4.94 (d, 1 H, J = 12.2 Hz), 4.88 (d, 1 H, J = 12.2 Hz), 4.80 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 3.82 (m, 1 H), 3.70 (s, 3 H), 3.51 (m, 2 H), 2.39 (br dd, 1 H, J = 7.0, 8.6 Hz), 2.17 (ddd, 1 H, J = 4.6, 8.6, 11.5 Hz), 1.97 (ddd, 1 H, J = 6.6, 7.0, 11.5 Hz).
【0131】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン(化合物β)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物α)2.62g(5.20mmol)およびDMAP130mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド55mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール630mg(0.75当量)を加えて室温で撹拌した。2時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール630mg(0.75当量)を追加してさらに3時間撹拌した。この反応液に6−アミノ−1−ヘキサノール1.83g(3当量)を加えて室温で16時間撹拌した。反応液に酢酸エチル300mlを加えて、水100mlで4回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物β)3.07g(収率91%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.00-7.85 (m, 3 H), 7.53-7.33 (m, 8 H), 7.28-7.12 (m, 9 H), 6.81-6.77 (m, 2 H), 4.95 (d, 1 H, J = 12.0 Hz), 4.95 (m, 1 H), 4.88 (d, 1 H, J = 12.0 Hz), 4.30 (t, 1 H, J = 5.1 Hz), 3.72-3.68 (m, 5 H), 3.36 (m, 2 H), 2.96 (m, 2 H), 2.38 (t, 1 H, J= 8.1 Hz), 2.18 (m, 2 H), 1.41-1.33 (m, 4 H), 1.26-1.22 (m, 4 H).
【0132】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン 6’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y10)
アルゴン雰囲気下、(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン(化合物β)323mg(0.50mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン0.52ml(6当量)、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト0.13ml(1.2当量)を加え、室温で30分撹拌した。反応液にクロロホルム50mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mlで1回、水20mlで1回、飽和食塩水20mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y10)310mg(収率73%)を無色飴状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 147.27.
【0133】
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン−2−オール(化合物γ)
(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)を出発原料とし、塩化モノメトキシトリチルの代りに塩化トリチルを用いて、(S)−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物α)の合成と同様に処理して、標記化合物(化合物γ)を得た。
【0134】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン(化合物δ)
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン−2−オール(化合物γ)を出発原料とし、(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン(化合物β)の合成と同様に処理して、標記化合物(化合物δ)を得た。
【0135】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン 6’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y11)
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン(化合物δ)を出発原料とし、(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン 6’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y10)の合成と同様に処理して、標記化合物(化合物Y11)を得た。
【0136】
(実施例2)オリゴヌクレオチドプローブの合成と精製
オリゴヌクレオチドの合成はApplied Biosystems394型DNA/RNAシンセサイザー上で行った。
【0137】
HPLCにはGilsonの装置を用い、分析はWaters996フォトダイオードアレイ検出器を用いて行った。逆相分析用カラムとしてWaters μBondasphere C18、300Å(内径3.9mm×長さ150mm)、逆相分取用カラムとしてGL Science Inertsil ODS−3 C18(内径8.0mm×長さ300mm)、陰イオン交換分析用として東ソーTSK−GEL DEAE−2SW(内径4.6mm×長さ250mm)を使用した。移動相として、逆相の場合には0.1M 酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAA、pH7.0)中アセトニトリル、陰イオン交換の場合には20%アセトニトリル水中ギ酸アンモニウムの濃度勾配を用いた。
【0138】
オリゴヌクレオチドプローブの合成
下記の各オリゴヌクレオチドプローブを、デオキシヌクレオシド3’−ホスホロアミダイト(日本テクノサービス社より購入)を原料として、DNA自動合成機(モデル394A;(株)パーキンエルマージャパン・アプライドバイオシステムズ事業部製)で、0.2又は1μmolスケールで合成した。
Xn−Sp(n=1〜8):5’−Xn−TCTTCCAAGCAATTCCAATGAAAGCCATGACCACATGGACGACGATGATG−3’(配列番号1)
Cy5−AS−Sp:5’−Cy5−ATCGTCATCATCGTCGTCCATGTGGTCATGGCAAACATTGGAATTGCTTGGAAGAGTTTC−3’(配列番号2)
【0139】
X1−Sp及びX4−Spのオリゴヌクレオチドの5’末端に導入するアミノ基にはN−モノメトキシトリチル−6−アミノヘキシルホスホロアミダイト(グレンリサーチ社)を用いた。X2−Sp、X3−Sp、X5−Sp、X6−Sp、X7−Sp、X8−Spのアミノ基の導入は、Y2、Y3、Y5、Y6、Y7、Y8のホスホロアミダイト化合物を用いて行った。合成したオリゴヌクレオチドプローブX1−Sp〜X8−Spの構造を図8に示す。
【0140】
合成終了後、オリゴヌクレオチドプローブは以下のように処理し精製した。濃アンモニア水でCPG(Controlled Pore Glass)よりオリゴヌクレオチドプローブを切り出し、50℃で12時間加温した。溶媒を留去し、脱イオン水に溶解した後、C18(ウォーターズ社製)オープンカラムクロマトグラフィーを行なった(カラムサイズ0.8x18cm:5−50% アセトニトリル、0.1M トリエチルアンモニウムアセテート(以下「TEAA」という)水溶液の溶媒を用いた直線濃度勾配により溶出)。約30%濃度のアセトニトリルで溶出されたフラクションを集め、2mlの80%酢酸水溶液を加え、60分間攪拌した。酢酸を減圧下留去し、水層を酢酸エチルで洗浄した。溶媒を留去後、滅菌水1mlに溶解した。
【0141】
Xn−Sp(n=1〜8)は、逆相HPLCで分取し精製した。逆相HPLCの条件は以下の通りであった:
Xn−Sp(n=1〜6)ではカラム:Inertsil ODS−3(C−18)カラムΦ8.0x300mm(GLScience社製)を使用。
Xn−Sp(n=7、8)ではカラム:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)を使用。
【0142】
【表1】
【0143】
溶液1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
溶液2
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 25% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
【0144】
(実施例3)オリゴヌクレオチドプローブと蛍光色素との反応
Cy5−X1−AS−Spの合成
X1−AS−Sp:5’−X1−ATCGTCATCATCGTCGTCCATGTGGTCATGGCAAACATTGGAATTGCTTGGAAGAGTTTC−3’
X1−AS−Spは、X1−Spと相補的なオリゴヌクレオチドであり、まず上記X1−Spと同様のアミノ基を導入したオリゴヌクレオチドフプローブとして合成し、続いて逆相HPLCにより精製した。
カラム:Inertsil ODS−3(C−18)カラムΦ8.0x300mm(GLScience社製)
【0145】
X1−AS−SpのCy5−スクシンイミジルエステルとの反応
オリゴヌクレオチドプローブ(X1−AS−Sp)(1nmol)とCy5−スクシンイミジルエステル(ファルマシア社製)(500nmol)を10%(v/v)ジメチルホルムアミド、0.25M 炭酸緩衝溶液に溶解し(全量100μL)、遮光し35℃で反応を行った。反応開始16時間後に、NAP10(ファルマシア社)で脱塩した。その後逆相HPLCで分取した。
カラム:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
【0146】
【表2】
【0147】
溶液1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
【0148】
フルオレセインイソチオシアナート(FITC)との反応
オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp:n=1〜8)(1nmol)とFITC(500nmol)を10%(v/v)ジメチルホルムアミド、0.25M 炭酸緩衝溶液に溶解し(全量100μL)、遮光し40℃で反応を開始した。反応開始後30分〜4時間までの任意な時間に15μLはかりとり、NAP5(ファルマシア社)で脱塩した。その後逆相HPLCで分析した。フルオレセインと結合した各オリゴヌクレオチドプローブの逆相HPLCによる分析条件及び結果を表3に示した。
【0149】
【表3】
【0150】
溶媒1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
カラム温度:50度
結果を図9bに示す。
【0151】
(実施例4)オリゴヌクレオチドプローブのスライドガラスへのスポットと結合反応
スライドガラス(20枚)を10%水酸化ナトリウム水溶液(200mL)に15分間浸した後、水(200mLで2回)、1%塩酸水溶液(200mL)、水(200mLで2回)の順で洗浄した。メタノール(200mL)に浸し5分間の超音波洗浄を行い、遠心によって乾燥させ、さらに180度で3時間乾燥した。
【0152】
続いて乾燥させたスライドガラスを3−アミノトリメトキシシラン(13mL)、水(8mL)、メタノール(380mL)中に浸し、室温で少なくとも5時間攪拌下させた。その後スライドガラスを取り出し、メタノール(200mL)で3回洗浄して遠心後、180度で3時間乾燥させた。あらかじめ1,4−フェニレンジイソチオシアネート(1400mg)を10%ピリジン・ジメチルホルムアミド溶液(220mL)に溶解させ、これに上記アミノシラン化を行ったスライドガラスを入れ、室温下16時間攪拌させた。スライドガラスを取り出し、ジメチルホルムアミド(200mL)で2回、ジクロロメタン(200mL)、アセトン(200ml)、メタノール(200mL)の順で洗浄し、減圧下室温で乾燥させ、イソチオシアネート化されたスライドガラスを得た。
【0153】
続いてイソチオシアネート化されたスライドガラスをガラス容器に敷き、そこに20又は30%トリス(3−アミノプロピル)アミン・メタノール溶液(130μL)を滴下し、密封して37度で5時間反応させた。その後スライドガラスをメタノール(200mL)で2回、アセトン(200mL)で1回洗浄した。減圧下室温で1時間乾燥させた後、あらかじめ1,4−フェニレンジイソチオシアネート(1400mg)を10%ピリジン・ジメチルホルムアミド溶液(220mL)に溶解させた溶液中にそのスライドガラスを入れ、室温下16時間攪拌させた。スライドガラスを取り出し、ジメチルホルムアミド(200mL)で2回、ジクロロメタン(200mL)、アセトン(200ml)、メタノール(200mL)の順で洗浄し、減圧下室温で乾燥させ、2層目のイソチオシアネート化されたスライドガラスを得、これをオリゴヌクレオチドのスポットに供した。
【0154】
50塩基オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp)(50〜300pmol)を滅菌水(5μl)に溶解し、スポット溶液(5μl;1M 炭酸緩衝液(pH9.0))と混合させ、スポッター(SPBIO2000、日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社製)によって1,4−フェニレンジイソチオシアネートをコーティングしたコーティング済みスライドガラス上にスポットした。スポット後タイトボックスにろ紙を敷き、300mM リン酸水素二ナトリウム水溶液を湿らせ、溶液が付かないようにスポット済みのスライドガラスを入れ、密閉後室温で放置した。16時間後タイトボックスからスライドガラスを取り出し、スライドガラスを0.1% Triton X(200mL)で室温5分間、0.02%塩酸水溶液(200mL)で室温2分間、0.1M 塩化カリウム(200mL)で室温10分間、滅菌水(200mL)で室温1分間洗浄した。
【0155】
続いて1M エタノールアミン水溶液(200mL)にガラスを浸し、室温で1時間攪拌しブロッキングを行った。滅菌水で3回洗浄後、ドラフト内で乾燥させて冷蔵保存した。
【0156】
(実施例5)オリゴヌクレオチドプローブのスライドガラス上への固定化の確認
40μM TexasRed−ddATP (2μL)、ジメチルスルホキシド(10μL)、25mM 塩化コバルト溶液(10μL)、反応緩衝溶液(x5、1M カコジル酸カリウム、125mM トリス−塩酸、1.25mg/ml BSA、pH6.6;20μL)、ターミナルトランスフェレース(1μL;400units)に滅菌水を加えて全量80μlとした反応溶液を調製後、直ちに実施例4のスライドガラスに全量滴下した。カバーガラスを反応液上にのせ、37度で放置した。15分後1XSSC緩衝液(0.15M NaCl、0.03M クエン酸二水和物)、0.1%SDS溶液で60℃、10分間、ミリ給水洗浄、エタノール水溶液で洗浄し乾燥させ検出機(スキャンアレイ)で測定した(図9a)。
【0157】
(実施例6)担体上でのハイブリダイゼーション
Cy5−X1−AS−Sp(4.8pmol)に20XSSC(0.6μl)、10%SDS(1.2μl)、及び滅菌水を加え全量24μlのプローブ溶液を作製した。そのプローブDNA溶液を静かに実施例4で作製したDNAチップ上にのせた後、カバーグラスを溶液上にのせ、4XSSC溶液で湿らせたキムタオルを敷いたタイトボックス内に入れ、40度又は60度で16時間放置した。
【0158】
ハイブリダイゼーション後、チップを0.1×SSC−0.1%SDS溶液(200mL)に5分間、0.05xSSC−0.1%SDS溶液(200mL)に10分間、続いて0.05xSSC(200mL)でそれぞれ室温で洗浄した。乾燥させた後、チップスキャナー(Scan Array、A Packard BioScience Companyの商品名)で検出した。結果を図10に示す。
【0159】
ハイブリダイゼーションの結果から、X1−SpやX4−Spと比べて、本発明のオリゴヌクレオチドプローブ用いた場合は、より好感度に検出できることが明らかとなった。
【0160】
(実施例7)25塩基オリゴヌクレオチドの合成
Xn−Sp(n=1〜8)と同様の方法でXn−Sp25(n=1、3〜9)及びX9−Sp35を合成し、精製した。
それぞれの逆相HPLCの条件は以下の通りであった:
【0161】
【表4】
【0162】
溶液1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
溶液2
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 25% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
カラムA:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
カラムB:Inertsil ODS−3(C−18)カラムΦ8.0x300mm(GLScience社製)
Xn−Sp25(n=1、3〜9):
5’−Xn−TCTTCCAAGCAATTCCAATGAAAGC−3’(配列番号3)
X9−Sp35:
5’−AGCAAGAAAC−Xn−TCTTCCAAGCAATTCCAATGAAAGC−3’(配列番号4)
【0163】
(実施例8)25塩基オリゴヌクレオチドプローブと蛍光色素との反応
フルオレセインイソチオシアナート(FITC)との反応
オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp25:n=1、3〜9;X9−Sp35)(1nmol)とFITC(500nmol)を10%(v/v)ジメチルホルムアミド、0.25M 炭酸緩衝溶液に溶解し(全量100μL)、遮光し40℃で反応を開始した。反応開始後30分〜4時間までの任意な時間に15μLはかりとり、NAP5(ファルマシア社)で脱塩した。その後逆相HPLCで分析した。各オリゴヌクレオチドプローブの逆相HPLCによる分析条件を下記に示した。またFITCの生成率の結果を図9cに示した。
【0164】
HPLC条件
溶媒
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
カラム温度:50度
カラム:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
【0165】
(実施例9)
実施例4と同様に表面をコーティングしたスライドガラスに対し、25塩基オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp25;n=1、5、9)(50又は100pmol)を滅菌水(5μl)に溶解し、スポット溶液(5μl;1M 炭酸緩衝液(pH9.0))と混合させ、スポッター(SPBIO2000、日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社製)によって1,4−フェニレンジイソチオシアネートをコーティングしたコーティング済みスライドガラス上にスポットした。スポット後タイトボックスにろ紙を敷き、300mM リン酸水素二ナトリウム水溶液を湿らせ、溶液が付かないようにスポット済みのスライドガラスを入れ、密閉後室温で放置した。16時間後タイトボックスからスライドガラスを取り出し、スライドガラスを0.1% Triton X(200mL)で室温5分間、0.02%塩酸水溶液(200mL)で室温2分間、0.1M 塩化カリウム(200mL)で室温10分間、滅菌水(200mL)で室温1分間洗浄した。
【0166】
続いて1M エタノールアミン水溶液(200mL)にガラスを浸し、室温で1時間攪拌しブロッキングを行った。滅菌水で3回洗浄後、ドラフト内で乾燥させて冷蔵保存した。
【0167】
(実施例10)オリゴヌクレオチドプローブのスライドガラス上への固定化の確認
40μM TexasRed−ddATP (2μL)、ジメチルスルホキシド(10μL)、25mM 塩化コバルト溶液(10μL)、反応緩衝溶液(x5、1M カコジル酸カリウム、125mM トリス−塩酸、1.25mg/ml BSA、pH6.6;20μL)、ターミナルトランスフェレース(1μL;400units)に滅菌水を加えて全量80μlとした反応溶液を調製後、直ちに実施例9のスライドガラスに全量滴下した。カバーガラスを反応液上にのせ、37℃で放置した。15分後1XSSC緩衝液(0.15M NaCl、0.03M クエン酸二水和物)、0.1%SDS溶液で60℃、10分間、ミリ給水洗浄、エタノール水溶液で洗浄し乾燥させ検出機(スキャンアレイ)で測定した(図12)。
【0168】
(実施例11)オリゴヌクレオチド(X10−Sp25)の合成と、緩和な条件での脱保護実験
実施例1で合成したアミダイト化合物(Y10)を用い、Xn−Sp(n=1〜8)と同様の方法で、X10−Sp25を合成し、精製した。
Xn−Sp(n=8、10)
5’−Xn−TCTTCCAAGCAATTCCAATGAAAGC−3’(配列番号3)
それぞれの逆相HPLCの条件は以下の通りであった:
【0169】
【表5】
【0170】
溶液1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
カラムA:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
【0171】
X10−Sp25はモノメトキシトリチル基(MMTr)によってアミノ基が保護されている。このオリゴヌクレオチドに10%酢酸水溶液(1mL)を加え、室温で5分間処理した。反応液を減圧下濃縮し、さらに水を加えて減圧下共沸した。共沸を3度繰り返し行った後、残渣を滅菌水1mLに溶解し、逆相HPLCによって分析した(図14b、c)。以上から、X10−Sp25が緩和な酸性条件によって脱保護され、X8−Sp25と同じ構造になったことがわかる(図14a)。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明により、DNAチップの低価格化が可能になり、広く遺伝子診断技術の手段としてのDNAチップの普及に寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】従来のオリゴヌクレオチドプローブと本発明のオリゴヌクレオチドプローブの構造を示す。
【図2】アミダイト化合物(Y2)の合成方法を示す。
【図3】アミダイト化合物(Y3)の合成方法を示す。
【図4】アミダイト化合物(Y5、6)の合成方法を示す。
【図5】アミダイト化合物(Y7)の合成方法を示す。
【図6】アミダイト化合物(Y8)の合成方法を示す。
【図7】アミダイト化合物(Y9)の合成方法を示す。
【図8】オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp)の構造を示す。
【図9】オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp)のガラス基盤への固定化量(a)とFITCとの反応性(b:50塩基オリゴヌクレオチド、c:25塩基オリゴヌクレオチド)を示す。
【図10】実施例6におけるハイブリダイゼーションの結果を示す。
【図11】中間体化合物の具体例を表す。
【図12】25塩基オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp25;n=1、5、9)と両側にオリゴヌクレオチドをもつプローブ(X9−Sp35)のガラス基盤への固定化量の測定結果を示す。
【図13】アミダイト化合物(Y10、Y11)の合成方法を示す。
【図14】X10−Sp25の配列とX10−Sp25の脱保護反応のスキーム(a)、X10−Sp25を逆相HPLC分析した結果(b)、及びX10−Sp25を酸処理した後、逆相HPLC分析した結果(c)を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0174】
配列番号1〜4 合成オリゴヌクレオチド
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族基を有するリンカーとオリゴヌクレオチドからなるオリゴヌクレオチドプローブ、該オリゴヌクレオチドプローブが固定化された担体及び該オリゴヌクレオチドプローブを合成するための化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
DNAチップ又はビーズ等を用いた遺伝子解析においては、合成オリゴヌクレオチド又はPCR産物などをプローブとして担体上に固定化する必要がある。当該担体上に固定化されたプローブと、蛍光などで標識された標的核酸とが相補的に結合することによって、標的核酸が担体上に保持され、標識に由来する蛍光強度を測定することによって、標的核酸量を検出することができる。DNAチップは、平板状の担体上に数千〜数十万種類のプローブが、あらかじめ決まった場所に固定化されているため、他種類の遺伝子の発現量を一度に定量することができ、遺伝子間の複雑なネットワークの解明に極めて有用である。そのため、遺伝子診断のための有力な手法の一つとして期待されている。
【0003】
合成オリゴヌクレオチドプローブを担体上に固定化するには、担体上でオリゴヌクレオチドを直接合成する方法(非特許文献1及び非特許文献2)、及び合成したオリゴヌクレオチドを精製後、担体上に固定化する方法とがある。後者の方法においては、オリゴヌクレオチドプローブの合成中に、アミノ基などの官能基を導入し、スポット後にこれらの官能基が担体上にコーティングされた官能基と共有結合を形成させることによって、不可逆的にプローブを固定化する方法が知られている。また、プラス電荷を有するポリLリジンなどをコーティングした担体上にオリゴヌクレオチドプローブを静電的に結合させる方法なども報告されている。静電的な結合は、オリゴヌクレオチドのマイナス電荷に依存するため、オリゴヌクレオチドプローブの鎖長が短くなるはど、固定化効率が低下してしまう。そのため、共有結合を介して担体上にオリゴヌクレオチドを固定化する方法が広く用いられている。
【0004】
アミノ基などの官能基は、リンカーを介してオリゴヌクレオチドに導入することが知られている(非特許文献3及び非特許文献4)。アミノ基が結合したリンカーとして、現在、最も頻繁に用いられるものは、炭素数6のリンカーである。このリンカーを介してアミノ基が結合したオリゴヌクレオチドプローブは、DNAチップのプローブライブラリーとしても市販されている(例えば、MWG社、シグマジェノシス社など)。
【0005】
オリゴヌクレオチドプローブをチップなどの担体上に固定化する場合、アミノ基又はメルカプト基などの官能基をオリゴヌクレオチド合成時に導入する。現在用いられているオリゴヌクレオチドへのアミノ基導入のための試薬には、アミノ基をトリフルオロアセチル基又はモノメトキシトリチル基で保護したアミダイト化合物がある。しかし、上記のような試薬は、オリゴヌクレオチドへのアミノ基の導入効率が低いという問題を有する。また、N−トリフルオロアセチル−6−アミノヘキシルアミダイト化合物を用いる場合、アミノ基の導入されたオリゴヌクレオチド(アミノ基導入オリゴヌクレオチド)と未導入オリゴヌクレオチドを分離精製することが困難であり、これらが混在することが問題となっていた。一方、N−モノメトキシトリチル−6−アミノヘキシルアミダイト化合物を用いる場合、分離精製は可能なものの、分離後の酸性条件下におけるモノメトキシトリチル基の除去に時間を要し、高純度にオリゴヌクレオチドを精製することが困難であった。遺伝子診断では、多数のオリゴヌクレオチドプローブが必要なため、より容易かつ高純度に精製することが望まれていた。
【0006】
さらに、上記で得られる精製アミノ基導入オリゴヌクレオチドを担体上に固定化する場合、アミノ基と担体表面上のコーティング剤との反応性が低く、十分なオリゴヌクレオチドを担体上に固定化するには、高濃度のオリゴヌクレオチドをスポットする必要があった。結果として多くのオリゴヌクレオチドを必要とし、チップの価格を上げる原因となっていた。従って、オリゴヌクレオチドプローブを担体上に効果的に固定化することが望まれていた。
【0007】
また、DNAチップ等において高い感度を得るためには、検出すべき標的核酸をオリゴヌクレオチドプローブ上に効率よく保持することが重要である。オリゴヌクレオチドと標的核酸との結合の安定性は、オリゴヌクレオチドの長さに依存するため、結合安定性を高めるためには長鎖のオリゴヌクレオチドを合成する必要があった。しかし、DNAチップのように多数のオリゴヌクレオチドプローブを必要とするような場合には、長鎖オリゴヌクレオチドプローブを合成することはコストの観点から適当でないという問題があった。
【0008】
【非特許文献1】Nucleic Acids Res.,vol.20,1675−1678(1992)
【非特許文献2】Trends Biotechnol.,vol.12,19−26(1994)
【非特許文献3】Coull et al.,Tetrahedron,vol.27,3991−3994(1986)
【非特許文献4】Connolly,B.A.,Nucleic Acids Res.,vol.15,3131−3139(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、担体上に強固に固定化され、合成後の精製が容易であり、かつ相補的な標的核酸を効率よく保持するオリゴヌクレオチドプローブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、担体への固定化に必要な反応性官能基を芳香族基と連結した新規化合物を合成し、これをオリゴヌクレオチドに導入することによって上記課題が解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)一般式1:
B−D−A (1)
(式中、Aはオリゴヌクレオチドを表し、Dは少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表す)
で表されるオリゴヌクレオチドプローブ。
【0012】
(2)芳香族基が置換又は無置換の1〜5環性芳香族炭化水素基である(1)記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(3)芳香族基が置換又は無置換のフェナントレン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環又はピレン環を含むものである(2)記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(4)Dが複素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐の置換又は無置換の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの芳香族基を有する(1)〜(3)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【0013】
(5)Dが主鎖に二価の芳香族基を含む(1)〜(4)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(6)Dが側鎖に芳香族基を有する(1)〜(4)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(7)Dが一般式2で表される(6)記載のオリゴヌクレオチドプローブ:
【0014】
【化1】
(式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す)。
【0015】
(8)R2が一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表され、
R3が一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表され、
R4は、直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−であり、
R5及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【0016】
【化2】
を表し、
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、
n、w、i、qはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、
R7は水素原子又はリン酸保護基を表す、
(7)記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【0017】
(9)Lが置換又は無置換のフェニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基又はピレニル基である(7)又は(8)記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
(10)Dが側鎖にさらなるオリゴヌクレオチドを有する、(1)〜(6)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【0018】
(11)Dが一般式2’で表される(5)記載のオリゴヌクレオチドプローブ:
【化3】
(式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、A’は水酸基又はオリゴヌクレオチドを表す)。
【0019】
(12)(1)〜(11)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチドプローブが固定化された担体。
【0020】
(13)一般式5:
【化4】
(式中、D’は少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表し、Oは酸素原子を表し、Pはリン原子を表し、R8はリン酸保護基を表し、R9及びR10は有機基であり、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい)
で表される化合物。
【0021】
(14)芳香族基が置換又は無置換の1〜5環性芳香族炭化水素基である(13)記載の化合物。
(15)芳香族基が置換又は無置換のフェナントレン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環又はピレン環を含むものである(14)記載の化合物。
【0022】
(16)D’が複素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐の置換又は無置換の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの芳香族基を有する(13)〜(15)のいずれかに記載の化合物。
【0023】
(17)D’が主鎖に二価の芳香族基を含む(13)〜(16)のいずれかに記載の化合物。
(18)D’が側鎖に芳香族基を有する(13)〜(16)のいずれかに記載の化合物。
【0024】
(19)D’が一般式2で表される(18)記載の化合物:
【化5】
(式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す)。
【0025】
(20)R2が一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表され、
R3が一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表され、
R4は、直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−であり、
R5及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【0026】
【化6】
を表し、
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、
n、w、i、qはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、
R7は水素原子又はリン酸保護基を表す、
(19)記載の化合物。
【0027】
(21)Lが置換又は無置換のフェナントリル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基又はピレニル基である(19)又は(20)記載の化合物。
【0028】
(22)D’が一般式6で表される請求項(17)記載の化合物:
【化7】
(式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、R15は水酸基保護基を表す)。
【発明の効果】
【0029】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、担体への反応効率が高いために、固定化に要するオリゴヌクレオチド量を低減することができる。さらに、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、標的核酸との結合効率が高いために、従来と同じ鎖長のものでも高い感度で検出することが可能である。また、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、合成後の精製が容易であり、複数種のプローブを作製した場合でも、自動化によって精製可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、反応性官能基及び芳香族基を有するリンカーとオリゴヌクレオチドが結合した構造を有する。すなわち、以下の一般式1で表される。
B−D−A (1)
式中、Aはオリゴヌクレオチドを表し、Dは少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表す。
【0031】
本発明においてオリゴヌクレオチドは、天然のものでも合成のものでもよく、ポリヌクレオチドをも包含する。また、オリゴヌクレオチドは、DNA及びRNA等の核酸、二本鎖オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド誘導体を包含する。PCR産物も包含される。オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホアミダイト結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体 、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体 、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−メトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、及びオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等を挙げることができる。
【0032】
本発明においてオリゴヌクレオチドの塩基数は、通常1〜500、より好ましくは5〜200、より好ましくは10〜100である。
【0033】
一般式1においてBは、反応性官能基又はその保護された形態を表す。反応性官能基とは、オリゴヌクレオチドプローブを固定化しようとする担体上に存在する官能基と共有結合を形成しうる基を意味し、例えば、活性エステル基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基又はイソシアネート基と共有結合しうる基(例えば、アミノ基など)、あるいはマレイミド基又はジスルフィド基と反応しうる基(例えば、メルカプト基など)等が挙げられる。本発明においては、メルカプト基及びアミノ基が好ましい。アミノ基としては、1級アミノ基が好ましい。
【0034】
Bは反応性官能基の保護された形態でもよい。保護された形態とは、官能基の水素原子が保護基で置換された形態を意味する。アミノ基の保護基としては、特に制限されないが、アシル基、カルバメート基、トリアルキルシリル基、フタリル基、カルボキシアルキルカルボニル基、トシル基、トリフルオロアセチル基、トリチル基、及びモノ又はジ置換トリチル基が挙げられる。モノ置換トリチル基としては、例えば、モノアルコキシトリチル基、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1のアルコキシ基を有するモノアルコキシトリチル基、具体的には、モノメトキシトリチル基、モノエトキシトリチル基、モノプロポキシトリチル基、モノイソプロポキシトリチル基及びモノブトキシトリチル基が挙げられる。トリチル基又はモノ若しくはジ置換トリチル基は疎水性が強いため、合成したオリゴヌクレオチドプローブを逆相カラムによって容易に精製できるという点で有利である。通常、アミノ基をトリチル基又はモノ若しくはジ置換トリチル基で保護した場合、脱保護するためには強い酸性条件下で長時間反応させる必要がある。このような条件は、核酸に損傷を与えることも考えられ、また時間を要するという点でも好ましくない。しかし、本発明のオリゴヌクレオチドプローブにおいて、アミノ基をトリチル基又はモノ若しくはジ置換トリチル基で保護した場合は、緩和な酸性条件下、短時間で脱保護可能なため、核酸を傷つけることもなく、また、脱保護時間を短縮することもできる。例えば、pH2〜6、あるいは5〜80体積%の酢酸存在下、5〜20分処理することにより脱保護することができる。
【0035】
メルカプト基の保護基としては、特に制限されないが、t−ブチル基、アラルキル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基及びアシル基等が挙げられる。
【0036】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブにおいて、オリゴヌクレオチドは、一般式1においてDとして表されるリンカー部分を介して、反応性官能基と連結されている。Dは、少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表す。
【0037】
二価の有機基としては、オリゴヌクレオチドプローブの担体との結合性及び標的オリゴヌクレオチドとの相補的結合を阻害するものでなければ特に制限されないが、好ましくは複素原子を含んでいてもよい置換又は無置換の二価の炭化水素基である。二価の炭化水素基としては、鎖員2〜50、好ましくは鎖員3〜30、より好ましくは鎖員1〜5のアルキル基、鎖員2〜50、好ましくは鎖員3〜30、より好ましくは鎖員1〜5のアルキレン基、鎖員2〜50、好ましくは鎖員3〜30、より好ましくは鎖員1〜5のアルケニレン基、鎖員2〜50、好ましくは鎖員3〜30、より好ましくは鎖員1〜10の二価の脂環式炭化水素基等が挙げられる。上記炭化水素基においては、炭素の一部が複素原子で置換されていてもよい。複素原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子が挙げられる。
【0038】
置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれるハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換又は無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルケニル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のシクロアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基又はカルボキシル基等を挙げることができる。
【0039】
本発明の一態様において、リンカー部分Dは、好ましくは以下の一般式2で表される基である。
【0040】
【化8】
【0041】
式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す。ここで置換基は、上記と同様である。また、二価の炭化水素基としては、上記と同様のものが挙げられる。一般式2において、R2が反応性官能基Bと結合し、R2’がオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と結合する。R2’が直接結合の場合は、一般式2における炭素原子が、オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と直接結合する。
【0042】
R2は、好ましくは一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表される。R3は好ましくは一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表される。R2’は好ましくは直接結合又は−R2’’−(CH2)j−である。
【0043】
R2において、R4が反応性官能基Bと結合し、R3において、−(CH2)w−が芳香族基Lと結合し、R2’において−(CH2)j−がオリゴヌクレオチドと結合する。
R4は、好ましくは直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−である。
【0044】
R5、R6及びR2’’は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【化9】
から選択される。
【0045】
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜6、さらに好ましくは0〜3の整数を表し、n、w、i、q及びjはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3の整数を表す。
【0046】
ここで、m+nは通常1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5であり、t+wは、通常1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5であり、i+qは通常2〜40、好ましくは2〜20、より好ましくは2〜5であり、R7は水素原子又はリン酸保護基を表す。リン酸保護基としては、特に限定されないが、メチル基、2−シアノエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、4−オキシペンチル基などを好ましい基として挙げることができる。
R4は、好ましくは直接結合である。
【0047】
R5は好ましくは
【化10】
であり、R6は好ましくは−O−である。
【0048】
本発明においては、芳香族基としては、置換又は無置換の芳香族炭化水素基、置換又は無置換の芳香族複素環基、置換又は無置換の多環性芳香族基が挙げられる。本発明においては、疎水性の高い芳香族基が好ましい。また、本発明において芳香族基には核酸塩基は含まれない。
【0049】
芳香族基の置換基としては、例えば、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素から選ばれるハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換又は無置換のアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルケニル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のシクロアルキル基、置換又は無置換の炭素数1〜10のアルコキシ基、置換又は無置換のアルコキシカルボニル基及びカルボキシル基等を挙げることができる。
【0050】
置換又は無置換の芳香族炭化水素基としては、置換又は無置換の単環性芳香族炭化水素基、具体的には、フェニル基、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2,3−ジフルオロフェニル基、2,5−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、4−エチルフェニル基などが挙げられる。
【0051】
芳香族複素環基としては、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基等が挙げられる。
【0052】
置換又は無置換の芳香族複素環基の具体例としては、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、3−ピリダジニル基、4−ピリダジニル基、2−ピリミジニル基、4−ピリミジニル基、5−ピリミジニル基、ピラジニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、2−メチル−3−ピリジル基、6−メチル−3−ピリジル基、2−クロロ−3−ピリジル基、6−クロロ−3−ピリジル基、2−メトキシ−3−ピリジル基、6−メトキシ−3−ピリジル基、2,6−ジクロロ−3−ピリジル基、2,6−ジメトキシ−3−ピリジル基、などを挙げることができる。好ましい置換又は無置換の芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、オキサゾリル基が挙げられる。
【0053】
多環性芳香族基としては、ナフチル基、フェナントリル基、フルオレニル基、アントリル基、ピレニル基、インダニル基、テトラヒドロナフチル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基が挙げられる。
【0054】
置換又は無置換の多環性芳香族基の具体例としては、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−インダニル基、5−インダニル基、5−テトラヒドロナフチル基、6−テトラヒドロナフチル基、キノリル基、イソキノリル基、シンノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、フタラジニル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基、インダゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、2,3−メチレンジオキシフェニル基、3,4−メチレンジオキシフェニル基、2,3−エチレンジオキシフェニル基、3,4−エチレンジオキシフェニル基、4−フルオロ−1−ナフチル基、4−クロロ−1−ナフチル基、2−メチル−1−ナフチル基、4−メチル−1−ナフチル基、2−メトキシ−1−ナフチル基、5−メトキシ−1−ナフチル基、6−メトキシ−1−ナフチル基、7−メトキシ−1−ナフチル基、2−エトキシ−1−ナフチル基、5−エトキシ−1−ナフチル基、6−エトキシ−1−ナフチル基、7−エトキシ−1−ナフチル基、1−メトキシ−2−ナフチル基、3−メトキシ−2−ナフチル基、5−メトキシ−2−ナフチル基、6−メトキシ−2−ナフチル基、1−エトキシ−2−ナフチル基、3−エトキシ−2−ナフチル基、5−エトキシ−2−ナフチル基、6−エトキシ−2−ナフチル基、2−クロロ−5−キノリル基などを挙げることができる。好ましい置換又は無置換の多環性芳香族基としては、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、フルオレニル基、フェナントリル基が挙げられる。
【0055】
芳香族基がDの主鎖部分に存在する場合、上記芳香族基の二価の形態となる。例えば、フェニレン基、ピリジレン基、ピリダジニル基、ピリミジニレン基、ピラジニレン基、フリレン基、チエニレン基、ピロリレン基、イミダゾリレン基、チアゾリレン基、オキサゾリレン基、ナフチレン基、アントリレン基、ピレニレン基、インダニレン基、テトラヒドロナフチレン基、キノリレン基、イソキノリレン基、シンノリニレン基、キナゾリニレン基、キノキサリニレン基、ナフチリジニレン基、フタラジニレン基、インドリレン基、イソインドリレン基、ベンゾフリレン基、ベンゾチエニレン基、インダゾリレン基、ベンゾイミダゾリレン基、ベンゾチアゾリレン基が挙げられ、好ましくはナフチレン基、アントリレン基又はピレニレン基である。上記二価の芳香族基は置換でも無置換でもよい。
【0056】
本発明において、芳香族基は、1〜5環性芳香族炭化水素基が好ましい。特に、好ましくは2〜4環性芳香族炭化水素基、より具体的には置換又は無置換のナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フルオレニル基及びピレニル基、特に1−ナフチル基及び9−アントリル基である。
【0057】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブには、リンカー部分Dの側鎖に、さらなるオリゴヌクレオチドを有するものも包含される。さらなるオリゴヌクレオチドはもう一方のオリゴヌクレオチドと同一でも異なっていてもよい。
【0058】
本発明の別の態様において、オリゴヌクレオチドプローブとして、一般式1においてDが以下の一般式2’で表されるものが挙げられる。
【0059】
【化11】
【0060】
式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、A’は水酸基又はオリゴヌクレオチドを表す。
【0061】
ここで置換基は、上記と同様である。また、複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基としては、上記と同様のものが挙げられる。一般式2’において、R11が反応性官能基Bと結合し、R14がオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と結合する。R14が直接結合の場合は、一般式2’における炭素原子が、オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と直接結合する。A’がオリゴヌクレオチドの場合も同様に、R13がオリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と結合し、R13が直接結合の場合は、一般式2’における炭素原子が、オリゴヌクレオチドの5’末端又は3’末端の、水酸基又はリン酸基の酸素と直接結合する。
【0062】
R11は、好ましくは、一般式3’:
−(CH2)a−R5’−(CH2)b− (3’)
で表される。R12は好ましくは一般式4’:
−(CH2)c−R6’−(CH2)d− (4’)
で表される。R13は好ましくは、直接結合又は−(CH2)e−であり、R14は好ましくは、直接結合又は−(CH2)f−である。
【0063】
R11において、−(CH2)a−が反応性官能基Bと結合し、R12において、−(CH2)c−が芳香族基Lと結合する。
【0064】
R5’及びR6’は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【化12】
から選択される。
【0065】
e及びfは、それぞれ独立して1〜20の整数を表し、好ましくは1〜10、より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜3の整数を表し、a〜dはそれぞれ独立して0〜20の整数を表し、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5、さらに好ましくは0〜3の整数を表す。
【0066】
ここで、a+bは通常1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5であり、c+dは、通常1〜40、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜5である。R7は水素原子又はリン酸保護基を表す。リン酸保護基としては、特に限定されないが、メチル基、2−シアノエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、4−オキシペンチル基などを好ましい基として挙げることができる。
【0067】
R13及びR14は、好ましくは直接結合である。
R5’は好ましくは−NH−CO−であり、R6’は好ましくは−CO−NH−である。
【0068】
二価の芳香族基Lとしては、特に限定されないが、疎水性の高い二価の芳香族基、好ましくは、置換又は無置換のフェナントリレン基、フルオレニレン基、ナフチレン基、アントリレン基又はピレニレン基、特にナフチレン基及びアントリレン基が挙げられる。より具体的には、置換又は無置換の2,6−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基、1,5−ナフチレン基、2,7−ナフチレン基、2,6−アントリレン基、1,8−アントリレン基、9,10−アントリレン基、1,5−アントリレン基、2,7−フェナントリレン基、2,8−フェナントリレン基、1,5−フェナントリレン基、1,6−フェナントリレン基、1,7−フェナントリレン基、1,8−フェナントリレン基、1,7−9H−フルオレニレン基、1,6−9H−フルオレニレン基、2,7−ピレニレン基、2,6−ピレニレン基、又は1,8−ピレニレン基などが挙げられる。
【0069】
上記のような芳香族基を採用することにより、環数の増加に伴ってこれら芳香族基に結合したオリゴヌクレオチドの水への溶解性が低下するのを抑制することができる。また、担体上に固定化されたプローブ間の疎水的相互作用によってプローブ同士が絡み合うこともなく、標的遺伝子の検出を容易に実施できる。
【0070】
本発明はまた、オリゴヌクレオチドプローブを合成するための中間体化合物に関する。一実施形態において本発明の中間体は、上記オリゴヌクレオチドプローブにおいて、オリゴヌクレオチド部分がホスホロアミダイトになった構造を有する化合物である。従って、一実施形態において本発明の中間体化合物は、以下の一般式5で表される。
【0071】
【化13】
【0072】
式中、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表し、D’は少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Oは酸素原子を表し、Pはリン原子を表し、R8はリン酸保護基を表し、R9及びR10は有機基であり、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい。
【0073】
R9及びR10は、特に制限されないが、好ましくは炭化水素基であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基が挙げられる。
【0074】
あるいは、R9及びR10は、それらが結合している窒素原子と一緒になって環基を形成していてもよい。該環はR9及びR10が結合している窒素原子の他にさらに複素原子を含んでいてもよい。そのような環は、好ましくは環員5〜8、好ましくは6の環であり、例えば、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環、チオモルホリン環等が挙げられ、好ましくはモルホリン環である。
【0075】
ここでリン酸保護基は、ホスホロアミダイト法に使用されるものであればどのようなものでもよいが、メチル基、2−シアノエチル基、2−トリメチルシリルエチル基、4−オキシペンチル基などを好ましい基として挙げることができる。
【0076】
一実施形態において本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、一般式5においてD’が上記Dと等しい中間体化合物を使用して作成することができる。例えば、Dが一般式2で表される一般式1のオリゴヌクレオチドプローブは、一般式5においてD’がDと等しい中間体化合物を使用して作成することができる。また、Dが一般式2’で表される一般式1のオリゴヌクレオチドプローブは、一般式5においてD’が以下の一般式6で表される中間体化合物を使用して作成することができる。
【0077】
【化14】
【0078】
式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14は上記と同義であり、R15は水酸基保護基を表す。水酸基保護基としては、DNA合成においてリボースの5’位の保護に使用される保護基を使用することができ、例えば、アセチル基、5’−O−4,4’,4’’−トリス(4−ベンゾイルオキシ)トリチル基及びジメトキシトリチル基が挙げられ、ジメトキシトリチル基が好ましい。一般式6においては、R11がBと結合し、R14が酸素原子に結合する。好ましい中間体化合物の具体例を図11に示す。
【0079】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、上記中間体化合物をオリゴヌクレオチドと連結させることにより合成することができる。オリゴヌクレオチドへの中間体化合物の導入は、DNA自動合成機上でオリゴヌクレオチド合成と同時に実施することができる。
【0080】
D’が一般式6で表される一般式5の中間体化合物をオリゴヌクレオチドに導入した後、さらに、オリゴヌクレオチド合成を行うことにより、R13及びR14にオリゴヌクレオチドが連結したオリゴヌクレオチドプローブを製造することができる。また、D’が一般式6で表される一般式5の中間体化合物のオリゴヌクレオチドへの導入と、オリゴヌクレオチドの合成を繰り返し行うことにより、中間体化合物を複数含むオリゴヌクレオチドプローブ、すなわち複数の芳香族基を有するオリゴヌクレオチドプローブを合成することもできる。
【0081】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブ及び上記中間体化合物は、D体及びL体のいずれも合成及び使用することができ、またそれらの混合物でもよい。
【0082】
本発明はまた、上記オリゴヌクレオチドプローブが固定化された担体に関する。該担体は、本発明のオリゴヌクレオチドプローブが有する反応性官能基と共有結合しうる官能基をその表面に有するものであれば特に制限されない。
【0083】
担体の基材としては、例えば、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス及びソーダライムガラスなどのガラス、シリコン、繊維、木材、紙、セラミックス、プラスチック(例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene 樹脂)、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)が挙げられる。本発明においては、ガラス、シリコン、セラミックス、プラスチックを使用するのが好ましい。上記基材の表面に官能基を導入したものを担体として用い、本発明のオリゴヌクレオチドプローブを固定化する。オリゴヌクレオチドプローブの反応性官能基が保護されているときは、保護基を除去してから固定化することが好ましい。
【0084】
オリゴヌクレオチドプローブが有する反応性官能基と共有結合しうる官能基としては、例えば、活性エステル基、エポキシ基、アミノ基、クロロ基、ジスルフィド基、アルデヒド基、マレイイミド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0085】
アミノ基又はその保護された形態を有するオリゴヌクレオチドプローブを固定化する場合は活性エステル基、エポキシ基、アルデヒド基、カルボジイミド基、イソチオシアネート基、イソシアネート基が導入された担体を用いるのが好ましく、メルカプト基又はその保護された形態を有するオリゴヌクレオチドプローブを固定化する場合は、マレイミド基、ジスルフィド基が導入された担体を用いるのが好ましい。
【0086】
担体の形状は、特に制限されず、基盤状、糸状、球状、ビーズ状、多角形状、粉末状、多孔質状などが挙げられ、本発明においては基盤状が好ましい。
【0087】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、ビオチン及び蛍光色素などの標識に結合させることができる。蛍光色素としては、例えば、Cy3及びCy5などのCyDye、FITC、RITC、ローダミン、テキサスレッド、TET、TAMRA、FAM、HEX、ROX、GFPなどが挙げられる。本発明のオリゴヌクレオチドプローブはまた、医薬に結合させることもできる。
【0088】
本発明においては、オリゴヌクレオチドなどの核酸を担体上に固定化する場合、固定化する核酸と、担体への結合に必要な反応性官能基との間に芳香族基を導入することで核酸を担体上に効率よく固定化することができる。また、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは従来のプローブよりも標的核酸との結合効率が高い。また第三に、本発明のオリゴヌクレオチドプローブは、その合成と精製が容易である。
【実施例】
【0089】
本発明のオリゴヌクレオチドプローブを合成するための中間体化合物(以下、アミダイト化合物と称する)を合成し、それをオリゴヌクレオチドに導入し、得られたオリゴヌクレオチドプローブの能力を評価した。
【0090】
オリゴヌクレオチドへ芳香族基を導入するためのユニット(アミダイト化合物:Y2、Y3、Y4、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11)を、図2〜7及び13に示す方法により合成した。
【0091】
Y2は、アミノ基をもたず芳香族基のみを有するアミダイト化合物であり、DNA自動合成機によりY2をオリゴヌクレオチドに導入後、続けて市販品のN−モノメトキシトリチル−6−アミノヘキシルホスホロアミダイト化合物又はトリフルオロアセチル−6−アミノヘキシルホスホロアミダイト化合物(グレンリサーチ社)を用いてアミノ基を導入し、オリゴヌクレオチドの末端に、アミノ基と芳香族基を有する50塩基からなるオリゴヌクレオチドプローブ(X2−Sp;図8)を合成した。
【0092】
Y3、Y5、Y6、Y7、Y8、Y9、Y10、Y11のアミダイト化合物は、分子内にアミノ基を有している。従って、合成アミダイト化合物をオリゴヌクレオチドに導入後に、別途市販のアミノ基結合ホスホロアミダイト化合物を用いてアミノ基を導入する必要がなく、オリゴヌクレオチドプローブの合成が従来よりも一工程短くなるという利点を有している。Y3とY5は、アミノ基と芳香族基の連結部位の構造が異なるものであり、Y6はY5よりもアミノ基と芳香族基の間に、より長い直鎖リンカーを導入したものであり、オリゴヌクレオチドプローブの担体表面からの距離を保つことができる。Y7は、Y6の芳香族基がナフチル基ではなくアントリル基であるアミダイト化合物である。Y8はY5の直鎖リンカーの導入部位が異なるアミダイト化合物であり、アミノ基と芳香族基が近接している。これらを5’末端に有するオリゴヌクレオチドプローブをそれぞれDNA自動合成機により合成した(X3−Sp、X5−Sp、X6−Sp、X7−Sp、X8−Sp、X9−Sp;図8)。
【0093】
芳香族基を有しないオリゴヌクレオチドプローブとして、市販の上記アミノ基結合ホスホロアミダイト化合物を用い、オリゴヌクレオチドの末端にアミノ基を導入したもの(X1−Sp;図8)、オリゴヌクレオチドとアミノ基の間に芳香族基を有しないオリゴヌクレオチドプローブ(X4−Sp;図8)を用い、比較例とした。
【0094】
合成したオリゴヌクレオチドは、逆相カラムを用いて高純度に精製後、オリゴチップ作製のためのスポット溶液に一定濃度に溶解し、ガラス基盤上にスポットし、固定化した。
【0095】
基盤への固定化後、固定化されたオリゴヌクレオチドプローブの3’末端を蛍光標識し、その蛍光強度を測定することで各オリゴヌクレオチドプローブの基盤上での固定化量を定量した。実験の結果から、従来のプローブであるX1−Spよりも芳香族基を有するオリゴプローブ(X2−Sp、X3−Sp、X5−Sp、X6−Sp、X8−Sp)は、固定化量の多いことが明らかとなった(図9a)。
【0096】
次に各オリゴヌクレオチドプローブの溶液中での活性エステル基との反応効率を調べるため、フルオレセインイソチオシアナート及びCy3スクシンイミジルエステルとの反応を行った。その結果、本発明の芳香族基を有するオリゴヌクレオチドプローブは、いずれの蛍光色素とも、従来のオリゴヌクレオチドプローブと比べて高い反応性を示し、溶液中においても化学物質との反応性が向上することが明らかとなった(図9b、c)。
【0097】
Y9アミダイト化合物は、オリゴヌクレオチドの末端でも、又は鎖内にも導入可能な誘導体である(図7)。Y9アミダイト化合物を、末端(X9−Sp25)と鎖内(X9−Sp35)それぞれに導入したオリゴヌクレオチドを合成した。それらについて、他のアミダイトと同様に蛍光色素との反応性(図9c)及びガラス基盤上への固定化効率(図12)について調べた。
【0098】
以下に各アミダイト化合物及びオリゴヌクレオチドプローブの合成方法及び試験方法を具体的に示す。
【0099】
(実施例1)アミダイト化合物の合成
薄層クロマトグラフィーは、Kieselgel 60F254 プレート(Merck)上で行った。カラムクロマトグラフィーにはWakogel C−200(和光純薬工業)を用いた。紫外可視スペクトルは島津UV-2500PC分光光度計を用いて測定した。
【0100】
1H−NMRはテトラメチルシランを内部標準とし、JEOL JNM−EX270を用いて測定した。31P−NMRは無機リン酸を内部標準とし、JEOL JNM−EX270を用いて測定した。
【0101】
(1)アミダイト化合物(Y2)の合成(図2)
(R)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物c)
アルゴン雰囲気下、1−(クロロメチル)ナフタレン(化合物a)2.40ml(16.0mmol)及び(S)−(+)−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール(化合物b)1.85ml(15.0mmol)をトルエンとジオキサンの混合溶液(2:1)90mlに溶解し、粉末状に砕いた水酸化カリウム4.5gを加えて120℃で2.5時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷ました後、酢酸エチル300mlを加えて、水100mlで4回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、得られた黄色オイル状物質に80%酢酸水溶液100mlを加えて溶解し、室温で15時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮した後トルエンとの共沸により酢酸を除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物c)3.24g(収率93%)を白色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 8.12-8.09 (m, 1 H), 7.95-7.86 (m, 2 H), 7.59-7.44 (m, 4 H), 4.93 (s, 2 H), 4.67 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 4.48 (t, 1 H, J = 5.5 Hz), 3.66 (ddddd, 1 H, J = 3.5, 4.8, 5.2, 5.3, 5.9 Hz), 3.56 (dd, 1 H, J = 4.8, 9.7 Hz), 3.45 (dd, 1 H, J = 3.5, 9.7 Hz), 3.39 (ddd, 1 H, J = 5.2, 5.5, 10.9 Hz), 3.34 (ddd, 1 H, J = 5.5, 5.9, 10.9 Hz).
【0102】
(S)−1−O−ジメトキシトリチル−3−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物d)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物c)2.20g(9.50mmol)をピリジン80mlに溶解し、塩化ジメトキシトリチル3.90g(1.2当量)を加え、室温で1時間撹拌した。エタノール10mlを加えて反応を止めた後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル300mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで1回、水100mlで2回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物d)4.59g(収率90%)を淡黄色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.03-7.86 (m, 3 H), 7.55-7.19 (m, 13 H), 6.85-6.81 (m, 4 H), 4.94 (d, 1 H, J = 5.6 Hz), 4.91 (s, 2 H), 3.82 (dddt, 1 H, J = 4.9, 5.3, 5.6, 5.9 Hz), 3.71 and 3.71 (each s, each 3 H), 3.59 (dd, 1 H, J = 4.9, 9.9 Hz), 3.54 (dd, 1 H, J = 5.9, 9.9 Hz), 2.98 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.2 Hz), 2.94 (dd, 1 H, J = 5.9, 9.2 Hz).
【0103】
(S)−1−O−ジメトキシトリチル−3−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール 2−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y2)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−O−ジメトキシトリチル−3−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物d)270mg(0.50mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン0.26ml(3当量)、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト0.22ml(2当量)を加え、室温で30分撹拌した。反応液にクロロホルム60mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液25mlで1回、水25mlで1回、飽和食塩水25mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物Y2)271mg(収率74%)を白色泡状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 149.06, 148.64.
【0104】
(2)アミダイト化合物(Y3)の合成(図3)
(S)−1−アジド−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物e)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物c)1.90g(8.18mmol)をピリジン80mlに溶解し、塩化トシル2.32g(1.5当量)を加えて室温で4時間撹拌した。反応液にエタノール10mlを加えて過剰の試薬を分解した。減圧下溶媒を留去した後、残渣を酢酸エチル300mlに溶解し、水100mlで2回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで1回、水100mlで1回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られたオイル状物質をアルゴン雰囲気下、ジメチルホルムアミド80mlに溶解し、アジ化ナトリウム1.60g(3当量)及び塩化アンモニウム1.75g(4当量)を加えて80℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷ました後、酢酸エチル300mlを加えて、水100mlで5回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物e)1.30g(収率62%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.11-8.06 (m, 1 H), 7.96-7.87 (m, 2 H), 7.59-7.44 (m, 4 H), 5.29 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 4.94 (s, 2 H), 3.83 (dddt, 1 H, J = 3.6, 5.3, 6.3, 6.4 Hz), 3.51 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.9 Hz), 3.46 (dd, 1 H, J = 6.3, 9.9 Hz), 3.29 (dd, 1 H, J = 3.6, 12.6 Hz), 3.21 (ddd, J = 6.4, 12.6 Hz).
【0105】
(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)
(S)−1−アジド−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物e)1.30g(5.05mmol)をエタノール60mlに溶解し、パラジウム−炭素(10%)330mgを加えて、常圧の水素雰囲気化、室温で15時間撹拌した。パラジウム触媒をセライトろ過により除去した後、溶液を減圧下濃縮し、標記化合物(化合物f)1.17g(収率100%)を得た。当化合物は更なる精製をすることなく、後の反応に用いた。
【0106】
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキサノイル]アミノプロパン−2−オール(化合物g)
アルゴン雰囲気下、N−トリフルオロアセチル−6−アミノカプロン酸(化合物f)360mg(1.3当量)と1,1’−カルボニルジイミダゾール235mg(1.2当量)をジメチルホルムアミド、10mlに溶解し、室温で2時間撹拌した。この反応液に(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)280mg(1.21mmol)のジメチルホルムアミド溶液(5ml)を加え、室温でさらに16時間撹拌した。反応液に酢酸エチル70mlを加えて、水25mlで4回、飽和食塩水25mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物g)417mg(収率79%)を白色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.39 (br t, 1 H, J = 4.6 Hz), 8.12-8.08 (m, 1 H), 7.96-7.86 (m, 2 H), 7.73 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 7.59-7.44 (m, 4 H), 4.94 (br s, 1 H), 4.93 (s, 2 H), 3.69 (m, 1 H), 3.45-3.42 (m, 2 H), 3.21 (dt, 1 H, J = 5.6, 13.3 Hz), 3.17 (dt, 2 H, J = 4.6, 7.0 Hz), 3.00 (ddd, 1 H, J = 5.6, 6.6, 13.3 Hz), 2.06 (t, 2 H, J = 7.4 Hz), 1.52-1.41 (m, 4 H), 1.22 (m, 2 H).
【0107】
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキサノイル]アミノプロパン−2−オール 2−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y3)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキサノイル]アミノプロパン−2−オール(化合物g)881mg(2.00mmol)を塩化メチレン20mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト1.27ml(2.0当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液4.9ml(0.45M、1.1当量)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液にクロロホルム100mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液40mlで1回、飽和食塩水40mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y3)831mg(収率65%)を無色オイル状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 148.79.
【0108】
(3)アミダイト化合物(Y5)の合成(図4)
(R)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物h)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物c)1.16g(5.00mmol)をジメチルホルムアミド35mlに溶解し、tert-ブチルジメチルクロロシラン2.26g(3当量)、イミダゾール2.04g(6当量)を加えて室温で21時間撹拌した。反応液にエタノール5mlを加えて過剰の試薬を分解した後、酢酸エチル200mlを加えて、水70mlで4回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られたオイル状物質を塩化メチレン75mlに溶解して0℃に冷却し、トリフルオロ酢酸2.1ml(90%水溶液)を加えて、0℃で1時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液80mlを加えて室温に戻した後、更にクロロホルム150mlを加えて分液した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液80mlで1回、飽和食塩水80mlで1回洗浄し、硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物h)1.70g(収率98%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.10-8.07 (m, 1 H), 7.95-7.85 (m, 2 H), 7.54-7.43 (m, 4 H), 4.95 (d, 1 H, J = 12.3 Hz), 4.90 (d, 1 H, J = 12.3 Hz), 4.60 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 3.79 (dddd, 1 H, J = 4.0, 5.6, 6.0, 6.3 Hz), 3.58 (dd, 1 H, J = 4.0, 9.9 Hz), 3.44 (dd, 1 H, J = 6.3, 9.9 Hz), 3.36 (ddd, 1 H, J = 5.6, 6.0, 11.1 Hz), 3.31 (dt, 1 H, J = 5.6, 11.1 Hz), 0.83 (s, 9 H), 0.02 and 0.00 (each s, each 3 H).
【0109】
(S)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール(化合物i)
アルゴン雰囲気下、(R)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物h)695mg(2.00mmol)及びDMAP50mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド35mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール195mg(0.6当量)を加えて室温で撹拌した。2時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール195mg(0.6当量)を追加してさらに2時間撹拌した。この反応液に1,6−ヘキサンジアミン1.16g(5当量)を加えて室温で15時間撹拌した。反応液に酢酸エチル150mlを加えて、水60mlで4回、飽和食塩水60mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られた残渣をメタノール35mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル1.19ml(5当量)及びトリエチルアミン1.39ml(5当量)を加えて、室温で14時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物i)1.07g(収率92%)を淡黄色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.37 (br s, 1 H), 8.09-8.05 (m, 1 H), 7.95-7.86 (m, 2 H), 7.55-7.43 (m, 4 H), 7.06 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 4.96 (d, 1 H, J = 12.2 Hz), 4.91 (d, 1 H, J = 12.2 Hz), 4.03-3.87 (m, 3 H), 3.56-3.46 (m, 2 H), 3.15 (t, 2 H, J = 6.9 Hz), 2.93 (q, 2 H, J = 6.5 Hz), 1.47-1.34 (m, 4 H), 1.23 (m, 4 H), 0.81 (s, 9 H), 0.15 and -0.01 (each s, each 3 H).
【0110】
(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール(化合物j)
アルゴン雰囲気下、(S)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール(化合物i)1.00g(1.71mmol)をテトラヒドロフラン35mlに溶解して氷冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液2.57ml(1.0M テトラヒドロフラン溶液、1.5当量)を加えた。反応液を室温に戻した後、1時間撹拌した。酢酸0.15ml(1.5当量)を加えて中和した後、反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物j)734mg(収率91%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.38 (br s, 1 H), 8.10-8.06 (m, 1 H), 7.96-7.84 (m, 2 H), 7.58-7.44 (m, 4 H), 7.10 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 5.00 (br s, 1 H), 4.93 (s, 2 H), 3.96 (dd, 1 H, J = 4.6, 10.6 Hz), 3.85 (dd, 1 H, J = 5.9, 10.6 Hz), 3.83 (m, 1 H), 3.50 (m, 2 H), 3.15 (dt, 2 H, J = 5.6, 7.0 Hz), 2.94 (q, 2 H, J = 6.4 Hz), 1.48-1.35 (m, 4 H), 1.24 (m, 4 H).
【0111】
(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール 2−O−(2−シアノエチル−N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y5)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[6−(トリフルオロアセトアミド)ヘキシル]カルバモイル]グリセロール(化合物j)134mg(0.28mmol)を塩化メチレン6.0mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.12ml(1.3当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液0.76ml(0.45M、1.2当量)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液にクロロホルム30mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで1回、飽和食塩水10mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y5)153mg(収率82%)を無色オイル状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 149.53.
【0112】
(4)アミダイト化合物(Y6)の合成(図4)
(S)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物k)
アルゴン雰囲気下、(R)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−1−O−(1−ナフチルメチル)グリセロール(化合物h)790mg(2.28mmol)及びDMAP56mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド35mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール222mg(0.6当量)を加えて室温で撹拌した。1.5時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール222mg(0.6当量)を追加してさらに2.5時間撹拌した。この反応液に4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン2.50ml(5当量)を加えて室温で20時間撹拌した。反応液に酢酸エチル200mlを加えて、水70mlで4回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られた残渣をメタノール40mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル1.36ml(5当量)及びトリエチルアミン1.59ml(5当量)を加えて、室温で24時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物k)1.44g(収率92%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.36 (br s, 1 H), 8.09-8.05 (m, 1 H), 7.96-7.84 (m, 2 H), 7.55-7.43 (m, 4 H), 7.05 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 4.96 and 4.90 (each d, each 1 H, J = 12.2 Hz), 4.06-3.86 (m, 3 H), 3.50-3.34 (m, 14 H), 3.22 (t, 2 H, J = 7.1 Hz), 3.00 (q, 2 H, J = 6.6 Hz), 1.69 (m, 2 H), 1.59 (m, 2 H), 0.81 (s, 9 H), 0.12 and -0.01 (each s, each 3 H).
【0113】
(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物l)
アルゴン雰囲気下、(S)−2−O−(tert−ブチルジメチルシリル)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物k)1.32g(1.92mmol)をテトラヒドロフラン35mlに溶解して氷冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液2.90ml(1.0M テトラヒドロフラン溶液、1.5当量)を加えた。反応液を室温に戻した後、2時間撹拌した。酢酸0.17ml(1.5当量)を加えて中和した後、反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物l)1.07g(収率97%)を無色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.36 (br s, 1 H), 8.10-8.06 (m, 1 H), 7.96-7.87 (m, 2 H), 7.58-7.44 (m, 4 H), 7.09 (t, 1 H, J = 5.5 Hz), 4.99 (d, 1 H, J = 4.9 Hz), 4.94 (s, 2 H), 4.00-3.77 (m, 3 H), 3.51-3.35 (m, 14 H), 3.23 (q, 2 H, J = 6.6 Hz), 3.01 (q, 2 H, J = 6.4 Hz), 1.70 (m, 2 H), 1.61 (m, 2 H).
【0114】
(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール 2−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y6)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(1−ナフチルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物l)260mg(0.45mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.19ml(1.3当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液1.20ml(0.45M、1.2当量)を加え、室温で1時間撹拌した。反応液にクロロホルム30mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで1回、飽和食塩水10mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y6)226mg(収率64%)を無色オイル状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 149.54.
【0115】
(5)アミダイト化合物(Y7)の合成(図5)
(R)−1−O−(9−アントリルメチル)グリセロール(化合物n)
アルゴン雰囲気下、9−(クロロメチル)アントラセン(化合物m)1.36g(6.0mmol)及び(S)−(+)−2,2−ジメチル1,3−ジオキソラン−4−メタノール(化合物b)0.82ml(0.66mmol)をトルエンとジオキサンの混合溶液(2:1)60mlに溶解し、粉末状に砕いた水酸化カリウム2.0gを加えて120℃で1.5時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷ました後、酢酸エチル200mlを加えて、水70mlで3回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、得られた黄色オイル状物質に80%酢酸水溶液60mlを加えて溶解し、室温で18時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮した後トルエンとの共沸により酢酸を除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物n)1.41g(収率83%)を淡黄色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.62 (s, 1 H), 8.45-8.42 (m, 2 H), 8.12-8.09 (m, 2 H), 7.62-7.50 (m, 4 H), 5.46 (s, 2 H), 4.70 (d, 1 H, J = 5.0 Hz), 4.50 (t, 1 H, J = 5.7 Hz), 3.69-3.54 (m, 3 H), 3.36 (ddd, 1 H, J = 4.9, 5.7, 11.2 Hz), 3.31 (ddd, 1 H, J = 5.3, 5.7, 11.2 Hz).
【0116】
(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−(ジメトキシトリチル)グリセロール(化合物o)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(9−アントリルメチル)グリセロール(化合物n)1.25g(4.43mmol)をピリジン35mlに溶解し、塩化ジメトキシトリチル1.80g(1.2当量)を加え、室温で1.5時間撹拌した。エタノール5mlを加えて反応を止めた後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル200mlに溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液70mlで1回、水70mlで2回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物o)2.47g(収率95%)を淡黄色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.63 (s, 1 H), 8.39-8.36 (m, 2 H), 8.12-8.08 (m, 2 H), 7.54-7.46 (m, 4 H), 7.34-7.15 (m, 9 H), 6.78-6.73 (m, 4 H), 5.45 (s, 2 H), 4.92 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 3.79 (m, 1 H), 3.72-3.66 (m, 2 H), 3.69 and 3.68 (each s, each 3 H), 2.93 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.3 Hz), 2.88 (dd, 1 H, J = 5.6, 9.3 Hz).
【0117】
(R)−1−O−(9−アントリルメチル)−2−O−(トリイソプロピルシリル)グリセロール(化合物p)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−(ジメトキシトリチル)グリセロール(化合物o)760mg(1.30mmol)をジメチルホルムアミド10mlに溶解し、トリイソプロピルシリルクロリド0.71ml(2.5当量)、イミダゾール450mg(5当量)を加えて室温で2日間撹拌した。反応液にエタノール5mlを加えて過剰の試薬を分解した後、酢酸エチル200mlを加えて、水70mlで4回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られたオイル状物質をクロロホルム10mlに溶解し、80%酢酸水溶液20mlを加えて、室温で1時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物p)523mg(収率92%)を淡黄色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.62 (s, 1 H), 8.44-8.41 (m, 2 H), 8.12-8.06 (m, 2 H), 7.59-7.49 (m, 4 H), 5.49 and 5.44 (each d, each 1 H, J = 11.5 Hz), 4.59 (t, 1 H, J = 5.4 Hz), 3.81-3.71 (m, 2 H), 3.61 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.7 Hz), 3.37 (dd, 2 H, J = 5.4, 5.6 Hz), 0.91-0.84 (m, 21 H).
【0118】
(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]−2−O−(トリイソプロピルシリル)グリセロール(化合物q)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−(9−アントリルメチル)−2−O−(トリイソプロピルシリル)グリセロール(化合物p)520mg(1.18mmol)及びDMAP30mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール120mg(0.6当量)を加えて室温で撹拌した。2時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール120mg(0.6当量)を追加してさらに2時間撹拌した。この反応液に4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン1.30ml(5当量)を加えて室温で20時間撹拌した。反応液に酢酸エチル130mlを加えて、水50mlで4回、飽和食塩水50mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られた残渣をメタノール20mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル0.71ml(5当量)及びトリエチルアミン0.84ml(5当量)を加えて、室温で24時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物q)773mg(収率84%)を淡黄色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.36 (br s, 1 H), 8.63 (s, 1 H), 8.43-8.40 (m, 2 H), 8.12-8.08 (m, 2 H), 7.59-7.50 (m, 4 H), 7.01 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 5.48 (s, 2 H), 3.99-3.88 (m, 3 H), 3.69 (dd, 1 H, J = 4.9, 9.9 Hz), 3.64 (dd, 1 H, J = 4.6, 9.9 Hz), 3.51-3.35 (m, 12 H), 3.23 (t, 2 H, J = 6.9 Hz), 3.00 (q, 2 H, J = 6.6 Hz), 1.70 (m, 2 H), 1.60 (m, 2 H), 0.90-0.83 (m, 21 H).
【0119】
(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物r)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]−2−O−(トリイソプロピルシリル)グリセロール(化合物q)500mg(0.64mmol)をテトラヒドロフラン12mlに溶解して氷冷し、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液0.96ml(1.0M テトラヒドロフラン溶液、1.5当量)を加えた。反応液を室温に戻した後、1時間撹拌した。酢酸55μl(1.5当量)を加えて中和した後、反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:エタノール−クロロホルム)により精製して標記化合物(化合物r)383mg(収率95%)を淡黄色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.37 (br s, 1 H), 8.63 (s, 1 H), 8.44-8.41 (m, 2 H), 8.12-8.09 (m, 2 H), 7.61-7.50 (m, 4 H), 7.09 (t, 1 H, J = 5.6 Hz), 5.47 (s, 2 H), 5.00 (d, 1 H, J = 4.6 Hz), 3.95 (m, 1 H), 3.89-3.79 (m, 2 H), 3.64 (m, 2 H), 3.50-3.36 (m, 12 H), 3.23 (q, 2 H, J = 6.6 Hz), 3.01 (q, 2 H, J = 6.5 Hz), 1.70 (m, 2 H), 1.61 (m, 2 H).
【0120】
(S)−3−O−(9-アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール 2−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y7)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−O−(9−アントリルメチル)−1−O−[N−[13−トリフルオロアセトアミド−4,7,10−トリオキサトリデカニル]カルバモイル]グリセロール(化合物r)350mg(0.56mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.21ml(1.2当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液1.38ml(0.45M、1.1当量)を加え、室温で1.5時間撹拌した。反応液にクロロホルム60mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液25mlで1回、水25mlで1回、飽和食塩水25mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y7)293mg(収率64%)を淡黄色オイル状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 149.51, 149.43.
【0121】
(6)アミダイト化合物(Y8)の合成(図6)
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン−2−オール(化合物s)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)900mg(3.89mmol)をメタノール50mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル0.93ml(2当量)及びトリエチルアミン1.09ml(2当量)を加えて、室温で3時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物s)860mg(収率68%)を白色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.34 (br t, 1 H, J = 5.7 Hz), 8.12-8.08 (m, 1 H), 7.96-7.87 (m, 2 H), 7.59-7.45 (m, 4 H), 5.12 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 4.94 (s, 2 H), 3.83 (dddt, 1 H, J = 4.6, 5.3, 5.6, 7.7 Hz), 3.50 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.9 Hz), 3.45 (dd, 1 H, J = 5.6, 9.9 Hz), 3.32 (ddd, 1 H, J = 4.6, 5.7, 13.2 Hz), 3.17 (ddd, 1 H, J = 6.1, 7.7, 13.2 Hz).
【0122】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン(化合物t)
アルゴン雰囲気下、(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン−2−オール(化合物s)510mg(1.56mmol)及びDMAP38mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール190g(0.75当量)を加えて室温で撹拌した。2時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール190mg(0.75当量)を追加してさらに2時間撹拌した。この反応液に6−アミノ−1−ヘキサノール550mg(3当量)を加えて室温で2時間撹拌した。反応液に酢酸エチル150mlを加えて、水50mlで4回、飽和食塩水50mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物t)487mg(収率67%)を白色固体状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 9.48 (br s, 1 H), 8.09-8.06 (m, 1 H), 7.96-7.88 (m, 2 H), 7.59-7.44 (m, 4 H), 7.17 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 5.01 (m, 1 H), 4.97 (d, 1 H, J = 11.9 Hz), 4.91 (d, 1 H, J = 11.9 Hz), 4.33 (t, 1 H, J = 5.2 Hz), 3.68-3.57 (m, 2 H), 3.42-3.34 (m, 4 H), 2.93 (dt, 2 H, J = 5.6, 6.9 Hz), 1.42-1.33 (m, 4 H), 1.27-1.20 (m, 4H).
【0123】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン 6’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y8)
アルゴン雰囲気下、(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリフルオロアセトアミドプロパン(化合物t)188mg(0.40mmol)を塩化メチレン8mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.15ml(1.2当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液0.98ml(0.45M、1.1当量)を加え、室温で20分撹拌した。反応液にクロロホルム30mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液10mlで1回、水10mlで1回、飽和食塩水10mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y8)170mg(収率63%)を白色固体状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 147.21.
【0124】
(7)アミダイト化合物(Y9)の合成(図7)
(R)−1−O−トシル−3−O−ジメトキシトリチルグリセロール(化合物u)
アルゴン雰囲気下、(S) −(+) −2,2−ジメチル1,3−ジオキソラン−4−メタノール(化合物b)1.24ml(10.0mmol)をピリジン50mlに溶解し、塩化トシル3.81g(2.0当量)を加えて室温で17時間撹拌した。反応液に水15mlを加えて過剰の試薬を分解した。減圧下溶媒を留去した後、残渣を酢酸エチル350mlに溶解し、水100mlで1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで1回、水100mlで1回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、得られたオイル状物質に80%酢酸水溶液70mlを加えて溶解し、室温で20時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮した後トルエンとの共沸により酢酸を除き、さらにピリジンと共沸した。アルゴン雰囲気下、この残渣をピリジン60mlに溶解し、塩化ジメトキシトリチル4.07g(1.2当量)を加え、室温で2時間撹拌した。エタノール10mlを加えて反応を止めた後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル350mlに溶解し、水100mlで1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mlで1回、水100mlで1回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物u)4.51g(収率82%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 7.74 (m, 2 H), 7.45 (m, 2 H), 7.29-7.13 (m, 9 H), 6.88-6.84 (m, 4 H), 5.28 (d, 1 H, J = 5.6 Hz), 4.04 (dd, 1 H, J = 3.6, 9.6 Hz), 3.96 (dd, 1 H, J = 5.4, 9.6 Hz), 3.78 (m, 1 H), 3.74 (s, 6 H), 2.94 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.2 Hz), 2.83 (dd, 1 H, J = 6.9, 9.2 Hz), 2.39 (s, 3 H).
【0125】
(R)−3−ジメトキシトリチルオキシ−1−アジドプロパン−2−オール(化合物v)
アルゴン雰囲気下、(R)−1−O−トシル−3−O−ジメトキシトリチルグリセロール(化合物u)930mg(1.70mmol)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、アジ化ナトリウム440mg(4当量)及び塩化アンモニウム455mg(5当量)を加えて80℃で2時間加熱撹拌した。反応液を室温まで冷ました後、酢酸エチル150mlを加えて、水50mlで4回、飽和食塩水50mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物v)690mg(収率96%)を黄色オイル状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 7.41-7.18 (m, 9 H), 6.91-6.86 (m, 4 H), 5.31 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 3.81 (dtdd, 1 H, J = 3.6, 5.3, 6.3, 6.6 Hz), 3.73 (s, 6 H), 3.36 (dd, 1 H, J = 3.6, 12.5 Hz), 3.28 (dd, 1 H, J = 6.3, 12.5 Hz), 3.00 (dd, 1 H, J = 5.3, 9.2 Hz), 2.88 (dd, 1 H, J = 6.6, 9.2 Hz).
【0126】
(R)−3−ジメトキシトリチルオキシ−1−アミノプロパン−2−オール(化合物w)
(R)−3−ジメトキシトリチルオキシ−1−アジドプロパン−2−オール(化合物v)620mg(1.48mmol)をエタノール20mlに溶解し、パラジウム−炭素(10%)120mgを加えて、常圧の水素雰囲気化、室温で6時間撹拌した。パラジウム触媒をセライトろ過により除去した後、溶液を減圧下濃縮し、標記化合物(化合物w)548mg(収率94%)を白色泡状物質として得た。当化合物は更なる精製をすることなく、後の反応に用いた。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 7.42-7.21 (m, 9 H), 6.90-6.86 (m, 4 H), 4.71 (br s, 1 H), 3.73 (s, 6 H), 3.55 (dddd, 1 H, J = 4.0, 5.3, 6.0, 6.9 Hz), 2.94 (dd, 1 H, J = 5.3, 8.9 Hz), 2.83 (dd, 1 H, J = 6.0, 8.9 Hz), 2.68 (dd, 1 H, J = 4.0, 12.8 Hz), 2.46 (dd, 1 H, J = 6.9, 12.8 Hz).
【0127】
6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}ナフタレン−2−カルボン酸ペンタフルオロフェニルエステル(化合物x)
アルゴン雰囲気下、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジペンタフルオロフェニルエステル822mg(1.5mmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン0.70ml(4.0mmol)をテトラヒドロフラン70mlに溶解し、この溶液に(R)−3−ジメトキシトリチルオキシ−1−アミノプロパン−2−オール(化合物w)520mg(1.32mmol)のテトラヒドロフラン溶液(10ml)を10分かけて滴下した。室温でさらに1時間撹拌した後、溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物x)664mg(収率67%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 9.01 (m, 1 H), 8.65 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 8.51 (m, 1 H), 8.32 (d, 1 H, J = 8.6 Hz), 8.26 (d, 1 H, J = 8.6 Hz), 8.19 (dd, 1 H, J = 1.7, 8.6 Hz), 8.02 (dd, 1 H, J = 1.7, 8.6 Hz), 7.45-7.42 (m, 2 H), 7.31-7.17 (m, 7 H), 6.87-6.83 (m, 4 H), 5.12 (d, 1 H, J = 5.6 Hz), 3.94 (m, 1 H), 3.69 (s, 3 H), 3.68 (s, 3 H), 3.56 (m, 1 H), 3.29 (m, 1 H), 3.05-2.96 (m, 2 H).
【0128】
6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}−2−{N−[N−(トリフルオロアセチル)−3’’−アミノプロピル]カルバモイル}ナフタレン(化合物y)
アルゴン雰囲気下、6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}ナフタレン−2−カルボン酸ペンタフルオロフェニルエステル(化合物x)640mg(0.84mmol)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、1,3−プロパンジアミン0.70ml(10当量)を加えて室温で30分撹拌した。反応液に酢酸エチル150mlを加えて水50mlで5回洗浄し、有機層を減圧下濃縮した。得られた残渣をアルゴン雰囲気下メタノール15mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル0.50ml(5当量)及びトリエチルアミン0.59ml(5当量)を加えて、室温で14時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物y)440mg(収率70%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6)δ: 9.46 (br s, 1 H), 8.72 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 8.55 (br t, 1 H, J = 5.6 Hz), 8.47 (m, 1 H), 8.41 (m, 1 H), 8.09-8.05 (m, 2 H), 7.99-7.91 (m, 2 H), 7.44-7.41 (m, 2 H), 7.31-7.16 (m, 7 H), 6.86-6.82 (m, 4 H), 5.10 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 3.93 (m, 1 H), 3.68 (s, 3 H), 3.67 (s, 3 H), 3.53 (m, 1 H), 3.41-3.23 (m, 5 H), 2.99 (m, 2 H), 1.81 (m, 2 H).
【0129】
6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}−2−{N−[N−(トリフルオロアセチル)−3’’−アミノプロピル]カルバモイル}ナフタレン 2’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y9)
アルゴン雰囲気下、6−{N−[(R)−3’−ジメトキシトリチルオキシ−2’−ヒドロキシプロピル]カルバモイル}−2−{N−[N−(トリフルオロアセチル)−3’’−アミノプロピル]カルバモイル}ナフタレン(化合物y)298mg(0.40mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、2−シアノエチルテトライソプロピルホスホロジアミダイト0.15ml(1.2当量)、1H−テトラゾールのアセトニトリル溶液0.98ml(0.45M、1.1当量)を加え、室温で2時間撹拌した。反応液にクロロホルム30mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液15mlで2回、飽和食塩水15mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y9)255mg(収率68%)を白色泡状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6)δ: 149.20, 148,95.
【0130】
(8)アミダイト化合物(Y10及びY11)の合成(図13)
(S)−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物α)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)1.82g(7.85mmol)をピリジン75mlに溶解し、塩化モノメトキシトリチル3.15g(1.3当量)を加え室温で7時間撹拌した。エタノール15mlを加えて反応を止めた後、減圧下溶媒を留去した。残渣を酢酸エチル200mlに溶解し、水70mlで1回、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液70mlで1回、水70mlで1回、飽和食塩水70mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物α)2.80g(収率71%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.03-8.00 (m, 1 H), 7.94-7.85 (m, 2 H), 7.54-7.34 (m, 8 H), 7.28-7.12 (m, 8 H), 6.82-6.77 (m, 2 H), 4.94 (d, 1 H, J = 12.2 Hz), 4.88 (d, 1 H, J = 12.2 Hz), 4.80 (d, 1 H, J = 5.3 Hz), 3.82 (m, 1 H), 3.70 (s, 3 H), 3.51 (m, 2 H), 2.39 (br dd, 1 H, J = 7.0, 8.6 Hz), 2.17 (ddd, 1 H, J = 4.6, 8.6, 11.5 Hz), 1.97 (ddd, 1 H, J = 6.6, 7.0, 11.5 Hz).
【0131】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン(化合物β)
アルゴン雰囲気下、(S)−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物α)2.62g(5.20mmol)およびDMAP130mg(0.2当量)をジメチルホルムアミド55mlに溶解し、1,1’−カルボニルジイミダゾール630mg(0.75当量)を加えて室温で撹拌した。2時間後、1,1’−カルボニルジイミダゾール630mg(0.75当量)を追加してさらに3時間撹拌した。この反応液に6−アミノ−1−ヘキサノール1.83g(3当量)を加えて室温で16時間撹拌した。反応液に酢酸エチル300mlを加えて、水100mlで4回、飽和食塩水100mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン)により精製して標記化合物(化合物β)3.07g(収率91%)を白色泡状物質として得た。
1H NMR (270 MHz, DMSO-d6) δ: 8.00-7.85 (m, 3 H), 7.53-7.33 (m, 8 H), 7.28-7.12 (m, 9 H), 6.81-6.77 (m, 2 H), 4.95 (d, 1 H, J = 12.0 Hz), 4.95 (m, 1 H), 4.88 (d, 1 H, J = 12.0 Hz), 4.30 (t, 1 H, J = 5.1 Hz), 3.72-3.68 (m, 5 H), 3.36 (m, 2 H), 2.96 (m, 2 H), 2.38 (t, 1 H, J= 8.1 Hz), 2.18 (m, 2 H), 1.41-1.33 (m, 4 H), 1.26-1.22 (m, 4 H).
【0132】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン 6’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y10)
アルゴン雰囲気下、(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン(化合物β)323mg(0.50mmol)を塩化メチレン10mlに溶解し、N,N−ジイソプロピルエチルアミン0.52ml(6当量)、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスホロアミダイト0.13ml(1.2当量)を加え、室温で30分撹拌した。反応液にクロロホルム50mlを加えて、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液20mlで1回、水20mlで1回、飽和食塩水20mlで1回洗浄し、有機層を硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶液を減圧下濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(中性シリカゲル、溶出溶媒:酢酸エチル−ヘキサン−1%トリエチルアミン)により精製して標記化合物(化合物Y10)310mg(収率73%)を無色飴状物質として得た。
31P NMR (109 MHz, DMSO-d6) δ: 147.27.
【0133】
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン−2−オール(化合物γ)
(S)−1−アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物f)を出発原料とし、塩化モノメトキシトリチルの代りに塩化トリチルを用いて、(S)−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン−2−オール(化合物α)の合成と同様に処理して、標記化合物(化合物γ)を得た。
【0134】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン(化合物δ)
(S)−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン−2−オール(化合物γ)を出発原料とし、(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン(化合物β)の合成と同様に処理して、標記化合物(化合物δ)を得た。
【0135】
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン 6’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y11)
(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−3−(1−ナフチルメトキシ)−1−トリチルアミノプロパン(化合物δ)を出発原料とし、(S)−2−[N−(6’−ヒドロキシヘキシル)カルバモイル]オキシ−1−(モノメトキシトリチル)アミノ−3−(1−ナフチルメトキシ)プロパン 6’−O−(2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロアミダイト)(化合物Y10)の合成と同様に処理して、標記化合物(化合物Y11)を得た。
【0136】
(実施例2)オリゴヌクレオチドプローブの合成と精製
オリゴヌクレオチドの合成はApplied Biosystems394型DNA/RNAシンセサイザー上で行った。
【0137】
HPLCにはGilsonの装置を用い、分析はWaters996フォトダイオードアレイ検出器を用いて行った。逆相分析用カラムとしてWaters μBondasphere C18、300Å(内径3.9mm×長さ150mm)、逆相分取用カラムとしてGL Science Inertsil ODS−3 C18(内径8.0mm×長さ300mm)、陰イオン交換分析用として東ソーTSK−GEL DEAE−2SW(内径4.6mm×長さ250mm)を使用した。移動相として、逆相の場合には0.1M 酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液(TEAA、pH7.0)中アセトニトリル、陰イオン交換の場合には20%アセトニトリル水中ギ酸アンモニウムの濃度勾配を用いた。
【0138】
オリゴヌクレオチドプローブの合成
下記の各オリゴヌクレオチドプローブを、デオキシヌクレオシド3’−ホスホロアミダイト(日本テクノサービス社より購入)を原料として、DNA自動合成機(モデル394A;(株)パーキンエルマージャパン・アプライドバイオシステムズ事業部製)で、0.2又は1μmolスケールで合成した。
Xn−Sp(n=1〜8):5’−Xn−TCTTCCAAGCAATTCCAATGAAAGCCATGACCACATGGACGACGATGATG−3’(配列番号1)
Cy5−AS−Sp:5’−Cy5−ATCGTCATCATCGTCGTCCATGTGGTCATGGCAAACATTGGAATTGCTTGGAAGAGTTTC−3’(配列番号2)
【0139】
X1−Sp及びX4−Spのオリゴヌクレオチドの5’末端に導入するアミノ基にはN−モノメトキシトリチル−6−アミノヘキシルホスホロアミダイト(グレンリサーチ社)を用いた。X2−Sp、X3−Sp、X5−Sp、X6−Sp、X7−Sp、X8−Spのアミノ基の導入は、Y2、Y3、Y5、Y6、Y7、Y8のホスホロアミダイト化合物を用いて行った。合成したオリゴヌクレオチドプローブX1−Sp〜X8−Spの構造を図8に示す。
【0140】
合成終了後、オリゴヌクレオチドプローブは以下のように処理し精製した。濃アンモニア水でCPG(Controlled Pore Glass)よりオリゴヌクレオチドプローブを切り出し、50℃で12時間加温した。溶媒を留去し、脱イオン水に溶解した後、C18(ウォーターズ社製)オープンカラムクロマトグラフィーを行なった(カラムサイズ0.8x18cm:5−50% アセトニトリル、0.1M トリエチルアンモニウムアセテート(以下「TEAA」という)水溶液の溶媒を用いた直線濃度勾配により溶出)。約30%濃度のアセトニトリルで溶出されたフラクションを集め、2mlの80%酢酸水溶液を加え、60分間攪拌した。酢酸を減圧下留去し、水層を酢酸エチルで洗浄した。溶媒を留去後、滅菌水1mlに溶解した。
【0141】
Xn−Sp(n=1〜8)は、逆相HPLCで分取し精製した。逆相HPLCの条件は以下の通りであった:
Xn−Sp(n=1〜6)ではカラム:Inertsil ODS−3(C−18)カラムΦ8.0x300mm(GLScience社製)を使用。
Xn−Sp(n=7、8)ではカラム:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)を使用。
【0142】
【表1】
【0143】
溶液1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
溶液2
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 25% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
【0144】
(実施例3)オリゴヌクレオチドプローブと蛍光色素との反応
Cy5−X1−AS−Spの合成
X1−AS−Sp:5’−X1−ATCGTCATCATCGTCGTCCATGTGGTCATGGCAAACATTGGAATTGCTTGGAAGAGTTTC−3’
X1−AS−Spは、X1−Spと相補的なオリゴヌクレオチドであり、まず上記X1−Spと同様のアミノ基を導入したオリゴヌクレオチドフプローブとして合成し、続いて逆相HPLCにより精製した。
カラム:Inertsil ODS−3(C−18)カラムΦ8.0x300mm(GLScience社製)
【0145】
X1−AS−SpのCy5−スクシンイミジルエステルとの反応
オリゴヌクレオチドプローブ(X1−AS−Sp)(1nmol)とCy5−スクシンイミジルエステル(ファルマシア社製)(500nmol)を10%(v/v)ジメチルホルムアミド、0.25M 炭酸緩衝溶液に溶解し(全量100μL)、遮光し35℃で反応を行った。反応開始16時間後に、NAP10(ファルマシア社)で脱塩した。その後逆相HPLCで分取した。
カラム:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
【0146】
【表2】
【0147】
溶液1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
【0148】
フルオレセインイソチオシアナート(FITC)との反応
オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp:n=1〜8)(1nmol)とFITC(500nmol)を10%(v/v)ジメチルホルムアミド、0.25M 炭酸緩衝溶液に溶解し(全量100μL)、遮光し40℃で反応を開始した。反応開始後30分〜4時間までの任意な時間に15μLはかりとり、NAP5(ファルマシア社)で脱塩した。その後逆相HPLCで分析した。フルオレセインと結合した各オリゴヌクレオチドプローブの逆相HPLCによる分析条件及び結果を表3に示した。
【0149】
【表3】
【0150】
溶媒1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
カラム温度:50度
結果を図9bに示す。
【0151】
(実施例4)オリゴヌクレオチドプローブのスライドガラスへのスポットと結合反応
スライドガラス(20枚)を10%水酸化ナトリウム水溶液(200mL)に15分間浸した後、水(200mLで2回)、1%塩酸水溶液(200mL)、水(200mLで2回)の順で洗浄した。メタノール(200mL)に浸し5分間の超音波洗浄を行い、遠心によって乾燥させ、さらに180度で3時間乾燥した。
【0152】
続いて乾燥させたスライドガラスを3−アミノトリメトキシシラン(13mL)、水(8mL)、メタノール(380mL)中に浸し、室温で少なくとも5時間攪拌下させた。その後スライドガラスを取り出し、メタノール(200mL)で3回洗浄して遠心後、180度で3時間乾燥させた。あらかじめ1,4−フェニレンジイソチオシアネート(1400mg)を10%ピリジン・ジメチルホルムアミド溶液(220mL)に溶解させ、これに上記アミノシラン化を行ったスライドガラスを入れ、室温下16時間攪拌させた。スライドガラスを取り出し、ジメチルホルムアミド(200mL)で2回、ジクロロメタン(200mL)、アセトン(200ml)、メタノール(200mL)の順で洗浄し、減圧下室温で乾燥させ、イソチオシアネート化されたスライドガラスを得た。
【0153】
続いてイソチオシアネート化されたスライドガラスをガラス容器に敷き、そこに20又は30%トリス(3−アミノプロピル)アミン・メタノール溶液(130μL)を滴下し、密封して37度で5時間反応させた。その後スライドガラスをメタノール(200mL)で2回、アセトン(200mL)で1回洗浄した。減圧下室温で1時間乾燥させた後、あらかじめ1,4−フェニレンジイソチオシアネート(1400mg)を10%ピリジン・ジメチルホルムアミド溶液(220mL)に溶解させた溶液中にそのスライドガラスを入れ、室温下16時間攪拌させた。スライドガラスを取り出し、ジメチルホルムアミド(200mL)で2回、ジクロロメタン(200mL)、アセトン(200ml)、メタノール(200mL)の順で洗浄し、減圧下室温で乾燥させ、2層目のイソチオシアネート化されたスライドガラスを得、これをオリゴヌクレオチドのスポットに供した。
【0154】
50塩基オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp)(50〜300pmol)を滅菌水(5μl)に溶解し、スポット溶液(5μl;1M 炭酸緩衝液(pH9.0))と混合させ、スポッター(SPBIO2000、日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社製)によって1,4−フェニレンジイソチオシアネートをコーティングしたコーティング済みスライドガラス上にスポットした。スポット後タイトボックスにろ紙を敷き、300mM リン酸水素二ナトリウム水溶液を湿らせ、溶液が付かないようにスポット済みのスライドガラスを入れ、密閉後室温で放置した。16時間後タイトボックスからスライドガラスを取り出し、スライドガラスを0.1% Triton X(200mL)で室温5分間、0.02%塩酸水溶液(200mL)で室温2分間、0.1M 塩化カリウム(200mL)で室温10分間、滅菌水(200mL)で室温1分間洗浄した。
【0155】
続いて1M エタノールアミン水溶液(200mL)にガラスを浸し、室温で1時間攪拌しブロッキングを行った。滅菌水で3回洗浄後、ドラフト内で乾燥させて冷蔵保存した。
【0156】
(実施例5)オリゴヌクレオチドプローブのスライドガラス上への固定化の確認
40μM TexasRed−ddATP (2μL)、ジメチルスルホキシド(10μL)、25mM 塩化コバルト溶液(10μL)、反応緩衝溶液(x5、1M カコジル酸カリウム、125mM トリス−塩酸、1.25mg/ml BSA、pH6.6;20μL)、ターミナルトランスフェレース(1μL;400units)に滅菌水を加えて全量80μlとした反応溶液を調製後、直ちに実施例4のスライドガラスに全量滴下した。カバーガラスを反応液上にのせ、37度で放置した。15分後1XSSC緩衝液(0.15M NaCl、0.03M クエン酸二水和物)、0.1%SDS溶液で60℃、10分間、ミリ給水洗浄、エタノール水溶液で洗浄し乾燥させ検出機(スキャンアレイ)で測定した(図9a)。
【0157】
(実施例6)担体上でのハイブリダイゼーション
Cy5−X1−AS−Sp(4.8pmol)に20XSSC(0.6μl)、10%SDS(1.2μl)、及び滅菌水を加え全量24μlのプローブ溶液を作製した。そのプローブDNA溶液を静かに実施例4で作製したDNAチップ上にのせた後、カバーグラスを溶液上にのせ、4XSSC溶液で湿らせたキムタオルを敷いたタイトボックス内に入れ、40度又は60度で16時間放置した。
【0158】
ハイブリダイゼーション後、チップを0.1×SSC−0.1%SDS溶液(200mL)に5分間、0.05xSSC−0.1%SDS溶液(200mL)に10分間、続いて0.05xSSC(200mL)でそれぞれ室温で洗浄した。乾燥させた後、チップスキャナー(Scan Array、A Packard BioScience Companyの商品名)で検出した。結果を図10に示す。
【0159】
ハイブリダイゼーションの結果から、X1−SpやX4−Spと比べて、本発明のオリゴヌクレオチドプローブ用いた場合は、より好感度に検出できることが明らかとなった。
【0160】
(実施例7)25塩基オリゴヌクレオチドの合成
Xn−Sp(n=1〜8)と同様の方法でXn−Sp25(n=1、3〜9)及びX9−Sp35を合成し、精製した。
それぞれの逆相HPLCの条件は以下の通りであった:
【0161】
【表4】
【0162】
溶液1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
溶液2
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 25% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
カラムA:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
カラムB:Inertsil ODS−3(C−18)カラムΦ8.0x300mm(GLScience社製)
Xn−Sp25(n=1、3〜9):
5’−Xn−TCTTCCAAGCAATTCCAATGAAAGC−3’(配列番号3)
X9−Sp35:
5’−AGCAAGAAAC−Xn−TCTTCCAAGCAATTCCAATGAAAGC−3’(配列番号4)
【0163】
(実施例8)25塩基オリゴヌクレオチドプローブと蛍光色素との反応
フルオレセインイソチオシアナート(FITC)との反応
オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp25:n=1、3〜9;X9−Sp35)(1nmol)とFITC(500nmol)を10%(v/v)ジメチルホルムアミド、0.25M 炭酸緩衝溶液に溶解し(全量100μL)、遮光し40℃で反応を開始した。反応開始後30分〜4時間までの任意な時間に15μLはかりとり、NAP5(ファルマシア社)で脱塩した。その後逆相HPLCで分析した。各オリゴヌクレオチドプローブの逆相HPLCによる分析条件を下記に示した。またFITCの生成率の結果を図9cに示した。
【0164】
HPLC条件
溶媒
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0);
カラム温度:50度
カラム:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
【0165】
(実施例9)
実施例4と同様に表面をコーティングしたスライドガラスに対し、25塩基オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp25;n=1、5、9)(50又は100pmol)を滅菌水(5μl)に溶解し、スポット溶液(5μl;1M 炭酸緩衝液(pH9.0))と混合させ、スポッター(SPBIO2000、日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社製)によって1,4−フェニレンジイソチオシアネートをコーティングしたコーティング済みスライドガラス上にスポットした。スポット後タイトボックスにろ紙を敷き、300mM リン酸水素二ナトリウム水溶液を湿らせ、溶液が付かないようにスポット済みのスライドガラスを入れ、密閉後室温で放置した。16時間後タイトボックスからスライドガラスを取り出し、スライドガラスを0.1% Triton X(200mL)で室温5分間、0.02%塩酸水溶液(200mL)で室温2分間、0.1M 塩化カリウム(200mL)で室温10分間、滅菌水(200mL)で室温1分間洗浄した。
【0166】
続いて1M エタノールアミン水溶液(200mL)にガラスを浸し、室温で1時間攪拌しブロッキングを行った。滅菌水で3回洗浄後、ドラフト内で乾燥させて冷蔵保存した。
【0167】
(実施例10)オリゴヌクレオチドプローブのスライドガラス上への固定化の確認
40μM TexasRed−ddATP (2μL)、ジメチルスルホキシド(10μL)、25mM 塩化コバルト溶液(10μL)、反応緩衝溶液(x5、1M カコジル酸カリウム、125mM トリス−塩酸、1.25mg/ml BSA、pH6.6;20μL)、ターミナルトランスフェレース(1μL;400units)に滅菌水を加えて全量80μlとした反応溶液を調製後、直ちに実施例9のスライドガラスに全量滴下した。カバーガラスを反応液上にのせ、37℃で放置した。15分後1XSSC緩衝液(0.15M NaCl、0.03M クエン酸二水和物)、0.1%SDS溶液で60℃、10分間、ミリ給水洗浄、エタノール水溶液で洗浄し乾燥させ検出機(スキャンアレイ)で測定した(図12)。
【0168】
(実施例11)オリゴヌクレオチド(X10−Sp25)の合成と、緩和な条件での脱保護実験
実施例1で合成したアミダイト化合物(Y10)を用い、Xn−Sp(n=1〜8)と同様の方法で、X10−Sp25を合成し、精製した。
Xn−Sp(n=8、10)
5’−Xn−TCTTCCAAGCAATTCCAATGAAAGC−3’(配列番号3)
それぞれの逆相HPLCの条件は以下の通りであった:
【0169】
【表5】
【0170】
溶液1
A溶液 5% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
B溶液 50% アセトニトリル/0.1M TEAA(pH7.0)
カラム温度:50度
カラムA:μ−ボンダスフィアー(C−18)カラムΦ3.9x150mm(ウォーターズ社製)
【0171】
X10−Sp25はモノメトキシトリチル基(MMTr)によってアミノ基が保護されている。このオリゴヌクレオチドに10%酢酸水溶液(1mL)を加え、室温で5分間処理した。反応液を減圧下濃縮し、さらに水を加えて減圧下共沸した。共沸を3度繰り返し行った後、残渣を滅菌水1mLに溶解し、逆相HPLCによって分析した(図14b、c)。以上から、X10−Sp25が緩和な酸性条件によって脱保護され、X8−Sp25と同じ構造になったことがわかる(図14a)。
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明により、DNAチップの低価格化が可能になり、広く遺伝子診断技術の手段としてのDNAチップの普及に寄与することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】従来のオリゴヌクレオチドプローブと本発明のオリゴヌクレオチドプローブの構造を示す。
【図2】アミダイト化合物(Y2)の合成方法を示す。
【図3】アミダイト化合物(Y3)の合成方法を示す。
【図4】アミダイト化合物(Y5、6)の合成方法を示す。
【図5】アミダイト化合物(Y7)の合成方法を示す。
【図6】アミダイト化合物(Y8)の合成方法を示す。
【図7】アミダイト化合物(Y9)の合成方法を示す。
【図8】オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp)の構造を示す。
【図9】オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp)のガラス基盤への固定化量(a)とFITCとの反応性(b:50塩基オリゴヌクレオチド、c:25塩基オリゴヌクレオチド)を示す。
【図10】実施例6におけるハイブリダイゼーションの結果を示す。
【図11】中間体化合物の具体例を表す。
【図12】25塩基オリゴヌクレオチドプローブ(Xn−Sp25;n=1、5、9)と両側にオリゴヌクレオチドをもつプローブ(X9−Sp35)のガラス基盤への固定化量の測定結果を示す。
【図13】アミダイト化合物(Y10、Y11)の合成方法を示す。
【図14】X10−Sp25の配列とX10−Sp25の脱保護反応のスキーム(a)、X10−Sp25を逆相HPLC分析した結果(b)、及びX10−Sp25を酸処理した後、逆相HPLC分析した結果(c)を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0174】
配列番号1〜4 合成オリゴヌクレオチド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1:
B−D−A (1)
(式中、Aはオリゴヌクレオチドを表し、Dは少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表す)
で表されるオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項2】
芳香族基が置換又は無置換の1〜5環性芳香族炭化水素基である請求項1記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項3】
芳香族基が置換又は無置換のフェナントレン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環又はピレン環を含むものである請求項2記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項4】
Dが複素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐の置換又は無置換の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの芳香族基を有する請求項1〜3のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項5】
Dが主鎖に二価の芳香族基を含む請求項1〜4のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項6】
Dが側鎖に芳香族基を有する請求項1〜4のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項7】
Dが一般式2で表される請求項6記載のオリゴヌクレオチドプローブ:
【化1】
(式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す)。
【請求項8】
R2が一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表され、
R3が一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表され、
R4は、直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−であり、
R5及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【化2】
を表し、
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、
n、w、i、qはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、
R7は水素原子又はリン酸保護基を表す、
請求項7記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項9】
Lが置換又は無置換のフェナントリル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基又はピレニル基である請求項7又は8記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項10】
Dが側鎖にさらなるオリゴヌクレオチドを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項11】
Dが一般式2’で表される請求項5記載のオリゴヌクレオチドプローブ:
【化3】
(式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、A’は水酸基又はオリゴヌクレオチドを表す)。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブが固定化された担体。
【請求項13】
一般式5:
【化4】
(式中、D’は少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表し、Oは酸素原子を表し、Pはリン原子を表し、R8はリン酸保護基を表し、R9及びR10は有機基であり、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい)
で表される化合物。
【請求項14】
芳香族基が置換又は無置換の1〜5環性芳香族炭化水素基である請求項13記載の化合物。
【請求項15】
芳香族基が置換又は無置換のフェナントレン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環又はピレン環を含むものである請求項14記載の化合物。
【請求項16】
D’が複素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐の置換又は無置換の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの芳香族基を有する請求項13〜15のいずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
D’が主鎖に二価の芳香族基を含む請求項13〜16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
D’が側鎖に芳香族基を有する請求項13〜16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
D’が一般式2で表される請求項18記載の化合物:
【化5】
(式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す)。
【請求項20】
R2が一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表され、
R3が一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表され、
R4は、直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−であり、
R5及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【化6】
を表し、
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、
n、w、i、qはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、
R7は水素原子又はリン酸保護基を表す、
請求項19記載の化合物。
【請求項21】
Lが置換又は無置換のフェナントリル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基又はピレニル基である請求項19又は20記載の化合物。
【請求項22】
D’が一般式6で表される請求項17記載の化合物:
【化7】
(式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、R15は水酸基保護基を表す)。
【請求項1】
一般式1:
B−D−A (1)
(式中、Aはオリゴヌクレオチドを表し、Dは少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表す)
で表されるオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項2】
芳香族基が置換又は無置換の1〜5環性芳香族炭化水素基である請求項1記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項3】
芳香族基が置換又は無置換のフェナントレン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環又はピレン環を含むものである請求項2記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項4】
Dが複素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐の置換又は無置換の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの芳香族基を有する請求項1〜3のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項5】
Dが主鎖に二価の芳香族基を含む請求項1〜4のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項6】
Dが側鎖に芳香族基を有する請求項1〜4のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項7】
Dが一般式2で表される請求項6記載のオリゴヌクレオチドプローブ:
【化1】
(式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す)。
【請求項8】
R2が一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表され、
R3が一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表され、
R4は、直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−であり、
R5及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【化2】
を表し、
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、
n、w、i、qはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、
R7は水素原子又はリン酸保護基を表す、
請求項7記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項9】
Lが置換又は無置換のフェナントリル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基又はピレニル基である請求項7又は8記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項10】
Dが側鎖にさらなるオリゴヌクレオチドを有する、請求項1〜6のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項11】
Dが一般式2’で表される請求項5記載のオリゴヌクレオチドプローブ:
【化3】
(式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、A’は水酸基又はオリゴヌクレオチドを表す)。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項記載のオリゴヌクレオチドプローブが固定化された担体。
【請求項13】
一般式5:
【化4】
(式中、D’は少なくとも1つの芳香族基を有する二価の有機基を表し、Bは反応性官能基又はその保護された形態を表し、Oは酸素原子を表し、Pはリン原子を表し、R8はリン酸保護基を表し、R9及びR10は有機基であり、それらが結合している窒素原子と一緒になって環を形成していてもよい)
で表される化合物。
【請求項14】
芳香族基が置換又は無置換の1〜5環性芳香族炭化水素基である請求項13記載の化合物。
【請求項15】
芳香族基が置換又は無置換のフェナントレン環、フルオレン環、ナフタレン環、アントラセン環又はピレン環を含むものである請求項14記載の化合物。
【請求項16】
D’が複素原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐の置換又は無置換の二価の炭化水素基であって、少なくとも1つの芳香族基を有する請求項13〜15のいずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
D’が主鎖に二価の芳香族基を含む請求項13〜16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
D’が側鎖に芳香族基を有する請求項13〜16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
D’が一般式2で表される請求項18記載の化合物:
【化5】
(式中、Lは芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R2、R2’及びR3はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表す)。
【請求項20】
R2が一般式3:
−R4−(CH2)m−R5−(CH2)n− (3)
で表され、
R3が一般式4:
−(CH2)t−R6−(CH2)w− (4)
で表され、
R4は、直接結合又は−(CH2)i−(OCH2CH2)q−O−であり、
R5及びR6は、それぞれ独立して、直接結合又は以下に示す基:
【化6】
を表し、
m、tは、それぞれ独立して0〜20の整数を表し、
n、w、i、qはそれぞれ独立して1〜20の整数を表し、
R7は水素原子又はリン酸保護基を表す、
請求項19記載の化合物。
【請求項21】
Lが置換又は無置換のフェナントリル基、フルオレニル基、ナフチル基、アントリル基又はピレニル基である請求項19又は20記載の化合物。
【請求項22】
D’が一般式6で表される請求項17記載の化合物:
【化7】
(式中、Lは二価の芳香族基を表し、R1は水素原子又は置換基を表し、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ独立して、直接結合又は複素原子を含んでいてもよい置換若しくは無置換の二価の炭化水素基を表し、R15は水酸基保護基を表す)。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−81534(P2006−81534A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336414(P2004−336414)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(501002172)株式会社DNAチップ研究所 (33)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(501002172)株式会社DNAチップ研究所 (33)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】
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