説明

オリゴヌクレオチドマイクロアレイ

本発明は、短い化学的に修飾されたRNAオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドマイクロアレイ、およびゲノムミクス用途におけるかかるマイクロアレイの使用に関する。より具体的には、本発明は、表面および多数のオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドアレイを提供し、ここで、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドが2’OH位に少なくとも1個の修飾糖部分を有する。さらに具体的には、本発明のマイクロアレイは、低分子RNAの検出に有用である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、短い化学的に修飾されたRNAオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドマイクロアレイ、およびゲノミクス用途におけるかかるマイクロアレイの使用に関する。
【0002】
発明の背景
生体高分子のマイクロアレイは、生物医学研究における有益な手段となっている。マイクロアレイ技術は、マイクロアレイが、費用効果が高くかつ望ましい融通性および品質保証を備えて研究者に提供され得る点で優れている(Barrett J Carl; Kawasaki Ernest S Microarrays: the use of oligonucleotides and cDNA for the analysis of gene expression. Drug Discovery Today, 2003, 8, 134−41)。例えば、抗体または酵素アレイを含むタンパク質またはペプチドアレイなどの、様々な型の利用可能な生体高分子アレイを備える多くのマイクロアレイ基板がある。他の利用可能なマイクロアレイ基板を用いるDNAアレイには、その表面に結合するオリゴヌクレオチドプローブの形態により異なるいくつかの型がある:例としては、通常固体支持体表面にスポットされる長いポリヌクレオチドを用いるcDNAアレイ、アレイ表面にスポットされるかまたは末端結合を介して結合されるどちらかの長い(例えば、40−80ヌクレオチドの)オリゴヌクレオチド、およびインサイチュウで合成される短い(例えば、25−ヌクレオチド(nt)の)オリゴヌクレオチド(例えば、アフィメトリクス社)から構成されるDNAオリゴヌクレオチドアレイが含まれる。実験手段としてのDNAマイクロアレイの能力は、相補的塩基対合による特異的分子認識に依存し、それはDNAマイクロアレイを高性能の遺伝子発現の同時分析に非常に有用であるようにする。ポストゲノム時代において、マイクロアレイは、発現プロファイリング、一塩基多型(SNP)検出、DNAシークエンシングおよび大規模な遺伝子型解析などの多くのハイブリダイゼーションに基づくアッセイの発展に重要な手段となっている。
【0003】
近年、真核細胞は、約18から約25ヌクレオチドの短いRNAを多く含むことが発見された。かかる短いRNAは、例えば、RNA干渉(RNAi)のエフェクター、または転写後段階での遺伝子発現の調節因子として作用する。RNAiは、長い二本鎖(ds)RNAを、20から23ヌクレオチドの短い干渉dsRNA(siRNA)に変換することに基づく、進化的に保存された過程であり、それは標的mRNAの分解を介して遺伝子を沈黙させる。他の短いRNAには、ミクロRNA(miRNA)および小さな一時的RNA(stRNA)(miRNAのより大きな群の下位集団)が含まれ、それらは、内生的にコードされたヘアピン前駆体(70から100ヌクレオチドまたはそれ以上)から一本鎖の18から25ヌクレオチドRNAとして加工され、標的mRNAの3’−UTRへの塩基対形成を介する翻訳抑制により機能するように見える(Lau N C; Lim L P; Weinstein E G; Bartel D P; Science (2001), 294, 858−62)。
【0004】
約200の異なるmiRNAが、これまでに植物、線虫、ショウジョウバエおよび哺乳動物にて同定されているが、stRNAであるlin−4およびlet−7のみが、線虫の幼虫生長にて翻訳レベルで遺伝子発現のタイミング調節を制御することが十分に立証されている。脊椎動物にて、多くのmiRNAの発現は、重要な生長特異的パターンまたは組織特異的パターンを有するが、現在のところ、ほんの少しの機能のみしか立証されていない。miRNAの数および多様性が増え続けていることは(Lim, Lee P.; Glasner, Margaret E.; Yekta, Soraya; Burge, Christopher B.; Bartel, David P. Vertebrate microRNA genes. Science 2003, 299, 1540)、miRNAが、生長のタイミング以外の様々な経路に重要な役割を果たすことを主張する。このことは、ショウジョウバエにてmiRNAが、細胞死および増殖の制御に関与し、そして正常な脂質代謝に必要であるという発見により支持される(Xu et al., 2003; see Current Biol. 13, 790−795 (2003); Brennecke et al., 2003 (Cell 113, 25−36 (2003))。さらに、miRNAは、ヒト疾患に関連するようである。ショウジョウバエにて行われた最近の研究は、RNAi/miRNA経路と、脆弱X症候群(精神遅滞の最も一般的な遺伝型)に影響するヒトタンパク質FMR1の相同体であるタンパク質dFMR1を関連付けている(Caudy, Amy A.; Myers, Mike; Hannon, Gregory J.; Hammond, Scott M. Fragile X−related protein and VIG associate with the RNA interference machinery. Genes & Development 2002, 16, 2491−2496)。加えて、染色体13q14に位置する2個のmiRNAが、B細胞慢性リンパ性白血病(B−CLL)の大多数で欠失または下方制御されることが分かっている(Calin George Adrian et al.; PNAS 2002, 99, 15524−9)。
【0005】
生物学的過程における短いRNAの役割、特に疾患におけるそれらの役割を明らかにするために、短いRNAの検出のための手段が必要とされる。かかる手段は、理想的には、真核細胞にて様々な短いRNAの同時分析を可能とすべきである。しかしながら、短い長さおよび少ない量のため、かかるRNAの分析は、現在利用可能な手段では困難であり、かつ多大な時間を要する。本発明はここに、短いRNAの検出を可能とし、よって、短いRNAの役割および機能の解明に特に有用な新しい手段を提供する。本開示内容に鑑みて当業者には明らかであるように、この手段の適用は、短いRNAの検出および分析に限定されず、核酸の検出または分析全般に用いることができる。
【0006】
発明の概要
第一の局面にて、本発明は、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドが、少なくとも1個の修飾糖部分を有する、表面および多数のオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドアレイを提供する。1つの態様にて、該オリゴヌクレオチドの糖部分の2’−OH基は、置換される。好ましくは、該糖部分は、2’位に、F;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;O−、S−、またはN−アルキニル;または、O−アルキル−O−アルキル(ここで、前記アルキル、アルケニルおよびアルキニルが、置換または非置換CからC10アルキルまたはCからC10アルケニル、アルキニルまたはアルコキシアルキルであり得る)、CからC10低級アルキル、置換CからC10低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルまたはO−アラルキル、SH、SCH、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノを含む。
【0007】
好ましい態様にて、該糖部分は、2’−MOE、2’−DMAOE、2’−メトキシまたは2’−アミノプロポキシを含む。
もう1つの局面にて、本発明は、(a)生物学的試料を提供する工程(ここで、該試料は短いRNAを含む);(b)該試料を本発明のオリゴヌクレオチドアレイと接触させる工程;(c)短い内生RNAと前記アレイ中のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション反応を行う工程を含む、短いRNAの検出のための方法を提供する。
【0008】
さらなる局面にて、本発明は、(a)生物学的試料を提供すること(ここで、該試料は短いRNAを含む);(b)該試料を本発明のオリゴヌクレオチドアレイと接触させること(ここで、該試料は短いRNAの検出に適する所定の配列セットを含む);(c)得られるハイブリダイゼーションパターンと標準ハイブリダイゼーションパターンを比較することを含む、生物学的試料を生物学的状態と関連付ける方法を提供する。
【0009】
もう1つの局面にて、本発明は、(a)生物学的試料を提供すること、(b)短いRNAの検出に有用な定義された配列セットに対応する本発明のオリゴヌクレオチドアレイを接触させること、(c)ハイブリダイゼーションパターンを得ること、(d)該ハイブリダイゼーションパターンと標準ハイブリダイゼーションパターンを比較すること(ここで、特定のパターンの存在または不存在は、疾患を発症する可能性または疾患の存在の指標である)を含む、疾患の予後診断または診断のための方法を提供する。
【0010】
図面の簡単な説明
図1は、7個のRNA試料と1MMおよび2MMのキャプチャープローブとのハイブリダイゼーションが示す強度値を、個々のマッチ配列から得られた強度に標準化したものである。強度を、密度(平均)−バックグラウンド(平均)として定義する。Cy5標識RNAとハイブリダイズしたMOEプローブでの改善されたミスマッチ識別力が、ハイブリダイゼーション温度を37℃から42℃に上げることで得られた。同じ条件下、同じ長さの標準DNAプローブは、全くシグナル強度を示さなかった。
【0011】
発明の詳しい説明
本明細書中に引用されるすべての特許出願、特許および文献は、参照によりその全体が本明細書に含まれる。
【0012】
本発明は、高い感受性および選択性を有するオリゴヌクレオチドマイクロアレイを提供し、それは短い核酸分子の検出に特に有用である。今までのところ、短いRNAなどの短い核酸の検出および分析は、かかる核酸の長さが短く、かつ存在量が少ないために困難であることが分かっている。現在利用可能なヌクレオチドマイクロアレイは、それらの感受性および/または選択性が短いRNAの検出には弱すぎるため適した手段ではない。これに対して、本発明は、短いオリゴヌクレオチド、特に短いRNAの検出に特に適するオリゴヌクレオチドマイクロアレイを提供する。
【0013】
本明細書中に用いる、用語“オリゴヌクレオチド”および“オリゴリボヌクレオチド”は同義的に用いられ、リボヌクレオチド残基またはデオキシリボヌクレオチド残基からなるポリマーを意味する。リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド残基の両方から成るポリマーもまた、本発明に従って“オリゴヌクレオチド”および“オリゴリボヌクレオチド”の意味する範囲内にある。
【0014】
本明細書中、以下に同義的に用いられる用語“オリゴヌクレオチドアレイ”または“アレイ”または“マイクロアレイ”は、硬い表面に別の既知の位置で結合する多数のオリゴヌクレオチドを有する少なくとも1個の表面を備える基板、好ましくは固体の基板を示す。オリゴヌクレオチドアレイは一般に、1cmに対して少なくとも100個のオリゴヌクレオチドの密度を有する。ある態様にて、前記アレイは、1cmに対して、少なくとも約500、少なくとも1000、少なくとも10000、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10個のオリゴヌクレオチドの密度を有する。
【0015】
第一の局面にて、本発明は、表面および多数のオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドアレイに関し、ここで該オリゴヌクレオチドアレイは、少なくとも1個の修飾糖部分を有する少なくとも1個のオリゴヌクレオチド(以下、修飾オリゴヌクレオチドと称する)を含む。好ましくは、前記オリゴリボヌクレオチドは、少なくとも2個、より好ましくは少なくとも5個、または少なくとも10個の修飾糖部分を含む。特定の態様にて、オリゴヌクレオチドのすべての糖部分は修飾されているか、または他のさらなる好ましい態様にて、オリゴヌクレオチドの1、2、3または4個の糖部分以外のすべては、修飾されている。前記オリゴヌクレオチドアレイは一般に、少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、少なくとも33%、少なくとも50%、少なくとも66%、少なくとも75%、少なくとも90%または少なくとも95%の修飾糖部分を含むオリゴヌクレオチドを含む。特に好ましい態様にて、オリゴヌクレオチドアレイは、100%修飾オリゴヌクレオチドを含む。
【0016】
本発明のオリゴヌクレオチドマイクロアレイは、1個またはそれ以上の修飾糖部分を有するオリゴヌクレオチドを含む。好ましい態様にて、前記糖部分は、糖部分の2’−OH基にて修飾される。様々な2’−OH置換基が当技術分野で公知である(Uhlmann, Eugen. Recent advances in the medicinal chemistry of antisense oligonucleotides. Current Opinion in Drug Discovery & Development (2000), 3(2), 203−213、およびUhlmann, Eugen; Peyman, Anusch. Antisense oligonucleotides: a new therapeutic principle. Chemical Reviews (Washington, DC, United States) (1990), 90(4), 543−84に記載の修飾を参照のこと)。他の好ましい態様にて、糖部分の4’−Cは修飾されておらず、より好ましい態様にて、前記オリゴヌクレオチドには、構造的にロックされた核酸(locked nucleic acid)は含まれない(LNA、例えば(Rajwanshi, Vivek K.et al; The eight stereoisomers of LNA (locked nucleic acid): a remarkable family of strong RNA binding molecules. Angewandte Chemie, International Edition (2000), 39(9), 1656−1659)を参照のこと)。
【0017】
本発明に従い、好ましい修飾糖部分には、2’位に以下:F;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;O−、S−、またはN−アルキニル;O−、S−、またはN−アリール;または、O−アルキル−O−アルキルのうち1つが含まれ、ここで前記アルキル、アルケニルおよびアルキニルが、置換または非置換CからC10アルキルまたはCからC10アルケニルおよびアルキニルであり得る。他の好ましいオリゴヌクレオチドには、その糖部分の2’位に、以下:低級アルキル、置換CからC10低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルまたはO−アラルキル、SH、SCH、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノのうち1個またはそれ以上が含まれる。他の好ましい態様にて、前記修飾糖部分には、2’−O、4’−C−メチレン結合は含まれない。O[(CH2)O]CH、O(CHOCH、O(CHNH、O(CHNR、O(CHCH、O(CHONH、および/またはO(CHON[(CHCH)](ここで、nおよびmは、1から約10である)で置換される糖部分が、特に好ましい。他の好ましい修飾には、アルコキシアルコキシ基、特に2’−メトキシエトキシ(2’−O−CH2 CH2 OCH3、2’−O−(2−メトキシエチルまたは2’−MOEとしても公知)が含まれる(Martin et al., Helv. Chim. Acta, 1995, 78, 486−504)。さらに好ましい修飾には、2’−ジメチルアミノオキシエトキシ、すなわち、2’−DMAOE、2’−メトキシ(2’−O−CH)、2’−アミノプロポキシ(2’−OCH CH CH NH)としても公知のO(CHON(CH基が含まれる。当業者は、かかる修飾糖構造を作製するために常套法を用いることができる。かかる修飾糖構造の製造を教示する代表的な米国特許には、米国特許番号第4,981,957号;第5,118,800号;第5,700,920号および第5,969,116号(それぞれ、参照によりその全体が本明細書中に含まれる)が含まれるが、それらに限定されない。
【0018】
所定の化合物のすべての位置が一様に修飾される必要はなく、実際に、2以上の上記の修飾が、単一の化合物にかまたはオリゴヌクレオチド内の単一のヌクレオシドのときでさえ組み込まれ得る。本発明はまた、キメラオリゴヌクレオチドを含む。本発明の文脈中、“キメラ”オリゴヌクレオチドとは、それぞれ少なくとも1個のモノマー単位からなる2個またはそれ以上の化学的に異なる部位を含むオリゴヌクレオチドである。かかるキメラオリゴヌクレオチドは、例えば、上記のような1個またはそれ以上の修飾糖部分を有するヌクレオチド部位、およびデオキシリボヌクレオチド部位を含み得る(Lima, Walt F.; Crooke, Stanley T; Biochemistry (1997), 36(2), 390−398)。本発明のオリゴヌクレオチドは、糖部分の2’位の修飾に加えて、さらに他の修飾を含み得る。例えば、前記オリゴヌクレオチドは、骨格に修飾を有し得る。様々な骨格修飾は、当技術分野で公知であり、かかる修飾には、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホラミデートなどが含まれる(Uhlmann, Eugen. Recent advances in the medicinal chemistry of antisense oligonucleotides. Current Opinion in Drug Discovery & Development (2000), 3(2), 203−213、およびUhlmann, Eugen; Peyman, Anusch. Antisense oligonucleotides: a new therapeutic principle. Chemical Reviews (Washington, DC, United States) (1990), 90(4), 543−84に記載の修飾を参照のこと)。
【0019】
本発明に従うオリゴヌクレオチドアレイのオリゴヌクレオチドは一般に、約10から100ヌクレオチド長を有する。好ましくはその長さは、約12から50ヌクレオチド、より好ましくは15から30ヌクレオチドである。特に好ましい態様にて、オリゴヌクレオチド長は、18から25ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドアレイのオリゴヌクレオチドが同じ長さを有する必要はないが、本発明によるオリゴヌクレオチドアレイは一般に、類似のまたは同じ長さの多数のオリゴヌクレオチドを含む。
【0020】
“遺伝子チップ”としても公知のオリゴヌクレオチドアレイが、当技術分野で記載されている。前記オリゴヌクレオチドアレイは通常、オリゴヌクレオチドが結合し得る少なくとも1個の表面を有する固体の基質を含む。基質は、ガラス、SiO、石英、Siなどの無機物から形成され得る。あるいは、基質は、ポリマー、好ましくはポリカーボネート(PC)、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、ポリイミド(PI)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリウレタン(PU)などの有機物から形成され得る。一例にて、前記基質は、ガラスから形成される。前記表面は、前記基質と同じかまたは異なる物質から構成され得る。前記基質およびその表面はまた、好適な光吸収特性を供するように選択され得る。好ましい態様にて、前記基質および/または前記表面は、要すれば光透過性である。他の好ましい態様にて、前記基質は、光透過層を含む。その光透過層は、無機物から形成され得る。あるいは、それは有機物から形成され得る。一例にて、光透過層は、Ta、TiO、Nb、ZrO、ZnOまたはHfOなどの金属酸化物である。光透過層は、非金属である。
【0021】
特に好ましい態様にて、オリゴヌクレオチドアレイを、WO01/02839に記載のとおりにエバネセント波センサ基板上に置く。従って、試料分析に用いるためのセンサ基板は、例えば、基質の一方の表面に形成された、屈折率(n)を有し、薄く、光透過層の光透過性基質を含み得、該層は、(n)より大きな屈折率(n)を有し、該基板は1個または多数の検出領域または部位(各々1個または多数のキャプチャー成分のため)を規定する周期的な溝を含む1個または多数のコルゲート構造をそこに組み込まれており、該溝は、a)該基板上に入射するコヒーレント光が、個々の光線または回折次数で回折され、その干渉は、透過ビームの減少および入射光線の異常に高い反射をもたらし、それ故に、1つまたは多数の検出領域の表面に増大されたエバネセント場を生じるように;または、b)該基板上に入射するコヒーレント光および直線偏光が、個々の光線または回折次数で回折され、その干渉は、透過ビームのほとんど完全な遮光および入射光線の異常に高い反射をもたらし、それ故に1個または多数の検出領域の表面に増大されたエバネセント場を生じるように、描かれ、寸法を測られかつ配向を合わせられている。
【0022】
オリゴヌクレオチドアレイを、化学的にインサイチュウでオリゴヌクレオチド合成することにより形成することができる。本方法にて、前記オリゴヌクレオチドを、例えば機械的合成法または光特異的合成法を用いて基質の表面に直接合成し、その方法は、例えばWO90/033382またはWO92/10092に記載のとおりのフォトリソグラフィー法とオリゴヌクレオチド固相合成法との組合せ、またはWO98/27430に記載のとおりの非常に大規模な固定化ポリマー合成法(VLSIPS)を利用してよい。
【0023】
あるいは、天然または合成起源のオリゴヌクレオチドを、例えば、圧電アクチュエーター、電磁アクチュエーター、圧力/電磁弁アクチュエーターまたは他の力変換器を有するインクジェットプリンター、熱電アクチュエーター、レーザーアクチュエーター、リングピンプリンターまたはピンツールスポッターを使用するバブルジェットプリンターを含む様々な技術を用いてチップにスポットすることができる。(Heller MJ (2002) Annu Rev Biomed Eng; 4:129−53)。前記オリゴヌクレオチドを、基質の表面に共有結合することができる。かかる共有結合は一般に、表面の活性化、および/または官能基/反応基を有する核酸分子の修飾を必要とする。その固定化はまた、化学または光化学リンカーによっても達成され得る(WO98/27430およびWO91/16425)。かかる技術は既知であり、当業者に明らかであろう。反応基または光反応基は、基板の表面に結合することができ、それは、さらなる反応工程のための固定基としての役割を果たす。あるいは、前記オリゴヌクレオチドは、例えば、正電荷の表面フィルム上への静電気的吸着などの非共有結合により表面に結合され得る。本発明の好ましい態様にて、オリゴヌクレオチドは、表面と非共有結合する。基板をより疎水性にするための炭化水素鎖を提供する官能基性有機分子を用いることができ、基板をより親水性にするために極性基を用いることができ、またはイオン基あるいは可能性のあるイオン基を、電荷をもたらすために用いることができる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)またはその誘導体を、基板を親水性にするために用いることができ、それは、タンパク質の基板/表面への非特異的な吸着を妨げる。
【0024】
検出可能シグナルを得るために、試料の核酸を標識することができる。オリゴヌクレオチドの検出に適するいずれかの標識を用いることができる。例えば、放射性同位体、化学発光標識、生物発光または熱量測定標識を用いることができる。好ましい態様にて、発光標識を用いることができる。用いることのできる発光色素には、ランタニド複合体が含まれるが、それに限定されず(Kricka LJ (2002) Stains, labels and detection strategies for nucleic acids assays. Ann Clin Biochem; 39(Pt 2):114−29)、そしてそれはオリゴヌクレオチドに化学的または物理的に結合され得る。より好ましい態様にて、前記マーカーは、蛍光標識である。フルオレセイン、リサミン、フィコエリトリン、ローダミン、Cy2、Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、フルオロXなどの、多くの好ましい蛍光プローブが知られている。当然のことながら、異なるスペクトルを有する異なる蛍光プローブを、異なるプローブを区別するために用いることができる。あるいは、オリゴヌクレオチドアレイのオリゴヌクレオチドを、上記の標識などの適した標識で標識することができる。
【0025】
試料の核酸(“プローブ”)および前記オリゴヌクレオチドアレイの適したオリゴヌクレオチドはハイブリダイズし得、すなわち、相補的配列の非共有結合が適した条件下で生じ得る。前記配列は、完全に相補的であることが好ましいが、ハイブリダイゼーション条件に依存して変化し、1、2、3、4または5個のミスマッチを有する配列でもハイブリダイズし得る。適するハイブリダイゼーション条件は、当技術分野で公知であるかまたは実験的に決定することができる。反応の特異性および反応速度に影響を与えることがよく知られているパラメーターには、塩条件、溶媒のイオン組成、ハイブリダイゼーション温度、オリゴヌクレオチドマッチ配列の長さ、グアニンおよびシトシン(GC)含量、ハイブリダイゼーション促進剤の存在、pH、マッチ配列に見られる特異的塩基、溶媒条件、および有機溶媒の添加が含まれる。例えば、高ストリンジェンシーの条件について、ミスマッチがほんの少しかまたはない核酸がハイブリダイズするためには、塩濃度を一般に低くするほうが良い。通常、高ストリンジェンシー条件としては、約1モル以下、たいてい約750ミリモル以下、通常約500ミリモル以下の塩濃度を用いることができ、約250または150または15ミリモルまで低くても良い。用いる一般的な塩は、塩化ナトリウム(NaCl)である;しかしながら、他の無機塩、例えば、KCl、またはテトラアルキルアンモニウム塩を用いることができる。低ストリンジェンシー条件について、望ましいストリンジェンシーハイブリダイゼーションにより、塩濃度は、約3ミリモル以下、好ましくは2.5ミリモル以下、2ミリモル以下、またはより好ましくは約1.5ミリモル以下であり得る。ハイブリダイゼーションの反応速度およびハイブリダイゼーションのストリンジェンシーはまた、ハイブリダイゼーションを行う温度に依存して変化する。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションの温度は、一般に、低温、例えば、約15℃または20℃から約25℃または30℃の温度であり得る。高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションが必要なときは、ハイブリダイゼーションを行う温度は一般に高温であり得る。例えば、少なくとも37℃、少なくとも42℃、少なくとも48℃、または少なくとも56℃の温度を用いることができる。高温、例えば、80℃またはそれ以上を、ストリッピング、すなわち、相補的配列の結合を分離するために用いることができる。ハイブリダイゼーション反応はまた、オリゴヌクレオチドと結合していない核酸を洗浄して取り去る洗浄工程の後に行うことができる。しかしながら、かかる洗浄工程はまた、例えば、エバネセント場により誘導される発光が検出されるときは、省略され得る(WO01/02839)。
【0026】
本発明の好ましい態様にて、前記ハイブリダイゼーション条件は、修飾オリゴヌクレオチド、特にMOE修飾オリゴヌクレオチドと短いRNAとのハイブリダイゼーションに最適化される。かかる最適化は、実験的に行われ得、かつ当業者に困難なく行われる。温度を、例えば、約30℃から約60℃、約37℃から約60℃、または約42℃から約56℃にすることができる。
【0027】
どんなハイブリダイゼーションが行われたかの測定に用いる検出方法は、選択する標識に依存して変化し得る。発光は、適するレーザー光源により誘導され得る。発光に好適な検出器には、例えばCCDカメラ、光電子増倍管、アバランシェ・フォトダイオード、複合型光電子増倍管が含まれる。蛍光標識プローブを用いるとき、その検出を共焦点レーザー顕微鏡で行うのが好ましい。シグナルを記録し、好ましい態様にて、コンピューターで、例えば12ビットのアナログ・ボードからデジタル・ボードまでを用いて分析する。
【0028】
第二の局面にて、本発明は、短いRNAの検出方法を提供する。本明細書中に用いる用語“短いRNA”とは、約15から約30ヌクレオチド、好ましくは約18から約25ヌクレオチドの短いRNAを示す。前記短いRNAには、miRNA、stRNA、siRNAまたは短いヘパリン型RNA(shRNA)、または上記のすべての前駆体が含まれるが、それらに限定されない。前記RNAは、細胞にて内生的に形成され得るが、例えばsiRNAなどの細胞にトランスフェクトされたRNAでもあり得る。本発明の発明者らは、本発明に従い、短いRNA、特に短い内生RNAが、本発明のオリゴヌクレオチドアレイによりこれまでに知られていた方法および手段よりも高い感受性および特異性で検出され得ることを発見した。
【0029】
1つの態様にて、本発明は、生物学的試料と本発明のオリゴヌクレオチドアレイを接触させることを含む、短いRNAの検出方法を提供する。生物学的試料を、細胞、組織、器官、体液(例えば、血清、血漿、精液、尿、滑液および髄液など)から誘導することができる。細胞または組織を、特定の性質で選択することもでき、例えば、ガン細胞または組織を、様々な生長段階または病態における細胞または組織について選択することができる。好ましい態様にて、生物学的試料を、哺乳動物、より好ましくは例えばマウスまたはラットなどのげっ歯動物、最も好ましくは、ヒトから誘導する。生物学的試料の核酸を、例えばフェノール/クロロホルム抽出、エタノール沈殿またはゲル精製などの精製工程により濃縮することができる。好ましい態様にて、試料を短いRNAについて濃縮し、それは、例えば、ゲル精製またはサイズ分画により達成され得る。試料を、希釈せずにかまたは添加溶媒と共にかのどちらかで用いることができる。適する溶媒には、水、水性緩衝液または有機溶媒が含まれる。適する有機溶媒には、アルコール、ケトン、エステル、脂肪族炭化水素、アルデヒド、アセトニトリルまたはニトリルが含まれる。
【0030】
短いRNAの適した検出方法には、(a)生物学的試料を提供する工程(ここで、該試料は短い内生RNAを含む);(b)該試料を本発明のオリゴヌクレオチドアレイと接触させる工程;(c)前記アレイにて短い内生RNAとオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション反応を行う工程、および要すれば;(d)試料の短いRNAとアレイのオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションを検出する工程が含まれる。好ましい態様にて、生物学的試料の短いRNAは、蛍光色素で標識されるのが好ましい。
【0031】
もう1つの態様にて、本発明の方法を短いRNAの選別に用いる。例えば、短いRNAの検出に有用な定義された配列セットに対応するオリゴヌクレオチドアレイを、正常な細胞または組織試料および疾患細胞または組織と接触させることができる。アレイにてハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドのパターンは、組織試料における短いRNAの存在または不存在を示すであろう。故に、正常および疾患細胞または組織に存在する短いRNAのパターンを比較することができ、それにより試料を疾患状態と関連づけることができる。故に、本発明は、(a)生物学的試料を提供すること(ここで、該試料は短いRNAを含む);(b)該試料と本発明のオリゴヌクレオチドアレイを接触させること(ここで、該試料は、短いRNAの検出に適する所定の配列セットを含む);(c)得られるハイブリダイゼーションパターンと標準ハイブリダイゼーションパターンを比較することを含む、生物学的試料または特定の短いRNAの発現レベルを健康状態と関連付ける方法を提供する。標準パターンを、例えば、疾患細胞または組織から誘導される試料から得ることができる。故に、同様のパターンは、ある疾患状態を有する細胞または組織試料の指標であり得る。好ましい態様にて、細胞または組織を、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、インフルエンザ感染、マラリア、肝炎、プラスモジウム、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、または口蹄疫ウイルスなどの病原体に感染させる。好ましい態様にて、細胞または組織を、ウイルス性または細菌性病原菌に感染させる。もう1つの好ましい態様にて、前記疾患はガンであり(例えば、McManus, Michael T. MicroRNAs and cancer. Seminars in Cancer Biology (2003), 13(4), 253−258を参照のこと)、より好ましい態様にて、固形ガンまたは血液悪性腫瘍である。さらなる好ましい態様にて、前記疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病または多発性硬化症などの神経変性疾患である。特に好ましい態様にて、前記疾患は、脆弱性X関連精神遅滞である(例えば、Caudy AA et al. (2002) Genes Dev; 16:2491−6 and Dostie, Josee et al RNA (2003), 9(2), 180−186を参照のこと)。
【0032】
もう1つの好ましい態様にて、オリゴヌクレオチドアレイは、生物体の所定の器官、組織または細胞の小さなRNAの検出を包括的に含み、すなわち、前記アレイは、特定の生物体または該生物体の器官、組織あるいは細胞にて形成される低分子RNAの大部分またはすべてに関するオリゴヌクレオチドを含む。本文中大部分とは、前記小さなRNAの少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%を意味する。前記アレイはまた、細胞の特定の段階または状態のマーカーの所定の配列セット、例えば、特定の腫瘍または細胞の特定の型についての既知のマーカーまたはマーカーの組合せを包括的に含み得る。もう1つの好ましい態様にて、前記オリゴヌクレオチドアレイは、所定の生物体、または該生物体の器官、組織あるいは細胞の低分子RNAの特定のサブセット、好ましくはsiRNA、より好ましくはmiRNAまたはstRNAの検出に適する。
【0033】
当業者には明らかなように、上記の方法を、短いRNA、特に細胞または組織中のmiRNAの量および/または組成に違いを有するいずれかの生物学的状態を識別するために用いることができる。例えば、生物学的試料を、適した生物学的試料および生物学的試料を用いて得られるパターンを比較することができる適当な標準パターンを用いる方法などにより、例えば低酸素または機械的ストレスなどの別のストレス状態と関連付けることができる。あるいは、生物学的試料を、生長の異なる段階で関連付けることができる。
【0034】
本発明のもう1つの態様は、分化中の短いRNA、特にmiRNA動態を探るための方法を提供する。例えば、短いRNA、特にmiRNAの検出に有用な定義された配列セットを有するオリゴヌクレオチドアレイを、例えば、インビトロでの造血細胞の分化、筋芽細胞の分化、またはPC12細胞の神経への分化などの異なる系統へ分化中の胚性幹細胞から誘導される生物学的試料と接触させることができる。
【0035】
本発明の他の局面は、疾患、特に、ヒト疾患の予後診断または診断のための方法を提供する。かかる方法には、
(a)生物学的試料を提供すること(それらは、目的の組織または器官または体液から単離され得、要すれば、前もって処理され得る)
(b)短いRNA、特にmiRNAの検出に有用な定義された配列セットに対応するオリゴヌクレオチドアレイを該試料と接触させること
(c)ハイブリダイゼーションパターンを得ること
(d)該ハイブリダイゼーションパターンと標準ハイブリダイゼーションパターンを比較すること(ここで、あるパターンの存在または不存在は、疾患の発生の可能性または疾患の存在の可能性の指標である)
が含まれる。
【0036】
例えば、ガン性状態を、ある短いRNAの組合せにより示すことができる。かかる組合せは、前記短いRNAを適したオリゴヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドアレイとハイブリダイズするとき、特定のパターンを生じ得る。よって、生物学的試料とのかかるオリゴヌクレオチドアレイのあるハイブリダイゼーションパターンの存在または不存在は、ガン性状態の存在または不存在の指標であり得る。そのパターンを、正常細胞、組織または器官などで得られる標準パターンと比較することもでき、標準パターンと比較して生物学的試料から得られたパターンにおける相違は、分析する生物学的試料の異常または疾患状態の指標であり得る。
【0037】
本発明はさらに、以下の実施例を説明の目的でのみ記載する。本開示および実施例に明確に記載されていない分子遺伝学、タンパク質およびペプチド生化学ならびに免疫学の方法は、科学文献にて報告されており、当技術分野でよく知られている。
【0038】
実施例
材料および方法
MOEオリゴヌクレオチドの設計および合成
MOEキャプチャープローブを、Lagos−Quintana Mら;Science 2001, 294, 853−8, Lagos−Quintana Mら;Current Biology, 2002, 12, 735−9, Lagos−Quintana M.;RNA 2003, 9, 175−9, Mourelatos Zissimosら;Genes And Development 2002, 16, 720−8により同定された31個のヒトmiRNAについて設計した。これらのmiRNAの長さは、20から24ヌクレオチドで変化する。これらのmiRNAの存在量はまた、個々のmiRNAのクローニングの頻度に基づき異なる。miRNAの同定に用いるクローニングおよびシークエンシング方法は、miRNAの5’および3’末端を正確に定義することがしばしばできないため、MOEキャプチャープローブを、miRNAの中心部に相当する19ヌクレオチドに相補的に設計した。20ヌクレオチド長のmiRNAについて、キャプチャープローブは、miRNAの19 5’隣接ヌクレオチドと相補的であり、21ヌクレオチド長およびそれより長いmiRNAについて、前記キャプチャープローブは、miRNAのヌクレオチド2−20に相補的である。キャプチャープローブの同じ(19ヌクレオチド)長さの維持には、個々のプローブ−miRNAの二本鎖の融解温度の違いを最小にするべきである。
【0039】
1bpおよび2bpのミスマッチ対照オリゴを、以下の交換則に従い設計した:A→C;C→A;T→G;G→T。ミスマッチを、すべてのmiRNA種に対して最大の特異性を有するアルゴリズムを用いて導入した(J. Lange, LSI)。本発明に記載の合成DNAおよび2’−MOE修飾オリゴヌクレオチドを、ABI394またはExpedite/Moss合成器(Applied Biosystems)で標準フォスファミダイト化学を用いて製造する。フォスファミダイトを、0.05M濃度のアセトニトリルに溶解する。カップリングを、0.2Mのベンゾイミダゾリウムトリフレート アセトニトリル溶液によるフォスファミダイトの活性化により行う。カップリング時間は通常、3から6分間である。最初のキャッピングを、標準キャッピング試薬を用いて行う。酸化を、0.5Mのt−ブチルヒドロペルオキシド ジクロロメタン溶液にて2分間で行う。次のキャッピングを、酸化または硫化後に行う。オリゴヌクレオチド成長鎖を、ジクロロメタン中2%トリクロロ酢酸による次のカップリングのために脱トリチル化する。配列の完了後、支持体結合化合物を切断し、80℃で2時間、32%アンモニア水溶液により“トリチル−オン”のように脱保護する。
【0040】
得られた粗溶液を、RP−HPLCにより直接精製する。精製された脱トリチル化化合物をエレクトロスプレー質量分析およびキャピラリーゲル電気泳動により分析し、そして260nMでの吸光係数に従いUVにより定量する。miRNA配列と相補的なMOE−オリゴヌクレオチド(Perfect MATCH=PM)および対応する1(1MM)および2塩基対(2MM)ミスマッチ対照を、表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
n(g,a,t)=2’−O−(2−メトキシエチル)−リボヌクレオシド、c=2’−O−(2−メトキシエチル)−5−メチルシチジン。3’末端の大文字は、N(A、G、C、T)2’−デオキシヌクレオチド(nt)を示す。実際上の理由により、すべての配列を、3’末端の位置に1個の2’−デオキシヌクレオチドを有するMOEオリゴヌクレオチドをもたらすようなDNA支持体を用いて合成した。
【0044】
オリゴヌクレオチドマイクロアレイのプリンティングおよびハイブリダイゼーション
NovaChip(D, Budach W, Wanke C, Chibout SD(2003) Evanescent resonator chips: a universal platform with superior sensitivity for fluorescence−based microarrays. Biosens Bioelectron; 18:489−97)を製造し、プリントし、そして実質的に記載のとおりにハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション混合物は、3μグラムの標識ミクロRNAを含んでいた(Budach, Wolfgang; Neuschaefer, Dieter; Wanke, Christoph; Chibout, Salah−Dine. Generation of transducers for fluorescence−based microarrays with enhanced sensitivity and their application for gene expression profiling. Analytical Chemistry (2003), 75(11), 2571−2577)。
【0045】
ヒトHeLaおよびマウスP19細胞からのmiRNAの製造
HeLa細胞を、10%FCSおよび2mM L−グルタミンを添加したダルベッコの修飾イーグルス培地中、37℃で増殖させた。約1,5×10細胞をPBSで洗浄し、製造業者の説明書に従い、10cm表面に対して1mlのTrizol(登録商標)(Life−TechnologiesTM)でRNAを抽出した。水相に存在するDNAを、37℃で1時間、500μlにつき20UのDNaseIで消化した。フェノール/クロロホルム抽出の後、全RNAをエタノール沈殿し、RNaseなしの水に再懸濁し、そして100μgのRNAを、製造業者のRNA浄化説明書に従いRNeasy(登録商標)ミニスピンカラム(Qiagen)に適用した。流れに含まれる〜200ntより小さいRNA種をエタノール沈殿し、変性ゲル充填緩衝液(70%ホルムアミド、30mM EDTA、0,05%キシレンシアノール、0,05%ブロモフェノールブルー)に再懸濁し、そしてTBE緩衝液中、8M尿素−12,5%ポリアクリルアミドゲル泳動にて分ける。15から30ntのサイズ範囲のRNAを、UV光照射下でゲルの陰影から切り出し、500mM酢酸アンモニウム、1mM EDTA、および20%フェノール/クロロホルムを含む溶液で4℃にて16時間溶出し、エタノール沈殿し、そしてRNaseなしの水に再懸濁した。回収したRNAの量を、260nmの吸光度を測定することにより推定した。あるいは、RNA試料を、RNeasy(登録商標)ミニスピンカラム(Qiagen)に用いるか、PAGE精製工程を省略したチップ実験に用いた。
【0046】
合成対照miRNAオリゴならびにHeLaおよびP19細胞からの断片化サイズ選択miRNAの蛍光標識
8つの異なるmiRNA配列と相補的な19−merのRNAオリゴヌクレオチドを、Xeragonから購入した。RNAの標識に関して、水9μl中RNA9μgを、1μlの新鮮に調製した100mM過ヨウ素酸ナトリウム水溶液の添加によりジアルデヒドに酸化し、その後、暗所で室温にて1時間インキュベーションした。過剰量の酸化物を、1μlの200mM亜硫酸ナトリウム溶液の添加により除去し、室温で20分間インキュベートした。12μlの50mM酢酸ナトリウム緩衝液pH4を添加後、5μlの20mM塩酸エチレンジアミン水溶液pH7.2を、酸化型RNAに加えた。反応混合物を、37℃で1時間インキュベーションし、RNAとスペーサー間のアルジミン結合を、2μlの新鮮に調製した200mMシアノボロハイドライドナトリウムのアセトニトリル溶液で還元することにより安定化した。30分間室温でインキュベーションし、沈殿を0℃で1時間、2倍量の2%過塩素酸リチウム・アセトン溶液で行った。試料を、14000rpmで45分間回転させ(3−4℃)、上清を除去後、RNAペレットをアセトンで2度洗浄し乾燥させた。結合を、5μlのDEPC処理水にアミノ修飾RNAを再懸濁し、5μlの1Mナトリウムリン酸緩衝液中30mM Cy5 N−ヒドロキシスクシニミジ活性エステル(pH7.8)を加えることにより行った。暗所にて室温で1時間インキュベーションした後、RNAを−20℃で1時間、2.5倍量の100%氷冷エタノールで沈殿させた。試料を14000rpmで30分間回転させ(3−4℃)、上清を除去後、Cy5−RNAペレットを氷冷70%エタノール水溶液で2回洗浄し、空気乾燥した。標識RNAの質および量をキャピラリーゲル電気泳動により分析し、260nmでの吸光係数に従いUVにより定量した。
【0047】
Cy5標識RNA配列は、表2に含まれる。
【0048】
表2:3’−Cy5標識合成miRNA同等物の配列を、固定化した相補的“キャプチャー”オリゴヌクレオチドにハイブリダイゼーションするために用いた。塩基対を形成するヌクレオチドを、太字で強調する。
【0049】
【表3】

【0050】
結果
オリゴヌクレオチドキャプチャープローブの親和性および特異性を、MOEおよびDNAオリゴヌクレオチドと共にその対応する1および2ヌクレオチドミスマッチ対照をスポットしたパネルを含むチップを用いて試験した。チップ上に示される8個の異なるmiRNA配列と相補的なRNAオリゴヌクレオチドをCy5で標識し(表2)、異なる条件でチップとハイブリダイズした。
【0051】
すべてのDNAオリゴヌクレオチドマイクロアレイに関する一般的な問題は、基板の感受性および特異性に関する適切な妥協の必要性である。
【0052】
図1に示すように、MOE修飾1および2ヌクレオチドミスマッチオリゴヌクレオチドで得られる蛍光強度は、完全にマッチした二本鎖と比べて著しい強度の減少を示す。ハイブリダイゼーション温度の上昇により、識別がさらに改善されるはずである。対照的に、対応する標準DNAキャプチャープローブは、選択したハイブリダイゼーションストリンジェンシー条件下で安定な二本鎖を形成することができず、結果としてすべてのDNAキャプチャープローブからの強度値は有意でない。
8例中5例にて、MOEプローブを有するミスマッチ識別を、ハイブリダイゼーション温度を37℃から42℃に上げることにより、そのキャプチャー感受性を損なうこと無しに、著しく改善することができる(図1)。オリゴヌクレオチドmir−99およびmir−100(それは、単一のヌクレオチドのみが異なるmiRNAを示す)の場合に、十分な交叉反応が観察された。
【0053】
ヒトおよびマウス細胞抽出物からのmiRNAのMOE NovaChipへのハイブリダイゼーション
次工程にて、サイズ選択的miRNAをHeLa/P19マウス細胞から抽出し、Cy5で標識し、そして30℃から56℃の範囲の温度で高感度のチップへプローブと共にハイブリダイズした(Novachip: Generation of transducers for fluorescence−based microarrays with enhanced sensitivity and their application for gene expression profiling. Budach, Wolfgang; Neuschaefer, Dieter; Wanke, Christoph; Chibout, Salah−Dine. Novartis Pharma AG Switzerland, Basel, Switz. Analytical/Chemistry (2003), 75(11), 2571−2577)。蛍光強度を、相補的MOEキャプチャープローブを有する31個の異なる標識miRNAについて測定し、Chip上の1ntMMおよび2ntMM対照を表3に示す。いくつかのmiRNAの特異的ハイブリダイゼーションは、既に30℃および37℃で観察され得ると考えられたが(野生型、および1MMおよび2MM MOEプローブで得られるシグナルの比較に基づく)、NovaChip上に存在するミスマッチ配列と完全に相補的な配列の間の識別は、42℃またはより高い温度でより良くなった。48℃および56℃でのハイブリダイゼーションの実行は、より高い温度で強度が付随して減少する、ほぼすべてのmiRNAの特異的な検出を可能とした。少数例にて、56℃でのシグナルは記録されなかった。3つの異なる温度(42、48および56℃)でのハイブリダイゼーションの実行により、ほとんどすべての試験したmiRNAについての特異的シグナルを記録することが可能であった。実際には、6つのmiRNAのみが、試験したいずれかの温度で不存在かまたは非特異的などちらかのシグナルを示した。これは、分離細胞株中特異的miRNAの不存在のため、またはハイブリダイゼーションに用いたRNA試料中の交叉ハイブリダイズする関係のないRNAの存在のためのいずれかであり得る。1つの例で例示されるように、単一のミスマッチがmiRNAの特異的検出を可能にしない場合、2つのミスマッチが、識別をよりよくすることが可能である。最後に、42℃(データ掲載せず)での2つの個別に実施したハイブリダイゼーションからの強度値は、高レベルの再現性を示す同程度の強度値を示した。
【0054】
表3:Cy5で標識したHeLa miRNAを、チップ上、記載の条件下で異なる温度(T)にてハイブリダイズした。48℃のハイブリダイゼーション温度(太字で示す)は、チップ上のほとんどのプローブについてのシグナル強度と特異性との間の最も良い妥協を示す。
【0055】
【表4】

【0056】
【表5】

【表6】

【表7】

【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】7個のRNA試料と1MMおよび2MMのキャプチャープローブとのハイブリダイゼーションが示す強度を、個々のマッチ配列から得られた強度を標準化したものである。強度を、密度(平均)−バックグラウンド(平均)として定義する。Cy5標識RNAとハイブリダイズしたMOEプローブでの改善されたミスマッチ識別力が、ハイブリダイゼーション温度を37℃から42℃に上げることで得られた。同じ条件下、同じ長さの標準DNAプローブは、シグナル強度を示さなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1個のオリゴヌクレオチドが少なくとも1個の修飾糖部分を有する、表面および多数のオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項2】
前記糖部分の2’−OH基が置換されている、請求項1に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項3】
前記糖部分が、2’位に、F;O−、S−、またはN−アルキル;O−、S−、またはN−アルケニル;O−、S−、またはN−アルキニル;または、O−アルキル−O−アルキル(ここで、前記アルキル、アルケニルおよびアルキニルが、非置換または置換CからC10アルキルまたはCからC10アルケニル、アルキニルまたはアルコキシアルキルであり得る)、CからC10低級アルキル、置換CからC10低級アルキル、アルカリル、アラルキル、O−アルカリルまたはO−アラルキル、SH、SCH、Cl、Br、CN、CF、OCF、SOCH、SOCH、ONO、NO、N、NH、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカリル、アミノアルキルアミノ、ポリアルキルアミノを含む、請求項2に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項4】
前記糖部分が、2’−MOE、2’−DMAOE、2’−メトキシまたは2’−アミノプロポキシを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項5】
該オリゴヌクレオチドが、約15から50ヌクレオチド長を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項6】
該オリゴヌクレオチドが、少なくとも10個の修飾糖部分を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項7】
該オリゴヌクレオチドアレイが、少なくとも50%の修飾糖部分を有するオリゴヌクレオチドを含んでなる、請求項1から6のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項8】
該オリゴヌクレオチドアレイが、短い哺乳動物RNAと特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含んでなる、請求項1から7のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項9】
該オリゴヌクレオチドが、短いヒトRNAと特異的にハイブリダイズする、請求項8記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項10】
該オリゴヌクレオチドアレイが、生物の所定の器官、組織または細胞の低分子RNAの包括的な検出のためのものである、請求項1から9のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項11】
該オリゴヌクレオチドが前記表面と非共有結合している、請求項1から10のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項12】
該オリゴヌクレオチドアレイが、1個またはそれ以上のデオキシリボヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチドを含んでなる、請求項1から11のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項13】
前記オリゴヌクレオチドアレイを、エバネセント波センサ基板に用いることができる、請求項1から12のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイ。
【請求項14】
(a)生物学的試料を提供する工程(ここで、該試料は短いRNAを含む);(b)該試料を、請求項1から13のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイと接触させる工程;(c)短い内生RNAと前記アレイ中のオリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーション反応を行う工程を含む、短いRNAの検出のための方法。
【請求項15】
(a)生物学的試料を提供すること(ここで、該試料は短いRNAを含む);(b)該試料を、請求項1から13のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイと接触させること(ここで、該アレイは短いRNAの検出に適する所定の配列セットを含む);(c)得られるハイブリダイゼーションパターンを標準ハイブリダイゼーションパターンと比較することを含む、生物学的試料を生物学的状態と関連付ける方法。
【請求項16】
該短いRNAが、ミクロRNA(miRNA)である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記生物学的試料が健康状態と関連がある、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
(a)生物学的試料を提供すること、(b)短いRNAの検出に有用な定義された配列セットに対応する請求項1から13のいずれか一項に記載のオリゴヌクレオチドアレイを接触させること、(c)ハイブリダイゼーションパターンを得ること、(d)該ハイブリダイゼーションパターンと標準ハイブリダイゼーションパターンを比較すること(ここで、特定のパターンの存在または不存在は、疾患を発症する可能性または疾患の存在の指標である)を含む、疾患の予後診断または診断のための方法。
【請求項19】
前記生物学的試料がヒト由来である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記疾患が、ガン、神経変性疾患または感染症である、請求項18または19に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−512805(P2007−512805A)
【公表日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534676(P2006−534676)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/011511
【国際公開番号】WO2005/040419
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【出願人】(502407336)ノバルティス・フォルシュングスシュティフトゥング・ツヴァイクニーダーラッスング・フリードリッヒ・ミーシェー・インスティトゥート・フォー・バイオメディカル・リサーチ (19)
【氏名又は名称原語表記】Novartis Forschungsstiftung Zweigniederlassung Friedrich Miescher Institute for Biomedical Research
【Fターム(参考)】