説明

オルガノシランカップリング剤を含むゴム組成物

本発明は、少なくとも下記をベースとする、タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物に関する:
・ジエンエラストマー;
・イオウ系架橋系;
・補強用充填剤としての無機充填剤;
・下記の一般式Iを有するカップリング剤:

(HO)3-n R1n Si − Z − Sm − R2

(式中、R1は、同一または異なるものであって、各々、1〜18個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
R2は、1〜30個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
Zは、1〜18個の炭素原子を含む二価の結合基を示し;
nは、0、1または2に等しい整数を示し;そして、
mは、2以上の数を示す)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にタイヤまたはトレッドのようなタイヤ用の半製品の製造において使用することのできる、シリカのような無機充填剤で補強したジエンゴム組成物に関する
【背景技術】
【0002】
補強剤によって付与される最適の補強特性を得るためには、この充填剤は、エラストマーマトリックス中に、できる限り微分割され且つできる限る均一に分布する双方の最終形で存在すべきであることが一般に知られている。しかしながら、そのような条件は、上記充填剤が、一方では上記エラストマーとの混合中にマトリックス中に取込まれて且つ解凝集し、そして、他方ではこのマトリックス中に均一に分散する極めて良好な能力を有する場合にのみ達成することができる。
【0003】
周知のとおり、カーボンブラックは、そのような能力を示し、無機充填剤におけるのと一般に異なる。事実、相互親和性のために、無機充填剤粒子は、エラストマーマトリックス中で一緒に凝集する厄介な性向を有する。これらの相互作用は、上記充填剤の分散を制約し、従って、補強特性を、配合操作中に生じ得る全ての結合(無機充填剤/エラストマー)実際に得られる場合に理論的に達成可能であるレベルよりも実質的に低いレベルに制約する有害な結果を有し得る。さらにまた、これらの相互作用は、ゴム組成物の未硬化状態におけるコンシステンシーを増大させ、従って、その加工性(“加工能力”)をカーボンブラックの存在におけるよりも困難にする傾向を有する。
【0004】
しかしながら、燃料節減および環境保護の必要性が優先事項となって以来、低下した転がり抵抗性を有するタイヤをその耐摩耗性に不利益な効果を有することなく生産する必要性が判明してきている。このことは、特に、特定の無機充填剤によって補強された新規なゴム組成物の発見によって可能になってきた;これらの特定の無機充填剤は、“補強用”として説明されており、且つ、補強性の観点から通常のタイヤ級カーボンブラックと拮抗し得るとともに、これらの組成物に、これらの無機充填剤を含むタイヤにおける低い転がり抵抗性と同義である低いヒステリシスを付与している。
【0005】
シリカ質またはアルミナ質タイプの補強用無機充填剤を含むそのようなゴム組成物は、例えば、特許または特許出願EP‐A‐0501227号(またはUS‐A‐5227425号)、EP‐A‐0735088号(またはUS‐A‐5852099号)、EP‐A‐0810258号(またはUS‐A‐5900449号)、EP‐A‐0881252号、WO99/02590号、WO99/02601号、WO99/02602号、WO99/28376号、WO00/05300号およびWO00/05301号に記載されている。
【0006】
特に、高分散性沈降シリカによって補強されたジエンゴム組成物を開示している文献EP‐A‐0501227号、EP‐A‐0735088号またはEP‐A‐0881252号が挙げられ、そのような組成物は、実質的に改良された転がり抵抗性を有するトレッドを製造することを、他の特性、特に、グリップ性、耐久性および耐摩耗性に悪影響を及ぼすことなく可能にしている。また、そのように相反する特性の妥協点を示すそのような組成物は、補強用無機充填剤として特定の高分散性アルミナ質充填剤(アルミナまたは水酸化(酸化)アルミニウム)による出願EP‐A‐0810258号およびWO99/28376号において或いは特定の補強用タイプの酸化チタンを記載している出願WO00/73372号およびWO00/73373号においても記載されている。
【0007】
これらの特定の高分散性無機充填剤の使用は、主要補強用充填剤であろうとなかろうと、それらの充填剤を含むゴム組成物を加工する困難性を確実に低下させているものの、にもかかわらず、この加工性は、カーボンブラックを通常に充填したゴム組成物におけるよりも困難なままである。
【0008】
特に、結合剤とも称するカップリング剤の使用を必要とし、このカップリングの役割は、無機充填剤の粒子表面とエラストマー間に結合をもたらすと共にこの無機充填剤のエラストマーマトリックス内での分散を容易にすることである。
【0009】
ここで、“カップリング剤”(無機充填剤/エラストマーカップリング剤)なる表現は、知られているとおり、上記無機充填剤と上記ジエンエラストマー間に化学的および/または物理的性質を有する十分な結合を確立することのできる薬剤を意味するものと理解すべきであることを再認識されたい。そのようなカップリング剤は、少なくとも二官能性であり、例えば、簡略化した一般式“Y‐W‐X”を有し、式中:
Yは、上記無機充填剤に物理的および/または化学的に結合させることのできる官能基(“Y”官能基)を示し、そのような結合は、おそらくは、例えば、上記カップリング剤のケイ素原子と上記無機充填剤の表面ヒドロキシル(OH)基(例えば、シリカである場合の表面シラノール)間で確立され;
Xは、上記ジエンエラストマーに、例えばイオウ原子によって物理的および/または化学的に結合させことのできる官能基(“X”官能基)を示し;
Wは、“Y”を“X”と連結させるのを可能にする二価の基を示す。
【0010】
上記カップリング剤は、特に、上記無機充填剤に対しては活性な“Y”官能基を知られているとおりに含み得るが、上記ジエンエラストマーに対しては活性な“X”官能基を欠いている上記無機充填剤を被覆するための単純な薬剤と混同すべきではない。
【0011】
カップリング剤、特に、シリカ/ジエンエラストマーカップリング剤は、多くの文献に記載されており、最も良く知られているのは、Y官能基としての少なくとも1個のアルコキシル官能基と、X官能基としての、例えば、硫化(即ち、イオウ含有)官能基のようなジエンエラストマーと反応し得る少なくとも1個の官能基とを担持する二官能性オルガノシランである。
【0012】
そのように、特許出願FR‐A‐2094859号またはGB‐A‐1310379号においては、タイヤトレッド製造用のメルカプトアルコキシシランカップリング剤の使用が提案されている。メルカプトアルコキシシランカップリング剤は優れたシラン/エラストマーカップリング特性を付与することができるものの、これらカップリング剤の工業的使用は、密閉ミキサー内でのゴム組成物の製造中に、“スコーチ”とも称する早期の加硫、未硬化状態での極めて高い粘度を、さらに、究極的には、工業的に加工し処理することがほぼ不可能であるゴム組成物を極めて急速にもたらすチオール‐SHタイプの硫化官能基(X官能基)の極めて高い反応性のために不可能であることが即急に実証され、現在では周知である。この問題を説明するには、例えば、文献FR‐A‐2206330号、US‐A‐3873489号およびUS‐A‐4002594号を挙げることができる。
【0013】
この欠点を克服するために、これらのメルカプトアルコキシシランを、極めて多くの文献に記載されているようなアルコキシシランポリスルフィド、特に、ビス(アルコキシルシリルプロピル)ポリスルフィドと置換えることを提案している (例えば、FR‐A‐2149339号、FR‐A‐2206330号、US‐A‐3842111号、US‐A‐3873489号、US‐A‐3997581号、EP‐A‐680997号またはUS‐A‐5650457号、EP‐A‐791622号またはUS‐A‐5733963号、DE‐A‐19951281号またはEP‐A‐1043357号およびWO00/53671号を参照されたい)。これらのポリスルフィドのうちでは、特に、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPTと略記する)およびビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド (TESPDと略記する)を挙げなければならない。
【0014】
これらのアルコキシシランポリスルフィド、特に、TESPTは、補強用無機充填剤、特に、シリカを含む加硫物においては、スコーチ安全性、加工の容易性および補強力の点で最良の妥協点をもたらす製品であると一般にみなされている。これらのアルコキシシランポリスルフィドは、この点で、タイヤ用のゴム組成物において現在最も広く使用されているカップリング剤である。
【発明の概要】
【0015】
本出願人等は、驚くべきことに、オルガノシランタイプの新規なカップリング剤が、特に上記のアルコキシシランポリスルフィドと比較して、これらの新規なカップリングを含む組成物の未硬化状態での加工性を、さらにまた、スコーチ安全性をさらに改良するのを可能にすることを見出した。
【0016】
従って、本発明の1つの主題は、少なくとも下記をベースとする、タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物である:
・ジエンエラストマー;
・イオウ系架橋系;
・補強用充填剤としての無機充填剤;
・下記の一般式Iを有するカップリング剤:

(HO)3-n R1n Si − Z − Sm − R2

(式中、R1は、同一または異なるものであって、各々、1〜18個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
R2は、1〜30個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
Zは、1〜18個の炭素原子を含む二価の結合基を示し;
nは、0、1または2に等しい整数を示し;そして、
mは、2以上の数を示す)。
【0017】
また、そのような組成物は、全く驚くべきことに、シリカのような無機充填剤で補強したゴム配合物の亜鉛を、亜鉛を他の金属で置き換えることなく、また、ゴム組成物をその工業的加工処理における早期のスコーチ問題から保護しながら、極めて有意に低減するか或いは上記亜鉛を完全に排除することを可能にする。この結果は、TESPTカップリング剤が亜鉛を含まないまたはほぼ亜鉛を含まない組成物においては適切でないことから、なおいっそう驚くべきことであることが判明している。
【0018】
事実、タイヤ製造業者の1つの中期目標は、亜鉛またはその誘導体を、既知の、特に水および水生生物に対するこれらの化合物の相対的な毒性故に、タイヤのゴム配合物から削減することであることを思い起こされたい(1996年12月9日の欧州指針(European Directive) 67/548/EECによる分類R50)。
【0019】
しかしながら、酸化亜鉛の、特にシリカのような無機充填剤で補強したゴム配合物からの削減は、工業的観点から許容し得ないスコーチ時間の短縮により、未硬化状態のゴム組成物の加工特性 (“加工能力”)に対して極めて有害である。
【0020】
有利には、上記ジエンエラストマーは、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。
好ましくは、上記補強用無機充填剤は主要補強用充填剤であり、さらに好ましくは、上記補強用無機充填剤はシリカ質またはアルミナ質充填剤である。
【0021】
また、本発明は、(i) 少なくとも1種のジエンエラストマー中に、少なくとも(ii) 補強用充填剤としての無機充填剤、(iii) 下記の一般式Iを有するカップリング剤および(vi) イオウ系加硫系を、混練によって混入することを特徴とする組成物の製造方法にも関する:

(HO)3-n R1n Si − Z − Sm − R2

(式中、R1は、同一または異なるものであって、各々、1〜18個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
R2は、1〜30個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
Zは、1〜18個の炭素原子を含む二価の結合基を示し;
nは、0、1または2に等しい整数を示し;そして、
mは、2以上の数を示す)。
【0022】
また、本発明は、少なくとも、ジエンエラストマー、イオウ系架橋系、補強用充填剤としての無機充填剤、下記の一般式Iを有するカップリング剤をベースとするゴム組成物を含むタイヤまたは半製品(特にトレッド)にも関する:

(HO)3-n R1n Si − Z − Sm − R2

(式中、R1は、同一または異なるものであって、各々、1〜18個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
R2は、1〜30個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
Zは、1〜18個の炭素原子を含む二価の結合基を示し;
nは、0、1または2に等しい整数を示し;そして、
mは、2以上の数を示す)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
I. 使用する測定および試験法
上記ゴム組成物は、以下で示すように、硬化の前後において特性決定する。
【0024】
I‐1. ムーニー可塑度
フランス規格NF T 43‐005(1991年)に記載されているような振動(oscillating)稠度計を使用する。ムーニー可塑度測定は、次の原理に従って実施する:未硬化状態(即ち、硬化前)の組成物を100℃に加熱した円筒状チャンバー内で成形する。1分間の予熱後、ローターが試験標本内で2rpmにて回転し、この運動を維持するための仕事トルクを4分間の回転後に測定する。ムーニー可塑度(ML 1 + 4)は、“ムーニー単位”(MU、1MU = 0.83ニュートン.メートル)で表す。
【0025】
I‐2. スコーチ時間
測定は、フランス規格NF T 43‐005に従って130℃で実施する。時間の関数としての稠度測定指数(consistometric index)の変化は、分で表すパラメーターT5 (大ローターの場合)により上記規格に従って評価し、且つ稠度測定指数について測定した最低値よりも5単位高い稠度測定指数の増加(MUで表す)を得るのに必要な時間として定義したゴム組成物のスコーチ時間を判定するのを可能にする。
【0026】
I‐3. 動的特性
動的特性ΔG*およびtan(δ)maxは、規格ASTM D 5992-96に従って、粘度アナライザー(Metravib VA4000)において測定する。単純な交互剪断における正弦応力に、10Hzの周波数で、標準温度条件(23℃)下に供した加硫組成物のサンプル(厚さ4mmおよび400mm2の断面積を有する円筒状試験片)の応答を、規格ASTM D 1349‐99に従って記録する。0.1%から50%範囲(外方向サイクル)、次いで、50%から0.1%範囲(戻りサイクル)にある歪み振幅による走査を実施する。使用する結果は、複素動的剪断モジュラス(G*)および損失係数(tanδ)である。戻りサイクルにおいて、観察されたtanδの最高値(tan(δ)max)を、さらにまた、0.1%歪みと50%歪み値間の複素モジュラスの差(ΔG*) (パイネ効果)を示す。
【0027】
II. 発明の詳細な説明
【0028】
従って、本発明の組成物は、少なくとも、(i) 少なくとも1種のジエンエラストマー、(ii) 補強用充填剤としての少なくとも1種の無機充填剤、(iii) 無機充填剤/ジエンエラストマーカップリング剤としての一般式(I)を有する少なくとも1種のオルガノシランをベースとする(phr = エラストマー100質量部当りの質量部)。
【0029】
“ベースとする組成物”なる表現は、本出願においては、使用する各種構成成分の混合物および/または反応生成物を含む組成物を意味するものと理解すべきであり、これらのベース構成成分の幾つかは、上記組成物の製造の各種段階において、特に、上記組成物の加硫(硬化)中に、少なくとも部分的に互いに反応し得るか或いは反応させることを意図する。
本説明においては、他に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量で表す%である。
【0030】
II-1. ジエンエラストマー
用語“ジエン”エラストマーまたはゴムは、一般に、ジエンモノマー( 共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも部分的に由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解されたい。
【0031】
ジエンエラストマーは、知られている通り、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”と称するジエンエラストマーまたは “本質的に飽和”と称するジエンエラストマーに分類し得る。“本質的に不飽和のジエンエラストマー”なる表現は、15%(モル%)よりも多いジエン起源(共役ジエン)単位含有量を有する共役ジエンモノマーに少なくとも部分的に由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。従って、例えば、ブチルゴムまたはEPDMタイプのジエン/α‐オレフィンコポリマーのようなジエンエラストマーは、この定義に属さず、むしろ、“本質的に飽和のジエンエラストマー”(常に15%未満である低いまたは極めて低いジエン起原単位含有量)として説明し得る。“本質的に不飽和のジエンエラストマー”のカテゴリーにおいては、用語“高不飽和ジエンエラストマー”なる表現は、特に、50%よりも多いジエン起源(共役ジエン類)単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0032】
これらの定義を考慮すると、さらに詳細には、本発明に従う組成物において使用することのできるジエンエラストマーは、下記を意味するものと理解されたい:
(a) 4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーを重合させることによって得られる任意のホモポリマー;
(b) 1種以上の共役ジエンを他のジエンまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物と共重合させることによって得られる任意のコポリマー;
(c) 例えば、エチレン、プロピレンおよび下記のタイプの非共役ジエンモノマー、例えば、特に、1,4‐ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンから得られるエラストマーのような、エチレンと3〜6個の炭素原子を有するα‐オレフィンとを、6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーと共重合させることによって得られる3成分コポリマー;および、
(d) イソブテンとイソプレンのコポリマー(ブチルゴム)、さらにまた、このタイプのコポリマーのハロゲン化形、特に、塩素化または臭素化形。
本発明は、任意のタイプのジエンエラストマーに当てはまるけれども、タイヤ技術における熟練者であれば、本発明は、好ましくは、特に上記の(a)または(b)タイプの本質的に不飽和のジエンエラストマーと一緒に使用するものであることを理解されたい。
【0033】
適切な共役ジエンは、特に、1,3‐ブタジエン;2‐メチル‐1,3‐ブタジエン;例えば、2,3‐ジメチル‐1,3‐ブタジエン、2,3‐ジエチル‐1,3‐ブタジエン、2‐メチル‐3‐エチル‐1,3‐ブタジエンまたは2‐メチル‐3‐イソプロピル‐1,3‐ブタジエンのような2,3‐ジ(C1〜C5アルキル)‐1,3‐ブタジエン;アリール‐1,3‐ブタジエン;1,3‐ペンタジエン;または2,4-ヘキサジエンである。適切なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン;オルソ‐、メタ‐およびパラ‐メチルスチレン;市販“ビニルトルエン”混合物;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン;クロロスチレン;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼンまたはビニルナフタレンである。
【0034】
上記コポリマーは、99質量%と20質量%の間の量のジエン単位および1質量%と80質量%の間の量のビニル芳香族単位を含有し得る。上記エラストマーは、使用する重合条件、特に、変性剤および/またはランダム化剤の存在または不存在並びに使用する変性剤および/またはランダム化剤の量に依存する任意のミクロ構造を有し得る。これらのエラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリング化および/または星型枝分れ化或いは官能化し得る。例えば、カーボンブラックにカップリングさせるには、C‐Sn結合を含む官能基または、例えば、ベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができ;シリカのような補強用無機充填剤にカップリングさせるには、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、FR 2 740 778号またはUS 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、FR 2 765 882号またはUS 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、WO 01/92402号またはUS 6 815 473号、WO 2004/096865号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、EP 1 127 909号またはUS 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。また、他の官能化エラストマー類の例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0035】
ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン、または80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、0℃と−70℃の間、特に−10℃と-60℃の間のTg (ガラス転移温度 Tg、ASTM D3418に従って測定)、5質量%と60質量%の間特に20質量%と50質量%の間のスチレン含有量、4%と75%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量(モル%)および10%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のTgを有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−25℃と−50℃の間のTgを有するコポリマーが適している。ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量(モル%)、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量(モル%)および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量(モル%)を有するコポリマー、さらに一般的には、−20℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0036】
要するに、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、特に好ましくは、ポリブタジエン(BR)、合成ポリイソプレン(IR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる(高不飽和)ジエンエラストマーの群から選択する。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)およびそのようなコポリマーの混合物からなる群から選択する。
【0037】
1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、SBR (エマルジョン中で調製したSBR (“ESBR”)または溶液中で調製したSBR (“SSBR”)のいずれか)、或いはSBR/BR、SBR/NR (またはSBR/IR)、BR/NR (またはBR/IR)またはSBR/BR/IR (またはSBR/BR/IR)の各ブレンド(混合物)である。SBR (ESBRまたはSSBR)エラストマーの場合、特に、例えば20質量%と35質量%の間の量の中程度のスチレン含有量または、例えば35質量%〜45質量%の高スチレン含有量、15%と70%の間のブタジエン成分ビニル結合含有量、15%と75%の間のトランス‐1,4‐結合含有量(モル%)および−10℃と−55℃の間のTgを有するSBRを使用する;そのようなSBRは、有利には、好ましくは90%(モル%)よりも多いシス‐1,4‐結合を有するBRとの混合物として使用する。
【0038】
もう1つの特定の実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、主として(即ち、50phrよりも多くにおいて)、イソプレンエラストマーである。これは、特に、本発明の組成物を、タイヤにおいて、ある種のトレッド(例えば、産業用車両用の)、クラウン補強プライ(例えば、作動プライ、保護プライまたはフーププライ)、カーカス補強プライ、側壁、ビード、プロテクター、副層、ゴムブロック、およびこれらのタイヤ領域間の界面を与える他の内部ライナーのゴムマトリックスを構成するように意図する場合である。
【0039】
“イソプレンエラストマー”なる表現は、知られている通り、イソプレンホモポリマーまたはコポリマー、換言すれば、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、各種イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。イソプレンコポリマーのうちでは、特に、イソブテン/イソプレンコポリマー(ブチルゴム(IIR))、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン/ブタジエン/スチレン(SBIR)コポリマーが挙げられる。このイソプレンエラストマーは、好ましくは、天然ゴムまたは合成シス‐1,4‐ポリイソプレンである;好ましくは、これらの合成ポリイソプレンのうちでは、90%よりも多い、さらにより好ましくは98%よりも多いシス-1,4結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンを使用する。
【0040】
もう1つの特定の実施態様によれば、特に、タイヤ側壁、チューブレスタイヤの気密内部ライナー(または他の空気不透過性要素)を意図する場合、本発明に従う組成物は、少なくとも1種の本質的に飽和のジエンエラストマー、特に、少なくとも1種のEPDMコポリマーまたはブチルゴム(必要に応じて塩素化または臭素化した)を含有し得、これらのコポリマーは、単独で、または上述したような高不飽和ジエンエラストマー、特に、NRまたはIR、BRまたはSBRとの混合物として使用する。
【0041】
本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、−70℃と0℃の間のTgを有する1種以上の“高Tg”ジエンエラストマーと、−110℃と−80℃の間、より好ましくは−105℃と−90℃の間のTgを有する1種以上の“低Tg”ジエンエラストマーとのブレンドを含む。高Tgエラストマーは、好ましくは、S‐SBR、E‐SBR、天然ゴム、合成ポリイソプレン(好ましくは95%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有する)、BIR、SIR、SBIRおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択する。低Tgエラストマーは、好ましくは、ブタジエン単位を70%に少なくとも等しい含有量(モル%)で含む;低Tgエラストマーは、好ましくは、90%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するポリブタジエン(BR)からなる。
【0042】
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、上記ゴム組成物は、例えば、30〜100phr、特に50〜100phrの高Tgエラストマーを、0〜70phr、特に0〜50phrの低Tgエラストマーとのブレンドとして含む;もう1つの例によれば、上記ゴム組成物は、100phrの全体において、溶液中で調製した1種以上のSBRを含む。
本発明のもう1つの特定の実施態様によれば、本発明に従う組成物のジエンエラストマーは、90%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量(モル%)を有するBR(低Tgエラストマーとして)と1種以上のS‐SBRまたはE‐SBR (高Tgエラストマーとして)とのブレンドを含む。
【0043】
本発明の組成物は、単独のジエンエラストマーまたは数種のジエンエラストマーの混合物を含有し得、ジエンエラストマー(1種以上)は、ジエンエラストマー以外の任意のタイプの合成エラストマーと或いはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーさえと組合せて使用し得る。
【0044】
II‐2. 補強用無機充填剤
“補強用無機充填剤”なる表現は、この場合、知られている通り、カーボンブラックに対比して“白色”充填剤、“透明”充填剤または“非黒色”充填剤としてさえも知られている、その色合およびその起源(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;この無機充填剤は、それ自体単独で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤトレッドの製造を意図するゴム組成物を補強し得、換言すれば、無機充填剤は、トレッド用の通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る。そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0045】
好ましくは、補強用無機充填剤は、シリカ質充填剤もしくはアルミナ質充填剤、またはこれら2つのタイプの充填剤の混合物である。
使用するシリカ(SiO2)は、当業者にとって公知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/gであるBET比表面とCTAB比表面積を有する任意の沈降または焼成シリカであり得る。高分散性沈降シリカ(“HDS”と称する)は、特に本発明を低転がり抵抗性を示すタイヤの製造において使用する場合に好ましい。そのようなシリカの例としては、Degussa社からのUltrasil 7000シリカ類;Rhodia社からのZeosil 1165 MP、1135 MPおよび1115 MPシリカ類;PPG社からのHi-Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類を挙げることができる。
【0046】
使用する補強用アルミナ(Al2O3)は、好ましくは、30〜400m2/gの範囲、より好ましくは60m2/gと250m2/gの間のBET比表面積および大きくとも500nmに等しい、より好ましくは大きくとも200nmに等しい平均粒度を有する高分散性アルミナである。そのような補強用アルミナの非限定的な例としては、特に、“Baikalox A125”または“CR125”(Baikowski社)、“APA-100RDX”(Condea社)、“Aluminoxide C”(Degussa社)または“AKP-G015”(Sumitomo Chemicals社)のアルミナ類を挙げることができる。
【0047】
また、本発明のトレッドのゴム組成物において使用し得る無機充填剤の他の例としては、水酸化(酸化)アルミニウム、アルミノシリケート、酸化チタン、炭化または窒化ケイ素;例えば、出願WO 99/28376号、WO 00/73372号、WO 02/053634号、WO 2004/003067号およびWO 2004/056915号に記載されているような補強用タイプの全てを挙げることができる。
【0048】
本発明のトレッドを低転がり抵抗性を有するタイヤ用に意図する場合、使用する補強用無機充填剤は、特にシリカである場合、好ましくは、60m2/gと350m2/gの間のBET比表面積を有する。本発明の1つの有利な実施態様は、そのような充填剤の認められている高補強力故に、130〜300m2/gの範囲の高BET比表面積を有する補強用無機充填剤、特にシリカを使用することからなる。本発明のもう1つの好ましい実施態様によれば、好ましくは60m2/gと130m2/gの間のような場合の、130m2/g未満のBET比表面積を示す補強用無機充填剤、特にシリカを使用し得る(例えば、出願WO03/002648号およびWO03/002649号を参照されたい)。
【0049】
補強用無機充填剤を使用するその物理的状態は、粉末、マイクロビーズ、顆粒、球形または任意の他の適切な濃密形のいずれの形状であれ重要ではない。勿論、“補強用無機充填剤”なる表現は、種々の補強用無機充填剤の、特に、上述したような高分散性シリカ質および/またはアルミナ質充填剤の混合物を意味することも理解されたい。
【0050】
当業者であれば、補強用無機充填剤の量を、使用する無機充填剤の性質に応じて、さらに、関連するタイヤのタイプ、例えば、オートバイ用、乗用車用或いはバンまたは重量車両のような実用車用のタイヤに応じて如何に調整するかは承知していることであろう。好ましくは、この補強用無機充填剤の量は、20phrと200phrの間、より好ましくは30phrと150phrの間、特に40phrよりも多い、さらにより好ましくは60phrと140phrの間の量から選択する。
【0051】
本明細書においては、BET比表面積は、知られている通り、"The Journal of the American Chemical Society", Vol. 60, page 309, February 1938に記載されているBrunauer・Emmett・Teller法を使用して、さらに具体的には、1996年12月のフランス規格 NF ISO 9277の従って、ガス吸着によって測定する(多点容量測定法(5点法);ガス:窒素、脱ガス:160℃で1時間、相対圧力範囲 p/po:0.05〜0.17)。CTAB比表面積は、1987年11月のフランス規格 NF T 45-007 (方法B)に従って測定した外表面積である。
【0052】
最後に、当業者であれば、他の性質を有する補強用充填剤、特に、有機充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機充填剤によって被覆されているか或いはその表面に、官能性部位、特に、ヒドロキシル部位を含み、該充填剤と上記エラストマー間の結合を確立するためのカップリング剤の使用を必要とすることを条件として、この項で説明する補強用無機充填剤と等価の充填剤として使用し得ることを理解されたい。そのような有機充填剤の例としては、出願WO 2006/069792号およびWO 2006/069793号に記載されているような官能化ポリビニル芳香族有機充填剤がある。
【0053】
また、上記補強用無機充填剤は、有機補強用充填剤、特に、カーボンブラック、例えば、タイヤにおいて、特に、タイヤトレッドにおいて通常使用されるHAF、ISAFまたはSAFタイプのブラック(例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラック類;或いは、目的とする用途次第では、より高級シリーズのブラック類、例えば、N660、N683またはN772)と組合せて使用してもよい。カーボンブラックは、これらのカーボンブラックは、商業的に入手し得るような単離状態で、或いは任意の他の形で、例えば、使用するある種のゴム添加剤のための支持体として使用し得る。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、エラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0054】
補強用充填剤全体中に存在するカーボンブラックの量は、大幅に変動し得る;カーボンブラックの量は、好ましくは、補強用金属水酸化物の量よりも少ない。有利には、カーボンブラックは、極めて小割合、即ち、10phr未満の好ましい含有量で使用する。上記の範囲内では、カーボンブラックの着色特性(黒色着色剤)およびUV安定化特性の恩恵を、補強用無機充填剤によってもたらされる典型的な性能に悪影響を及ぼすことなく受けられる。勿論、本発明の組成物は、それ自体、完全に無カーボンブラックでもあり得る。
【0055】
II‐3. カップリング剤
本発明に従うカップリング剤として使用するオルガノシランは、下記の一般式Iを有する:

(HO)3-n R1n Si - Z - Sm - R2

(式中、R1は、同一または異なるものであって、各々、1〜18個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
R2は、1〜30個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
Zは、1〜18個の炭素原子を含む二価の結合基を示し;
nは、0、1または2に等しい整数を示し;そして、
mは、2以上の数を示す)。
【0056】
Zは、O、SおよびNから選ばれる1個以上のヘテロ原子を含有し得る。
好ましくは、nは1に等しく、mは2に等しい。
有利には:
R1は、メチル、エチル、n‐プロピルおよびイソプロピルから、好ましくはメチルおよびエチルから選ばれ;
Zは、C1〜C18アルキレンおよびC6〜C12アリーレンから選ばれる。
【0057】
1つの実施態様によれば、Zは、C1〜C10アルキレンから選ばれ、より好ましくは、Zは、C1〜C4アルキレンから選ばれる。
もう1つの実施態様によれば、R1はメチルである。
好ましくは、R2は、1〜18個の炭素原子を有するアルキルから選ばれ、さらにより好ましくは、R2はオクチルである。
特に適切である1つのカップリング剤は、(3‐(オクチルジスルファニル)プロピル)メチルシランジオールであり、その式(I)は、nが1に等しく、mが2に等しく、R1がメチルであり、Zがプロピレンであり、R2がオクチルである。
【0058】
nが1に等しく、mが2に等しい本発明に従う式(I)のオルガノシランは、下記の工程を含む合成方法に従って調製し得る:
・ジアゾジカルボキシレートに、下記の式(II)のメルカプタンを付加してチオヒドラジンを調製する工程:
R2‐SH
(式中、R2は、式(I)におけるのと同じ意味を有する);
・得られたチオヒドラジンを、下記の式(III)の第2のメルカプタンで置換する工程:
(R3O)2 R1 Si‐Z‐SH
(式中、R1およびZは、式(I)におけるのと同じ意味を有し;R3は、同一または異なるものであって、1〜6個の炭素原子を有する、好ましくは1〜3個の炭素原子を有するアルキルから選ばれる一価の炭化水素系基を示す);
・式(I)の目的オルガノシランを生ずることを可能にする加水分解を、酸性媒質中で実施する工程。
当業者であれば、そのようにして得られたオルガノシランジスルフィドに如何にしてイオウを付加してS2からSx (xは2よりも大きい)に至らせ得るかは理解していることに留意すべきである。
【0059】
当業者であれば、式(I)のオルガノシランの含有量を、本発明の特定の実施態様の、特に、使用する補強用無機充填剤の量の関数として如何にして調整するかは承知していることであろう;好ましい含有量は、補強用無機充填剤の量に対して2質量%と20質量%の間の量を示す;15%未満の含有量が特に好ましい。
【0060】
II‐5. 各種添加剤
また、本発明に従うトレッドのゴム組成物は、例えば、可塑剤または増量剤オイル(後者は芳香族性または非芳香族性のいずれかである);顔料;オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;疲労防止剤;補強用樹脂;例えば、出願WO 02/10269号に記載されているようなメチレン受容体(例えば、フェノール・ノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体のいずれかおよび/または過酸化物および/またはビスマレイミド類をベースとする架橋系;加硫促進剤;加硫活性化剤のような、タイヤの、特に、トレッドの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全てまたは数種も含み得る。
【0061】
好ましくは、これらの組成物は、好ましい非芳香族系または極めて僅かに芳香族系の可塑剤として、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、グリセリンエステル類(特に、トリオレート類)、好ましくは30℃よりも高い高Tgを示す炭化水素系可塑化用樹脂、およびそのような化合物の混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む。
【0062】
また、これらの組成物は、カップリング剤以外に、カップリング活性化剤、補強用無機充填剤用の被覆剤(例えば、官能基Yのみを含む)、或いは、知られている通り、ゴムマトリックス中での無機充填剤の分散を改善し且つゴム組成物の粘度を低下させることによって、未硬化状態における加工能力を改善するためのより一般的な加工助剤も含有し得る;これら助剤は、例えば、ヒドロキシシラン類またはアルキルアルコキシシラン類(特に、アルキルトリエトキシシラン類)のような加水分解性シラン類;ポリオール類;ポリエーテル類(例えば、ポリエチレングリコール類);第一級、第二級または第三級アミン類(例えば、トリアルカノールアミン類);ヒドロキシル化または加水分解性POS類、例えば、α,ω-ジヒドロキシポリオルガノシロキサン類(特に、α,ω-ジヒドロキシポリジメチルシロキサン類);例えば、ステアリン酸のような脂肪酸である。
【0063】
また、上述の補強用充填剤、即ち、補強用無機充填剤+必要に応じてのカーボンブラックには、目的とする用途に応じて、例えば着色タイヤ側壁またはトレッドにおいて使用することのできるクレー、ベントナイト、タルク、チョーク、カオリンの粒子のような不活性充填剤(即ち、非補強用充填剤)を添加することもできる。
【0064】
II-6. ゴム組成物の製造
本発明の組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の一般的手順に従う2つの連続する製造段階、即ち、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と180℃の間の最高温度までの高温で熱機械加工または混練する第1段階(“非生産”段階とも称する);および、その後の典型的には120℃よりも低い、例えば、60℃と100℃の間の低めの温度で機械加工する第2段階(“生産”段階とも称する)を使用して製造する;この仕上げ段階において架橋または加硫系を混入する。
【0065】
本発明の1つの好ましい実施態様によれば、加硫系を除いた本発明の組成物の全てのベース構成成分、即ち、上記の補強用無機充填剤、式(I)のカップリング剤およびカーボンブラックを、ジエンエラストマー中に、上記のいわゆる非生産段階において、混練により緊密に混入する、即ち、少なくともこれらの各種ベース構成成分をミキサー内に導入し、1以上の工程で、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と180℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する。
【0066】
例えば、第1(非生産)段階は、1回の熱機械的工程で実施し、その間に、必須構成成分の全て、任意成分としての補助的被覆剤および加工助剤、および加硫系を除いた他の各種添加剤を、標準の密閉ミキサーのような適切なミキサーに導入する。この非生産段階の総混練時間は、好ましくは、1分と15分の間の時間である。非生産第1段階においてこの方法で得られた混合物を冷却した後、加硫系を、一般に開放ミルのような開放ミキサー内で低温にて混入する。その場合、成分の全てを、数分間、例えば、2分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
【0067】
加硫系自体は、好ましくは、イオウと一次加硫促進剤、特に、スルフェンアミドタイプの促進剤とをベースとする。この架橋系に、上記の第1非生産段階中および/または生産段階中に混入した、例えば、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特に、ジフェニルグアニジン)等のような各種既知の加硫活性化剤または二次促進剤が加わる。加硫活性化剤または二次促進剤(亜鉛またはZnOのような亜鉛誘導体)の性質を考慮して所望の亜鉛含有量に適合させること、特に、完全に無亜鉛またはほぼ無亜鉛である(即ち、0.5phrよりも低い、好ましくは0.3phrよりも低い亜鉛含有量による)組成物を製造することが必要であることに留意すべきである。
イオウ含有量は、好ましくは、0.5phrと3.0phrの間の量であり、一次促進剤の含有量は、好ましくは、0.5phrと5.0phrの間の量である。
【0068】
その後、そのようにして得られた最終組成物を、例えば、特に実験室での特性決定のためのシート形状にカレンダー加工するか、或いは、例えば、乗用車用のタイヤトレッドとして使用し得るゴム形状要素の形に押出加工する。
加硫(即ち、硬化)は、知られている通り、一般的に130℃と200℃の間の温度で、特に硬化温度、使用する加硫系および検討中の組成物の加硫速度によって、例えば、5〜90分で変動し得る十分な時間で実施し得る。
【0069】
本発明は、“未硬化”状態(即ち、硬化前)および“硬化”または加硫状態(即ち、架橋または加硫後)の双方の上記ゴム組成物に関する。本発明に従う組成物は、単独で、またはタイヤ類の製造において使用し得る任意の他のゴム組成物とのブレンドとして(即ち、混合物として)使用し得る。
【0070】
III. 本発明の例示的な実施態様
III‐1 (3‐(オクチルジスルファニル)プロピル)メチルシランジオールの合成
(3‐(オクチルジスルファニル)プロピル)メチルシランジオールは、本発明の式(I)に従うカップリング剤である(式中、nが1に等しく、mが2に等しく、R1がメチルであり、R2がオクチルであり、Zがプロピレンである)。
【0071】
合成は、下記の反応スキームに従って実施される:
【化1】

【0072】
a) 化合物Aの合成
【化2】

【0073】
ジエチルエーテル(250mL)中のオクタンチオール(45.0g、0.308モル)の溶液を、−22℃に保ったジエチルエーテル(100mL)中のアゾジカルボン酸ジエチル (CAS番号 [1972‐28‐7]を有するDEAD) (51.0g、0.293モル)の溶液に15分に亘って滴下により添加する。反応媒質の温度は、−20℃と−25℃の間である。その後、反応媒質を、−20℃と−25℃の間の温度にて10〜15分間、室温にて1.0〜1.5時間撹拌する。溶媒を減圧(T浴21℃、11ミリバール)下に蒸発させた後、石油エーテル(400mL、40〜60℃留分)を添加し、混合物を−18℃に冷却する。ヒドラゾジカルボン酸ジエチルの沈降物(10.4g)を濾過し、低温石油エーテル(−18℃の2×20mL)で2回洗浄する。溶媒を減圧(T浴23℃、70ミリバール)下に蒸発させた後、生成物Aを、赤色油状物の形で得る。シリカカラム上でのクロマトグラフィー(溶出勾配:石油エーテル/酢酸エチル、10/1〜2/1)によるさらなる精製は、無色油状物の形の生成物A (58.3g、0.173モル)を59%の収率でもって収集するのを可能にする。1H NMRによって推定したモル純度は、90%よりも高い。
【0074】
b) 化合物Bの合成
【化3】

【0075】
3‐メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン (42.4g、0.235モル)を、化合物B (57.9g、0.181モル)に付加させる。反応は発熱性である。その後、反応媒質を120℃で2.0〜3.5時間撹拌する。冷却後、石油エーテル(550mL、40〜60℃留分)を添加する。混合物を12時間に亘って−18℃に冷却する。ヒドラゾジカルボン酸ジエチルの沈降物(28.9g、91%収率)を濾過し、石油エーテル(2×20mL、40〜60℃留分、−18℃)で2回洗浄する。溶媒を減圧(T浴45℃、12ミリバール)下に蒸発させた後、得られた油状物を真空下に蒸留する(収集した留分は、98℃ (3.0×10-2ミリバール)と102℃ (4.3×10-2ミリバール)の間の沸点を有する)。生成物B (53.8g、0.167ミリモル)を、無色油状物の形で92%の収率でもって得る。1Hおよび29Si NMRによって推定したモル純度は96%よりも高い(残りの4%は、反応しなかった生成物Aからなる)。
【0076】
c) 化合物Cの合成
【化4】

【0077】
化合物B (53.0g、0.163モル)を、0.5%の酢酸、水(105mL)およびエタノール(530mL)の混合物に添加する。溶液を室温で2〜3時間撹拌し、その後、混合物を水(3600mL)中に注入する。生成物をジエチルエーテル(3×300mL)で抽出する。溶媒を減圧(T浴21℃)下に蒸発させた後、得られた油状物(60 g)を、石油エーテル(850mL、40〜60℃留分)中で−20℃で12〜15時間に亘って再結晶化する。結晶(30.1g)を濾過し、石油エーテル(2×80mL、−18℃)で洗浄し、その後、減圧下に2〜3時間乾燥させる。濾液を200〜250mLまで減圧(T浴21℃)下に蒸発させ、−20℃で2〜3時間結晶化させた後、追加の結晶(5.4g)を濾過し、石油エーテル(2×25mL、−18℃)で洗浄し、その後、減圧下に2〜3時間乾燥させる。
【0078】
2つの留分を混合し、その後、石油エーテル(580mL、40〜60℃留分)、Et2O (230mL)の混合物中で12時間再結晶化させる。濾過し、石油エーテル(2×60mL、−18℃)で洗浄し、その後、残留溶媒を減圧下に2〜3時間蒸発させた後、生成物 C (30.1g、0.101モル)を、62%の収率でもって、57℃の融点を有する白色固形物の形で得る。1Hおよび29Si NMRによって推定したモル純度は、98%よりも高い。
収率を、母液の補完的結晶化によって70%に達し得る。
【0079】
III‐2 ゴム組成物の製造
以下の試験を、次の方法で実施する:ジエンエラストマー(SBRとBRのブレンド)、少量のカーボンブラックを補充したシリカ、上記カップリング剤を、その後、1〜2分間混錬した後に、加硫系を除いた各種他の成分を、70%充填し約90℃の初期容器温度を有する密閉ミキサー内に導入する。その後、熱機械加工(非生産段階)を、約165℃の最高“落下”温度に達するまで1工程(約5分に等しい総混錬時間)で実施する。そのようにして得られて混合物を回収し、冷却し、その後、被覆剤(存在する場合)および加硫系(イオウおよびスルフェンアミド促進剤)を、50℃の開放ミキサー(ホモフィニッシャー)において添加し、混ぜ合せた混合物を、約5〜6分間混合する(生産段階)。
【0080】
その後、そのようにして得られた組成物を、その物理的または機械的性質の測定のためのゴムシート(2〜3mm厚)または薄フィルムの形、或いは、所望寸法に切断および/または組立てた後に、例えば、タイヤ用の半製品として、特に、タイヤトレッドとして直接使用することのできる形状要素の形のいずれかにカレンダー加工する。
【0081】
III‐3 ゴム組成物の特性決定
III‐3.1 試験1
この試験の目的は、本発明に従うオルガノシランをカップリング剤として含む“標準”ゴム組成物の改良された特性(標準なる用語は、この場合、上記組成物がタイヤ用のゴム組成物において通常に使用する加硫系を含むことを意味するものと理解されたい)を、“標準”ゴム組成物ではあるが、補強用充填剤としてシリカを含むタイヤトレッド用のゴム組成物において一般的に使用するカップリング剤を使用するゴム組成物と比較して実証することである。
【0082】
このために、ジエンエラストマー(SBR/BRブレンド)をベースとし、高分散性シリカ(HDS)で補強する3通りの組成物を製造する;これらの組成物は、下記の技術的特徴において本質的に異なる:
・組成物C1は、カップリング剤として化合物TESPT (商標名:“Si69”)を含有する対照“標準”組成物である、
・組成物C2は、カップリング剤として化合物TESPD (商標名:“Si266”)を含有する“標準”組成物である、
・本発明に従う“標準”組成物C3は、カップリング剤として(3‐(オクチルジスルファニル)プロピル)メチルシランジオールを含む。
【0083】
組成物C1〜C3の緒性質を比較できるようにするため、組成物C2〜C3のカップリング剤は、対照組成物C1と比較してケイ素において等モルである含有量で使用する。
対照組成物C1において使用する通常のカップリング剤はTESPTである。TESPTは、下記の構造式を有するビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Et = エチル)であることを思い起こされたい:
【化5】

【0084】
組成物C2において使用するカップリング剤は、ビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドであるTESPDであり、従って、ジスルフィドでもあることから、本発明に従うカップリング剤、即ち、(3‐(オクチルジスルファニル)プロピル)メチルシランジオールにより近い。TESPDは、下記の式を有する:
【化6】

【0085】
表1および2は、各組成物の配合(表1:phr、即ち、エラストマー100質量部当り質量部で表す各種成分の含有量)を、さらにまた、硬化(150℃で約40分)前後のこれら組成物の諸性質を示している;加硫系は、イオウとスルフェンアミドとからなる。
【0086】
硬化前の性質に関する表2からの結果を検証するに、先ずは、対照組成物C1と比較して、カップリング剤として本発明に従う一般式(I)のオルガノシランを含む組成物C3のみが、スコーチ安全性を改良すること(C1の値よりも長いスコーチ時間T5)および組成物の加工性を著しく改良すること(組成物C1におけるよりもはるかに低いムーニー値、C1の値よりも30%低い)の双方を可能にすることを示している。
【0087】
また、本発明に従わない組成物C2も、組成物C1と比較して、良好なスコーチ安全性を有することに注目し得る。しかしながら、このスコーチ安全特性は、組成物C2のムーニー可塑度の高い値(未硬化状態で加工することを困難にする)を考慮すれば、十分に利用することは困難である。
【0088】
さらにまた、硬化後のこれら組成物の性質を観察すると、全く明白に、本発明に従う組成物C3は、ヒステリシスの大きな上昇が観察されている組成物C2 (an(δ)maxとΔG*の高い値)とは異なり、対照組成物C1のヒステリシスと全体的に等価であるヒステリシスを有することが示されている。ヒステリシスは、タイヤの転がり抵抗性の認識された指標である;ヒステリシスが低いほど、転がり抵抗性も低く、従って、そのようなタイヤを装着した自動車の燃料消費も低い。
【0089】
明らかに、カップリング剤として式(I)のオルガノシランを含む本発明に従う組成物は、対照標準組成物と比較して、等価であるか或いは改良さえされている性質(加工性、スコーチ安全性)を得ることを可能にしているようである。
【0090】
さらにまた、本発明に従うオルガノシランの使用は、環境の観点から特に有利であることにも注目し得る。特に、VOC(揮発性有機化合物)類の放出問題に対処することを可能にする。事実、本発明に従うオルガノシランは、ゴム組成物自体の製造中、また、これらの組成物を取込んでいるゴム物品の硬化中の双方におけるアルコール(TESPTおよびTESPDの場合はエタノール)の放出源であるアルコキシル基(TESPTまたはTESPDのエトキシル基のような)を何ら有していない。
【0091】
III‐3.1 試験2
この試験の目的は、本発明に従う無亜鉛ゴム組成物の改良された性質を、亜鉛を含まないが補強用充填剤としてシリカを含むタイヤトレッド用のゴム組成物において通常に使用するカップリング剤を使用するゴム組成物と比較して実証することである。
【0092】
このために、ジエンエラストマー (SBR/BRブレンド)をベースとし、高分散性シリカ(HDS)で補強する4通りの組成物を製造する;これらの組成物は、下記の技術的特徴において本質的に異なる:
・組成物C1は、試験1による組成物と同一である、亜鉛(1.5phrのZnO)とカップリング剤としての化合物TESPT (商標名:“Si69”)とを含有する対照“標準”組成物である;
・組成物C'1は、組成物C1に相応するが、亜鉛を含まない;
・組成物C'2は、亜鉛を含まず、化合物TESPD (商標名:“Si266”)をカップリング剤として含む組成物であり、
・本発明に従う組成物C'3は、亜鉛を含まず、(3‐(オクチルジスルファニル)プロピル)メチルシランジオールをカップリング剤として含む。
組成物C'3のみが本発明に従う。
【0093】
組成物C1およびC'1〜C'3の性質を比較できるようにするために、組成物C'1〜C'3のカップリング剤は、対照組成物C1と比較してケイ素において等モルである含有量で使用する。
【0094】
表3および4は、各組成物の配合(表3:phr、即ち、エラストマー100質量部当りの質量部で表した各種成分の含有量)を、さらにまた、硬化前のこれら組成物の性質を示す。
予期したとおり、表4を見るに、組成物C'1からの亜鉛の排除は、対照組成物C1と比較して、加工性の低下(ムーニー値の上昇)およびスコーチ時間T5の短縮、従って、スコーチ安全性の低下をもたらすことが観察されている。
組成物C'2は、許容し得るスコーチ時間T5を有するが、許容し得ない加工性の低下(ムーニー値の著しい上昇)有する。
【0095】
一方、全く驚くべきことに、本発明に従う組成物C'3は、通常の量で亜鉛を含む対照組成物C1と同等であるスコーチ時間のみならず、この同じ組成物と比較して大いに改良されている加工性も有することが観察されている。
【0096】
明らかに、カップリング剤として式(I)のオルガノシランを含む本発明に従う組成物は、本発明の式と異なる式を有するオルガノシランジスルフィドのような他のカップリング剤を含む組成物と異なり、亜鉛を使用しないで、上記対照標準組成物と比較して等価である或いは改良すらされている未硬化状態の性質を得ることを可能にしているようである。
【0097】
本発明に従うオルガノシランの使用は、試験1において述べたVOC類の放出問題に関連しての、また、ゴム組成物の加硫系からこの組成物の諸性質を悪化させることなく亜鉛を排除し得ることに関連しての環境の観点から特に有利であることに注目すべきである。
【0098】
【表1】

(1) 25%のスチレン、59%の1,2‐ポリブタジエン単位および20%のトランス‐1,4‐ポリブタジエン単位を含むSSBR (Tg = −24℃);乾燥SBRとして表した含有量 (9%のMESオイルで増量したSBR、即ち、76phrに等しいSSBR+オイルの総量);
(2) 0.7%の1,2‐、1.7%のトランス‐1,4‐、98%のシス‐1,4‐を含むBR (Nd) (Tg = −105℃);
(3) Rhodia社からの微小真珠形の“Zeosil 1165MP”シリカ (BETおよびCTAB:約150〜160m2/g);
(4) TESPT (Evonik‐Degussa社からの“SI69”);
(5) TESPD (Evonik‐Degussa社からの“Si266”);
(6) (3‐(オクチルジスルファニル)プロピル)メチルシランジオール (合成生成物);
(7) N234 (Evonik‐Degussa社);
(8) MESオイル (Shell社からの“Catenex SNR””);
(9) ポリリモネン樹脂 (DRT社からの“Dercolyte L120”);
(10) ジフェニルグアニジン (Flexsys社からのPerkacit DPG);
(11) マクロ結晶性とミクロ結晶性オゾン劣化防止ワックスの混合物;
(12) 酸化亜鉛 (工業級、Umicore社);
(13) N‐1,3‐ジメチルブチル‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン (Flexsys社からの“Santoflex 6‐PPD”);
(14) ステアリン(stearine) (“Pristerene 4931”、Uniqema社);
(15) N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアジルスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”)。
【0099】
【表2】

【0100】
【表3】

【0101】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記をベースとする、タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物:
・ジエンエラストマー;
・イオウ系架橋系;
・補強用充填剤としての無機充填剤;
・下記の一般式Iを有するカップリング剤:
(HO)3-n R1n Si − Z − Sm − R2
(式中、R1は、同一または異なるものであって、各々、1〜18個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
R2は、1〜30個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
Zは、1〜18個の炭素原子を含む二価の結合基を示し;
nは、0、1または2に等しい整数を示し;そして、
mは、2以上の数を示す)。
【請求項2】
nが、1に等しい、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
Zが、O、SおよびNから選ばれる1個以上のヘテロ原子を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
mが、2に等しい、請求項1〜3のいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
R1が、メチル、エチル、n-プロピルおよびイソプロピルから、好ましくはメチルおよびエチルから選ばれ;Zが、C1〜C18アルキレンおよびC6〜C12アリーレンから選ばれる、請求項1、2または4のいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
Zが、C1〜C10アルキレンから選ばれる、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
Zが、C1〜C4アルキレンから選ばれる、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
R1が、メチルである、請求項5〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
R2が、1〜18個の炭素原子を有するアルキルである、請求項5〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
R2が、オクチルである、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
mが2に等しく、R1がメチルであり、R2がオクチルであり、Zがプロピレンである、請求項5〜9のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
ジエンエラストマーが、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、天然ゴム、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜11のいずれか1項記載の組成物。
【請求項13】
前記補強用無機充填剤が、主要補強用充填剤である、請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
前記補強用無機充填剤が、シリカ質またはアルミナ質充填剤である、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
補強用無機充填剤の量が、50phr (エラストマー100質量部当りの質量部)よりも多い、好ましくは60phrと140phrの間の量である、請求項1〜14のいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
カップリング剤の含有量が、補強用無機充填剤の量に対して2質量%と20質量%の間の量、好ましくは15質量%未満を示す、請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
亜鉛含有量が、0.5phrよりも少ない、請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
(i) 少なくとも1種のジエンエラストマー中に、少なくとも(ii) 補強用充填剤としての無機充填剤、(iii) 下記の一般式Iを有するカップリング剤および(vi) イオウ系加硫系を、混練によって混入することを特徴とする組成物の製造方法:
(HO)3-n R1n Si − Z − Sm − R2
(式中、R1は、同一または異なるものであって、各々、1〜18個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
R2は、1〜30個の炭素原子を有する線状または枝分れのアルキル、シクロアルキルまたはアリールから選ばれる一価の炭化水素系基を示し;
Zは、1〜18個の炭素原子を含む二価の結合基を示し;
nは、0、1または2に等しい整数を示し;そして、
mは、2以上の数を示す)。
【請求項19】
下記の工程を含む、請求項18記載の方法:
・ジエンエラストマー中に、ミキサー内で、前記補強用充填剤と前記カップリング剤を、全ての成分を130℃と200℃の間の最高温度に達するまで1回以上熱機械的に混練することによって混入する工程;
・混合物を100℃よりも低い温度に冷却する工程;
・その後、前記加硫系を混入する工程;
・全ての上記成分を120℃よりも低い最高温度まで混練する工程;および、
・そのようにして得られたゴム組成物を押出またはカレンダー加工する工程。
【請求項20】
請求項1〜17のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤまたは半製品。
【請求項21】
請求項1〜17のいずれか1項記載のゴム組成物を含むタイヤトレッド。

【公表番号】特表2012−527498(P2012−527498A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511197(P2012−511197)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003114
【国際公開番号】WO2010/133371
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】