説明

オルガノハロシランの製造によって生じる使用済み材料又は微粉の凝集方法

オルガノハロシランの製造によって生じる粉末状の使用済み材料及び/又は粉末状の微粉を凝集するための方法であって、該使用済み材料及び/又は微粉を多糖類、とりわけデンプン及びデキストリン、から選択されるバインダーと混合することと;該使用済み材料+バインダーの混合物に対して3〜10重量%、好ましくは4〜8重量%の量の水を該混合物に添加することと;均質な混合物を得るために、先の工程で得られた固体混合物を攪拌することと;プレス機で圧縮することによって固体凝集生成物を製造することと;を含む方法並びにこれにより得られた凝集生成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は直接合成法によりオルガノハロシラン、とりわけメチルクロロシランを製造することで生じる粉末状の使用済み材料及び/又は粉末状の残留微粉の不活性化及び回収を可能とする凝集方法に関する。また、本発明は該凝集方法によって得られる生成物、及び該生成物の特に残留金属ケイ素及び銅のような金属の回収のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ロショー(Rochow)反応(銅基触媒の存在下での金属ケイ素とガス状塩化メチルの反応)によるメチルクロロシランの直接合成法の工業的使用は一般に流動層中で行われる。該方法では流動層を抜き取ったり、定期的に空にしたりすることが必要となり、その結果、使用済み材料及び残留微粉とでも呼ぶのが便宜であるものが生じる。これらの材料及び/又は残留微粉は粉末状であり、金属ケイ素の他に、酸化ケイ素及び塩素、水素又は酸素のような元素、更には銅、炭素、鉄、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、錫、マンガン等のような元素を含み得る。これらの粉末状使用済み材料及び粉末状の残留微粉は高い反応性を有しているため、これらをそのままの状態で取り扱ったり輸送したりすることは非常に難しく、不可能でさえすらある。とりわけ、これらは液状又は蒸気状の水と反応して水素を放出し、空気との接触により自己発熱性を示す。このような理由により、これらの使用済み材料は不活性化処理が施されなければならない。
【0003】
更に、使用済み材料及び微粉はケイ素及び銅のような成分を高い比率で含むので、回収することができれば有利であろう。
【0004】
US−A−5 342 430は、随意的に高温で、使用済み材料を水及び界面活性剤を含む水性媒体と反応させ、次いでリグノスルホナート、モンモリロナイト又はベントナイトのようなバインダーを導入し、該処理の後には水を除去することが可能な不活性化法を開示している。
【0005】
EP−A−0 287 934は、最初に使用済み材料を凝集し(ペレットの形成)、次いでこの凝集物に有機バインダーを含浸させる二段階法を開示している。有機バインダーは凝集中又はその後に凝集物に含浸するために適用される。バインダーは凝集物への浸透を確保するのに充分に低い粘度を有する液状有機バインダーとすることができ、或いは溶液又は水性エマルジョンとして適用することができる。有機バインダーは凝集物へ浸透し、その結束性を高めるものとして提示されている。有機バインダーにはグルコース、ゴム、接着剤、ビチューメン、ワックス、デンプン、及び好ましくは液状(とりわけ希釈水性溶液状)のリグニンが包含される。
【0006】
EP−A−201 199は粉末状の使用済み材料と水を混合して造粒し、該造粒物を不活性の無機粉末で被覆するのを推奨している。ケイ素を二酸化ケイ素に転換する(これによりケイ素の不活性化が可能となる。)ために(使用済み材料+水の混合物に対して)水が5〜50重量%使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、先行技術の方法は真に回収に関するものではなく、なかんずく不活性化を目的とするものである。これらの方法では、例えば冶金業界における輸送、取り扱い及び回収にはあまり適合しない量の水を含む生成物を生じる。
【0008】
従って、本発明の目的の一つは使用済み材料及び/又は微粉の効率的な不活性化と、輸送及び取り扱いができ、とりわけ冶金業界で回収操作(特にケイ素及び銅のような金属の回収)を直接受けることができる安定な固体生成物を得ることができる、直接合成によって生じる使用済み材料及び/又は微粉の処理のための新規方法を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的一つは最低のコスト、とりわけ最小限の数の工程で実施が可能な上記方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従って、本発明の主題はオルガノハロシランの製造によって生じる粉末状の使用済み材料及び/又は粉末状の微粉を凝集するための方法であって、
(i) 該使用済み材料及び/又は微粉を多糖類から選択されるバインダーと混合することと;
(ii) 該使用済み材料及び/又は微粉+バインダーの混合物に対して3〜10重量%、好ましくは4〜8重量%の量の水を該混合物に添加することと;
(iii) 均質な混合物を得るために、(ii)で得られた固体混合物を攪拌することと;
(iv) プレス機で圧縮することによって固体凝集生成物を製造することと;
を含む方法である。
【0011】
該方法により、少ない水の添加で、所定の形状を有する堅固で硬質な固体凝集物の形態で存在する非粉末状生成物の製造が可能となる。
【0012】
“使用済み材料”及び“残留微粉”なる表現は通例の意味を有する。これらは直接合成によって生じる使用済み物質及び微粉であると規定することができ、従って、本質的に金属ケイ素と、可能性として酸化ケイ素及び少量のその他の材料(例えば塩素、水素、酸素、銅、炭素、鉄、アルミニウム、亜鉛、カルシウム、錫、チタン、マンガン等)とを含む。
【0013】
好ましい多糖類としては、デンプン及びデキストリンが挙げられ、デンプンが好ましく、特にコムギデンプン又はトウモロコシデンプンが好ましい。異なる多糖類、デンプン及び/又はデキストリンの混合物、例えばコムギとトウモロコシデンプンの混合物、を使用することも本発明の範囲に入る。
【0014】
バインダー/使用済み材料の比率は重量比で、とりわけ0.1/1〜0.5/1であり、好ましくは0.15/1〜0.3/1である。明細書及び特許請求の範囲を通して特に断りのない限り、数値範囲に関しては境界が含まれることを指摘しておく。
【0015】
有利には、プレス機は圧縮成形により凝集生成物に一定の形状を与えるための手段を有する。ラムプレス及びロール型の製団機(briquette machine)のような、(型、キャビティ又は枠内での圧縮による成形又は凝集のために使用されるタイプの)任意の圧搾機を使用することができる。従って、使用されるプレス機は生成物を圧縮により凝集し、凝集生成物に最終的な形状を付与する型、キャビティ、又は枠を有する。
【0016】
本発明では、単純な円形又は半円形、円筒形又は半円筒形等の幾何学的形状を有するケーキ、ブリケット、又はペレット形が好ましい。
【0017】
ロール型の製団機は好ましい実施形態を構成する。該製団機は互いに向かい合う二つのロール(平行軸)を備え、少なくともその一つは回転駆動が可能なように配置され、少なくともその一つは所定形状のキャビティを備える。一般的には、両方のロールはとりわけ反対方向に回転駆動することができる。二つのロール間に調整可能なように圧力を掛けることができる。一方のロールを軸に固定し、もう一方のロールは適当な手段(とりわけピストン又はジャッキといった水圧手段)を用いて前者に圧力を掛けることができる。また、両方のロールは、例えば既述した水圧手段を使用することにより、所望の圧力を与えるために一方が他方へ可動可能としてもよい。このように、ロール型の製団機はロール間を通過する材料に圧力(好ましくは調整可能な圧力)を加え、該材料はこれらのロールの少なくとも一方の表面に設けられた所定形状のキャビティ中で成形される。好ましくは、両方のロールは相補的な形状のキャビティを有する。最終的な圧縮成形材料に対しては一方又は両方のロールが有するキャビティの形状を選択することによって任意の所望形状を与えることができる。
【0018】
良好な凝集を得るために、プレス機に加える圧力を調節することができる。典型的には、ロール型の製団機では、圧力は10〜80kN/cm(ロール幅)に調節することができる。
【0019】
ミキサー及びプレス機を通過すると温度上昇を伴うが、必要に応じて40〜100℃、好ましくは45〜70℃に維持するのが有利である。
【0020】
例示的には、製造される凝集物の単位体積は0.5〜20cm3で変化させることができる。言うまでもなく、上記数値は例示のためだけに与えられるものである。
【0021】
ロール型の製団機は仏国レーム(Raismes)に所在のSahut−Conreur社及び米国イリノイ州エルク・グルーブ・ヴィレッジ(Elk Grove Village)に所在のK.R.Komarek Incのような会社によって設計及び製造される。
【0022】
工程(i)、(ii)及び(iii)は同一のミキサー又はホモジナイザー中で行うのが好ましい。任意のタイプの固体ミキサーとすることができる。工程(i)及び(ii)での混合時間は数分程度とすることができる。工程(ii)では、水の添加は、例えば工程(i)で得られた混合物に単純に流し込むこと又は振りかけたり噴霧したりするといった、それ自体公知の方法で実施することができる。導入する水量は少ないが均質化は容易に起こる。
【0023】
ロール型の製団機へは一般にはロール間に材料を押し込むための供給装置によって供給される。供給装置は、例えば二つのロールの対向する表面の垂直上方に配置される、特にスクリュー装置又は類似の装置とすることができる。随意的な特徴によれば、ミキサーから出てくる混合物はこの供給装置を通過し、次にプレス機を通過する。
【0024】
本発明の方法によって得られた凝集物は自己発熱性や水との反応性を有しない。従って、該凝集物は規制によって命じられている特定の手段が要求されることなく取り扱いや輸送が可能である。
【0025】
また、該凝集物は金属ケイ素及びその他の金属(例えば銅)を回収するための出発材料として使用することができる。これらはとりわけケイ素冶金業界、銅冶金業界、鉄冶金業界及び鋳物のような事業で使用することができる。また、該凝集物はセラミック、耐火物等の製造に使用することもできる。
【0026】
本発明に係る方法の実施によって得られた又は得ることのできる固体凝集生成物もまた本発明の主題事項である。
【0027】
本発明の別の一つの主題事項は、直接合成によって生じる使用済み材料及び/又は微粉と、多糖類から選択されるバインダー(バインダー/使用済み材料の比率が重量比で0.1/1〜0.5/1、好ましくは0.15/1〜0.3/1である。)と、該使用済み材料+バインダーの混合物に対して3〜10重量%、好ましくは4〜8重量%の量の水とを含む凝集生成物である。該凝集物は硬質の固体生成物(例えば成形品)の形態、例えば単純な円形又は半円形、円筒形又は半円筒形等の幾何学的形状を有するケーキ、ブリケット又はペレットの形で存在し、例えば0.5〜20cm3の間の単位体積を有する。これは特に本発明に係る方法の実施によって得られた凝集生成物である。
【0028】
該凝集物では、バインダーはとりわけデンプン及び/又はデキストリンとすることができ、好ましくはデンプン(特にコムギデンプン又はトウモロコシデンプン)とすることができる。
【実施例】
【0029】
さて、本発明を本発明の実施形態を記述する実施例により説明するが、これらは限定的なものではない。
【0030】
実施例1
粉末状の使用済み材料3000グラム及び粉末状のコムギデンプン1290グラム(すなわち、使用済み材料の43重量%)を(Lodige社の水平ミキサー又は遊星形回転ブレード付ミキサーのような)固体ミキサー−ホモジェナイザーに入れて数分間混合した。次いで、水180グラム(すなわち、使用済み材料の6重量%)を添加して5分間混合を実施した。最後に、この均質化された固体混合物をスクリュー供給装置によってロール型の製団機に導入した。
スクリュー供給装置の回転速度:18回転/分
ロール型製団機(Sahut Conreur:型式D150)の特徴:
ギャップ:7/10mm
くぼみの体積:0.7cm3
ロールの回転速度:5回転/分
【0031】
得られた凝集物はBowes−Cameron試験(“危険物の輸送に関する勧告、試験及び基準マニュアル、改訂第3版、国際連合、ニューヨーク及びジェノバ、1999年”に従い、サンプルは24時間140℃のチャンバー温度を受ける。)にて非自己発熱性と評価され、水との接触で反応しなかった。
【0032】
実施例2
実施例1と同一の操作条件下で、使用済み材料3000グラム当たり、粉末状のコムギデンプン600グラム(すなわち、使用済み材料の20重量%)及び水180グラム(すなわち、使用済み材料の6重量%)を加えた。
【0033】
得られた凝集物はBowes−Cameron試験(サンプルは24時間140℃のチャンバー温度を受ける。)にて非自己発熱性と評価され、水との接触で反応しなかった。
【0034】
比較例3
実施例1と同一の操作条件下で、使用済み材料3000グラム当たり、粉末状のコムギデンプン600グラム(すなわち、使用済み材料の20重量%)を加えた。操作は上記と同様に実施したが水無しとした。
結果:凝集不足であり、自己発熱性であった。
【0035】
比較例4
実施例1と同一の操作条件下で、使用済み材料3000グラム当たり、粉末状のコムギデンプン600グラム(すなわち、使用済み材料の20重量%)及び水750グラム(すなわち、使用済み材料の25重量%)を加えた。
結果:粘着性の凝集生成物で、型から分離せず、プレス機のロールに付着し、自己発熱性の測定は不可能であった。
【0036】
添付の特許請求の範囲によって規定される本発明は上記で示した具体例に限定されるものではなく、本発明の範囲や精神から逸脱しない代替的な形態を包含するものであることを明確に理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルガノハロシランの製造によって生じる粉末状の使用済み材料及び/又は粉末状の微粉を凝集するための方法であって、
(i) 該使用済み材料及び/又は微粉を多糖類から選択されるバインダーと混合することと;
(ii) 該使用済み材料+バインダーの混合物に対して3〜10重量%、好ましくは4〜8重量%の量の水を該混合物に添加することと;
(iii) 均質な混合物を得るために、(ii)で得られた固体混合物を攪拌することと;
(iv) プレス機で圧縮することによって固体凝集生成物を製造することと;
を含む方法。
【請求項2】
多糖類がデンプン又はデキストリン、好ましくはコムギデンプン又はトウモロコシデンプンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
バインダー/使用済み材料の比率が重量比で0.1/1〜0.5/1であり、好ましくは0.15/1〜0.3/1であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(iii)が圧縮成形のための手段を備えたプレス機、好ましくはロール型の製団機を使用することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(iv)における温度が50〜100℃、好ましくは45〜70℃に達することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の方法を実施することによって得ることが可能な固体凝集生成物。
【請求項7】
直接合成によって生じる使用済み材料及び/又は残留微粉と、多糖類から選択されるバインダー(バインダー/使用済み材料の比率が重量比で0.1/1〜0.5/1、好ましくは0.15/1〜0.3/1である。)と、該使用済み材料+バインダーの混合物に対して3〜10重量%、好ましくは4〜8重量%の量の水とを含む固体凝集生成物。
【請求項8】
デンプン、好ましくはコムギデンプン及び/又はトウモロコシデンプンを含む請求項7に記載の生成物。
【請求項9】
好ましくは0.5〜20cm3の単位体積を有する、凝集成形品の形態で存在することを特徴とする請求項7又は8に記載の生成物。

【公表番号】特表2007−501266(P2007−501266A)
【公表日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530328(P2006−530328)
【出願日】平成16年4月30日(2004.4.30)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001048
【国際公開番号】WO2004/104012
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【氏名又は名称原語表記】RHONE−POULENC CHIMIE
【Fターム(参考)】