オレフィンの製造方法
【課題】炭化水素フィードストックを軽質オレフィンを含む流れに変換する炭化水素フィードストックの転換方法。
【解決手段】少なくとも25重量%のC5+パラフィンを含むフィードストック(供給原料)を結晶質ケイ酸塩の触媒を収容した反応装置を通過させてプロピレンを含む流れを生産する。
【解決手段】少なくとも25重量%のC5+パラフィンを含むフィードストック(供給原料)を結晶質ケイ酸塩の触媒を収容した反応装置を通過させてプロピレンを含む流れを生産する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラフィン含有の炭化水素原料(フィードストック)を軽質オレフィン、特にプロピレンを含む流れに変換する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油化学工業ではポリマーの生産、特にポリエチレンおよびポリプロピレンの生産のために軽質オレフィン(例えばエチレンおよびプロピレン)に対する需要が増加している。
特に、プロピレンの製品価値は次第に上がっており、種々の炭化水素フィードストックを変換してプロピレンを製造するというニーズがある。
【0003】
パラフィンを軽質オレフィンに転換してエチレンとプロピレンを含む流れを作ることは古くから公知である。従来法ではパラフィンを高温(750℃以上)で蒸気の存在下に熱的にクラッキングする。この方法で得られる流れの主生成物はエチレンであり、第二の主生成物はプロピレンであり、それに続いて不飽和物、例えばジエン類を豊富に含む重質炭化水素である。主生成物としてプロピレンが得られるようにスチームクラッキング方法を変えることはできない。しかも、より重質なジエン−リッチなカットはさらに揮発処理(valorisation)しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、パラフィンを含む炭化水素フィードストックを転換して、軽質オレフィン、特にプロピレンを含む流れを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、プロピレンの収率および純度が高いプロピレンの生産方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、プロピレンを容易にカット可能なオレフィン流を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、経時的に安定した変換率および安定性で軽質オレフィン、特にプロピレンを含む流れを生産することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、炭化水素フィードストックを軽質オレフィンを含む流れに変換するプロセスにおいて、少なくとも25重量%のC5+パラフィンを含むフィードストックを結晶質ケイ酸塩触媒を収容した反応装置を通過させてプロピレンを含む流れを生産することを特徴とする炭化水素フィードストックの転換方法を提供する。
【0006】
本発明方法は、C4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストック・カットに、少なくとも一種のC6+パラフィン(好ましくは直鎖)を加えて炭化水素フィードストックを形成する段階をさらに含むのが好ましい。
少なくとも一種のC6+パラフィンは少なくとも一種のC6〜20直鎖パラフィンから成るのがさらに好ましい。
【0007】
炭化水素フィードストックは1〜80重量%の少なくとも一種のC6+直鎖パラフィンと、20〜99重量%のC4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストックカットとから成るのが好ましい。
炭化水素フィードストックは少なくとも一種のC4+オレフィンを含むのが好ましい。
【0008】
C4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストックカットは、C4カット(水素化した粗C4、ラフィネートIおよびラフィネートII等)と、FCC、コークス製造装置(coker)またはビスブレーカ(visbreaker)装置からの分解ガソリンカットとの混合物から成る。
【0009】
結晶質ケイ酸塩は珪素/アルミニウム原子比が120〜1000であるMFI−タイプの結晶質ケイ酸塩である。このMFI−タイプの結晶質ケイ酸塩はシリカライト(silicalite)から成るのが好ましい。
【0010】
炭化水素フィードストックは反応装置入口での温度を500〜600℃、好ましくは550〜600℃、より好ましくは約575℃にして結晶質ケイ酸塩上を通過させるのが好ましい。
炭化水素フィードストックは、液体空間速度(LHSV)を5〜30h-1、好ましくは5〜15h-1にして結晶質ケイ酸塩上を通過させるのが好ましい。
炭化水素フィードストックは、0〜2バール、好ましくは1〜2バール、より好ましくは約1.5バールの圧力で結晶質ケイ酸塩上を通過させるのが好ましい。
【0011】
従って、本発明は、精製装置および石油化学プラントからのパラフィンを含む流れ(プロダクト、生成物)を軽質オレフィンのみへ、特にプロピレンへ選択的に転換するプロセスを提供する。上記流れはプロピレンのような軽質オレフィンに転換されるオレフィンを含むことができる。特に、直鎖のC5〜C20パラフィン、特にC6+パラフィンが軽質オレフィン、特にプロピレンへ転換される。
以下、添付図面を参照して本発明の実施例の各種観点をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】および
【図2】は本発明の実施例1でのオンストリーム時間(time on stream、TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図1)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図2)を示す図。
【図3】および
【図4】は本発明の実施例2でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図3)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図4)を示す図。
【図5】は本発明の実施例2でのオンストリーム時間(TOS)に対するパラフィンの変換度の関係を示す図。
【図6】および
【図7】は本発明の実施例3でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図6)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図7)を示す図。
【図8】は本発明の実施例3でのオンストリーム時間(TOS)に対するパラフィンの変換度の関係を示す図。
【図9】および
【図10】は本発明の実施例4でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図9)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図10)を示す図。
【図11】は実施例4でのオンストリーム時間(TOS)に対するcy-C6パラフィンの変換度の関係を示す図。
【0013】
【図12】および
【図13】は本発明の実施例5でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図12)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図13)を示す図。
【図14】は実施例4でのオンストリーム時間(TOS)に対するn-C8パラフィンの変換度の関係を示す図。
【図15】および
【図16】は本発明の実施例6でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図15)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図16)を示す図。
【図17】は実施例6でのオンストリーム時間(TOS)に対するn-C7パラフィンの変換度の関係を示す図。
【図18】および
【図19】は本発明の実施例7でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図18)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図19)を示す図。
【図20】は実施例7でのオンストリーム時間(TOS)に対するパラフィンの変換度の関係を示す図。
【0014】
【図21】および
【図22】は本発明の実施例8でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図21)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図22)を示す図。
【図23】は実施例8でのオンストリーム時間(TOS)に対するn-C10パラフィンの変換度の関係を示す図。
【図24】および
【図25】は本発明の実施例9でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図24)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図25)を示す図。
【図26】は実施例9でのオンストリーム時間(TOS)に対するn-パラフィンの変換度の関係を示す図。
【図27】は実施例9でのオンストリーム時間(TOS)に対すイソパラフィンの変換度の関係を示す図。
【図28】は比較例1でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を用いることでパラフィンを含むフィードストックを軽質オレフィン、特にエチレンとプロピレン、そして選択的にプロピレンを含む流れへ触媒変換することができる。本発明の方法は、少なくとも25重量%のC5+パラフィンを含む炭化水素フィードストックを結晶ケイ酸塩触媒を収容した反応装置に通してプロピレンを含む流れを作ることから成る。パラフィンを含むフィードストックは精製装置または石油化学プラントからの流れにすることができる。あるいは、これらの流れの少なくとも2つを合わせ、必要に応じて一種または複数の別のパラフィンの流れと一緒に合わせて形成することができる。従って、本発明方法はC4+パラフィンを含む少なくとも一種のC4+炭化水素フィードストックカットを加えて上記炭化水素フィードストックを形成する段階をさらに含むことができる。少なくとも一種のC6+パラフィンはC6〜20パラフィンから成ることができる。加えるパラフィンは直鎖にすることができる。炭化水素フィードストックは1〜80重量%の少なくとも一種のC6+パラフィンと、99〜20重量%のC4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストックカットとから成ることができる。
【0016】
フィードストックは直鎖パラフィンとイソパラフィンとシクロパラフィンとを含むパラフィン混合物を含む単一の精製装置からの流れで構成することができる。例としては飽和C5〜9パラフィンとナフテンとから成る直留ナフサがある。直鎖パラフィンは本発明の進行中に部分的にオレフィンに転換されるが、イソパラフィンおよびシクロパラフィンはほとんど転換せず、多重分枝パラフィンの場合には実質的に変換しない。そのため本発明方法ではパラフィン類の中でイソ−パラフィンの含有量がフィードストックよりも得られる生成流中の方が相対的に豊富になる。この流れは次のスチームクラッキングプロセスでのフィードストック用として使用したり、ガソリンまたは灯油生産のためのブレンディングフィードストックとして使用するのに適している。
【0017】
炭化水素フィードストックはパラフィンの他に少なくとも一種のC4+オレフィンを含むことができる。このオレフィンはプロピレンのようなより低級なオレフィンへ転換される。これによってパラフィン単独をクラッキングするのに比べて反応装置の熱バランスを改善できる。
【0018】
本発明の一つの実施例ではフィードストックは45〜40重量%のオレフィンと55〜60重量%のパラフィンとから成る。パラフィンでは55〜60重量%がC5で、オレフィンでは20〜30重量%がC5である。
本発明の他の実施例ではフィードストックは73〜80重量%のパラフィンと27〜20重量%のオレフィンとから成る。パラフィンでのC5の量は全フィードストック(パラフィン+オレフィン)の少なくとも25%である。オレフィンの12〜18重量%はC5である。
本発明の他の実施例ではフィードストックは60〜65重量%のパラフィンと40〜35重量%のオレフィンから成る。パラフィンの45〜55重量%はC5であり、オレフィンの20〜35重量%はC5である。
本発明の他の実施例ではフィードストックは60〜70重量%がパラフィン(その少なくとも42重量%がC5から成る)、20〜30重量%がオレフィン、5〜10重量%が芳香族化合物である(全体で100重量%)。
【0019】
本発明の好ましい方法では炭化水素フィードストックはMFI-タイプまたはMEL-タイプの結晶質ケイ酸塩触媒、例えばシリカライトの存在下で選択的に転換され、得られる流れ中にプロピレンが生産される。触媒およびプロセス条件はプロセスが、生成流中のプロピレンの収率が多くなるように選択される。
【0020】
本発明の好まし実施態様では、上記触媒はMFIまたはMELファミリー(ZSMでもよい)の結晶質ケイ酸塩、シリカライト、このファミリーの他のケイ酸塩から成る。3文字「MFI」または「MEL」は「Structure Commission of the International Zeolite Association」が決めた結晶質珪酸塩の構造タイプを表す。「MFI」珪酸塩の例はZSM−5およびシリカライトであり、「MEL」珪酸塩の例はZSM−11である。
【0021】
好まし結晶質ケイ酸塩は10酸素リング環(ten oxygen rings)よって定義されるポア(気孔)またはチャネルと高い珪素/アルミニウム原子比とを有する。
【0022】
結晶質ケイ酸塩は酸素イオンを介して互いに結合したXO4四面体の枠組み(ここで、Xは三価(例えばA1、B...)または四価(例えばGe、Si..)である)をベースにしたミクロポーラスな結晶質無機ポリマーである。結晶質ケイ酸塩の結晶構造は四面体の単位のネットワークを結合している各順番で定義される。結晶質ケイ酸塩の気孔の開口寸法は四面体の単位の数または気孔を形成するのに必要な酸素原子気孔中に存在するカチオンの種類とで決まる。結晶質ケイ酸塩は各種特性のユニークな組合せを有し、内部表面積が高く、一つまたは複数のディスクリートな寸法の均一な気孔を有し、イオン交換性があり、熱安定性に優れ、有機化合物を吸着する能力がある。この結晶質ケイ酸塩の細孔は大抵の重要な実際の有機分子に類似しているので、反応物および生成物の出入りを制御し、触媒反応に選択性が得られる。MFI構造を有する結晶質ケイ酸塩は下記の細孔直径を有する双方向性のインタセクティングな細孔系を有している:[010]に沿った真直ぐなチャネル:0.53〜0.51ナノメートル、 [100] に沿った正弦波のチャネル:0.51〜0.53ナノメートル。
【0023】
上記結晶質ケイ酸塩触媒は構造上および化学的な特性を有するものを特定の反応条件下で使用する。それによって軽質オレフィン、特にプロピレンを形成する触媒変換が容易に進む。
触媒は珪素/アルミニウム原子比が高く、従って、酸度が相対的に低いのが好ましい。本明細書で「珪素/アルミニウム原子比」という用語は材料全体のSi/Al原子比を意味し、化学分析で決定できる。特に、結晶質ケイ酸塩材料の場合、Si/Al原子比は結晶質ケイ酸塩のSi/Alフレームワークに適用されるのでなく、材料全体に適用する。
【0024】
触媒上では種々の異なる反応が起こる。水素転移反応は触媒上での酸性部位の強度および濃度に直接に関連し、その反応は高いSi/Al比を使用することによって抑制される。それによって転換プロセス中のコークスの発生を避けることができ、触媒の安定度を上げることができる。さらに、Si/Al原子比の高い触媒を使用するとプロピレンの選択性が増加し、生じるプロパンの量が減り、および/または、プロピレン/エチレン比を増加させることができるということが分かっている。これによって得られるプロピレンの純度が上がる。
【0025】
本発明の一つの観点から、結晶ケイ酸塩触媒の珪素/アルミニウム原子比は高く、120〜1000、好ましくは180〜500で、触媒は相対的に低い酸度を有する。水素転移反応は触媒上の酸性部位の強度および濃度に直接関連し、この反応を抑制し、コークスの発生を阻止する。コークスの発生は経時的な触媒安定性を低下させる。この水素転移反応は飽和物、例えば不安定な中間ジエン類、シクロオレフィンおよび芳香族化合物を生じさせ、軽質オレフィンへの変換に貢献しない。シクロオレフィンは固体酸、例えば酸性固体触媒の存在下での芳香族化合物およびコークス状分子の前駆体である。触媒の酸度は触媒上の残留アムモニアの量によって決定される。触媒とアムモニアとを接触させて触媒上の酸性部位にアムモニアを吸着させ、次に高温度でアンモニウム基を脱着させ、それを示差熱重量分析で測定する。
【0026】
結晶ケイ酸塩触媒の珪素/アルミニウム比が高いので炭化水素フィードストックが安定して変換され、8〜50%、好ましくは12〜35%の高いプロピレン収率を得ることができる。プロピレンの選択性は生成流中のプロピレン/エチレン重量比が一般に2〜5重量%および/またはプロピレン/プロパン重量比が一般に5〜30重量%となる選択性である。触媒の珪素/アルミニウム比がこのように高いので触媒の酸度が減り、触媒の安定性が増加する。
【0027】
本発明の触媒転換プロセスに用いる珪素/アルミニウム原子比が高いMFI触媒またはMEL触媒は市販の結晶質ケイ酸塩からアルミニウムを除去することによって製作することができる。典型的な市販のシリカライトは珪素/アルミニウム原子比が約120である。市販のMFIまたはMEL結晶質ケイ酸塩はスチームプロセスによって改質でき、結晶質ケイ酸塩のフレームワークの四面体中のアルミニウムを減らし、アルミニウム原子を非晶質アルミナの形でオクタヘドラルアルミニウムへ転換することができる。このスチームプロセスではアルミニウム原子は結晶質ケイ酸塩のフレームワーク構造から化学的に除去されてアルミナ粒子の形になり、この粒子がフレームワーク中の気孔またはチャネルの一部を塞ぐことになる。それによって本発明の転換プロセスが阻害される。従って、スチームプロセス後に結晶質ケイ酸塩を抽出処理して、非晶質アルミナを気孔から除去し、ミクロ孔の容積の少なくとも一部を回復させる。水可溶性アルミニウム錯体を作るリーチング処理を行なって気孔から非晶質アルミナを物理的に除去することでMFIまたはMELの結晶質ケイ酸塩の全体的脱アルミニウム化を行なう。このように、MFIまたはMELの結晶質ケイ酸塩フレームワークからアルミニウムを除去することによって気孔からアルミナを除去する。このプロセス目的は触媒の気孔表面全体にわたって実質的に均一な脱アルミニウム化を行なうことにある。それによって触媒の酸度を下げ、転換プロセス中に水素転移反応が起こるが減る。酸度の低下は結晶ケイ酸塩フレームワークによって規定された気孔の全体で理想的に実質的に均一に起こる。これは、炭化水素の転換プロセスでは炭化水素種が気孔中に深く浸入することができるためである。従って、MFIまたはMEL触媒の安定性を向上させる酸度の低下および水素転移反応の減少がフレームワーク中の多孔構造全体で起こる。このプロセス後にフレームワーク中の珪素/アルミニウム比はl50〜500まで増加する。
【0028】
MFIまたはMELの結晶質ケイ酸塩触媒は結合剤、好ましくは無機結合剤と混合することができ、所望形状、例えば押出しペレットの形にすることができる。結合剤は触媒の製造プロセスおよび触媒を用いた転換プロセスで使用する温度、その他の条件に耐えられるように選択する。結合剤はクレー、シリカ、ZrO2のような金属酸化物および/または金属またはシリカと金属酸化物との混合物を含むゲルから選択される無機材料である。結合剤はアルミナを含まないのが好ましい。しかし、不活性で、酸性特性がないAlPO4中のようなある種の化合物中のアルミニウムを使用することができる。結晶質ケイ酸塩と一緒に使用する結合剤それ自体が触媒活性を有する場合には、それが触媒の変換性および/または選択性を変えることになる。不活性な結合剤材料は変換量を制御するのに適した希釈剤として使用でき、生成物を経済的かつ規則的に得ることができ、他の手段を使用せずに反応速度を制御することができる。耐破砕強度を有する触媒を可溶するのが望ましい。すなわち、商業的な使用では触媒が粉末材料に分解されるのを防ぐのが望ましい。クレーまたは酸化物の結合剤は一般に耐破砕強度を改善するためにだけ使用される。本発明触媒で特に好ましい結合剤はシリカである。
【0029】
細かく粉砕した結晶質ケイ酸塩材料と結合剤の無機酸化物マトリックスとの相対比率は広範囲で変えることができる。結合剤の含有量は複合触媒の重量を基にして一般に5〜95重量%であり、より一般的には20〜50重量%である。こうした結晶質ケイ酸塩と無機酸化物結合剤との混合物は「フォームレイトされた」結晶質ケイ酸塩と呼ばれる。触媒と結合剤とを混合する場合、触媒はペレットにフォームレイトし、他の形状に押出され、あるいは噴霧乾燥粉末にされる。
【0030】
結合剤と結晶質ケイ酸塩触媒とは一般に押出し成形で混合される。この成形方法では、ゲルの形の結合剤(例えばシリカ)は結晶ケイ酸塩触媒材料を混ぜ合わせられる、そして、結果混合物は所望の形(例えばペレット)に押し出される。その後、フォームレイトフォームレイトされた結晶質ケイ酸塩を空気中または不活性ガス中で一般に200〜900℃の温度で1〜48時間仮焼する。
【0031】
結合剤はアルミニウム化合物、例えばアルミナを含まないのが好ましい。これは既に述べたように好ましい触媒は選択された珪素/アルミニウム比を有する結晶質ケイ酸塩であるためである。結合剤中にアルミナが存在し、結合剤添加段階をアルミニウム抽出段階前に行うと過剰なアルミナが生じることになる。アルミニウム抽出後にアルミニウムを含む結合剤を結晶ケイ酸塩触媒に混合した場合には触媒が再アルミン酸塩化される。結合剤中にアルミニウムが存在すると触媒のプロピレン選択性が低下し、触媒の経時的安定性が低下する傾向にある。また、結合剤と触媒との混合は任意段階のスチーム処理段階の前または後に行なうこともできる。
【0032】
高い安定度、数日以上、例えば5日以上安定したプロピレン収率を与えることができる好ましい触媒が種々見出されている。これによって触媒転換プロセスを2つの平行した「スイング」(1方の反応装置を運転している時に他方の反応装置で触媒を再製する)反応装置で連続的に実行することができる。この触媒は複数回再生できる。さらに、この触媒はフレキシブルで、フィードストックとしては純粋物でも、石油精製装置または石油化学プラント等の異なる供給源の互いに異なる組成物から来る混合物でも使用できる。
【0033】
本発明の触媒転換方法のプロセス条件はプロピレンの選択性が高くなり、全時間でプロピレンが安定して変換され、生成流中で生成物の分布が安定する方向を選択する。この目的は触媒中の酸濃度が低く(すなわち、Si/Al原子比が高く)、低い圧力を使用し、入口温度を高くし、接触時間を短くするのに有利である。これらのプロセスパラメータの全ては互いに関連し、全体の累積効果(例えば高圧力が高い入口温度で相殺または補償できる)を与える。プロセス条件は芳香族化合物およびコークス前駆体を発生させる水素転移反応が起こらないように選択する。従って、プロセス運転条件としては高い空間速度、低い圧力および高い反応温度を使用する。
【0034】
炭化水素フィードストックの液体空間速度(LHSV)は5〜3Oh-1、好ましくは5〜15 h-1であるのが好ましい。パラフィンを含む炭化水素フィードストックは反応装置を通してフィードストックを運ぶのに十分トータル入口圧力で供給するのが好ましい。反応装置の全絶対圧力は0〜2バールにするのが好ましい。フィードストックの入口温度は500〜600℃、好ましくは550〜600℃、より好ましくは約575℃にするのが好ましい。
【0035】
本発明の触媒転換プロセスは固定床式反応器、移動層型反応器または流動層式反応器で実行することができる。典型的な流動層反応器は石油精製で流動層接触分解用に使用されるFCC型のものである。典型的な移動層型反応器は連続接触改質型である。上記で述べた
ように一組の平行した「スイング」固定床式反応器をもちいることでプロセスを連続的に実行することができる。
【0036】
本発明触媒は長時間、一般には少なくとも約5日間高い安定度を示すので、触媒の再製頻度は低い。特に、触媒の寿命は1年以上になる。
【0037】
生成流の軽質留分れ(すなわちC2およびC3カット)は90重量%以上のオレフィン(エチレンおよびプロピレン)を含むことができる。これらのカットは化学的グレードのオレフィンフィードストックとするのに十分な純度である。本発明プロセスのプロピレン収率は8〜50重量%にすることができる。プロピレン/エチレン重量比は一般に2〜5、多くの場合、2.5〜4.0である。プロピレン/プロパン重量比は一般に5〜30、多くの場合8〜20である。これらの比は上記で述べたパラフィンからオレフィンを作る公知の加熱クラッキング法で得られるものよりも高い。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
実施例1(P34-057)
実施例1では、ベンチスケールの固定床式反応器中にMFI-タイプのフォーミュレーションされた結晶ケイ酸塩触媒を入れた。この触媒はシリカライトから成り、その珪素/アルミニウム原子比は268(0.168重量%のアルミニウム)である。
この触媒はUOPから入手可能なシリカライト触媒(14/7499;UOP#62-1770)で三つ葉(trilobes)の形をしている。フォーミュレーションされた触媒を粉砕し、35〜45メッシュの粒子は保持し、テストした。
ベンチスケール反応装置の直径は11mmで、充填した触媒は約6.7gである。反応装置は出口での圧力を1.5バールにして運転した。反応装置にC5ガソリンベースのカットからなる炭化水素フィードストックを供給した。このコンバインされたフィードストックは約58.9重量%パラフィンと、41.1重量%オレフィンとを含み、主として下記のパラフィン成分(概略の重量パーセント):i-C5:50.71重量%、n-C5:6.93重量%を含み、主として下記のオレフィン成分(概略の重量パーセント):i-C5:2.73重量%、t-2C5:16.19重量%、c-2C5:7.25重量%、2Me2C4:7.40重量%およびcy-C5:2.68重量%を含んでいる。LHSVは9.45h-1にした。反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
【0039】
[図1]はオンストリーム時間(TOS)に対する流れ中のオレフィンとオレフィン純度との間の関係を示し、[図2]はオンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との間の関係を示す。オレフィンベースのオレフィン収率はフィードのオレフィン含有量で割ったフィードベースの収率で定義される。
[図1]から分かるようにプロピレンは流れ約14〜13重量%であり、C3純度はプロピレンが95%以上である。[図2]はオレフィンベースのプロピレン収率が30%以上であることを示している。このプロピレン収率はTOSのほぼ100時間を通じて維持された。
フィードストックの初期オレフィン/パラフィン重量比は0.70であり、流れの最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.65であった。従って、流れ中で多量のプロピレンが生じたが、触媒クラッキングの結果としてオレフィンの比率が全体として減少した。
この触媒テストの終わりに窒素中に2容積%の酸素を含む気体中で開始温度530℃、終了温度575℃で約24時間かけて触媒を再生した。炭化水素フィードを導入する前に反応装置を窒素でパージした。
【0040】
実施例2(P34-064)
実施例2では同じ触媒、圧力および反応装置入口温度を用いて実施例1のプロセスを繰り返したが、LHSVはわずかに増加させ、フィードストックを変えた。すなわち、実施例1のガソリンカットに追加のパラフィン成分を添加した。結果は[図3][図4][図5]に示してある。
C5ガソリンベースカット(実施例1で使用)に追加のシクロ−および−ノルマル−パラフィン(cy−C6、n−C6、n−C7、n−ClO、n−C12)を加えた炭化水素フィードストックを反応装置に供給した。合せたフィードストックは約76.2重量%のパラフィンと、23.8重量%のオレフィンとを含んでいる。主たるパラフィン成分は下記である(略重量パーセント):i-C5:29.36重量%、n-C5:4.04重量%、n−C6:9.78 重量%、cy−C6:9.83重量%、n−C7:10.04重量%、n−C10:8.92重量%、n−C12:3.33重量%。主たるオレフィン成分は以下である(略重量パーセント):i-C5:1.57重量%、t−2C5:9.44重量%、c−2C5:4.14重量%、2Me2C4:4.33重量%、cy−C5:1.59重量%。LHSVは11.2h-1にした。反応装置入口温度は575℃にした。生成流の組成物を全期間を通じて分析した。約95時間後に、オンストリームで圧力を2バールに上げた。
【0041】
[図3]と[図4]からプロピレンの収率が約11-10 重量%であり、これはオレフィンベース(基準)のプロピレン収率が40重量%以上になることを教えている。プロピレン純度は約90%である。圧力を上げると最初の期間後にこれらの値が低下する傾向を示す。
[図5]はプロセス中C6+パラフィンが転換され、一般に変換度は時間とともに低下する傾向があることを示している。この変換度はパラフィン分子、特に直鎖の高炭素C6および上記パラフィンは低級オレフィンへ部分的に触媒クラッキングされるということを示している。最も高い変換はn−C12パラフィンで、TOSで約50〜約40重量%である。n−P10、c−P6、n−P7、n−P6パラフィンは相対的に低変換である。n−P5パラフィンは負の変換である。従って、それ以上の炭素の直鎖のパラフィン(nP7、nP10、nP12)はそれ以下の炭素お直鎖のパラフィン(n−P6、n−P5)より多く転換された。シクロパラフィンc−P6も対応する直鎖パラフィンn−P6と同様な変換率で転換された。この作用は驚くべきもので、直鎖パラフィン、特にC6+パラフィンまたはシクロ−パラフィンを添加するとプロピレン収率が高くなり、パラフィンを有用なオレフィンへの変換率が高くなる。
【0042】
[図5]はさらに、圧力を増加するとパラフィンの変換度がわずかに増加することを示している。
フィードストック中の最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.31であり、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.43である。従って、オレフィンの比率は触媒クラッキング法で全体として結果的に増加し、生成流中に多量のプロピレンが生じる。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0043】
実施例3(P34-063)
実施例2のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で、同じフィードストックを用いて繰り返したが、LHSVは7h-1に下げた。結果は[図6][図7][図8]に示してある。
[図6][図7]から、プロピレンの収率は約13〜12重量%で、これはオレフィン基準上のプロピレン収率が50重量%以上であることを教えている。プロピレンの純度は約85%である。従って、実施例2と比較して、LHSVを下げることでプロピレン収率が増加し、純度を低下させる傾向があることがわかる。
[図8]は、[図5]と同様にC6+パラフィンの場合のパラフィン変換度はLHSVを下げると(実施例2と比較して)、触媒クラッキング法でのパラフィン変換度を増加させる傾向があることを明らかにしている。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.31であり、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.49である。従って、オレフィン比率は触媒クラッキング法で結果として全体として増加し、多量のプロピレンを生成流中に生じさせる。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0044】
実施例4(P34-055)
実施例4では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに増加させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のcy-C6の形で追加のシクロ-パラフィン成分を添加して修正した。結果は[図9][図10][図11]に示してある。
合わせたフィードストックは約62.8重量%パラフィンと、37.2重量%のオレフィンを含み、主たるパラフィン成分(概略重量パーセント)はi-C5:45.56重量%、n-C5:6.29重量%であり、主たるオレフィン成分(概略重量パーセント)はcy-C6:9.83重量%:i-C5:2.45重量%、t-2C5:14.67重量%、c-2C5:6.57重量%、2Me2C4:6.73重量%、cy-C5:2.47重量%である。LHSVは9.7h-1である。反応装置入口温度は575℃である。流れの組成を全期間を通じて分析した。
[図9][図10]からプロピレンの収率は約13〜12重量%であり、これはオレフィン基準のプロピレン収率が約35重量%であることを教えている。プロピレンの純度は約95%である。
[図11]は加えたcP6パラフィンが約20〜25%の比率で転換されたことを示し、時間の経過でわずかに低下する傾向があることを示している。これはcP6パラフィン分子は部分的に触媒クラッキングされて低級オレフィンになることを示している。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.59で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.59である。従って、オレフィンの比率は触媒クラッキング法の結果として実施例1と比べて全体として増加した。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0045】
実施例5(P34-054)
実施例5では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに増加させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のn-C8の形で直鎖パラフィン成分を添加して修正した。結果は[図12][図13][図14][図15]に示してある。
合わせたフィードストックは約62.9重量%パラフィンと、約37.1重量%のオレフィンとを含み、主たるパラフィン成分(概略重量パーセント)はi-C5:45.51重量%、n-C5:6.27重量%で、主たるオレフィン成分(概略重量パーセント)はn-C8:9.87重量%、i-C5:2.45重量%、t-2C5:14.64重量%、c-2C5:6.56重量%、2Me2C4:6.73重量%、cy-C5:2.46重量%である。LHSVは11.1h-1で:反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
[図12][図13]からプロピレンの収率は約13〜12重量%で、これからオレフィン基準でのプロピレン収率は約35重量%になることが分る。プロピレンの純度は約95%である。
[図14]は加えたnP8パラフィンが約25%の比率で転換されたことを示し、全時間でほぼ一定であった。これはnC8パラフィン分子の低級オレフィンへ部分的に触媒クラックされたことを示す。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.59で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.58であった。従って、オレフィンの比率は全体として触媒クラッキングプロセスの結果として実施例1と比べてわずかに減り、生成流中でのプロピレンが大きく増加した。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0046】
実施例6(P34-053)
実施例6では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに減少させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のn-C7の形でパラフィン成分を添加して修正した。結果は[図15][図16][図17]に示してある。
合せたフィードストックは約62.9重量%パラフィンと、約37.1重量%のオレフィンとを含み、主たるパラフィン成分(概略重量パーセント)はi-C5:45.54重量%、n-C5:6.28重量%で、主たる要なオレフィン成分(概略重量パーセント)はn-C7:9.86重量%、i-C5:2.45重量%、t-2C5:14.65重量%、c-2C5:6.56重量%、2Me2C4:6.73重量%、cy-C5:2.47重量%である。LHSVは9.1h-1で、反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
[図15][図16]からプロピレンの収率は約14〜13重量%で、これからオレフィン基準のプロピレン収率が約35重量%になることが分かる。プロピレンの純度は約93%である。
[図17]は加えたn-C7パラフィンが約20%の比率で転換され、全時間でほぼ一定であったことを示す。これはn-C7パラフィン分子がより低級オレフィンへ部分的に触媒クラックされたことを示す。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.59で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.58であった。従って、実施例1と比べてオレフィンの比率は全体として触媒クラッキングプロセスの結果でわずかに減り、直鎖パラフィンの添加で生成流中でプロピレンが大きく転換されたことを示す。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0047】
実施例7(P34-052)
実施例7では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに減少させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のi-C8の形でパラフィン成分を添加して修正した。結果は[図18][図19][図20]に示してある。
合せたフィードストックは約63.1重量%パラフィンと、約36.9重量%のオレフィンとを含み、主たるパラフィン成分(概略の重量パーセント)はi-C5:45.20重量%、n-C5:6.27重量%で、主たるオレフィン成分(概略の重量パーセント)はi-C8:10.44重量%、i−O5:9.11重量%、n-O5:23.61重量%、c−05:2.46重量%である。LHSVは9.2h-1で、反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した
。
[図18][図19]からプロピレンの収率は約13〜12重量%で、これからオレフィン基準のプロピレン収率は約34〜35重量%であることが分る。プロピレンの純度は約94〜96%である。
[図20]は、加えたiC8(2,2,4 triMeC5)パラフィンの変換度は、2つのC5パラフィン、n-C5およびi-C5の変換度と同じく、約3%と低いことを示す。これはiC8パラフィン分子は実施例5(図14参照)の直鎖n-P8パラフィンと比べて低級オレフィンへの触媒クラックがほぼ起こらないことを示す。[図20]は対応するi-C5およびn-C5の変換度が低く、これらのパラフィン分子は低級オレフィンへ実質的に触媒クラッキングされないことを示す。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.58で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.54であった。従って、オレフィン比率は全体として触媒クラッキングプロセスの結果で減り、実施例1の対応する結果と同様に、イソパラフィンの添加で生成流中でプロピレンにほぼ転換されなかったことを示す。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0048】
実施例8(P34-051)
実施例8では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに減少させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のn-C10の形でパラフィン成分を添加して修正した。結果は[図21][図22][図23]に示してある。
合せたフィードストックは約63.0重量%のパラフィンと、約37.0重量%のオレフィンとを含み、主たるパラフィン成分(概略の重量パーセント)はi-C5:45.30重量%、n-C5:6.26重量%で、主たるオレフィン成分(概略の重量パーセント)はn-C10:10.19重量%、i−O5:9.12重量%、n-O5:23.59重量%、c-O5:2.48重量%である。LHSVは9.4h-1で、反応装置入口温度は575度であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
[図21][図22]からプロピレンの収率は約15〜14重量%で、これからオレフィン基準上のプロピレン収率は約37重量%であることが分かる。プロピレンの純度は約93%であった。
[図23]は直鎖n-C10分子の変換度は高く、一般に40%以上であり、加えたnC10パラフィンの変換度は一般に時間の経過とともに低下する傾向があることを示している。このことはn-C10パラフィン分子は低級オレフィンへ部分的に触媒クラッキングされることを示している。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.59で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.62であった。従って、オレフィン比率は触媒クラッキングプロセスの結果で全体として増加し、直鎖パラフィンの添加で生成流中のプロピレンが多量に転換されたことを示している。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0049】
実施例9(P34-061)
実施例9では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、フィードストックはコークス炉(coker)ナフサにした。結果は[図24][図25][図26][図27]に示してある。
フィードストックは約67.7重量%パラフィンと、24.0重量%のオレフィンと、1.34重量%ジエン類と、6.94重量%の芳香族化合物とを含んでいる。WHSVは11.6h-1で、76.9gr/時のフィードを6.64grの触媒上に送った。反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
[図24][図25]からプロピレンの収率は約10重量%以下で、これからオレフィン基準のプロピレン収率が35重量%以上であることが分かる。これらの値はオンストリーム時間(TOS)を通じてともに減少した。プロピレンの純度は95%以上で、オンストリーム時間(TOS)を通じて増加した。
[図26]は触媒クラッキングプロセスで転換された直鎖nC5のnC9パラフィンの比率を示している。n-C8パラフィンは最も高い約13〜15%の変換率を示し、炭素数が小さくなるにつれて変換率は次第に低下する。n−P5のnP8パラフィンへの変換は一般に、時間の経過とともに減る傾向にあった。これはこれらの直鎖パラフィン分子、特に炭素数の大きい分子の場合、低級オレフィンへ部分的に触媒クラッキングされることを示す。
[図27]は接触分解プロセスで転換されたiC5のiC8パラフィンへの比率を示す。i-C8パラフィンは約23%の最も高い変換率を示し、炭素数が減るにつれて次第に変換率が低下する。これは、炭化水素フィードに2,2,4-トリメチルペンタンが加えた実施例7に比べて、非直鎖パラフィン分子は低級オレフィンに部分的に触媒クラッキングされることを示す。本実施例ではi-C8は主としてモノ-メチル−ヘプタンである。本実施例はモノ−メチル−分岐パラフィンは比較的簡単にクラックできるが、多重に分枝したパラフィンはできないということを示している。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.35で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.56であった。従って、触媒クラッキングプロセスの結果として全体としてオレフィンの比率が増加し、生成流中に多量のプロピレンが生じたことを示している。
【0050】
比較例1
この比較例では、実施例8のプロセスを繰り返したが、同じ反応装置に触媒は入れなかった。これは反応装置の(接触分解と比較した)熱分解度を決定するために行なったものである。フィードストックは実質的に実施例8と同じ(実施例1のガソリンカットに約10重量%のn-C10の形で追加のパラフィン成分を添加し、約63.2重量%パラフィンと、36.8重量%のオレフィンとを含む)、反応装置中に触媒が存在する場合と同様に、11.6h-1のWHSVで反応装置へ供給した。これは空の反応装置へ76.9gr/時でフィードを送る時の流
量に対応する。反応装置入口温度は575℃で、圧力は1.5バールであった。流れの組成を分析した。時間に対するオレフィンの含有量を[図28]に示す。この熱分解では実質的にオレフィンは生じないことがわかる。これはパラフィンの接触分解は本発明方法で起こることを示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラフィン含有の炭化水素原料(フィードストック)を軽質オレフィン、特にプロピレンを含む流れに変換する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油化学工業ではポリマーの生産、特にポリエチレンおよびポリプロピレンの生産のために軽質オレフィン(例えばエチレンおよびプロピレン)に対する需要が増加している。
特に、プロピレンの製品価値は次第に上がっており、種々の炭化水素フィードストックを変換してプロピレンを製造するというニーズがある。
【0003】
パラフィンを軽質オレフィンに転換してエチレンとプロピレンを含む流れを作ることは古くから公知である。従来法ではパラフィンを高温(750℃以上)で蒸気の存在下に熱的にクラッキングする。この方法で得られる流れの主生成物はエチレンであり、第二の主生成物はプロピレンであり、それに続いて不飽和物、例えばジエン類を豊富に含む重質炭化水素である。主生成物としてプロピレンが得られるようにスチームクラッキング方法を変えることはできない。しかも、より重質なジエン−リッチなカットはさらに揮発処理(valorisation)しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、パラフィンを含む炭化水素フィードストックを転換して、軽質オレフィン、特にプロピレンを含む流れを製造する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、プロピレンの収率および純度が高いプロピレンの生産方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、プロピレンを容易にカット可能なオレフィン流を製造する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、経時的に安定した変換率および安定性で軽質オレフィン、特にプロピレンを含む流れを生産することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、炭化水素フィードストックを軽質オレフィンを含む流れに変換するプロセスにおいて、少なくとも25重量%のC5+パラフィンを含むフィードストックを結晶質ケイ酸塩触媒を収容した反応装置を通過させてプロピレンを含む流れを生産することを特徴とする炭化水素フィードストックの転換方法を提供する。
【0006】
本発明方法は、C4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストック・カットに、少なくとも一種のC6+パラフィン(好ましくは直鎖)を加えて炭化水素フィードストックを形成する段階をさらに含むのが好ましい。
少なくとも一種のC6+パラフィンは少なくとも一種のC6〜20直鎖パラフィンから成るのがさらに好ましい。
【0007】
炭化水素フィードストックは1〜80重量%の少なくとも一種のC6+直鎖パラフィンと、20〜99重量%のC4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストックカットとから成るのが好ましい。
炭化水素フィードストックは少なくとも一種のC4+オレフィンを含むのが好ましい。
【0008】
C4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストックカットは、C4カット(水素化した粗C4、ラフィネートIおよびラフィネートII等)と、FCC、コークス製造装置(coker)またはビスブレーカ(visbreaker)装置からの分解ガソリンカットとの混合物から成る。
【0009】
結晶質ケイ酸塩は珪素/アルミニウム原子比が120〜1000であるMFI−タイプの結晶質ケイ酸塩である。このMFI−タイプの結晶質ケイ酸塩はシリカライト(silicalite)から成るのが好ましい。
【0010】
炭化水素フィードストックは反応装置入口での温度を500〜600℃、好ましくは550〜600℃、より好ましくは約575℃にして結晶質ケイ酸塩上を通過させるのが好ましい。
炭化水素フィードストックは、液体空間速度(LHSV)を5〜30h-1、好ましくは5〜15h-1にして結晶質ケイ酸塩上を通過させるのが好ましい。
炭化水素フィードストックは、0〜2バール、好ましくは1〜2バール、より好ましくは約1.5バールの圧力で結晶質ケイ酸塩上を通過させるのが好ましい。
【0011】
従って、本発明は、精製装置および石油化学プラントからのパラフィンを含む流れ(プロダクト、生成物)を軽質オレフィンのみへ、特にプロピレンへ選択的に転換するプロセスを提供する。上記流れはプロピレンのような軽質オレフィンに転換されるオレフィンを含むことができる。特に、直鎖のC5〜C20パラフィン、特にC6+パラフィンが軽質オレフィン、特にプロピレンへ転換される。
以下、添付図面を参照して本発明の実施例の各種観点をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】および
【図2】は本発明の実施例1でのオンストリーム時間(time on stream、TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図1)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図2)を示す図。
【図3】および
【図4】は本発明の実施例2でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図3)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図4)を示す図。
【図5】は本発明の実施例2でのオンストリーム時間(TOS)に対するパラフィンの変換度の関係を示す図。
【図6】および
【図7】は本発明の実施例3でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図6)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図7)を示す図。
【図8】は本発明の実施例3でのオンストリーム時間(TOS)に対するパラフィンの変換度の関係を示す図。
【図9】および
【図10】は本発明の実施例4でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図9)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図10)を示す図。
【図11】は実施例4でのオンストリーム時間(TOS)に対するcy-C6パラフィンの変換度の関係を示す図。
【0013】
【図12】および
【図13】は本発明の実施例5でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図12)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図13)を示す図。
【図14】は実施例4でのオンストリーム時間(TOS)に対するn-C8パラフィンの変換度の関係を示す図。
【図15】および
【図16】は本発明の実施例6でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図15)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図16)を示す図。
【図17】は実施例6でのオンストリーム時間(TOS)に対するn-C7パラフィンの変換度の関係を示す図。
【図18】および
【図19】は本発明の実施例7でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図18)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図19)を示す図。
【図20】は実施例7でのオンストリーム時間(TOS)に対するパラフィンの変換度の関係を示す図。
【0014】
【図21】および
【図22】は本発明の実施例8でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図21)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図22)を示す図。
【図23】は実施例8でのオンストリーム時間(TOS)に対するn-C10パラフィンの変換度の関係を示す図。
【図24】および
【図25】は本発明の実施例9でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係(図24)と、オンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との関係(図25)を示す図。
【図26】は実施例9でのオンストリーム時間(TOS)に対するn-パラフィンの変換度の関係を示す図。
【図27】は実施例9でのオンストリーム時間(TOS)に対すイソパラフィンの変換度の関係を示す図。
【図28】は比較例1でのオンストリーム時間(TOS)に対する上記流れ中のオレフィンおよびプロピレン純度の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を用いることでパラフィンを含むフィードストックを軽質オレフィン、特にエチレンとプロピレン、そして選択的にプロピレンを含む流れへ触媒変換することができる。本発明の方法は、少なくとも25重量%のC5+パラフィンを含む炭化水素フィードストックを結晶ケイ酸塩触媒を収容した反応装置に通してプロピレンを含む流れを作ることから成る。パラフィンを含むフィードストックは精製装置または石油化学プラントからの流れにすることができる。あるいは、これらの流れの少なくとも2つを合わせ、必要に応じて一種または複数の別のパラフィンの流れと一緒に合わせて形成することができる。従って、本発明方法はC4+パラフィンを含む少なくとも一種のC4+炭化水素フィードストックカットを加えて上記炭化水素フィードストックを形成する段階をさらに含むことができる。少なくとも一種のC6+パラフィンはC6〜20パラフィンから成ることができる。加えるパラフィンは直鎖にすることができる。炭化水素フィードストックは1〜80重量%の少なくとも一種のC6+パラフィンと、99〜20重量%のC4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストックカットとから成ることができる。
【0016】
フィードストックは直鎖パラフィンとイソパラフィンとシクロパラフィンとを含むパラフィン混合物を含む単一の精製装置からの流れで構成することができる。例としては飽和C5〜9パラフィンとナフテンとから成る直留ナフサがある。直鎖パラフィンは本発明の進行中に部分的にオレフィンに転換されるが、イソパラフィンおよびシクロパラフィンはほとんど転換せず、多重分枝パラフィンの場合には実質的に変換しない。そのため本発明方法ではパラフィン類の中でイソ−パラフィンの含有量がフィードストックよりも得られる生成流中の方が相対的に豊富になる。この流れは次のスチームクラッキングプロセスでのフィードストック用として使用したり、ガソリンまたは灯油生産のためのブレンディングフィードストックとして使用するのに適している。
【0017】
炭化水素フィードストックはパラフィンの他に少なくとも一種のC4+オレフィンを含むことができる。このオレフィンはプロピレンのようなより低級なオレフィンへ転換される。これによってパラフィン単独をクラッキングするのに比べて反応装置の熱バランスを改善できる。
【0018】
本発明の一つの実施例ではフィードストックは45〜40重量%のオレフィンと55〜60重量%のパラフィンとから成る。パラフィンでは55〜60重量%がC5で、オレフィンでは20〜30重量%がC5である。
本発明の他の実施例ではフィードストックは73〜80重量%のパラフィンと27〜20重量%のオレフィンとから成る。パラフィンでのC5の量は全フィードストック(パラフィン+オレフィン)の少なくとも25%である。オレフィンの12〜18重量%はC5である。
本発明の他の実施例ではフィードストックは60〜65重量%のパラフィンと40〜35重量%のオレフィンから成る。パラフィンの45〜55重量%はC5であり、オレフィンの20〜35重量%はC5である。
本発明の他の実施例ではフィードストックは60〜70重量%がパラフィン(その少なくとも42重量%がC5から成る)、20〜30重量%がオレフィン、5〜10重量%が芳香族化合物である(全体で100重量%)。
【0019】
本発明の好ましい方法では炭化水素フィードストックはMFI-タイプまたはMEL-タイプの結晶質ケイ酸塩触媒、例えばシリカライトの存在下で選択的に転換され、得られる流れ中にプロピレンが生産される。触媒およびプロセス条件はプロセスが、生成流中のプロピレンの収率が多くなるように選択される。
【0020】
本発明の好まし実施態様では、上記触媒はMFIまたはMELファミリー(ZSMでもよい)の結晶質ケイ酸塩、シリカライト、このファミリーの他のケイ酸塩から成る。3文字「MFI」または「MEL」は「Structure Commission of the International Zeolite Association」が決めた結晶質珪酸塩の構造タイプを表す。「MFI」珪酸塩の例はZSM−5およびシリカライトであり、「MEL」珪酸塩の例はZSM−11である。
【0021】
好まし結晶質ケイ酸塩は10酸素リング環(ten oxygen rings)よって定義されるポア(気孔)またはチャネルと高い珪素/アルミニウム原子比とを有する。
【0022】
結晶質ケイ酸塩は酸素イオンを介して互いに結合したXO4四面体の枠組み(ここで、Xは三価(例えばA1、B...)または四価(例えばGe、Si..)である)をベースにしたミクロポーラスな結晶質無機ポリマーである。結晶質ケイ酸塩の結晶構造は四面体の単位のネットワークを結合している各順番で定義される。結晶質ケイ酸塩の気孔の開口寸法は四面体の単位の数または気孔を形成するのに必要な酸素原子気孔中に存在するカチオンの種類とで決まる。結晶質ケイ酸塩は各種特性のユニークな組合せを有し、内部表面積が高く、一つまたは複数のディスクリートな寸法の均一な気孔を有し、イオン交換性があり、熱安定性に優れ、有機化合物を吸着する能力がある。この結晶質ケイ酸塩の細孔は大抵の重要な実際の有機分子に類似しているので、反応物および生成物の出入りを制御し、触媒反応に選択性が得られる。MFI構造を有する結晶質ケイ酸塩は下記の細孔直径を有する双方向性のインタセクティングな細孔系を有している:[010]に沿った真直ぐなチャネル:0.53〜0.51ナノメートル、 [100] に沿った正弦波のチャネル:0.51〜0.53ナノメートル。
【0023】
上記結晶質ケイ酸塩触媒は構造上および化学的な特性を有するものを特定の反応条件下で使用する。それによって軽質オレフィン、特にプロピレンを形成する触媒変換が容易に進む。
触媒は珪素/アルミニウム原子比が高く、従って、酸度が相対的に低いのが好ましい。本明細書で「珪素/アルミニウム原子比」という用語は材料全体のSi/Al原子比を意味し、化学分析で決定できる。特に、結晶質ケイ酸塩材料の場合、Si/Al原子比は結晶質ケイ酸塩のSi/Alフレームワークに適用されるのでなく、材料全体に適用する。
【0024】
触媒上では種々の異なる反応が起こる。水素転移反応は触媒上での酸性部位の強度および濃度に直接に関連し、その反応は高いSi/Al比を使用することによって抑制される。それによって転換プロセス中のコークスの発生を避けることができ、触媒の安定度を上げることができる。さらに、Si/Al原子比の高い触媒を使用するとプロピレンの選択性が増加し、生じるプロパンの量が減り、および/または、プロピレン/エチレン比を増加させることができるということが分かっている。これによって得られるプロピレンの純度が上がる。
【0025】
本発明の一つの観点から、結晶ケイ酸塩触媒の珪素/アルミニウム原子比は高く、120〜1000、好ましくは180〜500で、触媒は相対的に低い酸度を有する。水素転移反応は触媒上の酸性部位の強度および濃度に直接関連し、この反応を抑制し、コークスの発生を阻止する。コークスの発生は経時的な触媒安定性を低下させる。この水素転移反応は飽和物、例えば不安定な中間ジエン類、シクロオレフィンおよび芳香族化合物を生じさせ、軽質オレフィンへの変換に貢献しない。シクロオレフィンは固体酸、例えば酸性固体触媒の存在下での芳香族化合物およびコークス状分子の前駆体である。触媒の酸度は触媒上の残留アムモニアの量によって決定される。触媒とアムモニアとを接触させて触媒上の酸性部位にアムモニアを吸着させ、次に高温度でアンモニウム基を脱着させ、それを示差熱重量分析で測定する。
【0026】
結晶ケイ酸塩触媒の珪素/アルミニウム比が高いので炭化水素フィードストックが安定して変換され、8〜50%、好ましくは12〜35%の高いプロピレン収率を得ることができる。プロピレンの選択性は生成流中のプロピレン/エチレン重量比が一般に2〜5重量%および/またはプロピレン/プロパン重量比が一般に5〜30重量%となる選択性である。触媒の珪素/アルミニウム比がこのように高いので触媒の酸度が減り、触媒の安定性が増加する。
【0027】
本発明の触媒転換プロセスに用いる珪素/アルミニウム原子比が高いMFI触媒またはMEL触媒は市販の結晶質ケイ酸塩からアルミニウムを除去することによって製作することができる。典型的な市販のシリカライトは珪素/アルミニウム原子比が約120である。市販のMFIまたはMEL結晶質ケイ酸塩はスチームプロセスによって改質でき、結晶質ケイ酸塩のフレームワークの四面体中のアルミニウムを減らし、アルミニウム原子を非晶質アルミナの形でオクタヘドラルアルミニウムへ転換することができる。このスチームプロセスではアルミニウム原子は結晶質ケイ酸塩のフレームワーク構造から化学的に除去されてアルミナ粒子の形になり、この粒子がフレームワーク中の気孔またはチャネルの一部を塞ぐことになる。それによって本発明の転換プロセスが阻害される。従って、スチームプロセス後に結晶質ケイ酸塩を抽出処理して、非晶質アルミナを気孔から除去し、ミクロ孔の容積の少なくとも一部を回復させる。水可溶性アルミニウム錯体を作るリーチング処理を行なって気孔から非晶質アルミナを物理的に除去することでMFIまたはMELの結晶質ケイ酸塩の全体的脱アルミニウム化を行なう。このように、MFIまたはMELの結晶質ケイ酸塩フレームワークからアルミニウムを除去することによって気孔からアルミナを除去する。このプロセス目的は触媒の気孔表面全体にわたって実質的に均一な脱アルミニウム化を行なうことにある。それによって触媒の酸度を下げ、転換プロセス中に水素転移反応が起こるが減る。酸度の低下は結晶ケイ酸塩フレームワークによって規定された気孔の全体で理想的に実質的に均一に起こる。これは、炭化水素の転換プロセスでは炭化水素種が気孔中に深く浸入することができるためである。従って、MFIまたはMEL触媒の安定性を向上させる酸度の低下および水素転移反応の減少がフレームワーク中の多孔構造全体で起こる。このプロセス後にフレームワーク中の珪素/アルミニウム比はl50〜500まで増加する。
【0028】
MFIまたはMELの結晶質ケイ酸塩触媒は結合剤、好ましくは無機結合剤と混合することができ、所望形状、例えば押出しペレットの形にすることができる。結合剤は触媒の製造プロセスおよび触媒を用いた転換プロセスで使用する温度、その他の条件に耐えられるように選択する。結合剤はクレー、シリカ、ZrO2のような金属酸化物および/または金属またはシリカと金属酸化物との混合物を含むゲルから選択される無機材料である。結合剤はアルミナを含まないのが好ましい。しかし、不活性で、酸性特性がないAlPO4中のようなある種の化合物中のアルミニウムを使用することができる。結晶質ケイ酸塩と一緒に使用する結合剤それ自体が触媒活性を有する場合には、それが触媒の変換性および/または選択性を変えることになる。不活性な結合剤材料は変換量を制御するのに適した希釈剤として使用でき、生成物を経済的かつ規則的に得ることができ、他の手段を使用せずに反応速度を制御することができる。耐破砕強度を有する触媒を可溶するのが望ましい。すなわち、商業的な使用では触媒が粉末材料に分解されるのを防ぐのが望ましい。クレーまたは酸化物の結合剤は一般に耐破砕強度を改善するためにだけ使用される。本発明触媒で特に好ましい結合剤はシリカである。
【0029】
細かく粉砕した結晶質ケイ酸塩材料と結合剤の無機酸化物マトリックスとの相対比率は広範囲で変えることができる。結合剤の含有量は複合触媒の重量を基にして一般に5〜95重量%であり、より一般的には20〜50重量%である。こうした結晶質ケイ酸塩と無機酸化物結合剤との混合物は「フォームレイトされた」結晶質ケイ酸塩と呼ばれる。触媒と結合剤とを混合する場合、触媒はペレットにフォームレイトし、他の形状に押出され、あるいは噴霧乾燥粉末にされる。
【0030】
結合剤と結晶質ケイ酸塩触媒とは一般に押出し成形で混合される。この成形方法では、ゲルの形の結合剤(例えばシリカ)は結晶ケイ酸塩触媒材料を混ぜ合わせられる、そして、結果混合物は所望の形(例えばペレット)に押し出される。その後、フォームレイトフォームレイトされた結晶質ケイ酸塩を空気中または不活性ガス中で一般に200〜900℃の温度で1〜48時間仮焼する。
【0031】
結合剤はアルミニウム化合物、例えばアルミナを含まないのが好ましい。これは既に述べたように好ましい触媒は選択された珪素/アルミニウム比を有する結晶質ケイ酸塩であるためである。結合剤中にアルミナが存在し、結合剤添加段階をアルミニウム抽出段階前に行うと過剰なアルミナが生じることになる。アルミニウム抽出後にアルミニウムを含む結合剤を結晶ケイ酸塩触媒に混合した場合には触媒が再アルミン酸塩化される。結合剤中にアルミニウムが存在すると触媒のプロピレン選択性が低下し、触媒の経時的安定性が低下する傾向にある。また、結合剤と触媒との混合は任意段階のスチーム処理段階の前または後に行なうこともできる。
【0032】
高い安定度、数日以上、例えば5日以上安定したプロピレン収率を与えることができる好ましい触媒が種々見出されている。これによって触媒転換プロセスを2つの平行した「スイング」(1方の反応装置を運転している時に他方の反応装置で触媒を再製する)反応装置で連続的に実行することができる。この触媒は複数回再生できる。さらに、この触媒はフレキシブルで、フィードストックとしては純粋物でも、石油精製装置または石油化学プラント等の異なる供給源の互いに異なる組成物から来る混合物でも使用できる。
【0033】
本発明の触媒転換方法のプロセス条件はプロピレンの選択性が高くなり、全時間でプロピレンが安定して変換され、生成流中で生成物の分布が安定する方向を選択する。この目的は触媒中の酸濃度が低く(すなわち、Si/Al原子比が高く)、低い圧力を使用し、入口温度を高くし、接触時間を短くするのに有利である。これらのプロセスパラメータの全ては互いに関連し、全体の累積効果(例えば高圧力が高い入口温度で相殺または補償できる)を与える。プロセス条件は芳香族化合物およびコークス前駆体を発生させる水素転移反応が起こらないように選択する。従って、プロセス運転条件としては高い空間速度、低い圧力および高い反応温度を使用する。
【0034】
炭化水素フィードストックの液体空間速度(LHSV)は5〜3Oh-1、好ましくは5〜15 h-1であるのが好ましい。パラフィンを含む炭化水素フィードストックは反応装置を通してフィードストックを運ぶのに十分トータル入口圧力で供給するのが好ましい。反応装置の全絶対圧力は0〜2バールにするのが好ましい。フィードストックの入口温度は500〜600℃、好ましくは550〜600℃、より好ましくは約575℃にするのが好ましい。
【0035】
本発明の触媒転換プロセスは固定床式反応器、移動層型反応器または流動層式反応器で実行することができる。典型的な流動層反応器は石油精製で流動層接触分解用に使用されるFCC型のものである。典型的な移動層型反応器は連続接触改質型である。上記で述べた
ように一組の平行した「スイング」固定床式反応器をもちいることでプロセスを連続的に実行することができる。
【0036】
本発明触媒は長時間、一般には少なくとも約5日間高い安定度を示すので、触媒の再製頻度は低い。特に、触媒の寿命は1年以上になる。
【0037】
生成流の軽質留分れ(すなわちC2およびC3カット)は90重量%以上のオレフィン(エチレンおよびプロピレン)を含むことができる。これらのカットは化学的グレードのオレフィンフィードストックとするのに十分な純度である。本発明プロセスのプロピレン収率は8〜50重量%にすることができる。プロピレン/エチレン重量比は一般に2〜5、多くの場合、2.5〜4.0である。プロピレン/プロパン重量比は一般に5〜30、多くの場合8〜20である。これらの比は上記で述べたパラフィンからオレフィンを作る公知の加熱クラッキング法で得られるものよりも高い。
【実施例】
【0038】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
実施例1(P34-057)
実施例1では、ベンチスケールの固定床式反応器中にMFI-タイプのフォーミュレーションされた結晶ケイ酸塩触媒を入れた。この触媒はシリカライトから成り、その珪素/アルミニウム原子比は268(0.168重量%のアルミニウム)である。
この触媒はUOPから入手可能なシリカライト触媒(14/7499;UOP#62-1770)で三つ葉(trilobes)の形をしている。フォーミュレーションされた触媒を粉砕し、35〜45メッシュの粒子は保持し、テストした。
ベンチスケール反応装置の直径は11mmで、充填した触媒は約6.7gである。反応装置は出口での圧力を1.5バールにして運転した。反応装置にC5ガソリンベースのカットからなる炭化水素フィードストックを供給した。このコンバインされたフィードストックは約58.9重量%パラフィンと、41.1重量%オレフィンとを含み、主として下記のパラフィン成分(概略の重量パーセント):i-C5:50.71重量%、n-C5:6.93重量%を含み、主として下記のオレフィン成分(概略の重量パーセント):i-C5:2.73重量%、t-2C5:16.19重量%、c-2C5:7.25重量%、2Me2C4:7.40重量%およびcy-C5:2.68重量%を含んでいる。LHSVは9.45h-1にした。反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
【0039】
[図1]はオンストリーム時間(TOS)に対する流れ中のオレフィンとオレフィン純度との間の関係を示し、[図2]はオンストリーム時間(TOS)とオレフィンベースのオレフィン収率との間の関係を示す。オレフィンベースのオレフィン収率はフィードのオレフィン含有量で割ったフィードベースの収率で定義される。
[図1]から分かるようにプロピレンは流れ約14〜13重量%であり、C3純度はプロピレンが95%以上である。[図2]はオレフィンベースのプロピレン収率が30%以上であることを示している。このプロピレン収率はTOSのほぼ100時間を通じて維持された。
フィードストックの初期オレフィン/パラフィン重量比は0.70であり、流れの最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.65であった。従って、流れ中で多量のプロピレンが生じたが、触媒クラッキングの結果としてオレフィンの比率が全体として減少した。
この触媒テストの終わりに窒素中に2容積%の酸素を含む気体中で開始温度530℃、終了温度575℃で約24時間かけて触媒を再生した。炭化水素フィードを導入する前に反応装置を窒素でパージした。
【0040】
実施例2(P34-064)
実施例2では同じ触媒、圧力および反応装置入口温度を用いて実施例1のプロセスを繰り返したが、LHSVはわずかに増加させ、フィードストックを変えた。すなわち、実施例1のガソリンカットに追加のパラフィン成分を添加した。結果は[図3][図4][図5]に示してある。
C5ガソリンベースカット(実施例1で使用)に追加のシクロ−および−ノルマル−パラフィン(cy−C6、n−C6、n−C7、n−ClO、n−C12)を加えた炭化水素フィードストックを反応装置に供給した。合せたフィードストックは約76.2重量%のパラフィンと、23.8重量%のオレフィンとを含んでいる。主たるパラフィン成分は下記である(略重量パーセント):i-C5:29.36重量%、n-C5:4.04重量%、n−C6:9.78 重量%、cy−C6:9.83重量%、n−C7:10.04重量%、n−C10:8.92重量%、n−C12:3.33重量%。主たるオレフィン成分は以下である(略重量パーセント):i-C5:1.57重量%、t−2C5:9.44重量%、c−2C5:4.14重量%、2Me2C4:4.33重量%、cy−C5:1.59重量%。LHSVは11.2h-1にした。反応装置入口温度は575℃にした。生成流の組成物を全期間を通じて分析した。約95時間後に、オンストリームで圧力を2バールに上げた。
【0041】
[図3]と[図4]からプロピレンの収率が約11-10 重量%であり、これはオレフィンベース(基準)のプロピレン収率が40重量%以上になることを教えている。プロピレン純度は約90%である。圧力を上げると最初の期間後にこれらの値が低下する傾向を示す。
[図5]はプロセス中C6+パラフィンが転換され、一般に変換度は時間とともに低下する傾向があることを示している。この変換度はパラフィン分子、特に直鎖の高炭素C6および上記パラフィンは低級オレフィンへ部分的に触媒クラッキングされるということを示している。最も高い変換はn−C12パラフィンで、TOSで約50〜約40重量%である。n−P10、c−P6、n−P7、n−P6パラフィンは相対的に低変換である。n−P5パラフィンは負の変換である。従って、それ以上の炭素の直鎖のパラフィン(nP7、nP10、nP12)はそれ以下の炭素お直鎖のパラフィン(n−P6、n−P5)より多く転換された。シクロパラフィンc−P6も対応する直鎖パラフィンn−P6と同様な変換率で転換された。この作用は驚くべきもので、直鎖パラフィン、特にC6+パラフィンまたはシクロ−パラフィンを添加するとプロピレン収率が高くなり、パラフィンを有用なオレフィンへの変換率が高くなる。
【0042】
[図5]はさらに、圧力を増加するとパラフィンの変換度がわずかに増加することを示している。
フィードストック中の最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.31であり、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.43である。従って、オレフィンの比率は触媒クラッキング法で全体として結果的に増加し、生成流中に多量のプロピレンが生じる。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0043】
実施例3(P34-063)
実施例2のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で、同じフィードストックを用いて繰り返したが、LHSVは7h-1に下げた。結果は[図6][図7][図8]に示してある。
[図6][図7]から、プロピレンの収率は約13〜12重量%で、これはオレフィン基準上のプロピレン収率が50重量%以上であることを教えている。プロピレンの純度は約85%である。従って、実施例2と比較して、LHSVを下げることでプロピレン収率が増加し、純度を低下させる傾向があることがわかる。
[図8]は、[図5]と同様にC6+パラフィンの場合のパラフィン変換度はLHSVを下げると(実施例2と比較して)、触媒クラッキング法でのパラフィン変換度を増加させる傾向があることを明らかにしている。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.31であり、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.49である。従って、オレフィン比率は触媒クラッキング法で結果として全体として増加し、多量のプロピレンを生成流中に生じさせる。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0044】
実施例4(P34-055)
実施例4では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに増加させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のcy-C6の形で追加のシクロ-パラフィン成分を添加して修正した。結果は[図9][図10][図11]に示してある。
合わせたフィードストックは約62.8重量%パラフィンと、37.2重量%のオレフィンを含み、主たるパラフィン成分(概略重量パーセント)はi-C5:45.56重量%、n-C5:6.29重量%であり、主たるオレフィン成分(概略重量パーセント)はcy-C6:9.83重量%:i-C5:2.45重量%、t-2C5:14.67重量%、c-2C5:6.57重量%、2Me2C4:6.73重量%、cy-C5:2.47重量%である。LHSVは9.7h-1である。反応装置入口温度は575℃である。流れの組成を全期間を通じて分析した。
[図9][図10]からプロピレンの収率は約13〜12重量%であり、これはオレフィン基準のプロピレン収率が約35重量%であることを教えている。プロピレンの純度は約95%である。
[図11]は加えたcP6パラフィンが約20〜25%の比率で転換されたことを示し、時間の経過でわずかに低下する傾向があることを示している。これはcP6パラフィン分子は部分的に触媒クラッキングされて低級オレフィンになることを示している。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.59で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.59である。従って、オレフィンの比率は触媒クラッキング法の結果として実施例1と比べて全体として増加した。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0045】
実施例5(P34-054)
実施例5では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに増加させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のn-C8の形で直鎖パラフィン成分を添加して修正した。結果は[図12][図13][図14][図15]に示してある。
合わせたフィードストックは約62.9重量%パラフィンと、約37.1重量%のオレフィンとを含み、主たるパラフィン成分(概略重量パーセント)はi-C5:45.51重量%、n-C5:6.27重量%で、主たるオレフィン成分(概略重量パーセント)はn-C8:9.87重量%、i-C5:2.45重量%、t-2C5:14.64重量%、c-2C5:6.56重量%、2Me2C4:6.73重量%、cy-C5:2.46重量%である。LHSVは11.1h-1で:反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
[図12][図13]からプロピレンの収率は約13〜12重量%で、これからオレフィン基準でのプロピレン収率は約35重量%になることが分る。プロピレンの純度は約95%である。
[図14]は加えたnP8パラフィンが約25%の比率で転換されたことを示し、全時間でほぼ一定であった。これはnC8パラフィン分子の低級オレフィンへ部分的に触媒クラックされたことを示す。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.59で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.58であった。従って、オレフィンの比率は全体として触媒クラッキングプロセスの結果として実施例1と比べてわずかに減り、生成流中でのプロピレンが大きく増加した。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0046】
実施例6(P34-053)
実施例6では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに減少させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のn-C7の形でパラフィン成分を添加して修正した。結果は[図15][図16][図17]に示してある。
合せたフィードストックは約62.9重量%パラフィンと、約37.1重量%のオレフィンとを含み、主たるパラフィン成分(概略重量パーセント)はi-C5:45.54重量%、n-C5:6.28重量%で、主たる要なオレフィン成分(概略重量パーセント)はn-C7:9.86重量%、i-C5:2.45重量%、t-2C5:14.65重量%、c-2C5:6.56重量%、2Me2C4:6.73重量%、cy-C5:2.47重量%である。LHSVは9.1h-1で、反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
[図15][図16]からプロピレンの収率は約14〜13重量%で、これからオレフィン基準のプロピレン収率が約35重量%になることが分かる。プロピレンの純度は約93%である。
[図17]は加えたn-C7パラフィンが約20%の比率で転換され、全時間でほぼ一定であったことを示す。これはn-C7パラフィン分子がより低級オレフィンへ部分的に触媒クラックされたことを示す。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.59で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.58であった。従って、実施例1と比べてオレフィンの比率は全体として触媒クラッキングプロセスの結果でわずかに減り、直鎖パラフィンの添加で生成流中でプロピレンが大きく転換されたことを示す。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0047】
実施例7(P34-052)
実施例7では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに減少させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のi-C8の形でパラフィン成分を添加して修正した。結果は[図18][図19][図20]に示してある。
合せたフィードストックは約63.1重量%パラフィンと、約36.9重量%のオレフィンとを含み、主たるパラフィン成分(概略の重量パーセント)はi-C5:45.20重量%、n-C5:6.27重量%で、主たるオレフィン成分(概略の重量パーセント)はi-C8:10.44重量%、i−O5:9.11重量%、n-O5:23.61重量%、c−05:2.46重量%である。LHSVは9.2h-1で、反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した
。
[図18][図19]からプロピレンの収率は約13〜12重量%で、これからオレフィン基準のプロピレン収率は約34〜35重量%であることが分る。プロピレンの純度は約94〜96%である。
[図20]は、加えたiC8(2,2,4 triMeC5)パラフィンの変換度は、2つのC5パラフィン、n-C5およびi-C5の変換度と同じく、約3%と低いことを示す。これはiC8パラフィン分子は実施例5(図14参照)の直鎖n-P8パラフィンと比べて低級オレフィンへの触媒クラックがほぼ起こらないことを示す。[図20]は対応するi-C5およびn-C5の変換度が低く、これらのパラフィン分子は低級オレフィンへ実質的に触媒クラッキングされないことを示す。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.58で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.54であった。従って、オレフィン比率は全体として触媒クラッキングプロセスの結果で減り、実施例1の対応する結果と同様に、イソパラフィンの添加で生成流中でプロピレンにほぼ転換されなかったことを示す。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0048】
実施例8(P34-051)
実施例8では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、LHSVはわずかに減少させた。フィードストックは、実施例1のガソリンカットへ約10重量%のn-C10の形でパラフィン成分を添加して修正した。結果は[図21][図22][図23]に示してある。
合せたフィードストックは約63.0重量%のパラフィンと、約37.0重量%のオレフィンとを含み、主たるパラフィン成分(概略の重量パーセント)はi-C5:45.30重量%、n-C5:6.26重量%で、主たるオレフィン成分(概略の重量パーセント)はn-C10:10.19重量%、i−O5:9.12重量%、n-O5:23.59重量%、c-O5:2.48重量%である。LHSVは9.4h-1で、反応装置入口温度は575度であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
[図21][図22]からプロピレンの収率は約15〜14重量%で、これからオレフィン基準上のプロピレン収率は約37重量%であることが分かる。プロピレンの純度は約93%であった。
[図23]は直鎖n-C10分子の変換度は高く、一般に40%以上であり、加えたnC10パラフィンの変換度は一般に時間の経過とともに低下する傾向があることを示している。このことはn-C10パラフィン分子は低級オレフィンへ部分的に触媒クラッキングされることを示している。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.59で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.62であった。従って、オレフィン比率は触媒クラッキングプロセスの結果で全体として増加し、直鎖パラフィンの添加で生成流中のプロピレンが多量に転換されたことを示している。
触媒テストの終わりに、触媒を開始温度530℃、終了温度575℃で、約24時間、2容積%の酸素を含む窒素を用いて再生した。炭化水素フィードを導入する前に窒素で反応装置を浄化した。
【0049】
実施例9(P34-061)
実施例9では、実施例1のプロセスを、同じ触媒、圧力、反応装置入口温度で繰り返したが、フィードストックはコークス炉(coker)ナフサにした。結果は[図24][図25][図26][図27]に示してある。
フィードストックは約67.7重量%パラフィンと、24.0重量%のオレフィンと、1.34重量%ジエン類と、6.94重量%の芳香族化合物とを含んでいる。WHSVは11.6h-1で、76.9gr/時のフィードを6.64grの触媒上に送った。反応装置入口温度は575℃であった。流れの組成は全期間を通じて分析した。
[図24][図25]からプロピレンの収率は約10重量%以下で、これからオレフィン基準のプロピレン収率が35重量%以上であることが分かる。これらの値はオンストリーム時間(TOS)を通じてともに減少した。プロピレンの純度は95%以上で、オンストリーム時間(TOS)を通じて増加した。
[図26]は触媒クラッキングプロセスで転換された直鎖nC5のnC9パラフィンの比率を示している。n-C8パラフィンは最も高い約13〜15%の変換率を示し、炭素数が小さくなるにつれて変換率は次第に低下する。n−P5のnP8パラフィンへの変換は一般に、時間の経過とともに減る傾向にあった。これはこれらの直鎖パラフィン分子、特に炭素数の大きい分子の場合、低級オレフィンへ部分的に触媒クラッキングされることを示す。
[図27]は接触分解プロセスで転換されたiC5のiC8パラフィンへの比率を示す。i-C8パラフィンは約23%の最も高い変換率を示し、炭素数が減るにつれて次第に変換率が低下する。これは、炭化水素フィードに2,2,4-トリメチルペンタンが加えた実施例7に比べて、非直鎖パラフィン分子は低級オレフィンに部分的に触媒クラッキングされることを示す。本実施例ではi-C8は主としてモノ-メチル−ヘプタンである。本実施例はモノ−メチル−分岐パラフィンは比較的簡単にクラックできるが、多重に分枝したパラフィンはできないということを示している。
フィードストックの最初のオレフィン/パラフィン重量比は0.35で、生成流中の最終的なオレフィン/パラフィン重量比は0.56であった。従って、触媒クラッキングプロセスの結果として全体としてオレフィンの比率が増加し、生成流中に多量のプロピレンが生じたことを示している。
【0050】
比較例1
この比較例では、実施例8のプロセスを繰り返したが、同じ反応装置に触媒は入れなかった。これは反応装置の(接触分解と比較した)熱分解度を決定するために行なったものである。フィードストックは実質的に実施例8と同じ(実施例1のガソリンカットに約10重量%のn-C10の形で追加のパラフィン成分を添加し、約63.2重量%パラフィンと、36.8重量%のオレフィンとを含む)、反応装置中に触媒が存在する場合と同様に、11.6h-1のWHSVで反応装置へ供給した。これは空の反応装置へ76.9gr/時でフィードを送る時の流
量に対応する。反応装置入口温度は575℃で、圧力は1.5バールであった。流れの組成を分析した。時間に対するオレフィンの含有量を[図28]に示す。この熱分解では実質的にオレフィンは生じないことがわかる。これはパラフィンの接触分解は本発明方法で起こることを示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも25重量%のC5+パラフィンを含むフィードストックを結晶質ケイ酸塩触媒を収容した反応装置を通過させてプロピレンを含む流れを生産することを特徴とする、炭化水素フィードストックを軽質オレフィンを含む流れに変換する炭化水素フィードストックの転換方法。
【請求項2】
C4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストック・カットに、少なくとも一種のC6+パラフィンを加えて炭化水素フィードストックを形成する段階をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記の少なくとも一種のC6+パラフィンが少なくとも一種のC6〜20直鎖パラフィンを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
炭化水素フィードストックが1〜80重量%の少なくとも一種のC6+パラフィンと、20〜99重量%のC4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストックカットとから成る請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
炭化水素フィードストックが少なくとも一種のC4+オレフィンを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
結晶質ケイ酸塩が珪素/アルミニウム原子比が120〜1000であるMFI−タイプまたはMEI−タイプの結晶質ケイ酸塩である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
MFI−タイプの結晶質ケイ酸塩wシリカライト(silicalite)から成る請求項6に記載の方法。
【請求項8】
炭化水素フィードストックを反応装置入口での温度を500〜600℃にして結晶質ケイ酸塩上を通過させる請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
炭化水素フィードストックを液体空間速度(LHSV)を5〜30h-1にして結晶質ケイ酸塩上を通過させる請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
炭化水素フィードストックを0〜2バールの圧力で結晶質ケイ酸塩上を通過させる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
少なくとも25重量%のC5+パラフィンを含むフィードストックを結晶質ケイ酸塩触媒を収容した反応装置を通過させてプロピレンを含む流れを生産することを特徴とする、炭化水素フィードストックを軽質オレフィンを含む流れに変換する炭化水素フィードストックの転換方法。
【請求項2】
C4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストック・カットに、少なくとも一種のC6+パラフィンを加えて炭化水素フィードストックを形成する段階をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記の少なくとも一種のC6+パラフィンが少なくとも一種のC6〜20直鎖パラフィンを含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
炭化水素フィードストックが1〜80重量%の少なくとも一種のC6+パラフィンと、20〜99重量%のC4+パラフィンを含むC4+炭化水素フィードストックカットとから成る請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
炭化水素フィードストックが少なくとも一種のC4+オレフィンを含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
結晶質ケイ酸塩が珪素/アルミニウム原子比が120〜1000であるMFI−タイプまたはMEI−タイプの結晶質ケイ酸塩である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
MFI−タイプの結晶質ケイ酸塩wシリカライト(silicalite)から成る請求項6に記載の方法。
【請求項8】
炭化水素フィードストックを反応装置入口での温度を500〜600℃にして結晶質ケイ酸塩上を通過させる請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
炭化水素フィードストックを液体空間速度(LHSV)を5〜30h-1にして結晶質ケイ酸塩上を通過させる請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
炭化水素フィードストックを0〜2バールの圧力で結晶質ケイ酸塩上を通過させる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
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【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2013−64027(P2013−64027A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−7146(P2013−7146)
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2009−521209(P2009−521209)の分割
【原出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(504469606)トタル リサーチ アンド テクノロジー フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月18日(2013.1.18)
【分割の表示】特願2009−521209(P2009−521209)の分割
【原出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(504469606)トタル リサーチ アンド テクノロジー フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】
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