説明

オレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫のための方法

多孔性耐火性酸化物上に支持された、ニッケル成分の高含量およびモリブデン成分の有効量であるが小量を有する触媒組成物を使用する、オレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫のための方法が記載されている。好ましい触媒組成物は、微量のコバルト成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン規制は、種々の精油所ストリームおよび製品を、例えば、コーカー(coker)ナフサおよび触媒的分解装置からのガソリンを含む分解ガソリンブレンド材料を、このような精油所ストリームおよび製品中に含まれる望ましくない硫黄を除去するために、処理するための要望をますます創り出している。
【0003】
硫黄を、オレフィン化合物を含む炭化水素ストリームから除去することができる1つの手段は、種々の知られた触媒的水素化処理方法の使用による。このような触媒的水素化処理方法の使用に伴う問題は、これらが一般に、処理される炭化水素供給材料ストリーム中に含まれる硫黄化合物だけでなくオレフィン化合物も水素化する傾向があることである。炭化水素供給材料ストリームが、ガソリンブレンド成分として使用される場合、通常オレフィンの存在は、これらの比較的高オクタン価、およびガソリンプールに対するオクタン寄与のために望ましい。
【0004】
分解ガソリンブレンド材料は、一般に高オクタンオレフィン化合物の高濃度ならびに硫黄化合物の濃度を含む。分解ガソリンブレンド材料を、これらに含まれるオレフィンの水素化を最小にして、触媒的に脱硫できることが望ましい。水素化処理触媒および方法の多くのタイプが、従来技術において開示されており、従来技術はさらに炭化水素供給材料を含むオレフィンの選択的水添脱硫のための方法を開示している。
【0005】
米国特許第5,266,188号は、VIB族金属成分、VIII族金属成分、マグネシウム成分、およびアルカリ金属成分を含む触媒を使用して、分解ナフサを選択的水素処理する方法を開示している1つの特許である。両方とも酸化物として、および総触媒重量に対して計算して、VIB族金属成分は、約4重量%〜約20重量%の範囲の量において触媒中に存在し、VIII族金属成分は、約0.5重量%〜約10重量%の範囲において存在する。好ましいVIB族金属は、モリブデンおよびタングステンであり、これらの中でモリブデンが好ましく、好ましいVIII族金属はコバルトおよびニッケルであり、これらの中でコバルトが好ましい。
【0006】
米国特許第5,686,375号は、多孔性耐火性酸化物と組み合わせた下層のVIII族金属(好ましくはニッケル)成分を含む支持体上の、VIB族金属(好ましくはモリブデン)成分の上層を含む水素化処理触媒を開示している。この触媒は、一般にVIII族金属成分(一酸化物として計算して)を3.0重量%を超えて、好ましくは4.0重量%を超えて、最も好ましくは4.5重量%を超えて、およびVIB族金属成分(三酸化物として計算して)を10重量%を超えて、好ましくは17重量%を超えて含む。好ましい触媒は、モリブデンおよび下層のニッケル以外の支持された金属成分を本質的に含まない。触媒の最も高度に好ましい実施形態は、支持体の少なくとも4.5重量パーセントを包含する下層のニッケル成分を含めて、ニッケル成分を3重量パーセントを超えて含む。この触媒は、脱硫および脱窒素などの水素化処理方法において使用されるが、この方法が脱硫に対して選択的であるという指摘はない。
【0007】
米国特許広報第2003/0183556A1号は、ナフサの選択的水添脱硫に関する方法を開示しており、この方法は、触媒の総重量に対して約1〜10重量%、好ましくは約2〜8重量%、さらに好ましくは約4〜6重量%のMoO濃度、および触媒の総重量に対して約0.1〜5重量%、好ましくは約0.5〜4重量%、さらに好ましくは約1〜3重量%のCoO濃度を含む好ましい触媒を使用する。この方法は、硫黄を含む分解ナフサ供給材料ストリームを実質上オレフィンを含まないナフサ供給材料ストリームとブレンドすること、および水添脱硫触媒の存在下でこのブレンドを選択的に水添脱硫することを含む。
【0008】
米国特許第6,589,418号;第6,126,814号;および第6,013,598号は、米国特許広報第2003/0183556号に開示されているものと同様な触媒を使用するオレフィン含有ナフサ原料を選択的に水添脱硫する方法を開示している。
【0009】
米国特許第5,286,373号は、失活された水素処理触媒を使用して高オレフィン含量を有するナフサ原料を選択的に水添脱硫する方法を開示している。失活された水素処理触媒は、使用によって、または他の手段によって失活された水素処理触媒であり、これは一般にコークスの付着物を含む。この水素処理触媒は、一般に多孔性支持体上に供給されたVI族およびVIII族金属を含む。好ましいVI族金属には、クロム、モリブデンおよびタングステンが含まれ、好ましいVIII族金属には、コバルトおよびニッケルが含まれる。リン、フッ素、チタン、ホウ素等などのその他の金属または他の元素が存在することができる。特に好ましい金属には、コバルトおよびモリブデンが含まれる。
【0010】
従来技術のいくつかの上の概説から分かるように、ガソリンの沸点範囲において沸騰し、高オレフィン含量を含む、硫黄含有ナフサまたは炭化水素原料の選択的触媒的水添脱硫を提供する方法の開発に非常な興味がある。オレフィンが同時にかなり水素化されることなく、硫黄を選択的水添脱硫することにより、原料のオクタンの損失を最小にすることができる。上述したように、オレフィンは、ある種のガソリンブレンド成分の高オクタン成分である傾向があるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、高オレフィン含量を有する硫黄含有炭化水素原料を選択的に脱硫する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明によれば、オレフィン含有炭化水素原料を、選択的水添脱硫条件下で、多孔性耐火性酸化物およびニッケル成分のかなりのニッケル濃度およびモリブデン成分の少濃度を含む触媒組成物と接触させることにより、硫黄の濃度を有するオレフィン含有炭化水素原料を選択的水添脱硫するための方法が提供される。他の実施形態において、
この触媒組成物は、第1ニッケル成分濃度において第1ニッケル成分および第2ニッケル成分を有する多孔性の耐火性酸化物の熱処理賦形された混合物を含み、ここで、かなりのニッケル濃度が触媒組成物の8重量%を超える。本発明の方法はさらに、低硫黄製品の生成をもたらすことができる。
【0013】
図1は、硫黄濃度を有するオレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫において、原料のパーセントオレフィン低下に対して示されたパーセント硫黄除去に対する種々の水素処理触媒組成物の性能を表す比較プロットである。
【0014】
本発明は、硫黄濃度を有するオレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫のための方法またはプロセスを対象とする。本明細書において、原料の選択的水添脱硫という場合に意味するものは、硫黄は硫黄化合物の触媒的水素化によって原料から除去されるが、原料中に含まれるオレフィン化合物の同時の水素化は最小であるということである。精油所分解原料は、一般にオレフィンと共に硫黄の高濃度を含み、このような分解原料を、オレフィンの飽和を最小にしながら選択的に脱硫できることが望ましい。
【0015】
本発明の方法において使用が考えられる原料は、ナフサまたはガソリン沸点範囲において一般に沸騰する炭化水素原料であり得、この沸点範囲は、一般に約10℃(50°F)〜約232.2°F(450°F)、好ましくは約21℃(70°F)〜約221℃(430°F)である。さらに好ましくは、炭化水素原料は、主に32℃(90°F)〜210℃(410°F)の範囲において沸騰する。
【0016】
本発明の方法の炭化水素原料は、オレフィン化合物および硫黄化合物のどちらも含む。 本発明の方法の炭化水素原料のオレフィン含量または濃度は、炭化水素原料の総重量の約60重量パーセントまでの範囲にあり得、通常炭化水素原料の総重量の少なくとも5重量パーセントがオレフィン化合物を含む。炭化水素原料の典型的オレフィン含量は、炭化水素原料の総重量の5重量パーセント〜55重量パーセントの範囲にあり、さらに典型的には、この範囲は8重量パーセント〜50重量パーセントである。しかし、本発明の選択的水添脱硫方法の炭化水素原料は、10重量パーセントを超える、さらに15またはさらに20重量パーセントを超えるオレフィン化合物の濃度を有することができることが意図される。
【0017】
一般に、炭化水素原料は、オレフィン含有であり、例えば、通常の流動触媒分解装置からのFCC分解ナフサ生成物、遅延コーカー装置または流動コーカー装置からのコーカーナフサ、水素分解ナフサおよび分解ナフサ生成物の任意の組合せを含む、触媒的または熱的分解装置からの生成物などの分解ナフサ生成物であってよい。分解ナフサ生成物は、一般にオレフィン化合物の高濃度を有するが、硫黄化合物の望ましくない高濃度を有する恐れがある。
【0018】
本発明の方法のオレフィン含有炭化水素原料は、かなりの硫黄含量、すなわち一般に約0.03重量パーセント、すなわち百万分の300重量部(ppmw)〜約1重量パーセント、すなわち10,000ppmwの範囲である硫黄濃度を有することがある。さらに一般に硫黄含量は、500ppmw〜7000ppmwの範囲、最も一般には1000ppmw〜5000ppmwの範囲にある。オレフィン含有炭化水素原料の硫黄化合物には、例えば、ジスルフィド化合物、チオール化合物、チオフェン化合物およびベンゾチオフェン化合物などの有機硫黄化合物が含まれる。オレフィン含有炭化水素原料は、またパラフィン化合物およびオレフィン化合物の他に他の炭化水素化合物を含むことがある。オレフィン含有炭化水素原料は、さらにナフテンを含むことがあり、さらに芳香族炭化水素、さらに開鎖および環式オレフィン、ジエン、およびオレフィン性側鎖を有する環式炭化水素などの他の不飽和化合物を含む。
【0019】
オレフィン含有炭化水素原料は、また窒素化合物を含むことがあり、窒素化合物が存在する場合、約5ppmw〜約150ppmwの範囲における、さらに一般に20ppmw〜100ppmwの範囲における窒素濃度においてである。
【0020】
本発明の方法は、触媒的水添脱硫によって、硫黄濃度を有するオレフィン含有炭化水素原料からの硫黄の選択的除去を提供する。本明細書において、水添脱硫への言及は、原料の硫黄化合物を硫黄化合物の触媒的水素化によって硫化水素に変換し、次いでこれを除去して、低硫黄製品を提供できることであることが理解される。オレフィン含有炭化水素原料の水添脱硫における特に定義された触媒組成物の使用は、他の通常の水素処理触媒の使用と比較して、オレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫における改善をもたらすことが見い出された。したがって、本発明の方法の重要な態様は、特別の触媒組成物の使用である。
【0021】
本発明の選択的水添脱硫方法の触媒組成物は、一般に多孔性耐火性酸化物、ニッケル成分のかなりのまたは高濃度、およびモリブデン成分の少濃度を含む。触媒組成物のニッケル成分のかなりのまたは高濃度は、触媒組成物の総重量の8重量パーセントを超え、この重量パーセントは、ニッケル成分が触媒組成物中に存在する実際の形態にかかわらず元素ニッケルに基づく。しかし、ニッケル成分は、元素形態、酸化物形態、硫化物形態またはこれらの任意の組合せを含む、いくつかの可能な形態において触媒組成物中に存在することができることが理解される。
【0022】
望ましい選択的脱水素特性を提供するためには、触媒組成物のニッケル成分のかなりのニッケル濃度は、触媒組成物の10重量パーセントを超えるべきであり、好ましくはかなりのニッケル濃度は、12重量パーセントを超える。しかし、かなりのニッケル濃度が、15重量パーセントを超えることが最も好ましく、かなりのニッケル濃度が、18重量パーセントを超えることがとりわけ好ましい。
【0023】
かなりのニッケル濃度の上限は、触媒組成物へのニッケルの増加量の添加によって得られる触媒性能において増加した改善が経済的に妥当なものであるかどうかに依存する。一般に、触媒組成物のニッケル成分のかなりのニッケル濃度の上限は、約50重量パーセント未満であるが、好ましくはかなりのニッケル濃度の上限は、40重量パーセント未満である。最も好ましくはかなりのニッケル濃度の上限は、30重量パーセント未満である。したがって、触媒組成物のニッケル成分のかなりのニッケル濃度が存在する範囲の非限定的例は、8重量パーセント〜50重量パーセントの範囲、または10重量パーセント〜40重量パーセントの範囲、またはさらに12重量パーセント〜30重量パーセントの範囲を含んでよい。
【0024】
ニッケル成分の高濃度と、モリブデン成分の触媒的に有効濃度であるが少濃度特別な組合せを含むことが、触媒組成物に関する本発明の方法の重要な側面である。ニッケルの高濃度を有するがモリブデン成分は含まないタイプの水素処理触媒は、オレフィン含有原料の選択的水添脱硫をもたらすが、オレフィン含有原料から除去される硫黄の百分率は低い傾向があることが分かっている。しかし、触媒組成物が、ニッケル成分の高濃度およびモリブデン成分の少濃度の両方を含む場合、この組合せは、特に本質的にモリブデン成分を含まない水素処理触媒の使用によってもたらされる硫黄除去に比べて、オレフィン含有原料の選択的水添脱硫および硫黄除去の高百分率の両方をもたらす。
【0025】
本発明の方法の触媒組成物のモリブデン成分の少濃度は、オレフィン含有炭化水素原料の水添脱硫処理の間に、オレフィン含有炭化水素原料中に含まれるオレフィンの水素化の望ましくないレベルをもたらすほどに高くあるべきではない。したがって、触媒組成物のモリブデン成分の少濃度は、触媒組成物の総重量の4重量パーセント未満であるべきであり、この重量パーセントは、モリブデン成分が触媒組成物中に存在する実際の形態にかかわらず、元素モリブデンに基づいている。しかし、モリブデン成分は、元素形態、酸化物形態、スルフィド形態またはこれらの任意の組合せを含む、いくつかの可能な形態において触媒組成物中に存在することができることが理解される。
【0026】
望ましい高百分率脱硫を提供するためには、触媒組成物のモリブデン成分の少濃度は、触媒組成物の3重量パーセント未満であるべきであり、好ましくはモリブデンの少濃度は、2.5重量パーセント未満である。さらに好ましくは、触媒組成物のモリブデンの少濃度は、2重量パーセント未満であり、とりわけ好ましいのは、この濃度は1.5重量パーセント未満である。
【0027】
本明細書において前に述べたように、触媒組成物のモリブデン成分の濃度に対する下限は、ニッケル成分と組み合わせて、オレフィン水素化を最低にまたは低下しながら、オレフィン含有炭化水素原料から増大した硫黄除去をもたらすことにおいて有効である触媒的に有効な濃度であるべきある。触媒組成物のモリブデン成分の有効濃度は、0.01重量パーセント(100ppmw)ほどに低くてもよいが、一般に触媒組成物の0.1重量パーセント(1000ppmw)を超えるべきである。しかし、触媒組成物のモリブデン成分の濃度が、触媒組成物の0.5重量パーセントを超えることが好ましく、最も好ましくは、濃度は1重量パーセントを超えるべきである。触媒組成物のモリブデン成分のモリブデンの少濃度範囲の限定しない例は、0.1重量パーセント〜4重量パーセントの範囲、または0.5重量パーセント〜3重量パーセントの範囲、またはさらに1重量パーセント〜2.5重量パーセントの範囲を含むことができる。
【0028】
本発明の方法の他の実施形態は、コバルト成分の存在しない材料を有する触媒組成物を必要とする。水素処理触媒中のコバルト成分の存在は、オレフィン含有炭化水素原料の脱硫に対するその選択性を低下させる効果を有することが分かった。したがって、このことは、オレフィン飽和の望ましくない量をもたらす。したがって、本発明の方法の触媒組成物が、コバルト成分の存在しない前述した材料を有することが望ましい。コバルト成分の存在しないこの材料は、コバルト成分は別の形態において存在するが、コバルトが元素形態にあるとして計算して、触媒組成物の総重量の約1重量パーセント未満であり得る。コバルト成分が、触媒組成物中に0.5重量パーセント未満において、さらに好ましくは0.1重量パーセント未満において存在することが好ましい。触媒組成物が、0.01重量パーセント未満、またはさらに0.001重量パーセント未満、またはさらにコバルトの微量未満などの、コバルト成分を実質的に有しないことが最も好ましい。本明細書において、コバルト成分の存在しない材料という場合に意味するものは、触媒組成物中に存在するコバルトの量が、たとえいくらかあったとしても、オレフィン含有炭化水素原料の脱硫に対する触媒組成物の選択性に、材料の点において、結果として否定的影響を与えないということである。
【0029】
触媒組成物の多孔性耐火性酸化物は、触媒組成物の支持体成分として使用に適する特性を有する任意の耐火性酸化物材料であってよい。可能な適切な多孔性耐火性酸化物材料の例には、シリカ、マグネシア、シリカ−チタニア、ジルコニア、シリカ−ジルコニア、チタニア、シリカ−チタニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、およびアルミノシリケートが含まれる。アルミナは、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、δ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナ、ベーマイト、またはこれらの混合物などの種々の形態であり得る。好ましい多孔性耐火性酸化物は、非晶質のアルミナである。利用できる非晶質のアルミナの中でγ−アルミナが最も好ましい。
【0030】
多孔性耐火性酸化物は、一般に約50Å〜約160Å、好ましくは70Å〜150Å、最も好ましくは80Å〜130Åの範囲の平均細孔直径を有する。多孔性耐火性酸化物の総細孔体積は、標準水銀空隙測定法により測定して、約0.2cc/g〜約2cc/gの範囲である。好ましくは細孔体積は、0.3cc/g〜1.5cc/g、最も好ましくは0.4cc/g〜1cc/gの範囲である。多孔性耐火性酸化物の表面積は、B.E.T.法により測定して、一般に約100m/gを超え、これは一般に約100〜400m/gの範囲にある。多孔性耐火性酸化物の細孔サイズ分布に関して、総細孔体積の少なくとも約70パーセントは、70Å〜150Åの範囲の直径を有する細孔として存在する。より典型的に、総細孔体積の少なくとも80パーセント、さらには90パーセントが、70Å〜150Åの範囲の直径を有する細孔として存在する。
【0031】
本発明の触媒組成物のその他の好ましい成分は、リン成分を含む。リン成分は一般に、元素リンとして計算して、触媒組成物の総重量の0.01重量パーセント〜5重量パーセントの範囲である有効濃度において触媒組成物中に存在することができる。しかし、リン成分は、元素形態、酸化物形態、スルフィド形態またはこれらの任意の組合せを含む任意の数の可能な形態において、触媒組成物中に存在できると理解される。触媒組成物中のリン成分の好ましい濃度は、0.1〜4重量パーセントの範囲であり、さらに好ましくは触媒組成物のリン濃度は、0.2〜3重量パーセントの範囲である。
【0032】
本発明の好ましい触媒組成物は、多孔性耐火性酸化物の熱処理賦形された混合物、および熱処理賦形された混合物の約5重量パーセント未満である第1のニッケル成分濃度における第1のニッケル成分;第2のニッケル成分、およびモリブデン成分の、触媒的有効濃度であるが少濃度をさらに含むとして定義することができること以外に、全ての前述した特徴を有するべきである。好ましい触媒組成物の総ニッケル濃度は、この実際の形態にかかわらず元素ニッケルに基づいて、好ましい触媒組成物の総重量の8重量パーセントを超えることができる、かなりのまたは高濃度であるべきである。最高に所望される特性を有する触媒組成物に対して、熱処理賦形された混合物中の第1のニッケル成分濃度は、約0.2重量パーセント〜約4重量パーセントの範囲であり、しかし、好ましくは第1のニッケル成分濃度は、0.5重量パーセント〜3重量パーセント、最も好ましくは0.7〜2重量パーセントの範囲である。
【0033】
触媒組成物中の第2のニッケル成分上層の量に関しては、触媒組成物が、触媒組成物に対して所望の特性を有する触媒組成物を提供するように、十分に高い、全体または総合的濃度、すなわち第1のニッケル成分と第2のニッケル成分の合計を有することが重要である。触媒組成物中の第2のニッケル成分上層の量は、したがって、上記の範囲内で、触媒組成物中の総ニッケル濃度をかなりのまたは高濃度にもたらすようなものである。
【0034】
また、触媒組成物は、上述したように、モリブデン成分を含む。モリブデン成分は、触媒組成物を形成するために使用される熱処理賦形された混合物中に存在することができ、または上層成分として熱処理賦形された混合物中に組み込むことができ、または上層成分として、および熱処理賦形された混合物中の両方に存在することができる。しかし、どのようにモリブデン成分が触媒組成物中に含まれようとも、モリブデン成分は、上述したように、少濃度範囲において触媒組成物中に存在するべきである。
【0035】
上層または上層であるまたは上層にされた、または同様のタイプの専門用語のような用語の本明細書における使用は、熱処理賦形された混合物中への成分の添加または組込みのことをいうと理解される。
【0036】
本発明の触媒組成物は、所望の触媒生成物を適切に提供する当業者に知られているいずれの方法によっても調製することができる。触媒組成物調製の好ましい方法は、いくつかのステップを含む。
【0037】
触媒組成物調製の第1のステップは、多孔性耐火性酸化物を第1のニッケル成分と、第1のニッケル成分が分散されている、好ましくは多孔性耐火性酸化物と共に混合物内に均一に分散されている混合物をもたらす任意の適切な手段または方法によって混合する。多孔性耐火性酸化物と第1のニッケル成分との混合物の調製において適切に使用することができる可能な混合手段の多くは、Perry’s Chemical Enginners’Handbook,第6版,McGraw−Hill,Inc.,頁19〜14から19〜24に詳細に記載されており、これらの頁を参照により本明細書に組み込む。したがって、可能な適切な混合手段は、限定しないが、タンブラー、固定シェルまたはトラフ、Muller混合機、(これらは、バッチタイプまたは連続タイプである。)、衝撃混合機および多孔性耐火性酸化物とニッケル成分の均一な混合を適切にもたらす、当業者に知られている任意の他の混合機または装置を含むことができる。
【0038】
混合物中の材料の所望の分散を実現するためには、材料を成分が実質上均一に分散されるまで混合する。混合時間は、一般に約2分間を超え、より長くは45分間またはさらに長くまで及ぶ均一混合物を得るのに十分な時間である。次いで、この混合物は、これに第2のニッケル成分およびモリブデン成分およびリン成分などの追加の成分を組み込む前に、熱処理されて、多孔性耐火性酸化物と第1のニッケル成分との熱処理賦形された混合物を提供する凝集塊に形成される。
【0039】
例えば、成形、タブレット化、プレス、ペレット化、タンブリング、高密度化、および押出しを含む、凝集塊を形成するための任意の適切な方法または手段を使用することができる。押出し方法が好ましい。
【0040】
この混合物は、多孔性耐火性酸化物と第1のニッケル成分とを共混練して、これによりこの均一な混合物を形成することによって形成されることが本発明の好ましい実施形態である。所望のサイズおよび形状を有する押出ダイを通して押出し可能なペーストを押し出すための、当業者に知られている任意の適切な方法を使用し、押出品を所望の長さに切断することによって押出品に凝集される、多孔性耐火性酸化物と第1のニッケル成分の押出し可能なペーストを形成することがとりわけ好ましい。押出し可能なペーストを形成するために、水および希釈された酸を、多孔性耐火性酸化物と第1のニッケル成分との混合物に、これを共混練する間に添加する。水および希釈された酸は、押出し可能なペーストに所望の粘ちょう度を与えるために必要とされるような量においておよびそのような方法によって添加される。例えば、硝酸、酢酸、硫酸および塩酸を含む、押出し可能なペーストを提供するのに適切に役立つ任意の酸を使用することができ、硝酸または酢酸が好ましい。
【0041】
多孔性耐火性酸化物との混合物を形成する際に使用することができるニッケル化合物は、本明細書において記載されているように所望の触媒的特性をもたらす化合物であり、これらは、元素ニッケル、酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケルおよびニッケルチオシアネートを含む化合物の群から選択される。好ましい第1のVIII族金属化合物は硝酸ニッケルである。混合物に導入されるニッケル化合物の量は、熱処理賦形された混合物中の所望の第1のニッケル濃度をもたらすようなものである。
【0042】
混合物の賦形された凝集塊は、熱処理されて、熱処理賦形された混合物をもたらす。この熱処理ステップは、必要とされる焼成ステップの前に乾燥ステップを含むことがある。賦形された凝集塊が乾燥される温度範囲は、約65℃(150°F)〜約260℃(500°F)である。好ましくは、乾燥温度は、88℃(190°F)〜232℃(450°F)の範囲である。賦形された凝集塊は、一般に約0.5時間〜約8時間の範囲における乾燥時間、または賦形された凝集塊中の水分の量が所望のレベルに到達するまで乾燥することができる。賦形された凝集塊は、酸素、不活性ガス、空気、またはこれらの混合物の存在下で乾燥することができる。
【0043】
このように乾燥賦形された凝集塊は、酸素または酸素含有不活性ガスまたは空気の存在下で焼成される。賦形された凝集塊が焼成される温度は、一般に371℃(700°F)〜約760℃(1400°F)の範囲にある。好ましくは、焼成温度は、482℃(900°F)〜732℃(1350°F)の範囲にあり、さらに好ましくは、510℃(950°F)〜704℃(1300°F)である。焼成を実施する時間は、揮発性物を除去するために、および賦形された凝集塊中に含まれる実質上全てのニッケル化合物をニッケル酸化物の形態に変換するために必要とされる時間である。焼成に必要とされる時間は、一般に約0.5時間〜約4時間の範囲にある。
【0044】
熱処理賦形された混合物は、第2のニッケル成分を熱処理賦形された混合物中に組み込むことによって、第2のニッケル成分の上層を施される。上に定義したように、本明細書において触媒組成物中の金属の上層という場合は、意味することは、この金属上層が、その他の金属を既に組み込んだ、多孔性耐火性酸化物の混合物の熱処理された凝集塊上への追加の金属の付着から生じるということである。
【0045】
第2のニッケル成分上層を形成するためには、熱処理賦形された混合物を含浸して、含浸された凝集塊をもたらす含浸手順を使用することが好ましい。必要とされる濃度レベルで熱処理賦形された混合物中の第2のニッケル成分の上層を適切にもたらすいかなる含浸手順または方法も使用することができる。このような含浸方法には、例えば噴霧含浸、ソーキング、多段浸漬手順、および初期湿潤含浸法が含まれる。熱処理賦形された混合物は、熱処理賦形された混合物を第2のニッケル化合物を含む含浸溶液と接触させ、これにより含浸された凝集塊をもたらすことによってこうして第2のニッケル成分の上層が施される。含浸された凝集塊は、次いで、賦形された凝集塊の熱処理に関して詳細に上記したような同じ条件下で、同じ方法を使用して熱処理される。
【0046】
第2のニッケル化合物を、熱処理賦形された混合物中に、上述した含浸方法のいずれかにより組み込むために、含浸溶液は、一般に水、アルコールまたは液体炭化水素などの適切な液体溶剤に溶解された第2のニッケル化合物を含むことができる。含浸溶液において使用される第2のニッケル化合物は、例えば酢酸ニッケル、炭酸ニッケル、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、ニッケルチオシアネートおよびこれらの任意の2つ以上の混合物を含むことができる。好ましい含浸溶液は、水に可溶な第2のニッケル化合物の水溶液である。このような含浸溶液は、水に溶解された硝酸ニッケルを含む。含浸溶液中の第2のニッケル化合物の濃度は、本発明の触媒組成物中間体または最終触媒組成物において所望の金属濃度をもたらすように選択される。一般に、含浸溶液中の第2のニッケル化合物の濃度は、1リットル当り0.01〜100モルの範囲にある。
【0047】
触媒組成物は、さらにモリブデン成分の上層を含むことができる。この触媒組成物の実施形態は、熱処理賦形された混合物中にモリブデン成分を組み込むための前述の含浸手段または方法のいかなるものを使用しても調製することができる。
【0048】
さらに、含浸溶液は、モリブデン化合物を含むことができる。含浸溶液中に使用されるモリブデン化合物は、例えば元素モリブデン、酸化モリブデン、酢酸モリブデン、炭酸モリブデン、硝酸モリブデン、硫酸モリブデン、モリブデンチオシアネートおよびこれらの任意の2つ以上の混合物を含むことができる。好ましいモリブデン化合物は、水に可溶である。含浸溶液中のモリブデン化合物の濃度は、本発明の触媒組成物中間体または最終触媒組成物において所望の金属濃度をもたらすように選択される。一般に含浸溶液中のモリブデン化合物の濃度は、1リットル当り0.01〜100モルの範囲にある。
【0049】
また、モリブデン成分は、別の含浸ステップによって熱処理賦形された混合物中に組み込むことができる。
【0050】
本明細書に記載された触媒組成物は、第1の硫黄濃度および第1のオレフィン濃度を有するオレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫においてとりわけ有用である。上述のように、特に記載した触媒組成物は、他の水素処理タイプ触媒の使用に比較してオレフィン含有原料の水添脱硫に対して改善された選択性をもたらし得ることが分かった。特に、本発明は、とりわけ少量だが有効なモリブデン濃度と共に高ニッケル含量、ならびに好ましくは、本発明の方法の独特な選択的水添脱硫利点をもたらす他の成分および特徴を有する触媒組成物の使用である。
【0051】
本発明の選択的水添脱硫方法は、選択的水添脱硫条件の下に本明細書に記載されたようなオレフィン含有炭化水素原料を、本明細書に記載されたような触媒組成物と接触させること、および好ましくはオレフィン含有炭化水素原料の硫黄濃度以下にかなり減少した硫黄濃度を有する低硫黄製品を生じることを含む。本発明の方法は、オレフィン含有炭化水素原料中に含まれる硫黄の20重量パーセントを超える量において、硫黄減少をもたらすことができ、その間、低硫黄製品を生じるために、オレフィン含有炭化水素原料中に含まれるオレフィン化合物の触媒的水素化によって25重量パーセント未満のオレフィン減少が生じる。
【0052】
25重量パーセント未満のオレフィン化合物減少を伴う少なくとも20重量パーセントの硫黄減少は、オレフィン含有原料の相当に選択的な水添脱硫であるが、この方法は、硫黄減少のより高い百分率であるがオレフィン減少はより低い百分率をもたらすことによって、原料の水添脱硫においてさらに選択的であることが望ましい。したがって、脱硫が少なくとも30重量パーセント、さらに少なくとも35重量パーセントの硫黄減少をもたらすことが望ましい。好ましくは、硫黄減少は少なくとも40重量パーセント、さらに好ましくは、硫黄減少は少なくとも50重量パーセントである。最も好ましくは、硫黄減少は60重量パーセントを超える。
【0053】
高選択的脱硫方法は、原料中のオレフィン化合物の水素化による飽和化合物へのオレフィン除去の百分率を低くして硫黄除去の百分率を高くするので、硫黄減少に関する上述した例のそれぞれにおいて、オレフィン減少が最小化され、重量パーセントオレフィン減少が15重量パーセント未満であることが望ましい。好ましくは、重量パーセントオレフィン減少は10重量パーセント未満、最も好ましくは、重量パーセントオレフィン減少は5重量パーセント未満である。
【0054】
本明細書において、オレフィン含有炭化水素原料中に含まれる硫黄の重量パーセント硫黄減少という場合、意味することは、重量パーセント硫黄減少は、原料中の硫黄の重量と生じた製品中の硫黄の重量の間の差を原料中の硫黄の重量で割った比であり、この比は数、百(100)を掛けたものである。
【0055】
本明細書において、オレフィン含有炭化水素原料中に含まれるオレフィン化合物の重量パーセントオレフィン減少という場合、意味することは、重量パーセントオレフィン減少は、飽和化合物に水素化された原料中のオレフィン化合物の重量を原料中のオレフィン化合物の重量で割った比であり、この比は数、百(100)を掛けたものである。飽和化合物に水素化されたオレフィン化合物は、原料中のオレフィン化合物と生じた製品中のオレフィン化合物の重量の間の差であると定義される。
【0056】
本発明の触媒組成物は、水素の存在および高温度および全圧力を含む適切な選択的水添脱硫反応条件下で、触媒組成物の炭化水素原料との接触をもたらす任意の適切な反応系の一部分として使用することができる。このような適切な反応系は、固定触媒床系、沸騰触媒床系、スラリ触媒系、および流動触媒床系を含むことができる。好ましい反応系は、反応器中に炭化水素原料を導入するための供給材料注入口ノズルなどの反応器供給材料注入口手段、反応器から反応器流出物または低硫黄製品を引き出すための流出物出口ノズルなどの反応器流出物出口手段を備えた反応器内に含まれる触媒組成物の固定床を含む系である。
【0057】
選択的水添脱硫反応温度は、一般に約150℃(302°F)から420℃(788°F)の範囲にある。好ましい選択的水添脱硫反応温度は、175℃(347°F)から400℃(752°F)、最も好ましくは200℃(392°F)から380℃(716°F)の範囲にある。
【0058】
本発明の方法は、一般に約50psiaから約1000psia、好ましくは60psiaから800psia、最も好ましくは150psiaから700psiaの範囲の選択的水添脱硫反応圧力において操作する。
【0059】
炭化水素原料を本発明の方法の反応ゾーンに充填する流速は、一般に約0.1hr−1からより多くは約10hr−1などの0hr−1を超える範囲の重量毎時空間速度(WHSV)を与えるようなものである。本明細書では、用語「重量平均空間速度」は、炭化水素原料を本方法の反応ゾーンに充填する1時間当りのポンドを炭化水素原料を充填する反応ゾーンに含まれている触媒組成物のポンドによって割った、速度の数量的な比を意味する。好ましいWHSVは、0.1hr−1〜250hr−1、最も好ましいのは0.5hr−1〜5hr−1の範囲である。
【0060】
水素処理ガス速度は、炭化水素原料に対する反応ゾーンに充填される水素の量である。反応ゾーンに充填される炭化水素原料の量に対する水素の量は、炭化水素原料の1立方メートル当りより多くは約10,000立方メートル水素の範囲であり、一般にこれは、炭化水素原料の1立方メートル当り10〜10,000m水素の範囲である。水素対炭化水素供給原料比の好ましい範囲は、20〜400、最も好ましいのは20〜200である。
【0061】
以下の実施例を本発明をさらに例示するために示すが、これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【実施例1】
【0062】
この実施例1は、実施例2に記載されている選択的水添脱硫実験において使用されている触媒を記載する。触媒Aおよび触媒Bは、以下に記載されるように、市販の水素処理触媒であり、触媒Cは特別に調製された触媒であり、この調製を以下に記載する。
【0063】
触媒A
触媒Aは、アルミナ支持体上のコバルト3.4重量パーセントおよびモリブデン13.6重量パーセントを有し、さらに表面積235m/gおよび水細孔体積0.53cc/gを有する、Criterion触媒DC−130として指定されているCriterion Catalyst Companyから市販されている触媒組成物である。
【0064】
触媒B
触媒Bは、コバルト3.1重量パーセントおよびモリブデン12.4重量パーセントを有し、さらに表面積265m/gおよび水細孔体積0.54cc/gを有する、Criterion448として指定されているCriterion Catalyst Companyから市販されている触媒組成物である。
【0065】
触媒C
支持体を、大きい細孔のアルミナ3,984gおよび脱イオン水3,225g中に硝酸ニッケル153gを含む水性硝酸ニッケル溶液を40分間共混練することによって調製した。得られた混練された混合物を1.3Trilobe(商標)ダイプレートを通して押し出し、125℃において乾燥し、次いで、482℃において焼成した。得られた支持体は、アルミナ、およびニッケル1重量%を含んでいた。
【0066】
支持体691gを、脱イオン水574ml中に溶解したNi(NO・6HO335gにより含浸し、時々撹拌しながら2時間熟成し、100℃において3時間乾燥し、次いで、482℃において2時間焼成した。この生じた焼成され、含浸された支持体をさらに以下のように調製した第2の含浸溶液により含浸した。
【0067】
2種の溶液を調製し、混合して、第2の含浸溶液を形成した。
【0068】
溶液#1を(NHMo180.6g、MoO49.5g、30%H35.4g、モノエタノールアミン(MEA)8.7gおよび脱イオン水147.1gを混合し、65℃に混合物を加熱して、溶解し、次いで、室温に冷却することによって作製した。
【0069】
溶液#2をNi(NO・6HO75.9gおよびNiCO30.1gを脱イオン水100gと混合し、HPOの85%溶液72.4gを添加することによって作製した。
【0070】
溶液#1および#2を混合し、十分の脱イオン水を添加し、混合溶液体積を540mlまでにして、第2の含浸溶液を得た。焼成され、含浸された支持体750gを混合溶液により含浸し、時々撹拌しながら2時間熟成し、100℃において終夜乾燥し、次いで、452℃において2時間焼成した。生じた触媒をこれらの実施例において「触媒C」として指定した。触媒Cの分析は、この組成がNi9.4重量%、Mo12.2重量%、およびP1.9重量%であり、残余はアルミナであることを示した。
【実施例2】
【0071】
この実施例2は、炭化水素原料中のオレフィン化合物の過度の同時に起こる水素化なしに、硫黄の濃度を有するオレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫における、上の実施例1において記載した触媒組成物の性能を測定するために使用される実験手順を記載する。
【0072】
定格直径3/4インチを有する実験室ステンレス鋼等温管状反応器を関連した多量の触媒(触媒A、触媒Bまたは触媒C)により充填した。触媒を20メッシュ炭化ケイ素の層によって支持し、触媒床の上に20メッシュ炭化ケイ素の層を置いた。触媒を、この上を供給材料を通過させる前に水素処理条件において硫化した。臭素価28、総硫黄含量154ppm、それぞれ56.1℃(133°F)および247.8℃(478°F)の初期沸点および最終沸点、ならびに81.4のオクタン価((R+M)/2)を有する触媒的分解ガソリン供給材料を、246.1℃(475°F)〜315.6℃(600°F)の範囲の等温操作温度、10hr−1の液体毎時空間速度(炭化水素供給材料に対して)、200hr−1のガス毎時空間速度(水素ガス速度に対して)、および反応器運転のそれぞれについて310psigの圧力において、触媒上を通過させた。
【0073】
反応器運転のそれぞれのパーセントオレフィン除去に対するパーセント硫黄除去を示している上記の反応器運転からの結果の要約を表1に示す。これらの結果は、他の比較方法に対して、本発明の方法によってもたらされる、オレフィン含有原料の選択的脱硫における改善を例示することに役立てるために図1にも提示する。
【0074】
【表1】

【0075】
上に示したデータは、モリブデンの少濃度、およびほとんど微量のコバルト濃度を含む高ニッケル濃度を有する触媒組成物を使用する本発明の方法は、異なる触媒を使用した他の方法に比べてオレフィン低下の非常に低い百分率を示しながら硫黄除去の高い百分率をもたらすことを示す。共に、アルミナ上に支持されたコバルトおよびモリブデンの組合せを含んだ触媒Aおよび触媒Bは、硫黄除去の著しい百分率をもたらした。しかし、これらはまた、およそ30重量パーセントまたはこれ以上の許容できない高オレフィン減少をもたらした。
【0076】
本発明の特別の実施形態を本明細書において記載したが、特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲を逸脱することなく、記載された開示および添付の特許請求の範囲内である、これらの妥当な変形形態、修正形態および適応形態を実施できることが理解される。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】硫黄濃度を有するオレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫において、原料のパーセントオレフィン低下に対して示されたパーセント硫黄除去に対する種々の水素処理触媒組成物の性能を表す比較プロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン含有炭化水素原料を触媒組成物に選択的水添脱硫条件下で接触させることを含み、
前記触媒組成物は、多孔性の耐火性酸化物と熱処理賦形された混合物の約5重量パーセント未満の第1ニッケル成分濃度における第1ニッケル成分との熱処理賦形された混合物;第2ニッケル成分(前記触媒組成物は前期触媒組成物の約8重量パーセントを超える総ニッケル濃度を有する。);モリブデン成分の触媒的有効濃度であるが少濃度;およびリンを含む、
オレフィン含有炭化水素原料の選択的水添脱硫のための方法。
【請求項2】
ナフサ原料を触媒組成物に選択的水添脱硫条件下で接触させることを含み、
前記触媒組成物は多孔性の耐火性酸化物、ニッケル成分のかなりの総ニッケル濃度、およびモリブデン成分の少濃度を含む、
第1オレフィン濃度および第1硫黄濃度を含むナフサ原料の選択的水添脱硫のための方法。
【請求項3】
前記触媒組成物が、前記多孔性の耐火性酸化物と第1ニッケル成分との熱処理賦形された混合物(前記熱処理賦形された混合物は第1ニッケル成分濃度を有する。);および第2ニッケル成分(前記かなりの総ニッケル濃度は前記触媒組成物の8重量%を超える。)をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒組成物が、コバルト成分の存在しない材料をさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
オレフィン濃度および硫黄濃度を含む炭化水素原料を触媒組成物に選択的水添脱硫条件下で接触させることを含み、
前記触媒組成物は、多孔性の耐火性酸化物およびニッケル成分のかなりのニッケル濃度およびモリブデン成分の少濃度を含み、これにより前記炭化水素原料を選択的に水添脱硫して、硫黄の重量パーセントの減少をもたらす、
低硫黄製品を生じることを含む方法。
【請求項6】
前記硫黄の重量パーセントの減少が、20重量%を超える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
25重量パーセント未満のオレフィン化合物の重量パーセント減少をさらにもたらす、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2008−545812(P2008−545812A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508968(P2008−508968)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/015287
【国際公開番号】WO2006/116208
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】