説明

オレフィン系不飽和モノマーを安定化するための重合防止剤

【課題】オレフィン系不飽和モノマーを安定化するための重合防止剤を提供する。
【解決手段】式(1)の化合物を0〜100質量%および式(1)の=0が水酸基と水素に置き代った化合物を100〜0質量%含有する重合防止剤を、オレフィン系不飽和モノマーまたは少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有するモノマー混合物と混合する。


(R〜Rはアルキル基を、Y〜Yはアルキル基又は一緒になって環構造を形成し、Xはアニオンを表わす。)
【効果】製造工程、精製工程において、または貯蔵の間に、オレフィン系不飽和モノマーを安定化する際に、早すぎる重合に対して改善された特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン系不飽和モノマーを安定化するための重合防止剤の使用ならびにオレフィン系不飽和モノマーと該重合防止剤とを含有するモノマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系不飽和モノマー、たとえばエテン、ブタジエン、ビニルアセテート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、アクリロニトリルまたはスチレンを製造する場合、これらのオレフィン系不飽和モノマーを精製工程、たとえば蒸留または抽出で処理して不所望の副生成物または不純物を除去する。
【0003】
すでに製造工程および/または精製工程においてこれらのオレフィン系不飽和モノマーは重合しうる。これらのオレフィン系不飽和モノマーのいくつか、たとえばブタジエンは、すでに貯蔵の際に、または輸送の際に自発的に重合する傾向がある。
【0004】
該オレフィン系不飽和モノマーの、このような早すぎる、不所望な重合は、一方では使用可能なオレフィン系不飽和モノマーの量の減少につながり、他方では不所望のポリマーの不所望な分離につながる。不所望のポリマーのこのような分離は、場合により個々の装置部材における熱伝達の低下につながりうる。さらに、不所望のポリマーにより被覆されている表面、または不所望のポリマーにより閉塞されている装置部材、たとえばフィルターは、生産の中断につながりうる。
【0005】
従って、オレフィン系不飽和モノマーは通常、すでに製造工程において、重合防止剤、または重合遅延剤と称する、重合の不所望なプロセスを防止するか、または少なくとも抑制することができる添加剤が添加される。
【0006】
多数の重合防止剤が、オレフィン系不飽和モノマー、たとえばスチレンに関して公知である。特にこのためにたとえば硫黄、p−ベンゾキノン、4−t−ブチルベンズカテキン、フェノチアジンまたは立体障害フェノールが使用される。しかしこれらの化合物のいくつかは、著しい欠点、たとえばその毒性、高温での不安定性または製造法もしくは精製法の、相応する方法条件下での不十分な有効性を有する。前記の重合剤のいくつかはそれどころか、その作用を発揮することができるために酸素を必要とし、このことは大工業的な方法における適用にとって、爆発からの保護に関して著しい問題につながりうる。
【0007】
しばしば文献に記載されている重合防止剤は、いわゆる安定した遊離のニトロキシルラジカル、たとえば2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(しばしばTEMPOと省略される)である。たとえばUS3,747,988は、ニトロキシルラジカル、特に2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシルを、蒸留前にアクリロニトリルに添加することを記載している。これらの安定した遊離基はUS3,488,338にも記載されている。しかしここでは2−クロロ−1,3−ブタジエンのための鎖長調節剤としてである。US4,670,131は、オレフィン系不飽和モノマー、たとえばエテン、プロペン、ブテンまたはブタジエンを安定化するための重合防止剤として、これらの安定した遊離ニトロキシルラジカルを使用することを記載している。
【0008】
安定した遊離ニトロキシルラジカルの使用は、特に以下の刊行物も記載している:L.V.Ruban等、"Inhibition of Radical Polymerization by Nitroxide Mono− and Biradicals"(Vysokomol、Soyed.8:1996年、第9号、第1642〜1646頁)、Bevington等、"A Re−Examination of Some Stabilized Radicals as Inhibitors of Polymerization"(J.Polym.Mater.19(2002年)、第113〜120頁)および"Stabilized Radicals as Inhibitors of Polymerization−Reactions of Alkoxyamines with Growing Polymer Radicals"(J.Macrom.Science 2002、第A39巻、第11号、第1295〜1303頁)。
【0009】
多数の刊行物において、特に安定した遊離ニトロキシルラジカルを含有する組成物の使用が記載されている。たとえばUS6,525,146、WO2002/088055およびEP1077245は、安定した遊離ニトロキシルラジカルとフェノール誘導体とからなる組成物を重合防止剤として記載している。オレフィン系不飽和モノマーを安定化するための、安定した遊離ニトロキシルラジカルを含有する組成物のその他の例は、たとえばUS2003/080318、WO2002/094884、WO2002/033026、WO2002/00816、EP1077206およびDE19956509にも記載されている。
【特許文献1】US3,747,988
【特許文献2】US3,488,338
【特許文献3】US4,670,131
【特許文献4】US6,525,146
【特許文献5】WO2002/088055
【特許文献6】EP1077245
【特許文献7】US2003/080318
【特許文献8】WO2002/094884
【特許文献9】WO2002/033026
【特許文献10】WO2002/00816
【特許文献11】EP1077206
【特許文献12】DE19956509
【非特許文献1】L.V.Ruban等、"Inhibition of Radical Polymerization by Nitroxide Mono− and Biradicals"(Vysokomol、Soyed.8:1996年、第9号、第1642〜1646頁)
【非特許文献2】Bevington等、"A Re−Examination of Some Stabilized Radicals as Inhibitors of Polymerization"(J.Polym.Mater.19(2002年)、第113〜120頁)
【非特許文献3】Bevington等、"Stabilized Radicals as Inhibitors of Polymerization−Reactions of Alkoxyamines with Growing Polymer Radicals"(J.Macrom.Science 2002年、第A39巻、第11号、第1295〜1303頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って本発明の課題は、従来技術に対して改善された作用を有するオレフィン系不飽和モノマーのための重合防止剤を提供することである。特に、製造工程、精製工程において、または貯蔵の間に、オレフィン系不飽和モノマーを安定化する際に、早すぎる重合に対して改善された特性を有する重合防止剤が提供されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
意外なことに、式(1)および/または(2)の化合物が、オレフィン系不飽和モノマーのための重合防止剤として適切であることが判明した。該化合物の製造は以前から公知であるが、しかし該化合物を重合防止剤として使用することができることは認識されていなかった。さらに、安定したフリーラジカルを有していないこれらの化合物が、重合防止剤としてこのような作用を発揮することができることが意外であった。従って上記の課題の解決はとりわけ、従来技術による安定したフリーラジカルをその構造中に有する重合防止剤に対して、該化合物の重合防止剤としての効果が改善されていることが判明したのは意外であった。オレフィン系不飽和モノマー中で同じモル量の重合防止剤を使用する場合、本発明による使用により従来技術に比較して、オレフィン系不飽和モノマー中でのより少ないポリマー割合を得ることができる。あるいは、オレフィン系不飽和モノマー中での同じポリマー割合は、重合防止剤のモル量がより少なくても達成することができる。
【0012】
本発明の対象は、
式(1)
【化1】

の化合物を0〜100質量%および
式(2)
【化2】

[上記式中、
1、R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
1、Y2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるか、またはY1およびY2は一緒になって環構造を形成し、
-は、無機または有機アニオンであり、その際、R1、R2、R3、R4、Y1およびY2のタイプの置換基は、同じであるか、または異なっており、Y1およびY2のタイプの置換基も、Y1およびY2のタイプの置換基をベースとする環構造も、置換されていないか、または置換されて存在している]の化合物を100〜0質量%含有し、かつ式(1)および(2)の化合物の質量%の合計が100質量%である重合防止剤を、オレフィン系不飽和モノマーまたは少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有するモノマー混合物と混合することを特徴とする、オレフィン系不飽和モノマーを安定化するための重合防止剤の使用である。
【0013】
本発明のもう1つの対象は、モノマー組成物が、
式(1)の化合物を0〜100質量%
および
式(2)の化合物を100〜0質量%含有する重合防止剤、および少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有することを特徴とする、モノマー組成物である。
【0014】
オレフィン系不飽和モノマーを安定化するための重合防止剤の本発明による使用は、
式(1)
【化3】

の化合物を0〜100質量%および
式(2)
【化4】

[上記式中、
1、R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
1、Y2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるか、またはY1およびY2は一緒になって環構造を形成し、
-は、無機または有機アニオンであり、その際、R1、R2、R3、R4、Y1およびY2のタイプの置換基は、同じであるか、または異なっており、Y1およびY2のタイプの置換基も、Y1およびY2のタイプの置換基をベースとする環構造も、置換されていないか、または置換されて存在している]の化合物を100〜0質量%含有し、かつ式(1)および(2)の化合物の質量%の合計が100質量%である重合防止剤を、オレフィン系不飽和モノマーまたは少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有するモノマー混合物と混合することを特徴とする。
【0015】
該重合防止剤の本発明による使用において、式(1)の化合物または式(2)の化合物のいずれも使用することができる。しかし本発明による使用において、有利には式(1)の化合物と、式(2)の化合物とを含有する組成物を重合防止剤として使用する。特に、
式(1)の化合物を40〜60質量%
および
式(2)の化合物を60〜40質量%
含有する重合防止剤を使用する。特に有利には、
式(1)の化合物を45〜55質量%
および
式(2)の化合物を55〜45質量%含有する重合防止剤を使用する。
【0016】
本発明による使用において使用される重合防止剤は、たとえばMerbouh等の"Preparation of tetramethylpiperidine−1−oxoammonium salt and their use as oxidants in organic chemistry. A review"(Organic Preparations and Procedures International、2004年、36(1)、第3〜31頁)またはGolubev等の"Some reactions of free iminoxyl radicals with the participation of the unpaired electron"(Seriya Khimicheskaya、第11号、1965年、第1927〜1936頁)に記載されている。
【0017】
これらの式(1)の化合物を製造するための有利な方法では通常、式(1)の化合物も、式(2)の化合物も生じ、その際、相応するニトロキシルラジカルは溶液中で強い無機酸または有機酸と反応する。ニトロキシルラジカルの不均化により、式(1)の相応するオキソアンモニウム塩と、式(2)の相応するヒドロキシルアミン化合物との約1:1の混合物が生じる。従って本発明による方法でこれらの式(1)および(2)の化合物の組成物を使用する場合、両方の化合物を製造した後に高価な分離をする必要がなくなる。
【0018】
これらの重合防止剤の本発明による使用の特別な実施態様では、該化合物は現場で製造される。
【0019】
本発明による使用の特別な実施態様では、Y1およびY2のタイプの置換基は置換されており、その際、Y1およびY2のタイプの置換基のこれらの1もしくは複数の置換基は、アルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基、オキソ基、シアン基、シアンヒドリン基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、ハロゲン基、ヒダントイン基、ケタール基、アセタール基またはウレタン基から選択されている。
【0020】
有利には、重合防止剤のY1およびY2のタイプの両方の置換基は一緒になって環構造を形成する。特に有利には本発明による使用において、式(3)
【化5】

の化合物を0〜100質量%および
式(4)
【化6】

[上記式中、R1、R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
Eは、アルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基、オキソ基、シアン基、シアンヒドリン基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、ハロゲン基、ヒダントイン基、ケタール基、アセタール基またはウレタン基であり、かつ
-は、無機または有機アニオンであり、その際、R1、R2、R3およびR4のタイプの置換基は、同じであるか、または異なっている]の化合物を100〜0質量%含有する重合防止剤を使用する。
【0021】
とりわけ有利には本発明による使用において、R1、R2、R3およびR4がメチル基である式(3)および/または(4)の化合物を含有する重合防止剤を使用する。
【0022】
特に本発明による使用において、式(1)〜(4)の化合物中で、無機もしくは有機アニオンを有する重合防止剤を使用し、有利には使用される重合防止剤は無機アニオンを有する。特に有利には本発明による使用は、式(1)〜(4)の化合物中のアニオンX-として、ハロゲンアニオン、有利には塩素アニオンまたは臭素アニオンを有する重合防止剤を使用する。
【0023】
本発明の範囲で重合防止剤とは、一定の期間にわたりオレフィン系不飽和モノマーの重合を阻止することができる化合物であると理解する。従ってオレフィン系不飽和モノマーが重合防止剤を使用しないで重合を開始するまでの時間は、重合防止剤を用いるオレフィン系不飽和モノマーにおける時間よりも短い。
【0024】
さらに、本発明の範囲でオレフィン系不飽和モノマーとは、少なくとも1のC−C二重結合を有し、かつ重合反応を行うことができる化合物であると理解する。
【0025】
本発明による重合防止剤の使用において、有利にはアルケ−1−エンまたはアルカ−1,3−ジエンから選択される少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを使用し、該モノマーは置換されていても、置換されていなくてもよい。有利には、エテン、プロペンもしくはプロピレン、ブタジエン、ビニルアセテート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、クロロプレン、イソプレン、ジビニルベンゼンまたはスチレンから選択されるオレフィン系不飽和モノマーを使用する。
【0026】
本発明の範囲で、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸であると理解し、かつ(メタ)アクリレートとは、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルであると理解し、その際、これらのオレフィン系不飽和モノマーは、置換されていても、または置換されていなくてもよい。
【0027】
本発明による使用において、オレフィン系不飽和モノマーの化合物1種類を使用することも、種々のオレフィン系不飽和モノマーの混合物を使用することもできる。
【0028】
本発明による使用の場合、重合防止剤を固体として、溶液として、または懸濁液としてオレフィン系不飽和モノマーに添加することができる。この場合、重合防止剤は、たとえば製造工程または精製工程のような工程でも、オレフィン系不飽和モノマーに添加することができる。これらの重合防止剤の本発明による使用において、一方ではオレフィン系不飽和モノマーとも重合防止剤とも相容性であり、かつ不所望の反応につながらない適切な溶剤もしくは分散剤に留意することは有利である。
【0029】
これらの重合防止剤は従来技術の通例の方法により不飽和モノマーもしくはモノマー混合物に添加することができる。有利には本発明による使用において、重合防止剤を、蒸留塔の供給流に、熱交換器または気化器の供給部および排出部に、または凝縮器の供給部および排出部に添加することができる。さらに本発明による使用において、重合防止剤をオレフィン系不飽和モノマーの貯蔵タンクに添加することもできる。
【0030】
「本発明による重合防止剤の有効量」という概念は、本発明の範囲では、オレフィン系不飽和モノマーの早すぎる重合を防止するために必要とされる重合防止剤の量であると理解する。重合防止剤のこの有効量は、オレフィン系不飽和モノマーを貯蔵するか、または取り扱う条件に依存する。たとえば不飽和モノマーを蒸留する場合、高温および高濃度の不純物に基づいて、より多量の重合防止剤が必要である。
【0031】
有利には本発明による重合防止剤を使用する際に、オレフィン系不飽和モノマーに対して100ppb(m/m)〜10000ppm(m/m)、特に有利には1ppm(m/m)〜1000ppmおよびとりわけ有利には10ppm(m/m)〜100ppm(m/m)の重合防止剤をオレフィン系不飽和モノマーまたはモノマー混合物に添加する。
【0032】
本発明によるモノマー組成物は、該モノマー組成物が、
式(1)
【化7】

の化合物を0〜100質量%および
式(2)
【化8】

[上記式中、
1、R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
1、Y2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるか、またはY1およびY2は一緒になって環構造を形成し、
-は、無機または有機アニオンであり、その際、R1、R2、R3、R4、Y1およびY2のタイプの置換基は、同じであるか、または異なっており、Y1およびY2のタイプの置換基も、Y1およびY2のタイプの置換基をベースとする環構造も、置換されていないか、または置換されて存在している]の化合物を100〜0質量%含有し、かつ式(1)および(2)の化合物の質量%の合計が100質量%である重合防止剤、および少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有することを特徴とする。
【0033】
本発明によるモノマー組成物は、式(1)の化合物または式(2)の化合物を重合防止剤として含有していてもよい。有利には本発明によるモノマー組成物は重合防止剤として、式(1)の化合物も、式(2)の化合物も含有している。特に本発明によるモノマー組成物は、
式(1)の化合物を40〜60質量%
および
式(2)の化合物を60〜40質量%
含有する重合防止剤を含有する。特に有利にはモノマー組成物は、
式(1)の化合物を45〜55質量%
および
式(2)の化合物を55〜45質量%
含有する重合防止剤を含有する。
【0034】
本発明によるモノマー組成物の特別な実施態様では、重合防止剤の式(1)および(2)の化合物におけるY1およびY2のタイプの置換基は置換されており、その際、Y1およびY2のタイプの置換基のこれらの1もしくは複数の置換基は、アルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基、オキソ基、シアン基、シアンヒドリン基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、ハロゲン基、ヒダントイン基、ケタール基、アセタール基またはウレタン基から選択されている。
【0035】
有利には重合防止剤の式(1)および(2)の化合物のY1およびY2のタイプの両方の置換基は一緒になって環構造を形成する。特に有利には本発明によるモノマー組成物は、
式(3)
【化9】

の化合物を0〜100質量%および
式(4)
【化10】

[上記式中、R1、R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
Eは、アルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基、オキソ基、シアン基、シアンヒドリン基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、ハロゲン基、ヒダントイン基、ケタール基、アセタール基またはウレタン基であり、かつ
-は、無機または有機アニオンであり、その際、R1、R2、R3およびR4のタイプの置換基は、同じであるか、または異なっている]の化合物を100〜0質量%含有する重合防止剤を含有する。とりわけ有利には、本発明によるモノマー組成物は、式中でR1、R2、R3およびR4がメチル基である式(3)および/または(4)の化合物を重合防止剤として含有している。
【0036】
特に本発明によるモノマー組成物は、式(1)〜(4)の化合物中に無機または有機アニオンを有しており、有利には該組成物は無機アニオンを有する。特に有利には本発明によるモノマー組成物は、式(1)〜(4)の化合物中のアニオンX-として、ハロゲンアニオン、有利には塩素アニオンまたは臭素アニオンを有する。
【0037】
本発明によるモノマー組成物は有利には、アルケ−1−エンまたはアルカ−1,3−エンから選択される少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有しており、該モノマーは置換されていても、置換されていなくてもよい。有利には該組成物は、エテン、プロペンもしくはプロピレン、ブタジエン、ビニルアセテート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、アクリルニトリル、アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、クロロプレン、イソプレン、ジビニルベンゼンまたはスチレンから選択される少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有している。
【0038】
本発明によるモノマー組成物は、オレフィン系不飽和モノマーの1種類の化合物を含有していても、種々のオレフィン系不飽和モノマーの混合物を含有していてもよい。
【0039】
有利には本発明によるモノマー組成物は、オレフィン系不飽和モノマーに対して100ppb(m/m)〜10000ppm(m/m)、特に有利には1ppm(m/m)〜1000ppmおよびとりわけ有利には10ppm(m/m)〜100ppm(m/m)の重合防止剤を含有する。
【0040】
以下の例は本発明による使用を詳細に説明するが、本発明をこれらの実施態様に限定すべきものではない。
【実施例】
【0041】
重合防止剤の製造:
例1:
例1では重合防止剤を使用しなかった。
【0042】
例2:
例2では重合防止剤として、Degussa社からの市販の4−ヒドロキシ−TEMPOを、それ以上後処理することなく使用した。
【0043】
例3:
例3における重合防止剤は、Paleos等の"Ready Reduction of Some Nitroxide Free Radicals Using Ascorbic Acids"(J.Chem. Soc.、Chem.Comm.、1997年、第345〜346頁)に記載されている方法により製造した。
【0044】
例4および5:
例4および5における重合防止剤は、Merbouh等の"Preparation of tetramethylpiperidine−1−oxoammonium salts and their use as oxidants in organic chemistry、A review"の第24〜26頁の実験の部(Organic Preparations and Procedures International、2004年、36(1)、第3〜31頁)またはGolubev等の、"Some Reactions Of Free Iminoxyl Radicals With The Participation Of The Unpaired Electron"(Izvestiya Akademii Nauk SSSR、Seriya Khimicheskaya、第11号、1965年、第1927〜1936頁)に記載されている方法により製造した。原料として、Degussa社の4−ヒドロキシ−TEMPOを使用した。例5の重合防止剤は分析により、一臭化物であることが判明した。
【0045】
例6:
例6において使用した重合防止剤は、1,4−ジヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1gを、脱気したジクロロエタン200ml中に溶解し、かつ引き続き室温でゆっくり1時間にわたりHClガスを溶液に導通することによって製造した。1時間の後反応の後に、沈殿した黄色の沈殿物を濾別し、t−ブチルメチルエーテルで洗浄し、かつ乾燥させた。
【0046】
例7および8:
例7および8において使用した重合防止剤は、Degussa社の4−ヒドロキシ−TEMPO0.05モルを、ジクロロエタン200g中に溶解し、かつ引き続きわずかに冷却しながら室温でゆっくり1時間にわたりHClガス0.1モルを該溶液に導通させることによって製造した。1時間の後反応の後で、沈殿した黄色の沈殿物を濾別し、ジクロロメタンで洗浄し、かつ乾燥させた。
【0047】
モノマー混合物の安定性に関する試験
市販のスチレン(Fluka社、purum、モノマー、99.0%以上(GC))から95hPaの減圧下に、塔底温度75℃および窒素被覆下に、安定剤t−ブチル−1,2−ヒドロキシベンゼンを除去した。温度計、冷却器、隔壁および電磁攪拌機を有する三口フラスコを窒素で徹底的に洗浄して、フラスコ中で酸素を含まない雰囲気を得た。この窒素雰囲気を全試験時間にわたって維持した。三口フラスコに、蒸留したスチレンを正確に300gおよびそのつどの量の重合防止剤を充填した。試験を開始するために、三口フラスコを110℃に加熱した油浴に浸漬し、その際、三口フラスコ中に含有されている安定化されたモノマー組成物を攪拌した。重合防止剤の量および種類は第1表に記載されている。加熱した油浴中に三口フラスコを浸漬した後に、規則的な間隔でモノマー組成物2gを試料として取り出し、正確に秤量し、かつメタノール10mlを添加した。30分後にメタノールから析出したポリスチレンを、るつぼ型のガラスフィルターを用いて分離し、110℃で5時間乾燥させ、かつ正確に秤量した。モノマー組成物の試料中に存在するポリスチレンの量を、反応時間に対してプロットして表を作成した。実施例同士の比較値として、それぞれの重合防止剤に関して、モノマー組成物の試料が、測定により3質量%のポリマー含有率に達するまでの時間を測定または場合により補間した。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

*) 重合防止剤の量を計算する際に、イオン化合物ではカチオンの分子量のみを考慮し、アニオンの分子量は考慮しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系不飽和モノマーを安定化するための重合防止剤の使用において、
式(1)
【化1】

の化合物を0〜100質量%および
式(2)
【化2】

の化合物を100〜0質量%含有し[上記式中、
1、R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
1、Y2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるか、またはY1およびY2は一緒になって環構造を形成し、
-は、無機または有機アニオンであり、その際、R1、R2、R3、R4、Y1およびY2のタイプの置換基は、同じであるか、または異なっており、Y1およびY2のタイプの置換基も、Y1およびY2のタイプの置換基をベースとする環構造も、置換されていないか、または置換されて存在している]、かつ式(1)および(2)の化合物の質量%の合計が100質量%である重合防止剤を、オレフィン系不飽和モノマーまたは少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有するモノマー混合物と混合することを特徴とする、オレフィン系不飽和モノマーを安定化するための重合防止剤の使用。
【請求項2】
1およびY2のタイプの置換基が置換されており、その際、Y1およびY2のタイプの置換基のこれらの1もしくは複数の置換基は、アルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基、オキソ基、シアン基、シアンヒドリン基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、ハロゲン基、ヒダントイン基、ケタール基、アセタール基またはウレタン基から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
エテン、プロペンもしくはプロピレン、ブタジエン、ビニルアセテート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクロレイン、N−ビニルホルムアミド、クロロプレン、イソプレン、ジビニルベンゼンまたはスチレンから選択される少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを使用することを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
オレフィン系不飽和モノマーに対して100ppb(m/m)〜10000ppm(m/m)の重合防止剤をモノマーまたはモノマー混合物に添加することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
オレフィン系不飽和モノマーに対して1ppm(m/m)〜1000ppm(m/m)の重合防止剤をモノマーまたはモノマー混合物に添加することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
式(3)
【化3】

の化合物を0〜100質量%および
式(4)
【化4】

の化合物を100〜0質量%含有する重合防止剤
[上記式中、R1、R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
Eは、アルキル基、エステル基、エーテル基、ヒドロキシ基、オキソ基、シアン基、シアンヒドリン基、アミノ基、アミド基、カルボキシ基、ハロゲン基、ヒダントイン基、ケタール基、アセタール基またはウレタン基であり、かつ
-は、無機または有機アニオンであり、その際、R1、R2、R3およびR4のタイプの置換基は、同じであるか、または異なっている]を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
モノマー組成物において、該モノマー組成物が、
式(1)
【化5】

の化合物を0〜100質量%および
式(2)
【化6】

の化合物を100〜0質量%含有し[上記式中、
1、R2、R3およびR4は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、かつ
1、Y2は、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるか、またはY1およびY2は一緒になって環構造を形成し、
-は、無機または有機アニオンであり、その際、R1、R2、R3、R4、Y1およびY2のタイプの置換基は、同じであるか、または異なっており、Y1およびY2のタイプの置換基も、Y1およびY2のタイプの置換基をベースとする環構造も、置換されていないか、または置換されて存在している]、かつ式(1)および(2)の化合物の質量%の合計が100質量%である重合防止剤、および少なくとも1のオレフィン系不飽和モノマーを含有することを特徴とする、モノマー組成物。

【公開番号】特開2007−238614(P2007−238614A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−54593(P2007−54593)
【出願日】平成19年3月5日(2007.3.5)
【出願人】(501073862)デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Bennigsenplatz 1, D−40474 Duesseldorf, Germany
【Fターム(参考)】