説明

オレフィン重合触媒用球形担体の製造方法

本発明はオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法に関するものであって、より詳しくは、反応開始剤である窒素ハロゲン化合物を金属マグネシウムと先に反応させMgX(I)(ここで、Xはハロゲン原子、好ましくはCl,BrまたはI)を製造した後、金属マグネシウムとアルコールを投入して反応させることにより均一な粒子サイズ分布を有する、表面が滑らかな球形のジアルコキシマグネシウムであるオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法に関するものであって、より詳しくは、金属マグネシウムとアルコールを反応させる段階を含む担体の製造方法において、反応開始剤である窒素ハロゲン化合物を金属マグネシウムと同一当量で先ず反応させMgX(I)(ここで、X=ハロゲン原子)を製造し、上記MgXの存在下に金属マグネシウムとアルコールを投入して反応させることにより、均一な粒子サイズ分布を有する、表面が滑らかな球形のジアルコキシマグネシウムである、オレフィン重合触媒用球形担体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン重合用触媒としては、塩化マグネシウム担持形チーグラーナッタ(Ziegler-Natta)触媒が最も広く使用されている。該塩化マグネシウム担持形チーグラーナッタ触媒は、一般的に、マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与性有機化合物で構成された固体触媒成分であり、プロピレンのようなα-オレフィン重合に使用されるときには、助触媒である有機アルミニウム化合物および立体規則性調節剤である有機シラン化合物と共に適切な割合で混合されて投入されることもある。オレフィン重合用の担持形固体触媒は、スラリー重合、バルク重合、気相重合等のように多様な商業化された工程で適用されるため、基本的に要求される触媒の高い活性と立体規則性以外にも、粒子形状に対する要求条件、即ち、適切な粒子サイズと形状、粒度分布の均一性、巨大粒子および微細粒子の極小化、高い嵩密度等を充足させなければならない。
【0003】
オレフィン重合触媒用担体の粒子形状を改善するための方法として、今までは再結晶化および再沈澱方法、スプレー乾燥方法、化学的反応を利用した方法等が知られており、この中で、化学的反応を利用した方法の一つである、マグネネシウムとアルコールとを反応させて得られるジアルコキシマグネシウムを担体に使用して触媒を製造する方法は、余他の方法に比べてはるかに高い活性を有する触媒と、高い立体規則性を有する結果の重合体を提供することができるため、最近、これに対する関心が大きくなっている。しかし、ジアルコキシマグネシウムを担体として使用する場合には、担体として使用されるジアルコキシマグネシウムの粒子形状、粒度分布、嵩密度等が触媒および重合体の粒子特性に直接的に影響を及ぼすため、マグネシウムとアルコールの反応過程で、サイズが均一で球形でありながら嵩密度が十分に高いジアルコキシマグネシウム担体を製造しなければならない。特に、多量の巨大粒子はポリマーの流れ性を悪くして、生産工程への適用を難しくすることがある。
【0004】
均一な形状のジアルコキシマグネシウムを製造するための種々な方法が従来の技術文献に開示されている。米国特許第5,162,277号および第5,955,396号では、アモルファスのジエトキシマグネシウムを二酸化炭素でカルボキシル化させて作ったマグネシウムエチルカーボネートを、多種類の添加物および溶媒を用いて溶液中で再結晶することにより、5〜10μmサイズの担体を製造する方法を提案している。さらに、日本国公開特許平06-87773号では、二酸化炭素によりカルボキシル化されたジエトキシマグネシウムのアルコール溶液をスプレー乾燥し、これを脱カルボキシル化して、球形の粒子を製造する方法を開示している。しかし、このような従来の方法は、多くの種類の原料を使用する複雑な過程を要求するばかりでなく、担体の粒子サイズおよび形態を満足するほどの水準に提供していない。
【0005】
一方、日本国公開特許平03-74341号、平04-368391号および平08-73388号によれば、ヨードの存在下で金属マグネシウムをエタノールと反応させて、球形または楕円形のジエトキシマグネシウムを合成する方法が提供されている。しかし、この方法によって製造されるジエトキシマグネシウムは、反応過程で多くの反応熱と共に多量の水素が発生しながら反応が非常に急激に生ずるため、反応速度を適切に調節するのに困難があるばかりでなく、結果物であるジエトキシマグネシウム担体に多量の微細粒子または多数個の粒子が凝集された異形の巨大粒子を多量含んでいる問題がある。
【0006】
上記の結果物担体から製造された触媒をオレフィンの重合にそのまま使用する場合、重合体の粒子サイズが過度に大きくなるか重合過程の重合熱による粒子形状の破壊現象によって、工程上に深刻な障害を引き起こすなどの問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記のような問題点を解決するために、反応開始剤である窒素ハロゲン化合物を金属マグネシウムと同一当量で反応させて、MgX(ここで、X=ハロゲン原子)を先に製造した後、該MgXの存在下に金属マグネシウムとアルコールを反応させることによって、反応開始剤を直接使用する既存の方法より反応をより安定的に行って、巨大粒子数を減少させ、均一なサイズの表面が滑らかな球形の粒子形状を有するジアルコキシマグネシウム担体を製造することができる、担体製造方法を提供することである。即ち、本発明の目的はスラリー重合、バルク重合、気相重合のような常用のオレフィン重合工程で要求する粒子特性を十分に満足させ得る触媒の製造に使用するのに適合な、オレフィン重合触媒用球形担体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法は、金属マグネシウムとアルコールを反応させる段階を含む担体の製造方法において、反応開始剤として窒素ハロゲン化合物を金属マグネシウムと先に同一当量で反応させることによりMgX(I)(ここで、X=ハロゲン原子)を製造した後、金属マグネシウムとアルコールを投入して、上記MgXの存在下に金属マグネシウムとアルコールを反応させることを特徴とする。
【0009】
本発明の担体の製造方法に使用される上記金属マグネシウムは、粒子の形態には大きく制限がないが、そのサイズにおいては、平均粒径が10〜300μmの粉末状のものが好ましく、50〜200μmの粉末状のものがより好ましいが、金属マグネシウムの平均粒径が10μm未満であれば、生成物である担体の平均粒子サイズが余リ微細になり、300μmを超えると、担体の平均粒子サイズが余り大きいので好ましくなく、担体の形状が均一な球形の形態になりがたくなるので好ましくない。
【0010】
本発明の担体の製造方法に使用される上記アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、ノーマルプロパノール、イソプロパノール、ノーマルブタノール、イソブタノール、ノーマルペンタノール、イソペンタノール、ネオペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール等のように一般式ROH(ここで、Rは、炭素数1〜6のアルキル基である)で表示される脂肪族アルコールおよびフエノールのような芳香族アルコールから選ばれる1種以上のアルコールを混合して使用することが好ましく、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから選ばれた1種以上を混合して使用することがより好ましく、エタノールを使用することが最も好ましく、上記2種以上のアルコールの混合割合には特別な制限がない。
【0011】
本発明の担体の製造方法に使用される上記金属マグネシウムに対する上記アルコールの使用比は、金属マグネシウム重量:アルコール体積で1:5〜1:50であることが好ましく、1:7〜1:20であることがより好ましいが、上記使用比が1:5未満であれば、スラリーの粘度が急激に増加して均一な攪拌が難しくなり好ましくなく、1:50を超えると、生成される担体の嵩密度が急激に減少するか粒子表面が荒くなる問題が発生し好ましくない。
【0012】
本発明の担体の製造方法に使用される反応開始剤である上記窒素ハロゲン化合物は、例えば、
(1)N−ハライドスクシンイミド系化合物
【0013】
【化1】

(ここで、Xはハロゲン原子、R1,R2,R3,およびR4は水素またはC1〜C12のアルキルまたはC6〜C20のアリールである。)
(2)トリハロイソシアヌル酸系化合物
【0014】
【化2】

(ここで、Xはハロゲン原子である。)
(3)N−ハロフタルイミド系化合物
【0015】
【化3】

(ここで、Xはハロゲン原子、R1,R2,R3およびR4は水素またはC1〜C12のアルキルまたはC6〜C20のアリールである。)、および
(4)ヒダントイン系化合物
【0016】
【化4】

(ここで、Xはハロゲン原子、R1およびR2は水素またはC1〜C12のアルキルまたはC6〜C20のアリールである。)、
等を使用することができ、その具体例としては、N−クロロスクシンイミド、N−クロロフタルイミド、N−ブロモスクシンイミド、トリクロロイソシアヌル酸および1,3-ジブロモ‐5,5‐ジメチルヒダントイン等を使用することができる。
【0017】
上記窒素ハロゲン化合物の使用量は、金属マグネシウムと同一な当量を使用することが好ましいが、窒素ハロゲン化合物の使用量が金属マグネシウムと同一当量でない場合、反応速度が余り遅いか、または生成物の粒子のサイズが余り大きくなるとか微細粒子が多量生成され得るので好ましくない。
【0018】
本発明の担体製造方法において、上記窒素ハロゲン化合物と金属マグネシウムの反応は、アルコールの存在下に行われることが好ましく、上記窒素ハロゲン化合物と金属マグネシウムとを反応させるときの反応温度は、25〜110℃であることが好ましく、25〜75℃であるのがさらに好ましいが、反応温度が25℃未満であると、反応が余り遅いので好ましくなく、110℃を超えると、反応が余り急激に起こり微細粒子の量が急激に増加し好ましくなく、また粒子の固まり現象が起こり、望むサイズの均一な球形の担体を得ることができないので好ましくない。上記窒素ハロゲン化合物と金属マグネシウムの反応によって、MgX(ここで、X=ハロゲン原子、好ましくはCl, BrまたはI)を生成させた後、金属マグネシウムとアルコールを再度投入して、上記MgXの存在下に金属マグネシウムとアルコールの反応を進行するようになるが、該反応において、上記MgXは金属マグネシウムとアルコールとの反応に触媒として作用し、このとき、金属マグネシウムとアルコールとの反応温度は75〜90℃であるのが好ましく、また、アルコールの沸点温度において冷却還流させながら反応させることもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の担体の製造方法は、巨大粒子数を懸隔に減少させて、生成された担体の商業的適用を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下実施例および比較例によって本発明を詳しく説明するが、これによって本発明が限定さされるものではない。
【0021】
実施例1
攪拌機、オイルヒーターおよび冷却還流器が装着された5Lサイズの硝子反応器を窒素で十分に換気させた後、N-クロロスクシンイミド3.47g(26mmol),金属マグネシウム(平均粒径100μmの粉末製品)0.63g(26mmol)、無水エタノール130mlを投入し、攪拌速度を240rpmに作動しながら反応器の温度を78℃に上げて、エタノールが還流される状態を維持した。約5分が経過して、MgCl(I)が生成された後、金属マグネシウム(平均粒径が100μmの粉末形製品)30gとエタノール200mlを投入し20分間反応させた。反応が開始されながら水素が発生するので、発生される水素が抜け出るように反応器の出口を開けた状態にして、反応器の圧力を常圧に維持した。水素発生が終われば、金属マグネシウム(平均粒径が100μmの粉末形製品)10gとエタノール150mlを3回さらに投入して、それぞれ20分ずつ反応させた。金属マグネシウムとエタノールの注入が全て終わると、反応器の温度および攪拌速度を還流状態に2時間維持した(熟成処理)。熟成処理が終わった後、50℃で洗浄1回当りノーマルヘキサン1,000mlを使用して、結果物を3回洗浄した。洗浄された結果物を流れる窒素下で24時間乾燥させて、流れ性が良い白色粉末状の固体生成物268g(収率94.9%)を得た。乾燥された生成物は75μm篩を使用して巨大粒子を除去して重さを測定し、粒子形状は電子顕微鏡で観察し、嵩密度を測定した。上記の観察および測定結果を表1に示した。
【0022】
実施例2
反応開始剤としてN-クロロフタルイミド4.72g(26mmol)を使用したことを除いては、上記の実施例1と同一な方法で行って、流れ性が非常に良い白色粉末状の固体生成物265g(収率93.8g)を得た。
【0023】
実施例1と同一な方法で、得られた生成物に対し、巨大粒子の重さを測定し、粒子形状を観察し、嵩密度を測定し、その観察および測定結果を表1に示した。
【0024】
実施例3
反応開始剤としてN-ブロモスクシンイミド4.6g(26mmol)を使用したことを除いては、上記の実施例1と同一な方法で行って、流れ性が非常に良い白色粉末状の固体生成物273g(収率96.6g)を得た。
【0025】
実施例1と同一な方法で、得られた生成物に対し、巨大粒子の重さを測定し、粒子形状を観察し、嵩密度を測定し、その観察および測定結果を表1に示した。
【0026】
実施例4
反応開始剤としてトリハロイソシアヌル酸6.04g(26mmol)を使用したことを除いては、上記の実施例1と同一な方法で行って、流動性が非常に良い白色粉末状の固体生成物270g(収率95.6g)を得た。
【0027】
実施例1と同一な方法で、得られた生成物に対し、巨大粒子の重さを測定し、粒子形状を観察し、嵩密度を測定し、その観察および測定結果を表1に示した。
【0028】
実施例5
反応開始剤として1,3-ジブロモ‐5,5-ジメチルヒダントイン7.4g(26mmol)を使用したことを除いては、上記の実施例1と同一な方法で行って、流動性が非常に良い白色粉末状の固体生成物277g(収率98.0g)を得た。
【0029】
実施例1と同一な方法で、得られた生成物に対し、巨大粒子の重さを測定し、粒子形状を観察し、嵩密度を測定し、その観察および測定結果を表1に示した。
【0030】
比較例1
攪拌機とオイルヒーター、冷却還流器が装着された5Lサイズの硝子反応器を窒素で十分に換気させた後、ヨード3g、金属マグネシウム(平均粒径100μmの粉末製品)15g、無水エタノール240mlを投入し、攪拌機を240rpmに作動しながら反応器の温度を78℃に上げて、エタノールが還流される状態を維持した。次に、エタノールが還流されている反応器に金属マグネシウム(平均粒径100μmの粉末形製品)15gとエタノール240mlを20分間隔で3回に分けて投入した。金属マグネシウムが全部投入された後に、エタノールが還流される条件で2時間同一な攪拌速度を維持した(熟成処理)。熟成処理が終わった後、50℃で洗浄1回当りノーマルヘキサン1000mlを使用して結果物を3回洗浄した。洗浄された結果物を流れる窒素下で24時間乾燥させて、白色粉末状の固体生成物270g(収率95.6%)を得た。
【0031】
実施例1と同一な方法で、得られた生成物に対し、巨大粒子の重さを測定し、粒子形状を観察し、嵩密度を測定し、その観察および測定結果を表1に示した。
【0032】
【表1】

表1において示されたように、実施例1〜5の粒子形状は球形であり、比較例1の粒子形状は荒れ球形であり、実施例1〜5の巨大粒子量は6重量%以内で、比較例1の巨大粒子量である21.4重量%より懸隔に少ないのを分かる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の担体製造方法によれば、巨大粒子量を減少させ、均一なサイズの表面が滑らかな球形粒子形状の担体を得ることができ、このような担体は常用のオレフィン重合工程で要求する粒子特性を有する触媒の製造に使用するのに適合である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属マグネシウムとアルコールとを反応させる段階を含むオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法において、反応開始剤として窒素ハロゲン化合物を同一当量の金属マグネシウムと先に反応させて、MgX(I)(ここで、Xはハロゲン原子)を製造した後、上記MgXの存在下に金属マグネシウムとアルコールを投入して反応させることを特徴とするオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法。
【請求項2】
上記アルコールは一般式ROH(ここで、Rは炭素数1〜6のアルキル基である)で表示される脂肪族アルコールおよび芳香族アルコールから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法。
【請求項3】
上記金属マグネシウムに対する上記アルコールの使用比は、金属マグネシウムの重量:アルコール体積で1:5〜1:50であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法。
【請求項4】
上記窒素ハロゲン化合物は次の(1)〜(4)の構造を有することを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法:
(1)N−ハライドスクシンイミド系化合物
【化5】

(ここで、Xはハロゲン原子、R1,R2,R3,およびR4は水素またはC1〜C12のアルキルまたはC6〜C20のアリールである。)
(2)トリハロイソシアヌル酸系化合物
【化6】

(ここで、Xはハロゲン原子である。)
(3)N-ハロフタルイミド系化合物
【化7】

(ここで、Xはハロゲン原子、R1,R2,R3およびR4は水素またはC1〜C12のアルキルまたはC6〜C20のアリールである。)
(4)ヒダントイン系化合物
【化8】

(ここで、Xはハロゲン原子、R1およびR2は水素またはC1〜C12のアルキルまたはC6〜C20のアリールである。)
【請求項5】
上記MgXにおいて、XはCl,BrまたはIであることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合触媒用球形担体の製造方法。

【公表番号】特表2010−536984(P2010−536984A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521799(P2010−521799)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際出願番号】PCT/KR2008/005374
【国際公開番号】WO2009/075461
【国際公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507324740)サムスン トータル ペトロケミカルズ カンパニー リミテッド (16)
【Fターム(参考)】