オン状態の降伏強度を向上させた磁気粘性流体ダンパ
磁気粘性流体バルブは、少なくとも1つの電磁コイル(204)、および極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器を有する。磁気粘性流体バルブは更に、電磁コイルに隣接する少なくとも1つの流路(118)を有する。少なくとも1つの流路は、間隙幅gを有し、比率Lm/gは、15以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)本願は、2008年6月2日に出願した米国仮出願第61/058203号の利益を主張し、その開示内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般に制御可能な流体バルブおよび装置の分野に関する。より詳細には、本発明は、制御可能な磁気粘性流体ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気粘性(magneto-rheological:MR)流体ダンパ装置は、典型的にはMR流体を収容するシリンダと、該シリンダ内の往復動をもたらすために配置されるピストンアセンブリと、を有する。ピストンアセンブリは、シリンダ内に2つのチャンバを画定する。ピストンアセンブリは、それらの2つのチャンバ間のMR流体の流れを制御するMR流体バルブ装置を有する。MR流体バルブ装置は、典型的には2つのチャンバ内のMR流体に対して開口する流路と、該流路内のMR流体に磁界を印加する磁界発生器と、を有する。流路内のMR流体が印加磁界に曝されると、MR流体の見掛け粘度が上昇し、その結果ピストンアセンブリ全体の差圧が増加する。この差圧の増加は、ダンパ力の増加としても認識される。差圧またはダンパ力は、磁界の強度が高くなると増加する。MR流体ダンパ装置は、流路内のMR流体に磁界が印加されているときはオン状態になり、流路内のMR流体に磁界が印加されていないときはオフ状態になると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、ダンパ装置を高いダンパ速度で動作させるときに、オン状態で高いダンパ力を達成し、オフ状態で低いダンパ力を示すMR流体ダンパ装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、磁気粘性流体バルブを有する。前記磁気粘性流体バルブは、少なくとも1つの電磁コイル、および極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器を有することが好ましい。前記磁気粘性流体バルブは、前記電磁コイルに隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが好ましくは15以上である少なくとも1つの流路を有することが好ましい。
【0006】
追加的な一実施形態では、本発明は、磁気粘性流体ダンパを有する。前記磁気粘性流体ダンパは、磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングを有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパは、前記ダンパハウジングの内部空洞を第1のダンパハウジング内部空洞チャンバおよび第2のダンパハウジング内部空洞チャンバに分割するピストンアセンブリを有することが好ましい。前記ピストンアセンブリは、極長Lmの少なくとも第1の磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブと、前記磁界発生器に隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが好ましくは15以上である少なくとも第1の流路と、を有することが好ましい。前記ダンパハウジングの内部空洞には、磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体が供給されることが好ましく、前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体は、好ましい前記比率Lm/gを有する前記少なくとも第1の流路内を制御可能に流れ、それによって前記ダンパハウジングに対する前記ピストンアセンブリの運動を制御することが好ましい。
【0007】
追加的な一実施形態では、本発明は、磁気粘性流体ダンパを有する。前記磁気粘性流体ダンパは、磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングを有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパは、前記ダンパハウジング内に配設されるピストンアセンブリを有することが好ましい。前記ピストンアセンブリは、少なくとも1つの電磁コイルおよび極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブと、前記少なくとも1つの電磁コイルに隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが好ましくは15以上である少なくとも第1の流路と、を有することが好ましい。
【0008】
追加的な一実施形態では、本発明は、磁気粘性流体ダンパを作成する方法を有する。前記磁気粘性流体ダンパを作成する方法は、磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングを設けるステップを有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパを作成する方法は、前記ダンパハウジングの内部空洞を第1のダンパハウジング内部空洞チャンバおよび第2のダンパハウジング内部空洞チャンバに分割するピストンアセンブリを設けるステップを有することが好ましい。前記ピストンアセンブリは、極長Lmの少なくとも第1の磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブと、前記磁界発生器に隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも第1の流路と、を有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパを作成する方法は、磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体を供給するステップを有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパを作成する方法は、前記ピストンアセンブリおよび前記磁気粘性ダンパ流体を前記ダンパハウジング内に配設するステップを有することが好ましく、前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体は、好ましい前記比率Lm/gを有する前記少なくとも第1の流路内を制御可能に流れ、それによって前記ダンパハウジングに対する前記ピストンアセンブリの運動を制御することが好ましい。
【0009】
上述の概略説明および後述の詳細な説明は、いずれも本発明を例示するものであり、特許請求の範囲の各請求項に記載した本発明の性質および特徴を理解するための概要および枠組みを提供するものであることを理解されたい。
【0010】
後述する添付図面は、本発明の典型的な諸実施形態を例示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その他の等しく有効な実施形態も包含する可能性がある。各図面は、本発明の理解を深めるためのものである。各図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図中の要素は必ずしも縮尺どおりではなく、明瞭且つ簡潔な記載を期すために、これらの要素のいくつかの特徴および外観を強調して示すことも概略的に示すこともある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】流れモードで動作し、内部アキュムレータを有する磁気粘性流体ダンパ装置の断面図である。
【図2A】流れモードで動作し、外部アキュムレータを有する磁気粘性流体ダンパ装置の断面図である。
【図2B】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、ピストンロッドガイドを含む部分を示す図2Aの線2Bに沿った拡大図である。
【図2C】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、内部アキュムレータを有するピストンロッドガイドを含むセグメントの断面図である。
【図3】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図4】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、単一流路を有する磁気粘性流体バルブを備えるピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図5】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、複数の流路を有する磁気粘性流体バルブを備えるピストンアセンブリを含む部分を示す図2Aの線5に沿った拡大図である。
【図6】低流量および低圧で動作する3つの同心流路を備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリにおける圧力対流量をプロットした図である。
【図7】図6の場合よりも高い流量で動作する3つの同心流路を備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリにおける圧力対流量をプロットした図である。
【図8】図7の場合よりも高い流量で動作する3つの同心流路を備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリにおける圧力対流量をプロットした図である。
【図9】Lm/gが大きい磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリに関する降伏応力対磁界強度をプロットした図である。
【図10】磁気粘性流体バルブの降伏応力を測定する流れモードレオメータの斜視図である。
【図11】Lm/g=25およびLm/g=50の各磁気粘性流体バルブ内における磁気粘性流体の鉄粒子体積分率の関数として降伏応力をプロットした図である。
【図12】磁気粘性流体を収容する磁気粘性流体バルブ内の鉄粒子体積分率が15%〜40%の体積範囲であり、且つLm/g=25であるときの降伏応力を印加磁界の関数としてプロットした図である。
【図13】本発明の諸実施形態および既存の磁気粘性流体ダンパ装置に関する降伏進行領域のマップを示す図である。
【図14】Lm/g=23.7のデュアルチャネル磁気粘性流体バルブの実測およびモデル予測性能データを示す図である。
【図15】磁気粘性流体バルブの3ピースフロースプリッタの断面図である。
【図16】磁気粘性流体バルブの1ピースフロースプリッタの断面図である。
【図17】剪断モードで動作する磁気粘性流体ダンパ装置を示す図である。
【図18A】線18A−18Aに沿った図18Cの断面図である。
【図18B】図18Aに示す断面の斜視図である。
【図18C】2つの流路間に電磁コイルが配置された磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリの上面図である。
【図19A】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、積層透磁性プレートで作成されるピストンアセンブリを含むセグメントの上面図である。
【図19B】図19Aの線19B−19Bに沿った断面図である。
【図20A】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、複数のチャネルからの流れを合流させるチャンバを備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図20B】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、複数のチャネルからの流れを合流させるチャンバを備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図21A】流れモードで動作する磁気粘性流体ダンパ装置のうち、2つのコイルを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図21B】部分的に剪断モードで動作する磁気粘性流体ダンパ装置のうち、2つのコイルを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に示したいくつかの好ましい実施形態を参照して本発明について説明する。好ましい諸実施形態に関する以下の説明では、本発明の十分な理解が得られるように諸種の具体的な詳細を記載する。しかしながら、これらの具体的な詳細の一部または全部が欠けている場合にも本発明が実施され得ることは、当業者には理解されるだろう。他の例では、発明が不必要に曖昧になるのを避けるために、周知の機能および/またはプロセスステップについては詳細に説明していない。更に、共通のまたは同様の要素は、同様のまたは同一の参照符号で識別する。
【0013】
図1は、流れモードで動作する磁気粘性(MR)流体ダンパ装置100を概略的に示す。MR流体ダンパ装置100は、ダンパハウジング102を有する。ダンパハウジング102は、ほぼ円筒形であり、閉鎖された第1の先端104と、開孔108を有する第2の先端106と、を有する。ダンパハウジング102は、ピストンアセンブリ200が内部に配置される内部空洞110を有する。ピストンアセンブリ200は、内部空洞110を第1のチャンバ114と第2のチャンバ116に分割する。第1および第2のチャンバ114、116は、それぞれMR流体118を収容することができる。ピストンアセンブリ200は、ダンパハウジング102の長手方向軸線に沿って往復動し、これに応答して流体チャンバ114、116間に差圧が生じる。このような差圧は、ピストンロッド124とダンパハウジング102の間に印加される外部刺激力によって生じる可能性がある。無摩擦材料で作成された1つまたは複数の摩耗バンド(wear band)120をピストンアセンブリ200上に取り付けて、ピストンアセンブリ200の内部空洞110内の往復動を支承することができる。摩耗バンド120は、ダンパハウジング102の内壁と係合し、ピストンアセンブリ200とダンパハウジング102の間の流体シールも提供することができる。ピストンアセンブリ200は、MR流体ダンパ装置100の外部からの刺激に応答してチャンバ114、116間のMR流体118の流れを制御するMR流体バルブを有する。このような刺激は、ピストンロッド124を通じて受け取られ得る。ピストンロッド124は、1つの端部126がピストンアセンブリ200と結合され、別の端部128が運動の制御または制動を必要とする車両座席やシャシのような構造体(図示せず)との結合に利用可能である。ピストンロッド124は、開孔108を通って延び、ダンパハウジング102に対して軸線方向に摺動することができる。開孔108とダンパハウジング102の間にシール130を設けて、内部空洞110からの流体の漏れを制御することができる。
【0014】
MR流体ダンパ装置100は更に、ダンパハウジング102の内部空洞110内にアキュムレータ132を有することができる。別法として、以下に示すように、このアキュムレータは、ダンパハウジング102の外部に配置することも、ピストンロッドガイドと一体化することもできる。アキュムレータ132は、ダンパハウジング102内に収容されるMR流体118の圧力の過渡変動を最小限に抑え、それによってダンパハウジング102内のキャビテーションまたは陰圧のリスクを最小限に抑える働きをすることができる。図1に示す実施形態では、アキュムレータ132は、内部空洞110内のMR流体チャンバ114に隣接するガス充填チャンバとして提供される。ガス充填チャンバ132とMR流体チャンバ114の間には浮動ピストン134を設けることができる。浮動ピストン134は、チャンバ114、132間の差圧に応答して内部空洞110内で軸線方向に往復動することができる。浮動ピストン134上にシール部材136を取り付けて浮動ピストン134とダンパハウジング102の間を封止し、それによってチャンバ114、132内の流体の混合を防止することができる。代替的な実施形態では、浮動ピストン134の代わりにダイヤフラムまたは他の適切な仕切り部材を使用することができる。ガス充填チャンバ132には、充填バルブ138を通じてガスを充填することができる。充填ガスは、窒素のような不活性ガスであってよい。代替的な実施形態では、MR流体ダンパ100の内部空洞110内でブラダ型アキュムレータのような他の形態のアキュムレータを使用することができる。
【0015】
図2Aは、MR流体ダンパ装置100の好ましい一実施形態を示し、アキュムレータ133は、ダンパハウジング102の外部に配置されることが好ましい。この好ましい実施形態では、ダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133は、流体チャンバ135、137と、これら流体チャンバ135、137の間に配設される浮動ピストン134と、を有する。浮動ピストン134は、浮動ピストン134とアキュムレータ133の内壁との間のシールを提供するシール部材141を担持し、それによって流体チャンバ135と流体チャンバ137を互いに隔離することができる。ダンパベース通常流れ導管(normal flow conduit)139は、ダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133内の流体チャンバ135をダンパハウジング102内のMR流体チャンバ114に連結する。このダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133は、ダンパ端ベース131に取り付けられることが好ましい。ここで、ダンパベース通常流れ導管139は、MR流体をダンパ端ベース131内に通すための曲線状の通常転送流れ経路(normal redirecting flow path)を提供する。ここで、MR流体は、ダンパハウジング102から外部に出て、ダンパベース通常流れ導管139を経てダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133内に流入し、その後、ダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133の内部を流れてダンパハウジング102内に戻る。アキュムレータ133のチャンバ137は、ガス充填チャンバであることが好ましい。ダンパベース取り付け型外部アキュムレータの浮動ピストン134は、ピストンアセンブリ200およびピストンロッド124の運動方向と反対の運動方向に、アキュムレータ133内で軸線方向に往復動することが好ましい。図2Aでは、ダンパハウジング102の先端104は、ピストンロッド124と連結された結合部材129内に受けられる。結合部材129は、先述したような運動の制御または減衰を必要とする構造体にピストンロッド124を連結するのに使用することができる。好ましい諸実施形態では、ダンパハウジング102は、アキュムレータが内部に存在しないという点でアキュムレータを有さず、ダンパ装置は、外部アキュムレータ、好ましくはダンパベース取り付け型外部アキュムレータを有することが好ましい。
【0016】
図2Aは、MR流体ダンパ装置100の好ましい一実施形態を、ピストンロッドガイド142の好ましい一実施形態と共に示している。図2Bは、このピストンロッドガイド142の好ましい実施形態の拡大図である。図2Bでは、ピストンロッドガイド142は、ダンパハウジング102の先端104に固定され、ダンパハウジング102は、ピストンロッドガイド142を受け、ピストンロッドガイド142は、ピストンロッド124を受けるための通路127を有する。ピストンロッドガイド142は、任意の適切な方法でダンパハウジング102に固定される案内体143を有する。図2Bに示す実施形態では、取り付け体143は、ダンパハウジング102の内壁にねじ式連結144によって固定される。取り付け体143とダンパハウジング102の内壁との間を封止するために、取り付け体143の外面上にシール145が設けられる。取り付け体143は、環状チャンバ146を有し、環状チャンバ146の内側にはフィルタ149が取り付けられる。フィルタ149は、内側にベアリング150が取り付けられるポケットを有する。ベアリング150は、フィルタ149とピストンロッド124の間に置かれ、それによってピストンロッド124と係合してピストンロッド124の往復動を支承するように取り付けられる。フィルタ149は、環状チャンバ146内でエンドプレート151によって保持され、エンドプレート151は、チャンバ116内のMR流体がそれを通じてフィルタ149に到達できるようになる流体流れポートを有する。フィルタ149とピストンロッド124の間を封止するために、フィルタ149とピストンロッド124の間にはロッドシール152が設けられる。フィルタ149は、流体チャンバ116から環状チャンバ146に進入するMR流体118の磁化可能粒子を濾過除去する。フィルタ149は、多孔性の非磁性耐食材料で作成されることが好ましい。好ましい一実施形態では、フィルタ149は、細孔径が250mm以下であり、ステンレス鋼で作成される。フィルタ149は、ピストンロッド124に沿って長手方向に且つ軸線方向に延在する焼結ステンレス鋼製の軸線方向延在フィルタ部材と、シール152を受けるシールポケットと、ベアリング150を受けるベアリングポケットと、から構成されることが好ましい。取り付け体143は、第2のアウトボード空洞を有し、この空洞内には第2のアウトボードロッドシール153が取り付けられる。ロッドシール153は、フィルタ149の上方のアウトボード位置で、取り付け体143とピストンロッド124の間のシールを提供する。取り付け体143は更に、第3のアウトボード空洞も有し、この空洞内にはワイパ154が取り付けられる。ワイパ154は、ピストンロッド124が開孔108に出入りするときに、ピストンロッド124をきれいに拭う。ロッドシール152、153、およびワイパ154は、エラストマー材料のようなシール材料で作成されることが好ましい。
【0017】
図2Cに示す異なる実施形態では、ピストンロッドガイド173の案内体170は、外側空洞155を有するように改変されている。外側空洞155上にはダイヤフラム157が取り付けられ、ダイヤフラム157は、ピストンロッドガイド173がダンパハウジング102の先端に所定位置で固定されたときにダンパハウジング102の内壁に隣接するように配設される。ダイヤフラム157および外側空洞155は、内部アキュムレータ159として機能する空気体積を画定する。アキュムレータ159には、ダンパハウジング102の壁部内のポート(図示せず)を通じて窒素のような不活性ガスを充填することができる。ダイヤフラム157は、ダンパハウジング102の内壁とピストンロッドガイド173の外面との間の間隙169を通じてチャンバ116内の流体に曝される。ダイヤフラム157は、チャンバ116内の圧力の過渡変動に応じて押し下げられまたは膨張する。アキュムレータ159を有するピストンロッドガイド173は、MR流体ダンパ装置の内部に続くピストンロッド入口に隣接して内部アキュムレータを設ける。
【0018】
図3は、MR流体ダンパ装置に含まれ得る例示的なピストンアセンブリ200の概略断面図である。ピストンアセンブリ200は、ほぼ円筒形である。ピストンアセンブリ200内に設けられるMR流体バルブ201は、磁界発生器202を有する。一般に、「磁界発生器」という用語は、オン状態においてその強度が制御可能に可変となる制御可能な磁界を発生させる1つまたは複数の電磁(EM)コイルと、該EMコイルに隣接する磁極とを提供する任意の構造体または構造体の組立体を意味するものと理解されたい。「磁極」とは、磁束を担持する構造体を指す。図3の実施形態では、磁界発生器202は、低炭素鋼や他の透磁性の強磁性材料のような透磁性材料で作成されたコア206に巻装されるEMコイル204(例えばマグネットワイヤ)を有する。一般に、コア206、ピストンアセンブリ200の他の構成部品、およびそれらの変形物において使用される透磁性材料の特性を決定する要因の一部は、透磁率、飽和、保磁力、および残留磁気である。透磁率および飽和の値は高いほど望ましく、保磁力および残留磁気の値は低いほど望ましい。MR流体ダンパにおいて透磁性材料が使用される場合、透磁性材料の相対透磁率は、ダンパ内に収容されるMR流体の相対透磁率よりもずっと大きいことが好ましい。透磁性材料の相対透磁率は、MR流体の透磁率よりも少なくとも100倍、好ましくは少なくとも200倍、より好ましくは少なくとも1000倍大きいことが好ましい。
【0019】
コア206は、中央片206Aと、中央片206Aの両端のフランジに見える極片206B、206Cと、を有する。各極片206B、206Cは、極長Lmの磁極をそれぞれ提供する。極片206B、206C間の間隔は、極間隔Aとして指定される。いくつかの代替的な実施形態では、磁極は、コア206と一体化されなくてもよく、代わりにコア206の上下にある他の透磁性構造体によって提供することができる。中央片206Aは、円筒形であってもよい。EMコイル204は、中央片206AにN回巻回される。EMコイル204は、中央片206Aの陥凹部内に配設されるボビン上に巻装することができる。EMコイル204は、極片206B、206C間に配置される。コア206は、外部配線223、225をEMコイル204に接続することを可能にする通路(図示せず)を有することができる。EMコイル204は、極片206Bおよび206Cの周面206B1および206C1と同一平面となるように中央片206A上に配置することができる。エポキシのような非磁性材料を使用してEMコイル204を中央片206A上の所定位置に固定することができる。この非磁性材料は、EMコイル204の空間を埋め、それによって流体がEMコイル204の間に入るのを防止することもできる。別法として、図4に示すように、EMコイル204は、極片206B、206Cの各周面206B1、206C1と同一平面にならない(各周面より窪む)ようにすることもできる。EMコイル204に隣接してスペーサ212を配置することにより、極片206B、206Cによって提供される磁極を分離する磁気的不連続性を生み出すことができる。スペーサ212は、アルミニウムやプラスチックのような非磁性材料、または透磁率が非常に低い材料で作成することができる。
【0020】
図3に戻ると、ピストンアセンブリ200内に設けられたMR流体バルブ201は更に、磁界発生器202を取り囲むフラックスリング214を有する。フラックスリング214の断面は、典型的には円形であるが、正方形や六角形のような他の断面形状が使用されてもよい。フラックスリング214は、コア206に関して上述したような透磁性材料で作成される。好ましい一実施形態では、フラックスリング214は、磁界発生器202と同心であり、磁界発生器202から半径方向に離間される。MR流体バルブ201は更に、磁界発生器202とフラックスリング214の間に画定される流路216を有する。流路216は、環状であってよく、磁界発生器202と同心とすることができる。図3に示す例では、フラックスリング214の長さは、磁界発生器202の長さ(Lp)とほぼ同じである。フラックスリング214は、例えばエンドプレート220、222を使用して磁界発生器202と結合される。エンドプレート220、222は、それぞれフラックスリング214の陥凹部と係合するリップ220A、222Aを有する。エンドプレート220、222は、それぞれコア206上の隆起部と係合する陥凹部220B、222Bを有する。エンドプレート220、222は、それぞれ流路216と整列するオリフィス220C、222Cを有する。オリフィス220C、222Cの鋭い端縁がある場合は、流路216の先端において流れが阻害されるのを回避するために、それらの端縁は流路216からセットバックされることが好ましい。エンドプレート220、222を使用して磁界発生器202をフラックスリング214と結合させる代替的な手法は、フラックスリング214の先端とコア206の間に連結リブ(図示せず)を形成することである。
【0021】
ピストンアセンブリ200がMR流体ダンパ100、140内に配設されると、MR流体ダンパ内のMR流体118によって流路216が満たされる。MR流体は、ミクロサイズの磁化可能粒子、好ましくは鉄粒子の非コロイド懸濁液である。EMコイル204には電気配線223、225を通じて電流が供給され、それによってEMコイル204が通電するとともに磁界が発生し、この磁界が流路216内のMR流体全体に印加される。磁束218は、コア206を経て流路216を横切り、好ましくはフラックスリング214を通過し、再び流路216を横切ってコア206内に入る経路内を移動することが好ましい。磁束218(破線および矢印で示す)は、極片206B、206Cに対して垂直であることが好ましい。流路216に磁界が印加されると、流路216内のMR流体の見掛け粘度が上昇し、その結果、制御可能な磁界のオン状態がもたらされる。流路216内のMR流体の降伏強度は、オン状態になった磁界の強度を変更することによって制御することができる。MR流体ダンパ(図1の100または図2の140)は、流れモードで動作する。つまり、流路216を画定する各表面が垂直磁界および流路216内の軸線方向の流れに対して静止状態で保持される。極片206B、206Cおよびフラックスリング214の流路216に面する各表面は、慣性および遷移効果を最小限に抑えるためにそれぞれ平滑であることが好ましい。
【0022】
流路216は、流路216を横切る磁束218の流れ方向に沿って測定される間隙幅gを有する。流路216の間隙幅gは、流路216の流れ間隙長さに沿って一定またはほぼ一定であることが好ましい。後で証明するように、このMR流体ダンパは、Lm/gが大きいときに高いオン状態降伏強度を達成する。Lm/gが大きいというのは、Lm/gが15以上であることを指す。より好ましくは、Lm/gは20以上である。最も好ましくは、Lm/gは25以上である。他の好ましい実施形態では、Lm/gは20〜50である。図3に示すピストンアセンブリの幾何形状であれば、Lm/gは、Lmを増加またはgを減少させることにより、より大きい値とすることができる。しかしながら、Lmを増加させると、ピストンアセンブリの全長が望ましくないほど長くなり、コア206およびフラックスリング214の磁気飽和も発生する。磁気飽和を回避するには、コア206の直径Dcoreおよびダンパハウジング102の厚さtwallを増加させる必要がある。そのため、ダンパ寸法が大きくなる。gを急激に減少させると、許容できない高さのオフ状態力がもたらされる。
【0023】
MR流体ダンパの寸法を大幅に増加させることなくLm/gを大きくする好ましい一手法は、間隙幅gi(ただし、iは1〜N、N>1)を有するN個の流路を利用することである。この場合、各流路iのLm/giが大きくなる。間隙幅gが0.5mm、Lm/gが25のとき、Lmは約12.5mmとなる。間隙幅g1、g2(g1およびg2はそれぞれ0.5mm)の2つの流路を有する系では、MR流体チャンバ間の流体流れが合計1.0mmの総間隙幅を利用することが可能となる。単一流路を有する系において間隙幅=1mm、Lm/g=25を達成するには、Lmを25mmとする、すなわち、2つの流路を有する系で必要とされるLmの2倍の長さが必要となる。この例は、オン状態降伏強度が向上したコンパクトなダンパが複数の流路を利用して実現され得ることを証明する。先述のとおり、高いオン状態降伏強度は、Lm/gを大きくすることによって達成される。Lm/gが大きいというのは、Lm/gが15以上であることを指す。より好ましくは、Lm/gは20以上である。最も好ましくは、Lm/gは25以上である。他の好ましい実施形態では、Lm/gは20〜50である。
【0024】
図5は、複数の流路を有する好ましい一実施形態のピストンアセンブリ200を示す。好ましい複数の流路を形成するために、磁界発生器202とフラックスリング214の間にフロースプリッタ230が配設され、それによって磁界発生器202とフラックスリング214の間の2つの流路232、234が画定される。エンドプレート220、222は、フロースプリッタ230をフラックスリング214および磁界発生器202のコア206と結合させる機能を有することができる。好ましい一実施形態では、フロースプリッタ230は、リング形状であり、磁界発生器202およびフラックスリング214と同心である。その結果、磁界発生器202およびフラックスリング214と同心の環状流路232、234が得られる。3つ以上の流路が望まれる場合は、磁界発生器202とフラックスリング214の間に追加的なフロースプリッタを配設することができる。一般に、N個の流路(ただし、N>0)を画定するのにN−1個のフロースプリッタが必要となる。流路232は間隙幅g1、流路234は間隙幅g2を有する。一般に、磁界発生器202とフラックスリング214の間に形成される各流路は、間隙幅gi(ただし、iは1〜N、Nは流路数)を有することができる。各流路の間隙幅は、同じであっても異なっていてもよい。上述のとおり、高いオン状態降伏強度では、Lm/giは大きくなる(ただし、iは1〜N、Nは流路数)。Lm/giは流路単位で計算されることに留意されたい。
【0025】
間隙幅gi=gが等しく流路内の磁界が等しい複数の環状流路をピストンアセンブリ200が有する場合、MR流体ダンパ内に配置されたときのピストンアセンブリ200全体の差圧は、近似的に次式で与えられる。
【0026】
【数1】
【0027】
上式で、
η:MR流体粘度
Q:MR流体体積流量(ダンパ速度×ピストンアセンブリの直径の2乗に比例)
Lp:ピストンアセンブリの長さ
g:流路の間隙幅
w:MR流体バルブの横幅。公称的には
【0028】
【数2】
【0029】
と等しい(ただし、Diはi番目の間隙の平均直径)。
τMR(H):磁界HにおけるMR流体の降伏応力
Lm:電磁石の極長
2*Lm:電磁石の有効極長
c:2〜3の動的流量計数
k:0〜1.5の動的流量計数
【0030】
式(1)の定数「c」は、流路内の特定の流れ条件に依存する。流路内の流量がゼロであれば、cは2となる。流量が高く、粘度が高く、間隙gが非常に狭い条件下では、係数cは、3の値に近付く。定数「k」は、主に流路内のレイノルズ数、すなわち乱流度に依存する。レイノルズ数が非常に高い場合には、kはほぼ1.0となる。レイノルズ数が低い層流の場合には、kはオフ状態でほぼ0.68となる。MR流体ダンパがオン状態であり、大きい誘起降伏強度を有するとき、kはほぼ0.5となる。
【0031】
式(1)において、第1項は、流体粘度および体積流量に比例するオフ状態の粘性項であり、第2項は、オン状態の磁界誘起による降伏強度によって追加される圧力であり、第3項は、流体密度と体積流量の2乗とに依存する慣性項である。粘性項は、wg3の逆数に比例する。第2項は、磁気粘性項であり、gの逆数に比例する。慣性項は、w2g2の逆数に比例する。高いダンパ速度では、圧力と2次の関係を有する慣性項は、オフ状態の粘性項と同等または該粘性項より何倍も大きくなる可能性がある。このことが意味するのは、オフ状態の慣性項が最小化されていなければ、オフ状態の差圧(またはダンパ力)が非常に大きくなる可能性があるということである。本発明では、Lm/gを大きくし、電磁石とフラックスリングの間に複数の流路を設け、各流路の間隙幅を小さくすることにより、オン状態のダンパ力を低下させずにオフ状態の慣性項が最小化される。間隙幅は、大きいLm/gを達成するために可能な限り小さくすることができ、典型的には約0.5mmとすることができる。
【0032】
Lm/gを大きくすることに加えて、Dpiston/gも大きくすることができる。Dpistonは、ピストンアセンブリの直径である。Dpiston/gを大きい比率にすることの重要性は、流路内の流体速度、および高い流体速度における式(1)の第3項である慣性項の2次増加と関係付けられる。流路内の流体速度は、ピストンアセンブリの速度にピストンアセンブリの直径Dpistonの2乗を掛け、それを流路面積w*gで割った値に比例する。ただし、wは、式(1)に関して説明したように、ピストンアセンブリ内に設けられるバルブの横幅である。複数の間隙を設けることによりwを増加させることができ、それにより、慣性項を小さく維持しながらgを減少またはDpistonを増加させることが可能となる。gを減少させると、オン状態の差圧が増加し、Dpistonを増加させると、差圧とピストン面積の積である全体のダンパ力が増加する。好ましくは、Dpiston/gは66より大きい。より好ましくは、Dpiston/gは80より大きい。更に好ましくは、Dpiston/gは90より大きい。最も好ましくは、Dpiston/gは120より大きい。
【0033】
ピストンアセンブリ200内の流路が等しくない場合、および/または異なる流路の磁界誘起による降伏強度が等しくない場合は、ピストンアセンブリ全体の圧力は、以下の1組の方程式によって記述される。
【0034】
【数3】
【0035】
Ppiston=P1=P2=...=Pi (3)
【0036】
式(2)に記述した状況は、流路に応じて流量が異なるため、式(1)に記述した状況よりも遥かに複雑である。場合によっては、結果として得られるPpistonに応じて、一部の間隙に流れがまったく存在しない可能性もある。式(2)は、それ自体N個の方程式の集合である(ただし、Nは同心流路の数、添え字iおよびkの範囲は1〜Nである)。一例として、i=1のとき、式(2)は、流路1に起因する差圧が波括弧内の第1項の最小値となるか、または他の流路、すなわちk=2,3,...,Nのうちの1つにおける差圧となることを意味すると解釈される。なお、各間隙の差圧は、最終的に同じになり、式(3)に示すようにピストンアセンブリ全体の差圧と等しくなる。
【0037】
上記の1組の方程式は、図6〜図8を参照すればより理解が深まるだろう。図6は、3つの同心流路の流量および圧力が低い場合を示す。3つの曲線は、式(2)の波括弧部分で与えられる、3つの流路それぞれの理論上の圧力対流量である。この場合、最小圧力降下は破線Aで示される。ここで、非ゼロ流量の流れを有する唯一の流路は、チャネル3である。チャネル1および2に関する曲線は、いずれも最小圧力降下を上回っており、したがって、すべてのチャネルの全体の圧力は、Aによって与えられる。図7は、全体の流量が増加し、その結果、破線Bによって与えられるようにチャネル2とチャネル3の両方に流れが存在するようになったときに何が起こるかを示す。チャネル1には依然として流れは存在しない。チャネル2の流量はQ2、チャネル3の流量はQ3である。Q2とQ3は同じではない。図8は、全体の流れが増加し、その結果、互いに異なる3つのすべてのチャネルQ1、Q2、Q3に流れが存在するようになったときに何が起こるかを示す。この場合、圧力は破線Cによって与えられる。
【0038】
図9は、降伏応力を磁界強度の関数としてプロットした図である。プロット内には実測および予測降伏応力が示されている。本例では、Lm/gは25であり、MR流体の鉄含有量は22体積%である。このプロットは、実測降伏応力が予測降伏応力の2倍より大きいことを示しており、Lm/gを大きくすることによって達成可能な降伏応力の増加現象を指示する。測定は、流れモードレオメータを使用して行った。図10は、EMコイル(図示せず)が巻装されたプラスチックボビン302を有するレオメータ300を示す。プラスチックボビン302は、鋼製の極片306、308に挟まれる。極片306、308は、ステンレス鋼製の非磁性スペーサ310によって離間される。非磁性スペーサ310は、流路(図示せず)を有する。入口管312および出口管314は、非磁性スペーサ310内の流路と整列するように非磁性スペーサ310の両端と結合される。この流路は、間隙幅gの矩形断面を有する。極片306、308は、極長Lmを有する。測定を行うために、レオメータ300を金属シリンダ(図示せず)内に配置する。レオメータ300および金属シリンダをインストロン試験機(図示せず)内に配置し、インストロン試験機は、プランジャを指定のレートで押し下げ、それによりMR流体をスペーサ310内の流路に送り込む。ロードセルは、その結果プランジャにかかる力を測定する。この力から、レオメータによる圧力を計算する。計算した圧力を使用して、印加磁界によって生じるMR流体の降伏強度を決定する。
【0039】
図11および図12は、Lm/gを大きくすることによって達成される降伏強度の増加現象の他の例を示す。図11は、磁界強度100kA/mにおける、Lm/g=25およびLm/g=50のMR流体の降伏応力対鉄粒子体積分率を示す。図11は、鉄粒子体積分率が減少するに従って降伏応力が増加することを示している。図11は、Lm/gが大きいほど降伏強度が高くなることも示している。図12は、Lm/g=25のMR流体の様々な鉄粒子体積分率に関する降伏応力対印加磁界を示す。図12は、鉄粒子体積分率が減少すると、印加磁界の強度に関わらず降伏応力が増加することも示している。図11および図12から、上述のようなLm/gが大きいときに生じる降伏の進行は、体積分率の低い磁化可能粒子、好ましくは鉄粒子を有するMR流体を使用することによって更に改善され得ると結論付けることができる。
【0040】
MR流体は、<30体積%の磁性鉄粒子を含有することが好ましく、好ましくは≦26体積%の磁性鉄粒子、好ましくは<25体積%の磁性鉄粒子、好ましくは<23体積%の磁性鉄粒子、好ましくは<21体積%の磁性鉄粒子、好ましくは≦19体積%の磁性鉄粒子、好ましくは≦17体積%の磁性鉄粒子、好ましくは≦16体積%の磁性鉄粒子を含有する。MR流体は、約26体積%((26±1)体積%)の磁性鉄粒子を含有することが好ましい。MR流体は、約15体積%((15±3)体積%)の磁性鉄粒子を含有することが好ましい。MR流体の磁性鉄粒子の体積百分率は、約10〜20(総体積の百分率)であることが好ましい。
【0041】
MR流体は、好ましくは≦19体積%(総体積の百分率)の磁性鉄粒子、および≧60体積%(総体積の百分率)のキャリア流体で構成され、キャリア流体は、好ましくは≧64体積%のキャリア流体、≧66体積%のキャリア流体、≧69体積%のキャリア流体であり、また、好ましくは約71体積%((71±3)体積%)のキャリア流体であり、好ましくは油キャリア流体であり、好ましくは炭化水素油キャリア流体である。キャリア流体は、ポリアルファオレフィンで構成されることが好ましい。
【0042】
磁性鉄粒子は、鉄で構成されることが好ましい。磁性鉄粒子は、カルボニル鉄粒子で構成されることが好ましい。代替的な好ましい一実施形態では、磁性鉄粒子は、水アトマイズした鉄粒子で構成される。磁性鉄粒子の密度は、7〜8.2g/mlであることが好ましく、好ましくは約7.5〜8.2g/ml、好ましくは約7.86g/ml(7.86±0.30ml)である。
【0043】
MR流体は、磁性鉄粒子およびキャリア流体に加えて添加剤も含むことが好ましい。好ましくは、MR流体は、耐摩耗添加剤を含む。MR流体は、MR流体装置の寿命および耐摩耗性を高め、MR流体の作用に関する摩耗を阻止するとともに、磁性鉄粒子によるMR流体装置の構成部品の摩擦および摩損を阻止する少なくとも1つの耐摩耗添加剤を含むことが好ましい。好ましくは、MR流体の耐摩耗添加剤は、モリブデンを含み、好ましくは有機モリブデンを含む。MR流体は、酸化防止添加剤を含むことが好ましい。MR流体は、MR流体の作用に関するMR流体およびMR流体装置の酸化を阻止するとともに、磁性鉄粒子によるMR流体装置の構成部品の摩擦および摩損を阻止する少なくとも1つの酸化防止添加剤を含むことが好ましい。好ましくは、MR流体の酸化防止添加剤は、リン酸化防止添加剤を含み、好ましくは無灰ホスホロジチオアート酸化防止添加剤を含む。MR流体は、沈降防止添加剤を含むことが好ましい。MR流体は、キャリア流体内の磁性鉄粒子の懸濁を補助して粒子の沈降を阻止し、それらの懸濁状態を維持するのに役立つ少なくとも1つの沈降防止添加剤を含むことが好ましい。MR流体の沈降防止添加剤は、クレーを含むことが好ましく、好ましくは有機クレー、好ましくは有機クレーゲル化剤を含み、好ましくは活性剤で活性化され、好ましくは炭酸プロピレンを含む。MR流体は、MR流体シール膨潤コンディショナー添加剤(swelling conditioner additive)を含むことが好ましい。MR流体は、流体に曝されるMR流体装置内のシールの状態を調整し、好ましくはシールを膨潤させ、MR流体装置からの流体の漏れを阻止する少なくとも1つのMR流体シール膨潤コンディショナー添加剤を含むことが好ましい。MR流体シール膨潤コンディショナー添加剤は、セバシン酸を含むことが好ましく、好ましくはセバシン酸ジオクチルを含む。
【0044】
磁性鉄粒子は、好ましくはキャリア流体と混合されてキャリア流体内に分散されることが好ましい。磁性鉄粒子およびキャリア流体に加えて添加剤も含む場合は、添加剤もキャリア流体に混合されることが好ましい。好ましい諸実施形態では、MR流体は、好ましくは回転式ロータステータ混合により、キャリア流体内の磁性鉄粒子および添加剤を混合および分散させるための混合期間にわたって、回転ミキサによって回転混合される。
【0045】
磁性鉄粒子の総体積が<30体積%であるMR流体は、体積百分率測定に基づく各成分からMR流体を作成、提供することによって提供されることが好ましい。MR流体には、30%未満の磁性鉄粒子総体積百分率が与えられることが好ましい。多様な一群のMR流体に対して30%未満の様々な磁性鉄粒子総体積百分率が与えられ、それにより、ダンパ装置およびそれらのピストンの複数の環状流路を充填するための、磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満であるMR流体の選択群が提供されることが好ましい。少なくとも、磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である第1のMR流体と、磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である異なる第2のMR流体とが、選択およびダンパ装置の充填用に提供され、それにより、少なくとも2つの異なる車両ダンパ性能が提供されることが好ましい。好ましい一実施形態では、本発明は、少なくともV通り(ただし、V>1)の磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満であるMR流体を提供するステップと、前記少なくともV通りの磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満であるMR流体群から、比率Lm/gが15以上である少なくとも1つの流路にとって好ましい車両ダンパ性能を実現する、磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満であるMR流体を選択するステップと、を含む。好ましい諸実施形態では、ここで選択される磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である第1および第2のMR流体は、図5の好ましい複数の環状流路を有する図2Aの好ましいダンパに関して選択したような磁性鉄粒子15体積%のMR流体および磁性鉄粒子26体積%のMR流体である。好ましい磁性鉄粒子15体積%のMR流体は、密度7.86g/mlの15体積%のカルボニル鉄粒子;密度0.92g/mlの10体積%のセバシン酸ジオクチル;密度1.60g/mlの1.65体積%の有機クレーゲル化剤;密度1.189g/mlの0.48体積%の炭酸プロピレン;密度1.06g/mlの.70体積%の無灰ホスホロジチオアート;密度1.04g/mlの0.87体積%の有機モリブデン錯体;および密度0.81g/mlの71.30体積%のポリアルファオレフィン炭化水素油キャリア流体から作成した。約80パーセントの炭化水素油キャリア流体の初期混合物は、有機クレーゲル化剤、炭酸プロピレン、および回転式ミキサロータステータ内で混合した有機モリブデン錯体の半分で作成し、次いでカルボニル鉄粒子を混合し、その後残りの成分を追加して混合した。その結果得られた<30体積%の磁性鉄粒子を有し、好ましい磁性鉄粒子レベルが15体積%であるMR流体は、好ましくは約1.88g/mlの密度を有し、摂氏0度の粘度が約144cP、摂氏25度の粘度が約45cPであった。同様に、磁性鉄粒子総体積百分率が26体積%であるMR流体は、26体積%のカルボニル鉄粒子から作成した。同様に、磁性鉄粒子総体積百分率が22体積%であるMR流体は、22体積%のカルボニル鉄粒子から作成した。
【0046】
MR流体の磁性鉄粒子は、鉄粒子体積分率が0.1〜0.45、好ましくは0.1〜0.4であることが好ましい。MR流体の磁性鉄粒子は、鉄粒子体積分率が0.3未満、好ましくは0.2未満であることが好ましい。
【0047】
図13は、本発明の好ましい諸実施形態による降伏進行領域を定義するマップである。横軸は比率Lm/g、縦軸はLm/g/φである。ここで、φは鉄粒子体積分率を指す。本発明の好ましい諸実施形態によるMR流体ダンパは、大きいボックス311の範囲内である。表1に示すLm、g、φの各特性を有する既存のMR流体ダンパは、小さいボックス312の範囲内である。表1に列挙した(図13の小さいボックス312の範囲内の)すべてのダンパは、Lm/gが13以下、Lm/g/φが50未満である。小さいボックス内のバルブについては、大幅な降伏強度増加は観察されない。本発明によるMR流体バルブは、大きい方のボックスの範囲内である。本発明による流体バルブは、Lm/gが15を上回り、Lm/g/φが50を上回る。
【0048】
【表1】
【0049】
図14は、外径76mmのデュアルチャネルダンパに関する実測性能データを示す。本ダンパには、15体積%の鉄粒子を含有するMR流体が充填される。本ダンパは、0.5mm幅の均一な間隙gを有し、Lmは11.85mmであり、したがってLm/gは23.7mmである。本ダンパについて測定された力は、図中の実線および各データ点で指示される。3アンペアの入力電流で観察された力を達成するには、本ダンパ内の流体は、2.25の降伏強度進行係数を示さなければならない。上側の破線211は、本ダンパが2.25の降伏進行係数を示す15%のMR流体を含む場合、すなわち、MR流体の見掛け降伏強度が回転式直接剪断レオメータで通常測定される降伏強度の2倍より大きい場合の予測性能である。
【0050】
図5に戻ると、フロースプリッタ230における磁束損失および磁界の漏れにより、フラックスリング214に最も近い流路232内の磁束密度は、フラックスリング214からより離れた流路234内の磁束密度よりも小さくなる傾向がある。したがって、フラックスリング214に最も近い流路232内の流体は、フラックスリング214からより離れた流路234内の流体よりも先に降伏し流れることになる。このような影響は、フラックスリング214に最も近い流路232の間隙幅g1をフラックスリング214からより離れた流路の間隙幅g2よりも小さくすることによって補償することができる。
【0051】
フロースプリッタ230は、高い磁束密度で磁気的に飽和し、それにより、磁束がフロースプリッタ230の軸線方向長さに沿って流れるように制限することが好ましい。例えば、図15に示すように、フロースプリッタ230は、1対の透磁性部238に挟まれ、それらと連結される非磁性部236を有する。別法として、フロースプリッタ230は、非磁性部236および透磁性部238を有し、非磁性部236がEMコイル(図5の参照符号204)と対向する関係になるように透磁性部238の中央部に埋め込まれると考えることもできる。非磁性部236は、1対の透磁性部238の間の磁束の流れを防止する。透磁性部238は、高透磁率強磁性材料のような高透磁率材料で作成されることが好ましい。別の実装環境では、図5に示すように、フロースプリッタ230は、低炭素鋼のような透磁性材料で作成される非常に薄い、例えば半径方向厚さが1mm程度の単一のリングである。この薄い単一のリングの中央領域239は、磁気的に飽和状態となり、それによって磁束の軸線方向の流れが制限される。別の実施形態では、図16に示すように、フロースプリッタ230は、低炭素鋼のような透磁性材料で作成され、薄くされた中央部240を有する単一のリング242とすることができる。先述の例の場合と同様に、薄くされた中央領域240は、磁気的に飽和状態となるのが早く、フロースプリッタ230内の磁束の軸線方向の流れを制限する。薄くされた中央領域240は、エポキシのような非磁性材料244で埋め戻すことによってフロースプリッタ230の軸線方向長さに沿った半径方向厚さを均一にすることができ、それによって円滑且つ均一な流体流れ経路を保持することができる。HyMu80(ニッケル80%と鉄20%)や、初期の透磁性が非常に高く比較的低い磁束密度で飽和するその他の鉄‐ニッケル合金等の強磁性合金で1ピースフロースプリッタ230を作成すれば、性能改善を達成することができる。
【0052】
フロースプリッタ230の中央領域が薄くされる場合(図16の参照符号240参照)、または非磁性材料を含む場合(図15の参照符号236参照)には、薄くされた領域または非磁性材料の長さ(B)は、極間隔(図5のA)よりも小さいことが好ましい。好ましくは、B<A−2gである。より好ましくは、B<A−5gである。最も好ましくは、B<A−10gである。パラメータ「g」は、流路の間隙幅である。N個の流路が存在する場合、パラメータ「g」は、複数の流路の間隙幅の平均として定義することができる。流路232、234(図5)が存在する場合、gは、(g1+g2)/2と定義することができる。
【0053】
フロースプリッタ230は、磁気飽和を回避するのに十分な厚さのコンパクトなピストンアセンブリ200およびフラックスリング214が提供できるようにするために、半径方向厚さは薄いことが好ましい。一例として、フロースプリッタ230は、半径方向厚さを2mm以下、好ましくは半径方向厚さを1mm以下とすることができる。フロースプリッタ230の半径方向厚さは、フラックスリング214の半径方向厚さを大幅に下回るべきである。これは、フロースプリッタ230内の磁束の軸線方向の流れを制限しながら、フラックスリング214内の磁束の軸線方向の流れを容易にするためである。スプリッタ230の厚さは、フラックスリング214の厚さの1/2以下であることが好ましい。フロースプリッタ230の厚さは、フラックスリング214の厚さの1/3以下であることがより好ましい。スプリッタ230の厚さは、フラックスリング214の厚さの1/4以下であることがより好ましい。
【0054】
これまで、MR流体バルブの1つ(または複数)の流路がピストンアセンブリ200内に配置される例およびその変形例に関して、MR流体ダンパ装置の説明を行ってきた。しかしながら、1つ(または複数)の流路をピストンアセンブリ200の外部に配置することも可能であり、その変形例も同様に可能である。図17は、MR流体バルブの流路304がピストンアセンブリ324とダンパハウジング320の間に配置される系の一例を示す。流路304は、間隙幅gを有する。本例では、ピストンアセンブリ324は、先述した磁界発生器202を有する。先述の例の場合と同様に、Lm/gは大きい。本例では、ダンパハウジング320は、透磁性材料で作成されるフラックスリングとして機能する。一般に、動作中に磁界発生器202を取り囲むダンパハウジング320の少なくとも一部分は、透磁性材料で作成すべきである。磁界発生器202は、通電したときに流路304内のMR流体全体に磁界を印加する。磁束305は、磁界発生器202のコア206の下から上へと進んで流路304を横切り、ダンパハウジング320の上から下へと進んで流路304を横切り、再びコア206の下から上へと進む単一の連続経路内を移動する。この場合、MR流体ダンパ装置は、剪断モードで動作する。つまり、流路304を画定する表面のうちの1つまたは複数が、流路216内の垂直磁界および軸線方向の流れに対して静止状態で保持されないことになる。ここで、磁界発生器202は、流路306、308の差圧に応答して、ダンパハウジング320に対して軸線方向に移動する。
【0055】
図18A〜図18Cは、複数の環状流路を有するMR流体バルブを有し、且つEMコイル405を有する磁界発生器402がフロースプリッタとして機能する、MR流体ダンパ装置と共に使用されるピストンアセンブリ400を示す。先述の例の場合と同様に、ピストンアセンブリ400は、ほぼ円筒形である。図18A〜図18Cに示す実施形態では、磁界発生器402は、先述したような透磁性材料で作成されるフラックスリング404と同心である。磁界発生器402のコア406は、互いに同心である内側コア部408および外側コア部410を有する。外側コア部410は、EMコイル405および極片416、418を有する。極片416、418は、長さLmの磁極を提供する。内側コア部408は、内側コア部408と外側コア部410の間に流路412が画定されるように、外側コア部410から半径方向に離間される。流路412は、間隙幅g2を有する。先述のとおり、Lm/g2は大きい。フラックスリング404と磁界発生器402の間には流路403が画定される。流路403は、間隙幅g1を有する。先述のとおり、Lm/g1は大きい。間隙幅g1およびg2は、同じであっても異なっていてもよい。必要に応じて、磁界発生器402とフラックスリング404の間には、1つまたは複数のフロースプリッタを使用して追加的な流路を画定することもできる。内側コア部408と外側コア部410の間にも、1つまたは複数のフロースプリッタを使用して追加的な流路を画定することができる。EMコイル405は、非磁性材料で作成され得るケーシング414内に設けることができる。EMコイル405は、外側コア部410内の極片416、418間で支持されるケーシング414のコイル部424に設けることができる。ケーシング414は、内側コア部408内に支持されるハブ部422を有する。コイル部424とハブ部422は、リブ部426によって連結することができる。リブ部426は、電気配線420をハブ部422に挿入してコイル部424内のEMコイル405に接続することを可能にする導管を有することができる。適切な連結機能を有するエンドプレート428、430を使用して、内側コア部408および外側コア部410をフラックスリング404と結合させることができる。エンドプレート428、430は、流路403、412と連結される溝429、431を有する。
【0056】
図19Aおよび図19Bは、積層プレートで作成される、MR流体ダンパ装置と共に使用されるピストンアセンブリ450を示す。ピストンアセンブリ450は、上述したような透磁性材料で作成されるプレート452の積層体を有する。各プレート452には、例えばウォータジェットを使用して複数の溝454が外側円形経路456に沿って刻まれる。各プレート452には、例えばウォータジェットを使用して複数の溝455も内側円形経路458に沿って刻まれる。内側円形経路458および外側円形経路456は、同心である。代替的な諸実施形態では、MR流体バルブで望まれる流路数に応じて、複数の溝は、プレート452内の1つの円形経路に沿って刻まれることも3つ以上の円形経路に沿って刻まれることもある。各円形経路は、流路を表す。円形経路456に沿った溝454は、ブリッジ460によって分断される。また、円形経路458に沿った溝455は、ブリッジ461によって分断される。円形経路456と458の間に閉じ込められるプレート452の部分457は、スプリッタとして機能する。スプリッタは、側剛性を得るために比較的厚くすることができる。溝454、455は、MR流体バルブの流路を提供する。図19Bは、中間プレート452がEMコイル465を取り付けるためのポケットと、ピストンロッド124と係合する表面とを有する例を示す。中間プレート間の(EMコイル465に隣接する)間隙459は、エポキシのような非磁性材料で埋め戻すことができる。プレート452は、ボルト463で互いに保持される。ダンパハウジング102内のピストンアセンブリ450の往復動を支承するために、プレート452のうちの1つまたは複数に摩耗バンド467を装着することができる。図19Aおよび図19Bに示すピストンアセンブリは、MRダンパにマルチ環状流路ピストンアセンブリを提供することが好ましい。
【0057】
図20Aは、EMコイル503を含む磁界発生器502を備えたMR流体バルブを有するピストンアセンブリ500を示す。ピストンアセンブリ500は、磁界発生器502を取り囲む磁束体(flux body)504を有する。ピストンロッド124は、磁界発生器502と結合される。ピストンアセンブリ500は、ダンパハウジング102内に配設される。フロースプリッタ508は、磁束体504と磁界発生器502の間の環状間隙505内に配設され、それによって間隙内に同心の環状流路510、512が形成される。フロースプリッタ508は、1つまたは複数のタック(tack)514を使用して、磁束体504と磁界発生器502の間の所定位置に保持することができる。フロースプリッタ508は、間隙505の全長にわたっては延在せず、それにより、流路510および512からの流体が合流するチャンバ516が間隙505内に形成されるようになっている。磁束体504のベース515は、合流チャンバ516と連通する溝または孔部518を有する。ダンパハウジング102内のピストンアセンブリ500の往復動を支承するために、磁束体504に摩耗バンド520を装着することができる。図20Aでは、フロースプリッタ508は、EMコイル503の真上の位置で停止する。図20Bは、EMコイル503の上部の下方まで延在するフロースプリッタ522が環状流路510および512の形成に使用され得る例を示す。これにより、合流チャンバ516の寸法が縮小される。図20Aおよび図20Bでは、追加的なフロースプリッタを使用して磁界発生器502と磁束体504の間に3つ以上の環状流路を形成することができる。
【0058】
図21Aは、2つのEMコイル534、536を含む磁界発生器532を備えたMR流体バルブを有するピストンアセンブリ530を示す。ピストンロッド124は、磁界発生器532と結合される。ピストンアセンブリ530は、磁界発生器532および磁極片540、542を取り囲むフラックスリング538を有する。磁界発生器532とフラックスリング538の間の間隙内には、流路544が形成される。磁界発生器532内には流路546が形成される。流路546は、例えばウォータジェットを使用してプレートに刻まれる複数の溝であってよい。流路544、546は、同心である。磁極片540、542は、流路544、546に対して開口する孔部548、550をそれぞれ有する。ピストンアセンブリ530は、ダンパハウジング102内に配設される。ダンパハウジング102内のピストンアセンブリ530の往復動を支承するために、フラックスリング538に摩耗バンド554を装着することができる。
【0059】
図21Bは、ボルト569で互いに保持されるプレート570の積層体で作成されるコア563を有する磁界発生器562を備えたMR流体バルブを有するピストンアセンブリ560を示す。磁界発生器562は、ピストンロッド124と結合される。プレート570は、透磁性材料で作成される。EMコイル564、568は、中間プレート570a、570bのポケット内に配置される。プレート570間の(EMコイル564、568に隣接する)陥凹部571は、エポキシのような非磁性材料で埋め戻すことができる。EMコイル564、568の上下にあるプレート570の各部分は、磁極として作用する。プレート570は、流路574を画定する溝572を有する。ピストンアセンブリ560は、ダンパハウジング578内に配設される。ピストンアセンブリ560の外径は、ダンパハウジング572の内壁とピストンアセンブリ560の外壁との間に流路576が形成されるように、ダンパハウジング578の内径よりも小さくなっている。したがって、図21Bの実施形態では、MR流体ダンパ装置は、部分的に剪断モードで動作し、部分的に流れモードで動作する。
【0060】
以上、限られた数の実施形態に関して本発明の説明を行ってきたが、本開示の利益を享受する当業者なら、本明細書に開示した本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案される可能性があることを理解するはずである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)本願は、2008年6月2日に出願した米国仮出願第61/058203号の利益を主張し、その開示内容を参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、一般に制御可能な流体バルブおよび装置の分野に関する。より詳細には、本発明は、制御可能な磁気粘性流体ダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
磁気粘性(magneto-rheological:MR)流体ダンパ装置は、典型的にはMR流体を収容するシリンダと、該シリンダ内の往復動をもたらすために配置されるピストンアセンブリと、を有する。ピストンアセンブリは、シリンダ内に2つのチャンバを画定する。ピストンアセンブリは、それらの2つのチャンバ間のMR流体の流れを制御するMR流体バルブ装置を有する。MR流体バルブ装置は、典型的には2つのチャンバ内のMR流体に対して開口する流路と、該流路内のMR流体に磁界を印加する磁界発生器と、を有する。流路内のMR流体が印加磁界に曝されると、MR流体の見掛け粘度が上昇し、その結果ピストンアセンブリ全体の差圧が増加する。この差圧の増加は、ダンパ力の増加としても認識される。差圧またはダンパ力は、磁界の強度が高くなると増加する。MR流体ダンパ装置は、流路内のMR流体に磁界が印加されているときはオン状態になり、流路内のMR流体に磁界が印加されていないときはオフ状態になると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、ダンパ装置を高いダンパ速度で動作させるときに、オン状態で高いダンパ力を達成し、オフ状態で低いダンパ力を示すMR流体ダンパ装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、本発明は、磁気粘性流体バルブを有する。前記磁気粘性流体バルブは、少なくとも1つの電磁コイル、および極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器を有することが好ましい。前記磁気粘性流体バルブは、前記電磁コイルに隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが好ましくは15以上である少なくとも1つの流路を有することが好ましい。
【0006】
追加的な一実施形態では、本発明は、磁気粘性流体ダンパを有する。前記磁気粘性流体ダンパは、磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングを有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパは、前記ダンパハウジングの内部空洞を第1のダンパハウジング内部空洞チャンバおよび第2のダンパハウジング内部空洞チャンバに分割するピストンアセンブリを有することが好ましい。前記ピストンアセンブリは、極長Lmの少なくとも第1の磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブと、前記磁界発生器に隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが好ましくは15以上である少なくとも第1の流路と、を有することが好ましい。前記ダンパハウジングの内部空洞には、磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体が供給されることが好ましく、前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体は、好ましい前記比率Lm/gを有する前記少なくとも第1の流路内を制御可能に流れ、それによって前記ダンパハウジングに対する前記ピストンアセンブリの運動を制御することが好ましい。
【0007】
追加的な一実施形態では、本発明は、磁気粘性流体ダンパを有する。前記磁気粘性流体ダンパは、磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングを有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパは、前記ダンパハウジング内に配設されるピストンアセンブリを有することが好ましい。前記ピストンアセンブリは、少なくとも1つの電磁コイルおよび極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブと、前記少なくとも1つの電磁コイルに隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが好ましくは15以上である少なくとも第1の流路と、を有することが好ましい。
【0008】
追加的な一実施形態では、本発明は、磁気粘性流体ダンパを作成する方法を有する。前記磁気粘性流体ダンパを作成する方法は、磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングを設けるステップを有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパを作成する方法は、前記ダンパハウジングの内部空洞を第1のダンパハウジング内部空洞チャンバおよび第2のダンパハウジング内部空洞チャンバに分割するピストンアセンブリを設けるステップを有することが好ましい。前記ピストンアセンブリは、極長Lmの少なくとも第1の磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブと、前記磁界発生器に隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも第1の流路と、を有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパを作成する方法は、磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体を供給するステップを有することが好ましい。前記磁気粘性流体ダンパを作成する方法は、前記ピストンアセンブリおよび前記磁気粘性ダンパ流体を前記ダンパハウジング内に配設するステップを有することが好ましく、前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体は、好ましい前記比率Lm/gを有する前記少なくとも第1の流路内を制御可能に流れ、それによって前記ダンパハウジングに対する前記ピストンアセンブリの運動を制御することが好ましい。
【0009】
上述の概略説明および後述の詳細な説明は、いずれも本発明を例示するものであり、特許請求の範囲の各請求項に記載した本発明の性質および特徴を理解するための概要および枠組みを提供するものであることを理解されたい。
【0010】
後述する添付図面は、本発明の典型的な諸実施形態を例示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本発明は、その他の等しく有効な実施形態も包含する可能性がある。各図面は、本発明の理解を深めるためのものである。各図面は、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図中の要素は必ずしも縮尺どおりではなく、明瞭且つ簡潔な記載を期すために、これらの要素のいくつかの特徴および外観を強調して示すことも概略的に示すこともある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】流れモードで動作し、内部アキュムレータを有する磁気粘性流体ダンパ装置の断面図である。
【図2A】流れモードで動作し、外部アキュムレータを有する磁気粘性流体ダンパ装置の断面図である。
【図2B】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、ピストンロッドガイドを含む部分を示す図2Aの線2Bに沿った拡大図である。
【図2C】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、内部アキュムレータを有するピストンロッドガイドを含むセグメントの断面図である。
【図3】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図4】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、単一流路を有する磁気粘性流体バルブを備えるピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図5】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、複数の流路を有する磁気粘性流体バルブを備えるピストンアセンブリを含む部分を示す図2Aの線5に沿った拡大図である。
【図6】低流量および低圧で動作する3つの同心流路を備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリにおける圧力対流量をプロットした図である。
【図7】図6の場合よりも高い流量で動作する3つの同心流路を備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリにおける圧力対流量をプロットした図である。
【図8】図7の場合よりも高い流量で動作する3つの同心流路を備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリにおける圧力対流量をプロットした図である。
【図9】Lm/gが大きい磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリに関する降伏応力対磁界強度をプロットした図である。
【図10】磁気粘性流体バルブの降伏応力を測定する流れモードレオメータの斜視図である。
【図11】Lm/g=25およびLm/g=50の各磁気粘性流体バルブ内における磁気粘性流体の鉄粒子体積分率の関数として降伏応力をプロットした図である。
【図12】磁気粘性流体を収容する磁気粘性流体バルブ内の鉄粒子体積分率が15%〜40%の体積範囲であり、且つLm/g=25であるときの降伏応力を印加磁界の関数としてプロットした図である。
【図13】本発明の諸実施形態および既存の磁気粘性流体ダンパ装置に関する降伏進行領域のマップを示す図である。
【図14】Lm/g=23.7のデュアルチャネル磁気粘性流体バルブの実測およびモデル予測性能データを示す図である。
【図15】磁気粘性流体バルブの3ピースフロースプリッタの断面図である。
【図16】磁気粘性流体バルブの1ピースフロースプリッタの断面図である。
【図17】剪断モードで動作する磁気粘性流体ダンパ装置を示す図である。
【図18A】線18A−18Aに沿った図18Cの断面図である。
【図18B】図18Aに示す断面の斜視図である。
【図18C】2つの流路間に電磁コイルが配置された磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリの上面図である。
【図19A】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、積層透磁性プレートで作成されるピストンアセンブリを含むセグメントの上面図である。
【図19B】図19Aの線19B−19Bに沿った断面図である。
【図20A】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、複数のチャネルからの流れを合流させるチャンバを備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図20B】磁気粘性流体ダンパ装置のうち、複数のチャネルからの流れを合流させるチャンバを備える磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図21A】流れモードで動作する磁気粘性流体ダンパ装置のうち、2つのコイルを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【図21B】部分的に剪断モードで動作する磁気粘性流体ダンパ装置のうち、2つのコイルを有するピストンアセンブリを含むセグメントの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に示したいくつかの好ましい実施形態を参照して本発明について説明する。好ましい諸実施形態に関する以下の説明では、本発明の十分な理解が得られるように諸種の具体的な詳細を記載する。しかしながら、これらの具体的な詳細の一部または全部が欠けている場合にも本発明が実施され得ることは、当業者には理解されるだろう。他の例では、発明が不必要に曖昧になるのを避けるために、周知の機能および/またはプロセスステップについては詳細に説明していない。更に、共通のまたは同様の要素は、同様のまたは同一の参照符号で識別する。
【0013】
図1は、流れモードで動作する磁気粘性(MR)流体ダンパ装置100を概略的に示す。MR流体ダンパ装置100は、ダンパハウジング102を有する。ダンパハウジング102は、ほぼ円筒形であり、閉鎖された第1の先端104と、開孔108を有する第2の先端106と、を有する。ダンパハウジング102は、ピストンアセンブリ200が内部に配置される内部空洞110を有する。ピストンアセンブリ200は、内部空洞110を第1のチャンバ114と第2のチャンバ116に分割する。第1および第2のチャンバ114、116は、それぞれMR流体118を収容することができる。ピストンアセンブリ200は、ダンパハウジング102の長手方向軸線に沿って往復動し、これに応答して流体チャンバ114、116間に差圧が生じる。このような差圧は、ピストンロッド124とダンパハウジング102の間に印加される外部刺激力によって生じる可能性がある。無摩擦材料で作成された1つまたは複数の摩耗バンド(wear band)120をピストンアセンブリ200上に取り付けて、ピストンアセンブリ200の内部空洞110内の往復動を支承することができる。摩耗バンド120は、ダンパハウジング102の内壁と係合し、ピストンアセンブリ200とダンパハウジング102の間の流体シールも提供することができる。ピストンアセンブリ200は、MR流体ダンパ装置100の外部からの刺激に応答してチャンバ114、116間のMR流体118の流れを制御するMR流体バルブを有する。このような刺激は、ピストンロッド124を通じて受け取られ得る。ピストンロッド124は、1つの端部126がピストンアセンブリ200と結合され、別の端部128が運動の制御または制動を必要とする車両座席やシャシのような構造体(図示せず)との結合に利用可能である。ピストンロッド124は、開孔108を通って延び、ダンパハウジング102に対して軸線方向に摺動することができる。開孔108とダンパハウジング102の間にシール130を設けて、内部空洞110からの流体の漏れを制御することができる。
【0014】
MR流体ダンパ装置100は更に、ダンパハウジング102の内部空洞110内にアキュムレータ132を有することができる。別法として、以下に示すように、このアキュムレータは、ダンパハウジング102の外部に配置することも、ピストンロッドガイドと一体化することもできる。アキュムレータ132は、ダンパハウジング102内に収容されるMR流体118の圧力の過渡変動を最小限に抑え、それによってダンパハウジング102内のキャビテーションまたは陰圧のリスクを最小限に抑える働きをすることができる。図1に示す実施形態では、アキュムレータ132は、内部空洞110内のMR流体チャンバ114に隣接するガス充填チャンバとして提供される。ガス充填チャンバ132とMR流体チャンバ114の間には浮動ピストン134を設けることができる。浮動ピストン134は、チャンバ114、132間の差圧に応答して内部空洞110内で軸線方向に往復動することができる。浮動ピストン134上にシール部材136を取り付けて浮動ピストン134とダンパハウジング102の間を封止し、それによってチャンバ114、132内の流体の混合を防止することができる。代替的な実施形態では、浮動ピストン134の代わりにダイヤフラムまたは他の適切な仕切り部材を使用することができる。ガス充填チャンバ132には、充填バルブ138を通じてガスを充填することができる。充填ガスは、窒素のような不活性ガスであってよい。代替的な実施形態では、MR流体ダンパ100の内部空洞110内でブラダ型アキュムレータのような他の形態のアキュムレータを使用することができる。
【0015】
図2Aは、MR流体ダンパ装置100の好ましい一実施形態を示し、アキュムレータ133は、ダンパハウジング102の外部に配置されることが好ましい。この好ましい実施形態では、ダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133は、流体チャンバ135、137と、これら流体チャンバ135、137の間に配設される浮動ピストン134と、を有する。浮動ピストン134は、浮動ピストン134とアキュムレータ133の内壁との間のシールを提供するシール部材141を担持し、それによって流体チャンバ135と流体チャンバ137を互いに隔離することができる。ダンパベース通常流れ導管(normal flow conduit)139は、ダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133内の流体チャンバ135をダンパハウジング102内のMR流体チャンバ114に連結する。このダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133は、ダンパ端ベース131に取り付けられることが好ましい。ここで、ダンパベース通常流れ導管139は、MR流体をダンパ端ベース131内に通すための曲線状の通常転送流れ経路(normal redirecting flow path)を提供する。ここで、MR流体は、ダンパハウジング102から外部に出て、ダンパベース通常流れ導管139を経てダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133内に流入し、その後、ダンパベース取り付け型外部アキュムレータ133の内部を流れてダンパハウジング102内に戻る。アキュムレータ133のチャンバ137は、ガス充填チャンバであることが好ましい。ダンパベース取り付け型外部アキュムレータの浮動ピストン134は、ピストンアセンブリ200およびピストンロッド124の運動方向と反対の運動方向に、アキュムレータ133内で軸線方向に往復動することが好ましい。図2Aでは、ダンパハウジング102の先端104は、ピストンロッド124と連結された結合部材129内に受けられる。結合部材129は、先述したような運動の制御または減衰を必要とする構造体にピストンロッド124を連結するのに使用することができる。好ましい諸実施形態では、ダンパハウジング102は、アキュムレータが内部に存在しないという点でアキュムレータを有さず、ダンパ装置は、外部アキュムレータ、好ましくはダンパベース取り付け型外部アキュムレータを有することが好ましい。
【0016】
図2Aは、MR流体ダンパ装置100の好ましい一実施形態を、ピストンロッドガイド142の好ましい一実施形態と共に示している。図2Bは、このピストンロッドガイド142の好ましい実施形態の拡大図である。図2Bでは、ピストンロッドガイド142は、ダンパハウジング102の先端104に固定され、ダンパハウジング102は、ピストンロッドガイド142を受け、ピストンロッドガイド142は、ピストンロッド124を受けるための通路127を有する。ピストンロッドガイド142は、任意の適切な方法でダンパハウジング102に固定される案内体143を有する。図2Bに示す実施形態では、取り付け体143は、ダンパハウジング102の内壁にねじ式連結144によって固定される。取り付け体143とダンパハウジング102の内壁との間を封止するために、取り付け体143の外面上にシール145が設けられる。取り付け体143は、環状チャンバ146を有し、環状チャンバ146の内側にはフィルタ149が取り付けられる。フィルタ149は、内側にベアリング150が取り付けられるポケットを有する。ベアリング150は、フィルタ149とピストンロッド124の間に置かれ、それによってピストンロッド124と係合してピストンロッド124の往復動を支承するように取り付けられる。フィルタ149は、環状チャンバ146内でエンドプレート151によって保持され、エンドプレート151は、チャンバ116内のMR流体がそれを通じてフィルタ149に到達できるようになる流体流れポートを有する。フィルタ149とピストンロッド124の間を封止するために、フィルタ149とピストンロッド124の間にはロッドシール152が設けられる。フィルタ149は、流体チャンバ116から環状チャンバ146に進入するMR流体118の磁化可能粒子を濾過除去する。フィルタ149は、多孔性の非磁性耐食材料で作成されることが好ましい。好ましい一実施形態では、フィルタ149は、細孔径が250mm以下であり、ステンレス鋼で作成される。フィルタ149は、ピストンロッド124に沿って長手方向に且つ軸線方向に延在する焼結ステンレス鋼製の軸線方向延在フィルタ部材と、シール152を受けるシールポケットと、ベアリング150を受けるベアリングポケットと、から構成されることが好ましい。取り付け体143は、第2のアウトボード空洞を有し、この空洞内には第2のアウトボードロッドシール153が取り付けられる。ロッドシール153は、フィルタ149の上方のアウトボード位置で、取り付け体143とピストンロッド124の間のシールを提供する。取り付け体143は更に、第3のアウトボード空洞も有し、この空洞内にはワイパ154が取り付けられる。ワイパ154は、ピストンロッド124が開孔108に出入りするときに、ピストンロッド124をきれいに拭う。ロッドシール152、153、およびワイパ154は、エラストマー材料のようなシール材料で作成されることが好ましい。
【0017】
図2Cに示す異なる実施形態では、ピストンロッドガイド173の案内体170は、外側空洞155を有するように改変されている。外側空洞155上にはダイヤフラム157が取り付けられ、ダイヤフラム157は、ピストンロッドガイド173がダンパハウジング102の先端に所定位置で固定されたときにダンパハウジング102の内壁に隣接するように配設される。ダイヤフラム157および外側空洞155は、内部アキュムレータ159として機能する空気体積を画定する。アキュムレータ159には、ダンパハウジング102の壁部内のポート(図示せず)を通じて窒素のような不活性ガスを充填することができる。ダイヤフラム157は、ダンパハウジング102の内壁とピストンロッドガイド173の外面との間の間隙169を通じてチャンバ116内の流体に曝される。ダイヤフラム157は、チャンバ116内の圧力の過渡変動に応じて押し下げられまたは膨張する。アキュムレータ159を有するピストンロッドガイド173は、MR流体ダンパ装置の内部に続くピストンロッド入口に隣接して内部アキュムレータを設ける。
【0018】
図3は、MR流体ダンパ装置に含まれ得る例示的なピストンアセンブリ200の概略断面図である。ピストンアセンブリ200は、ほぼ円筒形である。ピストンアセンブリ200内に設けられるMR流体バルブ201は、磁界発生器202を有する。一般に、「磁界発生器」という用語は、オン状態においてその強度が制御可能に可変となる制御可能な磁界を発生させる1つまたは複数の電磁(EM)コイルと、該EMコイルに隣接する磁極とを提供する任意の構造体または構造体の組立体を意味するものと理解されたい。「磁極」とは、磁束を担持する構造体を指す。図3の実施形態では、磁界発生器202は、低炭素鋼や他の透磁性の強磁性材料のような透磁性材料で作成されたコア206に巻装されるEMコイル204(例えばマグネットワイヤ)を有する。一般に、コア206、ピストンアセンブリ200の他の構成部品、およびそれらの変形物において使用される透磁性材料の特性を決定する要因の一部は、透磁率、飽和、保磁力、および残留磁気である。透磁率および飽和の値は高いほど望ましく、保磁力および残留磁気の値は低いほど望ましい。MR流体ダンパにおいて透磁性材料が使用される場合、透磁性材料の相対透磁率は、ダンパ内に収容されるMR流体の相対透磁率よりもずっと大きいことが好ましい。透磁性材料の相対透磁率は、MR流体の透磁率よりも少なくとも100倍、好ましくは少なくとも200倍、より好ましくは少なくとも1000倍大きいことが好ましい。
【0019】
コア206は、中央片206Aと、中央片206Aの両端のフランジに見える極片206B、206Cと、を有する。各極片206B、206Cは、極長Lmの磁極をそれぞれ提供する。極片206B、206C間の間隔は、極間隔Aとして指定される。いくつかの代替的な実施形態では、磁極は、コア206と一体化されなくてもよく、代わりにコア206の上下にある他の透磁性構造体によって提供することができる。中央片206Aは、円筒形であってもよい。EMコイル204は、中央片206AにN回巻回される。EMコイル204は、中央片206Aの陥凹部内に配設されるボビン上に巻装することができる。EMコイル204は、極片206B、206C間に配置される。コア206は、外部配線223、225をEMコイル204に接続することを可能にする通路(図示せず)を有することができる。EMコイル204は、極片206Bおよび206Cの周面206B1および206C1と同一平面となるように中央片206A上に配置することができる。エポキシのような非磁性材料を使用してEMコイル204を中央片206A上の所定位置に固定することができる。この非磁性材料は、EMコイル204の空間を埋め、それによって流体がEMコイル204の間に入るのを防止することもできる。別法として、図4に示すように、EMコイル204は、極片206B、206Cの各周面206B1、206C1と同一平面にならない(各周面より窪む)ようにすることもできる。EMコイル204に隣接してスペーサ212を配置することにより、極片206B、206Cによって提供される磁極を分離する磁気的不連続性を生み出すことができる。スペーサ212は、アルミニウムやプラスチックのような非磁性材料、または透磁率が非常に低い材料で作成することができる。
【0020】
図3に戻ると、ピストンアセンブリ200内に設けられたMR流体バルブ201は更に、磁界発生器202を取り囲むフラックスリング214を有する。フラックスリング214の断面は、典型的には円形であるが、正方形や六角形のような他の断面形状が使用されてもよい。フラックスリング214は、コア206に関して上述したような透磁性材料で作成される。好ましい一実施形態では、フラックスリング214は、磁界発生器202と同心であり、磁界発生器202から半径方向に離間される。MR流体バルブ201は更に、磁界発生器202とフラックスリング214の間に画定される流路216を有する。流路216は、環状であってよく、磁界発生器202と同心とすることができる。図3に示す例では、フラックスリング214の長さは、磁界発生器202の長さ(Lp)とほぼ同じである。フラックスリング214は、例えばエンドプレート220、222を使用して磁界発生器202と結合される。エンドプレート220、222は、それぞれフラックスリング214の陥凹部と係合するリップ220A、222Aを有する。エンドプレート220、222は、それぞれコア206上の隆起部と係合する陥凹部220B、222Bを有する。エンドプレート220、222は、それぞれ流路216と整列するオリフィス220C、222Cを有する。オリフィス220C、222Cの鋭い端縁がある場合は、流路216の先端において流れが阻害されるのを回避するために、それらの端縁は流路216からセットバックされることが好ましい。エンドプレート220、222を使用して磁界発生器202をフラックスリング214と結合させる代替的な手法は、フラックスリング214の先端とコア206の間に連結リブ(図示せず)を形成することである。
【0021】
ピストンアセンブリ200がMR流体ダンパ100、140内に配設されると、MR流体ダンパ内のMR流体118によって流路216が満たされる。MR流体は、ミクロサイズの磁化可能粒子、好ましくは鉄粒子の非コロイド懸濁液である。EMコイル204には電気配線223、225を通じて電流が供給され、それによってEMコイル204が通電するとともに磁界が発生し、この磁界が流路216内のMR流体全体に印加される。磁束218は、コア206を経て流路216を横切り、好ましくはフラックスリング214を通過し、再び流路216を横切ってコア206内に入る経路内を移動することが好ましい。磁束218(破線および矢印で示す)は、極片206B、206Cに対して垂直であることが好ましい。流路216に磁界が印加されると、流路216内のMR流体の見掛け粘度が上昇し、その結果、制御可能な磁界のオン状態がもたらされる。流路216内のMR流体の降伏強度は、オン状態になった磁界の強度を変更することによって制御することができる。MR流体ダンパ(図1の100または図2の140)は、流れモードで動作する。つまり、流路216を画定する各表面が垂直磁界および流路216内の軸線方向の流れに対して静止状態で保持される。極片206B、206Cおよびフラックスリング214の流路216に面する各表面は、慣性および遷移効果を最小限に抑えるためにそれぞれ平滑であることが好ましい。
【0022】
流路216は、流路216を横切る磁束218の流れ方向に沿って測定される間隙幅gを有する。流路216の間隙幅gは、流路216の流れ間隙長さに沿って一定またはほぼ一定であることが好ましい。後で証明するように、このMR流体ダンパは、Lm/gが大きいときに高いオン状態降伏強度を達成する。Lm/gが大きいというのは、Lm/gが15以上であることを指す。より好ましくは、Lm/gは20以上である。最も好ましくは、Lm/gは25以上である。他の好ましい実施形態では、Lm/gは20〜50である。図3に示すピストンアセンブリの幾何形状であれば、Lm/gは、Lmを増加またはgを減少させることにより、より大きい値とすることができる。しかしながら、Lmを増加させると、ピストンアセンブリの全長が望ましくないほど長くなり、コア206およびフラックスリング214の磁気飽和も発生する。磁気飽和を回避するには、コア206の直径Dcoreおよびダンパハウジング102の厚さtwallを増加させる必要がある。そのため、ダンパ寸法が大きくなる。gを急激に減少させると、許容できない高さのオフ状態力がもたらされる。
【0023】
MR流体ダンパの寸法を大幅に増加させることなくLm/gを大きくする好ましい一手法は、間隙幅gi(ただし、iは1〜N、N>1)を有するN個の流路を利用することである。この場合、各流路iのLm/giが大きくなる。間隙幅gが0.5mm、Lm/gが25のとき、Lmは約12.5mmとなる。間隙幅g1、g2(g1およびg2はそれぞれ0.5mm)の2つの流路を有する系では、MR流体チャンバ間の流体流れが合計1.0mmの総間隙幅を利用することが可能となる。単一流路を有する系において間隙幅=1mm、Lm/g=25を達成するには、Lmを25mmとする、すなわち、2つの流路を有する系で必要とされるLmの2倍の長さが必要となる。この例は、オン状態降伏強度が向上したコンパクトなダンパが複数の流路を利用して実現され得ることを証明する。先述のとおり、高いオン状態降伏強度は、Lm/gを大きくすることによって達成される。Lm/gが大きいというのは、Lm/gが15以上であることを指す。より好ましくは、Lm/gは20以上である。最も好ましくは、Lm/gは25以上である。他の好ましい実施形態では、Lm/gは20〜50である。
【0024】
図5は、複数の流路を有する好ましい一実施形態のピストンアセンブリ200を示す。好ましい複数の流路を形成するために、磁界発生器202とフラックスリング214の間にフロースプリッタ230が配設され、それによって磁界発生器202とフラックスリング214の間の2つの流路232、234が画定される。エンドプレート220、222は、フロースプリッタ230をフラックスリング214および磁界発生器202のコア206と結合させる機能を有することができる。好ましい一実施形態では、フロースプリッタ230は、リング形状であり、磁界発生器202およびフラックスリング214と同心である。その結果、磁界発生器202およびフラックスリング214と同心の環状流路232、234が得られる。3つ以上の流路が望まれる場合は、磁界発生器202とフラックスリング214の間に追加的なフロースプリッタを配設することができる。一般に、N個の流路(ただし、N>0)を画定するのにN−1個のフロースプリッタが必要となる。流路232は間隙幅g1、流路234は間隙幅g2を有する。一般に、磁界発生器202とフラックスリング214の間に形成される各流路は、間隙幅gi(ただし、iは1〜N、Nは流路数)を有することができる。各流路の間隙幅は、同じであっても異なっていてもよい。上述のとおり、高いオン状態降伏強度では、Lm/giは大きくなる(ただし、iは1〜N、Nは流路数)。Lm/giは流路単位で計算されることに留意されたい。
【0025】
間隙幅gi=gが等しく流路内の磁界が等しい複数の環状流路をピストンアセンブリ200が有する場合、MR流体ダンパ内に配置されたときのピストンアセンブリ200全体の差圧は、近似的に次式で与えられる。
【0026】
【数1】
【0027】
上式で、
η:MR流体粘度
Q:MR流体体積流量(ダンパ速度×ピストンアセンブリの直径の2乗に比例)
Lp:ピストンアセンブリの長さ
g:流路の間隙幅
w:MR流体バルブの横幅。公称的には
【0028】
【数2】
【0029】
と等しい(ただし、Diはi番目の間隙の平均直径)。
τMR(H):磁界HにおけるMR流体の降伏応力
Lm:電磁石の極長
2*Lm:電磁石の有効極長
c:2〜3の動的流量計数
k:0〜1.5の動的流量計数
【0030】
式(1)の定数「c」は、流路内の特定の流れ条件に依存する。流路内の流量がゼロであれば、cは2となる。流量が高く、粘度が高く、間隙gが非常に狭い条件下では、係数cは、3の値に近付く。定数「k」は、主に流路内のレイノルズ数、すなわち乱流度に依存する。レイノルズ数が非常に高い場合には、kはほぼ1.0となる。レイノルズ数が低い層流の場合には、kはオフ状態でほぼ0.68となる。MR流体ダンパがオン状態であり、大きい誘起降伏強度を有するとき、kはほぼ0.5となる。
【0031】
式(1)において、第1項は、流体粘度および体積流量に比例するオフ状態の粘性項であり、第2項は、オン状態の磁界誘起による降伏強度によって追加される圧力であり、第3項は、流体密度と体積流量の2乗とに依存する慣性項である。粘性項は、wg3の逆数に比例する。第2項は、磁気粘性項であり、gの逆数に比例する。慣性項は、w2g2の逆数に比例する。高いダンパ速度では、圧力と2次の関係を有する慣性項は、オフ状態の粘性項と同等または該粘性項より何倍も大きくなる可能性がある。このことが意味するのは、オフ状態の慣性項が最小化されていなければ、オフ状態の差圧(またはダンパ力)が非常に大きくなる可能性があるということである。本発明では、Lm/gを大きくし、電磁石とフラックスリングの間に複数の流路を設け、各流路の間隙幅を小さくすることにより、オン状態のダンパ力を低下させずにオフ状態の慣性項が最小化される。間隙幅は、大きいLm/gを達成するために可能な限り小さくすることができ、典型的には約0.5mmとすることができる。
【0032】
Lm/gを大きくすることに加えて、Dpiston/gも大きくすることができる。Dpistonは、ピストンアセンブリの直径である。Dpiston/gを大きい比率にすることの重要性は、流路内の流体速度、および高い流体速度における式(1)の第3項である慣性項の2次増加と関係付けられる。流路内の流体速度は、ピストンアセンブリの速度にピストンアセンブリの直径Dpistonの2乗を掛け、それを流路面積w*gで割った値に比例する。ただし、wは、式(1)に関して説明したように、ピストンアセンブリ内に設けられるバルブの横幅である。複数の間隙を設けることによりwを増加させることができ、それにより、慣性項を小さく維持しながらgを減少またはDpistonを増加させることが可能となる。gを減少させると、オン状態の差圧が増加し、Dpistonを増加させると、差圧とピストン面積の積である全体のダンパ力が増加する。好ましくは、Dpiston/gは66より大きい。より好ましくは、Dpiston/gは80より大きい。更に好ましくは、Dpiston/gは90より大きい。最も好ましくは、Dpiston/gは120より大きい。
【0033】
ピストンアセンブリ200内の流路が等しくない場合、および/または異なる流路の磁界誘起による降伏強度が等しくない場合は、ピストンアセンブリ全体の圧力は、以下の1組の方程式によって記述される。
【0034】
【数3】
【0035】
Ppiston=P1=P2=...=Pi (3)
【0036】
式(2)に記述した状況は、流路に応じて流量が異なるため、式(1)に記述した状況よりも遥かに複雑である。場合によっては、結果として得られるPpistonに応じて、一部の間隙に流れがまったく存在しない可能性もある。式(2)は、それ自体N個の方程式の集合である(ただし、Nは同心流路の数、添え字iおよびkの範囲は1〜Nである)。一例として、i=1のとき、式(2)は、流路1に起因する差圧が波括弧内の第1項の最小値となるか、または他の流路、すなわちk=2,3,...,Nのうちの1つにおける差圧となることを意味すると解釈される。なお、各間隙の差圧は、最終的に同じになり、式(3)に示すようにピストンアセンブリ全体の差圧と等しくなる。
【0037】
上記の1組の方程式は、図6〜図8を参照すればより理解が深まるだろう。図6は、3つの同心流路の流量および圧力が低い場合を示す。3つの曲線は、式(2)の波括弧部分で与えられる、3つの流路それぞれの理論上の圧力対流量である。この場合、最小圧力降下は破線Aで示される。ここで、非ゼロ流量の流れを有する唯一の流路は、チャネル3である。チャネル1および2に関する曲線は、いずれも最小圧力降下を上回っており、したがって、すべてのチャネルの全体の圧力は、Aによって与えられる。図7は、全体の流量が増加し、その結果、破線Bによって与えられるようにチャネル2とチャネル3の両方に流れが存在するようになったときに何が起こるかを示す。チャネル1には依然として流れは存在しない。チャネル2の流量はQ2、チャネル3の流量はQ3である。Q2とQ3は同じではない。図8は、全体の流れが増加し、その結果、互いに異なる3つのすべてのチャネルQ1、Q2、Q3に流れが存在するようになったときに何が起こるかを示す。この場合、圧力は破線Cによって与えられる。
【0038】
図9は、降伏応力を磁界強度の関数としてプロットした図である。プロット内には実測および予測降伏応力が示されている。本例では、Lm/gは25であり、MR流体の鉄含有量は22体積%である。このプロットは、実測降伏応力が予測降伏応力の2倍より大きいことを示しており、Lm/gを大きくすることによって達成可能な降伏応力の増加現象を指示する。測定は、流れモードレオメータを使用して行った。図10は、EMコイル(図示せず)が巻装されたプラスチックボビン302を有するレオメータ300を示す。プラスチックボビン302は、鋼製の極片306、308に挟まれる。極片306、308は、ステンレス鋼製の非磁性スペーサ310によって離間される。非磁性スペーサ310は、流路(図示せず)を有する。入口管312および出口管314は、非磁性スペーサ310内の流路と整列するように非磁性スペーサ310の両端と結合される。この流路は、間隙幅gの矩形断面を有する。極片306、308は、極長Lmを有する。測定を行うために、レオメータ300を金属シリンダ(図示せず)内に配置する。レオメータ300および金属シリンダをインストロン試験機(図示せず)内に配置し、インストロン試験機は、プランジャを指定のレートで押し下げ、それによりMR流体をスペーサ310内の流路に送り込む。ロードセルは、その結果プランジャにかかる力を測定する。この力から、レオメータによる圧力を計算する。計算した圧力を使用して、印加磁界によって生じるMR流体の降伏強度を決定する。
【0039】
図11および図12は、Lm/gを大きくすることによって達成される降伏強度の増加現象の他の例を示す。図11は、磁界強度100kA/mにおける、Lm/g=25およびLm/g=50のMR流体の降伏応力対鉄粒子体積分率を示す。図11は、鉄粒子体積分率が減少するに従って降伏応力が増加することを示している。図11は、Lm/gが大きいほど降伏強度が高くなることも示している。図12は、Lm/g=25のMR流体の様々な鉄粒子体積分率に関する降伏応力対印加磁界を示す。図12は、鉄粒子体積分率が減少すると、印加磁界の強度に関わらず降伏応力が増加することも示している。図11および図12から、上述のようなLm/gが大きいときに生じる降伏の進行は、体積分率の低い磁化可能粒子、好ましくは鉄粒子を有するMR流体を使用することによって更に改善され得ると結論付けることができる。
【0040】
MR流体は、<30体積%の磁性鉄粒子を含有することが好ましく、好ましくは≦26体積%の磁性鉄粒子、好ましくは<25体積%の磁性鉄粒子、好ましくは<23体積%の磁性鉄粒子、好ましくは<21体積%の磁性鉄粒子、好ましくは≦19体積%の磁性鉄粒子、好ましくは≦17体積%の磁性鉄粒子、好ましくは≦16体積%の磁性鉄粒子を含有する。MR流体は、約26体積%((26±1)体積%)の磁性鉄粒子を含有することが好ましい。MR流体は、約15体積%((15±3)体積%)の磁性鉄粒子を含有することが好ましい。MR流体の磁性鉄粒子の体積百分率は、約10〜20(総体積の百分率)であることが好ましい。
【0041】
MR流体は、好ましくは≦19体積%(総体積の百分率)の磁性鉄粒子、および≧60体積%(総体積の百分率)のキャリア流体で構成され、キャリア流体は、好ましくは≧64体積%のキャリア流体、≧66体積%のキャリア流体、≧69体積%のキャリア流体であり、また、好ましくは約71体積%((71±3)体積%)のキャリア流体であり、好ましくは油キャリア流体であり、好ましくは炭化水素油キャリア流体である。キャリア流体は、ポリアルファオレフィンで構成されることが好ましい。
【0042】
磁性鉄粒子は、鉄で構成されることが好ましい。磁性鉄粒子は、カルボニル鉄粒子で構成されることが好ましい。代替的な好ましい一実施形態では、磁性鉄粒子は、水アトマイズした鉄粒子で構成される。磁性鉄粒子の密度は、7〜8.2g/mlであることが好ましく、好ましくは約7.5〜8.2g/ml、好ましくは約7.86g/ml(7.86±0.30ml)である。
【0043】
MR流体は、磁性鉄粒子およびキャリア流体に加えて添加剤も含むことが好ましい。好ましくは、MR流体は、耐摩耗添加剤を含む。MR流体は、MR流体装置の寿命および耐摩耗性を高め、MR流体の作用に関する摩耗を阻止するとともに、磁性鉄粒子によるMR流体装置の構成部品の摩擦および摩損を阻止する少なくとも1つの耐摩耗添加剤を含むことが好ましい。好ましくは、MR流体の耐摩耗添加剤は、モリブデンを含み、好ましくは有機モリブデンを含む。MR流体は、酸化防止添加剤を含むことが好ましい。MR流体は、MR流体の作用に関するMR流体およびMR流体装置の酸化を阻止するとともに、磁性鉄粒子によるMR流体装置の構成部品の摩擦および摩損を阻止する少なくとも1つの酸化防止添加剤を含むことが好ましい。好ましくは、MR流体の酸化防止添加剤は、リン酸化防止添加剤を含み、好ましくは無灰ホスホロジチオアート酸化防止添加剤を含む。MR流体は、沈降防止添加剤を含むことが好ましい。MR流体は、キャリア流体内の磁性鉄粒子の懸濁を補助して粒子の沈降を阻止し、それらの懸濁状態を維持するのに役立つ少なくとも1つの沈降防止添加剤を含むことが好ましい。MR流体の沈降防止添加剤は、クレーを含むことが好ましく、好ましくは有機クレー、好ましくは有機クレーゲル化剤を含み、好ましくは活性剤で活性化され、好ましくは炭酸プロピレンを含む。MR流体は、MR流体シール膨潤コンディショナー添加剤(swelling conditioner additive)を含むことが好ましい。MR流体は、流体に曝されるMR流体装置内のシールの状態を調整し、好ましくはシールを膨潤させ、MR流体装置からの流体の漏れを阻止する少なくとも1つのMR流体シール膨潤コンディショナー添加剤を含むことが好ましい。MR流体シール膨潤コンディショナー添加剤は、セバシン酸を含むことが好ましく、好ましくはセバシン酸ジオクチルを含む。
【0044】
磁性鉄粒子は、好ましくはキャリア流体と混合されてキャリア流体内に分散されることが好ましい。磁性鉄粒子およびキャリア流体に加えて添加剤も含む場合は、添加剤もキャリア流体に混合されることが好ましい。好ましい諸実施形態では、MR流体は、好ましくは回転式ロータステータ混合により、キャリア流体内の磁性鉄粒子および添加剤を混合および分散させるための混合期間にわたって、回転ミキサによって回転混合される。
【0045】
磁性鉄粒子の総体積が<30体積%であるMR流体は、体積百分率測定に基づく各成分からMR流体を作成、提供することによって提供されることが好ましい。MR流体には、30%未満の磁性鉄粒子総体積百分率が与えられることが好ましい。多様な一群のMR流体に対して30%未満の様々な磁性鉄粒子総体積百分率が与えられ、それにより、ダンパ装置およびそれらのピストンの複数の環状流路を充填するための、磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満であるMR流体の選択群が提供されることが好ましい。少なくとも、磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である第1のMR流体と、磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である異なる第2のMR流体とが、選択およびダンパ装置の充填用に提供され、それにより、少なくとも2つの異なる車両ダンパ性能が提供されることが好ましい。好ましい一実施形態では、本発明は、少なくともV通り(ただし、V>1)の磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満であるMR流体を提供するステップと、前記少なくともV通りの磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満であるMR流体群から、比率Lm/gが15以上である少なくとも1つの流路にとって好ましい車両ダンパ性能を実現する、磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満であるMR流体を選択するステップと、を含む。好ましい諸実施形態では、ここで選択される磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である第1および第2のMR流体は、図5の好ましい複数の環状流路を有する図2Aの好ましいダンパに関して選択したような磁性鉄粒子15体積%のMR流体および磁性鉄粒子26体積%のMR流体である。好ましい磁性鉄粒子15体積%のMR流体は、密度7.86g/mlの15体積%のカルボニル鉄粒子;密度0.92g/mlの10体積%のセバシン酸ジオクチル;密度1.60g/mlの1.65体積%の有機クレーゲル化剤;密度1.189g/mlの0.48体積%の炭酸プロピレン;密度1.06g/mlの.70体積%の無灰ホスホロジチオアート;密度1.04g/mlの0.87体積%の有機モリブデン錯体;および密度0.81g/mlの71.30体積%のポリアルファオレフィン炭化水素油キャリア流体から作成した。約80パーセントの炭化水素油キャリア流体の初期混合物は、有機クレーゲル化剤、炭酸プロピレン、および回転式ミキサロータステータ内で混合した有機モリブデン錯体の半分で作成し、次いでカルボニル鉄粒子を混合し、その後残りの成分を追加して混合した。その結果得られた<30体積%の磁性鉄粒子を有し、好ましい磁性鉄粒子レベルが15体積%であるMR流体は、好ましくは約1.88g/mlの密度を有し、摂氏0度の粘度が約144cP、摂氏25度の粘度が約45cPであった。同様に、磁性鉄粒子総体積百分率が26体積%であるMR流体は、26体積%のカルボニル鉄粒子から作成した。同様に、磁性鉄粒子総体積百分率が22体積%であるMR流体は、22体積%のカルボニル鉄粒子から作成した。
【0046】
MR流体の磁性鉄粒子は、鉄粒子体積分率が0.1〜0.45、好ましくは0.1〜0.4であることが好ましい。MR流体の磁性鉄粒子は、鉄粒子体積分率が0.3未満、好ましくは0.2未満であることが好ましい。
【0047】
図13は、本発明の好ましい諸実施形態による降伏進行領域を定義するマップである。横軸は比率Lm/g、縦軸はLm/g/φである。ここで、φは鉄粒子体積分率を指す。本発明の好ましい諸実施形態によるMR流体ダンパは、大きいボックス311の範囲内である。表1に示すLm、g、φの各特性を有する既存のMR流体ダンパは、小さいボックス312の範囲内である。表1に列挙した(図13の小さいボックス312の範囲内の)すべてのダンパは、Lm/gが13以下、Lm/g/φが50未満である。小さいボックス内のバルブについては、大幅な降伏強度増加は観察されない。本発明によるMR流体バルブは、大きい方のボックスの範囲内である。本発明による流体バルブは、Lm/gが15を上回り、Lm/g/φが50を上回る。
【0048】
【表1】
【0049】
図14は、外径76mmのデュアルチャネルダンパに関する実測性能データを示す。本ダンパには、15体積%の鉄粒子を含有するMR流体が充填される。本ダンパは、0.5mm幅の均一な間隙gを有し、Lmは11.85mmであり、したがってLm/gは23.7mmである。本ダンパについて測定された力は、図中の実線および各データ点で指示される。3アンペアの入力電流で観察された力を達成するには、本ダンパ内の流体は、2.25の降伏強度進行係数を示さなければならない。上側の破線211は、本ダンパが2.25の降伏進行係数を示す15%のMR流体を含む場合、すなわち、MR流体の見掛け降伏強度が回転式直接剪断レオメータで通常測定される降伏強度の2倍より大きい場合の予測性能である。
【0050】
図5に戻ると、フロースプリッタ230における磁束損失および磁界の漏れにより、フラックスリング214に最も近い流路232内の磁束密度は、フラックスリング214からより離れた流路234内の磁束密度よりも小さくなる傾向がある。したがって、フラックスリング214に最も近い流路232内の流体は、フラックスリング214からより離れた流路234内の流体よりも先に降伏し流れることになる。このような影響は、フラックスリング214に最も近い流路232の間隙幅g1をフラックスリング214からより離れた流路の間隙幅g2よりも小さくすることによって補償することができる。
【0051】
フロースプリッタ230は、高い磁束密度で磁気的に飽和し、それにより、磁束がフロースプリッタ230の軸線方向長さに沿って流れるように制限することが好ましい。例えば、図15に示すように、フロースプリッタ230は、1対の透磁性部238に挟まれ、それらと連結される非磁性部236を有する。別法として、フロースプリッタ230は、非磁性部236および透磁性部238を有し、非磁性部236がEMコイル(図5の参照符号204)と対向する関係になるように透磁性部238の中央部に埋め込まれると考えることもできる。非磁性部236は、1対の透磁性部238の間の磁束の流れを防止する。透磁性部238は、高透磁率強磁性材料のような高透磁率材料で作成されることが好ましい。別の実装環境では、図5に示すように、フロースプリッタ230は、低炭素鋼のような透磁性材料で作成される非常に薄い、例えば半径方向厚さが1mm程度の単一のリングである。この薄い単一のリングの中央領域239は、磁気的に飽和状態となり、それによって磁束の軸線方向の流れが制限される。別の実施形態では、図16に示すように、フロースプリッタ230は、低炭素鋼のような透磁性材料で作成され、薄くされた中央部240を有する単一のリング242とすることができる。先述の例の場合と同様に、薄くされた中央領域240は、磁気的に飽和状態となるのが早く、フロースプリッタ230内の磁束の軸線方向の流れを制限する。薄くされた中央領域240は、エポキシのような非磁性材料244で埋め戻すことによってフロースプリッタ230の軸線方向長さに沿った半径方向厚さを均一にすることができ、それによって円滑且つ均一な流体流れ経路を保持することができる。HyMu80(ニッケル80%と鉄20%)や、初期の透磁性が非常に高く比較的低い磁束密度で飽和するその他の鉄‐ニッケル合金等の強磁性合金で1ピースフロースプリッタ230を作成すれば、性能改善を達成することができる。
【0052】
フロースプリッタ230の中央領域が薄くされる場合(図16の参照符号240参照)、または非磁性材料を含む場合(図15の参照符号236参照)には、薄くされた領域または非磁性材料の長さ(B)は、極間隔(図5のA)よりも小さいことが好ましい。好ましくは、B<A−2gである。より好ましくは、B<A−5gである。最も好ましくは、B<A−10gである。パラメータ「g」は、流路の間隙幅である。N個の流路が存在する場合、パラメータ「g」は、複数の流路の間隙幅の平均として定義することができる。流路232、234(図5)が存在する場合、gは、(g1+g2)/2と定義することができる。
【0053】
フロースプリッタ230は、磁気飽和を回避するのに十分な厚さのコンパクトなピストンアセンブリ200およびフラックスリング214が提供できるようにするために、半径方向厚さは薄いことが好ましい。一例として、フロースプリッタ230は、半径方向厚さを2mm以下、好ましくは半径方向厚さを1mm以下とすることができる。フロースプリッタ230の半径方向厚さは、フラックスリング214の半径方向厚さを大幅に下回るべきである。これは、フロースプリッタ230内の磁束の軸線方向の流れを制限しながら、フラックスリング214内の磁束の軸線方向の流れを容易にするためである。スプリッタ230の厚さは、フラックスリング214の厚さの1/2以下であることが好ましい。フロースプリッタ230の厚さは、フラックスリング214の厚さの1/3以下であることがより好ましい。スプリッタ230の厚さは、フラックスリング214の厚さの1/4以下であることがより好ましい。
【0054】
これまで、MR流体バルブの1つ(または複数)の流路がピストンアセンブリ200内に配置される例およびその変形例に関して、MR流体ダンパ装置の説明を行ってきた。しかしながら、1つ(または複数)の流路をピストンアセンブリ200の外部に配置することも可能であり、その変形例も同様に可能である。図17は、MR流体バルブの流路304がピストンアセンブリ324とダンパハウジング320の間に配置される系の一例を示す。流路304は、間隙幅gを有する。本例では、ピストンアセンブリ324は、先述した磁界発生器202を有する。先述の例の場合と同様に、Lm/gは大きい。本例では、ダンパハウジング320は、透磁性材料で作成されるフラックスリングとして機能する。一般に、動作中に磁界発生器202を取り囲むダンパハウジング320の少なくとも一部分は、透磁性材料で作成すべきである。磁界発生器202は、通電したときに流路304内のMR流体全体に磁界を印加する。磁束305は、磁界発生器202のコア206の下から上へと進んで流路304を横切り、ダンパハウジング320の上から下へと進んで流路304を横切り、再びコア206の下から上へと進む単一の連続経路内を移動する。この場合、MR流体ダンパ装置は、剪断モードで動作する。つまり、流路304を画定する表面のうちの1つまたは複数が、流路216内の垂直磁界および軸線方向の流れに対して静止状態で保持されないことになる。ここで、磁界発生器202は、流路306、308の差圧に応答して、ダンパハウジング320に対して軸線方向に移動する。
【0055】
図18A〜図18Cは、複数の環状流路を有するMR流体バルブを有し、且つEMコイル405を有する磁界発生器402がフロースプリッタとして機能する、MR流体ダンパ装置と共に使用されるピストンアセンブリ400を示す。先述の例の場合と同様に、ピストンアセンブリ400は、ほぼ円筒形である。図18A〜図18Cに示す実施形態では、磁界発生器402は、先述したような透磁性材料で作成されるフラックスリング404と同心である。磁界発生器402のコア406は、互いに同心である内側コア部408および外側コア部410を有する。外側コア部410は、EMコイル405および極片416、418を有する。極片416、418は、長さLmの磁極を提供する。内側コア部408は、内側コア部408と外側コア部410の間に流路412が画定されるように、外側コア部410から半径方向に離間される。流路412は、間隙幅g2を有する。先述のとおり、Lm/g2は大きい。フラックスリング404と磁界発生器402の間には流路403が画定される。流路403は、間隙幅g1を有する。先述のとおり、Lm/g1は大きい。間隙幅g1およびg2は、同じであっても異なっていてもよい。必要に応じて、磁界発生器402とフラックスリング404の間には、1つまたは複数のフロースプリッタを使用して追加的な流路を画定することもできる。内側コア部408と外側コア部410の間にも、1つまたは複数のフロースプリッタを使用して追加的な流路を画定することができる。EMコイル405は、非磁性材料で作成され得るケーシング414内に設けることができる。EMコイル405は、外側コア部410内の極片416、418間で支持されるケーシング414のコイル部424に設けることができる。ケーシング414は、内側コア部408内に支持されるハブ部422を有する。コイル部424とハブ部422は、リブ部426によって連結することができる。リブ部426は、電気配線420をハブ部422に挿入してコイル部424内のEMコイル405に接続することを可能にする導管を有することができる。適切な連結機能を有するエンドプレート428、430を使用して、内側コア部408および外側コア部410をフラックスリング404と結合させることができる。エンドプレート428、430は、流路403、412と連結される溝429、431を有する。
【0056】
図19Aおよび図19Bは、積層プレートで作成される、MR流体ダンパ装置と共に使用されるピストンアセンブリ450を示す。ピストンアセンブリ450は、上述したような透磁性材料で作成されるプレート452の積層体を有する。各プレート452には、例えばウォータジェットを使用して複数の溝454が外側円形経路456に沿って刻まれる。各プレート452には、例えばウォータジェットを使用して複数の溝455も内側円形経路458に沿って刻まれる。内側円形経路458および外側円形経路456は、同心である。代替的な諸実施形態では、MR流体バルブで望まれる流路数に応じて、複数の溝は、プレート452内の1つの円形経路に沿って刻まれることも3つ以上の円形経路に沿って刻まれることもある。各円形経路は、流路を表す。円形経路456に沿った溝454は、ブリッジ460によって分断される。また、円形経路458に沿った溝455は、ブリッジ461によって分断される。円形経路456と458の間に閉じ込められるプレート452の部分457は、スプリッタとして機能する。スプリッタは、側剛性を得るために比較的厚くすることができる。溝454、455は、MR流体バルブの流路を提供する。図19Bは、中間プレート452がEMコイル465を取り付けるためのポケットと、ピストンロッド124と係合する表面とを有する例を示す。中間プレート間の(EMコイル465に隣接する)間隙459は、エポキシのような非磁性材料で埋め戻すことができる。プレート452は、ボルト463で互いに保持される。ダンパハウジング102内のピストンアセンブリ450の往復動を支承するために、プレート452のうちの1つまたは複数に摩耗バンド467を装着することができる。図19Aおよび図19Bに示すピストンアセンブリは、MRダンパにマルチ環状流路ピストンアセンブリを提供することが好ましい。
【0057】
図20Aは、EMコイル503を含む磁界発生器502を備えたMR流体バルブを有するピストンアセンブリ500を示す。ピストンアセンブリ500は、磁界発生器502を取り囲む磁束体(flux body)504を有する。ピストンロッド124は、磁界発生器502と結合される。ピストンアセンブリ500は、ダンパハウジング102内に配設される。フロースプリッタ508は、磁束体504と磁界発生器502の間の環状間隙505内に配設され、それによって間隙内に同心の環状流路510、512が形成される。フロースプリッタ508は、1つまたは複数のタック(tack)514を使用して、磁束体504と磁界発生器502の間の所定位置に保持することができる。フロースプリッタ508は、間隙505の全長にわたっては延在せず、それにより、流路510および512からの流体が合流するチャンバ516が間隙505内に形成されるようになっている。磁束体504のベース515は、合流チャンバ516と連通する溝または孔部518を有する。ダンパハウジング102内のピストンアセンブリ500の往復動を支承するために、磁束体504に摩耗バンド520を装着することができる。図20Aでは、フロースプリッタ508は、EMコイル503の真上の位置で停止する。図20Bは、EMコイル503の上部の下方まで延在するフロースプリッタ522が環状流路510および512の形成に使用され得る例を示す。これにより、合流チャンバ516の寸法が縮小される。図20Aおよび図20Bでは、追加的なフロースプリッタを使用して磁界発生器502と磁束体504の間に3つ以上の環状流路を形成することができる。
【0058】
図21Aは、2つのEMコイル534、536を含む磁界発生器532を備えたMR流体バルブを有するピストンアセンブリ530を示す。ピストンロッド124は、磁界発生器532と結合される。ピストンアセンブリ530は、磁界発生器532および磁極片540、542を取り囲むフラックスリング538を有する。磁界発生器532とフラックスリング538の間の間隙内には、流路544が形成される。磁界発生器532内には流路546が形成される。流路546は、例えばウォータジェットを使用してプレートに刻まれる複数の溝であってよい。流路544、546は、同心である。磁極片540、542は、流路544、546に対して開口する孔部548、550をそれぞれ有する。ピストンアセンブリ530は、ダンパハウジング102内に配設される。ダンパハウジング102内のピストンアセンブリ530の往復動を支承するために、フラックスリング538に摩耗バンド554を装着することができる。
【0059】
図21Bは、ボルト569で互いに保持されるプレート570の積層体で作成されるコア563を有する磁界発生器562を備えたMR流体バルブを有するピストンアセンブリ560を示す。磁界発生器562は、ピストンロッド124と結合される。プレート570は、透磁性材料で作成される。EMコイル564、568は、中間プレート570a、570bのポケット内に配置される。プレート570間の(EMコイル564、568に隣接する)陥凹部571は、エポキシのような非磁性材料で埋め戻すことができる。EMコイル564、568の上下にあるプレート570の各部分は、磁極として作用する。プレート570は、流路574を画定する溝572を有する。ピストンアセンブリ560は、ダンパハウジング578内に配設される。ピストンアセンブリ560の外径は、ダンパハウジング572の内壁とピストンアセンブリ560の外壁との間に流路576が形成されるように、ダンパハウジング578の内径よりも小さくなっている。したがって、図21Bの実施形態では、MR流体ダンパ装置は、部分的に剪断モードで動作し、部分的に流れモードで動作する。
【0060】
以上、限られた数の実施形態に関して本発明の説明を行ってきたが、本開示の利益を享受する当業者なら、本明細書に開示した本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案される可能性があることを理解するはずである。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気粘性流体バルブであって、
少なくとも1つの電磁コイル、および極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器と、
前記電磁コイルに隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも1つの流路と、
を備える磁気粘性流体バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器を取り囲むフラックスリングを更に備え、前記少なくとも1つの流路は、前記フラックスリングと前記磁界発生器の間に画定される、磁気粘性流体バルブ。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記間隙幅gは、前記少なくとも1つの流路の流れ間隙長さに沿ってほぼ一定である、磁気粘性流体バルブ。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つの流路は、環状である、磁気粘性流体バルブ。
【請求項5】
請求項2に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に画定され、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも1つの追加的な流路を更に備える磁気粘性流体バルブ。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に配設されるフロースプリッタを更に備え、前記フロースプリッタは、前記少なくとも1つの流路と、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間の前記少なくとも1つの追加的な流路とを画定する、磁気粘性流体バルブ。
【請求項7】
請求項6に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つのフロースプリッタの半径方向厚さは、前記フラックスリングの半径方向厚さの1/2以下である、磁気粘性流体バルブ。
【請求項8】
請求項6に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つのフロースプリッタは、第1の透磁性部と第2の透磁性部の間に非磁性部を備える、磁気粘性流体バルブ。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器は、少なくとも2つの離間された磁極を有し、前記非磁性部の軸線方向長さは、前記少なくとも2つの離間された磁極間の極間隔と、前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの追加的な流路の前記間隙幅gとg1の平均の2倍との差よりも小さい、磁気粘性流体バルブ。
【請求項10】
請求項6に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つのフロースプリッタにはその中央部に陥凹部が設けられ、前記陥凹部内に配設される非磁性材料を更に備える磁気粘性流体バルブ。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器は、少なくとも2つの離間された磁極を有し、前記陥凹部の軸線方向長さは、前記少なくとも2つの磁極間の極間隔と、前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの追加的な流路の前記間隙幅gとg1の平均の2倍との差よりも小さい、磁気粘性流体バルブ。
【請求項12】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記透磁性コアは、内側コア部および外側コア部を同心円状に離間された構成で備え、前記電磁コイルは、前記外側コア部に含められる、磁気粘性流体バルブ。
【請求項13】
請求項12に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記内側コア部と前記外側コア部の間に画定され、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも1つの追加的な流路を更に備える、磁気粘性流体バルブ。
【請求項14】
請求項13に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つの追加的な流路は、前記少なくとも1つの流路と同心である、磁気粘性流体バルブ。
【請求項15】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記電磁コイルは、前記少なくとも1つの流路に隣接する前記磁界発生器の表面からオフセットされる、磁気粘性流体バルブ。
【請求項16】
請求項2に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器は、前記フラックスリングと結合される、磁気粘性流体バルブ。
【請求項17】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器は、それぞれ透磁性材料で作成されるプレートの積層体を備え、前記電磁コイルは、前記プレートのうちの少なくとも1つに形成される陥凹部内に配設される、磁気粘性流体バルブ。
【請求項18】
請求項17に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つの流路は、前記プレート内に形成される複数の溝によって提供される、磁気粘性流体バルブ。
【請求項19】
磁気粘性流体ダンパであって、
磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングと、
前記ダンパハウジングの内部空洞を第1のダンパハウジング内部空洞チャンバおよび第2のダンパハウジング内部空洞チャンバに分割し、極長Lmの少なくとも第1の磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリと、
前記磁界発生器に隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも第1の流路と、
を備え、
前記ダンパハウジングの内部空洞には、磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体が供給され、前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体は、前記比率Lm/gを有する前記少なくとも第1の流路内を制御可能に流れ、前記ダンパハウジングに対する前記ピストンアセンブリの運動を制御する、
磁気粘性流体ダンパ。
【請求項20】
請求項19に記載のダンパであって、前記磁界発生器を取り囲むフラックスリングを更に備え、前記少なくとも第1の流路は、前記フラックスリングと前記磁界発生器の間に存在する、ダンパ。
【請求項21】
請求項19に記載のダンパであって、前記間隙幅gは、前記少なくとも第1の流路の長さに沿ってほぼ一定である、ダンパ。
【請求項22】
請求項19に記載のダンパであって、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも第2の流路を更に備える、ダンパ。
【請求項23】
請求項20に記載のダンパであって、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に存在し、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも第2の流路を更に備える、ダンパ。
【請求項24】
請求項20に記載のダンパであって、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に配設されるフロースプリッタを更に備え、前記フロースプリッタは、前記少なくとも第1の流路と、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に存在し、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも第2の流路と、を画定する、ダンパ。
【請求項25】
請求項24に記載のダンパであって、前記磁気粘性ダンパ流体は、鉄体積分率が26%を超えない、ダンパ。
【請求項26】
請求項24に記載のダンパであって、前記磁気粘性ダンパ流体は、鉄体積分率が18%未満である、ダンパ。
【請求項27】
請求項24に記載のダンパであって、外部アキュムレータを有するダンパ。
【請求項28】
請求項24に記載のダンパであって、外部ベース取り付け型アキュムレータを有するダンパ。
【請求項29】
請求項24に記載のダンパであって、前記磁気粘性ダンパは、外部ベース取り付け型アキュムレータを有し、ダンパベース通常流れ導管により、ダンパ端ベースから前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内に続く曲線状の通常転送流れ経路が提供される、ダンパ。
【請求項30】
請求項19に記載のダンパであって、前記磁気粘性ダンパは、外部ベース取り付け型アキュムレータを有し、ダンパベース通常流れ導管により、ダンパ端ベースから前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内に続く曲線状の通常転送流れ経路が提供され、前記外部ベース取り付け型アキュムレータは、前記ピストンアセンブリの運動と反対の運動により、前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内で軸線方向に往復動するアキュムレータピストンを有する、ダンパ。
【請求項31】
請求項30に記載のダンパであって、インボードシールおよびピストンロッドベアリングを受ける軸線方向延在フィルタ部材を備えたピストンロッドガイドを有するダンパ。
【請求項32】
請求項31に記載のダンパであって、前記ピストンロッドガイドは、第2のアウトボードロッドシールと、アウトボードロッドワイパと、を有する、ダンパ。
【請求項33】
請求項32に記載のダンパであって、前記軸線方向延在フィルタ部材は、鉄体積分率が26%を超えない磁気粘性ダンパ流体から磁性鉄粒子を濾過し、前記磁性鉄粒子が前記第2のアウトボードロッドシールに到達するのを阻止する、ダンパ。
【請求項34】
磁気粘性流体ダンパであって、
磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングと、
前記ダンパハウジング内に配設されるピストンアセンブリであって、少なくとも1つの電磁コイルおよび極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリと、
前記少なくとも1つの電磁コイルに隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも1つの流路と、
を備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項35】
請求項34に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ダンパハウジング内に画定されるアキュムレータを更に備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項36】
請求項34に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ダンパハウジングの外部に存在するアキュムレータと、前記外部のアキュムレータと前記ダンパハウジングの内部との間の連通をもたらす導管と、を更に備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項37】
請求項34に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ピストンと結合されたピストンロッドを更に備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項38】
請求項37に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ダンパハウジング内に配設され、前記ピストンロッドを受けるための通路を内部に有するピストンロッドガイドを更に備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項39】
請求項38に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ピストンロッドガイドは、前記ピストンロッドと係合して前記ピストンロッドの往復動を支承するピストンロッドベアリングアセンブリを備える、磁気粘性流体ダンパ。
【請求項40】
請求項38に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ピストンロッドガイドは、アキュムレータを備える、磁気粘性流体ダンパ。
【請求項41】
請求項38に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ピストンロッドガイドにチャンバが設けられ、前記チャンバ内には、前記ダンパハウジングの前記内部空洞から前記チャンバ内で受け取られる磁気粘性流体から粒子を濾過するためのフィルタが配設される、磁気粘性流体ダンパ。
【請求項42】
磁気粘性流体ダンパを作成する方法であって、
磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングを設けるステップと、
前記ダンパハウジングの内部空洞を第1のダンパハウジング内部空洞チャンバおよび第2のダンパハウジング内部空洞チャンバに分割し、極長Lmの少なくとも第1の磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリを設けるステップと、
前記磁界発生器に隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも第1の流路を設けるステップと、
磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体を供給するステップと、
前記ピストンアセンブリおよび前記磁気粘性ダンパ流体を前記ダンパハウジング内に配設するステップと、
を有し、
前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体は、前記比率Lm/gを有する前記少なくとも第1の流路内を制御可能に流れ、前記ダンパハウジングに対する前記ピストンアセンブリの運動を制御する、
方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体を供給する前記ステップは、前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体を、30%未満の様々な磁性鉄粒子総体積分率を有する複数の異なる磁気粘性ダンパ流体から構成される多様な一群の磁気粘性ダンパ流体から選択するステップを有する、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、少なくとも第1の選択ダンパ流体は、鉄体積分率が26%を超えない、方法。
【請求項45】
請求項43に記載の方法であって、少なくとも第2の選択ダンパ流体は、鉄体積分率が16%を超えない、方法。
【請求項46】
請求項42に記載の方法であって、前記ダンパハウジングの第1の端部を、曲線状の通常転送流れ経路を有するダンパ端ベースで終端するステップを有し、前記曲線状の通常転送流れ経路は、前記ダンパ端ベースに取り付けられた外部ベース取り付け型アキュムレータの内外にダンパ流体流れを転送する、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、ダンパベース通常流れ導管により、前記ダンパ端ベースから前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内に続く前記曲線状の通常転送流れ経路が提供され、前記外部ベース取り付け型アキュムレータは、前記ピストンアセンブリの運動と反対の運動により、前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内で軸線方向に往復動するアキュムレータピストンを有する、方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、前記ダンパハウジングの第2の端部を、軸線方向延在フィルタ部材を備えたピストンロッドガイドで終端するステップを有し、前記軸線方向延在フィルタ部材は、インボードシールおよびピストンロッドベアリングを受ける、方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、前記ピストンロッドガイドは、第2のアウトボードロッドシールと、アウトボードロッドワイパと、前記ピストンアセンブリを往復動させる往復動ピストンと、を有する、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、前記軸線方向延在フィルタ部材は、鉄体積分率が26%を超えない磁気粘性ダンパ流体から磁性鉄粒子を濾過し、前記磁性鉄粒子が前記第2のアウトボードロッドシールに到達するのを阻止する、方法。
【請求項1】
磁気粘性流体バルブであって、
少なくとも1つの電磁コイル、および極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器と、
前記電磁コイルに隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも1つの流路と、
を備える磁気粘性流体バルブ。
【請求項2】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器を取り囲むフラックスリングを更に備え、前記少なくとも1つの流路は、前記フラックスリングと前記磁界発生器の間に画定される、磁気粘性流体バルブ。
【請求項3】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記間隙幅gは、前記少なくとも1つの流路の流れ間隙長さに沿ってほぼ一定である、磁気粘性流体バルブ。
【請求項4】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つの流路は、環状である、磁気粘性流体バルブ。
【請求項5】
請求項2に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に画定され、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも1つの追加的な流路を更に備える磁気粘性流体バルブ。
【請求項6】
請求項5に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に配設されるフロースプリッタを更に備え、前記フロースプリッタは、前記少なくとも1つの流路と、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間の前記少なくとも1つの追加的な流路とを画定する、磁気粘性流体バルブ。
【請求項7】
請求項6に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つのフロースプリッタの半径方向厚さは、前記フラックスリングの半径方向厚さの1/2以下である、磁気粘性流体バルブ。
【請求項8】
請求項6に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つのフロースプリッタは、第1の透磁性部と第2の透磁性部の間に非磁性部を備える、磁気粘性流体バルブ。
【請求項9】
請求項8に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器は、少なくとも2つの離間された磁極を有し、前記非磁性部の軸線方向長さは、前記少なくとも2つの離間された磁極間の極間隔と、前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの追加的な流路の前記間隙幅gとg1の平均の2倍との差よりも小さい、磁気粘性流体バルブ。
【請求項10】
請求項6に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つのフロースプリッタにはその中央部に陥凹部が設けられ、前記陥凹部内に配設される非磁性材料を更に備える磁気粘性流体バルブ。
【請求項11】
請求項10に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器は、少なくとも2つの離間された磁極を有し、前記陥凹部の軸線方向長さは、前記少なくとも2つの磁極間の極間隔と、前記少なくとも1つの流路および前記少なくとも1つの追加的な流路の前記間隙幅gとg1の平均の2倍との差よりも小さい、磁気粘性流体バルブ。
【請求項12】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記透磁性コアは、内側コア部および外側コア部を同心円状に離間された構成で備え、前記電磁コイルは、前記外側コア部に含められる、磁気粘性流体バルブ。
【請求項13】
請求項12に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記内側コア部と前記外側コア部の間に画定され、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも1つの追加的な流路を更に備える、磁気粘性流体バルブ。
【請求項14】
請求項13に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つの追加的な流路は、前記少なくとも1つの流路と同心である、磁気粘性流体バルブ。
【請求項15】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記電磁コイルは、前記少なくとも1つの流路に隣接する前記磁界発生器の表面からオフセットされる、磁気粘性流体バルブ。
【請求項16】
請求項2に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器は、前記フラックスリングと結合される、磁気粘性流体バルブ。
【請求項17】
請求項1に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記磁界発生器は、それぞれ透磁性材料で作成されるプレートの積層体を備え、前記電磁コイルは、前記プレートのうちの少なくとも1つに形成される陥凹部内に配設される、磁気粘性流体バルブ。
【請求項18】
請求項17に記載の磁気粘性流体バルブであって、前記少なくとも1つの流路は、前記プレート内に形成される複数の溝によって提供される、磁気粘性流体バルブ。
【請求項19】
磁気粘性流体ダンパであって、
磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングと、
前記ダンパハウジングの内部空洞を第1のダンパハウジング内部空洞チャンバおよび第2のダンパハウジング内部空洞チャンバに分割し、極長Lmの少なくとも第1の磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリと、
前記磁界発生器に隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも第1の流路と、
を備え、
前記ダンパハウジングの内部空洞には、磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体が供給され、前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体は、前記比率Lm/gを有する前記少なくとも第1の流路内を制御可能に流れ、前記ダンパハウジングに対する前記ピストンアセンブリの運動を制御する、
磁気粘性流体ダンパ。
【請求項20】
請求項19に記載のダンパであって、前記磁界発生器を取り囲むフラックスリングを更に備え、前記少なくとも第1の流路は、前記フラックスリングと前記磁界発生器の間に存在する、ダンパ。
【請求項21】
請求項19に記載のダンパであって、前記間隙幅gは、前記少なくとも第1の流路の長さに沿ってほぼ一定である、ダンパ。
【請求項22】
請求項19に記載のダンパであって、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも第2の流路を更に備える、ダンパ。
【請求項23】
請求項20に記載のダンパであって、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に存在し、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも第2の流路を更に備える、ダンパ。
【請求項24】
請求項20に記載のダンパであって、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に配設されるフロースプリッタを更に備え、前記フロースプリッタは、前記少なくとも第1の流路と、前記磁界発生器と前記フラックスリングの間に存在し、間隙幅g1を有し、Lm/g1が15以上である少なくとも第2の流路と、を画定する、ダンパ。
【請求項25】
請求項24に記載のダンパであって、前記磁気粘性ダンパ流体は、鉄体積分率が26%を超えない、ダンパ。
【請求項26】
請求項24に記載のダンパであって、前記磁気粘性ダンパ流体は、鉄体積分率が18%未満である、ダンパ。
【請求項27】
請求項24に記載のダンパであって、外部アキュムレータを有するダンパ。
【請求項28】
請求項24に記載のダンパであって、外部ベース取り付け型アキュムレータを有するダンパ。
【請求項29】
請求項24に記載のダンパであって、前記磁気粘性ダンパは、外部ベース取り付け型アキュムレータを有し、ダンパベース通常流れ導管により、ダンパ端ベースから前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内に続く曲線状の通常転送流れ経路が提供される、ダンパ。
【請求項30】
請求項19に記載のダンパであって、前記磁気粘性ダンパは、外部ベース取り付け型アキュムレータを有し、ダンパベース通常流れ導管により、ダンパ端ベースから前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内に続く曲線状の通常転送流れ経路が提供され、前記外部ベース取り付け型アキュムレータは、前記ピストンアセンブリの運動と反対の運動により、前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内で軸線方向に往復動するアキュムレータピストンを有する、ダンパ。
【請求項31】
請求項30に記載のダンパであって、インボードシールおよびピストンロッドベアリングを受ける軸線方向延在フィルタ部材を備えたピストンロッドガイドを有するダンパ。
【請求項32】
請求項31に記載のダンパであって、前記ピストンロッドガイドは、第2のアウトボードロッドシールと、アウトボードロッドワイパと、を有する、ダンパ。
【請求項33】
請求項32に記載のダンパであって、前記軸線方向延在フィルタ部材は、鉄体積分率が26%を超えない磁気粘性ダンパ流体から磁性鉄粒子を濾過し、前記磁性鉄粒子が前記第2のアウトボードロッドシールに到達するのを阻止する、ダンパ。
【請求項34】
磁気粘性流体ダンパであって、
磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングと、
前記ダンパハウジング内に配設されるピストンアセンブリであって、少なくとも1つの電磁コイルおよび極長Lmの少なくとも1つの磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリと、
前記少なくとも1つの電磁コイルに隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも1つの流路と、
を備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項35】
請求項34に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ダンパハウジング内に画定されるアキュムレータを更に備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項36】
請求項34に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ダンパハウジングの外部に存在するアキュムレータと、前記外部のアキュムレータと前記ダンパハウジングの内部との間の連通をもたらす導管と、を更に備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項37】
請求項34に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ピストンと結合されたピストンロッドを更に備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項38】
請求項37に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ダンパハウジング内に配設され、前記ピストンロッドを受けるための通路を内部に有するピストンロッドガイドを更に備える磁気粘性流体ダンパ。
【請求項39】
請求項38に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ピストンロッドガイドは、前記ピストンロッドと係合して前記ピストンロッドの往復動を支承するピストンロッドベアリングアセンブリを備える、磁気粘性流体ダンパ。
【請求項40】
請求項38に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ピストンロッドガイドは、アキュムレータを備える、磁気粘性流体ダンパ。
【請求項41】
請求項38に記載の磁気粘性流体ダンパであって、前記ピストンロッドガイドにチャンバが設けられ、前記チャンバ内には、前記ダンパハウジングの前記内部空洞から前記チャンバ内で受け取られる磁気粘性流体から粒子を濾過するためのフィルタが配設される、磁気粘性流体ダンパ。
【請求項42】
磁気粘性流体ダンパを作成する方法であって、
磁気粘性流体を収容するための内部空洞を有するダンパハウジングを設けるステップと、
前記ダンパハウジングの内部空洞を第1のダンパハウジング内部空洞チャンバおよび第2のダンパハウジング内部空洞チャンバに分割し、極長Lmの少なくとも第1の磁極を有する磁界発生器を備えた磁気粘性流体バルブを有するピストンアセンブリを設けるステップと、
前記磁界発生器に隣接し、間隙幅gを有し、比率Lm/gが15以上である少なくとも第1の流路を設けるステップと、
磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体を供給するステップと、
前記ピストンアセンブリおよび前記磁気粘性ダンパ流体を前記ダンパハウジング内に配設するステップと、
を有し、
前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体は、前記比率Lm/gを有する前記少なくとも第1の流路内を制御可能に流れ、前記ダンパハウジングに対する前記ピストンアセンブリの運動を制御する、
方法。
【請求項43】
請求項42に記載の方法であって、磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体を供給する前記ステップは、前記磁気粘性流体磁性鉄粒子総体積百分率が30%未満である磁気粘性ダンパ流体を、30%未満の様々な磁性鉄粒子総体積分率を有する複数の異なる磁気粘性ダンパ流体から構成される多様な一群の磁気粘性ダンパ流体から選択するステップを有する、方法。
【請求項44】
請求項43に記載の方法であって、少なくとも第1の選択ダンパ流体は、鉄体積分率が26%を超えない、方法。
【請求項45】
請求項43に記載の方法であって、少なくとも第2の選択ダンパ流体は、鉄体積分率が16%を超えない、方法。
【請求項46】
請求項42に記載の方法であって、前記ダンパハウジングの第1の端部を、曲線状の通常転送流れ経路を有するダンパ端ベースで終端するステップを有し、前記曲線状の通常転送流れ経路は、前記ダンパ端ベースに取り付けられた外部ベース取り付け型アキュムレータの内外にダンパ流体流れを転送する、方法。
【請求項47】
請求項46に記載の方法であって、ダンパベース通常流れ導管により、前記ダンパ端ベースから前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内に続く前記曲線状の通常転送流れ経路が提供され、前記外部ベース取り付け型アキュムレータは、前記ピストンアセンブリの運動と反対の運動により、前記外部ベース取り付け型アキュムレータ内で軸線方向に往復動するアキュムレータピストンを有する、方法。
【請求項48】
請求項47に記載の方法であって、前記ダンパハウジングの第2の端部を、軸線方向延在フィルタ部材を備えたピストンロッドガイドで終端するステップを有し、前記軸線方向延在フィルタ部材は、インボードシールおよびピストンロッドベアリングを受ける、方法。
【請求項49】
請求項48に記載の方法であって、前記ピストンロッドガイドは、第2のアウトボードロッドシールと、アウトボードロッドワイパと、前記ピストンアセンブリを往復動させる往復動ピストンと、を有する、方法。
【請求項50】
請求項49に記載の方法であって、前記軸線方向延在フィルタ部材は、鉄体積分率が26%を超えない磁気粘性ダンパ流体から磁性鉄粒子を濾過し、前記磁性鉄粒子が前記第2のアウトボードロッドシールに到達するのを阻止する、方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18A】
【図18B】
【図18C】
【図19A】
【図19B】
【図20A】
【図20B】
【図21A】
【図21B】
【公表番号】特表2011−522196(P2011−522196A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512599(P2011−512599)
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/046037
【国際公開番号】WO2009/149132
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(501337605)ロード・コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月2日(2009.6.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/046037
【国際公開番号】WO2009/149132
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(501337605)ロード・コーポレーション (12)
【Fターム(参考)】
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