説明

オーガスクリュ、オーガスクリュの製造装置、及びオーガスクリュの製造方法

【課題】駆動効率が向上し得るオーガスクリュ、当該オーガスクリュの製造装置、及び当該オーガスクリュの製造方法を提供する。
【解決手段】地盤を掘削する掘削装置等に使用されるオーガスクリュ5であって、丸棒状のオーガ軸10と、オーガ軸10に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯20からなるスクリュと、で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガスクリュ、オーガスクリュの製造装置、及びオーガスクリュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オーガ軸と当該オーガ軸に巻き付けて接合された金属帯で形成されるスクリュとを含むオーガスクリュは、地盤を掘削する掘削装置等に使用される。
【0003】
そして、従来のオーガスクリュを製造する場合、例えば、まず、中心部を円形に切り抜いたドーナツ状の鋼板に、外縁から中心に向かって切り込みを入れ、切り込みの両端を面直角方向に押し引きして螺旋状とする。次いで、かかる螺旋状の鋼板の中心部にオーガ軸を挿通し、オーガ軸に鋼板を巻き付けた状態で溶接する。次いで、当該巻き付けた鋼板(スクリュ)に別の鋼板を接合して同様にオーガ軸に溶接する作業を繰り返すこと等を行っていた(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2005−54388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のオーガスクリュの製造方法を用いた場合、ドーナツ状の鋼板を作成するに当たり、円板状の中心部を切り抜いていたため、材料ロスが多かった。また、スクリュをピッチごとに分割して形成しているため、連続する(複数のピッチからなる)スクリュを形成する上で、上記鋼板同士を接合する工程が煩雑となって不経済であった。更に、鋼板同士の接合部分の歪に起因するオーガケーシングとの接触やスクリュ羽根の形状不整合等がオーガ回転トルクのロスを招き、排土効率低下等の駆動効率低下をもたらす等の問題があった。
【0006】
本発明の課題は、安価に製造でき、且つ駆動効率が向上し得るオーガスクリュ、当該オーガスクリュの製造装置、及び当該オーガスクリュの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、オーガスクリュにおいて、オーガ軸と、前記オーガ軸に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯からなるスクリュと、を備えていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1記載のオーガスクリュにおいて、
前記金属帯は、厚さが16mm以上の鋼板であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、
オーガ軸と前記オーガ軸に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯からなるスクリュとで構成されるオーガスクリュの製造装置において、
前記オーガ軸を軸方向に進退させる進退手段と、
前記オーガ軸を軸回りに回転させる回転手段と、
前記金属帯を前記オーガ軸の周面に接触するように送出する送出手段と、
前記送出手段により送出される金属帯の前記オーガ軸との接触面を溶接する溶接手段と、
前記回転手段により前記オーガ軸を回転させて、前記送出手段により、前記金属帯を前記オーガ軸の周面に接触、湾曲させて、前記溶接手段により接触面を溶接するとともに、前記進退手段により前記オーガ軸を前進させて前記金属帯を前記オーガ軸に螺旋状に巻回する巻回手段と、
を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の発明は、
請求項3に記載のオーガスクリュの製造装置において、
前記進退手段は、
前記オーガ軸の下方で、前記オーガ軸と平行に配置されたスピンドルと、
前記スピンドルに軸着されるスピンドル用ナットと、
前記スピンドル用ナットと連結され、前記オーガ軸を上面に載置し、前記オーガ軸の長手方向に敷設されたレール上に配置される台車と、
前記スピンドルを回転させるモータと、
を有することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の発明は、
請求項4に記載のオーガスクリュの製造装置において、
前記スピンドル下方の長手方向所定位置に設けられ、支持部が前記スピンドルと当接して当該スピンドルを平行に支持し、前記台車が突起物と接触する際に下降するスピンドル支持機構を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、
請求項3〜5の何れか1項に記載のオーガスクリュの製造装置において、
前記巻回手段は、
前記送出手段による前記金属帯を送出する角度を変更する角度変更手段と、
前記進退手段による前記オーガ軸を進退させる速度を変更する進退速度変更手段と、
前記回転手段による前記オーガ軸を回転させる速度を変更する回転速度変更手段と、
を有することを特徴とする。
【0013】
また、請求項7に記載の発明は、
オーガ軸と前記オーガ軸に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯からなるスクリュとで構成されるオーガスクリュの製造方法において、
前記金属帯を前記オーガ軸の周面に接触するように送出する送出工程と、
前記送出される金属帯の前記オーガ軸との接触面を溶接する溶接工程と、
前記オーガ軸を回転させて、溶接される金属帯を湾曲させるとともに、前記オーガ軸を
軸方向に前進させて、当該金属帯を前記オーガ軸に螺旋状に巻回する巻回工程と、
を備えることを特徴とする。
【0014】
また、請求項8に記載の発明は、
オーガ軸と前記オーガ軸に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯からなるスクリュとで構成されるオーガスクリュの製造方法において、
前記金属帯を前記オーガ軸の周面に接触するように送出する送出工程と、
前記オーガ軸を回転させて、送出される金属帯を前記オーガ軸の周面に接触、湾曲させて、接触面を溶接するとともに、前記オーガ軸を軸方向に前進させて、当該金属帯を前記オーガ軸に螺旋状に巻回する巻回工程と、
を備えることを特徴とする。
【0015】
また、請求項9に記載の発明は、
請求項7又は8に記載のオーガスクリュの製造方法において、
前記オーガ軸を回転させるとともに、前記オーガ軸を軸方向に進退させて、金属帯と前記オーガ軸の接触面および金属帯の保護面を保護溶接する保護溶接工程を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スクリュをピッチごとに分割して形成させずに、長尺な金属帯を用いて連続的にスクリュが形成される。
したがって、スクリュをピッチごとに分割して接合する従来のオーガスクリュに比べて、スクリュの材料ロスが少なく、製造工程が簡略化されるので、オーガスクリュを安価に製造できる。更に、スクリュ同士の接合部分を設けることによるスクリュ羽根の形状不整合等のオーガスクリュの駆動効率低下をもたらす要因が解消され、駆動効率が向上したオーガスクリュを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る製造装置の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係る製造装置の概略構成を示す側面図である。
【図3】本発明に係る製造装置の制御構造を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る製造装置によるオーガスクリュの製造処理を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明に係る製造装置による別のオーガスクリュの製造処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
「実施形態1」
以下、本発明の実施の形態について図1〜図3を参照しながら説明する。ここで、図1におけるオーガスリュの製造装置の前後方向をX方向、左右方向をY方向、上下方向をZ方向とする。
なお、発明の範囲は図示例に限定されない。
【0019】
本実施形態に係るオーガスクリュ5は、地盤を掘削する掘削装置等に使用されるものであり、丸棒状のオーガ軸10と、オーガ軸10に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯20からなるスクリュと、で構成されている。即ち、スクリュは、途中で分割されることなく一つの金属帯20により構成されている。
金属帯20は、例えば、16mm以上の厚さの鋼板により構成されていることが好ましい。このような鋼板を用いることで、強大な掘削トルクを伝達するオーガ軸の補強部材として機能し、岩塊やコンクリート片などの重量物の垂直搬送が可能となる。
そして、かかるオーガスクリュ5の製造装置1は、例えば、図1及び図2に示すように、オーガ軸10を軸方向(X方向)に進退させる進退部110(進退手段、巻回手段)と、オーガ軸10を軸回りに回転させる回転部120(回転手段、巻回手段)と、スピンドル111の長手方向所定位置に設けられ、スピンドル111を支持するスピンドル支持部160と、金属帯20をオーガ軸10の周面に接触するように送出する送出部130(送出手段、巻回手段)と、送出部130より送出される金属帯20のオーガ軸10との接触面を溶接する溶接部140(溶接手段)と、製造装置1の各構成を統括制御する制御部500(回転手段、送出手段、溶接手段、巻回手段、進退速度変更手段、回転速度変更手段、角度変更手段)と、を含んで構成される。
【0020】
進退部110は、例えば、X軸回りに回転自在なスピンドル111と、このスピンドル111の回転に連動して移動する台車112と、この台車112の移動を案内するレール113と、スピンドル111に回転駆動力を付与する進退部モータ114(モータ、進退速度変更手段、回転速度変更手段)と、進退部モータ114に接続される減速機115と、を含んで構成される。
【0021】
スピンドル111は、オーガ軸10の下方で、オーガ軸10と平行に配置され、所定のピッチからなる螺旋状の溝がX方向に沿って形成された軸である。そして、当該スピンドル111は、一端が進退部モータ114と接続されており、他端がスピンドル端部111aで固定され、進退部モータ114の回転に連動してX軸回りに回転自在となっている。
【0022】
台車112は、例えば、オーガ軸10を固定するジョイント部112aと、スピンドル111に軸着されるスピンドルナット部112bと、レール113に案内されて回転する車輪部112cと、この車輪部112cのレール113からの浮き防止のために設けられたローラ部112dと、回転部120を載置する基体112eと、を含んで構成される。
ジョイント部112aは、例えば、オーガ軸10の軸径に応じた形状のジョイント部であり、ピン等によりオーガ軸10が固着されている。また、ジョイント部112aには、金属帯20を初期湾曲させるための端曲げジグ112fが装着されており、金属帯20の端部を湾曲させ、オーガ軸10との接触面を成形する。ジョイント部112aは、オーガ軸10の回転に応じてX軸回りに回転する。
スピンドルナット部112bは、例えば、台車112の前下端に取り付けられたスピンドル用ナットであり、スピンドル111に軸着され、スピンドル111のX軸回りの回転運動をX方向の直線運動に変換する。
つまり、スピンドルナット部112bは、スピンドル111のX軸回りの回転に応じて進退部モータ114近傍とスピンドル端部111aとの間を直線移動する。
車輪部112cは、例えば、基体112eの下面の4つの端部に設けられ、レール113上を回転する車輪で構成され、スピンドルナット部112bの直動に応じて台車112全体をX方向に進退させる。
ローラ部112dは、例えば、基体112eのY方向両端部からそれぞれ二つずつZ方向下側に延出して設けられ、先端部に設けられたローラがレール113の水平方向に延出したフランジ(図示省略)の下面と接触するようになっている。従って、台車112の進退と連動してローラ部112dのローラがレール上を回転するとともに、車輪部112cの浮き上がりを防止することができる。
【0023】
レール113は、例えば、基体112eのY方向両端部の下方に位置し、オーガ軸10の軸方向(X方向)に敷設され、車輪部112cの各々の車輪の溝と係合する。そして、レール113は、台車112の進退と連動して車輪部112cをY軸回りに回転させ、X方向に案内する。
【0024】
進退部モータ114は、例えば、減速機115を介してスピンドル111と接続され、後述の制御部500から出力される制御信号に応じて所定の回転速度で回転し、スピンドル111を軸回りに回転させるサーボモータである。つまり、進退部モータ114は、進退部モータ114とスピンドル端部111aとの間で台車112をX方向に任意の速度で直線移動させるので、オーガ軸10を進退させる速度を変更することができる。
減速機115は、例えば、進退部モータ114に接続されたギアであり、進退部モータ114の駆動力をスピンドル111に伝達する。
【0025】
回転部120は、例えば、回転部モータ121と、回転部モータ121の回転を所定の減速比で減速させる第1減速機122と、この第1減速機122で減速された回転速度を更に減速させる第2減速機123と、この第2減速機123で減速された回転が伝達される回転軸124と、を含んで構成され、各々が台車112上に配置されており、進退部110(オーガスクリュ5)の進退に連動してX方向に進退する。
回転部モータ121は、第1減速機122と同軸に設けられたサーボモータであり、後述の制御部500から出力される制御信号に応じて所定の回転速度で回転する。
第1減速機122は、回転部モータ121から出力された回転力を所定の減速比にて減速して第2減速機123に伝達する。
第2減速機123は、第1減速機122と噛合するギアを備えており、第1減速機122から出力された回転力を所定の減速比にて減速して回転軸124に伝達する。
回転軸124は、後側の一端がジョイント部112aに固着され、オーガ軸10と同軸上に設けられ、オーガ軸10と同じ回転速度でX軸(オーガ軸10)回りに回転する軸である。
従って、回転部モータ121が回転すると、第1減速機122及び第2減速機123にて減速され、所定速度で回転軸124がX軸回りに回転することにより、 オーガ軸10を軸回りに回転させることが出来る。
【0026】
スピンドル支持部160(スピンドル支持機構)は、例えば、スピンドル111の下面と接触する上半分を切欠いた半円筒状の半円筒部材161(支持部)を装備し、台車112が通過する際、突起物162と接触し、シリンダー163によって下方に格納され、干渉しない構造となっている。通常状態では、スピンドル支持部160がスピンドル111の下面と接触してスピンドル111を長手方向所定位置で支持する。
【0027】
送出部130は、例えば、金属帯20を支持する金属帯支持部131と、金属帯20をオーガ軸10に送出する際のピッチ角を調整するピッチ角調整部132(角度変更手段)と、を含んで構成され、金属帯20をオーガ軸10の周面に接触するように送出する。
【0028】
金属帯支持部131は、上下一対の基盤131aと、基盤131aをZ軸回りに回動させる回動体131bと、基盤131a上に設けられ、金属帯20を挟持する一対の支持壁部131cと、一対の支持壁部131cの隙間を調整するハンドル131dと、金属帯20をオーガ軸10に接触させる押さえローラ131eと、を含んで構成される。
基盤131aは、支持壁部131cや隙間を調整するハンドル131d等が配置された上基盤131a1と上基盤131a1を滑動させる基盤となる下基盤131a2とが摺接され、上基盤131a1がY方向に摺動可能なように構成される。
回動体131bは、基盤131aの下面と接続されて基盤131aを下方から支持するとともに、基盤131aをZ軸回りに回動可能にするように配設された円柱状の部材である。
【0029】
支持壁部131cは、上基盤131a1の上面で金属帯20の両側面に位置し、金属帯20の側面を挟み込んで支持する2つの壁体である。また、支持壁部131cは、ハンドル131dと接続され、ハンドル131dの回転に応じて双方が金属帯20の軸線を中心として幅方向(図1のA方向)へ対称に可動するように構成されている。つまり、オーガ軸10に巻回する金属帯20の幅に応じてハンドル131dを左右に回転させることで、支持壁部131cが金属帯20を締緩し適切に挟持することができる。
【0030】
ハンドル131dは、支持壁部131cと接続された手動ハンドルである。そして、例えば、図示しないハンドル131dの軸に軸支されたピニオン歯車が支持壁部131cに接続されたラックと噛合し、ハンドル131dの回転に応じて支持壁部131cが直動するように構成される。
【0031】
ピッチ角調整部132は、例えば、ピッチ角調整モータ132aと、ピッチ角調整用減速機132bと、を含んで構成される。
ピッチ角調整モータ132aは、回動体131bと接続されたサーボモータであり、ピッチ角調整用減速機132bを介して回転駆動力を回動体131bに伝達し、回動体131bをZ軸回りに回転させる。つまり、回動体131bをZ軸回りに回転させることで、回動体131bに接続された基盤131a上の金属帯20もZ軸回りに回転するので、金属帯20がオーガ軸10に送出される向きが変更され、スクリュのピッチ角(図1に示すピッチ角P2)を適宜調整することが可能となる。
ピッチ角調整用減速機132bは、ピッチ角調整モータ132aに連結される減速用のギアである。
【0032】
溶接部140は、例えば、2機の溶接装置141,142を含み、金属帯20のオーガ軸10との接触面および、金属帯20の保護面を溶接する。
溶接装置141,142は、例えば、複数の回動支点141a,141b,141cや、142a,142b,142cなどを軸にアーム141e,142eを回動させて、溶接トーチ141d,142dの位置/向きを調整自在な溶接ロボットである。そして、溶接装置141,142は、例えば、図示しないボンベに充填されたシールドガス(例えば、 炭酸ガス) を溶接トーチ141d,142dから噴射して、金属帯20のオーガ軸10との接触面(送出位置Sにおける接触面)を溶接する。そして、上記溶接された金属帯20は、オーガ軸10が軸回りに回転し、オーガ軸10を前進させることにより、オーガ軸10の周面に沿うように湾曲する。
ここで、図1に示すように、金属帯20を挟んで第1溶接方向W1と第2溶接方向W2の双方から接触面のX方向左右端部を同時に溶接するため、溶接装置141,142は、それぞれ、金属帯20の送出位置Sの左右に配置される。
また、前記同様の手順で溶接トーチ141d,142dの位置や向きを調節し、溶接材料等を変更することにより、金属帯20の保護溶接(例えば、金属帯外周部等の多層盛りおよび硬化肉盛等)を行うことが可能である。
なお、溶接装置141,142は、必ずしも溶接ロボットである必要は無く、手動式の溶接器等を用い、ユーザが適宜接触面に溶接トーチ141d,142dを移動させて溶接するように構成しても勿論良い。
【0033】
制御部500は、例えば、溶接装置141,142周辺に配置される複数の制御盤で構成され、図3に示すように、進退部110と、回転部120と、送出部130と、溶接部140と、等と接続され、図示しないモニタ装置や入力装置を介してユーザに指定されたピッチ間隔P1やピッチ角P2のオーガスクリュ5が製造されるように、製造装置1の各構成を統括制御する。
そして、制御部500が進退部110(進退部モータ114)及び回転部120(回転部モータ121)に出力する所定の制御信号により、各々に備わるモータの速度が適宜変更される。そのため、制御部500が進退部モータ114の速度を変更することにより、オーガ軸10のX方向への進退速度が変更されるため、オーガ軸10に巻回される各々のスクリュのピッチ間隔P1を調整することが出来る。
また、制御部500が送出部130のピッチ角調整部132(ピッチ角調整モータ132a)へと出力する制御信号により、金属帯20をオーガ軸10に送出するピッチ角P2を適宜に調整することが出来る。
また、制御部500から溶接部140(溶接装置141,142)へと出力される制御信号によりアーム141e,142eが回動し、溶接トーチ141d,142dの位置/向きが変更されることで、溶接位置を精確に調整することが出来る。
したがって、制御部500が製造装置1の各構成に出力する制御信号に基づいて、オーガ軸10を回転部モータ121で軸回りに回転させて、溶接部140で溶接される金属帯20を湾曲させるとともに、オーガ軸10を進退部モータ114でX方向に進退させることができるので、オーガ軸10に金属帯20を螺旋状に巻回することが可能となる。
【0034】
(オーガスクリュの第1の製造方法)
次に、本実施形態に係る製造装置1によるオーガスクリュ5の第1の製造方法について、図4のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
まず、所定の軸径からなるオーガ軸10の端部をジョイント部112a等により固着し、制御部500により、スクリュ(オーガ軸10に巻回する金属帯20)のピッチ間隔P1及びピッチ角P2を調整する(ステップS1)。
【0036】
次いで、基盤131a上の支持壁部131c間に金属帯20をオーガ軸10に向けて突出させた状態で配置して、ハンドル131dを回転させて挟持し、金属帯20を先端が送出位置Sとなるようにオーガ軸10の周面に接触させ、金属帯20の送出を行う(ステップS2;送出工程)。
【0037】
次いで、制御部500により溶接装置141,142による溶接位置を調整し、ステップS2における金属帯20のオーガ軸10との接触面を溶接装置141,142で溶接(本溶接)する(ステップS3;溶接工程)。
【0038】
次いで、制御部500により、回転部モータ121を回転させてオーガ軸10を軸回りに回転させ、ステップS3にて溶接された金属帯20をオーガ軸10の周面に沿うように湾曲させる。さらに、進退部モータ114をステップS1にて調整されたピッチ間隔P1に相当する速度で回転させてオーガ軸10を軸方向に前進させ、金属帯20を螺旋状に巻回する(ステップS4;巻回工程)。
【0039】
以上、本実施形態に係るオーガスクリュ5は、長尺な金属帯20を用いて連続的にスクリュが形成される。したがって、スクリュをピッチごとに分割して接合する従来のオーガスクリュに比べて、接合部分を設けることによるスクリュの強度低下やスクリュ羽根の形状不整合等のオーガスクリュの駆動効率低下をもたらす要因が解消され、駆動効率が向上したオーガスクリュを提供できる。
また、オーガスクリュ5の製造装置1は、オーガ軸10を軸方向に前進させる進退部110と、オーガ軸10を軸回りに回転させる回転部120と、金属帯20をオーガ軸10の周面に接触するように送出する送出部130と、送出部130により送出される金属帯20のオーガ軸10との接触面を溶接する溶接部140と、回転部120によりオーガ軸を回転させて、溶接部140により溶接される金属帯20を湾曲させるとともに、進退部110によりオーガ軸10を前進させてオーガ軸10に螺旋状に巻回する制御部500等と、を備える。
そして、製造装置1によると、オーガ軸10の周面に送出される金属帯20が溶接されオーガ軸10を回転させて金属帯20を湾曲させるとともに、オーガ軸10を前進させることで、金属帯20を螺旋状に変形させてオーガ軸10に巻回することができる。つまり、製造装置1では、スクリュをピッチごとに分割して形成させずに、金属帯20を用いて連続的にスクリュを形成することが出来る。
したがって、本発明は、スクリュ同士を接合する手間がなく、かつ、接合部分がもたらす不都合性を解消し得るオーガスクリュの製造装置であるといえる。
【0040】
また、進退部110は、オーガ軸10の下方で、オーガ軸10と平行に配置されたスピンドル111と、スピンドル111に軸着されるスピンドルナット部112b(スピンドル用ナット)と、スピンドルナット部112bと連結され、オーガ軸10を上面に載置し、オーガ軸10の長手方向に敷設されたレール113上に配置される台車112と、スピンドルを回転させる進退部モータ114と、を有する。
つまり、スピンドル,スピンドル用ナット,モータを用いた簡易な構成でオーガ軸(台車)を進退させることが可能であるので、 オーガスクリュのピッチ間隔を容易に調整することができるとともに製造コストを抑えることができる。
【0041】
また、製造装置1は、スピンドル111の下方の長手方向所定位置に設けられ、半円筒部材161がスピンドル111と当接して当該スピンドル111を水平に支持し、台車112が突起物162と接触する際に押し下げられるスピンドル支持部160を備える。
つまり、スピンドル支持部160によると、台車112がX方向に進退しスピンドル支持部160の上方を通過する際、台車112の下面と突起物162の接触によってシリンダー163が下方に縮退され、下側に押し下がる。そのため、スピンドル支持部160は台車112のX方向の進退を妨げることなくスピンドル111を水平に支持する。
【0042】
また、製造装置1は、金属帯20を送出する角度を変更するピッチ角調整部132と、オーガ軸10を進退させる速度を変更する進退部モータ114と、を有する。
つまり、制御部500により、上記ピッチ角調整部132による角度、及び、オーガ軸10の進退速度を変更することにより、スクリュのピッチ角P2及びピッチ長P1を適宜に調整することが可能となる。
【0043】
また、オーガスクリュ5の第1の製造方法は、金属帯20をオーガ軸10の周面に接触するように送出する送出工程と、送出される金属帯20のオーガ軸10との接触面を溶接する溶接工程と、オーガ軸10を回転させて、溶接される金属帯20を湾曲させるとともに、オーガ軸10を軸方向に前進させて、当該金属帯20をオーガ軸10に螺旋状に巻回する巻回工程と、からなる。
つまり、製造装置1によると、スクリュをピッチごとに分割して形成させずに、金属帯20を用いて連続的にスクリュを形成することが出来る。
したがって、本発明は、スクリュ同士を接合する手間がなく、かつ、接合部分がもたらす不都合性を解消し得るオーガスクリュの製造方法であるといえる。
【0044】
「実施形態2」
次に、製造装置1によるオーガスクリュ5の第2の製造方法について説明する。
第1の製造方法では、ステップS3で示すように、金属帯20をオーガ軸10に巻回する段階で、金属帯20のオーガ軸10との接触面を溶接装置141,142を用いて本溶接しているが、金属帯20をオーガ軸10に巻回する段階では仮溶接を行い、巻回された後に本溶接するようにしてもよい。このオーガスクリュ5の第2の製造方法を図5のフローチャートを用いて説明する。なお、上記仮溶接をするにあたっては、溶接装置141,142に示す溶接ロボットを設ける必要は無く、手動式の溶接器等で足りる。
【0045】
(オーガスクリュの第2の製造方法)
まず、所定の軸径からなるオーガ軸10の端部をジョイント部112a等により固着し、制御部500により、スクリュ(オーガ軸10に巻回する金属帯20)のピッチ間隔P1及びピッチ角P2を調整する(ステップS11)。
【0046】
次いで、基盤131a上の支持壁部131c間に金属帯20をオーガ軸10に向けて突出させた状態で配置して、ハンドル131dを回転させて挟持し、金属帯20を先端が送出位置Sとなるようにオーガ軸10の周面に接触させ、金属帯20の送出を行う(ステップS12;送出工程)。
【0047】
次いで、手動式の溶接器等を用いて、ステップS12における金属帯20のオーガ軸10との接触面を仮溶接する(ステップS13;仮溶接工程)。
【0048】
次いで、制御部500により、回転部モータ121を回転させてオーガ軸10を軸回りに回転させ、ステップS13にて仮溶接された金属帯20をオーガ軸10の周面に沿うように湾曲させる。さらに、進退部モータ114をステップS11にて調整されたピッチ間隔P1に相当する速度で回転させてオーガ軸10を軸方向に進退させ、金属帯20を螺旋状に巻回する(ステップS14;巻回工程)。
【0049】
次いで、金属帯20がオーガ軸10に螺旋状に巻回された後に、ステップS13にて仮溶接された接触面を本溶接する(ステップS15;本溶接工程)。
【0050】
以上、本実施形態に係るオーガスクリュの第2の製造方法によると、 金属帯20をオーガ軸10の周面に接触するように送出する送出工程と、送出される金属帯20のオーガ軸10との接触面を仮溶接する仮溶接工程と、オーガ軸10を回転させて、仮溶接される金属帯20を湾曲させるとともに、オーガ軸10を軸方向に前進させて、当該金属帯20をオーガ軸10に螺旋状に巻回する巻回工程と、金属帯20がオーガ軸10に螺旋状に巻回された後に仮溶接された接触面を本溶接する本溶接工程と、からなる。
つまり、第1の製造方法に比べて、本溶接前に仮溶接を行うため、オーガスクリュの製造に要する時間は長くなるが、溶接熱による溶接箇所の変形が予想される場合は、別工程にすることによって変形を低減させることができる。
【0051】
なお、本発明の範囲は上記実施形態に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
【符号の説明】
【0052】
1 製造装置
5 オーガスクリュ
10 オーガ軸
20 金属帯
110 進退部(進退手段、巻回手段)
111 スピンドル
111a スピンドル端部
112 台車
112a ジョイント部
112b スピンドルナット部
112c 車輪部
112d ローラ部
112e 基体
112f 端曲げジグ
113 レール
114 進退部モータ(モータ、進退速度変更手段、回転速度変更手段)
115 減速機
120 回転部(回転手段、巻回手段)
121 回転部モータ
122 第1減速機
123 第2減速機
124 回転軸
130 送出部(送出手段、巻回手段)
131 金属帯支持部
131a 基盤
131a1 上基盤
131a2 下基盤
131b 回動体
131c 支持壁部
131d ハンドル
131e 押さえローラ
132 ピッチ角調整部(角度変更手段)
132a ピッチ角調整モータ
132b 減速機
140 溶接部(溶接手段)
141,142 溶接装置
141a,142a 回動支点
141b,142b 回動支点
141c,142c 回動支点
141d,142d 溶接トーチ
141e,142e アーム
160 スピンドル支持部(スピンドル支持機構)
161 半円筒部材(支持部)
162 突起物
163 シリンダ
500 制御部(回転手段、送出手段、溶接手段、巻回手段、進退速度変更手段、回転速度変更手段、角度変更手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーガ軸と、
前記オーガ軸に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯からなるスクリュと、を備えていることを特徴とするオーガスクリュ。
【請求項2】
請求項1記載のオーガスクリュにおいて、
前記金属帯は、厚さが16mm以上の鋼板であることを特徴とするオーガスクリュ。
【請求項3】
オーガ軸と前記オーガ軸に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯からなるスクリュとで構成されるオーガスクリュの製造装置において、
前記オーガ軸を軸方向に進退させる進退手段と、
前記オーガ軸を軸回りに回転させる回転手段と、
前記金属帯を前記オーガ軸の周面に接触するように送出する送出手段と、
前記送出手段により送出される金属帯の前記オーガ軸との接触面を溶接する溶接手段と、
前記回転手段により前記オーガ軸を回転させて、前記送出手段により、前記金属帯を前記オーガ軸の周面に接触、湾曲させて、前記溶接手段により接触面を溶接するとともに、前記進退手段により前記オーガ軸を前進させて前記オーガ軸に螺旋状に巻回する巻回手段と、
を備えることを特徴とするオーガスクリュの製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載のオーガスクリュの製造装置において、
前記進退手段は、
前記オーガ軸の下方で、前記オーガ軸と平行に配置されたスピンドルと、
前記スピンドルに軸着されるスピンドル用ナットと、
前記スピンドル用ナットと連結され、前記オーガ軸の上面に載置し、前記オーガ軸の長手方向に敷設されたレール上に配置される台車と、
前記スピンドルを回転させるモータと、
を有することを特徴とするオーガスクリュの製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載のオーガスクリュの製造装置において、
前記スピンドル下方の長手方向所定位置に設けられ、支持部が前記スピンドルと当接して当該スピンドルを平行に支持し、前記台車が突起物と接触する際に下降するスピンドル支持機構を備えることを特徴とするオーガスクリュの製造装置。
【請求項6】
請求項3〜5の何れか1項に記載のオーガスクリュの製造装置において、
前記巻回手段は、
前記送出手段による前記金属帯を送出する角度を変更する角度変更手段と、
前記進退手段による前記オーガ軸を進退させる速度を変更する進退速度変更手段と、
前記回転手段による前記オーガ軸を回転させる速度を変更する回転速度変更手段と、
を有することを特徴とするオーガスクリュの製造装置。
【請求項7】
オーガ軸と前記オーガ軸に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯からなるスクリュとで構成されるオーガスクリュの製造方法において、
前記金属帯を前記オーガ軸の周面に接触するように送出する送出工程と、
前記送出される金属帯の前記オーガ軸との接触面を溶接する溶接工程と、
前記オーガ軸を回転させて、溶接される金属帯を湾曲させるとともに、前記オーガ軸を
軸方向に前進させて、当該金属帯を前記オーガ軸に螺旋状に巻回する巻回工程と、
を備えることを特徴とするオーガスクリュの製造方法。
【請求項8】
オーガ軸と前記オーガ軸に連続的に巻き付けられて接合された長尺な金属帯からなるスクリュとで構成されるオーガスクリュの製造方法において、
前記金属帯を前記オーガ軸の周面に接触するように送出する送出工程と、
前記オーガ軸を回転させて、送出される金属帯を前記オーガ軸の周面に接触、湾曲させて、接触面を溶接するとともに、前記オーガ軸を軸方向に前進させて、当該金属帯を前記オーガ軸に螺旋状に巻回する巻回工程と、
を備えることを特徴とするオーガスクリュの製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のオーガスクリュの製造方法において、
前記オーガ軸を回転させるとともに、前記オーガ軸を軸方向に進退させて、金属帯と前記オーガ軸の接触面および金属帯の保護面を保護溶接する保護溶接工程を備えることを特徴とするオーガスクリュの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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