オーディオシステム
【課題】聴取位置の前方に左右非対称に左右スピーカが配置されている場合であっても、単純な構成により左右対称な音場を形成すること、高音質のサラウンド効果を有する音場を形成すること等。
【解決手段】オーディオシステム1は、聴取位置2を基準として前方左右非対称な位置に配置された左スピーカ15L及び右スピーカ15Rと、聴取位置2の近傍に配置されるとともに、聴取位置2の右側又は左側のうち、聴取位置2に近い右スピーカ15Rが配置された右側に配置される補助スピーカ15Sと、その各スピーカ15L,15R,15Sに入力するオーディオ信号を処理する補正部14とを有し、補正部14は、各スピーカ15L,15R,15Sの位置関係に基づいて、聴取位置2に近い右スピーカ15R及び補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源15Vを形成する。
【解決手段】オーディオシステム1は、聴取位置2を基準として前方左右非対称な位置に配置された左スピーカ15L及び右スピーカ15Rと、聴取位置2の近傍に配置されるとともに、聴取位置2の右側又は左側のうち、聴取位置2に近い右スピーカ15Rが配置された右側に配置される補助スピーカ15Sと、その各スピーカ15L,15R,15Sに入力するオーディオ信号を処理する補正部14とを有し、補正部14は、各スピーカ15L,15R,15Sの位置関係に基づいて、聴取位置2に近い右スピーカ15R及び補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源15Vを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載用オーディオシステム等のオーディオシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な2チャンネルステレオシステムでは、例えば聴取位置からフロント側に左右フロントスピーカを規定間隔で配置した場合に、左右スピーカを2等辺三角形の底辺両端の頂点位置に対応させた場合に、残りの頂点位置及びその近傍が、良好な聴取位置であるとされている。しかし良好な聴取位置から右側又は左側にずれた位置では、各スピーカから聴取位置までの距離が異なるために、音像定位が定まらない、音の拡がりが左右方向で異なる、等の不具合が生じる場合がある。
【0003】
特に、自動車等の車両内に設けられたオーディオシステムでは、車両の機能、安全面、操作性、空調関係、取付強度、等の要因により、左右スピーカの配置位置が、例えば左右フロントドアや、正面インストルメントパネルの両サイド等に制限されるとともに、聴取位置が、運転席や助手席等のように、左右スピーカの配置位置に対して右側又は左側にずれた位置に制限されるために、上記不具合が生じやすい。
【0004】
そのため音場を補正する音響システムが知られている。例えば特許文献1に開示されている音響システムでは、視聴者が着席するシートにスピーカを設けるとともに視聴者の後方空間にスピーカを配置して、頭部音響伝達関数等による特殊な補正処理を行い、視聴者の前方空間に仮想音源を形成することで音場を改善する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−61997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した音響システムでは、視聴者の前方空間に仮想音源を形成する特殊な補正処理を行う必要がある。
【0007】
また、聴取位置を基準として前方左右非対称に左右スピーカを配置した場合に、例えば左右スピーカのうち聴取位置に近い右スピーカからの再生音と、他方の左スピーカからの再生音とが、聴取位置にて位相が一致するように、単純に右スピーカに入力するオーディオ信号を遅延補正を行うと、聴取位置と右スピーカの仮想音源の距離と、聴取位置と左スピーカ間の距離とが一致するが、聴取位置では左側にねじれた音場となり、詳細には左側は広く右は狭い歪んだ音場が形成され、サラウンド効果等の音質が低減するという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、聴取位置の前方に左右非対称に左右スピーカが配置されている場合であっても、単純な構成により左右対称な音場を形成すること、高音質のサラウンド効果を有する音場を形成すること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0010】
請求項1に記載の発明は、聴取位置を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ及び右スピーカが配置されているオーディオシステムであって、前記聴取位置の近傍に配置されるとともに、前記聴取位置の右側又は左側のうち、前記聴取位置に近い前記右スピーカ又は前記左スピーカが配置された一方の側に配置される補助スピーカと、前記左スピーカ、前記右スピーカ、及び前記補助スピーカに入力するオーディオ信号を処理する処理部とを有し、前記処理部は、前記左スピーカ、前記右スピーカ、及び前記補助スピーカの位置関係に基づいて、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち前記聴取位置に近いスピーカ、及び前記補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源を形成して、聴取位置を基準として前方左右対称な音場を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るオーディオシステムは、聴取位置を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ及び右スピーカが配置されているオーディオシステムであって、聴取位置の近傍に配置されるとともに、聴取位置の右側又は左側のうち、聴取位置に近い右スピーカ又は左スピーカが配置された一方の側に配置される補助スピーカと、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカに入力するオーディオ信号を処理する処理部とを有し、処理部は、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカの位置関係に基づいて、左スピーカ及び右スピーカのうち聴取位置に近いスピーカ、及び補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源を形成して、聴取位置を基準として前方左右対称な音場を形成する。
【0012】
上記構成のオーディオシステムでは、処理部が、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカの位置関係に基づいて、左スピーカ及び右スピーカのうち聴取位置に近いスピーカ、及び補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源を形成し、当該仮想音源と、聴取位置から遠いスピーカから発音された音波により、聴取位置を基準として前方左右対称な音場を形成するので、単純な構成により左右対称な音場を形成することができる。また高音質のサラウンド効果を有する音場を形成することができる。
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るオーディオシステムを説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るオーディオシステム1を採用した車載用オーディオシステムを説明するための図である。図1(A)は車載用オーディオシステムを採用した車両100の上面図であり、図1(B)は図1(A)に示したオーディオシステム1の機能ブロック図である。
【0015】
図2は図1に示したオーディオシステム1のスピーカの配置位置を説明するための図である。図2(A)は、左右フロントスピーカ及び補助スピーカの配置位置を説明するための上面図であり、図2(B)は側面図であり、図2(C)はスピーカの配置位置の他の具体例を説明するための図である。図3は、図1に示したオーディオシステム1の聴取位置と各スピーカと仮想音源との位置関係を説明するための上面図である。
【0016】
なお、図1(A),図3において、図に向かって左側が車両100の前方(フロント側)に相当し、右側が車両100の後方(リア側)に相当し、図に向かって上側が車両100の右側に相当し、下側が車両の左側に相当する。
【0017】
本実施形態に係るオーディオシステム1は、図1(A),(B)に示すように、通信部11、オーディオ装置12、オーディオデータ処理部13、補正部14、スピーカ15、入力回路16、および制御回路17を有する。このオーディオデータ処理部13、補正部14、及び制御回路17は、本発明に係る処理部の一実施形態に相当する。
【0018】
本実施形態に係るスピーカ15は、図1(A),(B)に示すように、左フロントスピーカ(左スピーカ)15L、右フロントスピーカ(右スピーカ)15R、及び補助スピーカ15Sを有する。左スピーカ15Lは、左ch(チャンネル)音源に相当し、右スピーカ15Rは、右ch音源に相当する。
【0019】
オーディオシステム1は、聴取位置2を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ15L及び右スピーカ15Rが配置されている。例えば車両100内にスピーカ15を配置する場合、車両100の機能、安全面、操作性、空調関係、取付強度、等の要因により配置位置が決定される。
【0020】
本実施形態に係るオーディオシステム1では、例えば図1(A),図1(B),図2(A)〜図2(C)に示すように、左スピーカ15L、および右スピーカ15Rが、例えば正面インストルメントパネル101の両サイドに配置されている。また車両100には、複数の座席102、詳細には前部右側に設けられた運転席102D、前部左側に設けられた助手席102P、および後部座席102Bが設けられている。本実施形態に係る聴取位置2としては、車両100内に設けられた運転席102Dに着座した聴取者103の耳の位置に相当する。つまり聴取位置2を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ15L、および右スピーカ15Rが配置されている。言い換えると、聴取位置2が右スピーカ15Rや左スピーカ15Lの配置位置に対して右側又は左側にずれた位置に設定されている。
【0021】
補助スピーカ15Sは、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rと比べて、車両100内の聴取者103が着座する座席位置の近傍に配置される。また、補助スピーカ15Sは、聴取位置2の右側又は左側のうち、聴取位置2に近い右スピーカ15Rが配置された一方の側、本実施形態では右側に配置される。例えば補助スピーカ15Sは、図2(A)〜図2(C)に示すように、車両100内の聴取位置2近傍の座席102、車両天井104、車両ドア105等の規定位置に配置されている。補助スピーカ15Sの配置位置は、上記形態に限られるものではなく、本発明に係る機能を実現できれば任意の位置に配置してもよい。
【0022】
通信部11は、例えば制御回路17の制御により、外部オーディオ装置(不図示)と各種無線方式や有線方式によりデータ通信を行い、外部オーディオ装置から受信したソース信号(デジタルオーディオデータ)S0を、オーディオデータ処理部13に出力する。
【0023】
オーディオ装置12は、例えばDVD(Digital Versatile Disc),CD(Compact Disc),ハードディスク,半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されているオーディオデータを再生可能な装置であり、そのオーディオデータを入力ソース信号S0としてオーディオデータ処理部13に出力する。
【0024】
ソース信号S0は、例えばLch(左チャンネル)およびRch(右チャンネル)の2チャンネルのオーディオ信号である。
【0025】
オーディオデータ処理部13は、制御回路17の制御により、通信部11やオーディオ装置12から入力されたソース信号(デジタルオーディオデータ)S0に基づいて所定のデータ処理を行い、例えば2チャンネルのオーディオ信号S1(S1L,S1R)を生成して補正部14に出力する。
【0026】
[補正部14]
補正部14は、オーディオデータ処理部13から入力された信号S1(S1L,S1R)に本発明に係る処理を施してオーディオ信号S2(S2L,S2L,S2S)を生成し、その信号S2を左スピーカ15L、右スピーカ15R、および補助スピーカ15Sに入力する。
【0027】
詳細には、補正部14は、左スピーカ15L、右スピーカ15R、及び補助スピーカ15Sの位置関係に基づいて、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2に近いスピーカ(本実施形態では右スピーカ15R)、及び補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源15Vを形成し、当該仮想音源15Vと、聴取位置2から遠いスピーカ(左スピーカ15L)から発音された音波により、聴取位置2を基準として前方左右対称な音場を形成する。仮想音源15Vは本発明に係る仮想音源の一実施形態に相当する。
【0028】
補正部14は、例えば図1(B)に示すように、遅延部141、遅延部142、レベル補正部143、デジタル/アナログコンバータ(DAC)40(40L,40R,40S)、増幅器41(41L,41R,41S)を有する。遅延部141は本発明の第1の遅延部の一実施形態に相当し、遅延部142は本発明の第2の遅延部の一実施形態に相当する。レベル補正部143は本発明に係るレベル補正部の一実施形態に相当する。
【0029】
本実施形態に係る補正部14は、左スピーカ15Lと右スピーカ15Rのうち、聴取位置2から遠いスピーカ(本実施形態では左スピーカ15L)に入力するオーディオ信号には、遅延処理およびレベル補正処理を行わない。詳細には、補正部14は、オーディオデータ処理部13から入力された左チャンネルのオーディオ信号S1LをDAC140Lによりアナログ信号に変換して、そのアナログ信号を増幅器41にて増幅し、オーディオ信号S2Lとして左スピーカ15に出力する。
【0030】
遅延部141は、聴取位置2と右スピーカ15R及び左スピーカ15Lの位置関係に基づいて、聴取位置2に近い右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号を遅延する。詳細には、遅延部141は、オーディオデータ処理部13から入力された右チャンネルのオーディオ信号S1Rに、規定された遅延処理を施してオーディオ信号S141を生成する。より詳細には遅延部141は、左スピーカ15Lから発音された音波と、右スピーカ15Rから発音された音波とが、聴取位置2にて位相が一致するように、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2に近いスピーカ(本実施形態では右スピーカ15R)に入力するオーディオ信号に遅延処理を施して、オーディオ信号S141を生成する。
【0031】
DAC40Rは、遅延部141により生成されたオーディオ信号(デジタル信号)S141をアナログ信号に変換する。増幅器41Rは、そのアナログ信号を増幅して、オーディオ信号S2Rとして右スピーカ15Rに入力する。
【0032】
聴取位置2にて位相が一致するように遅延処理を行うとは、左スピーカ15Lから聴取位置2までの音波の伝搬時間と、右スピーカ15Rから聴取位置2までの音波の伝搬時間との時間差だけ、伝搬時間の短いほうの右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号を遅延させることである。
【0033】
上記遅延部141を設けることにより、例えば図1,図3に示すように、Rch音源としての仮想音源(一次元仮想音源)15RVが形成される。詳細には、仮想音源15RVは、聴取位置2から右スピーカ15Rに向かった直線50の延長上に形成されるとともに、聴取位置2と左スピーカ15L間の距離r1と、聴取位置2と仮想音源15RV間の距離r2とが同じ距離となるように形成される。
【0034】
しかし単純に遅延部141のみを設けただけでは、聴取位置2と左スピーカ15L間の距離r1と、聴取位置2と仮想音源15RV間の距離r2とが一致するが、聴取位置2では左側は広く右は狭い歪んだ音場が形成されてしまう。
【0035】
本発明では、左スピーカ15L、右スピーカ15R、補助スピーカ15Sの位置関係に基づいて、本発明に係る補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して、仮想音源15RVを補正して仮想音源15Vを形成する。
【0036】
詳細には、補正部14の遅延部142は、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2から遠いスピーカ(本実施形態では左スピーカ15L)と、聴取位置2と、補助スピーカ15Sとの位置関係に基づいて、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号を遅延する。
【0037】
より詳細には、遅延部142は、オーディオデータ処理部13から入力された右チャンネルのオーディオ信号S1Rに、規定された遅延処理を施してオーディオ信号S142を生成する。
【0038】
具体的には、遅延部142は、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2から遠いスピーカ(本実施形態では左スピーカ15L)から発音された音波と、補助スピーカ15Sから発音された音波とが、聴取位置2にて位相が一致するように、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理を施して、オーディオ信号S142を生成する。
【0039】
聴取位置2にて位相が一致するように遅延処理を行うとは、左スピーカ15Lから聴取位置2までの音波の伝搬時間と、補助スピーカ15Sから聴取位置2までの音波の伝搬時間との時間差だけ、伝搬時間の短いほうの補助スピーカ15に入力するオーディオ信号を遅延させることである。
【0040】
上記遅延部142を設けることにより、例えば図1,図3に示すように、仮想音源15SVが形成される。詳細には、仮想音源15SVは、聴取位置2から補助スピーカ15Sに向かった直線51の延長上に形成されるとともに、聴取位置2と左スピーカ15L間の距離r1と、聴取位置2と仮想音源15RV間の距離r3とが同じ距離となるように形成される。
【0041】
レベル補正部143は、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号のレベルを補正する。詳細には、レベル補正部143は、聴取位置2にて、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2に近いスピーカ(本実施形態では左スピーカ15L)から発音された音波と、補助スピーカ15Sから発音された音波との合成により、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lに対して左右対称な位置に仮想音源15Vを形成するように、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号のレベルを補正する。
【0042】
上記レベル補正部143を設けることにより、例えば図1,図3に示すように、右スピーカ15Rと補助スピーカ15Sの振幅のレベルを調整することにより、仮想音源15Vが形成される。仮想音源15Vは、左スピーカ15Lから右スピーカ15Rに向かった直線52の延長上に形成されるとともに、聴取位置2と左スピーカ15L間の距離r1と、聴取位置2と仮想音源15V間の距離r4とが同じ距離となるように形成される。また上記構成により、左スピーカ15Lと仮想音源15Vは、対称軸としての直線53から等距離となるように配置されている。
【0043】
DAC40Sは、遅延部142およびレベル補正部143により遅延処理およびレベル補正処理が施されたオーディオ信号(デジタル信号)S1Rをアナログ信号に変換する。増幅器41Sは、そのアナログ信号を増幅して、オーディオ信号S2Sとして補助スピーカ15Sに入力する。
【0044】
つまり図1,図3に示すように、聴取位置2を基準として前方に向かって直線53を設けた場合(聴取位置2を通り直線52に対して直交する直線53を設けた場合)、直線53に対して左右対称な位置に、左スピーカ(Lch音源)15Lと、Rch仮想音源15Vとが形成される。
【0045】
入力回路16は、例えばスイッチ,ボタン,リモートコントローラ,マウス,ボード等の操作入力装置、マイクロフォン等が挙げられ、各種信号S16を制御回路17に出力する。
【0046】
制御回路17は、装置全体を統括的に制御する。制御回路17は、例えばマイクロフォンや操作入力装置等により構成される入力回路16から入力された信号S16に基づいてオーディオ信号S1に対して、車両100内の音響環境に応じた本発明に係る処理を施すように、補正部14を制御する。詳細には、制御回路17は、上記制御を行なわせる制御信号CTL17を補正部14に出力する。
【0047】
また、制御回路17は、例えばセンター定位を規定するために、左スピーカ15L、右スピーカ15R、及び補助スピーカ15Sによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定する。つまり左スピーカ15L及び仮想音源15Vからの左右バランスを調整してセンター定位を規定する。本実施形態に係る制御回路17は、補正部14の増幅器41の増幅率を調節して、各スピーカによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定する機能を実現する。
【0048】
制御回路17及び補正部14は、本発明に係る左右バランス調整部の一実施形態に相当する。
【0049】
次に、オーディオシステム1の動作を簡単に説明する。
1.Rch音源(右スピーカ15R)は、Lch音源(左スピーカ15L)と同位相となるように遅延補正してオーディオ信号を再生することで、仮想音源15RVが、聴取位置2とRch音源軸上のLch音源と等距離位置に設定する。
【0050】
2.補助スピーカ15Sは、本実施形態では聴取位置2の右側近傍に配置して、Lch音源と同位相となるように遅延補正してオーディオ信号を再生する。
【0051】
3.Rch音源から再生される音と、補助スピーカ15Sから再生される音は、同位相であるから、再生レベルを調整することで、特性を変化させることなく、Lch音源とRch音源の軸上で、且つLch音源と左右対称位置にRch仮想音源15Vを形成することができる。この際、必要に応じて、左右のレベルバランス調整を行うことでセンター定位を規定して、聴取位置2を基準とした左右対称のステレオ音場を形成することができる。
【0052】
次に、上述した構成のオーディオシステム1の動作を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
図4は、図1に示したオーディオシステム1の動作を説明するための図である。詳細には図4(A)はLchオーディオ信号S1L(S2L)の一具体例を示す図である。縦軸は信号レベルを示し、横軸は時間を示す。図4(B)は左スピーカ15Lにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図である。
【0054】
図4(C)はRchオーディオ信号S1Rの一具体例を示す図である。図4(D)は遅延部141を介して右スピーカ15Rに入力されるオーディオ信号S2Rを示す図である。図4(E)は右スピーカ15Rにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図である。
【0055】
図4(F)は遅延部142及びレベル補正部143を介して補助スピーカ15Sに入力されるオーディオ信号S2Sを示す図である。図4(G)は補助スピーカ15Sにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図である。図4(H)は右スピーカ15R及び補助スピーカ15Sにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された合成波のレベルを示す図である。
【0056】
先ず、オーディオデータ処理部13は、通信部11やオーディオ装置12からソース信号S0が入力されると、入力ソース信号(デジタルオーディオデータ)S0に基づいて所定のデータ処理を行い、例えば2チャンネルのオーディオ信号S1(S1L,S1R)を生成して補正部14に出力する。
【0057】
補正部14では、オーディオデータ処理部13から入力されたLchオーディオ信号S1(S1L,S1R)に本発明に係る処理を施してオーディオ信号S2(S2L,S2L,S2S)を生成し、その信号S2を左スピーカ15L、右スピーカ15R、および補助スピーカ15Sに入力する。
【0058】
詳細には、オーディオデータ処理部13から入力されたLchオーディオ信号S1Lが、DAC40Lにてデジタル信号からアナログ信号に変換され、増幅器41によりオーディオ信号S2Lとして左スピーカ15Lに入力される。例えば図4(A)に示すように、オーディオ信号S2Lのレベルの立ち上がりを時間t0とする。また信号レベルS1Lのピークがピーク値ASLを示すとする。
【0059】
左スピーカ15Lはオーディオ信号S2Lに基づいて発音し、左スピーカ15Lにより発音された音波WLが伝搬して、図4(B)に示すように、聴取位置2にて検出される。この音波WLの伝搬時間TLは、左スピーカ15Lと聴取位置2間の距離r1により略規定される。聴取位置2では、時間t0から伝搬時間TL後の時間t1に、音波のレベルが立ち上がる。また音波のレベルWLのピークがピーク値AWLとなる。
【0060】
一方、オーディオデータ処理部13からRchオーディオ信号S1Rが入力される。この際、図4(C)に示すように、Rchオーディオ信号S1Rのレベルの立ち上がり時間t0は、図4(A)に示したLchオーディオ信号S1Lのレベルの立ち上がり時間t0と一致しているとする。つまり位相が一致してる。
【0061】
オーディオ信号S1Rは、図4(D)に示すように、遅延部141により予め規定された遅延時間DRだけ遅延処理が施されて、オーディオ信号S2Rとして、右スピーカ15Rに入力される。図4(D)に示すように、オーディオ信号S2Rのレベルの立ち上がりを時間tRとする。また信号レベルS1Rのピークがピーク値ASRとなる。
【0062】
右スピーカ15Rは、オーディオ信号S2Rに基づいて発音し、右スピーカ15Rにより発音された音波WRが伝搬して、図4(E)に示すように、聴取位置2にて検出される。この音波WRの伝搬時間TRは、右スピーカ15Rと聴取位置2間の距離r2により略規定される。聴取位置2では、時間tRから伝搬時間TR後の時間t1に、音波WRのレベルが立ち上がる。また音波のレベルWRのピークがピーク値AWRとなる。
【0063】
また、Rchオーディオ信号S1Rは、図4(F)に示すように、遅延部142により予め規定された遅延時間DSだけ遅延処理が施されて、レベル補正部143によりレベル補正処理が施されて、オーディオ信号S2Sとして、補助スピーカ15Sに入力される。図4(F)に示すように、オーディオ信号S2Sのレベルの立ち上がりを時間tSとする。また信号レベルS1Sのピークがピーク値ASSとなる。
【0064】
補助スピーカ15Sは、オーディオ信号S2Sに基づいて発音し、補助スピーカ15Sにより発音された音波WSが伝搬して、図4(G)に示すように、聴取位置2にて検出される。この音波WSの伝搬時間TSは、補助スピーカ15Sと聴取位置2間の距離により略規定される。聴取位置2では、時間tSから伝搬時間TS後の時間t1に、音波WRのレベルが立ち上がる。また音波WSのレベルのピークがピーク値AWSとなる。
【0065】
そして聴取位置2では、図4(H)に示すように、音波WR及び音波WSを検出する。この際、図4(H)に示すように、音波WR及び音波WSの位相が一致して、例えば時間t1に合成波(WR+WS)のレベルが立ち上がる。また、合成波(WR+WS)のレベルのピークがピーク値(AWR+AWS)となる。
【0066】
次に制御回路17は、必要に応じて、補正部14の増幅器41の増幅率を調節して、各スピーカ15R,15L,15Sによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定する。
【0067】
以上説明したように、オーディオシステム1は、聴取位置2を基準として前方左右非対称な位置に配置された左スピーカ15L及び右スピーカ15Rと、聴取位置2の近傍に配置されるとともに、聴取位置2の右側又は左側のうち、聴取位置2に近い右スピーカ15Rが配置された右側に配置される補助スピーカ15Sと、その左スピーカ15L,右スピーカ15R,及び補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号を処理する補正部14とを有し、補正部14は、左スピーカ15L,右スピーカ15R,補助スピーカ15Sの位置関係に基づいて、聴取位置2に近い右スピーカ15R、及び補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源15Vを形成し、この仮想音源15Vと、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lから発音された音波により、聴取位置2を基準として前方左右対称な音場を形成するので、聴取位置2の前方に左右非対称に左右スピーカ15L,15Rが配置されている場合であっても、単純な構成により左右対称な音場を形成することができる。また高音質のサラウンド効果を有する音場を形成することができる。
【0068】
また、制御回路17及び補正部14は、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定することで、より高精度に左右対称な音場を形成することができる。
【0069】
また、補正部14は、聴取位置2と左スピーカ15L及び右スピーカ15Rの位置関係に基づいて、聴取位置2に近い右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号を遅延する遅延部141と、聴取位置2、補助スピーカ15S、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lとの位置関係に基づいて、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号を遅延する遅延部142と、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号のレベルを補正するレベル補正部143とを備えるので、簡単な構成により、左右対称な音場を形成することができる。
【0070】
詳細には、遅延部141は、左スピーカ15Lから発音された音波と、右スピーカ15Rから発音された音波とが、聴取位置2にて位相が一致するように、聴取位置2に近い右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号に遅延処理を施し、遅延部142は、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lから発音された音波と、補助スピーカ15Sから発音された音波とが、聴取位置2にて位相が一致するように、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理を施し、レベル補正部143は、聴取位置2にて、聴取位置2に近い右スピーカ15Rから発音された音波と、補助スピーカ15Sから発音された音波とにより、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lに対して左右対称な位置に仮想音源15Vを形成するように、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号のレベルを補正するので、簡単な構成により、左右対称な音場を形成することができる。
【0071】
また、補正部14は、少なくとも2チャンネルのオーディオ信号のうち一方のチャンネルのオーディオ信号を、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lに入力し、2チャンネルのオーディオ信号のうち他方のチャンネルのオーディオ信号を、遅延部142及びレベル補正部143を介して補助スピーカ15Sに入力するとともに、当該他方のチャンネルのオーディオ信号を、遅延部142を介して聴取位置2に近い右スピーカ15Rに入力するので、左右非対称に配置された左右スピーカ15L,15Rが2チャンネルのオーディオ信号に応じて発音する場合であっても、左右対称な音場を形成することができる。
【0072】
特に、本発明に係るオーディオシステムを上記車載用オーディオシステム1に採用することで、車両100内の例えば座席位置にて、左右対称な音場を形成することができる。詳細には、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rが、車両100内の聴取者が着座する座席位置を基準として前方左右非対称な位置に配置され、補助スピーカ15Sが、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rと比べて、車両100内の聴取者が着座する座席位置の近傍に配置され、補正部14が車両100内の音響環境に応じてオーディオ信号に処理を施すので、車両100内の座席位置に着座した聴取者の聴取位置にて、左右対称な音場を形成することができる。
【0073】
また補助スピーカ15Sを、車両100内の聴取位置2近傍の座席、車両ドア、車両天井などの所定の位置に配置することで、簡単に本発明に係るオーディオシステム1を実現することができる。
【0074】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、上述した実施形態ではデジタルオーディオデータを入力ソース信号(オーディオ信号)として、そのデジタルオーディオデータを処理するオーディオシステム1を説明したが、この形態に限られるものではない。例えばオーディオシステム1は、アナログ信号を入力ソース信号(オーディオ信号)として、そのオーディオ信号に本発明に係る処理を施してもよい。
【0075】
また上述した実施形態では、遅延部142の後段にレベル補正部143を設けたが、この形態に限られるものではない。例えば逆にレベル補正部143の後段に遅延部142を設けてもよい。
【0076】
上述した実施形態では、右座席(運転席)に着座する聴取者の近傍に補助スピーカ15Sを設けたが、この形態に限られるものではない。
【0077】
例えば、左座席に着座する聴取者の近傍に補助スピーカ15Sを設けてもよい。この際には補助スピーカ15Sは、聴取位置の左側に設ける。また、処理部の処理についは、上記実施形態とは左右逆の処理を行う。
【0078】
また上述した実施形態では、制御回路17が増幅器41(41L,41R,41S)の増幅度を調整して、左スピーカ15L、右スピーカ15R、補助スピーカ15Sによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定したが、この形態に限られるものではない。
【0079】
例えば図5に示すように、補正部14aとして、右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号にレベル補正処理を行うレベル補正部144を設け、制御回路17aがレベル補正部143,144によるレベル補正値を制御することで、左スピーカ15L、右スピーカ15R、補助スピーカ15Sによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定してもよい。
【0080】
また上述した実施形態では、左スピーカ15L,右スピーカ15R,補助スピーカ15Sを設けたが、この形態に限られるものではない。例えば図6に示すように、4つ以上のスピーカ、例えばフロント左スピーカ15FL、リア左スピーカ15RL、フロント右スピーカFR、及びリア右スピーカRRを設け、補正部14bとして各スピーカに入力するオーディオ信号S1(S1FL,S1RL,S1FR,S1RR)それぞれに本発明に係る処理を施す、遅延部1401〜1404、レベル補正部1405〜1408、DAC40(40FL,40RL,40FR,40RR)、増幅器41(41FL,41RL,41FR,41RR)を設けててもよい。この実施形態では車両100に4つのスピーカが予め設けられている場合に、上記補正部14b,制御回路17bを設けることで、本発明に係る機能を簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオーディオシステム1を採用した車載用オーディオシステムを説明するための図である。(A)は車載用オーディオシステムを採用した車両100の上面図であり、(B)は(A)に示したオーディオシステム1の機能ブロック図である。
【図2】図1に示したオーディオシステム1のスピーカの配置位置を説明するための図である。(A)は左右フロントスピーカ及び補助スピーカの配置位置を説明するための上面図であり、(B)は側面図であり、(C)はスピーカの配置位置の他の具体例を説明するための図である。
【図3】図1に示したオーディオシステム1の聴取位置と各スピーカと仮想音源との位置関係を説明するための上面図である。
【図4】図1に示したオーディオシステム1の動作を説明するための図である。(A)はLchオーディオ信号S1L(S2L)の一具体例を示す図であり、(B)はスピーカ15Lにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図であり、(C)はRchオーディオ信号S1Rの一具体例を示す図であり、(D)は遅延部141を介して右スピーカ15Rに入力されるオーディオ信号S2Rを示す図であり、(E)は右スピーカ15Rにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図であり、(F)は遅延部142及びレベル補正部143を介して補助スピーカ15Sに入力されるオーディオ信号S2Sを示す図であり、(G)は補助スピーカ15Sにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図であり、(H)は右スピーカ15R及び補助スピーカ15Sにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された合成波のレベルを示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るオーディオシステム1aを説明するための機能ブロック図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るオーディオシステム1bを説明するための機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
1 オーディオシステム
2 聴取位置
11 通信部
12 オーディオ装置
13 オーディオデータ処理部
14 補正部
15 スピーカ
15L 左フロントスピーカ(左スピーカ)
15R 右フロントスピーカ(右スピーカ)
15S 補助スピーカ
15V 仮想音源(二次元仮想音源)
15RV 仮想音源(一次元仮想音源)
15SV 仮想音源(補助仮想音源)
16 入力回路
17 制御回路
40,40L,40R,40S デジタル/アナログコンバータ(DAC)
41,41L,41R,41S 増幅器
100 車両
101 インストルメントパネル
102 座席
102B 後部座席
102D 運転席(前方右側座席)
102P 助手席(前方左側座席)
103 聴取者
104 車両天井
105 車両ドア
141 遅延部(第1の遅延部)
142 遅延部(第2の遅延部)
143 レベル補正部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車載用オーディオシステム等のオーディオシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な2チャンネルステレオシステムでは、例えば聴取位置からフロント側に左右フロントスピーカを規定間隔で配置した場合に、左右スピーカを2等辺三角形の底辺両端の頂点位置に対応させた場合に、残りの頂点位置及びその近傍が、良好な聴取位置であるとされている。しかし良好な聴取位置から右側又は左側にずれた位置では、各スピーカから聴取位置までの距離が異なるために、音像定位が定まらない、音の拡がりが左右方向で異なる、等の不具合が生じる場合がある。
【0003】
特に、自動車等の車両内に設けられたオーディオシステムでは、車両の機能、安全面、操作性、空調関係、取付強度、等の要因により、左右スピーカの配置位置が、例えば左右フロントドアや、正面インストルメントパネルの両サイド等に制限されるとともに、聴取位置が、運転席や助手席等のように、左右スピーカの配置位置に対して右側又は左側にずれた位置に制限されるために、上記不具合が生じやすい。
【0004】
そのため音場を補正する音響システムが知られている。例えば特許文献1に開示されている音響システムでは、視聴者が着席するシートにスピーカを設けるとともに視聴者の後方空間にスピーカを配置して、頭部音響伝達関数等による特殊な補正処理を行い、視聴者の前方空間に仮想音源を形成することで音場を改善する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−61997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した音響システムでは、視聴者の前方空間に仮想音源を形成する特殊な補正処理を行う必要がある。
【0007】
また、聴取位置を基準として前方左右非対称に左右スピーカを配置した場合に、例えば左右スピーカのうち聴取位置に近い右スピーカからの再生音と、他方の左スピーカからの再生音とが、聴取位置にて位相が一致するように、単純に右スピーカに入力するオーディオ信号を遅延補正を行うと、聴取位置と右スピーカの仮想音源の距離と、聴取位置と左スピーカ間の距離とが一致するが、聴取位置では左側にねじれた音場となり、詳細には左側は広く右は狭い歪んだ音場が形成され、サラウンド効果等の音質が低減するという問題点がある。
【0008】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、聴取位置の前方に左右非対称に左右スピーカが配置されている場合であっても、単純な構成により左右対称な音場を形成すること、高音質のサラウンド効果を有する音場を形成すること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の各独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
【0010】
請求項1に記載の発明は、聴取位置を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ及び右スピーカが配置されているオーディオシステムであって、前記聴取位置の近傍に配置されるとともに、前記聴取位置の右側又は左側のうち、前記聴取位置に近い前記右スピーカ又は前記左スピーカが配置された一方の側に配置される補助スピーカと、前記左スピーカ、前記右スピーカ、及び前記補助スピーカに入力するオーディオ信号を処理する処理部とを有し、前記処理部は、前記左スピーカ、前記右スピーカ、及び前記補助スピーカの位置関係に基づいて、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち前記聴取位置に近いスピーカ、及び前記補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源を形成して、聴取位置を基準として前方左右対称な音場を形成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係るオーディオシステムは、聴取位置を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ及び右スピーカが配置されているオーディオシステムであって、聴取位置の近傍に配置されるとともに、聴取位置の右側又は左側のうち、聴取位置に近い右スピーカ又は左スピーカが配置された一方の側に配置される補助スピーカと、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカに入力するオーディオ信号を処理する処理部とを有し、処理部は、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカの位置関係に基づいて、左スピーカ及び右スピーカのうち聴取位置に近いスピーカ、及び補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源を形成して、聴取位置を基準として前方左右対称な音場を形成する。
【0012】
上記構成のオーディオシステムでは、処理部が、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカの位置関係に基づいて、左スピーカ及び右スピーカのうち聴取位置に近いスピーカ、及び補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源を形成し、当該仮想音源と、聴取位置から遠いスピーカから発音された音波により、聴取位置を基準として前方左右対称な音場を形成するので、単純な構成により左右対称な音場を形成することができる。また高音質のサラウンド効果を有する音場を形成することができる。
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係るオーディオシステムを説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係るオーディオシステム1を採用した車載用オーディオシステムを説明するための図である。図1(A)は車載用オーディオシステムを採用した車両100の上面図であり、図1(B)は図1(A)に示したオーディオシステム1の機能ブロック図である。
【0015】
図2は図1に示したオーディオシステム1のスピーカの配置位置を説明するための図である。図2(A)は、左右フロントスピーカ及び補助スピーカの配置位置を説明するための上面図であり、図2(B)は側面図であり、図2(C)はスピーカの配置位置の他の具体例を説明するための図である。図3は、図1に示したオーディオシステム1の聴取位置と各スピーカと仮想音源との位置関係を説明するための上面図である。
【0016】
なお、図1(A),図3において、図に向かって左側が車両100の前方(フロント側)に相当し、右側が車両100の後方(リア側)に相当し、図に向かって上側が車両100の右側に相当し、下側が車両の左側に相当する。
【0017】
本実施形態に係るオーディオシステム1は、図1(A),(B)に示すように、通信部11、オーディオ装置12、オーディオデータ処理部13、補正部14、スピーカ15、入力回路16、および制御回路17を有する。このオーディオデータ処理部13、補正部14、及び制御回路17は、本発明に係る処理部の一実施形態に相当する。
【0018】
本実施形態に係るスピーカ15は、図1(A),(B)に示すように、左フロントスピーカ(左スピーカ)15L、右フロントスピーカ(右スピーカ)15R、及び補助スピーカ15Sを有する。左スピーカ15Lは、左ch(チャンネル)音源に相当し、右スピーカ15Rは、右ch音源に相当する。
【0019】
オーディオシステム1は、聴取位置2を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ15L及び右スピーカ15Rが配置されている。例えば車両100内にスピーカ15を配置する場合、車両100の機能、安全面、操作性、空調関係、取付強度、等の要因により配置位置が決定される。
【0020】
本実施形態に係るオーディオシステム1では、例えば図1(A),図1(B),図2(A)〜図2(C)に示すように、左スピーカ15L、および右スピーカ15Rが、例えば正面インストルメントパネル101の両サイドに配置されている。また車両100には、複数の座席102、詳細には前部右側に設けられた運転席102D、前部左側に設けられた助手席102P、および後部座席102Bが設けられている。本実施形態に係る聴取位置2としては、車両100内に設けられた運転席102Dに着座した聴取者103の耳の位置に相当する。つまり聴取位置2を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ15L、および右スピーカ15Rが配置されている。言い換えると、聴取位置2が右スピーカ15Rや左スピーカ15Lの配置位置に対して右側又は左側にずれた位置に設定されている。
【0021】
補助スピーカ15Sは、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rと比べて、車両100内の聴取者103が着座する座席位置の近傍に配置される。また、補助スピーカ15Sは、聴取位置2の右側又は左側のうち、聴取位置2に近い右スピーカ15Rが配置された一方の側、本実施形態では右側に配置される。例えば補助スピーカ15Sは、図2(A)〜図2(C)に示すように、車両100内の聴取位置2近傍の座席102、車両天井104、車両ドア105等の規定位置に配置されている。補助スピーカ15Sの配置位置は、上記形態に限られるものではなく、本発明に係る機能を実現できれば任意の位置に配置してもよい。
【0022】
通信部11は、例えば制御回路17の制御により、外部オーディオ装置(不図示)と各種無線方式や有線方式によりデータ通信を行い、外部オーディオ装置から受信したソース信号(デジタルオーディオデータ)S0を、オーディオデータ処理部13に出力する。
【0023】
オーディオ装置12は、例えばDVD(Digital Versatile Disc),CD(Compact Disc),ハードディスク,半導体メモリ等の記憶媒体に記憶されているオーディオデータを再生可能な装置であり、そのオーディオデータを入力ソース信号S0としてオーディオデータ処理部13に出力する。
【0024】
ソース信号S0は、例えばLch(左チャンネル)およびRch(右チャンネル)の2チャンネルのオーディオ信号である。
【0025】
オーディオデータ処理部13は、制御回路17の制御により、通信部11やオーディオ装置12から入力されたソース信号(デジタルオーディオデータ)S0に基づいて所定のデータ処理を行い、例えば2チャンネルのオーディオ信号S1(S1L,S1R)を生成して補正部14に出力する。
【0026】
[補正部14]
補正部14は、オーディオデータ処理部13から入力された信号S1(S1L,S1R)に本発明に係る処理を施してオーディオ信号S2(S2L,S2L,S2S)を生成し、その信号S2を左スピーカ15L、右スピーカ15R、および補助スピーカ15Sに入力する。
【0027】
詳細には、補正部14は、左スピーカ15L、右スピーカ15R、及び補助スピーカ15Sの位置関係に基づいて、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2に近いスピーカ(本実施形態では右スピーカ15R)、及び補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源15Vを形成し、当該仮想音源15Vと、聴取位置2から遠いスピーカ(左スピーカ15L)から発音された音波により、聴取位置2を基準として前方左右対称な音場を形成する。仮想音源15Vは本発明に係る仮想音源の一実施形態に相当する。
【0028】
補正部14は、例えば図1(B)に示すように、遅延部141、遅延部142、レベル補正部143、デジタル/アナログコンバータ(DAC)40(40L,40R,40S)、増幅器41(41L,41R,41S)を有する。遅延部141は本発明の第1の遅延部の一実施形態に相当し、遅延部142は本発明の第2の遅延部の一実施形態に相当する。レベル補正部143は本発明に係るレベル補正部の一実施形態に相当する。
【0029】
本実施形態に係る補正部14は、左スピーカ15Lと右スピーカ15Rのうち、聴取位置2から遠いスピーカ(本実施形態では左スピーカ15L)に入力するオーディオ信号には、遅延処理およびレベル補正処理を行わない。詳細には、補正部14は、オーディオデータ処理部13から入力された左チャンネルのオーディオ信号S1LをDAC140Lによりアナログ信号に変換して、そのアナログ信号を増幅器41にて増幅し、オーディオ信号S2Lとして左スピーカ15に出力する。
【0030】
遅延部141は、聴取位置2と右スピーカ15R及び左スピーカ15Lの位置関係に基づいて、聴取位置2に近い右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号を遅延する。詳細には、遅延部141は、オーディオデータ処理部13から入力された右チャンネルのオーディオ信号S1Rに、規定された遅延処理を施してオーディオ信号S141を生成する。より詳細には遅延部141は、左スピーカ15Lから発音された音波と、右スピーカ15Rから発音された音波とが、聴取位置2にて位相が一致するように、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2に近いスピーカ(本実施形態では右スピーカ15R)に入力するオーディオ信号に遅延処理を施して、オーディオ信号S141を生成する。
【0031】
DAC40Rは、遅延部141により生成されたオーディオ信号(デジタル信号)S141をアナログ信号に変換する。増幅器41Rは、そのアナログ信号を増幅して、オーディオ信号S2Rとして右スピーカ15Rに入力する。
【0032】
聴取位置2にて位相が一致するように遅延処理を行うとは、左スピーカ15Lから聴取位置2までの音波の伝搬時間と、右スピーカ15Rから聴取位置2までの音波の伝搬時間との時間差だけ、伝搬時間の短いほうの右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号を遅延させることである。
【0033】
上記遅延部141を設けることにより、例えば図1,図3に示すように、Rch音源としての仮想音源(一次元仮想音源)15RVが形成される。詳細には、仮想音源15RVは、聴取位置2から右スピーカ15Rに向かった直線50の延長上に形成されるとともに、聴取位置2と左スピーカ15L間の距離r1と、聴取位置2と仮想音源15RV間の距離r2とが同じ距離となるように形成される。
【0034】
しかし単純に遅延部141のみを設けただけでは、聴取位置2と左スピーカ15L間の距離r1と、聴取位置2と仮想音源15RV間の距離r2とが一致するが、聴取位置2では左側は広く右は狭い歪んだ音場が形成されてしまう。
【0035】
本発明では、左スピーカ15L、右スピーカ15R、補助スピーカ15Sの位置関係に基づいて、本発明に係る補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して、仮想音源15RVを補正して仮想音源15Vを形成する。
【0036】
詳細には、補正部14の遅延部142は、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2から遠いスピーカ(本実施形態では左スピーカ15L)と、聴取位置2と、補助スピーカ15Sとの位置関係に基づいて、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号を遅延する。
【0037】
より詳細には、遅延部142は、オーディオデータ処理部13から入力された右チャンネルのオーディオ信号S1Rに、規定された遅延処理を施してオーディオ信号S142を生成する。
【0038】
具体的には、遅延部142は、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2から遠いスピーカ(本実施形態では左スピーカ15L)から発音された音波と、補助スピーカ15Sから発音された音波とが、聴取位置2にて位相が一致するように、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理を施して、オーディオ信号S142を生成する。
【0039】
聴取位置2にて位相が一致するように遅延処理を行うとは、左スピーカ15Lから聴取位置2までの音波の伝搬時間と、補助スピーカ15Sから聴取位置2までの音波の伝搬時間との時間差だけ、伝搬時間の短いほうの補助スピーカ15に入力するオーディオ信号を遅延させることである。
【0040】
上記遅延部142を設けることにより、例えば図1,図3に示すように、仮想音源15SVが形成される。詳細には、仮想音源15SVは、聴取位置2から補助スピーカ15Sに向かった直線51の延長上に形成されるとともに、聴取位置2と左スピーカ15L間の距離r1と、聴取位置2と仮想音源15RV間の距離r3とが同じ距離となるように形成される。
【0041】
レベル補正部143は、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号のレベルを補正する。詳細には、レベル補正部143は、聴取位置2にて、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rのうち聴取位置2に近いスピーカ(本実施形態では左スピーカ15L)から発音された音波と、補助スピーカ15Sから発音された音波との合成により、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lに対して左右対称な位置に仮想音源15Vを形成するように、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号のレベルを補正する。
【0042】
上記レベル補正部143を設けることにより、例えば図1,図3に示すように、右スピーカ15Rと補助スピーカ15Sの振幅のレベルを調整することにより、仮想音源15Vが形成される。仮想音源15Vは、左スピーカ15Lから右スピーカ15Rに向かった直線52の延長上に形成されるとともに、聴取位置2と左スピーカ15L間の距離r1と、聴取位置2と仮想音源15V間の距離r4とが同じ距離となるように形成される。また上記構成により、左スピーカ15Lと仮想音源15Vは、対称軸としての直線53から等距離となるように配置されている。
【0043】
DAC40Sは、遅延部142およびレベル補正部143により遅延処理およびレベル補正処理が施されたオーディオ信号(デジタル信号)S1Rをアナログ信号に変換する。増幅器41Sは、そのアナログ信号を増幅して、オーディオ信号S2Sとして補助スピーカ15Sに入力する。
【0044】
つまり図1,図3に示すように、聴取位置2を基準として前方に向かって直線53を設けた場合(聴取位置2を通り直線52に対して直交する直線53を設けた場合)、直線53に対して左右対称な位置に、左スピーカ(Lch音源)15Lと、Rch仮想音源15Vとが形成される。
【0045】
入力回路16は、例えばスイッチ,ボタン,リモートコントローラ,マウス,ボード等の操作入力装置、マイクロフォン等が挙げられ、各種信号S16を制御回路17に出力する。
【0046】
制御回路17は、装置全体を統括的に制御する。制御回路17は、例えばマイクロフォンや操作入力装置等により構成される入力回路16から入力された信号S16に基づいてオーディオ信号S1に対して、車両100内の音響環境に応じた本発明に係る処理を施すように、補正部14を制御する。詳細には、制御回路17は、上記制御を行なわせる制御信号CTL17を補正部14に出力する。
【0047】
また、制御回路17は、例えばセンター定位を規定するために、左スピーカ15L、右スピーカ15R、及び補助スピーカ15Sによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定する。つまり左スピーカ15L及び仮想音源15Vからの左右バランスを調整してセンター定位を規定する。本実施形態に係る制御回路17は、補正部14の増幅器41の増幅率を調節して、各スピーカによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定する機能を実現する。
【0048】
制御回路17及び補正部14は、本発明に係る左右バランス調整部の一実施形態に相当する。
【0049】
次に、オーディオシステム1の動作を簡単に説明する。
1.Rch音源(右スピーカ15R)は、Lch音源(左スピーカ15L)と同位相となるように遅延補正してオーディオ信号を再生することで、仮想音源15RVが、聴取位置2とRch音源軸上のLch音源と等距離位置に設定する。
【0050】
2.補助スピーカ15Sは、本実施形態では聴取位置2の右側近傍に配置して、Lch音源と同位相となるように遅延補正してオーディオ信号を再生する。
【0051】
3.Rch音源から再生される音と、補助スピーカ15Sから再生される音は、同位相であるから、再生レベルを調整することで、特性を変化させることなく、Lch音源とRch音源の軸上で、且つLch音源と左右対称位置にRch仮想音源15Vを形成することができる。この際、必要に応じて、左右のレベルバランス調整を行うことでセンター定位を規定して、聴取位置2を基準とした左右対称のステレオ音場を形成することができる。
【0052】
次に、上述した構成のオーディオシステム1の動作を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0053】
図4は、図1に示したオーディオシステム1の動作を説明するための図である。詳細には図4(A)はLchオーディオ信号S1L(S2L)の一具体例を示す図である。縦軸は信号レベルを示し、横軸は時間を示す。図4(B)は左スピーカ15Lにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図である。
【0054】
図4(C)はRchオーディオ信号S1Rの一具体例を示す図である。図4(D)は遅延部141を介して右スピーカ15Rに入力されるオーディオ信号S2Rを示す図である。図4(E)は右スピーカ15Rにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図である。
【0055】
図4(F)は遅延部142及びレベル補正部143を介して補助スピーカ15Sに入力されるオーディオ信号S2Sを示す図である。図4(G)は補助スピーカ15Sにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図である。図4(H)は右スピーカ15R及び補助スピーカ15Sにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された合成波のレベルを示す図である。
【0056】
先ず、オーディオデータ処理部13は、通信部11やオーディオ装置12からソース信号S0が入力されると、入力ソース信号(デジタルオーディオデータ)S0に基づいて所定のデータ処理を行い、例えば2チャンネルのオーディオ信号S1(S1L,S1R)を生成して補正部14に出力する。
【0057】
補正部14では、オーディオデータ処理部13から入力されたLchオーディオ信号S1(S1L,S1R)に本発明に係る処理を施してオーディオ信号S2(S2L,S2L,S2S)を生成し、その信号S2を左スピーカ15L、右スピーカ15R、および補助スピーカ15Sに入力する。
【0058】
詳細には、オーディオデータ処理部13から入力されたLchオーディオ信号S1Lが、DAC40Lにてデジタル信号からアナログ信号に変換され、増幅器41によりオーディオ信号S2Lとして左スピーカ15Lに入力される。例えば図4(A)に示すように、オーディオ信号S2Lのレベルの立ち上がりを時間t0とする。また信号レベルS1Lのピークがピーク値ASLを示すとする。
【0059】
左スピーカ15Lはオーディオ信号S2Lに基づいて発音し、左スピーカ15Lにより発音された音波WLが伝搬して、図4(B)に示すように、聴取位置2にて検出される。この音波WLの伝搬時間TLは、左スピーカ15Lと聴取位置2間の距離r1により略規定される。聴取位置2では、時間t0から伝搬時間TL後の時間t1に、音波のレベルが立ち上がる。また音波のレベルWLのピークがピーク値AWLとなる。
【0060】
一方、オーディオデータ処理部13からRchオーディオ信号S1Rが入力される。この際、図4(C)に示すように、Rchオーディオ信号S1Rのレベルの立ち上がり時間t0は、図4(A)に示したLchオーディオ信号S1Lのレベルの立ち上がり時間t0と一致しているとする。つまり位相が一致してる。
【0061】
オーディオ信号S1Rは、図4(D)に示すように、遅延部141により予め規定された遅延時間DRだけ遅延処理が施されて、オーディオ信号S2Rとして、右スピーカ15Rに入力される。図4(D)に示すように、オーディオ信号S2Rのレベルの立ち上がりを時間tRとする。また信号レベルS1Rのピークがピーク値ASRとなる。
【0062】
右スピーカ15Rは、オーディオ信号S2Rに基づいて発音し、右スピーカ15Rにより発音された音波WRが伝搬して、図4(E)に示すように、聴取位置2にて検出される。この音波WRの伝搬時間TRは、右スピーカ15Rと聴取位置2間の距離r2により略規定される。聴取位置2では、時間tRから伝搬時間TR後の時間t1に、音波WRのレベルが立ち上がる。また音波のレベルWRのピークがピーク値AWRとなる。
【0063】
また、Rchオーディオ信号S1Rは、図4(F)に示すように、遅延部142により予め規定された遅延時間DSだけ遅延処理が施されて、レベル補正部143によりレベル補正処理が施されて、オーディオ信号S2Sとして、補助スピーカ15Sに入力される。図4(F)に示すように、オーディオ信号S2Sのレベルの立ち上がりを時間tSとする。また信号レベルS1Sのピークがピーク値ASSとなる。
【0064】
補助スピーカ15Sは、オーディオ信号S2Sに基づいて発音し、補助スピーカ15Sにより発音された音波WSが伝搬して、図4(G)に示すように、聴取位置2にて検出される。この音波WSの伝搬時間TSは、補助スピーカ15Sと聴取位置2間の距離により略規定される。聴取位置2では、時間tSから伝搬時間TS後の時間t1に、音波WRのレベルが立ち上がる。また音波WSのレベルのピークがピーク値AWSとなる。
【0065】
そして聴取位置2では、図4(H)に示すように、音波WR及び音波WSを検出する。この際、図4(H)に示すように、音波WR及び音波WSの位相が一致して、例えば時間t1に合成波(WR+WS)のレベルが立ち上がる。また、合成波(WR+WS)のレベルのピークがピーク値(AWR+AWS)となる。
【0066】
次に制御回路17は、必要に応じて、補正部14の増幅器41の増幅率を調節して、各スピーカ15R,15L,15Sによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定する。
【0067】
以上説明したように、オーディオシステム1は、聴取位置2を基準として前方左右非対称な位置に配置された左スピーカ15L及び右スピーカ15Rと、聴取位置2の近傍に配置されるとともに、聴取位置2の右側又は左側のうち、聴取位置2に近い右スピーカ15Rが配置された右側に配置される補助スピーカ15Sと、その左スピーカ15L,右スピーカ15R,及び補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号を処理する補正部14とを有し、補正部14は、左スピーカ15L,右スピーカ15R,補助スピーカ15Sの位置関係に基づいて、聴取位置2に近い右スピーカ15R、及び補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源15Vを形成し、この仮想音源15Vと、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lから発音された音波により、聴取位置2を基準として前方左右対称な音場を形成するので、聴取位置2の前方に左右非対称に左右スピーカ15L,15Rが配置されている場合であっても、単純な構成により左右対称な音場を形成することができる。また高音質のサラウンド効果を有する音場を形成することができる。
【0068】
また、制御回路17及び補正部14は、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定することで、より高精度に左右対称な音場を形成することができる。
【0069】
また、補正部14は、聴取位置2と左スピーカ15L及び右スピーカ15Rの位置関係に基づいて、聴取位置2に近い右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号を遅延する遅延部141と、聴取位置2、補助スピーカ15S、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lとの位置関係に基づいて、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号を遅延する遅延部142と、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号のレベルを補正するレベル補正部143とを備えるので、簡単な構成により、左右対称な音場を形成することができる。
【0070】
詳細には、遅延部141は、左スピーカ15Lから発音された音波と、右スピーカ15Rから発音された音波とが、聴取位置2にて位相が一致するように、聴取位置2に近い右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号に遅延処理を施し、遅延部142は、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lから発音された音波と、補助スピーカ15Sから発音された音波とが、聴取位置2にて位相が一致するように、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号に遅延処理を施し、レベル補正部143は、聴取位置2にて、聴取位置2に近い右スピーカ15Rから発音された音波と、補助スピーカ15Sから発音された音波とにより、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lに対して左右対称な位置に仮想音源15Vを形成するように、補助スピーカ15Sに入力するオーディオ信号のレベルを補正するので、簡単な構成により、左右対称な音場を形成することができる。
【0071】
また、補正部14は、少なくとも2チャンネルのオーディオ信号のうち一方のチャンネルのオーディオ信号を、聴取位置2から遠い左スピーカ15Lに入力し、2チャンネルのオーディオ信号のうち他方のチャンネルのオーディオ信号を、遅延部142及びレベル補正部143を介して補助スピーカ15Sに入力するとともに、当該他方のチャンネルのオーディオ信号を、遅延部142を介して聴取位置2に近い右スピーカ15Rに入力するので、左右非対称に配置された左右スピーカ15L,15Rが2チャンネルのオーディオ信号に応じて発音する場合であっても、左右対称な音場を形成することができる。
【0072】
特に、本発明に係るオーディオシステムを上記車載用オーディオシステム1に採用することで、車両100内の例えば座席位置にて、左右対称な音場を形成することができる。詳細には、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rが、車両100内の聴取者が着座する座席位置を基準として前方左右非対称な位置に配置され、補助スピーカ15Sが、左スピーカ15L及び右スピーカ15Rと比べて、車両100内の聴取者が着座する座席位置の近傍に配置され、補正部14が車両100内の音響環境に応じてオーディオ信号に処理を施すので、車両100内の座席位置に着座した聴取者の聴取位置にて、左右対称な音場を形成することができる。
【0073】
また補助スピーカ15Sを、車両100内の聴取位置2近傍の座席、車両ドア、車両天井などの所定の位置に配置することで、簡単に本発明に係るオーディオシステム1を実現することができる。
【0074】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、上述した実施形態ではデジタルオーディオデータを入力ソース信号(オーディオ信号)として、そのデジタルオーディオデータを処理するオーディオシステム1を説明したが、この形態に限られるものではない。例えばオーディオシステム1は、アナログ信号を入力ソース信号(オーディオ信号)として、そのオーディオ信号に本発明に係る処理を施してもよい。
【0075】
また上述した実施形態では、遅延部142の後段にレベル補正部143を設けたが、この形態に限られるものではない。例えば逆にレベル補正部143の後段に遅延部142を設けてもよい。
【0076】
上述した実施形態では、右座席(運転席)に着座する聴取者の近傍に補助スピーカ15Sを設けたが、この形態に限られるものではない。
【0077】
例えば、左座席に着座する聴取者の近傍に補助スピーカ15Sを設けてもよい。この際には補助スピーカ15Sは、聴取位置の左側に設ける。また、処理部の処理についは、上記実施形態とは左右逆の処理を行う。
【0078】
また上述した実施形態では、制御回路17が増幅器41(41L,41R,41S)の増幅度を調整して、左スピーカ15L、右スピーカ15R、補助スピーカ15Sによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定したが、この形態に限られるものではない。
【0079】
例えば図5に示すように、補正部14aとして、右スピーカ15Rに入力するオーディオ信号にレベル補正処理を行うレベル補正部144を設け、制御回路17aがレベル補正部143,144によるレベル補正値を制御することで、左スピーカ15L、右スピーカ15R、補助スピーカ15Sによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定してもよい。
【0080】
また上述した実施形態では、左スピーカ15L,右スピーカ15R,補助スピーカ15Sを設けたが、この形態に限られるものではない。例えば図6に示すように、4つ以上のスピーカ、例えばフロント左スピーカ15FL、リア左スピーカ15RL、フロント右スピーカFR、及びリア右スピーカRRを設け、補正部14bとして各スピーカに入力するオーディオ信号S1(S1FL,S1RL,S1FR,S1RR)それぞれに本発明に係る処理を施す、遅延部1401〜1404、レベル補正部1405〜1408、DAC40(40FL,40RL,40FR,40RR)、増幅器41(41FL,41RL,41FR,41RR)を設けててもよい。この実施形態では車両100に4つのスピーカが予め設けられている場合に、上記補正部14b,制御回路17bを設けることで、本発明に係る機能を簡単に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の第1実施形態に係るオーディオシステム1を採用した車載用オーディオシステムを説明するための図である。(A)は車載用オーディオシステムを採用した車両100の上面図であり、(B)は(A)に示したオーディオシステム1の機能ブロック図である。
【図2】図1に示したオーディオシステム1のスピーカの配置位置を説明するための図である。(A)は左右フロントスピーカ及び補助スピーカの配置位置を説明するための上面図であり、(B)は側面図であり、(C)はスピーカの配置位置の他の具体例を説明するための図である。
【図3】図1に示したオーディオシステム1の聴取位置と各スピーカと仮想音源との位置関係を説明するための上面図である。
【図4】図1に示したオーディオシステム1の動作を説明するための図である。(A)はLchオーディオ信号S1L(S2L)の一具体例を示す図であり、(B)はスピーカ15Lにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図であり、(C)はRchオーディオ信号S1Rの一具体例を示す図であり、(D)は遅延部141を介して右スピーカ15Rに入力されるオーディオ信号S2Rを示す図であり、(E)は右スピーカ15Rにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図であり、(F)は遅延部142及びレベル補正部143を介して補助スピーカ15Sに入力されるオーディオ信号S2Sを示す図であり、(G)は補助スピーカ15Sにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された音波のレベルを示す図であり、(H)は右スピーカ15R及び補助スピーカ15Sにより発音された音波が伝搬して聴取位置2にて検出された合成波のレベルを示す図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係るオーディオシステム1aを説明するための機能ブロック図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るオーディオシステム1bを説明するための機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0082】
1 オーディオシステム
2 聴取位置
11 通信部
12 オーディオ装置
13 オーディオデータ処理部
14 補正部
15 スピーカ
15L 左フロントスピーカ(左スピーカ)
15R 右フロントスピーカ(右スピーカ)
15S 補助スピーカ
15V 仮想音源(二次元仮想音源)
15RV 仮想音源(一次元仮想音源)
15SV 仮想音源(補助仮想音源)
16 入力回路
17 制御回路
40,40L,40R,40S デジタル/アナログコンバータ(DAC)
41,41L,41R,41S 増幅器
100 車両
101 インストルメントパネル
102 座席
102B 後部座席
102D 運転席(前方右側座席)
102P 助手席(前方左側座席)
103 聴取者
104 車両天井
105 車両ドア
141 遅延部(第1の遅延部)
142 遅延部(第2の遅延部)
143 レベル補正部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴取位置を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ及び右スピーカが配置されているオーディオシステムであって、
前記聴取位置の近傍に配置されるとともに、前記聴取位置の右側又は左側のうち、前記聴取位置に近い前記右スピーカ又は前記左スピーカが配置された一方の側に配置される補助スピーカと、
前記左スピーカ、前記右スピーカ、及び前記補助スピーカに入力するオーディオ信号を処理する処理部とを有し、
前記処理部は、前記左スピーカ、前記右スピーカ、及び前記補助スピーカの位置関係に基づいて、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち前記聴取位置に近いスピーカ、及び前記補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源を形成して、前記聴取位置を基準として前方左右対称な音場を形成することを特徴とするオーディオシステム。
【請求項2】
前記処理部は、前記聴取位置と前記左スピーカ及び前記右スピーカの位置関係に基づいて、前記聴取位置に近い前記右スピーカ又は前記左スピーカに入力するオーディオ信号を遅延する第1の遅延部と、
前記聴取位置、前記補助スピーカ、前記聴取位置から遠い前記左スピーカ又は前記右スピーカとの位置関係に基づいて、前記補助スピーカに入力するオーディオ信号を遅延する第2の遅延部と、
前記補助スピーカに入力するオーディオ信号のレベルを補正するレベル補正部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項3】
前記第1の遅延部は、前記左スピーカから発音された音波と、前記右スピーカから発音された音波とが、前記聴取位置にて位相が一致するように、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち聴取位置に近いスピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理を施し、
前記第2の遅延部は、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち前記聴取位置から遠いスピーカから発音された音波と、前記補助スピーカから発音された音波とが、前記聴取位置にて位相が一致するように、前記補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理を施し、
前記レベル補正部は、前記聴取位置にて、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち前記聴取位置に近いスピーカから発音された音波と、前記補助スピーカから発音された音波とにより、前記聴取位置から遠いスピーカに対して左右対称な位置に仮想音源を形成するように、前記補助スピーカに入力するオーディオ信号のレベルを補正することを特徴とする請求項2に記載のオーディオシステム。
【請求項4】
前記処理部は、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定する左右バランス調整部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項5】
前記処理部は、少なくとも2チャンネルのオーディオ信号のうち一方のチャンネルのオーディオ信号を、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち、前記聴取位置から遠いスピーカに入力し、
前記2チャンネルのオーディオ信号のうち他方のチャンネルのオーディオ信号を、前記第2の遅延部および前記レベル補正部を介して前記補助スピーカに入力するとともに、当該他方のチャンネルのオーディオ信号を、前記第1の遅延部を介して、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち、前記聴取位置に近いスピーカに入力することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のオーディオシステム。
【請求項6】
前記左スピーカ、及び前記右スピーカは、車両内の聴取者が着座する座席位置を基準として前方左右非対称な位置に配置され、
前記補助スピーカは、前記左スピーカ及び前記右スピーカと比べて、前記車両内の聴取者が着座する座席位置の近傍に配置され、
前記処理部は、前記車両内の音響環境に応じて前記オーディオ信号に前記処理を施すことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項7】
前記補助スピーカは、前記車両内の聴取位置近傍の座席、車両ドア、車両天井のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項1】
聴取位置を基準として前方左右非対称な位置に左スピーカ及び右スピーカが配置されているオーディオシステムであって、
前記聴取位置の近傍に配置されるとともに、前記聴取位置の右側又は左側のうち、前記聴取位置に近い前記右スピーカ又は前記左スピーカが配置された一方の側に配置される補助スピーカと、
前記左スピーカ、前記右スピーカ、及び前記補助スピーカに入力するオーディオ信号を処理する処理部とを有し、
前記処理部は、前記左スピーカ、前記右スピーカ、及び前記補助スピーカの位置関係に基づいて、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち前記聴取位置に近いスピーカ、及び前記補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理及びレベル補正処理を施して仮想音源を形成して、前記聴取位置を基準として前方左右対称な音場を形成することを特徴とするオーディオシステム。
【請求項2】
前記処理部は、前記聴取位置と前記左スピーカ及び前記右スピーカの位置関係に基づいて、前記聴取位置に近い前記右スピーカ又は前記左スピーカに入力するオーディオ信号を遅延する第1の遅延部と、
前記聴取位置、前記補助スピーカ、前記聴取位置から遠い前記左スピーカ又は前記右スピーカとの位置関係に基づいて、前記補助スピーカに入力するオーディオ信号を遅延する第2の遅延部と、
前記補助スピーカに入力するオーディオ信号のレベルを補正するレベル補正部とを備えることを特徴とする請求項1に記載のオーディオシステム。
【請求項3】
前記第1の遅延部は、前記左スピーカから発音された音波と、前記右スピーカから発音された音波とが、前記聴取位置にて位相が一致するように、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち聴取位置に近いスピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理を施し、
前記第2の遅延部は、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち前記聴取位置から遠いスピーカから発音された音波と、前記補助スピーカから発音された音波とが、前記聴取位置にて位相が一致するように、前記補助スピーカに入力するオーディオ信号に遅延処理を施し、
前記レベル補正部は、前記聴取位置にて、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち前記聴取位置に近いスピーカから発音された音波と、前記補助スピーカから発音された音波とにより、前記聴取位置から遠いスピーカに対して左右対称な位置に仮想音源を形成するように、前記補助スピーカに入力するオーディオ信号のレベルを補正することを特徴とする請求項2に記載のオーディオシステム。
【請求項4】
前記処理部は、左スピーカ、右スピーカ、及び補助スピーカによる再生レベルの左右バランスを調整してセンター定位を規定する左右バランス調整部を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項5】
前記処理部は、少なくとも2チャンネルのオーディオ信号のうち一方のチャンネルのオーディオ信号を、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち、前記聴取位置から遠いスピーカに入力し、
前記2チャンネルのオーディオ信号のうち他方のチャンネルのオーディオ信号を、前記第2の遅延部および前記レベル補正部を介して前記補助スピーカに入力するとともに、当該他方のチャンネルのオーディオ信号を、前記第1の遅延部を介して、前記左スピーカ及び前記右スピーカのうち、前記聴取位置に近いスピーカに入力することを特徴とする請求項3または請求項4に記載のオーディオシステム。
【請求項6】
前記左スピーカ、及び前記右スピーカは、車両内の聴取者が着座する座席位置を基準として前方左右非対称な位置に配置され、
前記補助スピーカは、前記左スピーカ及び前記右スピーカと比べて、前記車両内の聴取者が着座する座席位置の近傍に配置され、
前記処理部は、前記車両内の音響環境に応じて前記オーディオ信号に前記処理を施すことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のオーディオシステム。
【請求項7】
前記補助スピーカは、前記車両内の聴取位置近傍の座席、車両ドア、車両天井のいずれかに配置されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のオーディオシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2007−312081(P2007−312081A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−138837(P2006−138837)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]