説明

オーディオミキシング出力の可否を示すフラグを持った情報記録媒体、および、その再生装置、再生方法

【課題】BD−ROMでは主音声と付加音声あるいは効果音を合成するアプリケーションが実現可能であるが、合成により主音声の音質が劣化する場合があり、音質が劣化すると分かっていてもユーザーは合成を禁止する方法がない。
【解決手段】主音声と付加音声あるいは効果音の合成の許可・禁止を示すレジスタをプレーヤに設け、ユーザーの意図によりその状態を切り替得ることにより、音質を劣化させることなく主音声を出力する仕組みを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、BD−ROM等、映像データを記録した情報記録媒体、その再生装置及び再生方法に関し、特に、映像データとプログラムとを含むコンテンツの開発にプログラミング環境を導入する場合の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
映像データを記録した情報記録媒体の代表格は、DVD(以下、SD−DVDまたは単にDVDと称する)である。以降、従来のDVDについて説明する。
【0003】
図1は、SD−DVDの構造を示した図である。図1の下段に示すように、DVDディスク上にはリードインからリードアウトまでの間に論理アドレス空間が設けられ、論理アドレス空間の先頭からファイルシステムのボリューム情報が記録され、続いて映像音声などのアプリケーションデータが記録されている。
【0004】
ファイルシステムとは、ISO9660やUDF(Universal Disc Format)のことであり、ディスク上のデータをディレクトリまたはファイルと呼ばれる単位で表現する仕組みである。日常使っているPC(パーソナルコンピュータ)の場合でも、FATまたはNTFSと呼ばれるファイルシステムを通すことにより、ディレクトリやファイルという構造でハードディスクに記録されたデータがコンピュータ上で表現され、ユーザビリティを高めている。 SD−DVDの場合、UDF及びISO9660両方を使用しており(両方を合わせて「UDFブリッジ」と呼ぶ事がある)、UDFまたはISO9660どちらのファイルシステムドライバによってもデータの読み出し(ここで取り扱うDVDはパッケージメディア用のROMディスクであり、物理的に書き込みが不可能である)ができるようになっている。
【0005】
DVD上に記録されたデータは、UDFブリッジを通して、図1左上に示すようなディレクトリまたはファイルとして見ることができる。ルートディレクトリ(図中「ROOT」)の直下に「VIDEO_TS」と呼ばれるディレクトリが置かれ、ここにDVDのアプリケーションデータが記録されている。アプリケーションデータは、複数のファイルとして記録され、主なファイルとして以下のものがある。
【0006】
VIDEO_TS.IFO ディスク再生制御情報ファイル
VTS_01_0.IFO ビデオタイトルセット#1再生制御情報ファイル
VTS_01_0.VOB ビデオタイトルセット#1ストリームファイル
.....
【0007】
拡張子として2つの種類が存在する。「IFO」は再生制御情報が記録されたファイルであって、「VOB」はAVデータであるMPEGストリームが記録されたファイルである。再生制御情報とは、DVDで採用されたインタラクティビティ(ユーザの操作に応じて再生を動的に変化させる技術)を実現するための情報や、メタデータのようなタイトルやAVストリームに付属する情報などのことである。また、DVDでは一般的に再生制御情報のことをナビゲーション情報と呼ぶことがある。
【0008】
再生制御情報ファイルは、ディスク全体を管理する「VIDEO_TS.IFO」と、個々のビデオタイトルセット(DVDでは複数のタイトル、言い換えれば異なる映画や異なるバージョンの映画を1枚のディスクに記録することが可能である。)毎の再生制御情報である「VTS_01_0.IFO」がある。ここで、ファイル名ボディにある「01」はビデオタイトルセットの番号を示しており、例えば、ビデオタイトルセット#2の場合は、「VTS_02_0.IFO」となる。
【0009】
図1の右上部は、DVDのアプリケーション層でのDVDナビゲーション空間であり、前述した再生制御情報が展開された論理構造空間である。「VIDEO_TS.IFO」内の情報は、VMGI(VIDEO Manager Information)として、「VTS_01_0.IFO」または、他のビデオタイトルセット毎に存在する再生制御情報はVTSI(Video Title Set Information)としてDVDナビゲーション空間に展開される。
【0010】
VTSIの中にはPGC(Program Chain)と呼ばれる再生シーケンスの情報であるPGCI(Program Chain Information)が記述されている。PGCIは、Cellの集合とコマンドと呼ばれる一種のプログラミング情報によって構成されている。Cell自身はVOB(Video Objectの略であり、MPEGストリームを指す)の一部区間または全部区間の集合であり、Cellの再生は、当該VOBのCellによって指定された区間を再生することを意味している。
【0011】
コマンドは、DVDの仮想マシンによって処理されるものであり、ブラウザ上で実行されるJava(登録商標)スクリプトなどに近いものである。しかしながらJava(登録商標)スクリプトが論理演算の他にウィンドウやブラウザの制御(例えば、新しいブラウザのウィンドを開くなど)を行うのに対して、DVDのコマンドは、論理演算の他にAVタイトルの再生制御、例えば、再生するチャプタの指定などを実行するだけのものである点で異なっている。
【0012】
Cellはディスク上に記録されているVOBの開始及び終了アドレス(論理アドレス)をその内部情報として有しており、プレーヤは、Cellに記述されたVOBの開始及び終了アドレス情報を使ってデータの読み出し、再生を実行する。
【0013】
図1はAVストリーム中に埋め込まれているナビゲーション情報を説明する概略図である。SD−DVDの特長であるインタラクティビティは前述した「VIDEO_TS.IFO」や「VTS_01_0.IFO」などに記録されているナビゲーション情報だけによって実現されているのではなく、幾つかの重要な情報はナビゲーション・パック(ナビパックまたは、NV_PCKと称する)と呼ばれる専用キャリアを使いVOB内に映像、音声データと一緒に多重化されている。
【0014】
ここでは簡単なインタラクティビティの例としてメニューを説明する。メニュー画面上には、幾つかのボタンが現れ、夫々のボタンには当該ボタンが選択実行された時の処理が定義されている。また、メニュー上では一つのボタンが選択されており(ハイライトによって選択ボタン上に半透明色がオーバーレイされている)、ユーザは、リモコンの上下左右キーを使って、選択状態のボタンを上下左右の何れかのボタンに移動させることが出来る。リモコンの上下左右キーを使って、選択実行したいボタンまでハイライトを移動させ、決定する(決定キーを押す)ことによって対応するコマンドのプログラムが実行される。一般的には対応するタイトルやチャプタの再生がコマンドによって実行されている。
【0015】
図2の左上部はNV_PCK内の概要を示している。
NV_PCK内には、ハイライトカラー情報と個々のボタン情報などが含まれている。ハイライトカラー情報には、カラーパレット情報が記述され、オーバーレイ表示されるハイライトの半透明色が指定される。ボタン情報には、個々のボタンの位置情報である矩形領域情報と、当該ボタンから他のボタンへの移動情報(ユーザの上下左右キー操作夫々に対応する移動先ボタンの指定)と、ボタンコマンド情報(当該ボタンが決定された時に実行されるコマンド)が記述されている。
【0016】
メニュー上のハイライトは、図2の中央右上部に示すように、オーバーレイ画像として作られる。オーバーレイ画像は、ボタン情報の矩形領域情報にカラーパレット情報の色をつけた物である。このオーバーレイ画像は右部に示す背景画像と合成されて画面上に表示される。
【0017】
上述のようにして、DVDではメニューを実現している。また、何故、ナビゲーションデータの一部をNV_PCKを使ってストリーム中に埋め込んでいるのは、ストリームと同期して動的にメニュー情報を更新、例えば、映画再生中の途中5分〜10分の間にだけメニューが表示されるなど、同期タイミングが問題となりやすいアプリケーションの場合でも、問題なく実現できるようにしたためである。
【0018】
図3は、DVDのVOBのイメージである。図に示すように、映像、音声、字幕などのデータ(A段)は、MPEGシステム(ISO/IEC13818−1)規格に基づいて、パケット及びパック化し(B段)、夫々を多重化して1本のMPEGプログラムストリームにしている(C段)。また、前述した通りインタラクティブを実現するためのボタンコマンドを含んだNV_PCKも一緒に多重化をされている。
【0019】
MPEGシステムの多重化の特徴は、多重化する個々のデータは、そのデコード順に基づくビット列になっているが、多重化されるデータ間、即ち、映像、音声、字幕の間は必ずしも再生順、言い換えればデコード順に基づいてビット列が形成されているわけではない。これはMPEGシステムストリームのデコーダモデル(一般にSystem Target Decoder、またはSTDと呼ばれる(図3のD段))が多重化を解いた後に個々のエレメンタリーストリームに対応するデコーダバッファを持ち、デコードタイミングまでに一時的にデータを蓄積している事に由来している。このデコーダバッファは、個々のエレメンタリーストリーム毎にサイズが異なり、映像に対しては、232kB、音声に対しては4kB、字幕に対しては52kBを夫々有している。このため、各デコーダバッファへのデータ入力タイミングは個々のエレメンタリストリームで異なるため、MPEGシステムストリームとしてビット列を形成する順番と表示(デコード)されるタイミングにずれが生じている。
【0020】
即ち、映像データと並んで多重化されている字幕データが必ずしも同一タイミングでデコードされているわけでは無い。
【0021】
かかるDVDの構成は、以下の特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特許第2813245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
BD−ROMでは主音声と付加音声あるいは効果音を合成するアプリケーションが実現可能であるが、合成により主音声の音質が劣化する場合があり、音質が劣化すると分かっていてもユーザーは合成を禁止する方法がない。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記課題を解決するため本発明にかかる再生装置は、主音声と付加音声あるいは効果音の合成の許可・禁止を示すレジスタを設け、ユーザーの意図によりその状態を切り替得ることにより、音質を劣化させることなく主音声を出力する仕組みを提供する。
【発明の効果】
【0024】
上述した構成では、タイトルなどを管理単位としてアプリケーションの起動及び終了やデータの読み込み及び解放のタイミングが管理可能になるので、管理単位内で動作するアプリケーションを容易に管理でき、管理単位外に影響を及ぼさない仕組みを提供することが可能となる。
【0025】
ここで前記管理情報はメモリ上にデータ読み込むための優先度情報を備えていてもよい。管理情報としてデータ読み込み優先度を用いることにより、プレーヤに搭載されているメモリサイズに応じて読み込むデータサイズを調整することが可能となり、メモリサイズが小さい場合でもアプリケーションは動作保証され、メモリサイズが大きい場合はアプリケーションの動作や切替が早くなる利便性を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
(実施例1)
まず最初に本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0027】
(ディスク上の論理データ構造)
図4は、BD−ROM(以降、「BD」と称する場合もある)の構成、特にディスク媒体であるBDディスク(104)と、ディスクに記録されているデータ(101、102、103)の構成を示す図である。BDディスク(104)に記録されるデータは、AVデータ(103)と、AVデータに関する管理情報及びAV再生シーケンスなどのBD管理情報(102)と、インタラクティブを実現するBD再生プログラム(101)である。本実施の形態では、映画などのAVコンテンツを再生するためのAVアプリケーションを主眼においてのBDディスクの説明を行うが、BDディスクをCD−ROMやDVD−ROMの様にコンピュータ用途の記録媒体としてしようすることも当然のことながら可能である。 図5は、上述したBDディスクに記録されている論理データを示した図である。BDディスクは、他の光ディスク、例えばDVDやCDなどと同様にその内周から外周に向けてらせん状に記録領域を持ち、内周のリード・インと外周のリード・アウトの間に論理データを記録できる論理アドレス空間を有している。また、リード・インの内側にはBCA(Burst Cutting Area)と呼ばれるドライブでしか読み出せない特別な領域がある。この領域はアプリケーションから読み出せないため、例えば著作権保護技術などに利用されることがよくある。
【0028】
論理アドレス空間には、ファイルシステム情報(ボリューム)を先頭に映像データなどのアプリケーションデータが記録されている。ファイルシステムとは従来技術で説明した通り、UDFやISO9660などのことであり、通常のPCと同じように記録されている論理データをディレクトリ、ファイル構造を使って読み出しする事が可能になっている。
【0029】
本実施例の場合、BDディスク上のディレクトリ、ファイル構造は、ルートディレクトリ(ROOT)直下にBDVIDEOディレクトリが置かれている。このディレクトリはBD−ROMで扱うAVコンテンツや管理情報などのデータ(図4で説明した101、102、103)が記録されているディレクトリである。
【0030】
BDVIDEOディレクトリの下には、次の7種類のファイルが記録されている。
【0031】
BD.INFO(ファイル名固定)
「BD管理情報」の一つであり、BDディスク全体に関する情報を記録したファイルである。BDプレーヤは最初にこのファイルを読み出す。
【0032】
BD.PROG(ファイル名固定)
「BD再生プログラム」の一つであり、BDディスク全体に関わるプログラムを記録したファイルである。
【0033】
XXX.PL(「XXX」は可変、拡張子「PL」は固定)
「BD管理情報」の一つであり、シナリオを記録するプレイリスト(Play List)情報を記録したファイルである。プレイリスト毎に1つのファイルを持っている。
【0034】
XXX.PROG(「XXX」は可変、拡張子「PL」は固定)
「BD再生プログラム」の一つであり、前述したプレイリスト毎のプログラムを記録したファイルである。プレイリストとの対応はファイルボディ名(「XXX」が一致する)によって識別される。
【0035】
YYY.VOB(「YYY」は可変、拡張子「VOB」は固定)
「AVデータ」の一つであり、VOB(従来例で説明したVOBと同じ)を記録したファイルである。VOB毎に1つのファイルを持っている。
【0036】
YYY.VOBI(「YYY」は可変、拡張子「VOBI」は固定)
「BD管理情報」の一つであり、AVデータであるVOBに関わる管理情報を記録したファイルである。VOBとの対応はファイルボディ名(「YYY」が一致する)によって識別される。
【0037】
ZZZ.PNG(「ZZZ」は可変、拡張子「PNG」は固定)
「AVデータ」の一つであり、字幕及びメニューを構成するためのイメージデータPNG(W3Cによって標準化された画像フォーマットであり「ピング」と読む)を記録したファイルである。1つのPNGイメージ毎に1つのファイルを持つ。
【0038】
(プレーヤの構成)
次に、前述したBDディスクを再生するプレーヤの構成について図6及び図7を用いて説明する。
【0039】
図6は、プレーヤの大まかな機能構成を示すブロック図である。
BDディスク(201)上のデータは、光ピックアップ(202)を通して読み出される。読み出されたデータは夫々のデータの種類に応じて専用のメモリに記録される。BD再生プログラム(「BD.PROG」または「XXX.PROG」ファイルの中身)はプログラム記録メモリ(203)に、BD管理情報(「BD.INFO」、「XXX.PL」または「YYY.VOBI」)は管理情報記録メモリ(204)に、AVデータ(「YYY.VOB」または「ZZZ.PNG」)はAV記録メモリ(205)に夫々記録される。
【0040】
プログラム記録メモリ(203)に記録されたBD再生プログラムはプログラム処理部(206)によって、管理情報記録メモリ(204)に記録されたBD管理情報は管理情報処理部(207)によって、また、AV記録メモリ(205)に記録されたAVデータはプレゼンテーション処理部(208)によって夫々処理される。
【0041】
プログラム処理部(206)は、管理情報処理部(207)より再生するプレイリストの情報やプログラムの実行タイミングなどのイベント情報を受け取りプログラムの処理を行う。また、プログラムでは再生するプレイリストを動的に変える事が可能であり、この場合は管理情報処理部(207)に対してプレイリストの再生命令を送ることで実現する。プログラム処理部(206)は、ユーザからのイベント、即ちリモコンキーからのリクエストを受け、ユーザイベントに対応するプログラムがある場合は、実行処理する。
【0042】
管理情報処理部(207)は、プログラム処理部(206)の指示を受け、対応するプレイリスト及びプレイリストに対応したVOBの管理情報を解析し、プレゼンテーション処理部(208)に対象となるAVデータの再生を指示する。また、管理情報処理部(207)は、プレゼンテーション処理部(208)より基準時刻情報を受け取り、時刻情報に基づいてプレゼンテーション処理部(208)にAVデータ再生の停止指示を行い、また、プログラム処理部(206)に対してプログラム実行タイミングを示すイベントを生成する。
【0043】
プレゼンテーション処理部(208)は、映像、音声、字幕/イメージ夫々に対応するデコーダを持ち、管理情報処理部(207)からの指示に従い、AVデータのデコード及び出力を行う。映像データ及び字幕/イメージの場合は、デコード後に夫々の専用プレーン、ビデオプレーン(210)及びイメージプレーン(209)に描画され、合成処理部(211)によって映像の合成処理が行われTVなどの表示デバイスへ出力される。
【0044】
図6で示すように、BDプレーヤは図4で示したBDディスクに記録されているデータ構成に基づいた構成をとっている。
【0045】
図7は前述したプレーヤ構成を詳細化したブロック図である。図7では、AV記録メモリ(205)はイメージメモリ(308)とトラックバッファ(309)に、プログラム処理部(206)はプログラムプロセッサ(302)とUOPマネージャ(303)に、管理情報処理部(207)はシナリオプロセッサ(305)とプレゼンテーションコントローラ(306)に、プレゼンテーション処理部(208)はクロック(307)、デマルチプレクサ(310)、イメージプロセッサ(311)、ビデオプロセッサ(312)とサウンドプロセッサ(313)に夫々対応/展開している。
【0046】
BDディスク(201)から読み出されたVOBデータ(MPEGストリーム)はトラックバッファ(309)に、イメージデータ(PNG)はイメージメモリ(308)に夫々記録される。デマルチプレクサ(310)がクロック(307)の時刻に基づき、トラックバッファ(309)に記録されたVOBデータを抜き出し、映像データをビデオプロセッサ(312)に音声データをサウンドプロセッサ(313)に夫々送り込む。ビデオプロセッサ(312)及びサウンドプロセッサ(313)は夫々MPEGシステム規格で定める通りに、デコーダバッファとデコーダから夫々構成されている。即ち、デマルチプレクサ(310)から送りこまれる映像、音声夫々のデータは、夫々のデコーダバッファに一時的に記録され、クロック(307)に従い個々のデコーダでデコード処理される。
【0047】
イメージメモリ(308)に記録されたPNGは、次の2つの処理方法がある。イメージデータが字幕用の場合は、プレゼンテーションコントローラ(306)によってデコードタイミングが指示される。クロック(307)からの時刻情報をシナリオプロセッサ(305)が一旦受け、適切な字幕表示が行えるように、字幕表示時刻(開始及び終了)になればプレゼンテーションコントローラ(306)に対して字幕の表示、非表示の指示を出す。プレゼンテーションコントローラ(306)からデコード/表示の指示を受けたイメージプロセッサ(311)は対応するPNGデータをイメージメモリ(308)から抜き出し、デコードし、イメージプレーン(314)に描画する。
【0048】
次に、イメージデータがメニュー用の場合は、プログラムプロセッサ(302)によってデコードタイミングが指示される。プログラムプロセッサ(302)が何時イメージのデコードを指示するかは、プログラムプロセッサ(302)が処理しているBDプログラムに因るものであって一概には決まらない。
【0049】
イメージデータ及び映像データは、図6で説明したように夫々デコード後にイメージプレーン(314)、ビデオプレーン(315)に記録され、合成処理部(316)によって合成出力される。
【0050】
BDディスク(201)から読み出された管理情報(シナリオ、AV管理情報)は、管理情報記録メモリ(304)に記録されるが、シナリオ情報(「BD.INFO」及び「XXX.PL」)はシナリオプロセッサ(305)によって読み出され処理される。また、AV管理情報(「YYY.VOBI」)はプレゼンテーションコントローラ(306)によって読み出され処理される。
【0051】
シナリオプロセッサ(305)は、プレイリストの情報を解析し、プレイリストによって参照されているVOBとその再生位置をプレゼンテーションコントローラ(306)に指示し、プレゼンテーションコントローラ(306)は対象となるVOBの管理情報(「YYY.VOBI」)を解析して、対象となるVOBを読み出すようにドライブコントローラ(317)に指示を出す。
【0052】
ドライブコントローラ(317)はプレゼンテーションコントローラ(306)の指示に従い、光ピックアップを移動させ、対象となるAVデータの読み出しを行う。読み出されたAVデータは、前述したようにイメージメモリ(308)またはトラックバッファ(309)に記録される。
【0053】
また、シナリオプロセッサ(305)は、クロック(307)の時刻を監視し、管理情報で設定されているタイミングでイベントをプログラムプロセッサ(302)に投げる。
【0054】
プログラム記録メモリ(301)に記録されたBDプログラム(「BD.PROG」または「XXX.PROG」)は、プログラムプロセッサ302によって実行処理される。プログラムプロセッサ(302)がBDプログラムを処理するのは、シナリオプロセッサ(305)からイベントが送られてきた場合か、UOPマネージャ(303)からイベントが送られたきた場合である。UOPマネージャ(303)は、ユーザからリモコンキーによってリクエストが送られてきた場合に、プログラムプロセッサ(302)にイベントを生成する。
【0055】
(アプリケーション空間)
図8は、BD−ROMのアプリケーション空間をを示す図である。
【0056】
BD−ROMのアプリケーション空間では、プレイリスト(PlayList)が一つの再生単位になっている。プレイリストはセル(Cell)の再生シーケンスから構成される静的なシナリオと、プログラムによって記述される動的なシナリオを有している。プログラムによる動的なシナリオが無い限り、プレイリストは個々のセルを順に再生するだけであり、また、全てのセルの再生を終了した時点でプレイリストの再生は終了する。一方で、プログラムは、プレイリストを超えての再生記述や、ユーザ選択またはプレーヤの状態によって再生する対象を動的に変えることが可能である。典型的な例としてはメニューがあげられる。BD−ROMの場合、メニューとはユーザの選択によって再生するシナリオ、即ちプレイリストを動的に選択することである。
【0057】
ここで言うプログラムは、時間イベントまたはユーザイベントによって実行されるイベントハンドラの事である。
【0058】
時間イベントは、プレイリスト中に埋め込まれた時刻情報に基づいて生成されるイベントである。図7で説明したシナリオプロセッサ(305)からプログラムプロセッサ(302)に送られるイベントがこれに相当する。時間イベントが発行されると、プログラムプロセッサ(302)はIDによって対応付けられるイベントハンドラを実行処理する。前述した通り、実行されるプログラムが他のプレイリストの再生を指示することが可能であり、この場合には、現在再生されているプレイリストの再生は中止され、指定されたプレイリストの再生へと遷移する。
【0059】
ユーザイベントは、ユーザのリモコンキー操作によって生成されるイベントである。ユーザイベントは大きく2つのタイプに分けられる。一つ目は、カーソルキー(「上」「下」「左」「右」キー)または「決定」キーの操作によって生成されるメニュー選択のイベントである。メニュー選択のイベントに対応するイベントハンドラはプレイリスト内の限られた期間でのみ有効であり(プレイリストの情報として、個々のイベントハンドラの有効期間が設定されている)、リモコンの「上」「下」「左」「右」キーまたは「決定」キーが押された時に有効なイベントハンドラを検索して、有効なイベントハンドラがある場合は当該イベントハンドラが実行処理される。他の場合は、メニュー選択のイベントは無視されることになる。
【0060】
二つ目のユーザイベントは、「メニュー」キーの操作によって生成されるメニュー呼び出しのイベントである。メニュー呼び出しのイベントが生成されると、グローバルイベントハンドラが呼ばれる。グローバルイベントハンドラはプレイリストに依存せず、常に有効なイベントハンドラである。この機能を使うことにより、DVDのメニューコール(タイトル再生中に音声、字幕メニューなどを呼び出し、音声または字幕を変更後に中断した地点からのタイトル再生を実行する)を実装することができる。
【0061】
プレイリストで静的シナリオを構成する単位であるセル(Cell)はVOB(MPEGストリーム)の全部または一部の再生区間を参照したものである。セルはVOB内の再生区間を開始、終了時刻の情報として持っている。個々のVOBと一対になっているVOB管理情報(VOBI)は、その内部にタイムマップ(Time MapまたはTM)を有しており、このタイムマップによって前述したVOBの再生、終了時刻をVOB内(即ち対象となるファイル「YYY.VOB」内)での読み出し開始アドレス及び終了アドレスを導き出すことが可能である。なおタイムマップの詳細は後述する。
【0062】
(VOBの詳細)
図9は、本実施例で使用するMPEGストリーム(VOB)の構成図である。図9に示すように、VOBは複数のVOBU(Video Object Unit)によって構成されている。VOBUは、MPEGビデオストリームで言うGOP(Group Of Pictures)を基準として、音声データも含んだ多重化ストリームとしての一再生単位である。VOBUは0.4秒から1.0秒の時間を持ち、通常は0.5秒の再生時間を持っている。これはMPEGのGOPの構造が通常は15フレーム/秒(NTSCの場合)によって導かれるものである。
【0063】
VOBUは、その内部にビデオパック(V_PCK)とオーディオパック(A_PCK)を有している。各パックは1セクタ、本実施例の場合は2kB単位で構成されている。
【0064】
図10は、パックの構成を示した図である。
図10に示すように、ビデオデータ及びオーディオデータといったエレメンタリデータは、ペイロードと呼ばれるパケットのデータ格納領域に先頭から順次入れられていく。ペイロードにはパケットヘッダが付けられ1つのパケットを構成する。パケットヘッダには、ペイロードに格納してあるデータがどのストリームなのか、ビデオなのかオーディオなのか、また、ビデオまたはオーディオが夫々複数ストリームある場合は、どのストリームのデータなのかを識別するためのID(stream_id)と、当該ペイロードのデコード及び表示時刻情報であるタイムスタンプDTS及びPTSが夫々記録されている。PTS/DTSは必ずしも全てのパケットヘッダに記録されている訳ではなく、MPEGによって記録するルールが規定されている。ルールの詳細についてはMPEGシステム(ISO/IEC13818−1)規格書に記述されているので省略する。
【0065】
パケットには更にヘッダ(パックヘッダ)が付けられ、パックを構成する。パックヘッダには、当該パックがいつデマルチプレクサを通過し、個々のエレメンタリストリームのデコーダバッファに入力されるかを示すタイムスタンプSCR(System Clock Reference)が記録されている。
【0066】
(VOBのインターリーブ記録)
次に図11及び図12を用いてVOBファイルのインターリーブ記録について説明する。
【0067】
図11上段は、前述したプレーヤ構成図の一部である。図の通り、BDディスク上のデータは、光ピックアップを通してVOB即ちMPEGストリームであればトラックバッファへ入力され、PNG即ちイメージデータであればイメージメモリへと入力される。
【0068】
トラックバッファはFIFOであり、入力されたVOBのデータは入力された順にデマルチプレクサへと送られる。この時、前述したSCRに従って個々のパックはトラックバッファから引き抜かれデマルチプレクサを介してビデオプロセッサまたはサウンドプロセッサへとデータが送り届けられる。一方で、イメージデータの場合は、どのイメージを描画するかはプレゼンテーションコントローラによって指示される。また、描画に使ったイメージデータは、字幕用イメージデータの場合は同時にイメージメモリから削除されるが、メニュー用のイメージデータの場合は、イメージメモリ内にそのまま残される。これはメニューの描画はユーザ操作に依存するところがあるため、同一イメージを複数回描画する可能性があるためである。
【0069】
図11下段は、BDディスク上でのVOBファイル及びPNGファイルのインターリーブ記録を示す図である。一般的にROM、例えばCD−ROMやDVD−ROMの場合、一連の連続再生単位となるAVデータは連続記録されている。これは、連続記録されている限り、ドライブは順次データを読み出しプレーヤ側に送り届けるだけで良いが、連続データが分断されてディスク上に離散配置されている場合は、個々の連続区間の間でシーク操作が入ることになり、この間データの読み出しが止まることになり、データの供給が止まる可能性があるからである。BD−ROMの場合も同様に、VOBファイルは連続領域に記録することができる方が望ましいが、例えば字幕データのようにVOBに記録されている映像データと同期して再生されるデータがあり、VOBファイルと同様に字幕データも何らかの方法によってBDディスクから読み出す事が必要になる。
【0070】
字幕データの読み出し方法の一手段として、VOBの再生開始前に一まとめで字幕用のイメージデータ(PNGファイル)を読み出してしまう方法がある。しかしながら、この場合には一時記録に使用する大量のメモリが必要となり、非現実的である。
【0071】
そこで、本実施の形態では、VOBファイルを幾つかのブロックに分けて、イメージデータとインターリーブ記録する方式を使用している。図11下段はそのインターリーブ記録を説明した図である。VOBファイルとイメージデータを適切にインターリーブ配置することで、前述したような大量の一時記録メモリ無しに、必要なタイミングでイメージデータをイメージメモリに格納することが可能になる。しかしながらイメージデータを読み出している際には、VOBデータの読み込みは当然のことながら停止することになる。
【0072】
図12は、この問題を解決するトラックバッファを使ったVOBデータ連続供給モデルを説明する図である。
【0073】
既に説明したように、VOBのデータは、一旦トラックバッファに蓄積される。トラックバッファへのデータ入力レートとトラックバッファからのデータ出力レートの間に差を設けると、BDディスクからデータを読み出し続けている限り、トラックバッファのデータ蓄積量は増加をしていくことになる。ここでトラックバッファへの入力レートをVa、トラックバッファからの出力レートをVbとする。図12の上段に記すようにVOBの一連続記録領域が論理アドレスの”a1”から”a2”まで続くとする。”a2”から”a3”の間は、イメージデータが記録されていて、VOBデータの読み出しが行えない区間であるとする。
【0074】
図12の下段は、トラックバッファの内部を示す図である。横軸が時間、縦軸がトラックバッファ内部に蓄積されているデータ量を示している。時刻”t1”がVOBの一連続記録領域の開始点である”a1”の読み出しを開始した時刻を示している。この時刻以降、トラックバッファにはレートVa−Vbでデータが蓄積されていくことになる。このレートは言うまでもなくトラックバッファの入出力レートの差である。時刻”t2”は一連続記録領域の終了点である”a2”のデータを読み込む時刻である。即ち時刻”t1”から”t2”の間レートVa−Vbでトラックバッファ内はデータ量が増加していき、時刻”t2”でのデータ蓄積量はB(t2)は下式によって求めることができる。
B(t2) = (Va−Vb)×(t2−t1) (式1)
【0075】
この後、BDディスク上のアドレス”a3”まではイメージデータが続くため、トラックバッファへの入力は0となり、出力レートである”−Vb”でトラックバッファ内のデータ量は減少していくことになる。これは読み出し位置”a3”まで、時刻でいう”t3”までになる。
【0076】
ここで大事なことは、時刻”t3”より前にトラックバッファに蓄積されているデータ量が0になると、デコーダへ供給するVOBのデータが無くなってしまい、VOBの再生がストップしてしまう可能性がある。しかしながら、時刻”t3”でトラックバッファにデータが残っている場合には、VOBの再生がストップすることなく連続できることを意味している。
【0077】
この条件は下式によって示すことができる。
B(t2) ≧ −Vb×(t3−t2) (式2)
【0078】
即ち、式2を満たすようにイメージデータの配置を決めればよい事になる。
【0079】
(ナビゲーションデータ構造)
図13から図19を用いて、BD−ROMのナビゲーションデータ(BD管理情報)構造について説明をする。図13は、VOB管理情報情報ファイル(”YYY.VOBI”)の内部構造を示した図である。
【0080】
VOB管理情報は、当該VOBのストリーム属性情報(Attribute)とタイムマップ(TMAP)を有している。ストリーム属性は、ビデオ属性(Video)、オーディオ属性(Audio#0〜Audio#m)個々に持つ構成となっている。特にオーディオストリームの場合は、VOBが複数本のオーディオストリームを同時に持つことができることから、オーディオストリーム数(Number)によって、データフィールドの有無を示している。
【0081】
下記はビデオ属性(Video)の持つフィールドと夫々が持ち得る値である。
圧縮方式(Coding):
MPEG1
MPEG2
MPEG4
解像度(Resolution):
1920x1080
1280x720
720x480
720x565
アスペクト比(Aspect)
4:3
16:9
フレームレート(Framerate)
60
59.94
50
30
29.97
25
24
【0082】
下記はオーディオ属性(Audio)の持つフィールドと夫々が持ち得る値である。
圧縮方式(Coding):
AC3
MPEG1
MPEG2
LPCM
チャンネル数(Ch):
1〜8
言語属性(Language):
【0083】
タイムマップ(TMAP)はVOBU毎の情報を持つテーブルであって、当該VOBが有するVOBU数(Number)と各VOBU情報(VOBU#1〜VOBU#n)を持つ。個々のVOBU情報は、VOBUの再生時間長(Duration)とVOBUのデータサイズ(Size)を夫々有している。
【0084】
図14はVOBU情報の詳細を説明する図である。
広く知られているように、MPEGストリームは時間的側面とデータサイズとしての側面との2つを有している。例えば、音声の圧縮規格であるAC3は固定ビットレートでの圧縮を行っているため、時間とアドレスとの関係は1次式によって求めることができる。しかしながらMPEGビデオデータの場合は、個々のフレームは固定の表示時間、例えばNTSCの場合は1フレームは1/29.97秒の表示時間を持つが、個々のフレームの圧縮後のデータサイズは絵の特性や圧縮に使ったピクチャタイプ、いわゆるI/P/Bピクチャによってデータサイズは大きく変わってくる。従って、MPEGビデオの場合は、時間とアドレスの関係は一般式の形で表現することは不可能である。
【0085】
当然の事として、MPEGビデオデータを多重化しているMPEGシステムストリーム、即ちVOBも時間とデータとを一般式の形で表現することは不可能である。これに代わって、VOB内での時間とアドレスとの関係を結びつけるのがタイムマップ(TMAP)である。図14に示すように、各VOBU毎にVOBU内のフレーム数と、VOBU内のパック数を夫々エントリーとして持つテーブルがタイムマップ(TMAP)である。
【0086】
図15を使って、タイムマップ(TMAP)の使い方を説明する。
図15に示すように時刻情報が与えられた場合、先ずは当該時刻がどのVOBUに属するのかを検索する。これは、タイム亜マップのVOBU毎のフレーム数を加算して行き、フレーム数の和が当該時刻を(フレーム数に換算して)超えるまたは一致するVOBUが当該VOBUになる。次にタイムマップのVOBU毎のサイズを当該VOBUの直前のVOBUまで加算して行き、その値が与えられた時刻を含むフレームを再生するために読み出すべきパックの先頭アドレスになっている。
【0087】
次に図16を使って、プレイリスト情報(”XXX.PL”)の内部構造を説明する。
プレイリスト情報は、セルリスト(CellList)とイベントリスト(EventList)から構成されている。
【0088】
セルリスト(CellList)は、プレイリスト内の再生セルシーケンスであり、本リストの記述順でセルが再生される事になる。セルリスト(CellList)の中身は、セルの数(Number)と各セル情報(Cell#1〜Cell#n)である。
【0089】
セル情報(Cell#)は、VOBファイル名(VOBName)、当該VOB内での有効区間開始時刻(In)及び有効区間終了時刻(Out)と、字幕テーブル(SubtitleTable)を持っている。有効区間開始時刻(In)及び有効区間終了時刻(Out)は、夫々当該VOB内でのフレーム番号で表現され、前述したタイムマップ(TMAP)を使うことによって再生に必要なVOBデータのアドレスを得る事ができる。
【0090】
字幕テーブル(SubtitleTable)は、当該VOBと同期再生される字幕情報を持つテーブルである。字幕は音声同様に複数の言語を持つことができ、字幕テーブル(SubtitleTable)最初の情報も言語数(Number)とそれに続く個々の言語ごとのテーブル(Language#1〜Language#k)から構成されている。
【0091】
各言語のテーブル(Language#)は、言語情報(Language)と、個々に表示される字幕の字幕情報数(Number)と、個々に表示される字幕の字幕情報(Speech#1〜Speech#j)から構成され、字幕情報(Speech#)は対応するイメージデータファイル名(Name)、字幕表示開始時刻(In)及び字幕表示終了時刻(Out)と、字幕の表示位置(Position)から構成されている。
【0092】
イベントリスト(EventList)は、当該プレイリスト内であげられるイベントを定義したテーブルである。イベントリストは、イベント数(Number)に続いて個々のイベント(Event#1〜Event#m)から構成され、個々のイベント(Event#)は、イベントの種類(Type)、イベントのID(ID)、イベント生成時刻(Time)と有効期間(Duration)から構成されている。
【0093】
図17は、個々のプレイリスト毎のイベントハンドラ(時間イベントと、メニュー選択用のユーザイベント)を持つイベントハンドラテーブル(”XXX.PROG”)である。
【0094】
イベントハンドラテーブルは、定義されているイベントハンドラ/プログラム数(Number)と個々のイベントハンドラ/プログラム(Program#1〜Program#n)を有している。各イベントハンドラ/プログラム(Program#)内の記述は、イベントハンドラ開始の定義(<event_handler>タグ)と前述したイベントのIDと対になるイベントハンドラのID(ID)を持ち、その後に当該プログラムもFunctionに続く括弧”{”と”}”の間に記述する。
【0095】
次に図18を用いてBDディスク全体に関する情報(”BD.INFO”)の内部構造について説明をする。
【0096】
BDディスク全体情報は、タイトルリスト(TitleList)とグローバルイベント用のイベントテーブル(EventTable)から構成されている。
【0097】
タイトルリスト(TitleList)は、ディスク内のタイトル数(Number)と、これに続く各タイトル情報(Title#1〜Title#n)から構成されている。個々のタイトル情報(Title)は、タイトルに含まれるプレイリストのテーブル(PLTalble)とタイトル内のチャプタリスト(ChapterList)を含んでいる。プレイリストのテーブル(PLTable)はタイトル内のプレイリストの数(Number)と、プレイリスト名(Name)即ちプレイリストのファイル名を有している。
【0098】
チャプタリスト(ChapterList)は、当該タイトルに含まれるチャプタ数(Number)と個々のチャプタ情報(Chapter#1〜Chapter#n)から構成され、チャプタ情報(Chapter#)は当該チャプタが含むセルのテーブル(CellTable)を持ち、セルのテーブル(CellTable)はセル数(Number)と個々のセルのエントリ情報(CellEntry#1〜CellEntry#k)から構成されている。セルのエントリ情報(CellEntry#)は当該セルを含むプレイリスト名と、プレイリスト内でのセル番号によって記述されている。
【0099】
イベントリスト(EventList)は、グローバルイベントの数(Number)と個々のグローバルイベントの情報を持っている。ここで注意すべきは、最初に定義されるグローバルイベントは、ファーストイベント(FirstEvent)と呼ばれ、BDディスクがプレーヤに挿入された時、最初に呼ばれるイベントである。グローバルイベント用イベント情報はイベントタイプ(Type)とイベントのID(ID)だけを持っている。
【0100】
図19は、グローバルイベントハンドラのプログラムのテーブル(”BD.PROG”)である。本テーブルは、図17で説明したイベントハンドラテーブルと同一内容である。
【0101】
(イベント発生のメカニズム)
図20から図22を使ってイベント発生のメカニズムについて説明する。
【0102】
図20はタイムイベントの例である。
前述したとおり、タイムイベントはプレイリスト情報(”XXX.PL”)のイベントリスト(EventList)で定義される。タイムイベントとして定義されているイベント、即ちイベントタイプ(Type)が”TimeEvent”の場合、イベント生成時刻(”t1”)になった時点で、ID”Ex1”を持つタイムイベントがシナリオプロセッサからプログラムプロセッサに対してあげられる。プログラムプロセッサは、イベントID”Ex1”を持つイベントハンドラを探し、対象のイベントハンドラを実行処理する。例えば、本実施例の場合では、2つのボタンイメージの描画を行うなどを行うことができる。
【0103】
図21はメニュー操作を行うユーザーイベントの例である。
前述したとおり、メニュー操作を行うユーザイベントもプレイリスト情報(”XXX.PL”)のイベントリスト(EventList)で定義される。ユーザイベントとして定義されるイベント、即ちイベントタイプ(Type)が”UserEvent”の場合、イベント生成時刻(”t1”)になった時点で、当該ユーザイベントがレディとなる。この時、イベント自身は未だ生成されてはいない。当該イベントは、有効規格情報(Duration)で記される期間レディ状態にある。
【0104】
図21に描くように、ユーザがリモコンキーの「上」「下」「左」「右」キーまたは「決定」キーを押した場合、先ずUOPイベントがUOPマネージャによって生成されプログラムプロセッサに上げられる。プログラムプロセッサは、シナリオプロセッサに対してUOPイベントを流し、シナリオプロセッサはUOPイベントを受け取った時刻に有効なユーザイベントが存在するかを検索し、対象となるユーザイベントがあった場合は、ユーザイベントを生成し、プログラムプロセッサに持ち上げる。プログラムプロセッサでは、イベントID”Ev1”を持つイベントハンドラを探し、対象のイベントハンドラを実行処理する。例えば、本実施例の場合では、プレイリスト#2の再生を開始する。
【0105】
生成されるユーザイベントには、どのリモコンキーがユーザによって押されたかの情報は含まれていない。選択されたリモコンキーの情報は、UOPイベントによってプログラムプロセッサに伝えられ、仮想プレーヤが持つレジスタSPRM(8)に記録保持される。イベントハンドラのプログラムは、このレジスタの値を調べ分岐処理を実行することが可能である。
【0106】
図22はグローバルイベントの例である。
前述したとおり、グローバルイベントはBDディスク全体に関する情報(”BD.INFO”)のイベントリスト(EventList)で定義される。グローバルイベントとして定義されるイベント、即ちイベントタイプ(Type)が”GlobalEvent”の場合、ユーザのリモコンキー操作があった場合にのみイベントが生成される。
【0107】
ユーザが”メニュー”を押した場合、先ずUOPイベントがUOPマネージャによって生成されプログラムプロセッサに上げられる。プログラムプロセッサは、シナリオプロセッサに対してUOPイベントを流し、シナリオプロセッサは、該当するグローバルイベントを生成し、プログラムプロセッサに送る。プログラムプロセッサでは、イベントID”menu”を持つイベントハンドラを探し、対象のイベントハンドラを実行処理する。例えば、本実施例の場合ではプレイリスト#3の再生を開始している。
【0108】
本実施例では、単に”メニュー”キーと呼んでいるが、DVDのように複数のメニューキーがあってもよい。各メニューキーに対応するIDを夫々定義することで対応することが可能である。
【0109】
(仮想プレーヤマシン)
図23を用いてプログラムプロセッサの機能構成を説明する。
【0110】
プログラムプロセッサは、内部に仮想プレーヤマシンを持つ処理モジュールである。仮想プレーヤマシンはBD−ROMとして定義された機能モデルであって、各BD−ROMプレーヤの実装には依存しないものである。即ち、どのBD−ROMプレーヤにおいても同様の機能を実行するできることを保証している。
【0111】
仮想プレーヤマシンは大きく2つの機能を持っている。プログラミング関数とプレーヤ変数(レジスタ)である。プログラミング関数は、Java(登録商標) Scriptをベースとして、以下に記す2つの機能をBD−ROM固有関数として定義している。
【0112】
リンク関数:現在の再生を停止し、指定するプレイリスト、セル、時刻からの再生を開始する
Link(PL#,Cell#,time)
PL# : プレイリスト名
Cell# : セル番号
time : セル内での再生開始時刻
PNG描画関数:指定PNGデータをイメージプレーンに描画する
Draw(File,X,Y)
File : PNGファイル名
X : X座標位置
Y : Y座標位置
イメージプレーンクリア関数:イメージプレーンの指定領域をクリアする
Clear(X,Y,W,H)
X : X座標位置
Y : Y座標位置
W : X方向幅
H : Y方向幅
【0113】
プレーヤ変数は、プレーヤの状態を示すシステムパラメータ(SPRM)と一般用途として使用可能なゼネラルパラメータ(GPRM)とがある。
【0114】
図24はシステムパラメータ(SPRM)の一覧である。
SPRM(0) : 言語コード
SPRM(1) : 音声ストリーム番号
SPRM(2) : 字幕ストリーム番号
SPRM(3) : アングル番号
SPRM(4) : タイトル番号
SPRM(5) : チャプタ番号
SPRM(6) : プログラム番号
SPRM(7) : セル番号
SPRM(8) : 選択キー情報
SPRM(9) : ナビゲーションタイマー
SPRM(10) : 再生時刻情報
SPRM(11) : カラオケ用ミキシングモード
SPRM(12) : パレンタル用国情報
SPRM(13) : パレンタルレベル
SPRM(14) : プレーヤ設定値(ビデオ)
SPRM(15) : プレーヤ設定値(オーディオ)
SPRM(16) : 音声ストリーム用言語コード
SPRM(17) : 音声ストリーム用言語コード(拡張)
SPRM(18) : 字幕ストリーム用言語コード
SPRM(19) : 字幕ストリーム用言語コード(拡張)
SPRM(20) : プレーヤリージョンコード
SPRM(21) : 予備
SPRM(22) : 予備
SPRM(23) : 再生状態
SPRM(24) : 予備
SPRM(25) : 予備
SPRM(26) : 予備
SPRM(27) : 予備
SPRM(28) : 予備
SPRM(29) : 予備
SPRM(30) : 予備
SPRM(31) : 予備
【0115】
なお、本実施例では、仮想プレーヤのプログラミング関数をJava(登録商標) Scriptベースとしたが、Java(登録商標) Scriptではなく、UNIX(登録商標) OSなどで使われているB−Shellや、Perl Scriptなど他のプログラミング関数であっても構わなく、言い換えれば、本発明はJava(登録商標) Scriptに限定されるものでは無い。
【0116】
(プログラムの例)
図25及び図26は、イベントハンドラでのプログラムの例である。
【0117】
図25は、2つの選択ボタンを持ったメニューの例である。
セル(PlayList#1.Cell#1)先頭でタイムイベントを使って図25左側のプログラムが実行される。ここでは、最初にゼネラルパラメータの一つGPRM(0)に”1”がセットされている。GPRM(0)は、当該プログラムの中で、選択されているボタンを識別するのに使っている。最初の状態では、左側に配置するボタン1が選択されている事を初期値として持たされている。
【0118】
次に、PNGの描画を描画関数であるDrawを使ってボタン1、ボタン2夫々について行っている。ボタン1は、座標(10、200)を起点(左端)としてPNGイメージ”1black.png”を描画している。ボタン2は、座標(330,200)を起点(左端)としてPNGイメージ”2white.png”を描画している。
【0119】
また、本セル最後ではタイムイベントを使って図25右側のプログラムが実行される。ここでは、Link関数を使って当該セルの先頭から再度再生するように指定している。
【0120】
図26は、メニュー選択のユーザイベントのイベントハンドラの例である。
「左」キー、「右」キー、「決定」キー何れかのリモコンキーが押された場合夫々に対応するプログラムがイベントハンドラに書かれている。ユーザがリモコンキーを押した場合、図21で説明したとおり、ユーザイベントが生成され、図26のイベントハンドラが起動されることになる。本イベントハンドラでは、選択ボタンを識別しているGPRM(0)の値と、選択されたリモコンキーを識別するSPRM(8)を使って分岐処理を行っている。
【0121】
条件1)ボタン1が選択されている、かつ、選択キーが「右」キーの場合
GPRM(0)を2に再設定して、選択状態にあるボタンを右ボタン2に変更する。
ボタン1、ボタン2のイメージを夫々書き換える。
条件2)選択キーが「決定(OK)」の場合で、ボタン1が選択されている場合、プレイリスト#2の再生を開始する
条件3)選択キーが「決定(OK)」の場合で、ボタン2が選択されている場合、プレイリスト#3の再生を開始する
上記のようにして実行処理が行われる。
【0122】
(プレーヤ処理フロー)
次に図27から図30を用いてプレーヤでの処理フローを説明する。
【0123】
図27は、AV再生までの基本処理フローである。
BDディスクを挿入すると(S101)、BD−ROMプレーヤはBD.INFOファイルの読み込みと解析(S102)、BD.PROGの読み込み(S103)を実行する。BD.INFO及びBD.PROGは共に管理情報記録メモリに一旦格納され、シナリオプロセッサによって解析される。
【0124】
続いて、シナリオプロセッサは、BD.INFOファイル内のファーストイベント(FirstEvent)情報に従い、最初のイベントを生成する(S104)。生成されたファーストイベントは、プログラムプロセッサで受け取られ、当該イベントに対応するイベントハンドラを実行処理する(S105)。
【0125】
ファーストイベントに対応するイベントハンドラには、最初に再生するべきプレイリスト情報が記録されていることが期待される。仮に、プレイリスト再生が指示されていない場合には、プレーヤは何も再生することなく、ユーザイベントを受け付けるのを待ち続けるだけになる。この場合、ユーザイベントを受け付けるのを待ち続けることになる(S201)。BD−ROMプレーヤはがユーザからのリモコン操作を受け付けると、UOPマネージャはプログラムマネージャに対してUOPイベントを立ち上げる(S202)。
【0126】
プログラムマネージャは、UOPイベントがメニューキーによるものであるかを判別し(S203)、メニューキーの場合は、シナリオプロセッサにUOPイベントを流し、シナリオプロセッサがユーザイベントを生成する(S204)。プログラムプロセッサは生成されたユーザイベントに対応するイベントハンドラを実行処理する(S205)。
【0127】
図28は、PL再生開始からVOB再生開始までの処理フローである。
前述したように、ファーストイベントハンドラまたはグローバルイベントハンドラによってプレイリスト再生が開始される(S301)。シナリオプロセッサは、再生対象のプレイリスト再生に必要な情報として、プレイリスト情報”XXX.PL”の読み込みと解析(S302)、プレイリストに対応するプログラム情報”XXX.PROG”の読み込みを行う(S303)。続いてシナリオプロセッサは、プレイリストに登録されているセル情報に基づいてセルの再生を開始する(S304)。セル再生は、シナリオプロセッサからプレゼンテーションコントローラに対して要求が出さる事を意味し、プレゼンテーションコントローラはAV再生を開始する(S305)。
【0128】
AV再生の開始(S401)を開始すると、プレゼンテーションコントローラは再生するセルに対応するVOBの情報ファイル(XXX.VOBI)を読み込み及び解析をする(S402)。プレゼンテーションコントローラは、タイムマップを使って再生開始するVOBUとそのアドレスを特定し、ドライブコントローラに読み出しアドレスを指示し、ドライブコントローラは対象となるVOBデータを読み出し(S403)、VOBデータがデコーダに送られ再生が開始される(S404)。VOB再生は、当該VOBの再生区間が終了するまで続けられ(S405)、終了すると次のセル再生S304へ移行する。次にセルが無い場合は、再生が停止する(S406)。
【0129】
図29は、AV再生開始後からのイベント処理フローである。
BD−ROMプレーヤはイベントドリブン型のプレーヤモデルである。プレイリストの再生を開始すると、タイムイベント系、ユーザイベント系、字幕表示系のイベント処理プロセスが夫々起動され、平行してイベント処理を実行するようになる。
【0130】
S500系の処理は、タイムイベント系の処理フローである。
プレイリスト再生開始後(S501)、プレイリスト再生が終了しているかを確認するステップ(S502)を経て、シナリオプロセッサは、タイムイベント発生時刻になったかを確認する(S503)。タイムイベント発生時刻になっている場合には、シナリオプロセッサはタイムイベントを生成し(S504)、プログラムプロセッサがタイムイベントを受け取りイベントハンドラを実行処理する(S505)。
【0131】
ステップS503でタイムイベント発生時刻になっていない場合、または、ステップS504でイベントハンドラ実行処理後は再度ステップS502へ戻り、上述した処理を繰り返す。また、ステップS502でプレイリスト再生が終了したことが確認されると、タイムイベント系の処理は強制的に終了する。
【0132】
S600系の処理は、ユーザイベント系の処理フローである。
プレイリスト再生開始後(S601)、プレイリスト再生終了確認ステップ(S602)を経て、UOP受付確認ステップの処理に移る(S603)。UOPの受付があった場合、UOPマネージャはUOPイベントを生成し(S604)、UOPイベントを受け取ったプログラムプロセッサはUOPイベントがメニューコールであるかを確認し(S605)、メニューコールであった場合は、プログラムプロセッサはシナリオプロセッサにイベントを生成させ(S607)、プログラムプロセッサはイベントハンドラを実行処理する(S608)。
【0133】
ステップS605でUOPイベントがメニューコールで無いと判断された場合、UOPイベントはカーソルキーまたは「決定」キーによるイベントである事を示している。この場合、現在時刻がユーザイベント有効期間内であるかをシナリオプロセッサが判断し(S606)、有効期間内である場合には、シナリオプロセッサがユーザイベントを生成し(S607)、プログラムプロセッサが対象のイベントハンドラを実行処理する(S608)。
【0134】
ステップS603でUOP受付が無い場合、ステップS606で現在時刻がユーザイベント有効期間に無い場合、または、ステップS608でイベントハンドラ実行処理後は再度ステップS602へ戻り、上述した処理を繰り返す。また、ステップS602でプレイリスト再生が終了したことが確認されると、ユーザイベント系の処理は強制的に終了する。
【0135】
図30は字幕処理のフローである。
プレイリスト再生開始後(S701)、プレイリスト再生終了確認ステップ(S702)を経て、字幕描画開始時刻確認ステップに移る(S703)。字幕描画開始時刻の場合、シナリオプロセッサはプレゼンテーションコントローラに字幕描画を指示し、プレゼンテーションコントローラはイメージプロセッサに字幕描画を指示する(S704)。ステップS703で字幕描画開始時刻で無いと判断された場合、字幕表示終了時刻であるかを確認する(S705)。字幕表示終了時刻であると判断された場合は、プレゼンテーションコントローラがイメージプロセッサに字幕消去指示を行い、描画されている字幕をイメージプレーンから消去する(S706)。
【0136】
字幕描画ステップS704終了後、字幕消去ステップS706終了後、または、字幕表示終了時刻確認ステップS705で当該時刻でないことが判断された場合、ステップS702に戻り、上述した処理を繰り返す。また、ステップS702でプレイリスト再生が終了したことが確認されると、字幕表示系の処理は強制的に終了する。
【0137】
(実施例2)
次に本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0138】
第2の実施の形態は、BD−ROMにおいて新たな付加価値を実現する、オーディオミキシングの制御に関わる内容である。基本的には第1の実施例に基づく内容であり、拡張または異なる部分を中心に説明する。
【0139】
(オーディオミキシング)
オーディオミキシングとは、2本以上のオーディオストリームを合成指定出力するアプリケーションの呼称である。図31はオーディオミキシングの基本的なモデルを示している。
【0140】
映画本編を見ているときは、主音声だけで十分である。このような場合は、主音声をそのまま出力すればよいため、オーディオミキシング処理を行う必要はなく、主音声に対する係数は1、つまり100%でよく、また、付加音声や効果音に対する係数は0でよい。
【0141】
それに対し、メイキングコンテンツの場合、映画本編の映像・音声を流しつつ、その上に監督の映像と音声を重ねて、解説を行うといったようなアプリケーションもBD−ROMでは実現可能である。その場合、音声は、本編の主音声0.5、解説の付加音声0.5のように係数をかけて出力することにより、主音声と付加音声を合成して出力することが可能となる。
【0142】
なお、主音声を0、付加音声を1とすると、アフレコのように解説音声だけの出力も可能である。
【0143】
また、ここに挙げる例では、オーディオミキシング後の出力が1を超えないように合成している。これは主音声1、付加音声1のようにした場合、合成後の出力レベルが2になってしまい、大きな音が出力されることによりスピーカーが壊れてしまうようなことを防ぐため、モデルとしてレベルを調整しているためである。たとえモデルとして合成後のレベルが2を超えても、プレーヤの実装として最終的な出力のレベルを1以下に抑えるリミッターのような仕組みがあれば、モデルとして合成後のレベルを1以下に抑える必要はなく、その場合は係数の合計を1以上に設定してもよい。
【0144】
さらに、BD−ROMでは、主音声・付加音声以外に、ゲームなどの効果音も合成することが可能である。合成の方法は、主音声・付加音声を合成したあと、効果音をさらに合成するモデルである。効果音がない場合は、主音声・付加音声の合成結果に係数1をかけて出力される。同様に、音声合成のために、効果音の合成を複数段付加してもよい。
【0145】
(オーディオミキシングによる音の劣化)
主音声をそのまま出力する場合、つまり、オーディオミキシングを行わない場合は、主音声のオーディオストリームが持つ音質をそのまま出力することが可能である。ロスレスオーディオを利用している場合は、圧縮による情報落ちのない音声を出力可能である。
【0146】
ところが、オーディオミキシングを行う際には、主音声と付加音声をそのまま合成(合計)すると、音声レベルが上がってしまい、音が大きくなってしまうため、音声レベル調整のために、それぞれに音声レベルを下げる係数をかけることになる。このとき、ロスレスオーディオのように高音質の音を用いていたとしても、係数をかけることにより情報落ちする可能性がある。
【0147】
たとえば16ビットのロスレスオーディオを、内部処理として24ビットとして処理を行う場合、係数0.5や0.125など2の倍数にあたる係数であれば1/256まで係数をかけたとしても情報落ちは起こらないが、元が24ビットのオーディオを24ビットで処理する場合は、係数0.5をかけただけでも、デジタル処理の世界では、最小ビットの1ビット分が情報落ちする。また、計数が2の倍数ではない浮動小数点をかけた場合は、どんなに桁の多いビット数で内部処理を行っていたとしても、情報落ちが発生する。
【0148】
これでは、せっかくロスレスオーディオを利用したコンテンツで、音が重要なコンテンツであっても、音の劣化が起こってしまうことになる。
【0149】
(オーディオミキシングと出力経路)
次に、オーディオミキシング後の出力について考える。図32は出力について説明するための図である。
【0150】
オーディオミキシングを行うためには、AC−3やDTSなどの圧縮音声をデコード、非圧縮音声データであるLPCMに変換してから行う必要がある。LPCMでオーディオミキシングを行い、合成結果もLPCMとなる。
【0151】
図32(a)に示すように、合成後のLPCMを出力する場合、そのままデジタルLPCMで出力するか、D/Aコンバータを通し、アナログに変換して出力する場合がある。デジタルで出力する場合は、その伝送路の規格により、伝送できるデジタルストリームとできないものがある。HDMIのような伝送路の場合は、ビデオの解像度にも依存するが、LPCMのまま5.1chや8chのデジタルストリームを伝送することが可能である。そのような場合は、オーディオミキシング後のオーディオストリームをそのまま伝送すればよい。
【0152】
ところが、現在光デジタル出力として広く使われているS/PDIFのような伝送路の場合、5.1chのLPCMを出力することができない。伝送路の帯域も不足しており、規格が定められておらず、伝送する方式に互換性がないため、伝送することができないためである。
【0153】
S/PDIFはLPCMの場合2chまでしか出力できないため、圧縮による音質の劣化を防ぐためには、図32(b)のように、5.1chのうちL/Rなどの2chだけ取り出して出力するか、ダウンミキサーを用いて、5.1chを2chにダウンミックスして出力する必要がある。
【0154】
あるいは、S/PDIFではDTSやAC−3などの圧縮音声の場合は5.1chを伝送することが可能であるため、LPCMにデコードして合成した音声を再びエンコーダでエンコードした上、圧縮音声として伝送する必要がある。この場合、オーディオミキシングによる音質の劣化以外に、デコードとエンコードによる音質の劣化も発生する可能性がある。
【0155】
(オーディオミキシングの許可・禁止の設定)
これまで述べてきたように、オーディオミキシングにより音質劣化が発生してしまう可能性がある。音質に重点を置くコンテンツの場合、ユーザーは音質劣化を望まない場合があり、そのような場合は、ユーザーの意図として、オーディオミキシングを禁止できることが望ましい。図33は、オーディオミキシングの許可・禁止の状態保持するためのレジスタを備えたプレーヤと、その設定画面の様子である。レジスタはユーザーの設定を保持する。
【0156】
(オーディオミキシングの許可・禁止を示すレジスタのプログラムからの参照)
このような、オーディオミキシングの許可・禁止を示すレジスタは、プレーヤの状態を示すシステムパラメータ(SPRM)として用意し、BD−ROM上のプログラムから参照可能であることが望ましい。
【0157】
SPRMは、ユーザーによって設定されるが、設定した値をプログラムから参照可能である場合、ユーザーの意図を保持したプレーヤの状態により、プログラムの処理を切り替えることが可能となる。図34は、オーディオミキシングの許可・禁止を示すレジスタをプログラムが参照、状態に応じて処理を切り替えるプログラムの例を示している。なお、プログラムは、ネットワーク上からダウンロード、HDDのような外部記憶装置に記録されており、BD−ROMと連動して動作してもよい。
【0158】
プログラムがオーディオミキシングの許可・禁止の状態を参照できることにより、同じタイトルを再生していても、オーディオミキシングが許可されている場合は、付加音声による解説音声の合成をメインとしたコンテンツ、オーディオミキシングが禁止されている場合は、画面中にアイコンや映像の合成をメインとしたコンテンツを、自動的に使い分けることが可能となる。
【0159】
プログラムを作るときには事前に分からないプレーヤの状態、ユーザーのオーディオミキシングの許可・禁止の設定を、プログラムから参照することにより、プログラムは適切なコンテンツの再生、付加機能を実現することが可能となる。
【0160】
(オーディオミキシングの許可・禁止を示すコンテンツ上のフラグ)
なお、同様に、ユーザーの意図ではなく、オーサーの意図としてオーディオミキシングの許可・禁止を推奨するフラグを、BD−ROM上に静的データとして記録しておくことも可能である。
【0161】
図35はオーディオミキシングの許可・禁止のフラグをナビゲーションデータに格納しておいた場合の例である。オーディオミキシングの許可・禁止属性以外は同じナビゲーションデータが、付加音声や効果音を含むAVデータやプログラムを参照している例を考える。
【0162】
オーディオミキシングが許可されているナビゲーションデータが再生される場合、AVデータやプログラムに含まれる付加音声や効果音はミキシングして再生される。それに対し、オーディオミキシングが禁止されているナビゲーションデータが再生される場合、AVデータやプログラムに含まれる付加音声や効果音はミキシングされず、主音声のみ、音質の劣化なくそのまま出力される。
【0163】
このような仕組みがあれば、共通のAVデータやプログラムを利用することで、オーディオミキシングを行いたくない映画本編のようなコンテンツと、オーディオミキシングにより付加価値をつけたいメイキング画像のようなコンテンツを実現することが可能となる。オーサーはAVデータやプログラムを複数種類作る必要がなく、また、ディスク上に余分なデータを格納する必要がなくなり、より効率よくコンテンツを記録することが可能となる。
【0164】
(レジスタとフラグの組み合わせ)
ユーザーの意図を示すプレーヤ上のレジスタと、コンテンツオーサーの意図を示すフラグが同時に適用される場合、ともにオーディオミキシングが許可されている場合のみ、AVデータやプログラムに格納された付加音声や効果音のオーディオミキシングが行われる。
【0165】
図36はレジスタおよびフラグの状態と、オーディオミキシングが行われるか否かを示した表である。
【0166】
(実施例3)
次に本発明の第3の実施の形態について説明する。
【0167】
第3の実施の形態は、BD−ROMにおいて新たな付加価値を実現する、ピクチャ・イン・ピクチャアプリケーションの制御に関わる内容である。基本的には第1および第2の実施例に基づく内容であり、拡張または異なる部分を中心に説明する。
【0168】
(ピクチャ・イン・ピクチャ)
図37はピクチャ・イン・ピクチャのアプリケーションの例である。BD−ROMでは、主映像ストリームと副映像ストリームを、同時にデコードしつつ、同じ画面に表示するアプリケーションを実現可能である。
【0169】
ところが、2本のビデオストリームを同時にデコードする必要があるため、プレーヤの処理に非常に負荷がかかる。また、画面を重ねる処理が必要であり、こちらの処理も負荷が大きい。
【0170】
将来、プロセッサの能力が向上すると問題なくなるが、現在はHDサイズの映像を2本同時にスムーズにデコードすることは困難な処理である。
【0171】
主映像のデコードは必要であるため、たとえSD映像であろうが、解像度の高いHD映像であろうがデコードは必須である。だが、プレーヤの能力が足りない場合は、副映像のデコードは不可能であったり、解像度の低いSD映像のみデコード可能である場合もあり得る。
【0172】
そこで、プレーヤが副映像を再生可能であるか否かをプレーヤのシステムパラメータに格納しておく場合を考える。
【0173】
図38に示すように、プレーヤのシステムパラメータ(レジスタ)は、そのプレーヤが副映像をデコード不可能であるか、SD映像ならデコード可能であるか、HD映像でもデコード可能であるかを格納しておく。
【0174】
なお、デコード能力は、解像度やフレームレートごとにより細かく設定してもよい。
ただし、このシステムパラメータは、実施例2の場合とは異なり、ユーザーによる変更は不可能であり、プレーヤの能力に応じて、自動的に設定されるシステムパラメータである。
【0175】
システムパラメータにデコード能力が格納してあり、プログラムからその状態を参照可能であれば、実施例のオーディオミキシングの許可・禁止レジスタの場合と同様、プログラムはプレーヤの能力に応じて再生するコンテンツを適切に切り替えることが可能となる。
【0176】
このような仕組みを用いることにより、オーディオミキシングの場合同様、同じコンテンツを再生した場合でも、ピクチャ・イン・ピクチャをサポートしないプレーヤでは、グラフィクスなどを用いたアプリケーションを再生するが、ピクチャ・イン・ピクチャのSD映像をサポートするプレーヤでは、少し荒い映像によるアプリケーションを実現し、高機能なピクチャ・イン・ピクチャのHD映像をサポートするプレーヤでは、高画質な映像によるオーバーレイ映像を加えたアプリケーションを実現するといったことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0177】
本発明を利用することにより、オーディオミキシングを行うアプリケーションに対して、音質劣化を望まないユーザーに主音声を記録された原音まま出力する仕組みを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】DVDの構成図
【図2】ハイライトの構成図
【図3】DVDでの多重化の例を示す図
【図4】BD−ROMのデータ階層図
【図5】BD−ROM上の論理空間の構成図
【図6】BD−ROMプレーヤの概要ブロック図
【図7】BD−ROMプレーヤの構成ブロック図
【図8】BD−ROMのアプリケーション空間の説明図
【図9】MPEGストリーム(VOB)の構成図
【図10】パックの構成図
【図11】AVストリームとプレーヤ構成の関係を説明する図
【図12】トラックバッファへのAVデータ連続供給モデル図
【図13】VOB情報ファイル構成図
【図14】タイムマップの説明図
【図15】タイムマップを使ったアドレス情報取得方法説明図
【図16】プレイリストファイルの構成図
【図17】プレイリストに対応するプログラムファイルの構成図
【図18】BDディスク全体管理情報ファイルの構成図
【図19】グローバルイベントハンドラを記録するファイルの構成図
【図20】タイムイベントの例を説明する図
【図21】ユーザイベントの例を説明する図
【図22】グローバルイベントハンドラの例を説明する図
【図23】仮想マシンの構成図
【図24】プレーヤ変数テーブルの図
【図25】イベントハンドラ(タイムイベント)の例を示す図
【図26】イベントハンドラ(ユーザイベント)の例を示す図
【図27】プレーヤの基本処理のフローチャート
【図28】プレイリスト再生処理のフローチャート
【図29】イベント処理のフローチャート
【図30】字幕処理のフローチャート
【図31】オーディオミキシングのモデルを示す図
【図32】オーディオミキシングの出力の様子の説明図
【図33】オーディオミキシングの許可・禁止を設定する設定画面と、その状態を保持するレジスタの説明図
【図34】レジスタを参照して処理を切り替えるプログラムの説明図
【図35】オーディオミキシングの許可・禁止を示す属性を持つナビゲーションデータとその処理の説明図
【図36】レジスタとフラグの組み合わせを説明する表
【図37】ピクチャ・イン・ピクチャの説明図
【図38】レジスタを参照して処理を切り替えるプログラムの説明図
【符号の説明】
【0179】
201 BDディスク
202 光ピックアップ
203 プログラム記録メモリ
204 管理情報記録メモリ
205 AV記録メモリ
206 プログラム処理部
207 管理情報処理部
208 プレゼンテーション処理部
209 イメージプレーン
210 ビデオプレーン
211 合成処理部
301 プログラム記録メモリ
302 プログラムプロセッサ
303 UOPマネージャ
304 管理情報記録メモリ
305 シナリオプロセッサ
306 プレゼンテーションコントローラ
307 クロック
308 イメージメモリ
309 トラックバッファ
310 デマルチプレクサ
311 イメージプロセッサ
312 ビデオプロセッサ
313 サウンドプロセッサ
314 イメージプレーン
315 ビデオプレーン
316 合成処理部
317 ドライブコントローラ
S101 ディスク挿入ステップ
S102 BD.INFO読み込みステップ
S103 BD.PROG読み込みステップ
S104 ファーストイベント生成ステップ
S105 イベントハンドラ実行ステップ
S201 UOP受付ステップ
S202 UOPイベント生成ステップ
S203 メニューコール判定ステップ
S204 イベント生成ステップ
S205 イベントハンドラ実行ステップ
S301 プレイリスト再生開始ステップ
S302 プレイリスト情報(XXX.PL)読み込みステップ
S303 プレイリストプログラム(XXX.PROG)
読み込みステップ
S304 セル再生開始ステップ
S305 AV再生開始ステップ
S401 AV再生開始ステップ
S402 VOB情報(YYY.VOBI)読み込みステップ
S403 VOB(YYY.VOB)読み込みステップ
S404 VOB再生開始ステップ
S405 VOB再生終了ステップ
S406 次セル存在判定ステップ
S501 プレイリスト再生開始ステップ
S502 プレイリスト再生終了判定ステップ
S503 タイムイベント時刻判定ステップ
S504 イベント生成ステップ
S505 イベントハンドラ実行ステップ
S601 プレイリスト再生開始ステップ
S602 プレイリスト再生終了判定ステップ
S603 UOP受付判定ステップ
S604 UOPイベント生成ステップ
S605 メニューコール判定ステップ
S606 ユーザーイベント有効期間判定ステップ
S607 イベント生成ステップ
S608 イベントハンドラ実行ステップ
S701 プレイリスト再生開始ステップ
S702 プレイリスト再生終了判定ステップ
S703 字幕描画開始判定ステップ
S704 字幕描画ステップ
S705 字幕表示終了判定ステップ
S706 字幕消去ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のオーディオストリームを合成して再生可能であって、前記複数のオーディオストリームを合成して再生するか主たるオーディオストリームのみを出力するかを識別するレジスタを備えており、前記レジスタの状態により合成するか否かを区別するオーディオストリーム合成部を備えたことを特徴とする再生装置。
【請求項2】
複数のオーディオストリームを合成して再生する再生装置にある、前記複数のオーディオストリームを合成して再生するか主たるオーディオストリームのみを出力するかを識別するレジスタを参照することにより、再生するコンテンツを切り替えるプログラムを備えた情報記録媒体。
【請求項3】
複数のオーディオストリームを記録しており、前記複数のオーディオストリームを合成して再生するか主たるオーディオストリームのみを出力するかを識別する識別子を備えたことを特徴とする情報記録媒体。
【請求項4】
複数のビデオストリームをオーバーレイすることにより同一画面上で再生することが可能であって、複数ビデオストリームの再生能力を示すレジスタを備えたことを特徴とする再生装置。
【請求項5】
前記複数のビデオストリームとは主映像と副映像から成り立っており、前記再生能力とは副映像に対する再生能力であり、前記レジスタとは副映像を再生可能か否か、再生可能な場合はいずれの解像度が再生可能かを示していることを特徴とする、請求項4記載の再生装置。
【請求項6】
複数のビデオストリームをオーバーレイすることにより同一画面上で再生する再生装置にある、前記複数ビデオストリームの再生能力を示すレジスタを参照することにより、再生するコンテンツを切り替えるプログラムを備えた情報記録媒体。
【請求項7】
複数のオーディオストリームを合成して再生するか主たるオーディオストリームのみを出力するかを識別するレジスタを参照するステップと、前記レジスタの値により実行すべき手順を切り替える判定部を備えたことを特徴とする再生方法。
【請求項8】
同一画面上で再生する複数ビデオストリームの再生能力を示すレジスタを参照するステップと、前記レジスタの値により実行すべき手順を切り替える判定部を備えたことを特徴とする再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2007−133938(P2007−133938A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324071(P2005−324071)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】