説明

オーディオ・ディスプレイ装置

【課題】 スピーカーの位置に影響されることなく、音像が常に最適に位置するようにする。
【解決手段】 音響出力用のオーディオユニット体2が映像表示用のディスプレイユニット体3の表示画面を開閉するようにディスプレイユニット体3に対して移動自在に組み合わされたオーディオ・ディスプレイ装置1において、駆動機構85により移動されたオーディオユニット体2の位置を検出する上部ストップセンサ29と下部ストップセンサ30により検出し、スピーカーの位置に応じて、DSP18により各スピーカーに供給する音声信号に音像位置補正処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響出力用の音響出力手段が映像表示用の映像表示手段の表示画面を開閉するように映像表示手段に対して移動自在に組み合わされたオーディオ・ディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3チャンネル以上の独立した音声チャンネルを持つマルチチャンネルを再生可能なメディアとして、スーパーオーディオコンパクトディスク(SACD:Super Audio Compact Disc)やデジタルバーサタイルディスク又はデジタルビデオディスク(DVD:Digtal Versatile Disc or Digital Video Disc)等が規格化されている。
【0003】
例えば、映画館で臨場感のある音響効果を再現するために開発された5.1chサラウンド方式では、聴取者の正面、右前方、左前方、右後方、左後方、低音出力用サブウーファースピーカー(通常は正面に配置)の6つのスピーカーを使って、立体的で臨場感のある音響環境を再現することができる。
【0004】
例えば、聴取者の正面、右前方、左前方、右後方、左後方、低音出力用サブウーファースピーカー(通常は正面に配置)の6つのスピーカーを使って、立体的で臨場感のある音響環境を再現する5.1chサラウンド方式が知られている。なお、サブウーファースピーカーは出力できる音域が限られているため、0.1chとカウントされている。
【0005】
5.1chサラウンド方式は、近年ではDVD−Videoやデジタル放送などにも応用されている。
【0006】
また、実スピーカーだけのシステムでは、通常、水平面内に置かれた各スピーカーから初期反射音及び残響音を生成するので、上方からの反射音は表現できないが、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)による3次元(3D)処理によって、あたかも実際のスピーカー位置とは異なる位置から再生音が出力されているような効果を創出することができ、複数の音源の仮想定位や、音像の位置を仮想的にシフトして、聴取者の前方の任意の位置に音像を制御することができる(例えば、特許文献1、2参照)。
【0007】
また、テレビジョン受像機等のディスプレイユニットは、液晶ディスプレイ等を備えることによって薄型化、大画面化が図られおり、一般に室内の最も目立つ場所に設置され、重要な室内調度品としても位置付けられている。また、ディスプレイユニットは、各種の記録媒体に記録された映像情報等を大型画面で再生表示する機能等の各種機能を搭載した複合機能化も図られている。
【0008】
一方、オーディオユニットにおいても、従来の音響信号の再生機能ばかりでなく、例えばディスプレイユニットと接続されて大型画面に表示される映像に合わせて音響信号を大迫力で再生するといった機能等を有するようになっている。したがって、ディスプレイユニットにおいては、オーディオユニットを一体化したいわゆる複合装置としてのオーディオ・ディスプレイ装置の要求も大きくなっている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−16698号公報
【特許文献2】特開2004−135023号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、ディスプレイユニットにおいては、上述したように室内の最も目立つ場所に設置されるが、映像表示が行われていない状態で表示面が無味乾燥な黒っぽい画面の状態となるために室内の雰囲気を損なわせるといった問題がある。ディスプレイユニットにおいては、大型画面化が図られるに伴ってかかる問題が一層顕著になる。
【0011】
オーディオ・ディスプレイ装置においては、ディスプレイによる大型画面に表示される映像とオーディオユニットによる臨場感あふれる音響出力とによってテレビジョン放送番組や記録媒体の記録情報を視聴することが可能である。オーディオ・ディスプレイ装置においては、一般にディスプレイを視線上の高さ位置に設置するとともに、スピーカーをディスプレイの両側に設置して良好な音場が構成されるようにする。
【0012】
しかしながら、オーディオ・ディスプレイ装置においては、例えばオーディオ機能により音楽のみを聴取する場合において、視線上の前方に存在するディスプレイの無味乾燥な大型画面がせっかくの雰囲気を損なわせるといった問題がある。また、オーディオ・ディスプレイ装置においては、ディスプレイの大型化に伴ってその両側にスピーカーを設置した構造から全体の幅寸法が大きくなってしまうといった問題がある。オーディオ・ディスプレイ装置においては、全体をある程度の大きさに押さえて構成しようとする場合に、大型画面化やスピーカー能力の抑制を図る必要がある。
【0013】
また、ホームシアターなどのマルチチャンネン音響再生システムでは、設置上の問題により、映像表示装置がスピーカーの位置よりも低くなる場合がある。この場合、映像表示装置の表示画面から音響出力による音像の位置がずれてしまうと、不自然な再生状態になってしまう。したがって、スピーカーの位置に影響されることなく、音像が常に最適に位置するように、音声信号に音像位置補正処理を施す必要がある。
【0014】
本発明は、音響出力用の音響出力手段が映像表示用の映像表示手段の表示画面を開閉するように映像表示手段に対して移動自在に組み合わされたオーディオ・ディスプレイ装置において、スピーカーの位置に影響されることなく、音像が常に最適に位置するようにすることにある。
【0015】
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下に説明される実施の形態の説明から一層明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る音響再生装置は、映像表示手段と、音声信号を音響出力に変換する複数のスピーカーを備える音響出力手段と、上記映像表示手段の表示画面を覆う位置と上記表示画面を露出した位置に上記音響出力手段を移動させる移動手段と、上記移動手段により移動された音響出力手段に備えられたスピーカーの位置を検出する位置検出手段と、上記位置検出手段により検出されたスピーカーの位置に応じて、各スピーカーに供給する音声信号に音像位置補正処理を施す音像位置補正処理手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る音響再生装置では、例えば、上記移動手段は、上記映像表示手段の表示画面を覆う上方位置と上記表示画面を露出させる下方位置に上記音響出力手段を移動させ、上記音像位置補正処理手段は、上記下方位置における上記音響出力手段による音響出力の音像を上記映像表示手段の表示画面に対応させて定位させる音像位置補正処理を音声信号に施す。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、音響出力用の音響出力手段が映像表示用の映像表示手段の表示画面を開閉するように映像表示手段に対して移動自在に組み合わされたオーディオ・ディスプレイ装置において、スピーカーの位置に影響されることなく、音像が常に最適に位置するようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能であることは言うまでもない。
【0020】
本発明は、例えば図1に示すような構成のオーディオ・ディスプレイ装置1に適用される。
【0021】
音響信号や音声信号等(以下、音響信号と総称する。)を出力するスピーカユニットを有するオーディオユニット体2と、テレビジョン放送映像やDVD(Digital Versatile Disc)やCD(Compact Disc)等の各種可搬型記録媒体(以下、記録媒体と総称する。)に記録された映像情報に基づく映像や画像(以下、は映像と総称する。)を表示する液晶ディスプレイ等のディスプレイを有するディスプレイユニット体3からなる。
【0022】
すなわち、このオーディオ・ディスプレイ装置1は、図1及び図2に示すように、互いに独立ユニット体として構成されたオーディオユニット体2とディスプレイユニット体3とを備える。オーディオ・ディスプレイ装置1は、ベース4にラック体6を一体化したスタンド部5を立設するとともに、ラック体6にキャリア体7を移動自在に組み合わせて構成し、据え置き型として居間等の室内に設置される。
【0023】
オーディオ・ディスプレイ装置1は、ラック体6に対してディスプレイユニット体3を所定の高さ位置で固定した状態で搭載するとともに、キャリア体7に対してオーディオユニット体2を固定した状態で搭載する。オーディオ・ディスプレイ装置1は、キャリア体7が昇降機構8によってラック体6に対して昇降動作されるようにし、このキャリア体7に搭載したオーディオユニット体2がディスプレイユニット体3の前面部を昇降移動されるように構成される。
【0024】
オーディオ・ディスプレイ装置1は、独立ユニット体として構成したオーディオユニット体2とディスプレイユニット体3とを、それぞれキャリア体7とラック体6とに独立して搭載する。したがって、オーディオ・ディスプレイ装置1は、例えば工程を全く異にするオーディオユニット体2とディスプレイユニット体3とをそれぞれオーディオ工程とディスプレイ工程で組み立てることが可能であり、組立工程の合理化や信頼性の向上或いはコスト低減が図られる。
【0025】
また、オーディオ・ディスプレイ装置1は、オーディオユニット体2とディスプレイユニット体3のいずれか一方に保守の必要性が生じた場合に、当該ユニット体のみをキャリア体7或いはラック体6から取り外してその対応が可能であり、保守対応の合理化が図られる。なお、オーディオ・ディスプレイ装置1は、組立状態でオーディオユニット体2とディスプレイユニット体3とがケーブル等を介して適宜に電気的接続される。
【0026】
オーディオ・ディスプレイ装置1は、オーディオユニット体2が下降された状態で、図1及び図5に示すようにディスプレイユニット体3を露出させる第1位置に設定される。オーディオ・ディスプレイ装置1は、オーディオユニット体2が上昇された状態で、図2に示すように前面部においてディスプレイユニット体3を覆い隠す第2位置に設定される。オーディオ・ディスプレイ装置1は、後述する各機能モードにおいてオーディオユニット体2が第1位置と第2位置とに切換移動される。
【0027】
オーディオ・ディスプレイ装置1は、電源のオンオフ操作、オーディオモードとディスプレイモード或いは記録媒体モードの切替操作、音量調整、チャンネル切替操作等の一般的なオーディオ装置の操作やテレビジョン受像機の操作がリモートコントローラ9によって行われる。なお、オーディオ・ディスプレイ装置1は、図示しないがオーディオユニット体2やディスプレイユニット体3にも個別に適宜の操作スイッチ群が設けられている。オーディオ・ディスプレイ装置1においては、オーディオユニット体2がリモートコントローラ9からのリモートコントロール信号によって昇降動作されるとともに、後述するセンサ等からの制御信号によって自動的に昇降動作される。
【0028】
オーディオ・ディスプレイ装置1は、オーディオユニット体2によって受信したラジオ放送の音楽等や記録媒体84に記録された音楽情報等を再生して聴取する。また、オーディオ・ディスプレイ装置1は、ディスプレイユニット体3によって受信したテレビジョン放送の映像や記録媒体84に記録された映像情報等を再生して表示する。なお、オーディオ・ディスプレイ装置1は、その際にオーディオユニット体2から音響信号の出力が行われる。
【0029】
オーディオユニット体2は、図1及び図2に示すように、全体が横長矩形の薄箱状を呈しており、ディスプレイユニット体3の前面部に移動されて状態でその前面を覆い隠すに足る外形寸法を以って形成される。オーディオユニット体2には、主面中央の上方位置に表示部10とリモートコントロール信号の受光部11とが設けられている。オーディオユニット体2は、詳細を省略するが表示部10において時刻やカレンダー等の表示を行うとともに、電源状態や機能モードの設定状態、音量等の適宜の表示が行われるようにする。オーディオユニット体2は、受光部11によってリモートコントローラ9から発信されたリモートコントロール信号を受信する。
【0030】
オーディオユニット体2には、筐体の上部に記録媒体84を装填するスロット12が設けられている。なお、オーディオユニット体2は、1個のスロット12が図示されているが、外形寸法仕様を異にする複数種の記録媒体84を装填して使用する場合には、それぞれに適合した複数個のスロット12を設けるようにしてもよく、また筐体の側面部に設けるようにしてもよい。
【0031】
オーディオユニット体2には、筐体の内部に長さ方向の両側に位置して一対のリヤスピーカ13RR,13RL及び一対のフロントスピーカ13FR,13FLとセンタースピーカ13S(以下、個別に説明する場合を除いてスピーカユニット13と総称する。)が内蔵されている。オーディオユニット体2には、図3に示すように、筐体の内部にスロット12から装填された記録媒体84を駆動して記録された音響情報や映像情報等の記録情報を再生する記録媒体再生部を構成するプレーヤ14やドライバ15が内蔵されている。オーディオユニット体2には、ラジオ放送等を受信するためのチューナ16が内蔵される。
【0032】
オーディオユニット体2には、ドライバ15やチューナ16或いはディスプレイユニット3から入力される音響信号を選択するとともに所定の信号処理を施す音響信号処理部を構成する入力セレクタ/デコーダ(DIR)17や、第1位置と第2位置とに切換移動された状態で音像位置を上下方向に調整してスピーカー13から最適な状態で出力が行われるようにするデジタルシグナルプロセッサ(DSP)18或いはこのDSP18から出力された音響信号を所定のレベルで各スピーカー13に対して供給する等の機能を奏するマルチチャンネル増幅器19等が内蔵されている。
【0033】
オーディオユニット体2は、上述したように昇降機構8によりディスプレイユニット3に対して昇降動作されるが、途中で異物71等を挟み込んでしまった場合に各部を破損させてしまう虞がある。したがって、オーディオユニット体2には、異物71の挟み込み等を検出するために、筐体の上部に上部センサ20が設けられるとともに筐体の底部に下部センサ21が設けられている。オーディオユニット体2は、これら上部センサ20或いは下部センサ21が異物71の挟み込み等を検出すると、昇降動作が直ちに停止されるようにする。
【0034】
オーディオユニット体2には、詳細を省略するが筐体の前面に設けられた適宜の保持構造によって、前面パネル2Aを着脱することが可能である。前面パネル2Aは、例えばスピーカー13の放音特性を損なうことなくかつ内部を目隠しする薄厚で軽量なサランネット等によって形成される。また、前面パネル2Aは、室内の雰囲気に合わせた適宜の色調や模様或いは図形等を設けるようにしてもよい。オーディオユニット体2は、第2位置に設定されてディスプレイユニット3の前面を覆い隠すことによって、前面パネル2Aにより独自の雰囲気を醸し出すことを可能とする。
【0035】
ディスプレイユニット体3は、詳細を省略するが、一般的なテレビジョン受像機とほぼ同等の機能を有するとともに、オーディオユニット体2との接続機能が付加されて構成される。ディスプレイユニット体3には、ディスプレイとして薄型で数十インチの大型画面を有する液晶ディスプレイ22が備えられる。ディスプレイユニット体3には、図3に示すようにオーディオユニット体2のドライバ15から出力された再生情報を選別するセレクタ23が内蔵されている。ディスプレイユニット体3には、テレビジョン放送を受信するチューナ24が内蔵されており、受信した放送番組の情報がセレクタ23へと出力される。ディスプレイユニット体3は、セレクタ23によって選別された映像情報が液晶ディスプレイ22に供給されて表示画面に映像の表示が行われるとともに、音響信号がオーディオユニット体2側の入力セレクタ/デコーダ17へと出力される。
【0036】
ディスプレイユニット体3には、図示しないその他の制御回路部や機能回路部等の全体の動作制御を行うために、マイクロコンピュータ25が搭載される。ディスプレイユニット体3においては、マイクロコンピュータ25に対して図示しない操作部に設けられた各種の操作スイッチからの制御信号やリモートコントローラ9から発信されたリモートコントロール信号が入力されて、このマイクロコンピュータ25において所定の制御処理が行われて各部に制御信号が出力される。
【0037】
液晶ディスプレイ22は、周知のように電源が投入されていない状態で表示面が無味乾燥な黒っぽい画面の状態となるために、大型画面であるほど室内の雰囲気を損なわせる。オーディオ・ディスプレイ装置1においては、上述したようにオーディオユニット体2がディスプレイユニット体3の前方位置に上昇して第2位置に設定されることによって液晶ディスプレイ22の表示面を覆い隠すことで、液晶ディスプレイ22の表示画面の雰囲気からオーディオユニット体2の前面パネル2Aによる独自の雰囲気が醸し出されるようになる。
【0038】
ところで、ディスプレイユニット体3は、電源が投入されて液晶ディスプレイ22に映像表示が行われている状態で、電源回路部等から熱が発生する。一方、液晶ディスプレイ22は、周知のように表示画面から熱が加えられることによって液晶に影響が生じ、映像に歪みを発生させることがある。オーディオ・ディスプレイ装置1においては、液晶ディスプレイ22に映像表示が行われている状態のままで表示面をオーディオユニット体2によって覆い隠すことにより、発生熱がオーディオユニット体2とディスプレイユニット体3との間に籠もって高温状態となることがある。オーディオ・ディスプレイ装置1においては、この熱の影響によって液晶ディスプレイ22の表示品質が劣化する虞が生じる。したがって、オーディオ・ディスプレイ装置1においては、液晶ディスプレイ22が映像を表示する機能モードに設定されている状態では、オーディオユニット体2が第1位置に保持されるように構成される。
【0039】
オーディオ・ディスプレイ装置1においては、ラック体6が、比較的重量の大きなディスプレイユニット体3を支持するとともにキャリア体7を介してオーディオユニット体2を支持することから、充分な機械的強度を有する構造体として構成されてベース4に立設されてスタンド部5内を導かれる。オーディオ・ディスプレイ装置1においては、オーディオユニット体2とディスプレイユニット体3との間のいわゆるデッドスペースにスタンド部5が配置され、外観を損なわない範囲で内部に比較的大きな空間部を構成することが可能である。
【0040】
オーディオ・ディスプレイ装置1においては、スタンド部5を利用してオーディオユニット体2やディスプレイユニット体3への配線を行うとともに、制御回路部や電源回路部或いは昇降機構8等が設けられる。スタンド部5には、図3に示すように全体の制御動作を担当するマイクロコンピュータ26と、リモートコントローラ9から発信され受光部11によって受信したリモートコントロール信号を処理するリモコンマイクロコンピュータ27が内蔵される。
【0041】
スタンド部5には、詳細を省略するが手動によって操作されるメイン電源スイッチや音量切換スイッチ或いは各種スイッチを有する操作スイッチ部28が設けられている。スタンド部5には、オーディオユニット体2を昇降動作させる昇降機構8の動作を制御する上部ストップセンサ29と下部ストップセンサ30及び上部減速センサ31と下部減速センサ32とが設けられている。スタンド部5には、昇降機構8を構成するモータコントローラ33と駆動モータ34とが備えられるとともに、駆動モータ34の回転状態を検出する回転検出機構35が付設されている。
【0042】
スタンド部5には、図4に示すようにそれぞれの放音部を側方側に向けて配置した一対のスーパウーハ36R、36L(以下、個別に説明する場合を除いてスーパウーハ36と総称する。)が内蔵されている。スーパウーハ36は、オーディオユニット体2に内蔵されたスピーカユニット13すなわちリヤスピーカ13RR,13RL、フロントスピーカ13FR,13FL及びセンタースピーカ13Sとともに5.1チャンネル方式のサラウンドスピーカシステムを構築している。スーパウーハ36は、大型で重量が大きな部材であるが、スタンド部5に内蔵することによってオーディオユニット体2を軽量化するとともにより特性の高い5.1チャンネル方式のサラウンドスピーカシステムが構築される。
【0043】
オーディオ・ディスプレイ装置1は、図3に示したようにオーディオユニット体2とディスプレイユニット体3及びスタンド部5内に構成各部を内蔵するようにしたが、かかる配置構成に限定されないことは勿論である。
【0044】
オーディオ・ディスプレイ装置1には、上述したようにスタンド部5の内部に昇降機構8の駆動部を構成する駆動機構85が配設される。昇降機構8は、駆動機構85と、キャリア体7を円滑に昇降動作させる複数のガイドコロ機構48とから構成され、図4に示すように駆動機構85がスタンド部5の内部に一部を臨ませられて昇降動作するキャリア体7の内部に配置された構造となっている。
【0045】
オーディオ・ディスプレイ装置1は、駆動機構85をスタンド部5の内部に設けることによって、独自の外観的印象を与えるようにするとともに異物等の挟み込みも防止されるようになり安全性が図られる。オーディオ・ディスプレイ装置1は、駆動機構85と詳細をガイドコロ機構48とによってキャリア体7、換言すればオーディオユニット体2を円滑かつ騒音の発生を低減して昇降動作させることが可能である。
【0046】
このオーディオ・ディスプレイ装置1において、マイクロコンピュータ26は、操作スイッチ部28の操作入力、又は、リモコンマイクロコンピュータ27により処理されたリモートコントローラ9からのリモートコントロール信号に応じて、モータコントローラ33に制御命令を与えることにより、昇降機構8の動作を制御して、オーディオユニット体2を昇降させる。また、マイクロコンピュータ26は、上記昇降機構8を構成する駆動モータ34の回転状態を検出する回転検出機構35、上部ストップセンサ29、下部ストップセンサ30、上部減速センサ31及び下部減速センサ32による各検出出力に基づいて、オーディオユニット体2の昇降位置に応じた制御命令を上記モータコントローラ33に与えて、昇降機構8の動作を制御する。
【0047】
また、このオーディオ・ディスプレイ装置1において、DSP18は、入力セレクタ/デコーダ17を介して入力されるオーディオ信号に対して、オーディオユニット体2の内蔵されているスピーカユニット13すなわちリヤスピーカ13RR,13RL、フロントスピーカ13FR,13FL及びセンタースピーカ13Sと、スタンド部5に内蔵されているスーパウーハ36で構成される5.1チャンネル方式のサラウンドスピーカシステムに対応する信号処理をDSP18により行っている。ここで、オーディオ・ディスプレイ装置1では、リヤスピーカ13RR,13RLは、フロントスピーカ13FR,13FL及びセンタースピーカ13Sとともに、オーディオユニット体2に内蔵されているので、DSP18は、上記リヤスピーカ13RR,13RLに供給する音声信号には、仮想音源として後方側に定位させる仮想音源生成処理を施す。
【0048】
さらに、このオーディオ・ディスプレイ装置1では、オーディオユニット体2の昇降位置に応じて、マイクロコンピュータ26及びDSP18により、フロントスピーカ13FR,13FLに供給するフロント左チャンネルとフロント右チャンネルの音声信号のみに音像位置補正処理を施すようになっている。
【0049】
ここで、音像位置補正処理を施すためのマイクロコンピュータ26及びDSP18の構成を図6に示す。
【0050】
マイクロコンピュータ26は、オーディオユニット体2の昇降位置を検出する上部ストップセンサ29及び下部ストップセンサ30による検出出力に基づいて、オーディオ・ディスプレイ装置1は、オーディオユニット体2が下降された状態で、ディスプレイユニット体3を露出させる第1位置にある場合と、そうでない場合とを判別して、オーディオユニット体2の昇降位置に応じた音像位置補正用データをDSP18に与える。
【0051】
すなわち、マイクロコンピュータ26は、RAM261に書き込まれている位置情報から音像位置補正用データを決める処理プログラムを算術論理演算器(ALU:Arithmetic Logic Unit)262により実行し、アドレスジェネレータ263により生成される読み出しアドレスにしたがってROM264から音像位置補正用データを読み出して、入出力インターフェース265を介してDSP18に与える。
【0052】
なお、上記ROM264には、既存の手法にしたがって求めた音像位置補正用データが予め保存されている。ここでは、例えば 空間音響(著者:Jens Blauert,森本政之、後藤敏幸、出版日:1986年、出版元:鹿島出版会) に記載されている基礎検討情報を元に作成した音像位置補正用データを用いたが、特許文献1、2に記載されている手法により求めた音像位置補正用データを用いることも可能である。
【0053】
また、マイクロコンピュータ26は、音像位置補正処理の制御命令をDSP18に与え、DSP18からデコード情報を取得する。
【0054】
DSP18は、マイクロコンピュータ26により与えられた音像位置補正用データに基づいて、入力セレクタ/デコーダ17を介して入力されるオーディオ信号のうちのフロントスピーカ13FR,13FLに供給するフロント左チャンネルとフロント右チャンネルの音声信号のみに音像位置補正処理を施す。
【0055】
すなわち、DSP18は、マイクロコンピュータ26により与えられた音像位置補正用データを入出力インターフェース181を介して取得するとRAM182に書き込む。そして、ROM185に書き込まれている音像位置補正プログラムを算術論理演算器(ALU:Arithmetic Logic Unit)183により実行し、アドレスジェネレータ184により生成される読み出しアドレスにしたがってRAM182から音像位置補正用データを読み出して、フロント左チャンネルとフロント右チャンネルの音声信号のみに音像位置補正処理を施す。このDSP18により実行される音像位置補正プログラムの機能構成を図7に示す。
【0056】
このオーディオ・ディスプレイ装置1では、オーディオユニット体2が下降された状態で、ディスプレイユニット体3を露出させる第1位置にある場合に、第1位置における上記5.1チャンネル方式のサラウンドスピーカシステムによる音響出力の音像を上記ディスプレイユニット体3の表示画面に対応させて位置させるようにフロント左チャンネルとフロント右チャンネルの仮想音源を定位させる音像位置補正処理を音声信号に施す。
【0057】
ここで、このオーディオ・ディスプレイ装置1では、上記リヤスピーカ13RR,13RLに供給する音声信号には、仮想音源として後方側に定位させる仮想音源生成処理をDSP18により施しているので、上記リヤスピーカ13RR,13RLに供給する音声信号にも上記音像位置補正処理を施してしまうと音像の不自然になってしまうのを虞があり、マイクロコンピュータ26により与えられた音像位置補正用データに基づいて、入力セレクタ/デコーダ17を介して入力されるオーディオ信号のうちのフロントスピーカ13FR,13FLに供給するフロント左チャンネルとフロント右チャンネルの音声信号のみに音像位置補正処理を施すようにしている。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明を適用したオーディオ・ディスプレイ装置の斜視図であり、オーディオユニット体が下降して液晶ディスプレイを露出させる第1位置の状態を示す。
【図2】上記オーディオ・ディスプレイ装置の正面図であり、オーディオユニット体が上昇して液晶ディスプレイを覆い隠した第2位置の状態を示す。
【図3】上記オーディオ・ディスプレイ装置の構成ブロック図である。
【図4】上記オーディオ・ディスプレイ装置の平面図である。
【図5】上記オーディオ・ディスプレイ装置におけるオーディオユニット体を第1位置に移動させた状態の側面図である。
【図6】上記オーディオ・ディスプレイ装置において、音像位置補正処理を施すためのマイクロコンピュータ及びDSPの要部構成をブロック図である。
【図7】DSPにより実行される音像位置補正プログラムの機能構成を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1 オーディオ・ディスプレイ装置、2 オーディオユニット体、3 ディスプレイユニット体、6 ラック体、7 キャリア体、8 昇降機構、9 リモートコントローラ、12 スロット、13RR,13RL リヤスピーカ、13FR,13FL フロントスピーカ、13S センタースピーカ、14 記録媒体プレーヤ、16 ラジオチューナ、17 入力セレクタ/デコーダ、18 DSP、19 マルチチャンネル増幅器、20 上部異物検出センサ、21 下部異物検出センサ、22 液晶ディスプレイ、24 テレビチューナ、26 マイクロコンピュータ、28 操作スイッチ、29 上部ストップセンサ,30 下部ストップセンサ、31 上部減速センサ、32 下部減速センサ、33 モータドライバー、34 駆動モータ、36 スーパウーハ、48 ガイドコロ機構、71 異物、84 記録媒体、85 駆動機構、181,265 入出力インターフェース、182,261 RAM、183,262 算術論理演算器、184,263 アドレスジェネレータ、185,264 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像表示手段と、
音声信号を音響出力に変換する複数のスピーカーを備える音響出力手段と、
上記映像表示手段の表示画面を覆う位置と上記表示画面を露出した位置に上記音響出力手段を移動させる移動手段と、
上記移動手段により移動された音響出力手段に備えられたスピーカーの位置を検出する位置検出手段と、
上記位置検出手段により検出されたスピーカーの位置に応じて、各スピーカーに供給する音声信号に音像位置補正処理を施す音像位置補正処理手段と
を備えることを特徴とするオーディオ・ディスプレイ装置。
【請求項2】
上記移動手段は、上記映像表示手段の表示画面を覆う上方位置と上記表示画面を露出させる下方位置に上記音響出力手段を移動させ、
上記音像位置補正処理手段は、上記下方位置における上記音響出力手段による音響出力の音像を上記映像表示手段の表示画面に対応させて定位させる音像位置補正処理を音声信号に施すことを特徴とする請求項1記載のオーディオ・ディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−6281(P2007−6281A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185594(P2005−185594)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】