説明

オールケーシング工法における掘削データ管理システム

【課題】油圧駆動掘削で行なわれるオールケーシング工法(場所打ち杭)によるケーシングチューブの地盤圧入掘削の掘削データの取得及び記録をなす管理システムを提供する。
【解決手段】掘削装置のチューブ掴持部に掘削進行を検出するリニアエンコーダ(深度センサ11)、及びチューブの押し込みを行なう油圧機構に供給する油圧値を検出する油圧センサ12と、作業開始、中断、再開、終了或いは次杭掘削開始の入力指示手段を備えると共に、作業開始指示入力で前記リニアエンコーダ及び油圧センサの検知データを連続的又は所定の時間間隔で記録処理し、作業中断指示入力で記録処理を中断し、再開指示入力で記録処理を中断前に連続して処理して、当該場所打ち杭の杭毎のケーシング掘削状況を記録してなるデータ処理手段31を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧駆動掘削で行なわれるオールケーシング工法(場所打ち杭)によるケーシングチューブの地盤圧入掘削の掘削データ管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
オールケーシング工法による場所打ち杭の構築に際して、予め地盤ボーリング調査を行なった後に所定の設計を行い、当該設計に基づいて施工し、施工時の掘削孔の深度管理や施工後の記録としては、掘削前にケーシングに寸法表示を施して写真を撮り、掘削後のケーシング残尺も写真を撮って記録して、当該掘削孔の施工実体の記録を残している。
【0003】
また施工時の確認作業として、検尺テープを穴底まで下して視認検尺を行い、掘削地盤については、掘削土のサンプルの採取ならびに視認によって行っている。
【0004】
他の削孔工法(オーガ掘削工法)においては、掘削状況(深度、地盤状況)を把握する手段が従前より種々提案されている。例えば特許文献1(実開昭63−76043号公報)には、リーダマストに装着したアースオーガ本体に検出ロープを結び着け、検出ロープの繰り出し巻き取り長さ及び繰り出し巻き取り速さの検出によって、アースオーガ掘削機の深度・速度検出を行なうことが示されている。
【0005】
また特許文献2(特開平5−287721号公報)には、地盤を削孔する掘削機のオーガを駆動するオーガ駆動用モータの掘削時における電流値を検出すると共に、オーガの上下方向移動距離(深度)を検出し、予めボーリング調査して得たN値データと前記の検出値データとを比較して当該掘削孔の杭支持層(固い地盤)の検出を行なう手法が開示されている。
【0006】
また特許文献3(特開2001−73361号公報)には、基礎施工機械の施工手段に応じ定めた各種施工データの検出データ(場所打ち杭の構築の場合は、機材の吊り荷重データ、オーガの下降速度の検出データ、掘削負荷検出のためのオーガ電流データ又はオーガ圧力データ、セメントミルク流量検出データ)を演算処理して、記録し表示する手段が開示されている。
【0007】
さらに特許文献4(特開2004−250956号公報)には、掘削深度計測をオーガ昇降用モータの回転数の積算で行なう施工管理システムにおいて、作業ロッドの掴み替え時の積算の補正を、回転駆動装置における作業用ロッドの掴み替えを開始した位置から掴み替え後に作業を再開した位置までの移動距離との差を求め行う手段が開示されている。
【0008】
【特許文献1】実開昭63−76043号公報。
【特許文献2】特開平5−287721号公報。
【特許文献3】特開2001−73361号公報。
【特許文献4】特開2004−250956号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記のとおりオールケーシング工法による場所打ち杭の構築に際して、当該工事地域のボーリング調査の結果は残されるが、各杭全ての正確な施工状況(設計どおり施工されたか、設計どおりの施工において問題が生じなかった)の記録は必ずしも正確に残されているものではなく、これらの事項は、上物の構築後には確認することが出来ない。
【0010】
他方オーガ掘削施工を対象とした施工管理(掘削状況の把握)は、前記のとおり種々提案されているが、オーガ掘削作業の施工データ管理は、各動作部材の作動源となる駆動モータの負荷状態(駆動電流値)、稼動積算(回転数積算)を基礎とするものであり、主として油圧作動を行なうオールケーシング工法にはそのまま適用することはできない。
【0011】
そこで本発明は、オールケーシング工法に適する施工データ管理システムを提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るオールケーシング工法における掘削データ管理システムは、ケーシングチューブを保持して回転・揺動等で押し込む掘削装置を使用し、ケーシングチューブ内の土砂を掘削排土し、場所打ち杭を構築するオールケーシング工法において、掘削装置のチューブ掴持部に掘削進行を検出するリニアエンコーダ、及びチューブの押し込みを行なう油圧機構に供給する油圧値を検出する油圧センサと、作業開始、中断、再開、終了或いは次杭掘削開始の入力指示手段を備えると共に、作業開始指示入力で前記リニアエンコーダ及び油圧センサの検知データを連続的又は所定の時間間隔で記録処理し、作業中断指示入力で記録処理を中断し、再開指示入力で記録処理を中断前に連続して処理して、当該場所打ち杭の杭毎のケーシング掘削状況を記録してなるデータ処理手段を備えてなることを特徴とするものである。
【0013】
而して設計どおりの深さまでの場所打ち杭を構築する際に、作業中の深度(リニアエンコーダの検出値)と、チューブの押し込み駆動する油圧装置の駆動トルク(油圧値)を同時に検出し記録し、更に表示手段で表示し、作業途中でのチューブの継ぎ足し作業時には、中断指示入力で検出値の記録を停止し、再開指示入力で中断前の記録に連続して検出値を記録・表示する。
【0014】
従って掘削深度の進行にともなって、当該深度における駆動油圧の検出値によって当該深度の掘削抵抗即ち地盤状況を知ることができ、各杭1本1本の記録を取ることで当該場所打ち杭の施工状況を後日容易に確認できると共に、作業中においても、ボーリング調査で定めた設計に基づく施工状況と当該杭打ち箇所の相違による地盤状態変化をも確認しながらの作業となるので、設計値と現実の状況が相違すると判断した場合には、更に深く杭打ちを行なうなどの対応も可能となる。
【0015】
また本発明(請求項2)は、前記の掘削データ管理システムにおいて、掘削装置に、チューブの掴持の有無を検知するチャックセンサを設け、チャック解除後所定時間経過後にチューブ掴持を検知しない場合に作業中断と判別し、チャック解除後の検知データを記録から消去するデータ処理手段を備えてなるものである。
【0016】
而してケーシングチューブの継ぎ足し作業に際して、中断指示入力を行わなかった場合でも、ケーシングチューブの継ぎ足し作業時にケーシングチューブの掴持が解除されるので、この解除を検知し、一定時間解除状態が継続すると、掘削作業に直接関りの無いケーシングチューブの継ぎ足し作業と判別し、ケーシングチューブの継ぎ足し作業と判別した記録を消去すると、誤って中断指示入力を忘れたとしても、当該施工記録の連続性を確保できるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成は上記の通りで、オールケーシング工法による場所打ち杭の施工において、ケーシングチューブの掘削状況(杭の構築と、地盤深度と掘削抵抗の関係)を検出し記録することで、後日においても各杭の施工状況及び地盤状況を確認することができ、また施工の進行に対応して掘削状況(地盤強度の確認)も把握でき、事前調査と異なる地盤状態であっても柔軟に対応できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の実施形態について説明する。本発明の対象となる掘削装置は、ケーシングチューブを掴持する掴持機構と、ケーシングチューブを回転させながら又は揺動させながら地盤中に押し込む圧入油圧機構を備えたもので、この掘削装置に所定の記録装置を付設したものである。
【0019】
記録装置は、検出手段1と、作動入力手段2と、所定のデータを処理し、記録し、表示する処理部3を備えるものである。
【0020】
検出手段1としては、深度センサ11と圧力センサ12を備えたもので、深度センサ11は、リニアエンコーダを採用し、掘削装置のケーシングチューブ掴持部の掘削進行距離を検出させる。圧力センサ12は、掘削装置に搭載された油圧ポンプから前記圧入油圧機構への作動油供給圧力を検出するもので作動油供給路に設ける。
【0021】
作動入力手段2としは、操作スイッチ21とチャックセンサ22を備えたもので、操作スイッチ21は、作業開始スイッチと、作業中断スイッチと、作業再開スイッチ(例えば作業中断検知或いは作業中断スイッチ入力の後に、作業開始スイッチ入力を作業再開と認識するプログラムを組み込むと不要である)、作業終了スイッチ(作業開始時の杭番号入力でリセットされる場合には、特に必要としない)で、これらのスイッチは掘削装置に設けた操作パネルに設けても良いし、処理部3とするパソコンの入力スイッチ(キーボード)を採用するようにしても良い。
【0022】
チャックセンサ22は、ケーシングチューブを掴持する掴持機構に、ケーシングチューブの掴持の有無を検知するマイクロスイッチである。
【0023】
処理部3は、一般のパソコンで構成されるもので、所定のプログラム(データ処理手段31)及び所定の記録媒体(DVD等のデータ記録手段)への記録手段32並びにデータの表示部(例えば液晶デスプレイ:TFT)33を備えたものである。
【0024】
而して掘削作業開始時に、施工工事や当該掘削施工の杭番号をパソコンに入力し、作業開始スイッチをオン(作業開始指示信号入力)し、記録装置を動作させる。
【0025】
ケーシングチューブの押し込み作業が開始し、ケーシングチューブが地盤へ押し込まれると、その深度がリニアエンコーダで検出され、同時に当該時の圧入油圧機構への作動油圧力を同時に検知する。そしてこの検出値は、データ記録手段32に記録され、表示部33で表示される
【0026】
更にケーシングチューブは継ぎ足しを必要とするもので、継ぎ足し作業に際しては、掘削進行がなされず、これを掘削抵抗の増大と解釈されないように、継ぎ足し作業を行なう場合に、作業中断スイッチをオン(中断信号入力)とし、記録処理を停止する。そして継ぎ足し作業を終了すると作業再開スイッチをオン(作業再開信号入力)して、検知データ取得を再開し、所定の掘削を終了すると、作業終了指示信号入力で検知データ取得を終了する。この検知データは、各杭全てにおいて記録(DVD等にダウンロード)しておくものである。
【0027】
また継ぎ足し作業時に、作業中断スイッチを入れなかった場合でも、ケーシングチューブの継ぎ足し作業時にケーシングチューブの掴持が一旦解除されるので、この解除を検知し、処理部3に検知信号を送り、一定時間解除状態が継続すると、掘削進行と関りの無いケーシングチューブの継ぎ足し作業と判別し、ケーシングチューブの掴持解除以後の検知データを消去する。従って中断指示入力を忘れたとしても、当該施工記録の連続性を確保できるものである。
【0028】
このように検知し記録したデータは、各杭全てにおいて記録されるもので、記録されるデータにおける作動油圧値は掘削抵抗に対応し、当該掘削進行深度と当該時の掘削抵抗と、更に掘削進行速度(掘削深度を記録した時間との関係から求められる)等から、当該場所打ち杭を構築した地盤状況を並びに杭打ち深さを確実に且つ容易に確認することが出来るものである。
【0029】
更に掘削途中においては、表示部33で掘削深度と掘削抵抗を知ることができるので、設計どおりの施工に問題があると判断した場合には、容易に修正施工することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態の記録装置の簡易なブロック図。
【符号の説明】
【0031】
1 検出手段
11 深度センサ
12 圧力センサ
2 作動入力手段
21 操作スイッチ
22 チャックセンサ
3 処理部
31 データ処理手段
32 記録手段
33 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングチューブを保持して回転・揺動等で押し込む掘削装置を使用し、ケーシングチューブ内の土砂を掘削排土し、場所打ち杭を構築するオールケーシング工法において、掘削装置のチューブ掴持部に掘削進行を検出するリニアエンコーダ、及びケーシングチューブの押し込みを行なう油圧機構に供給する油圧値を検出する油圧センサと、作業開始、中断、再開、終了或いは次杭掘削開始の入力指示手段を備えると共に、作業開始指示入力で前記リニアエンコーダ及び油圧センサの検知データを連続的又は所定の時間間隔で記録処理し、作業中断指示入力で記録処理を中断し、再開指示入力で記録処理を中断前に連続して処理して、当該場所打ち杭の杭毎のケーシング掘削状況を記録してなるデータ処理手段を備えてなることを特徴とするオールケーシング工法における掘削データ管理システム。
【請求項2】
掘削装置に、ケーシングチューブの掴持の有無を検知するチャックセンサを設け、チャック解除後所定時間経過後にケーシングチューブ保持を検知しない場合に作業中断と判別し、チャック解除後の検知データを記録から消去するデータ処理手段を備えてなる請求項1記載のオールケーシング工法における掘削データ管理システム。

【図1】
image rotate