説明

カウンター板

【課題】 上方への放熱を伴う蓄熱暖房機等の熱源を設置しうる空間を下部空間に形成するカウンター板において、熱源からの放熱によって反りや膨れ、歪み等の変形を生じないようにする。
【解決手段】 本発明のカウンター板1は、上方への放熱を伴う熱源20を設置しうる空間101を下部に形成するためのものであって、木質系板材からなるカウンター板本体2には、その下面側に、ケイ酸カルシウム板からなる不燃層3が一体的に設けられている。不燃層3は少なくとも4mmの厚さを有して形成されている。また、不燃層3の外側には木質系化粧単板6が貼設されて当該不燃層3が被覆されるとともに、この木質系化粧単板6の外側にはウレタン塗装が施されて、カウンター板本体2の下面側が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上方への放熱を伴う熱源を設置しうる空間を下部空間に形成するカウンター板に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅のインテリアにおける最近の傾向として、キッチンの一角にカウンターテーブルを設けてキッチンで調理しながら家族と対話したり、朝食などの軽い食事の場としたりするために対面式カウンターを採用することが多く見られるようになってきている。
【0003】
カウンターテーブルは、その用途により様々な形態が知られているが、無垢の木材や集成材を用いたり、木材チップを固めたパーティクルボードにメラミン化粧板を貼り合わせた板材を用いたりして形成された帯状の板材を、脚体の上部に水平に取り付けて形成されているのが一般的である。また、キッチンのほかに、書斎や家事室などにもカウンター板を配設してカウンターテーブルが設けられることがある。
【0004】
従来のカウンター板としては、例えば、特許文献1に記載されているような耐熱性能を備えた化粧板が提案されている。この化粧板は、木質基材の表裏両面に反応性ホットメルト接着剤を用いて、化粧紙を貼着して形成されている。そして、かかる化粧板ではホットメルト接着剤を用いることで、木質基材と化粧紙との間で水分移動が生じるのを防ぎ、防湿性能および耐熱性能を備えて、加熱された調理器具等を載置しても反りや膨れを生じないように意図されている。
【0005】
また、近年、オール電化住宅が普及する中で、蓄熱暖房機からの放熱によって居室内を暖房する蓄熱暖房システムが採用されることも増えてきている。蓄熱暖房機は、運転を開始すると電気ヒーターと送風機が駆動され、温風が吹き出されるが、このとき同時に電気ヒーターが蓄熱材を加熱する。蓄熱材の温度が設定温度に達すると、温度センサーの検出温度より制御部が電気ヒーターと送風機を停止するが、蓄熱材が室内への輻射放熱を行うため、室温の低下を少なくできるものであり、急に室温が下がらないようにすることができるようになっている。
【0006】
この種の暖房器具をオール電化住宅等の建物に用いる場合、団らんの場となるリビング・ダイニングに設置することが効果的であり、限られたスペースをできるだけ有効に使って居住空間の快適性を確保する必要があった。そのため、図3に示すように、キッチン等のカウンターテーブル10の下部に形成される空間101を利用して蓄熱暖房機201を設置することは、暖房効果だけでなく、納まりを考える上も好ましく、このように蓄熱暖房機201を設置するという要望があった。
【特許文献1】特開2006−15505号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のような蓄熱暖房機201は、暖房の設定温度によっては機器上部の表面温度が約76℃にまで上昇することがあった。このような場合、蓄熱暖房機201の上部にあるカウンターテーブル10は、蓄熱暖房機201に対向する下面側が、機器上部からの放熱を受けて約40℃以上になるという、相当な温度上昇を引き起こすことになっていた。そうすると、図4に示すように、温度の上昇したカウンター板10aは、下方への反りや膨れ、歪み等の変形を生じてしまうという問題点があった。
【0008】
そこで本発明は、上記のような事情にかんがみてなされたものであり、上方への放熱を伴う蓄熱暖房機等の熱源を設置しうる空間を下部空間に形成するカウンター板において、熱源からの放熱によって反りや膨れ、歪み等の変形を生じない構造を備えたカウンター板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するため、本発明は、上方への放熱を伴う熱源を設置しうる空間を下部空間に形成するカウンター板であって、木質系板材からなるカウンター板本体には、その下面側に、ケイ酸カルシウム板からなる不燃層が一体的に設けられていることを特徴とする。
【0010】
かかる特徴的構成によれば、下面側に形成されたケイ酸カルシウム板からなる不燃層がカウンター板本体への断熱性を発揮し、さらにケイ酸カルシウム板の有する強度によってカウンター板本体の熱影響を最小限に抑えて、反りや膨れ、歪み等の変形を生じないようにすることができる。
【0011】
また、前記不燃層としては、少なくとも4mmの厚さを有して形成されていることが好ましい。これにより、十分な強度と有効な耐火性能を確保することができ、上方への放熱を伴う熱源を下部空間に設置してもカウンター板に反りや膨れ、歪み等の変形を生じないようにすることが可能となる。
【0012】
また、本発明のカウンター板においては、前記不燃層の外側には木質系化粧単板が貼設されて当該不燃層が被覆されるとともに、この木質系化粧単板の外側にはウレタン塗装が施されて、カウンター板本体の下面側が形成されてもよい。これにより、廉価で、かつ意匠性に優れた外観を形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
上述のように構成される本発明のカウンター板によれば、カウンター板本体への熱影響を最小限に抑えることが可能となるので、反りや膨れ、歪み等の変形を生じないようにすることができ、上方への放熱を伴う蓄熱暖房機等の熱源を設置しうる空間を、このカウンター板の下部空間に形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るカウンター板を実施するための最良の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は本発明のカウンター板の実施形態の一例を模式的に示す断面図、図2はカウンター板の断面図である。
【0016】
なお、図1においては図面を見やすくするために、熱源20や、この熱源20周囲の床面および壁面には断面を示すハッチングを省略して記載している。
【0017】
本発明のカウンター板1は、その芯材としてカウンター板本体2を有する。例示の形態では、カウンター板本体2は、タモ柾目集成材等の木質系板材を用いて、厚さ約35mmで形成されている。
【0018】
カウンター板本体2の下面側には、不燃層3が一体的に設けられている。この不燃層3は、ケイ酸カルシウム板を貼設して形成されている。
【0019】
ケイ酸カルシウム板は、ケイ酸質原料と石灰の微粉末をオートクレーブ中で反応させ生成するケイ酸カルシウム水和物を主原料とし、補強繊維を入れた板材である。カウンター板1の不燃層3は、少なくとも4mmの厚さを有して形成されていることが好ましい。これにより、十分な強度と有効な耐火性能を付与することができる。また、不燃層3には、強度、耐火性能、および材料コストの観点から、ケイ酸カルシウム板を使用するのが最適である。
【0020】
より具体的には、図2に示すように、カウンター板本体2の下面側に厚さ5mmのケイ酸カルシウム板を貼り付けて不燃層3が形成されており、カウンター板本体2の上面側にはタモ柾目突板が貼り付けられて表面仕上層4が形成されている。また、かかるカウンター板本体2の正面側の木口5にも、タモ柾目突板が貼り付けられて正面仕上がなされて、カウンター板本体2と一体的に形成されている。これにより、優れた意匠性を確保することが可能となっている。
【0021】
さらに、カウンター板1は、不燃層3の外側(下面側)に、木質系化粧単板6が貼設されて、不燃層3が被覆されて構成されている。加えて、この化粧単板6のさらに外側に、ウレタン塗装を施すことによって、カウンター板1の下面側仕上がなされていてもよい。このようにカウンター板1の下面側仕上をすることにより、意匠性を向上させるとともに、優れた表面加工性を得ることができる。
【0022】
以上のように構成されるカウンター板1は、対面式キッチンや壁面等に水平に配設されてカウンターテーブルを形成する。そして、このカウンター板1の下部空間101は、蓄熱暖房機等のように上方への放熱を伴う熱源20を設置しうる空間として有効に利用することができる(図3参照)。
【0023】
ここで、実施例として、上記説明したカウンター板1を使用してカウンターテーブル10を形成し、下部空間101に蓄熱暖房機201を設置してカウンター板1の変形の有無を確認した。この場合、カウンター板1と蓄熱暖房機201の上部との間隔は150mmであって、蓄熱暖房機201の上部表面温度が最高で76.4℃にまで達した。このとき、カウンター板1の下面側の表面温度は44.3℃にまで達したが、カウンター板1の歪み量は0.5mmと極めて微量に抑えることができた。これに対し、図4のように、カウンター板10aに当該不燃層3を設けない比較例では、同様の条件で、7.8mmの歪み量が計測された。
【0024】
したがって、カウンター板1の下部空間101を、蓄熱暖房機等のように上方への放熱を伴う熱源20を設置するための空間として有効に利用することができ、カウンター板1の反りや歪みを抑えて、長期間にわたり安定した製品性を維持しつつ安全に使用することができる。そして、このようにカウンター板1の下部空間101に熱源20を設置することで、快適な居住空間を形成するとともに、スペースの有効な利用も可能となる。
【0025】
なお、本発明において、カウンター板本体2に用いる木質系板材としては、タモ柾目集成材に限定されるものではなく、イースタンオーク集成材など、どのような木質系板材であってもよい。
【0026】
また、本発明に係るカウンター板1は、例示したカウンターテーブル10の天板として使用するだけでなく、住宅等の建物内において、暖房器具や湯沸器が設置される場所の上部空間を区画する板材としても有効に利用することができ、カウンター板1の下部空間に熱源が配置されるものであれば造作家具の下面板、壁パネル等のどのようなものにも利用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、住宅等の建物の内装部材として、熱源から発せられる熱によっても反りや膨れ、歪み等を生じることなく好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るカウンター板の実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係るカウンター板の断面図である。
【図3】カウンター板を用いたカウンターテーブルの一例を示す斜視図である。
【図4】従来のカウンター板の変形状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
1 カウンター板
2 カウンター板本体
3 不燃層
4 表面仕上層
5 木口
6 化粧単板
10 カウンターテーブル
10a カウンター板
101 下部空間
20 熱源
201 蓄熱暖房機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方への放熱を伴う熱源を設置しうる空間を下部空間に形成するカウンター板であって、木質系板材からなるカウンター板本体には、その下面側に、ケイ酸カルシウム板からなる不燃層が一体的に設けられていることを特徴とするカウンター板。
【請求項2】
前記不燃層は少なくとも4mmの厚さを有して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカウンター板。
【請求項3】
前記不燃層の外側には木質系化粧単板が貼設されて当該不燃層が被覆されるとともに、この木質系化粧単板の外側にはウレタン塗装が施されて、カウンター板本体の下面側が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカウンター板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−212319(P2008−212319A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52363(P2007−52363)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【出願人】(507069933)あらい銘木工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】