説明

カウンター用成形型

【課題】システムキッチンのそれぞれの規格に応じた樹脂成形品が成形できると共に、確実に製造コストを減縮できるカウンター用成形型を提供する。
【解決手段】カウンター用成形型1は、金型本体たる上型2及び下型3と、上型2と下型3を合致させた際に形成される成形キャビティと、成型キャビティ内における樹脂が充填される領域を制限可能な調整手段10とを有する。調整手段10は、調整板12と保持部材11によって構成され、保持部材11を下型3に設置し当該保持部材11に調整板12を保持させて樹脂の充填領域を制限する。また、調整板12の大きさを変更することで、成形品の仕上がり長さを調節することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キッチン等に設置されるカウンターの成形型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の台所においては、コンロやシンク、収納等をまとめてシステム構成したシステムキッチンが広く普及している。この種のシステムキッチンは、調理作業等を行うためのワークトップ(カウンター)が設けられており、通常、このカウンター下に収納及び各機器が配置される構成である。
【0003】
ところで、システムキッチンのカウンターには、ステンレス鋼等の金属により形成されたものの他、成形金型に樹脂を注入して成形されたものがある。この樹脂製のカウンターは、金属製のものと比べると、水垢などの汚れや、刃物などによる傷が目立ち難い等の利点があることが知られているため、その需要は益々高まっている。
【0004】
例えば、特許文献1には、樹脂を注入してカウンターを成形するための成形型の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−143130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、システムキッチンは、様々な規格(例えばI型の1800mm等)があるため、天板たるカウンターもそれに対応した大きさ及び形状(以下サイズ等と言う)を用意する必要がある。しかしながら、一般的に成形金型は高価とされており、システムキッチンの規格毎にカウンター用の成形金型を用意すると、製造コストの増加を招き好ましくない。そのため、従来より、工場に既存の成形金型とは異なるサイズのカウンターを成形する場合は、一旦当該既存の成形金型によって成形品を成形し、その成形品に対して切断する等の加工を施して規格に合致させたカウンターを製造している。
【0007】
ところが、既に樹脂成形された成形品をわざわざ切断手段でカットしたり、切断後のカウンターの端面を綺麗に仕上げたりする作業手間が実質的に追加されるため、長期的に見た場合に製造コストを十分に減縮できないという不具合があった。
【0008】
そこで、本発明では、従来技術の問題に鑑み、システムキッチンのそれぞれの規格に応じた樹脂成形品が成形できると共に、確実に製造コストを減縮できるカウンター用成形型を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、金型本体と、金型本体の内部に形成される成型キャビティを有し、成型キャビティ内に溶融状又は液状の樹脂を充填し、成形キャビティ内で前記樹脂を硬化させて所望の成形品が形成されるカウンター用成形型であって、成型キャビティ内における樹脂が充填される領域を制限可能な調整手段を有し、調整手段は、調整板と保持部材によって構成され、保持部材を金型本体に設置し当該保持部材に調整板を保持させて前記樹脂の充填領域を制限するものであることを特徴とするカウンター用成形型である。
【0010】
本発明のカウンター用成形型は、成型キャビティ内の樹脂の充填領域を制限可能な調整手段を有しているため、例えば1つの成形型でサイズ等の異なる成形品を成形することができる。具体的には、本発明では、調整手段が調整板と保持部材を有し、保持部材を金型本体に設置して、その保持部材に調整板を保持させる構成とされている。そして、保持部材に保持させる調整板の大きさを変更することで、成形品の仕上がり長さを調節することができる。即ち、本発明によれば、異なる大きさの調整板を用意しておけば、システムキッチンの規格毎に成形金型を用意することなく、1つの成形型でサイズ等の異なる成形品を容易に成形することができる。これにより、本発明では、成形品を規格に合致したサイズ等に加工する作業手間が省略されるため、確実に製造コストを減縮することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のカウンター用成形型では、成形キャビティ内における樹脂の充填領域を制限できる調整手段を設けたため、成形品のサイズ等を容易に変更することができる。結果的に、システムキッチンの規格毎にカウンター用成形型を用意する必要がなく、さらに規格に合致させる加工を施す作業手間を要さないため、確実に製造コストを減縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るカウンター用成形型を示す断面図であり、上型と下型を離反した状態を示す。
【図2】本発明の実施形態に係るカウンター用成形型を示す断面図であり、上型と下型を合致させた状態を示す。
【図3】調整手段を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係るカウンター用成形型1について説明する。
【0014】
本発明の実施形態のカウンター用成形型(以下、単に成形型とも言う)1は、システムキッチン等の調理作業台たるワークトップ(キッチンカウンター)を成形するものであり、図1、2に示すように、金型本体たる上型2と下型3を備えた構成とされている。そして上型2と下型3とを合致させたとき、両者の間に、成形キャビティ5が形成される。
【0015】
また、本実施形態の成形型1は、上部側から樹脂を充填するものであり、上型2側に樹脂の充填孔6が設けられている。さらに具体的には、本実施形態では、充填孔6は、金型の中央よりに設定され、図示しない注型ノズルが挿入される。
【0016】
また、本実施形態の成形型1は、成形キャビティ5が形成された際に、成形キャビティ5における樹脂の充填領域を制限できる調整手段10が設けられている。調整手段10は、下型3に配され、下型3の長手方向端部側に配されるものである。即ち、調整手段10は、製品たるカウンターの長手方向(図2の左右方向)の長さを変更可能なものである。
【0017】
より具体的には、調整手段10は、図1、2に示すように、下型3に固定される保持部材11と、その保持部材11に保持される調整板12とで構成されている。
【0018】
保持部材11は、弾性及び耐熱性を備えたゴムや合成樹脂によって形成された部材である。そして、図3に示すように、保持部材11は、一定の厚み(図3の前後方向長さ)を有した帯状部材である。また、保持部材11の前面側の側面(一方の側面)には、長手方向に形成された直線状の保持溝22が設けられている。保持溝22は、保持部材11を下型3に配置した際に、下型3における成形キャビティ5の底面を形成する面から若干離れた位置であって、ほぼ水平方向に開口された有底の溝である。
【0019】
調整板12は、ステンレス鋼等の金属で形成されており、図3に示すように、1枚の板体である。具体的には、調整板12は、保持部材11の保持溝22の開口面積とほぼ同じ大きさに設計されている。即ち、本実施形態では、調整板12は、保持部材11の保持溝22に挿通して保持させることが可能な構成とされている。
【0020】
続いて、本実施形態の成形型1の使用時における各部材の位置関係について説明する。なお、本実施形態の成形型1は、上下の型2、3を型閉めした状態で使用されるため、この状態に注目して各部材の位置関係について説明する。
【0021】
本実施形態では、図2に示すように、1つの調整手段10が下型3における成形キャビティ5の左側の端部に配置されている。そして、その調整手段10は、2つの保持部材11を所定の間隔を空けて配し、双方の保持部材11の保持溝22に挟持されるように調整板12を配した配置とされている。具体的には、1つの保持部材11は、下型3の最も端部寄りに配置され(以下便宜上、最端保持部材11aと称す)ると共に、その最端保持部材11aの保持溝22が、下型3の内側(左側端部と反対方向)に向けられている。
【0022】
そして、最端保持部材11aの保持溝22に調整板12の一方の側端が保持されるように配されている。調整板12の他方の側端側には、別の1つの保持部材11(以下、便宜上内側保持部材11bと称す)が配されており、その内側保持部材11bの保持溝22に保持された配置とされている。
【0023】
一方、上型2は、下型3と合致した配置にされており、本実施形態においては、上型2の一部の部位が、調整手段10と当接している。具体的には、上型2の左側(図2基準)の一部の底面が、保持部材11の上面と当接している。
【0024】
即ち、調整手段10を配した場合、樹脂が充填される成形キャビティ5は、内側保持部材11bと、上型2と、下型3とによって囲繞された領域(以下、有効領域Aと言う)となる。逆を言えば、内側保持部材11bより左側の領域は、樹脂が充填されない無効領域Bである。
【0025】
従って、本実施形態によれば、上型2と下型3によって本来形成される樹脂の充填領域を、調整手段10によって、実際に樹脂が充填される有効領域Aと、樹脂が充填されない無効領域Bに分割することができる。これにより、製品たるカウンターのサイズ等を容易に変更することができる。
【0026】
なお、本実施形態では、有効領域A側に樹脂を充填して成形品を成形するため、充填孔6が調整手段10の内側保持部材11bよりも右側に位置するように、調整板12のサイズを一定以下に制限する必要がある。
【0027】
以上により、本実施形態の成形型1によれば、調整板12のサイズを変更するだけで、所望のサイズのカウンターを成形することができるため、複数の規格に合わせた製品が必要な場合であっても、規格の数に相当する成形型を用意する必要がない上、一旦成形した成形品をわざわざ加工して規格にあったサイズにする必要もない。このため、本実施形態によれば、加工に要する作業手間を省略することができる。従って、本実施形態においては、システムキッチンのそれぞれの規格に応じた樹脂成形品が成形できると共に、確実に製造コストを減縮することができる。
【0028】
また、この構成によれば、金型本体に加工を施す必要がないため、既存の成形型に適応させることができ、既存の成形型の有効利用を図ることができる。
【0029】
また、本実施形態では、調整手段10に採用された金属製の調整板12が、下型3の成形キャビティ5を形成する上面から若干離れた位置で保持される構成とされているため、調整板12が金型本体を傷つける可能性が低い。そのため、調整手段10を設けたことで、金型本体を頻繁にメンテナンスしなければならないという不具合が発生する心配がない。
【0030】
また、上記実施形態では、調整手段10を金型本体の左側端部に設けた構成を示したが、本発明はこれに限定されず、金型本体の左側端部に加えてあるいは替えて金型本体の右側端部に同様の調整手段を設けても構わない。
【符号の説明】
【0031】
1 成形型(カウンター用成形型)
2 上型
3 下型
5 成形キャビティ
10 調整手段
11 保持部材
12 調整板
22 保持溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型本体と、金型本体の内部に形成される成型キャビティを有し、成型キャビティ内に溶融状又は液状の樹脂を充填し、成形キャビティ内で前記樹脂を硬化させて所望の成形品が形成されるカウンター用成形型であって、成型キャビティ内における樹脂が充填される領域を制限可能な調整手段を有し、調整手段は、調整板と保持部材によって構成され、保持部材を金型本体に設置し当該保持部材に調整板を保持させて前記樹脂の充填領域を制限するものであることを特徴とするカウンター用成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−152925(P2012−152925A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11633(P2011−11633)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】