説明

カオリン顔料製品

紙上に光沢コーティングを提供するためのコーティング組成物中で使用するための顔料製品であって、該顔料製品は、少なくとも約80重量%の粒子が約2μmより小さい等価球直径を有し、約10重量%〜約20重量%の範囲の粒子が約0.25μmより小さい等価球直径を有するような粒径分布を有する加工済粒子状カオリンを含み、該粒子は約20〜約36の範囲の形状係数を有すると共に、該粒子は約35より大きい範囲、より好ましくは約35〜約40の範囲の粒子スティープネスを有し、カオリンは二次カオリン原料に由来する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、顔料製品およびその製造、ならびにコーティング組成物におけるその使用に関する。本発明は、更に、顔料製品の製造方法と、顔料製品を用いて製造される改良された塗工紙とに関する。
【0002】
本発明は、紙用コーティング組成物のために改良された無機顔料、特に光沢塗工紙を作製するために組成物中で使用するための顔料の調製に関する。
【0003】
[発明の背景]
紙用コーティング組成物は、一般に、親水性接着剤およびその他の任意の成分と共に、顔料材料の流動性の水性懸濁液を形成することによって調製される。軽量塗工紙、すなわちLWC紙は、一般に、各面において約5g・m−2〜約20g・m−2の重量に塗工され、総坪量、すなわち塗工紙の単位面積あたりの重量は、一般に、約49g・m−2〜約70g・m−2の範囲である。コーティングは、従来、滞留時間の短いコーティングヘッドを含む塗工機によって施すことができ、これは、わずかに上昇した圧力下でコーティング組成物を保持した槽を0.0004秒〜0.01秒の範囲の時間、移動する紙ウェブと接触保持した後、過剰のコーティング組成物がトレーリングブレードにより除去される装置である。しかしながら、軽量塗工紙を作製するためにその他のタイプの塗工装置が使用されてもよい。LWC紙は、一般に、雑誌、カタログ、および広告または販売促進資料を印刷するために使用される。塗工紙は、表面光沢および平滑性の特定の基準を満たすことが必要とされる。例えば、紙は一般に、TAPPI単位で、少なくとも約32の光沢値、例えば最大約50までの光沢値を有することができ、パーカープリントサーフ(Parker Print Surf)値は一般に約0.5μm〜約1.6μmの範囲である。
【0004】
超軽量塗工紙、すなわちULWC紙は、別名、軽軽量塗工紙、すなわちLLWC紙として知られる場合もあり、郵便で送付されるカタログならびに広告および販売促進資料の送料を低減するために使用される。コーティング重量は、一般に、1つの面につき約3g・m−2〜約8g・m−2の範囲である。総坪量は、一般に、約30g・m−2〜約48g・m−2の範囲である。
【0005】
LWC紙およびULWC紙を製造するためのコーティング組成物の調製において使用するための重要な白色無機顔料は、カオリン粘土から得られるカオリンである。大量のカオリン粘土堆積物は、英国のデボン州およびコーンウォール州、ならびに米国のジョージア州およびサウスカロライナ州に存在する。重要な堆積物は、ブラジル、オーストラリア、およびその他のいくつかの国にも存在する。カオリン粘土は主に、鉱物カオリナイトからなり、種々の不純物を少ない割合で伴う。カオリナイトは、六方晶系薄板形状の含水アルミノケイ酸塩結晶の形で存在するが、これらの板は向かい合って互いに接着してスタックまたはブックレット(booklet)を形成する傾向がある。個々の板は、1μm以下の平均直径を有することができるが、板のブックレットまたはスタック形態のカオリナイト粒子は、10μmまで、またはそれ以上の等価球直径(esd)を有し得る。一般的に言って、2μm以上の等価球直径を有するカオリン粘土粒子は、個々の板ではなく、カオリナイトの板のスタック形態である。更に、いくつかの二次カオリン堆積物では、より小さいカオリン粒子が、ランダムな配向で互いに接着して、2μmよりもかなり大きい等価球直径を有する凝集粒子を形成することもあり得る。
【0006】
英国の堆積物は一次カオリンを有するが、米国およびブラジルの堆積物は沈積または二次タイプを有するという点で、英国のカオリン堆積物は、米国およびブラジルのものとは異なる。カオリンは、花崗岩の長石成分の水熱分解によって、地質時代に形成されたものであり、一次カオリンは、最初にそれが形成された花崗岩マトリックスから直接得られるものである。一方、沈積カオリンとしても知られる二次または(三次)カオリンは、地質時代に元の花崗岩マトリックスから洗い流されて、最初にそれが形成された場所から離れた領域に堆積したものである。二次カオリン堆積物は、微細粒子、すなわち約2μmより小さいesdを有する粒子をより高い割合で有する傾向がある。なぜなら、カオリンは、その発生場所から最終的な堆積場所への移送の過程で、特定の量の自然粉砕を受けているからである。例えば、Jepson(W. B. Jepsonの「カオリン:その特性および使用(Kaolins: their properties and uses)」、Phil Trans R Soc Lond, A311、1984年、411〜432頁)を参照されたい。また二次カオリンは一次カオリンよりも塊状である傾向も有し、カオリンスタックとより小さい塊状カオリン粒子の凝集体との両方を多数含有する。
【0007】
1939年というかなり以前に、米国特許第2,158,987号においてMaloneyは、大部分、例えば80重量%またはそれ以上の粘土粒子が0.1μm〜2μmの範囲のサイズを有するように、コーティング組成物中に取り込まれる前に粘土が処理される場合には、粘土塗工紙の仕上げまたは光沢が非常に改良されることを開示した。未加工カオリン中の微細粒子の割合を増大するために、米国特許第2,158,987号の開示に従って、遠心分離工程の前に未加工カオリンに粉砕操作を受けさせることができ、この操作では、約50%〜約75%の乾燥重量のカオリンと分散剤とを含有する懸濁液がペブルミルを受ける。より微細な画分からのカオリンを回収し、適切な紙用コーティングバインダと混合し、原紙表面に施すと、良好な光沢および色のコーティングが得られる。
【0008】
米国特許第2,158,987号でMaloneyにより記載される原理を用いて製造される様々な顔料製品が市販されており、塗工紙、特にLWC紙およびULWC紙に良好な光沢および平滑性を提供する。例えば、Imerys Inc.から入手可能であり、LWCの光沢コーティングに推奨される既知の顔料製品は、89重量%の粒子が2μmより小さいesdを有し、74重量%の粒子が1μmより小さいesdを有し、25重量%の粒子が0.25μmよりも小さいesdを有するような粒径分布「psd」を有する精製された英国のカオリン製品を含む。
【0009】
光沢紙で使用するためにImerys Inc.から市販されている1つの特に有用なカオリン顔料製品は、「SUPRAPRINT(商標)」の商品名で販売されている。SUPRAPRINT(商標)は英国の粗大一次粘土に由来し、一般に、その中の約90重量%のカオリン粒子が約2ミクロンより小さいesdを有し、約12〜16重量%の粒子が約0.25ミクロンより小さいesdを有するような粒径分布を有する。SUPRAPRINT(商標)カオリンを更に明確にする特徴には、30〜35の範囲のその形状係数と、約40のその粒子スティープネス(steepness)とが含まれる。その高いスティープネスおよび形状係数ならびに結果として得られる粒子の充填効果のために、SUPRAPRINT(商標)の不透明度および光沢は、光沢紙用コーティングなどで使用するのに特に適していることがわかった。
【0010】
SUPRAPRINT(商標)は、(1)押圧して混練する工程、(2)スラリー状にする工程、(3)穏やかに粉砕して、存在するカオリンスタックの一部を部分的に層間剥離させる工程、(4)デカンタ遠心分離を用いて分別する工程と、一連の選鉱および仕上げ工程とによって、天然の板状微粉を有するコーンウォールの一次粘土から製造される。工程4からの粗大画分の一部は、プロセスの収率を最大限にする目的で、粉砕工程3にリサイクルされることもあるが、所望のパラメータを有する製品を得るためには必要ではない。全体として本質的に粗大であるが、使用されるコーンウォールの一次粘土は高濃度の超微細板状粒子を有し、これは、望ましくないことに収率を低下させ、製造プロセスから処分されなければならない廃棄材料の量を増大させる。したがって、英国カオリンの粗大一次堆積物からのSUPRAPRINT(商標)製品の製造は、望ましくないことに、コストがかかることがわかった。
【0011】
ブラジルのリオ・カピン地方で見られるような、超微細板状粒子の量がはるかに少ない二次カオリン堆積物を加工するためのより安価でより容易なプロセスから、同様のパラメータを有する顔料製品の製造を提供することは、明らかに望ましいであろう。このような二次カオリンの本質的に塊状である性質のために、要求される加工は、より板状で粗大な一次カオリンからこのような製品を製造するために使用されるものとは著しく異なる必要があると思われる。特に、本質的に板状の一次カオリンのために通常使用されるより厳しい層間剥離によって、塊状の二次カオリンの形状係数は増大されるかもしれない。しかしながら、このような二次カオリン中には塊状カオリン粒子の凝集体が存在するために、層間剥離ではなく凝集体が壊れて微細な塊状粒子になるので、当業者は、通常の層間剥離方法が、形状係数の望ましくない低下をもたらすことも予期するであろう。
【0012】
従来技術のこれらの欠点に対処する、改良されたカオリン顔料製品およびその製造方法が今、開発された。本発明は、特に、所望の光沢および/または明るさを有する顔料製品を提供するが、これは、二次カオリン堆積物から、より容易にかつより安価に製造することができる。更に、本発明の顔料製品は、使用されなければならないであろう代替の顔料、例えば二酸化チタンの従来の量の低減をもたらし得る。
【0013】
[発明の概要]
本発明の第1の態様によると、紙に光沢コーティングを提供するためのコーティング組成物において使用するための顔料製品が提供され、該顔料製品は、少なくとも約85重量%の粒子が2μmよりも小さい等価球直径を有し、約15重量%〜約20重量%の粒子が0.25μmよりも小さい等価球直径を有するような粒径分布を有する加工済粒子状カオリンを含み、該粒子は約20〜約40の範囲の形状係数を有すると共に、該粒子は約32〜約40の範囲の粒子スティープネス(d30/d70×100)を有し、上記顔料製品は、例えば、ブラジルのリオ・カピン地方に見られる二次カオリン堆積物などの二次カオリン堆積物から得られる粗製カオリンに由来する。
【0014】
驚くことに、および有利であることには、本発明の第1の態様に従う顔料製品は微細な二次カオリンから容易にかつ安価に製造することができるが、コーティング組成物中に取り込まれたときに、微細カオリン粒子の存在が望ましくなく増大されることなく、改良された光沢、明るさおよび/または不透明度を依然として提供する。あるいは、本発明の第1の態様に従う顔料製品は、従来の製品に関連する光沢、明るさ、および/または不透明度特性を保持することができるが、使用しなければならない高価な代替顔料、例えば二酸化チタンの量を自然に低減する。すなわち、同じグレードの塗工紙を低減されたコストで製造することができる。
【0015】
本発明の第1の態様に従う顔料製品は、二次カオリン粘土の従来の加工では通常得られない、予想外の特性の組み合わせを有する。
【0016】
以下の詳細な記載は、本発明のいくつかの態様の典型的な実施形態を説明するものであり、その全ての可能な実施形態を網羅するのではなく、単に、本発明の原理を説明する役割を果たすに過ぎない。
【0017】
[発明の説明]
本発明の第1の態様に従う顔料製品は、二次(沈積としても知られる)タイプの粒子状含水カオリン鉱物、更に詳細には、例えばリオ・カピン流域などのブラジルのパラ州における特定の堆積物から得ることができるタイプの未加工または(部分的に)加工されたカオリン粘土を処理および混合することによって製造することができる。
【0018】
本発明の第1の態様に従う顔料製品は、約85重量%〜約95重量%の範囲の粒子が約2μmよりも小さい等価球直径「esd」を有するような粒径分布「psd」を有することができる。もう1つの実施形態では、約87重量%〜約93重量%の範囲の粒子が約2μmよりも小さいesdを有する。更にもう1つの実施形態では、約89重量%〜約91重量%の範囲の粒子が約2μmよりも小さいesdを有する。本発明の1つの実施形態によると、約15重量%〜約20重量%の範囲の粒子は、約0.25μmよりも小さいesdを有する。更にもう1つの実施形態では、約16重量%〜約18重量%の範囲の粒子が約0.25μmよりも小さいesdを有する。
【0019】
当業者には認識されるように、本発明に従う顔料製品などの粒子状製品のpsdは、例えば米国のMicromeritics Corporationから得られるSEDIGRAPH5100のようなSEDIGRAPH(商標)機を用いて、標準希釈水性懸濁液による試験下の粒子状製品の分散粒子の沈降速度を測定することによって決定することができる。所与の粒子の大きさは、懸濁液から沈降する等価直径の球の直径、すなわち上述したパラメータの等価球直径またはesdで表される。SEDIGRAPH機は、特定のesd値よりも小さいesdを有する粒子の重量百分率をesdに対してグラフで記録する。
【0020】
形状係数の高いカオリン製品は、形状係数の低いカオリン製品よりも「板状」であると考えられる。本明細書中で使用される「形状係数」は、英国特許公開第2240398号/米国特許第5,128,606号/欧州特許公開第0528078号(これらは、参照によってその全体が本明細書中に援用される)に記載されている導電率法および装置を用いて、およびこれらの特許の明細書中で導かれる方程式を用いて測定されるように、様々な大きさおよび形状の粒子集合体についての粒子の厚みに対する平均粒子直径の比率の平均値(重量平均に基づく)の尺度である。「平均粒子直径」は、粒子の最大面と同じ面積を有する円の直径と定義される。欧州特許公開第0528078号に記載される測定方法では、試験下にある粒子の完全に分散した水性懸濁液の導電率が生じ、長尺管を通って流れる。導電率の測定は、(a)管の長手方向軸に沿って互いに隔てられた一対の電極、および(b)管の横断方向幅を越えて互いに隔てられた一対の電極の間で行われ、2つの導電率測定値の差を用いて、試験下にある粒子状材料の形状係数が決定される。
【0021】
本発明の第1の態様によると、本発明の顔料製品は、約20〜約40の範囲、例えば約20〜約36の範囲の形状係数を有する粒子を含む。本発明に従うもう1つの実施形態では、形状係数は約23〜約33の範囲でよい。更にもう1つの実施形態では、形状係数は、約25〜約29の範囲でよい。別の実施形態では、形状係数は約26〜28の範囲である。
【0022】
更に、本発明の第1の態様の上記実施形態によると、顔料粒子は、32より大きい、例えば35よりも大きい粒子スティープネス(d30/d70×100、ここでd30は、その直径よりも下で30%の重量が通過するとSediGraph機器で測定される粒子直径であり、d70は、その直径よりも下で70%の重量が通過すると測定される粒子直径である)を有することができる。あるいは、粒子は、32〜40、35〜40、36〜39のより狭い粒子スティープネス、あるいは更に約38という狭い粒子スティープネスを有することができる。
【0023】
第2の態様における本発明によると、第1の態様に従う顔料製品を製造するための方法が提供されており、該方法は、
(a)未加工または部分的に加工されたカオリン粘土を水と混合して水性懸濁液を形成する工程、
(b)上記水性懸濁液を粗大カオリンと混合し、2ミクロン未満のesdを有する粒子を約60重量%以下で含有するカオリン粒子を含む混合カオリン懸濁液を形成する工程、
(c)工程(b)で生成された混合カオリン懸濁液をカオリンの平均形状係数を例えば少なくとも約10〜少なくとも約15だけ増大させるプロセスによる粒子粉砕媒体を用いるアトリッション粉砕(attrition grinding)にかける工程、
(d)粉砕カオリンの懸濁液を粒子粉砕媒体から分離する工程、および
(e)工程(d)で分離された粉砕カオリンの懸濁液を分別して所望の粒径分布を有するカオリン顔料をそこから回収する工程、
を含む。
【0024】
本発明の第2の態様に従う方法の工程(a)において、カオリン粘土は、処理懸濁液の20%〜70%、通常は20%〜45%を形成することができる。カオリン粘土は、好ましくは、ブラジルのパラ州地方、例えばリオ・カピン流域地方から得られる二次(沈積としても知られる)カオリン粘土のような二次カオリン粘土を含む。未加工カオリン粘土は、約40重量%以下が10μmより大きいesdを有する粒子を含み、75重量%以下、例えば約50重量%〜約70重量%が2μmよりも小さいesdを有する粒子からなるようなpsdを有する微細カオリンでよい。工程(a)で処理されるカオリン粘土の形状係数は、15未満、例えば約5〜約12の範囲でよい。
【0025】
工程(b)において、カオリン粘土のpsdは、90〜20重量部のデグリッティング(degritting)された(45ミクロンよりも大きい実質的に全ての粒子が、ハイドロサイクロン、ドラッグボックス、および/またはスクリーンによって除去される)、分別されていない(スカルピングの目的で45ミクロンより大きい実質的に全ての粒子を除去することを除いて遠心分離されない)カオリン粘土を、10〜80重量部、例えば40〜60重量部の少なくとも1つの分別された粗大カオリン成分、例えば関連または非関連のカオリン製品の遠心分級工程からの粗大画分と混合することによって、本発明の第1の態様に従うように調整され得る。粗大画分は、既にアトリッション粉砕、磁気選別、およびサイズ分級工程を受けたカオリンに由来してもよい。典型的な粗大画分は、例えば、約5〜約55の範囲、例えば約10〜約30の範囲、または更に約10〜約12の範囲の形状係数を有することができ、2μmよりも小さい粒子の重量百分率は約20%〜約40%の範囲であり、例えば約25〜約35%の範囲、あるいは更に約30%〜約35%の範囲である。添加は、粉体の乾燥形態か、あるいは水性懸濁液の形態のいずれかでカオリンを混合させて実行することができる。1つの典型的な実施形態では、粗大画分は、既にデグリッティング、攪拌媒体ミルまたはアトリッション粉砕機における低エネルギーのスクラブ粉砕、および磁気選別が行われた粗製カオリン懸濁液と混合するための混合タンクへ、1つまたは複数の遠心分級機から直接送られる。
【0026】
記載したように混合してカオリン製品を製造することによって、第2の態様の方法に従って加工されるカオリンの水性懸濁液のレオロジーおよび脱水特性が改良され、後述するようにコーティング組成物においてカオリンを使用する際に、より良い作業性および粒子アライメントが得られることが発見された。したがって、いくつかの場合には、混合タンクに添加される1つまたは複数の粗大なカオリンを、より正確に計量された量で添加することによって、混合カオリンの特性をより正確に制御することが有利であろう。これは、遠心分離の粗大画分を中間貯蔵タンクに迂回させ、そこから、添加の割合をより容易に計量できることによって、容易に達成することができる。
【0027】
どれか1つの理論により束縛されることを意図しないが、本発明の典型的な実施形態で使用される粗大画分は、カオリンブックレットを含む粗大カオリン粒子が豊富なので、その後の層間剥離に特に適することが本発明者らの仮説である。少なくとも典型的な実施形態では、粗大カオリンは、予備粉砕されたカオリンのサイズ分級によって得ることができる。最初の粉砕により粉砕される不相応な数の粗大粒子は、より小さい塊状カオリン粒子の凝集体を含み、存在するカオリンブックレットは、大部分は最初の粉砕工程では層間剥離されないと仮定する。したがって、本発明の典型的な実施形態で使用される粗大カオリンを得るための最初の粉砕およびサイズ分級によって、層間剥離に適したカオリンブックレットの数を有効に高めることが可能であり、これにより、得られる製品の形状係数が増大される。
【0028】
本発明の第2の態様に従う方法で処理されるカオリン粘土は、望ましくない不純物を除去するために、例えば、工程(a)と工程(c)の間で1つまたは複数の良く知られた精製工程を受けてもよい。例えば、カオリン粘土の水性懸濁液はフロス浮選処理操作を受け、フロス中のチタン含有不純物を除去することができる。あるいは、または更に、懸濁液を高強度の磁気選別機に通して、鉄含有不純物を除去することができる。
【0029】
工程(c)は、粘土1メートルトン(乾燥重量を基準として)あたり約40kWh〜約250kWhのエネルギーが懸濁液中で消費される中程度のアトリッション粉砕によってカオリン粘土の懸濁液が処理されるプロセスを含むことができる。アトリッション粉砕は、1つの粉砕段階で実行することもできるし、複数の粉砕段階で実行することもできる。本発明の1つの実施形態では、アトリッション粉砕は、Outokumpu Technology, Inc.のCarpco Divisionから入手可能なFloatexアトリッションスクラバーなどのアトリッションスクラバーを用いて達成されている。このアトリッション粉砕工程は、懸濁液中に存在するカオリンブックおよびスタックの層間剥離のために、カオリンの平均形状係数が増大するという一般的な結果を有する。粒子粉砕媒体は、適切には、比較的高い比重、例えば2またはそれ以上の比重を有し、例えばケイ砂の粒子を含むことができ、この粒子は一般に、約2mm以下で、約0.25mm以上の直径を有する。適切には、アトリッション粉砕工程(c)は、カオリン粘土の形状係数を少なくとも約10、例えば少なくとも約15だけ増大させるのに十分であろう。
【0030】
本発明の第2の態様に従う方法の工程(d)では、粉砕カオリン粘土の懸濁液は便宜上、例えば、適切な開口サイズのふるい、例えば約0.1mm〜約0.25mmの範囲の公称開口サイズを有するふるいに懸濁液を通すことによって、既知の方法で粒子状粉砕媒体から分離され得る。
【0031】
本発明の第2の態様に従う方法の工程(e)では、粉砕カオリン粘土の懸濁液は、粒径に基づいて、粗大および微細な画分に分別され得る。分別(または分級)は、既知のまたは後で発見される方法を用いて達成することができる。適切な方法には、重力沈降またはエルトリエーション、任意のタイプのハイドロサイクロン装置、または適切には、ソリッドボウルデカンタ遠心分離機、ディスクノズル遠心分離機などが含まれる。得られる粗大画分は廃棄されてもよいし、別の製品として使用されてもよいし、あるいは、本発明の方法で使用される粗大カオリンのための補助的な供給源として混合タンクへ戻されてもよい。粗大画分は、適切に、その中の約60重量%以下の粒子が2ミクロン未満のesdを有するようなpsdを有することができ、少なくとも約40の形状係数を有することができる。
【0032】
本発明の第2の態様に従う方法の工程(e)に続いて、得られた懸濁カオリンの微細画分は、本発明の第1の態様のカオリン組成物を含むことができる。懸濁カオリンの微細画分は、任意で、当業者にはよく知られているはずの従来の浸出(または漂白)工程を受けてもよい。特に、ヒドロ亜硫酸ナトリウムなどの還元性浸出剤を、カオリン1トンあたり例えば約0.5〜5.0ポンドの用量範囲で添加することができ、特定の実施形態では、乾燥基準で1トンあたり約4ポンド未満が含有される。ホルムアミジンスルフィン酸などのその他の適切な還元性漂白剤も使用することができる。ヒドロ亜硫酸ナトリウムを用いる還元性漂白は、酸性pH、通常は2.0〜4.0の範囲のpHで適切に実行される。
【0033】
また、懸濁粉砕カオリンの微細画分は任意で、例えば、ろ過、遠心分離、蒸発などの当該技術分野でよく知られている方法の1つで脱水されてもよい。1つの態様では、フィルタープレスを用いて懸濁粉砕カオリンを脱水し、フィルターケーキを生成する。フィルターケーキは、カオリン粘土のための分散剤と混合され、したがって、流体スラリーに変換されてもよく、この形態で輸送および販売することができる。あるいは、カオリン粘土は、例えばカオリン粘土の流体スラリーを噴霧乾燥器内に導入することによって熱で乾燥され、これにより、実質的に乾燥された形態で輸送されてもよい。
【0034】
工程(d)または工程(e)に続いて、カオリン粘土は、その特性のうちの1つまたは複数を改良するために更に処理されてもよい。例えば、高エネルギーの液体作用を、例えば高速ミキサーを用いて、例えば工程(e)の前または工程(e)の後に、スラリー形態の製品に与えることができ、続いて、例えばコーティング組成物の作製の間に、水性媒体中に再分散される。
【0035】
本発明により提供される顔料製品を紙用コーティング組成物中で使用することは、有利に、顔料製品の重量を基準として各顔料が約4重量部までであるような、紙用コーティング組成物で通常使用されるであろう二酸化チタン顔料およびプラスチック顔料(中空コアおよび中実コア)の従来の量の低減をもたらし得る。二酸化チタンおよびプラスチック顔料は比較的高価な顔料であり、後者の顔料はコーティング組成物に望ましくない粘性の問題を生じ得る。
【0036】
本発明の第1の態様に従う顔料製品は、以下のように、紙用コーティングにおいて使用され得る。
【0037】
本発明によると、第3の態様では、紙およびその他の基材上に光沢コーティングを生成する際に使用するためのコーティング組成物が提供され、該組成物は、粒子状顔料および親水性接着剤またはバインダの水性懸濁液を含み、粒子状顔料は本発明の第1の態様に従う顔料を含む。本明細書中では、「紙」という表現は、紙、厚紙、カードなどからなる製品を包含する。
【0038】
本発明の第3の態様に従う紙用コーティング組成物の固体含量は、約60重量%より多く、例えば少なくとも70重量%であり得る。組成物は、例えば、存在する顔料の乾燥重量を基準として約2重量%までの高分子電解質のような分散剤を含むことができる。例えば、ポリアクリレートおよびポリアクリレート単位を含むコポリマーが、適切な高分子電解質としてよく知られている。本発明の第1の態様に従う顔料製品は、第3の態様に従う紙用コーティング組成物中で単独の顔料として使用されてもよいし、あるいは例えば、(市販の)カオリン、か焼カオリン、天然または沈降炭酸カルシウム、二酸化チタン、硫酸カルシウム、サテンホワイト、タルク、およびいわゆる「プラスチック顔料」などの、1つまたは複数の他の既知の顔料と共に使用されてもよい。顔料の混合物が使用される場合、本発明の第1の態様に従う顔料製品は、適切には、混合顔料の全乾燥重量の少なくとも約80%の量で混合物中に存在する。
【0039】
第3の態様に従う組成物のバインダは、例えば、小麦、トウモロコシ、ジャガイモ、またはタピオカなどの既知の植物源から得られる天然のでんぷん由来の接着剤を含むことができるが、バインダ成分としてでんぷんを使用することは不可欠ではない。でんぷんと共に、あるいはでんぷんを伴わずに使用され得るその他のバインダは、後で言及される。
【0040】
バインダ成分としてでんぷんが使用される場合、でんぷんは未変性または未加工のでんぷんでもよいし、あるいは、当該技術分野において知られる1つまたは複数の化学処理によって変性されてもよい。例えば、でんぷんを酸化して、その−CHOH基のいくつかを−COOH基に転化させることができる。いくつかの場合には、でんぷんは、少量の割合のアセチル−COCH基を有し得る。あるいは、でんぷんを化学的に処理して、カチオン性または両性(すなわち、カチオンおよびアニオンの両方の電荷を有する)にすることができる。また、例えば−O−CH−CHOH基、−O−CH−CH基または−O−CH−CH−CHOH基でいくつかの−OH基を置換することによって、でんぷんをでんぷんエーテルまたはヒドロキシアルキル化でんぷんに転化させることもできる。使用することができる更なる種類の化学処理済でんぷんは、リン酸でんぷんとして知られるものである。あるいは、未加工でんぷんを希酸または酵素によって加水分解して、デキストリン型のガムを生成してもよい。第3の態様に従う組成物中で使用されるでんぷんバインダの量は、顔料の乾燥重量を基準として、例えば、約2重量%〜約25重量%の範囲であってもよい。でんぷんバインダは、例えば、ラテックスまたはポリ酢酸ビニルまたはポリビニルアルコール型の合成バインダのような1つまたは複数のその他のバインダと共に使用されてもよい。例えば合成バインダなどの別のバインダと共にでんぷんバインダが使用される場合、でんぷんバインダの量は例えば約2重量%〜約20重量%の範囲であってもよく、そして合成バインダの量は約2重量%〜約12重量%であってもよく、これらの量はいずれも乾燥顔料の重量を基準とする。1つの実施形態では、少なくとも約50重量%のバインダ混合物は、変性または未変性でんぷんを含む。
【0041】
本発明によると、第4の態様では、第3の態様に従うコーティング組成物の使用方法が提供され、該方法は、組成物を施して紙のシートを塗工すること、紙をカレンダ加工してその上に光沢コーティングを形成することとを含む。いくつかの実施形態では、光沢コーティングは紙の両面に形成される。
【0042】
カレンダ加工はよく知られたプロセスであり、塗工紙シートをカレンダニップまたはローラ間に一回または数回通過させることによって、紙の平滑性および光沢が改良され、かさが減少される。通常は、高固体組成物のプレス加工品を提供するためにエラストマー被覆されたロールが使用される。高温を適用することができる。5回またはそれ以上のニップの通過が適用され得る。
【0043】
第4の態様に従う方法で塗工およびカレンダ加工した後の紙は、約30g・m−2〜約70g・m−2の範囲の単位面積あたりの総重量を有することができる。もう1つの実施形態では、単位あたりの総重量は、約49g・m−2〜約65g・m−2の範囲、または約35g・m−2〜約48g・m−2の範囲である。最終コーティングは、約3g・m−2〜約20g・m−2の単位面積あたりの重量を有することができる。更にもう1つの実施形態において、最終コーティング重量は、LWCでは約5g・m−2〜約13g・m−2であり、ULWCでは約4g・m−2〜約8g・m−2である。このようなコーティングは、紙の両面に施されてもよい。したがって、塗工紙は、LWC紙またはULWC紙であってもよい。紙の光沢は、約45TAPPI単位よりも大きく、それぞれの紙コーティングの1MPaの圧力におけるパーカープリントサーフ値は、約1μmよりも小さい。
【0044】
塗工紙表面の光沢は、TAPPI標準No480ts−65に規定される試験によって測定することができる。紙の表面からある角度で反射される光の強度を測定し、既知の光沢値の標準と比較する。入射光ビームおよび反射光ビームは両方とも、紙面の法線に対して75°の角度である。結果はTAPPI光沢単位で表される。第1の態様に従う顔料製品の光沢は、TAPPI単位で、約50よりも大きく、場合によっては約55よりも大きい。
【0045】
パーカープリントサーフ試験は紙の表面の平滑性の尺度を提供し、圧縮空気の出口を組み込んだ上側板と下側板との間に既知の標準的な力で固定され、試験される紙の性質に従って軟質または硬質どちらかのリファレンス支持材料のシートでその上面が被覆された塗工紙サンプルから、圧力をかけられた空気が漏出する割合を測定することを含む。空気の流出率から、紙の表面とリファレンス材料の間のμm単位の平方根平均立方ギャップが計算される。このギャップの値が小さいほど、試験下の紙の表面の平滑性の程度が高いことが示される。
【0046】
第3の態様に従うコーティング組成物中に存在するバインダがでんぷんを含む場合には、本発明によって改良が提供される。しかしながら、その他の既知のでんぷんを含まないバインダが(でんぷんを存在させて、または存在させずに)使用される場合にも改良が得られる。それぞれの場合において、接着剤またはバインダは、組成物の固体含量の約4重量%〜約30重量%を形成することができる。もう1つの実施形態では、接着剤またはバインダは組成物の固体含量の約8重量%〜約20重量%であってもよい。更にもう1つの実施形態では、接着剤またはバインダは、組成物の固体含量の約8重量%〜約15重量%であってもよい。使用される量は、それ自体が1つまたは複数の成分を取り込み得る接着剤の組成およびタイプに依存するであろう。例えば、当該技術分野で使用される親水性接着剤は、例えば以下の接着剤またはバインダ成分のうちの1つまたは複数を取り込んで、以下に記載される量で使用することができる。
【0047】
(a)ラテックス:約4重量%〜約20重量%の範囲のレベルである。ラテックスは、例えば、スチレンブタジエン、アクリルラテックス、酢酸ビニルラテックス、またはスチレンアクリルコポリマーを含むことができる。
【0048】
(b)その他のバインダ:例えば約4重量%〜約20重量%の範囲のレベルである。その他のバインダの例としては、カゼイン、ポリビニルアルコールおよびポリ酢酸ビニルが挙げられる。
【0049】
本発明の第3の態様に従うコーティング組成物には、コーティングのタイプおよび塗工される材料に応じて、様々な既知の種類の添加剤が含まれ得る。このような種類の任意の添加剤の例は、以下の通りである。
【0050】
(a)架橋剤:例えば、約5重量%までのレベルであり、例えば、グリオキサール、メラミンホルムアルデヒド樹脂、炭酸アンモニウムジルコニウムである。
【0051】
(b)水分保持助剤:例えば、約2重量%までであり、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、PVA(ポリ酢酸ビニル)、でんぷん、タンパク質、ポリアクリレート、ガム、アルギン酸塩、ポリアクリルアミドベントナイト、およびこのような用途で販売される他の市販の製品である。
【0052】
(c)粘度調整剤または増粘剤:例えば、約2重量%までのレベルであり、例えば、ポリアクリレート、エマルジョンコポリマー、ジシアナミド、トリオール、ポリオキシエチレンエーテル、尿素、硫酸化ひまし油、ポリビニルピロリドン、モンモリロナイト、CMC(カルボキシメチルセルロース)、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ケイ酸ナトリウム、アクリル酸コポリマー、HMC(ヒドロキシメチルセルロース)、HEC(ヒドロキシエチルセルロース)などである。
【0053】
(d)潤滑性/カレンダ加工助剤:例えば約2重量%までのレベルであり、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、ステアリン酸亜鉛、ワックスエマルジョン、ワックス、アルキルケテンダイマー、グリコールである。
【0054】
(e)分散剤:例えば約2重量%までのレベルであり、例えば、ポリアクリレートおよびポリアクリレート種を含有するコポリマーなどの高分子電解質、より詳細には、ポリアクリル酸塩(例えば、任意でII族金属を有するナトリウムおよびアルミニウムの塩)、ヘキサメタリン酸ナトリウム、非イオン性ポリオール、ポリリン酸、縮合リン酸ナトリウム、非イオン性界面活性剤、アルカノールアミン、およびこの機能のために通常使用されるその他の試薬である。
【0055】
(f)泡止め剤/泡消し剤:例えば約1重量%までのレベルであり、例えば、界面活性剤の混合物、リン酸トリブチル、脂肪族ポリオキシエチレンエステルに脂肪族アルコールを加えたもの、脂肪酸セッケン、シリコーンエマルジョンおよび他のシリコーン含有組成物、ワックスおよび鉱物油中の無機微粒子、乳化炭化水素の混合物、ならびにこの機能を実行するために市販されるその他の化合物である。
【0056】
(g)ドライまたはウェットの突刺し改良添加剤;例えば約2重量%までのレベルであり、例えば、メラミン樹脂、ポリエチレンエマルジョン、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリアミド、ステアリン酸カルシウム、スチレン無水マレイン酸などである。
【0057】
(h)ドライまたはウェットの摩擦改良および摩耗耐性添加剤:例えば約2重量%までのレベルであり、例えば、グリオキサール系樹脂、酸化ポリエチレン、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリエチレンワックス、ステアリン酸カルシウムなどである。
【0058】
(i)光沢インク耐性添加剤:例えば約2重量%までのレベルであり、例えば、酸化ポリエチレン、ポリエチレンエマルジョン、ワックス、カゼイン、グアールガム、CMC、HMC、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アンモニウム、アルギン酸ナトリウムなどである。
【0059】
(j)光学的増白剤(OBA)および蛍光増白剤(FWA):例えば約1重量%までのレベルであり、例えば、スチルベン誘導体である。
【0060】
(k)染料:例えば約0.5重量%までのレベルである。
【0061】
(l)殺生剤/腐敗制御剤:例えば1重量%までのレベルであり、例えば、メタホウ酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、チオシアン酸塩、有機硫黄、安息香酸ナトリウム、およびこの機能のために市販されるその他の化合物である。
【0062】
(m)平滑化および平坦化助剤:例えば約2重量%までのレベルであり、例えば、非イオン性ポリオール、ポリエチレンエマルジョン、脂肪酸、エステルおよびアルコール誘導体、アルコール/エチレンオキシド、CMCナトリウム、HEC、アルギン酸塩、ステアリン酸カルシウム、ならびにこの機能のために市販されるその他の化合物である。
【0063】
(n)グリースおよびオイル耐性添加剤:例えば約2重量%までのレベルであり、例えば、酸化ポリエチレン、ラテックス、SMA(スチレン無水マレイン酸)、ポリアミド、ワックス、アルギン酸塩、タンパク質、CMC、HMCである。
【0064】
(o)耐水性添加剤:例えば約2重量%までのレベルであり、例えば、酸化ポリエチレン、ケトン樹脂、アニオンラテックス、ポリウレタン、SMA、グリオキサール、メラミン樹脂、尿素ホルムアルデヒド、メラミンホルムアルデヒド、ポリアミド、グリオキサール、ステアリン酸塩、およびこの機能のために市販されているその他の材料である。
【0065】
(p)不溶化剤:例えば約2重量%までのレベルである。
【0066】
上記添加剤の全てについて、示された重量百分率は、組成物中に存在する顔料の乾燥重量(100%)を基準としている。添加剤が最少量で存在する場合、最少量は顔料の乾燥重量を基準として0.01重量%であってもよい。
【0067】
本発明の第4の態様に従う方法は、従来の塗工機を用いて、塗工される材料、施されるコーティング組成物、ならびにオペレータにより決定される、例えば速度および作業性の容易さなどのその他の因子に依存し得る既知の方法で実行することができる。
【0068】
紙およびその他のシート材料を塗工する方法は広く公開されており、よく知られている。例えば、このような方法のレビューは、Pulp and Paper International、1994年、5月、18頁以下に公開されている。シートは、シート形成機において、すなわちコーターまたは塗工機で「オンマシン」または「オフマシン」で塗工され得る。高固体組成物の使用は、続いて蒸発させる水が少ししか残らないので、塗工方法において望ましい。しかしながら、当該技術分野においてよく知られているように、固体レベルは、高粘度および平滑化の問題が導入されるほど高くてはならない。
【0069】
本発明の第4の態様によると、紙の塗工方法には、(i)塗工すべき材料にコーティング組成物を付与する手段、すなわちアプリケータ、(ii)正確なレベルのコーティング組成物が付与されることを保証するための手段、すなわち計量装置とが含まれる。過剰なコーティング組成物がアプリケータへ付与される場合、計量装置はその下流側にある。あるいは、計量装置によって、例えばフィルムプレスのように、正確な量のコーティング組成物がアプリケータに付与されてもよい。コーティングの付与および計量の時点では、紙ウェブの支持の範囲は、バッキングロール、例えば1つまたは2つのアプリケータによるものから、何もない、すなわち単に張力によるものまでである。過剰分が最終的に除去される前にコーティングが紙と接触している時間は滞留時間であり、これは、短くても長くてもよいし、あるいは可変性でもよい。
【0070】
コーティングは、通常、コーティングステーションでコーティングヘッドによって添加される。所望される品質に従って、紙の等級は、非塗工、シングル塗工、ダブル塗工、そして更にトリプル塗工である。1回より多い塗工を提供する場合、最初の塗工(プレコート)はより安価な配合物を有し、任意で、コーティング組成物中の顔料が少なくてもよい。ダブルコーティング、すなわち紙の各面にコーティングを施しているコーターは、各ヘッドにより塗工される面の数に依存して、2つまたは4つのコーティングヘッドを有するであろう。ほとんどのコーティングヘッドは一度にただ1つの面を塗工するが、いくつかのロールコーター(例えば、フィルムプレス、ゲートロール、サイズプレス)は、一回の通過で両方の面を塗工する。
【0071】
使用することができる既知のコーターの例には、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、マルチヘッドコーター、ロールコーター、ロール/ブレードコーター、キャストコーター、ラボラトリーコーター、グラビアコーター、キスコーター、液体塗布システム、リバースロールコーター、および押出コーターが含まれる。
【0072】
本明細書中に記載されるコーティング組成物の全ての例において、所望される目標の塗工重量でシート上に塗工される場合に、約1〜約1.5バールの圧力(例えば、ブレード圧力)で塗工される組成物に適したレオロジーを有する固体濃度を提供するように、固体に水が添加される。一般に、固体含量は、約60重量%〜約70重量%でよい。
【0073】
本発明の実施形態を、以下の説明となる実施例を参照しながら単なる例としてこれから説明する。
【実施例1】
【0074】
[調製]
当業者によく知られているであろう従来の方法に従って、ブラジルのリオ・カピン地方の沈積堆積物からの未加工カオリン粘土を水中に懸濁させて、40%〜45%の固体で混練し、デグリッティングし、スクラブ粉砕した。得られた懸濁液を高強度磁気選別機に通し、鉄含有不純物をそこから除去した。磁気選別工程の後、カオリン粘土は、約68重量%が2μmよりも小さいesdを有する粒子からなるようなpsdを有することがわかった。英国特許公開第2240398号に記載される方法で測定されるカオリン粘土の形状係数は、約11であることがわかった。
【0075】
磁気処理された粗製カオリン懸濁液の第1の部分は、Floatexアトリッションスクラバー(Outokumpu Technology, Inc.のCarpco Divisionから入手可能)へ導かれ、カオリン粘土1メートルトンあたり約50kWhのエネルギーが消費されるような時間、粉砕される。粉砕媒体は、約0.6mm〜約0.85mmのサイズ範囲の粒子を有するケイ砂であった。この粉砕工程が完了した時点で、カオリン粘土は、70〜75重量%が2μmより小さいesdを有する粒子からなるようなpsdを有することが分かった。英国特許公開第2240398号に記載される方法で測定される平均粒子形状係数は38〜42であることがわかった。
【0076】
サンドグラインダーの生成物は、その中の約70〜75重量%の粒子が約2ミクロンよりも小さいesdを有するようなpsdと、38〜40の範囲の形状係数とを有していた。
【0077】
粉砕カオリン粘土の懸濁液を、エルトリエーションにより粉砕媒体から分離して、層間剥離したカオリンのストリームを回収した。次に、この層間剥離カオリンストリームをバード型遠心分離機に導き、粗大画分および微細画分に分離した。得られた微細画分は、本発明のカオリンとは無関係の最終製品として使用した。得られた粗大画分は、2ミクロンよりも小さい約34重量%の粒子、および約12の形状係数を有するカオリン懸濁液からなっていた。また、この粗大画分は、既に議論したようにカオリンブックレットおよびスタックが豊富であったと仮定される。約80%の粗大カオリン懸濁液に対して約20%の磁気処理済の粗製物の比率で、磁気処理済の粗製物の第2の部分と混合するために、粗大画分を混合タンクへ導いて、混合カオリン懸濁液を形成した。
【0078】
次に、遠心分離機から流出させた生成物を硫酸で酸性にし、乾燥カオリン1メートルトンあたり3kgの亜ジチオン酸ナトリウム漂白剤で漂白し、フィルタープレスで脱水し、こうして形成されたケーキを、乾燥カオリンの重量を基準として0.25重量%のポリアクリル酸ナトリウム分散剤を用いて再分散させた。分散懸濁液を次に噴霧乾燥させて乾燥粉体を形成した。
【0079】
最終カオリン粘土製品は、89〜92重量%が2μmより小さいesdを有する粒子からなり、約15〜19重量%が0.25μmより小さいesdを有する粒子からなるようなpsdを有していた。英国特許公開第2240398号に記載される方法により測定される製品の形状係数は、26よりも大きい(試験された特定のバッチによって、最大約35まで)ことが分かった。製品の粒子スティープネスは、およそ、約35〜約40の範囲であった。
【0080】
この製品は、カオリン組成物A1〜A3(それぞれ、上記の詳細な方法で製造した製品の異なるバッチを示す)として示した。
【実施例2】
【0081】
[カオリン特性]
カオリン組成物A1〜A3の明るさ(ISO)、黄色度、粒径分布、形状係数、および粘性濃度は、表1において、従来技術の組成物SUPRAPRINT(商標)と比較される。
【0082】
【表1】

【0083】
表1において分かるように、本発明の態様に従って調製された二次カオリンは、全体的に、従来技術の一次カオリンの所望の特性に近い特性を有する。本発明のカオリンは、従来技術の一次カオリンよりもいくらか低い形状係数およびわずかにより黄色がかった色を有するが、同等のpsdと、より優れた明るさおよび粘性濃度とを有する。明るさは、国際標準NoISO2470に従って測定されるように、波長457nmの光に対する反射率と定義される。粉体の黄色度は、波長457nmの光に対する粉体の反射率と、波長570nmの光に対する反射率との間の差として定義され、いずれも国際標準NoISO2470に従って測定される。粘性濃度は、ブルックフィールドの粘度測定値が5ポアズであるのに必要とされる固体濃度として決定した。
【実施例3】
【0084】
[コーティングカラー特性]
顔料を製造し、表2に示されるような通常の100%カオリンLWCオフセット配合物において、Helicoater2000C上で滞留時間の短いアプリケータを用いて800m/分で36g/mのメカニカルベース(リールno.500)上に塗工した。
【0085】
【表2】

【0086】
作業性が最も高い固体でコーティングを施した。このときのカラー特性は、表3に示される。5〜12g/mの範囲の塗工重量が適用された。
【0087】
【表3】

【0088】
本発明の二次カオリンで製造したコーティングカラーの2つの新しいバッチの形状係数を増大させると、コーティングカラーの作業可能な固体が約0.5%減少されるが、固体レベルは依然として、従来技術の一次カオリンよりも大幅に高い(1.5%)。本発明に従って調製された二次カオリンを含有するコーティングカラーのブルックフィールド粘度測定は、従来技術の一次カオリンを含有するコーティングカラーと同様であった。当業者には知られているはずの従来の方法に従って、高せん断粘度計を用いてボーリン(Bohlin)数を決定した。一般的に言えば、コーティングカラーのためにはボーリン数が低いことが好ましい。したがって、本発明の組成物は、コーティングカラーで使用される場合、従来技術の一次カオリン組成物よりも優れた性能を示す。本発明のカオリンを用いて調製されるコーティングカラーの水分保持特性は、従来技術の一次カオリンを用いて調製されたものよりもわずかに良好ではなかった。したがって、全体として、測定パラメータは、従来技術の一次誘導カオリンを用いて調製したコーティングカラーの所望の特性に非常に近い。
【実施例4】
【0089】
[塗工紙の特性]
本発明の態様に従って調製されたカオリン組成物の有用性を更に説明するために、塗工紙試験も行った。コーティングの厚みを8g/mに補間した値は、表4に示される。
【0090】
【表4】

【0091】
表4において分かるように、本発明の態様に従って調製された二次カオリン組成物を用いて作製された紙の明るさ、不透明度、およびパーカープリントサーフ(PPS)値は全て、従来技術の一次カオリン組成物を用いて調製されたものと同等であった。本発明の組成物を用いて製造された多孔質紙は、従来技術の組成物を用いて製造された紙と全く同一であるものから、わずかに劣るものまである。本発明の組成物で達成される明るさおよび光沢は、従来技術の一次カオリン組成物を用いて達成されるものよりも優れていた。
【実施例5】
【0092】
[オフセット印刷特性]
表5において分かるように、本発明の二次カオリン誘導組成物を用いて製造された塗工紙は、そのオフセット印刷特性に関して、従来技術の一次誘導カオリンと非常に類似して機能する。
【0093】
【表5】

【0094】
印刷光沢は、既に議論された光沢測定手順に従って測定した。デルタ光沢は印刷前と印刷後の光沢の変化を表す。乾燥印刷密度(これも業界標準手順に従って測定される)は、試験下のサンプルから、および印刷されていない白色シートからの白色光の反射率を測定し、以下の式:
密度(D)=Log101/R
式中、R=R÷R
を適用することによって決定される。ここで、Rは試験下にあるサンプルにより反射される光の強度であり、Rは未印刷白色シートにより反射される光の強度である。
【0095】
したがって、本発明の方法に従って、これまでは一次カオリンだけから誘導されていた所望の特性を有する従来技術のカオリン製品の適切な代替品であるカオリン製品を、二次カオリンから製造できることが上記実施例から分かる。
【0096】
本発明のその他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書中に開示される本発明の実施から本当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は単なる例示として考えられ、本発明の真の範囲および精神は特許請求の範囲によって示されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約85重量%の粒子が約2μmより小さい等価球直径を有し、約10重量%〜約20重量%の粒子が約0.25μmより小さい等価球直径を有するような粒径分布を有するカオリンを含み、前記粒子が約20〜約40の範囲の形状係数を有し、前記粒子が約32よりも大きい粒子スティープネスを有する顔料製品であって、前記カオリンが、粗製二次カオリンに由来する顔料製品。
【請求項2】
前記粗製二次カオリンが、ブラジルのパラ州地方から得られる請求項1に記載の顔料製品。
【請求項3】
約85重量%〜約95重量%の前記粒子が、約2μmよりも小さい等価球直径を有する請求項1に記載の顔料製品。
【請求項4】
約87重量%〜約93重量%の前記粒子が、約2μmよりも小さい等価球直径を有する請求項1に記載の顔料製品。
【請求項5】
約14重量%〜約18重量%の前記粒子が、約0.25μmよりも小さい等価球直径を有する請求項1に記載の顔料製品。
【請求項6】
前記粒子の形状係数が、約20〜約36の範囲である請求項1に記載の顔料製品。
【請求項7】
前記粒子の形状係数が、約23〜約33の範囲である請求項1に記載の顔料製品。
【請求項8】
前記粒子の形状係数が、約26〜約30の範囲である請求項7に記載の顔料製品。
【請求項9】
前記粒子の形状係数が、約28〜約30の範囲である請求項8に記載の顔料製品。
【請求項10】
前記粒子のスティープネスが、約32〜約40の範囲である請求項1に記載の顔料製品。
【請求項11】
前記粒子のスティープネスが、約35〜約39の範囲である請求項1に記載の顔料製品。
【請求項12】
前記粒子のスティープネスが、約36〜約38の範囲である請求項1に記載の顔料製品。
【請求項13】
前記カオリンが、
(a)分別されていないカオリン粘土を水と混合して水性懸濁液を形成することと、
(b)約2ミクロンよりも小さい粒子を約20重量%〜約40重量%の範囲で有する粗大カオリン画分を前記水性懸濁液と混ぜ合わせることと、
(c)前記カオリン粘土の平均形状係数が少なくとも約10増大するように、前記水性懸濁液をアトリッション粉砕することと、
(d)得られた粉砕カオリン粘土の懸濁液を分級して該粉砕カオリン粘土の懸濁液から顔料製品を得ることと、
を含む方法によって製造される請求項1に記載の顔料製品。
【請求項14】
少なくとも約85重量%の粒子が約2μmよりも小さい等価球直径を有し、約15重量%〜約20重量%の粒子が約0.25μmよりも小さい等価球直径を有するような粒径分布を有するスティープな板状のカオリンを含み、前記粒子が約20〜約36の範囲の形状係数を有し、前記粒子が約35〜約40の範囲の粒子スティープネスを有する顔料製品を製造する方法であって、
(a)分別されていない二次カオリン粘土を水と混合して水性懸濁液を形成することと、
(b)粗大カオリン画分を前記水性懸濁液と混ぜ合わせることと、
(c)前記カオリン粘土の平均形状係数が少なくとも約10増大するように前記水性懸濁液をアトリッション粉砕することと、
(d)得られた粉砕カオリン粘土の懸濁液を分級して該粉砕カオリン粘土の懸濁液から顔料製品を得ることと、
を含む方法。
【請求項15】
凝集微細カオリン粒子の含量を低減し、カオリンのスタックを部分的に層間剥離させるために、前記粗大カオリン画分が、既に粉砕および分級されている請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記粗大カオリンが、
(a)未加工または部分的に加工されたカオリン粘土を水と混合して水性懸濁液を形成することと、
(b)前記水性懸濁液をアトリッション粉砕することと、
(d)得られた粉砕カオリン粘土の懸濁液を分級して該粉砕カオリン粘土の懸濁液から粗大画分を得ることと、
によって調製されたものである請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記アトリッション粉砕が、多段階で生じる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記平均形状係数が、(c)において、少なくとも約15増大する請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記水性懸濁液が、更に、水溶性の漂白剤で処理される請求項14に記載の方法。
【請求項20】
紙およびその他の基材上に光沢コーティングを生成する際に使用するためのコーティング組成物であって、請求項1に記載の顔料製品からなる粒子状顔料と接着剤との水性懸濁液を含む組成物。
【請求項21】
前記組成物の固体含量が、前記組成物の約60重量%よりも多い請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
紙およびその他の基材上に光沢コーティングを生成する際に使用するための、粒子状顔料および接着剤の水性懸濁液を含むコーティング組成物であって、前記粒子状顔料の少なくとも約80重量%が請求項1に記載の顔料製品からなる組成物。
【請求項23】
前記接着剤が、変性または未変性のでんぷんを含む請求項20に記載の組成物。
【請求項24】
前記接着剤が、でんぷん以外のバインダを含む請求項20に記載の組成物。
【請求項25】
請求項20に記載の組成物で紙を塗工することと、紙をカレンダ加工してその上に光沢コーティングを形成することとを含む、紙上に光沢コーティングを形成する方法。

【公表番号】特表2006−513964(P2006−513964A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−529190(P2004−529190)
【出願日】平成15年8月15日(2003.8.15)
【国際出願番号】PCT/US2003/023267
【国際公開番号】WO2004/016697
【国際公開日】平成16年2月26日(2004.2.26)
【出願人】(505000918)アイメリーズ リオ カピム カウリム,エス.エー. (1)
【Fターム(参考)】