カセッテ型放射線画像固体検出器
【課題】画像データのデジタル化を達成するとともに、FPDであって、検出器全体の剛性(強度)を確保しつつ、CR用のカセッテとの互換性を有し、ポータブル撮影をすることが可能なカセッテ型放射線画像固体検出器を提供する。
【解決手段】カセッテ型放射線画像固体検出器1は、シンチレータ層211又は電荷変換層が一方の面に形成された第1のガラス基材214と、シンチレータ層211又は電荷変換層により変換された光又は電荷を検出する検出部151が一方の面に形成された第2のガラス基材213とが、シンチレータ層211と検出部151とを対向させた状態で接着手段217により結合された検出器ユニット2と、検出器ユニット2を内蔵し、第1のガラス基材214から離間する方向に凸とされた放射線入射面部51を有するハウジング3と、を備えている。
【解決手段】カセッテ型放射線画像固体検出器1は、シンチレータ層211又は電荷変換層が一方の面に形成された第1のガラス基材214と、シンチレータ層211又は電荷変換層により変換された光又は電荷を検出する検出部151が一方の面に形成された第2のガラス基材213とが、シンチレータ層211と検出部151とを対向させた状態で接着手段217により結合された検出器ユニット2と、検出器ユニット2を内蔵し、第1のガラス基材214から離間する方向に凸とされた放射線入射面部51を有するハウジング3と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カセッテ型放射線画像固体検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病気診断等を目的として、X線画像に代表される、放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。
【0003】
こうした医療用の放射線画像は、従来スクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、近年は、放射線画像のデジタル化が実現されており、例えば、被写体を透過した放射線を輝尽性蛍光体層が形成された輝尽性蛍光体シートに蓄積させた後、この輝尽性蛍光体シートをレーザ光で走査し、これにより輝尽性蛍光体シートから発光される輝尽光を光電変換して画像データを得るCR(Computed Radiography)装置が広く普及している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
放射線画像撮影では、スクリーンフィルムや輝尽性蛍光体シート等の記録媒体を内部に収納したカセッテ(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が用いられる。なお、CR装置での撮影に用いられるCR用のカセッテは、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテに適合するものとして導入された既存の設備、例えばカセッテホルダーやブッキーテーブルを継続して使用可能となるように、当該スクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに倣って、設計・製造されている。言い換えると、カセッテのサイズの互換性が維持され、施設の有効活用と画像データのデジタル化が達成されている。
【0005】
カセッテを用いた撮影においては、撮影方式によっては、カセッテのフロント部材(撮影時における放射線入射側)に患者の全荷重(全体重)が作用することがある。例えば、比較的剛性の高いブッキーテーブル上にカセッテを載置し、その上に患者が乗って臥位にて撮影を行うような場合には、当該カセッテのフロント部材に患者の撮影部位の荷重(体重)が作用するため、カセッテの剛性(強度)、特にフロント部材の剛性が重要となる。
【0006】
また、ベッド等の上で臥位状態にある患者の撮影を行うこともあり、この場合には、患者と柔軟な布団との間にカセッテが挿入されることとなるため、カセッテ自体が患者の荷重(体重)の影響で撓む(歪む)ことがある。カセッテに撓みが生じると、カセッテ内に収納された記録媒体(輝尽性蛍光体シート等)等が破損するおそれがある。また、この記録媒体(輝尽性蛍光体シート等)が歪むと、撮影される画像にも歪みが生じることとなり、好ましくない。このため、カセッテの撓みを防止するためにカセッテ全体の剛性(強度)を確保することも重要となる。
【0007】
他方で、カセッテを使用する撮影方式においては、撮影に使用するカセッテ(複数の場合もある)は、技師が患者の撮影位置まで持ち運ぶため、軽量であることも重要であり、前述した剛性(強度)との両立が求められる。
【0008】
この点、例えば特許文献3には、輝尽性蛍光体シート又はこれを接着した板状部材をバック板に接着又は吸着させ、当該バック板とフロント板とを結合することにより、重量を増加させることなく、カセッテの剛性(強度)を高め、ポータブル撮影にも対応可能で、かつ、読取装置での読取処理を可能とするカセッテが開示されている。
【0009】
ところで、最近では、医療用の放射線画像を得る手段として、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器としてFPD(Flat Panel Detector)が知られており(例えば、特許文献4参照)、さらに、このFPDをハウジングに収納した可搬型の撮影装置(可搬型のFPD)が実用化されるようになってきた。
【0010】
このような可搬型のFPDは、例えば、放射線を光に変換するシンチレータとこの光を電気信号に変換する光検出部とを筐体(ハウジング)に収納したものであり、CR用のカセッテと同様に、軽量であることと剛性(強度)との両立が求められる。
【0011】
この点、特許文献5には、X線を光に変換する柱状結晶型蛍光体とこの光を電気信号に変換する光検出部とを筐体に収納し、筐体と柱状結晶型蛍光体との間に、筐体の外部からの力を緩和する緩衝材と、柱状結晶型蛍光体よりも剛性の高い高剛性部材とを配置することにより柱状結晶型蛍光体にかかる応力を低減させ、撮影装置全体の剛性(強度)を上げる構成が示されている。
【0012】
また、特許文献6には、基板上に形成された二次元光電変換素子を装置筐体内に収納し、基板と筐体の間隙に気嚢や冷却水が収納された容器等の緩衝部材を挿入し、筐体の内壁面と基板とが互いに接触しないようにして、筐体やトッププレートが変形しても、内部の構成要素への損傷の可能性を低減する構成が示されている。
【特許文献1】特開2005−121783号公報
【特許文献2】特開2005−114944号公報
【特許文献3】特開2002−156717号公報
【特許文献4】特開平9−73144号公報
【特許文献5】特開2006−058124号公報
【特許文献6】特許第3815766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように、現在普及しているCR用のカセッテは従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに従ったサイズとなっており、ブッキーテーブル等もJIS規格サイズに合わせて作られている。このため、FPDについても、このJIS規格サイズに従ったカセッテに収納した形で用いることができれば、施設に設置されている既存の設備をFPDを用いた撮影に利用することができ、撮影手段としてFPDを導入する際の設備投資を最小限度に抑えることができる。
【0014】
しかしながら、特許文献5や特許文献6に記載されている構成では、筐体内部に高剛性部材や緩衝部材を配置しているため、検出器の筐体(ハウジング)の厚み(放射線入射方向の厚さ)を小さくすることが困難であるとともに、全体の重量も増加する結果となる。重量が増加すると、技師が検出器を持ち運ぶ際に負担となるのみでなく、検出器を誤って落下させた際の落下衝撃が増大する。このため内部に衝撃緩和構造体や空間スペースが必要となり、検出器のサイズが一層大型化するという悪循環となるとの問題がある。
【0015】
そこで、本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、画像データのデジタル化を達成するとともに、FPDであって、検出器全体の剛性(強度)を確保しつつ、CR用のカセッテとの互換性を有し、ポータブル撮影をすることが可能なカセッテ型放射線画像固体検出器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
入射した放射線を光に変換するシンチレータ層又は入射した放射線を電荷に変換する電荷変換層が一方の面に形成された第1のガラス基材と、前記シンチレータ層又は前記電荷変換層により変換された光又は電荷を検出する検出部が一方の面に形成された第2のガラス基材と、を備え、前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材とが、前記シンチレータ層又は前記電荷変換層と前記検出部とを対向させた状態で前記各ガラス基材の周縁部に設けられた接着手段により結合された検出器ユニットと、
前記検出器ユニットを内蔵し、前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされた放射線入射面部を有するハウジングと、
を備えていることを特徴とするカセッテ型放射線画像固体検出器である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジングは、前記放射線入射面部と一体的に構成された側壁部を備えており、前記放射線入射面部は、前記側壁部との各稜角近傍部が曲面状に形成されて前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴としている。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジングは、前記放射線入射面部と一体的に構成された側壁部を備えており、前記放射線入射面部は、前記側壁部との各稜角近傍部から全面的に曲面状に形成されて前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴としている。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジングは、底面部を備えており、前記底面部は、前記第2のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴としている。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジング内には、前記検出器ユニットを所定位置に保持可能な緩衝部材が備えられていることを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記第1のガラス基材及び前記第2のガラス基材は、端面を平滑化する平滑化処理を施されていることを特徴としている。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記第1のガラス基材及び前記第2のガラス基材は、レーザにより端面を切断することによって前記平滑化処理が施されていることを特徴としている。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記接着手段によって結合された前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材との間の空間が脱気されていることを特徴としている。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジングの放射線入射方向の厚さが16mm以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明のような方式のカセッテ型放射線画像固体検出器(カセッテFPD)によれば、第1及び第2のガラス基材を有する検出器ユニットに曲げ応力が作用しても、検出器ユニット自体が所定量の撓みを許容する構成を有していることにより、曲げ応力の作用によって、直ちに、ガラス基材に割れを誘発して故障を発することがなくなる。
【0026】
したがって、先行文献に記載されている発明のように、内部のガラス基材への曲げ応力の作用を阻止すべく、高剛性部材を追加する等によりハウジングの剛性を上げる構成、すなわち、装置全体の厚み寸法を増大させる構成をとる場合と異なり、カセッテの厚み寸法をCR用のカセッテと同程度に維持することが可能となる。
【0027】
また、検出器ユニットを内蔵するハウジングの放射線入射面が検出器ユニットの第1のガラス基材から離間する方向に凸とされることで、そのアーチ型構造が例えば患者の体重等の外部からの負荷による力をその面方向に分散するため撓みや変形を生じにくくなり、検出器全体の剛性(強度)が確保される。そのため、検出器の剛性(強度)を増すための他の構造や部材は必要なくなり、構成が簡素化し、従来の可搬型FPDに比べ、重量低減を図ることができ、技師の持運びの際の負荷を低減できるとともに、移動時に誤って落下させるケースも低減され、仮に落下させたとしても、重量低減に伴い、落下衝撃自体も小さくなるので、落下に伴う故障の誘発も抑制可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図1から図12を参照しつつ、本発明に係るカセッテ型放射線画像固体検出器の一実施形態について説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
【0029】
図1(a)は、本実施形態におけるカセッテ型放射線画像固体検出器(以下「カセッテ型検出器」と称する。)の斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)のカセッテ型検出器の矢視A方向から見た正面図である。
【0030】
本実施形態におけるカセッテ型検出器1は、カセッテ型のフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下「FPD」と称する。)であり、カセッテ型検出器1は、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器ユニット2(図4等参照)と、この検出器ユニット2を内部に収納するハウジング3とを備えている。
【0031】
図2は、本実施形態におけるハウジング3の分解斜視図である。図2に示すように、ハウジング3は、底面部41と側壁部42を有してほぼ箱型に形成されカセッテ型検出器1を撮影に用いる際に放射線入射側となる側に開口部48を有するバック部材4と、カセッテ型検出器1の放射線入射側に配置されたフロント部材5とを備えている。
【0032】
フロント部材5は、略矩形状に形成された放射線入射面部51と、この放射線入射面部51と一体的に構成された側壁部(曲げ立ち上がり部)52とを備えており、バック部材4と同様にほぼ箱型に形成されている。フロント部材5は、カセッテ型検出器1を撮影に用いる際に放射線入射側と反対側に開口部56を有し、バック部材4の開口部48を塞ぐ蓋として機能する。
【0033】
ハウジング3は、バック部材4とフロント部材5とを接合することにより一体となるようになっている。バック部材4とフロント部材5との接合手法は特に限定されず、例えばねじ止めすることにより接合してもよいし、接着固定してもよい。
【0034】
本実施形態において、ハウジング3の放射線入射方向の厚さは、最大で16mmとなるように構成されている。なお、ハウジング3の放射線入射方向の厚さ寸法は最大で16mmに限定されないが、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズ(15mm+1mmであり、かつ15mm−2mm)の範囲内に収まる寸法であることが好ましい。CR用のカセッテやブッキーテーブル等、既存の装置のほとんどがこのスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに合わせて作られているため、ハウジング3の寸法をJIS規格サイズに合わせることにより、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1による撮影を行う場合でも既存の設備を利用することができる。
【0035】
ハウジング3は、このフロント部材5の放射線入射面部51が後述する検出パネル21の第1のガラス基材214(後述する図5等参照)から離間する方向に凸となるように構成されており、放射線入射面部51に外部(患者)から(患者の体重)等による力が加わったときに、撓み、歪みを生じにくくなっている。
【0036】
本実施形態では、放射線入射面部51と側壁部52とが一体的に構成されており、放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成されている。なお、図1では図示を省略しているが、図1(a)のカセッテ型検出器において、矢印Aに直交する方向から見た側面視においても放射線入射面部51は側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成されている。そのため、上記の効果に加えて、放射線入射面部51と側壁部52との稜角近傍の曲げ剛性(曲げ強度)が高くなるように構成されている。
【0037】
ハウジング3を構成する部材のうち、少なくともフロント部材5は、カーボン繊維等を含む放射線透過率の高い材料によって形成されている。その形成手法は特に限定されないが、例えば、カーボン繊維にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂を含浸させたシートであるカーボンプリプレグ(カーボン板の材料)をフロント部材5の形状に成型された型の上に積層し、これを高温高圧で焼き固めることにより、所望の形状とすることができる。
【0038】
また、本実施形態において、バック部材4は、例えばアルミニウム、マグネシウムのような軽金属で形成されている。なお、バック部材4を形成する材料は特に限定されず、例えばフロント部材5と同様にカーボン繊維等を含む材料によって形成されていてもよい。なお、フロント部材5やバック部材4の板厚は、例えばそれぞれ2mmとされる。
【0039】
バック部材4の長尺方向に直交する側の一端には、図2に示すように、側面から裏面にかけてバック側切り欠き部43が設けられており、フロント部材5の長尺方向に直交する側の一端であって、このバック側切り欠き部43に対応する側壁部52の位置には、フロント側切り欠き部53が設けられている。
【0040】
バック側切り欠き部43及びフロント側切り欠き部53の幅寸法は、後述する充電池25(図4等参照)の幅寸法よりも大きいことが好ましい。また、フロント側切り欠き部53はフロント部材5の端部から中央部に向かって8mm切り欠かれている。なお、フロント側切り欠き部53をフロント部材5の端部から中央部に向かってどの程度切り欠くかは特に限定されないが、6mm以上であることが好ましく、8mm以上であればさらに好ましい。
【0041】
本実施形態において、ハウジング3は、バック部材4とフロント部材5とを接合すると、バック側切り欠き部43とフロント側切り欠き部53とによって、後述する充電池25を出し入れ可能な取出し口31が形成されるようになっている。
【0042】
また、ハウジング3は、この取出し口31に嵌め込まれる蓋部材8を備えており、取出し口31に蓋部材8を嵌め込むことによってハウジング3の内部は密閉された空間となる。本実施形態において、蓋部材8は、例えば非導電性のプラスチック等の非導電性の材料によって形成されている。
【0043】
図3(a)は、図2における蓋部材8を矢視B方向から見た平面図であり、図3(b)は、図3(a)におけるC−C断面図である。図2及び図3(b)に示すように、蓋部材8は、バック側切り欠き部43に対応する側面部81及び下面部82とからなり、取出し口31の形状に合わせて側面視ほぼL字状となっている。なお、蓋部材8の形状はここに例示したものに限定されず、例えばコ字状等であってもよい。この場合には、フロント側切り欠き部及びバック側切り欠き部の形状もこれに対応する形状とする。
【0044】
図3(a)に示すように、蓋部材8の下面部82の側端面にはガイド用凸部83が設けられており、バック側切り欠き部43には、図2に示すように、このガイド用凸部83を案内するガイド用溝44が設けられている。蓋部材8は、ガイド用凸部83をガイド用溝44に沿ってスライドさせることにより取出し口31に嵌め込まれるように構成されている。なお、蓋部材8を取出し口31に嵌め込む構成は、ここに例示したものに限定されない。例えば、蓋部材の下面部とバック部材、又は上面部とフロント部材とをヒンジを介して接続し、ヒンジの軸を中心に蓋部材を回動させることにより取出し口に対して蓋部材が開閉可能となるように構成してもよい。
【0045】
また、蓋部材8の側面部81には、カセッテ型検出器1と外部の機器との間で無線により情報の送受信を行うためのアンテナ装置9が埋め込まれている。
【0046】
図2及び図3(a),(b)に示すように、アンテナ装置9には金属からなる平板状の一対の放射板91,92と、一対の放射板91,92を連結し、当該一対の放射板91,92に対して給電する給電部93とが設けられている。
【0047】
本実施形態において、一対の放射板91,92のうち、一方の放射板91は、正面視形状が台形となるように形成されており、他方の放射板92は、正面視形状がほぼ円形となるように形成されている。そして、給電部93は、一方の放射板91の上底部の略中央に接続されるとともに、他方の放射板92の一部と接続されている。給電部93によって連結されることで、一対の放射板91,92の間には、所定の間隙が形成されている。
【0048】
なお、アンテナ装置9の種類・形状は、ここに例示したものに限定されない。また、アンテナ装置9は蓋部材8の側面部81に埋め込まれている場合に限定されず、蓋部材8の外側や内側に貼付されていてもよい。ただし、アンテナ装置9は、金属やカーボン等の導電性材料からなる導電性部材に近接した位置に設けると受信感度や受信利得が低下することから、カーボン等の導電性材料で形成されているフロント部材5や金属等で形成されている各種電子部品22(図4等参照)からできるだけ離れた位置に設けることが好ましい。少なくとも6mm以上離れていることが好ましく、8mm以上であればさらに好ましい。
【0049】
この点、本実施形態では、蓋部材8の側面部81に設けられたアンテナ装置9は、カーボン繊維等の導電性材料を含んで形成されているフロント部材5から8mm以上離れた位置に配置されており、受信感度や受信利得が維持されている。
【0050】
バック部材4の側面のうちバック側切り欠き部43が形成されている面と同一面上には、図1(a)及び図2に示すように、ハウジング3の内部に設けられた充電池25(図4等参照)を充電する際に外部の電源等と接続される充電用端子45が形成されており、また、カセッテ型検出器1の電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ46が配置されている。
【0051】
また、フロント部材5の側壁部52の一端であって、前記電源スイッチ46に対応する位置には、電源スイッチの上縁部が嵌め込まれる切り欠き部54が形成されている。さらに、この切り欠き部54が形成されている側壁部52や、曲面状に形成された放射線入射面部51の側壁部52との稜角近傍部には、例えばLED等で構成され充電池25の充電状況や各種の操作状況等を表示するインジケータ55が設けられている。
【0052】
図4は、検出器ユニット2がハウジング3に収納された状態を下側(撮影時の放射線入射側とは反対側)から見た平面図であり、図5は、図4におけるD−D断面図、図6は、図4におけるE−E断面図、図7は、図4におけるF−F断面図である。なお、図4では、便宜上バック部材4の底面部41がない状態でハウジング3の内部の状態を示している。
【0053】
図4から図7に示すように、検出器ユニット2は、検出パネル21、各種の電子部品22を実装した回路基板23等を備えて構成されている。本実施形態では、回路基板23は、樹脂等で形成された基台24に固定され、この基台24を検出パネル21に対して接着固定等することによって回路基板23が基台24を介して検出パネル21に固定されている。なお、基台24は本発明の必須の構成要素ではなく、基台24を介さずに回路基板23等を直接検出パネル21に固定する構成としてもよい。
【0054】
図4に示すように、本実施形態では、電子部品22を搭載する回路基板23が4つに分割されており、それぞれ検出パネル21の各角部近傍に寄せて配置されている。また、電子部品22は、回路基板23上に検出パネル21の外周に沿って配置されている。電子部品22は、できるだけ検出パネル21の各角部に近い位置に配置されることが好ましい。電子部品22を回路基板23上にこのように配置することによって、検出器ユニット2をハウジング3に収納した際に電子部品22がハウジング3の角部近傍及びフロント部材5の放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部に沿って配置される。
【0055】
本実施形態において、回路基板23上に配置される電子部品22としては、例えば各部の制御を行う制御部27(後述する図12参照)を構成するCPU(central processing unit)(図示せず)、ROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる記憶部(図示せず)、走査駆動回路16(図12参照)、信号読出し回路17(図12参照)等がある。なお、ROM、RAMとは別に、フラッシュメモリなどの書き換え可能な読出し専用メモリ等からなり検出パネル21から出力された画像信号を記憶する画像記憶部を備えていてもよい。
【0056】
また、検出器ユニット2には、外部装置との間で各種信号の送受信を行う通信部(図示せず)が設けられている。通信部は、例えば、検出パネル21から出力された画像信号を前述のアンテナ装置9を介して外部装置に転送したり、外部装置から送信される撮影開始信号等をアンテナ装置9を介して受信するようになっている。
【0057】
また、基台24上であって、検出器ユニット2をハウジング3の内部に収納した際に取出し口31に対応する位置には、カセッテ型検出器1を構成する複数の駆動部(例えば、後述する走査駆動回路16(図12参照)、信号読出し回路17(図12参照)、通信部(図示せず)、記憶部(図示せず)、充電量検出部(図示せず)、インジケータ55、検出パネル21等)に電力を供給する電力供給部として充電池25が設けられている。
【0058】
充電池25としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小型シール鉛電池、鉛蓄電池等の充電自在な電池を適用することができる。また、充電池25に代えて、燃料電池等を適用してもよい。なお、電力供給部としての充電池25の形状、大きさ、個数、配置等は、図4等に例示したものに限定されない。
【0059】
充電池25は、基台24上の所定の位置に設置することにより前述の充電用端子45と電気的に接続されるようになっており、例えば、カセッテ型検出器1を外部電源と接続されるクレードル等の充電用装置(図示せず)に装着することによって充電用装置側の端子とハウジング3側の充電用端子45とが接続されて充電池25の充電が行われるようになっている。
【0060】
また、図4、図6及び図7に示すように、各電子部品22や充電池25の間には、これらの部品がハウジング3と干渉して破損することのないように保護し、検出器ユニット2を所定の位置に保持することができる緩衝部材26が設けられている。なお、緩衝部材26や電子部品22の数、配置等はここに例示したものに限定されない。緩衝部材26の材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン等の弾性を有する樹脂等を適用することができる。
【0061】
図8は、検出パネル21の平面図であり、図9は、検出パネル21を図8における矢視G方向から見た側面図であり、図10は、検出パネル21の図8におけるH−H断面図である。
【0062】
検出パネル21は、入射した放射線を光に変換するシンチレータ層(発光層)211が一方の面に形成された第1のガラス基材214、シンチレータ層211の下側に積層されシンチレータ層211により変換された光を検出して電気信号に変換する信号検出部151(図12参照)が一方の面に形成された第2のガラス基材213等を備えて構成されており、これらが積層された積層構造となっている。
【0063】
シンチレータ層211は、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力するようになっている。
【0064】
このシンチレータ層211で用いられる蛍光体は、例えば、CaWO4等を母体材料とするものや、CsI:TlやCd2O2S:Tb、ZnS:Ag等の母体材料内に発光中心物質が付活されたものを用いることができる。また、希土類元素をMとしたとき、(Gd,M,Eu)2O3の一般式で示される蛍光体を用いることができる。特に、放射線吸収及び発光効率が高いことよりCsI:TlやCd2O2S:Tbが好ましく、これらを用いることで、ノイズの低い高画質の画像を得ることができる。
【0065】
シンチレータ層211は、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の各種高分子材料(ポリマー)により形成された支持体(図示せず)の上に、例えば気相成長法により蛍光体を層状に形成したものであり、蛍光体の層は、蛍光体の柱状結晶からなっている。気相成長法としては、蒸着法、スパッタ法、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法等が好ましく用いられる。いずれの手法においても、蛍光体の層を支持体上に独立した細長い柱状結晶に気相成長させることができる。
【0066】
シンチレータ層211は、第1のガラス基材214の下側(すなわち撮影時に放射線が入射する放射線入射面部51に面する側と反対側)に貼付されており、第1のガラス基材214の上側(撮影時に放射線が入射する放射線入射面部51に面する側)にはガラス保護フィルム215がさらに積層されている。また、シンチレータ層211の下側(撮影時に放射線が入射する放射線入射面部51に面する側とは反対側)には、第2のガラス基材213が積層されており、第2のガラス基材213の下にはガラス保護フィルム216がさらに積層されている。
【0067】
第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213は、ともに厚みが0.6mm程度であり、レーザにより端面を切断することにより、端面、すなわち、切断面と、この切断面とガラス基材の上面との稜角部分、及び切断面とガラス基材の下面との稜角部分を平滑化する平滑化処理を施されている。なお、第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の厚みは0.6mmに限定されない。また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とで厚みが異なるようにしてもよい。
【0068】
ここで、レーザで第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の端面を切断することによる平滑化処理について説明する。
【0069】
ガラスを切断する場合、まずガラス表面に硬く鋭いもので筋(傷)をつけてガラスの厚さ方向に垂直クラックを形成し(スクライブ作業)、このクラックを伸ばすように応力をかけて割る(分断作業)という二つの作業工程を経るのが一般である。そして、従来は、ガラス表面に傷を付ける作業(スクライブ作業)を超硬合金、電着ダイヤモンド、焼結ダイヤモンド等を用いて行っていた。しかし、ガラス表面に超硬合金やダイヤモンド等で傷を付けた場合には、切断(分断)されたガラスの端面に微細な凹凸ができ、曲げ等の負荷をガラスにかけた場合に、この凹凸部分に応力が集中するため、割れやすいという問題があった。
【0070】
この点、本実施形態では、レーザを用いて第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の表面に傷を付ける作業(スクライブ作業)を行う。このようにレーザを用いた場合には、切断(分断)後のガラスの端面が平滑化されるので、曲げ等の負荷に対するガラスの強度を高めることができる。
【0071】
ガラス基材の割れは、外力の大きさというよりは、むしろ、ガラス基材断裁時に応力集中の元になる部分的なバリや、部分的な凸凹部が形成されることに起因しているため、このように断裁後の端面を平滑化する処理をすることにより、かなりの外力(応力)に対してもガラス基材の割れ等の発生を防止することができる。
【0072】
なお、レーザにより第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の端面を切断する切断装置としては、例えばレーザ発振部において、YAG(Yttrium Aluminum Garnet イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)をレーザ光学媒体として用いるYAGレーザ等が好適に用いられるが、切断に用いられる切断装置はこれに限定されない。
【0073】
第2のガラス基材213の上側(シンチレータ層211に対向する側)には、シンチレータ層211から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく画像信号の出力を行う検出部である信号検出部151が形成されている。
【0074】
このように、本実施形態においては、信号検出部151が、シンチレータ層211の下側に積層されており、信号検出部151の下側に配置された第2のガラス基材213と、シンチレータ層211の上側に配置された第1のガラス基材214との間に、信号検出部151とシンチレータ層211とが対向した状態で挟み込まれる構成となっている。
【0075】
従来は、ハウジングを通じて内部のガラス基材に作用する応力を抑制しなければ、ガラス基材の割れは防止できないと考えられていたため、ハウジングとガラス基材との間にスペースを設け、当該スペースに外力を緩和/減少せしめる緩衝部材を多用していた。このためハウジングが一層大型化するものであった。
【0076】
この点、本発明者等は、ガラス基材の割れは、当該ガラス基材に作用する外力の大きさというよりは、むしろ、ガラス基材断裁時に応力集中の元となる部分的なバリや、部分的な凸凹部が形成されることに起因していることを見出した。そこで、上記の応力集中の元となる前記のバリや、凸凹部を除去すべく、断裁後の端面を平滑化する処理を行い、これにより、前述のような構成のハウジング3に作用する患者の体重等に起因する荷重や撓みに対して、ガラス基材213,214の割れ等の発生を防止することが可能となった。
【0077】
また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との外周縁に沿って封止部材217が設けられており、この封止部材217によって第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とが接着され、結合されている。これにより、曲げ等の負荷に対してより強度を高めることができる。
【0078】
さらに、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とを接着する際は、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間から空気を吸引する等により脱気した後に封止部材217による接着、結合を行うようになっており、これにより、空気に含まれる湿気がシンチレータ層211等に影響を及ぼすのを防ぐことができ、シンチレータ層211等の長寿命化を図ることができる。
【0079】
また、検出パネル21の各角部及び角部同士の中間近傍には検出パネル21を外部からの衝撃等から保護するための緩衝部材218が設けられている。
【0080】
ここで、検出パネル21の回路構成について説明する。図11は、信号検出部151を構成する1画素分の光電変換部の等価回路図である。
【0081】
図11に示すように、1画素分の光電変換部の構成は、フォトダイオード152と、フォトダイオード152で蓄積された電気エネルギーをスイッチングにより電気信号として取り出す薄膜トランジスタ(以下「TFT」と称する。)153とから構成されている。フォトダイオード152は、電荷を生成し蓄積する撮像素子である。フォトダイオード152から取り出された電気信号は、増幅器154により信号読出し回路17が検出可能なレベルにまで電気信号を増幅するようになっている。
【0082】
具体的には、光の照射を受けるとフォトダイオード152で電荷が発生し、TFT153のゲートGに信号読出し用の電圧が印加されると、TFT153のソースSに接続されたフォトダイオード152から電荷がTFT153のドレインD側に流れ、増幅器154に並列に接続されたコンデンサ154aに蓄積される。そして、増幅器154から、コンデンサ154aに蓄積された電荷に比例して増幅された電気信号が出力されるようになっている。
【0083】
また、増幅器154から増幅された電気信号が出力されて電気信号が取り出されると、増幅器154やコンデンサ154aに並列に接続されたスイッチ154bがオンされてコンデンサ154aに蓄積された電荷が放出されて、増幅器154がリセットされるようになっている。なお、フォトダイオード152は、単に規制キャパシタンスを有した光ダイオードでもよいし、フォトダイオード152と光電変換部のダイナミックレンジを改良するように追加コンデンサを並列に含んでいるものでもよい。
【0084】
図12は、このような光電変換部を二次元に配列した等価回路図であり、画素間には、走査線Llと信号線Lrが直交するように配設されている。TFT153のソースSには前述のフォトダイオード152の一端側が接続されており、TFT153のドレインDは信号線Lrに接続されている。一方、フォトダイオード152の他端側は、各行に配された隣接するフォトダイオード152の他端側と接続されて共通のバイアス線Lbを通じてバイアス電源155に接続されている。
【0085】
このバイアス電源155は制御部27に接続され、制御部27からの指示によりバイアス線Lbを通じてフォトダイオード152に電圧がかかるようになっている。また各行に配されたTFT153のゲートGは、共通の走査線Llに接続されており、走査線Llは走査駆動回路16を介して制御部27に接続されている。同様に、各列に配されたTFT153のドレインDは、共通の信号線Lrに接続されて制御部27に制御される信号読出し回路17に接続されている。
【0086】
信号読出し回路17には、前述した信号線Lrごとの増幅器154が設けられている。信号読出し時には、選択された走査線Llに信号読出し用の電圧が印加され、それによりその走査線Llに接続されている各TFT153のゲートGに電圧が印加され、各TFT153を介して各フォトダイオード152から各信号線Lrにそのフォトダイオード152で発生した電荷が流れる。そして、各増幅器154でフォトダイオード152ごとに電荷が増幅され、1行分のフォトダイオード152の情報が取り出される。そして、この操作を走査線Llをそれぞれ切り替えてすべての走査線Llについて行うことで、全フォトダイオード152から情報を取り出すようになっている。
【0087】
各増幅器154にはそれぞれサンプルホールド回路156が接続されている。各サンプルホールド回路156は信号読出し回路17に設けられたアナログマルチプレクサ157に接続されており、信号読出し回路17により読み出された信号は、アナログマルチプレクサ157からA/D変換器158を介して前述した制御部27に出力されるようになっている。
【0088】
なお、TFT153は、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のもの、有機半導体を用いたもののいずれであってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、撮像素子として光電変換素子としてのフォトダイオード152を用いた場合を例示したが、光電変換素子はフォトダイオード以外の固体撮像素子を用いてもよい。
【0090】
この信号検出部151の側部には、各フォトダイオード(光電変換素子)152にパルスを送って当該各フォトダイオード152を走査・駆動させる走査駆動回路16と、各光電変換素子に蓄積された電気エネルギーを読み出す信号読出し回路17とが配されている。
【0091】
次に、本実施形態におけるカセッテ型検出器1の作用について説明する。
【0092】
本実施形態においては、まず、一方の面に信号検出部151を形成した第2のガラス基材213と、一方の面にシンチレータ層211を貼付した第1のガラス基材214とを、シンチレータ層211と信号検出部151とが対向するように積層し、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間の脱気処理を行った後、封止部材217によって両ガラス基材213,214を接着、結合させる。次に、各種電子部品22を配置した回路基板23及び充電池25を所定の位置に搭載した基台24を、回路基板23及び充電池25が搭載された側が下になるように第1のガラス基材214の裏面側に固定する。これにより、検出器ユニット2が完成する。
【0093】
次に、回路基板23や充電池25の配置されていない箇所に適宜緩衝部材26を配置した上で、第1のガラス基材214が上になるように検出器ユニット2をバック部材4の中に収納する。そして、バック部材4の側面に設けられている電源スイッチ46、充電用端子45、インジケータ55と、各電子部品22とを電気的に接続させる。さらに、フロント部材5をバック部材4と接合し、蓋部材8を取出し口31に嵌め込む。これにより、蓋部材8に設けられているアンテナ装置9が検出器ユニット2の電子部品22と電気的に接続される。
【0094】
カセッテ型検出器1を撮影に使用する場合には、例えば、撮影対象である患者をベッドに寝かせ、ベッドと患者の身体との間にシンチレータ層211の設けられている側を上にしてカセッテ型検出器1を差し込み、撮影を行う。また、カセッテ型検出器1を既存のCR用のカセッテによる撮影の際に用いられるブッキーテーブル等にセットして使用することも可能である。
【0095】
特に、カセッテ型検出器1をベッドと患者の身体との間にシンチレータ層211の設けられている側を上にして差し込んで撮影を行うような場合、図5等に示したように、カセッテ型検出器1の放射線入射面部51が検出パネル21の第1のガラス基材214から離間する方向に凸となるように構成されており、本実施形態のように、放射線入射面部51と側壁部52とが一体的に形成されて放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成されていれば、カセッテ型検出器1をベッドと患者の身体との間に差し込み易くなる。
【0096】
また、このような場合には、図1(a)等に示したカセッテ型検出器1の上方から患者の体重等による力が放射線入射面部51に加わるが、図中上方に凸とされた放射線入射面部51の各稜角近傍部のアーチ型構造により上方から加わった患者の体重等による力が放射線入射面部51の面方向に分散されるため、放射線入射面部51の図中下方への撓みや歪みが生じにくくなる。
【0097】
そのため、本実施形態に係るカセッテ型検出器1では、放射線入射面部51が下方に撓んで検出器ユニット2の検出パネル21の第1のガラス基材214に接触したり、第1のガラス基材214を押圧したりする事態が発生することを防止することができる。
【0098】
また、万一、放射線入射面部51が第1のガラス基材214を押圧するとしても、放射線入射面部51の各稜角近傍部のアーチ型構造により上方から加わった力が分散されるため、例えば図13に示すように放射線入射面部51が平板状であり外部からの力に対して撓み易い形状である場合に比べてその押圧力は小さいものとなる。しかも、前述したように、本実施形態では、第1のガラス基材214や第2のガラス基材213は、それらの端面が平滑化処理されたり、それらの外周縁に沿って封止部材217(図10参照)が設けられたりして、曲げ等の負荷に対してより強度が向上されているため、ガラス基材の割れ等の発生を防止することが可能となる。
【0099】
以上のように、本実施形態によれば、ハウジング3の放射線入射方向の厚さが最大で16mmであり、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズの範囲内に収まる寸法であるため、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1による撮影を行う場合でもCR用のカセッテ用に設けられているブッキーテーブル等、既存の装置、設備を利用することができる。
【0100】
また、カセッテ型検出器1には撮影時に患者の体重等の負荷がかかるため、負荷に対する剛性(強度)が要求されるが、本実施形態では、検出パネル21を2枚のガラス基材(第2のガラス基材213、第1のガラス基材214)でシンチレータ層211及び信号検出部151を挟み込む構成とするとともに、これらのガラス基材213,214をレーザによって切断することで端面に平滑化処理を施しているので、ガラス基材213,214の曲げ剛性(曲げ強度)が高い。
【0101】
また、放射線入射面部51と側壁部52とが一体的に形成されて放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成され、検出パネル21の第1のガラス基材214から離間する方向に凸となるように構成された放射線入射面部51を有するハウジング3の内部に検出器ユニット2を収納している。
【0102】
このため、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1をJIS規格サイズに適合するように薄型化した場合でも、検出パネル21の第1のガラス基材214から離間する方向に凸となるように構成された放射線入射面部51のアーチ型構造が例えば患者の体重等の外部からの負荷による力をその面方向に分散する。
【0103】
本実施形態に係るカセッテ型検出器1では、このようにしてカセッテ型検出器1全体として撓みや変形を生じにくくなるため、検出器全体の剛性(強度)が確保される。また、そのため、放射線入射面部51が下方に撓んで検出器ユニット2の検出パネル21の第1のガラス基材214に接触したり第1のガラス基材214を押圧する事態が発生することを防止することができる。
【0104】
また、ハウジング3内部に収納された検出器ユニット2自体も外部からの負荷(例えば患者の体重)に対してある程度柔軟に撓みを許容するので、検出パネル21等の破損や歪みを生じにくく、高精度の撮影を行うことができる。
【0105】
また、工場における生産過程での検出器ユニット2の組み付け作業精度等についてあまり厳密さが要求されないため、歩留まりの向上が期待できる。
【0106】
また、2枚のガラス基材(第2のガラス基材213、第1のガラス基材214)でシンチレータ層211及び信号検出部151を挟み込んでいるので、外部からの負荷がかかった際等に、シンチレータ層211や信号検出部151が破損するのを防ぐことができる。
【0107】
また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間を脱気しているので、空気に含まれている湿気によるシンチレータ層211の腐食等を防止することができる。
【0108】
さらに、電子部品22等を、曲げ剛性(曲げ強度)が高いハウジング3の角部近傍及び放射線入射面部51と側壁部52との稜角近傍部に沿って配置しているので、外部から負荷がかかった際に電子部品22等が破損するのを防止できるとともに、万一フロント部材5の中央部が外部からの負荷によって下方向に撓んだ場合でも電子部品22等がハウジング3の底面に干渉しにくい。
【0109】
また、本実施形態では、アンテナ装置9が、導電性材料で形成されている部材(フロント部材5)から8mm以上離れた位置に配置されているので、アンテナ装置9の受信感度や受信利得を高く維持することができる。
【0110】
なお、本実施形態においては、ハウジング3がバック部材4とフロント部材5とから構成されている場合を例としたが、ハウジング3の構成はこれに限定されない。
【0111】
例えば、図14に示すように、ハウジング6が中空の筒状部材61とその両端部を閉塞する蓋部材62とから構成されているものでもよい。この場合、ハウジング6を構成する筒状部材61は、例えば、心材(型)の上にカーボン繊維を巻回して放射線入射面部611となる部分と側壁部612となる部分を構成し、放射線入射面部611の側壁部612との各稜角近傍部が曲面状になるように形状を整え、巻回したカーボン繊維の上に熱硬化性樹脂を流した上で、高温高圧で焼き固めることにより成型し、その後心材を抜き取ることによって形成する。
【0112】
ハウジング6をこのような構成とする場合には、一方の蓋部材62に電源スイッチ46、充電用端子45、インジケータ55及びアンテナ装置9を設ける。この場合、ハウジング6のうち筒状部材61についてはカーボン繊維によって一体的に形成することができるため、繋ぎ目がなく剛性及び密閉性の高いものとすることができるとともに、製造工程の簡易化を図ることができる。
【0113】
また、以下、図1(b)に示したカセッテ型検知器1の正面図と同様にカセッテ型検知器の変形例を正面図を示して説明する。
【0114】
本実施形態では、フロント部材5の放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成されている場合について説明したが、例えば図15に示すように、放射線入射面部51と側壁部52とを一体的に形成し、放射線入射面部51を側壁部52との各稜角近傍部から全面的に曲面状に形成することも可能である。
【0115】
この場合も、放射線入射面部51は第1のガラス基材214から離間する方向に凸とされるため、そのアーチ型構造により例えば患者の体重等の外部からの負荷による力がその面方向に分散され、撓みや変形を生じにくくなり、検出器全体の剛性(強度)が確保される。
【0116】
また、例えば図16に示すように、フロント部材5の放射線入射面部51だけでなく、バック部材4の底面部41の側壁部42との各稜角近傍部も曲面状に形成することも可能である。さらに、図示を省略するが、バック部材4の底面部41を、その側壁部42との各稜角近傍部から全面的に曲面状に形成することも可能である。
【0117】
このように形成して底面部42を第2のガラス基材213から離間する方向に凸とすることで、カセッテ型検知器を、放射線入射面51側からの押圧力のみならず底面部41側からの押圧力に対しても撓みや変形を生じにくくすることが可能となり、検出器全体の剛性(強度)が確保される。
【0118】
なお、本実施形態では、検出パネル21がシンチレータ層211と信号検出部151とによって構成されている間接変換方式のFPDを例として説明したが、FPDは間接変換方式のものに限られない。例えば、アモルファス・セレン(a−Se)等で構成され、入射した放射線を吸収し放射線を電荷に直接変換する電荷変換層を第1のガラス基材の一方の面に設け、電荷変換層により変換された電荷を検出する検出部を第2のガラス基材の一方の面に設けて、それらを対向させた状態で2枚のガラス基材の間に挟みこむように構成して、本発明の構成を適用することが可能である。
【0119】
また、本実施形態では、シンチレータ層211が支持体に気相成長させた蛍光体層であり、これを第1のガラス基材214の一方の面に貼付することによってシンチレータ層211を第1のガラス基材214の上に形成する場合を例としたが、シンチレータ層211はこれに限定されず、例えば、第1のガラス基材の下側(放射線入射側とは反対側)の面に蛍光体を直接蒸着させる等の手法により第1のガラス基材の上にシンチレータ層を形成するようにしてもよい。
【0120】
さらに、本実施形態では、第2のガラス基材213上に信号検出部151を形成する構成としたが、信号検出部151を第2のガラス基材とは別個のものとして形成し、これを第2のガラス基材の上に載置する構成としてもよい。
【0121】
また、本実施形態では、端面を平滑化する平滑化処理の手法としてレーザを用いてガラス表面に傷を付ける場合を説明したが、平滑化処理の手法はここに例示したものに限定されない。例えば、超硬合金やダイヤモンド等を用いて第1のガラス基材及び第2のガラス基材を切断した後、その切断端面を研磨したり、又は切断端面をレーザにより加熱処理するといった事後的処理を行うことによって端面の平滑化を行ってもよい。
【0122】
また、本実施形態ではレーザによりガラス表面に傷を付けてから切断(分断)するという2段階の作業工程を踏む場合を例として説明したが、レーザによりガラス基材の切断まで行うような構成としてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、電源供給部として、充電可能な二次電池(充電池25)を用いる場合を例として説明したが、電源供給部は二次電池に限定されない。例えば、マンガン電池、ニッケル・カドミウム電池、水銀電池、鉛電池等、電池交換が必要な一次電池を用いてもよい。
【0124】
なお、六切サイズ(8インチ×10インチ)又は四切サイズ(10インチ×12インチ)の場合には本実施形態に示した通りの配置でよいが、半切サイズ(14インチ×17インチ)の場合には、蓋部材8を嵌め込む取出し口31の位置はハウジング3の各角部であることが好ましい。取出し口31のような切り欠き部があると、その部分の強度が弱まってしまい、カセッテ型検出器1のサイズが大きくなるほどその影響が顕著となることから、ハウジング3内で最も強度の高い各角部に取出し口31を配置して、できるだけ強度の低下を防止する必要があるためである。この場合には、充電池25も蓋部材8に対応する位置に配置するようにする。
【0125】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1(a)は、本実施形態に係るカセッテ型検出器を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のカセッテ型検出器の矢視A方向から見た正面図である。
【図2】本実施形態におけるハウジングの分解斜視図である。
【図3】図3(a)は、蓋部材を図2における矢視B方向から見た正面図であり、図3(b)は、図3(a)のC−C断面図である。
【図4】図1(a)に示すカセッテ型検出器の内部構成を示す概略図である。
【図5】図4のD−D断面図である。
【図6】図4のE−E断面図である。
【図7】図4のF−F断面図である。
【図8】本実施形態における検出パネルを示す平面図である。
【図9】図8に示す検出パネルを矢視G方向から見た側面図である。
【図10】図8に示す検出パネルのH−H断面図である。
【図11】信号検出部を構成する光電変換部の1画素分の等価回路構成図である。
【図12】図11に示す光電変換部を二次元に配列した等価回路構成図である。
【図13】放射線入射面部を平板状に形成したカセッテ型検出器の例を示す斜視図である。
【図14】図1(a)に示すカセッテ型検出器の一変形例を示す斜視図である。
【図15】図1(a)に示すカセッテ型検出器の一変形例を示す正面図である。
【図16】図1(a)に示すカセッテ型検出器の一変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0127】
1 カセッテ型検出器(カセッテ型放射線画像固体検出器)
2 検出器ユニット
3 ハウジング
26 緩衝部材
41 底面部
51 放射線入射面部
52 側壁部
151 信号検出部(検出部)
211 シンチレータ層
213 第2のガラス基材
214 第1のガラス基材
217 封止部材(接着部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、カセッテ型放射線画像固体検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、病気診断等を目的として、X線画像に代表される、放射線を用いて撮影された放射線画像が広く用いられている。
【0003】
こうした医療用の放射線画像は、従来スクリーンフィルムを用いて撮影されていたが、近年は、放射線画像のデジタル化が実現されており、例えば、被写体を透過した放射線を輝尽性蛍光体層が形成された輝尽性蛍光体シートに蓄積させた後、この輝尽性蛍光体シートをレーザ光で走査し、これにより輝尽性蛍光体シートから発光される輝尽光を光電変換して画像データを得るCR(Computed Radiography)装置が広く普及している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
放射線画像撮影では、スクリーンフィルムや輝尽性蛍光体シート等の記録媒体を内部に収納したカセッテ(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)が用いられる。なお、CR装置での撮影に用いられるCR用のカセッテは、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテに適合するものとして導入された既存の設備、例えばカセッテホルダーやブッキーテーブルを継続して使用可能となるように、当該スクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに倣って、設計・製造されている。言い換えると、カセッテのサイズの互換性が維持され、施設の有効活用と画像データのデジタル化が達成されている。
【0005】
カセッテを用いた撮影においては、撮影方式によっては、カセッテのフロント部材(撮影時における放射線入射側)に患者の全荷重(全体重)が作用することがある。例えば、比較的剛性の高いブッキーテーブル上にカセッテを載置し、その上に患者が乗って臥位にて撮影を行うような場合には、当該カセッテのフロント部材に患者の撮影部位の荷重(体重)が作用するため、カセッテの剛性(強度)、特にフロント部材の剛性が重要となる。
【0006】
また、ベッド等の上で臥位状態にある患者の撮影を行うこともあり、この場合には、患者と柔軟な布団との間にカセッテが挿入されることとなるため、カセッテ自体が患者の荷重(体重)の影響で撓む(歪む)ことがある。カセッテに撓みが生じると、カセッテ内に収納された記録媒体(輝尽性蛍光体シート等)等が破損するおそれがある。また、この記録媒体(輝尽性蛍光体シート等)が歪むと、撮影される画像にも歪みが生じることとなり、好ましくない。このため、カセッテの撓みを防止するためにカセッテ全体の剛性(強度)を確保することも重要となる。
【0007】
他方で、カセッテを使用する撮影方式においては、撮影に使用するカセッテ(複数の場合もある)は、技師が患者の撮影位置まで持ち運ぶため、軽量であることも重要であり、前述した剛性(強度)との両立が求められる。
【0008】
この点、例えば特許文献3には、輝尽性蛍光体シート又はこれを接着した板状部材をバック板に接着又は吸着させ、当該バック板とフロント板とを結合することにより、重量を増加させることなく、カセッテの剛性(強度)を高め、ポータブル撮影にも対応可能で、かつ、読取装置での読取処理を可能とするカセッテが開示されている。
【0009】
ところで、最近では、医療用の放射線画像を得る手段として、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器としてFPD(Flat Panel Detector)が知られており(例えば、特許文献4参照)、さらに、このFPDをハウジングに収納した可搬型の撮影装置(可搬型のFPD)が実用化されるようになってきた。
【0010】
このような可搬型のFPDは、例えば、放射線を光に変換するシンチレータとこの光を電気信号に変換する光検出部とを筐体(ハウジング)に収納したものであり、CR用のカセッテと同様に、軽量であることと剛性(強度)との両立が求められる。
【0011】
この点、特許文献5には、X線を光に変換する柱状結晶型蛍光体とこの光を電気信号に変換する光検出部とを筐体に収納し、筐体と柱状結晶型蛍光体との間に、筐体の外部からの力を緩和する緩衝材と、柱状結晶型蛍光体よりも剛性の高い高剛性部材とを配置することにより柱状結晶型蛍光体にかかる応力を低減させ、撮影装置全体の剛性(強度)を上げる構成が示されている。
【0012】
また、特許文献6には、基板上に形成された二次元光電変換素子を装置筐体内に収納し、基板と筐体の間隙に気嚢や冷却水が収納された容器等の緩衝部材を挿入し、筐体の内壁面と基板とが互いに接触しないようにして、筐体やトッププレートが変形しても、内部の構成要素への損傷の可能性を低減する構成が示されている。
【特許文献1】特開2005−121783号公報
【特許文献2】特開2005−114944号公報
【特許文献3】特開2002−156717号公報
【特許文献4】特開平9−73144号公報
【特許文献5】特開2006−058124号公報
【特許文献6】特許第3815766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述のように、現在普及しているCR用のカセッテは従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに従ったサイズとなっており、ブッキーテーブル等もJIS規格サイズに合わせて作られている。このため、FPDについても、このJIS規格サイズに従ったカセッテに収納した形で用いることができれば、施設に設置されている既存の設備をFPDを用いた撮影に利用することができ、撮影手段としてFPDを導入する際の設備投資を最小限度に抑えることができる。
【0014】
しかしながら、特許文献5や特許文献6に記載されている構成では、筐体内部に高剛性部材や緩衝部材を配置しているため、検出器の筐体(ハウジング)の厚み(放射線入射方向の厚さ)を小さくすることが困難であるとともに、全体の重量も増加する結果となる。重量が増加すると、技師が検出器を持ち運ぶ際に負担となるのみでなく、検出器を誤って落下させた際の落下衝撃が増大する。このため内部に衝撃緩和構造体や空間スペースが必要となり、検出器のサイズが一層大型化するという悪循環となるとの問題がある。
【0015】
そこで、本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、画像データのデジタル化を達成するとともに、FPDであって、検出器全体の剛性(強度)を確保しつつ、CR用のカセッテとの互換性を有し、ポータブル撮影をすることが可能なカセッテ型放射線画像固体検出器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、
入射した放射線を光に変換するシンチレータ層又は入射した放射線を電荷に変換する電荷変換層が一方の面に形成された第1のガラス基材と、前記シンチレータ層又は前記電荷変換層により変換された光又は電荷を検出する検出部が一方の面に形成された第2のガラス基材と、を備え、前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材とが、前記シンチレータ層又は前記電荷変換層と前記検出部とを対向させた状態で前記各ガラス基材の周縁部に設けられた接着手段により結合された検出器ユニットと、
前記検出器ユニットを内蔵し、前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされた放射線入射面部を有するハウジングと、
を備えていることを特徴とするカセッテ型放射線画像固体検出器である。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジングは、前記放射線入射面部と一体的に構成された側壁部を備えており、前記放射線入射面部は、前記側壁部との各稜角近傍部が曲面状に形成されて前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴としている。
【0018】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジングは、前記放射線入射面部と一体的に構成された側壁部を備えており、前記放射線入射面部は、前記側壁部との各稜角近傍部から全面的に曲面状に形成されて前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴としている。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジングは、底面部を備えており、前記底面部は、前記第2のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴としている。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジング内には、前記検出器ユニットを所定位置に保持可能な緩衝部材が備えられていることを特徴としている。
【0021】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記第1のガラス基材及び前記第2のガラス基材は、端面を平滑化する平滑化処理を施されていることを特徴としている。
【0022】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記第1のガラス基材及び前記第2のガラス基材は、レーザにより端面を切断することによって前記平滑化処理が施されていることを特徴としている。
【0023】
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記接着手段によって結合された前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材との間の空間が脱気されていることを特徴としている。
【0024】
請求項9に記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器において、
前記ハウジングの放射線入射方向の厚さが16mm以下であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0025】
本発明のような方式のカセッテ型放射線画像固体検出器(カセッテFPD)によれば、第1及び第2のガラス基材を有する検出器ユニットに曲げ応力が作用しても、検出器ユニット自体が所定量の撓みを許容する構成を有していることにより、曲げ応力の作用によって、直ちに、ガラス基材に割れを誘発して故障を発することがなくなる。
【0026】
したがって、先行文献に記載されている発明のように、内部のガラス基材への曲げ応力の作用を阻止すべく、高剛性部材を追加する等によりハウジングの剛性を上げる構成、すなわち、装置全体の厚み寸法を増大させる構成をとる場合と異なり、カセッテの厚み寸法をCR用のカセッテと同程度に維持することが可能となる。
【0027】
また、検出器ユニットを内蔵するハウジングの放射線入射面が検出器ユニットの第1のガラス基材から離間する方向に凸とされることで、そのアーチ型構造が例えば患者の体重等の外部からの負荷による力をその面方向に分散するため撓みや変形を生じにくくなり、検出器全体の剛性(強度)が確保される。そのため、検出器の剛性(強度)を増すための他の構造や部材は必要なくなり、構成が簡素化し、従来の可搬型FPDに比べ、重量低減を図ることができ、技師の持運びの際の負荷を低減できるとともに、移動時に誤って落下させるケースも低減され、仮に落下させたとしても、重量低減に伴い、落下衝撃自体も小さくなるので、落下に伴う故障の誘発も抑制可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図1から図12を参照しつつ、本発明に係るカセッテ型放射線画像固体検出器の一実施形態について説明する。ただし、発明の範囲を図示例に限定するものではない。
【0029】
図1(a)は、本実施形態におけるカセッテ型放射線画像固体検出器(以下「カセッテ型検出器」と称する。)の斜視図である。また、図1(b)は、図1(a)のカセッテ型検出器の矢視A方向から見た正面図である。
【0030】
本実施形態におけるカセッテ型検出器1は、カセッテ型のフラットパネルディテクタ(Flat Panel Detector:以下「FPD」と称する。)であり、カセッテ型検出器1は、照射された放射線を検出しデジタル画像データとして取得する検出器ユニット2(図4等参照)と、この検出器ユニット2を内部に収納するハウジング3とを備えている。
【0031】
図2は、本実施形態におけるハウジング3の分解斜視図である。図2に示すように、ハウジング3は、底面部41と側壁部42を有してほぼ箱型に形成されカセッテ型検出器1を撮影に用いる際に放射線入射側となる側に開口部48を有するバック部材4と、カセッテ型検出器1の放射線入射側に配置されたフロント部材5とを備えている。
【0032】
フロント部材5は、略矩形状に形成された放射線入射面部51と、この放射線入射面部51と一体的に構成された側壁部(曲げ立ち上がり部)52とを備えており、バック部材4と同様にほぼ箱型に形成されている。フロント部材5は、カセッテ型検出器1を撮影に用いる際に放射線入射側と反対側に開口部56を有し、バック部材4の開口部48を塞ぐ蓋として機能する。
【0033】
ハウジング3は、バック部材4とフロント部材5とを接合することにより一体となるようになっている。バック部材4とフロント部材5との接合手法は特に限定されず、例えばねじ止めすることにより接合してもよいし、接着固定してもよい。
【0034】
本実施形態において、ハウジング3の放射線入射方向の厚さは、最大で16mmとなるように構成されている。なお、ハウジング3の放射線入射方向の厚さ寸法は最大で16mmに限定されないが、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズ(15mm+1mmであり、かつ15mm−2mm)の範囲内に収まる寸法であることが好ましい。CR用のカセッテやブッキーテーブル等、既存の装置のほとんどがこのスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズに合わせて作られているため、ハウジング3の寸法をJIS規格サイズに合わせることにより、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1による撮影を行う場合でも既存の設備を利用することができる。
【0035】
ハウジング3は、このフロント部材5の放射線入射面部51が後述する検出パネル21の第1のガラス基材214(後述する図5等参照)から離間する方向に凸となるように構成されており、放射線入射面部51に外部(患者)から(患者の体重)等による力が加わったときに、撓み、歪みを生じにくくなっている。
【0036】
本実施形態では、放射線入射面部51と側壁部52とが一体的に構成されており、放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成されている。なお、図1では図示を省略しているが、図1(a)のカセッテ型検出器において、矢印Aに直交する方向から見た側面視においても放射線入射面部51は側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成されている。そのため、上記の効果に加えて、放射線入射面部51と側壁部52との稜角近傍の曲げ剛性(曲げ強度)が高くなるように構成されている。
【0037】
ハウジング3を構成する部材のうち、少なくともフロント部材5は、カーボン繊維等を含む放射線透過率の高い材料によって形成されている。その形成手法は特に限定されないが、例えば、カーボン繊維にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル等の熱硬化性樹脂を含浸させたシートであるカーボンプリプレグ(カーボン板の材料)をフロント部材5の形状に成型された型の上に積層し、これを高温高圧で焼き固めることにより、所望の形状とすることができる。
【0038】
また、本実施形態において、バック部材4は、例えばアルミニウム、マグネシウムのような軽金属で形成されている。なお、バック部材4を形成する材料は特に限定されず、例えばフロント部材5と同様にカーボン繊維等を含む材料によって形成されていてもよい。なお、フロント部材5やバック部材4の板厚は、例えばそれぞれ2mmとされる。
【0039】
バック部材4の長尺方向に直交する側の一端には、図2に示すように、側面から裏面にかけてバック側切り欠き部43が設けられており、フロント部材5の長尺方向に直交する側の一端であって、このバック側切り欠き部43に対応する側壁部52の位置には、フロント側切り欠き部53が設けられている。
【0040】
バック側切り欠き部43及びフロント側切り欠き部53の幅寸法は、後述する充電池25(図4等参照)の幅寸法よりも大きいことが好ましい。また、フロント側切り欠き部53はフロント部材5の端部から中央部に向かって8mm切り欠かれている。なお、フロント側切り欠き部53をフロント部材5の端部から中央部に向かってどの程度切り欠くかは特に限定されないが、6mm以上であることが好ましく、8mm以上であればさらに好ましい。
【0041】
本実施形態において、ハウジング3は、バック部材4とフロント部材5とを接合すると、バック側切り欠き部43とフロント側切り欠き部53とによって、後述する充電池25を出し入れ可能な取出し口31が形成されるようになっている。
【0042】
また、ハウジング3は、この取出し口31に嵌め込まれる蓋部材8を備えており、取出し口31に蓋部材8を嵌め込むことによってハウジング3の内部は密閉された空間となる。本実施形態において、蓋部材8は、例えば非導電性のプラスチック等の非導電性の材料によって形成されている。
【0043】
図3(a)は、図2における蓋部材8を矢視B方向から見た平面図であり、図3(b)は、図3(a)におけるC−C断面図である。図2及び図3(b)に示すように、蓋部材8は、バック側切り欠き部43に対応する側面部81及び下面部82とからなり、取出し口31の形状に合わせて側面視ほぼL字状となっている。なお、蓋部材8の形状はここに例示したものに限定されず、例えばコ字状等であってもよい。この場合には、フロント側切り欠き部及びバック側切り欠き部の形状もこれに対応する形状とする。
【0044】
図3(a)に示すように、蓋部材8の下面部82の側端面にはガイド用凸部83が設けられており、バック側切り欠き部43には、図2に示すように、このガイド用凸部83を案内するガイド用溝44が設けられている。蓋部材8は、ガイド用凸部83をガイド用溝44に沿ってスライドさせることにより取出し口31に嵌め込まれるように構成されている。なお、蓋部材8を取出し口31に嵌め込む構成は、ここに例示したものに限定されない。例えば、蓋部材の下面部とバック部材、又は上面部とフロント部材とをヒンジを介して接続し、ヒンジの軸を中心に蓋部材を回動させることにより取出し口に対して蓋部材が開閉可能となるように構成してもよい。
【0045】
また、蓋部材8の側面部81には、カセッテ型検出器1と外部の機器との間で無線により情報の送受信を行うためのアンテナ装置9が埋め込まれている。
【0046】
図2及び図3(a),(b)に示すように、アンテナ装置9には金属からなる平板状の一対の放射板91,92と、一対の放射板91,92を連結し、当該一対の放射板91,92に対して給電する給電部93とが設けられている。
【0047】
本実施形態において、一対の放射板91,92のうち、一方の放射板91は、正面視形状が台形となるように形成されており、他方の放射板92は、正面視形状がほぼ円形となるように形成されている。そして、給電部93は、一方の放射板91の上底部の略中央に接続されるとともに、他方の放射板92の一部と接続されている。給電部93によって連結されることで、一対の放射板91,92の間には、所定の間隙が形成されている。
【0048】
なお、アンテナ装置9の種類・形状は、ここに例示したものに限定されない。また、アンテナ装置9は蓋部材8の側面部81に埋め込まれている場合に限定されず、蓋部材8の外側や内側に貼付されていてもよい。ただし、アンテナ装置9は、金属やカーボン等の導電性材料からなる導電性部材に近接した位置に設けると受信感度や受信利得が低下することから、カーボン等の導電性材料で形成されているフロント部材5や金属等で形成されている各種電子部品22(図4等参照)からできるだけ離れた位置に設けることが好ましい。少なくとも6mm以上離れていることが好ましく、8mm以上であればさらに好ましい。
【0049】
この点、本実施形態では、蓋部材8の側面部81に設けられたアンテナ装置9は、カーボン繊維等の導電性材料を含んで形成されているフロント部材5から8mm以上離れた位置に配置されており、受信感度や受信利得が維持されている。
【0050】
バック部材4の側面のうちバック側切り欠き部43が形成されている面と同一面上には、図1(a)及び図2に示すように、ハウジング3の内部に設けられた充電池25(図4等参照)を充電する際に外部の電源等と接続される充電用端子45が形成されており、また、カセッテ型検出器1の電源のON/OFFを切り替える電源スイッチ46が配置されている。
【0051】
また、フロント部材5の側壁部52の一端であって、前記電源スイッチ46に対応する位置には、電源スイッチの上縁部が嵌め込まれる切り欠き部54が形成されている。さらに、この切り欠き部54が形成されている側壁部52や、曲面状に形成された放射線入射面部51の側壁部52との稜角近傍部には、例えばLED等で構成され充電池25の充電状況や各種の操作状況等を表示するインジケータ55が設けられている。
【0052】
図4は、検出器ユニット2がハウジング3に収納された状態を下側(撮影時の放射線入射側とは反対側)から見た平面図であり、図5は、図4におけるD−D断面図、図6は、図4におけるE−E断面図、図7は、図4におけるF−F断面図である。なお、図4では、便宜上バック部材4の底面部41がない状態でハウジング3の内部の状態を示している。
【0053】
図4から図7に示すように、検出器ユニット2は、検出パネル21、各種の電子部品22を実装した回路基板23等を備えて構成されている。本実施形態では、回路基板23は、樹脂等で形成された基台24に固定され、この基台24を検出パネル21に対して接着固定等することによって回路基板23が基台24を介して検出パネル21に固定されている。なお、基台24は本発明の必須の構成要素ではなく、基台24を介さずに回路基板23等を直接検出パネル21に固定する構成としてもよい。
【0054】
図4に示すように、本実施形態では、電子部品22を搭載する回路基板23が4つに分割されており、それぞれ検出パネル21の各角部近傍に寄せて配置されている。また、電子部品22は、回路基板23上に検出パネル21の外周に沿って配置されている。電子部品22は、できるだけ検出パネル21の各角部に近い位置に配置されることが好ましい。電子部品22を回路基板23上にこのように配置することによって、検出器ユニット2をハウジング3に収納した際に電子部品22がハウジング3の角部近傍及びフロント部材5の放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部に沿って配置される。
【0055】
本実施形態において、回路基板23上に配置される電子部品22としては、例えば各部の制御を行う制御部27(後述する図12参照)を構成するCPU(central processing unit)(図示せず)、ROM(read only memory)、RAM(Random Access Memory)等からなる記憶部(図示せず)、走査駆動回路16(図12参照)、信号読出し回路17(図12参照)等がある。なお、ROM、RAMとは別に、フラッシュメモリなどの書き換え可能な読出し専用メモリ等からなり検出パネル21から出力された画像信号を記憶する画像記憶部を備えていてもよい。
【0056】
また、検出器ユニット2には、外部装置との間で各種信号の送受信を行う通信部(図示せず)が設けられている。通信部は、例えば、検出パネル21から出力された画像信号を前述のアンテナ装置9を介して外部装置に転送したり、外部装置から送信される撮影開始信号等をアンテナ装置9を介して受信するようになっている。
【0057】
また、基台24上であって、検出器ユニット2をハウジング3の内部に収納した際に取出し口31に対応する位置には、カセッテ型検出器1を構成する複数の駆動部(例えば、後述する走査駆動回路16(図12参照)、信号読出し回路17(図12参照)、通信部(図示せず)、記憶部(図示せず)、充電量検出部(図示せず)、インジケータ55、検出パネル21等)に電力を供給する電力供給部として充電池25が設けられている。
【0058】
充電池25としては、例えばニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、小型シール鉛電池、鉛蓄電池等の充電自在な電池を適用することができる。また、充電池25に代えて、燃料電池等を適用してもよい。なお、電力供給部としての充電池25の形状、大きさ、個数、配置等は、図4等に例示したものに限定されない。
【0059】
充電池25は、基台24上の所定の位置に設置することにより前述の充電用端子45と電気的に接続されるようになっており、例えば、カセッテ型検出器1を外部電源と接続されるクレードル等の充電用装置(図示せず)に装着することによって充電用装置側の端子とハウジング3側の充電用端子45とが接続されて充電池25の充電が行われるようになっている。
【0060】
また、図4、図6及び図7に示すように、各電子部品22や充電池25の間には、これらの部品がハウジング3と干渉して破損することのないように保護し、検出器ユニット2を所定の位置に保持することができる緩衝部材26が設けられている。なお、緩衝部材26や電子部品22の数、配置等はここに例示したものに限定されない。緩衝部材26の材料は特に限定されないが、例えば、ポリウレタン等の弾性を有する樹脂等を適用することができる。
【0061】
図8は、検出パネル21の平面図であり、図9は、検出パネル21を図8における矢視G方向から見た側面図であり、図10は、検出パネル21の図8におけるH−H断面図である。
【0062】
検出パネル21は、入射した放射線を光に変換するシンチレータ層(発光層)211が一方の面に形成された第1のガラス基材214、シンチレータ層211の下側に積層されシンチレータ層211により変換された光を検出して電気信号に変換する信号検出部151(図12参照)が一方の面に形成された第2のガラス基材213等を備えて構成されており、これらが積層された積層構造となっている。
【0063】
シンチレータ層211は、例えば、蛍光体を主たる成分とし、入射した放射線に基づいて、波長が300nmから800nmの電磁波、すなわち、可視光線を中心に紫外光から赤外光にわたる電磁波(光)を出力するようになっている。
【0064】
このシンチレータ層211で用いられる蛍光体は、例えば、CaWO4等を母体材料とするものや、CsI:TlやCd2O2S:Tb、ZnS:Ag等の母体材料内に発光中心物質が付活されたものを用いることができる。また、希土類元素をMとしたとき、(Gd,M,Eu)2O3の一般式で示される蛍光体を用いることができる。特に、放射線吸収及び発光効率が高いことよりCsI:TlやCd2O2S:Tbが好ましく、これらを用いることで、ノイズの低い高画質の画像を得ることができる。
【0065】
シンチレータ層211は、例えば、セルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等の各種高分子材料(ポリマー)により形成された支持体(図示せず)の上に、例えば気相成長法により蛍光体を層状に形成したものであり、蛍光体の層は、蛍光体の柱状結晶からなっている。気相成長法としては、蒸着法、スパッタ法、化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)法等が好ましく用いられる。いずれの手法においても、蛍光体の層を支持体上に独立した細長い柱状結晶に気相成長させることができる。
【0066】
シンチレータ層211は、第1のガラス基材214の下側(すなわち撮影時に放射線が入射する放射線入射面部51に面する側と反対側)に貼付されており、第1のガラス基材214の上側(撮影時に放射線が入射する放射線入射面部51に面する側)にはガラス保護フィルム215がさらに積層されている。また、シンチレータ層211の下側(撮影時に放射線が入射する放射線入射面部51に面する側とは反対側)には、第2のガラス基材213が積層されており、第2のガラス基材213の下にはガラス保護フィルム216がさらに積層されている。
【0067】
第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213は、ともに厚みが0.6mm程度であり、レーザにより端面を切断することにより、端面、すなわち、切断面と、この切断面とガラス基材の上面との稜角部分、及び切断面とガラス基材の下面との稜角部分を平滑化する平滑化処理を施されている。なお、第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の厚みは0.6mmに限定されない。また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とで厚みが異なるようにしてもよい。
【0068】
ここで、レーザで第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の端面を切断することによる平滑化処理について説明する。
【0069】
ガラスを切断する場合、まずガラス表面に硬く鋭いもので筋(傷)をつけてガラスの厚さ方向に垂直クラックを形成し(スクライブ作業)、このクラックを伸ばすように応力をかけて割る(分断作業)という二つの作業工程を経るのが一般である。そして、従来は、ガラス表面に傷を付ける作業(スクライブ作業)を超硬合金、電着ダイヤモンド、焼結ダイヤモンド等を用いて行っていた。しかし、ガラス表面に超硬合金やダイヤモンド等で傷を付けた場合には、切断(分断)されたガラスの端面に微細な凹凸ができ、曲げ等の負荷をガラスにかけた場合に、この凹凸部分に応力が集中するため、割れやすいという問題があった。
【0070】
この点、本実施形態では、レーザを用いて第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の表面に傷を付ける作業(スクライブ作業)を行う。このようにレーザを用いた場合には、切断(分断)後のガラスの端面が平滑化されるので、曲げ等の負荷に対するガラスの強度を高めることができる。
【0071】
ガラス基材の割れは、外力の大きさというよりは、むしろ、ガラス基材断裁時に応力集中の元になる部分的なバリや、部分的な凸凹部が形成されることに起因しているため、このように断裁後の端面を平滑化する処理をすることにより、かなりの外力(応力)に対してもガラス基材の割れ等の発生を防止することができる。
【0072】
なお、レーザにより第1のガラス基材214及び第2のガラス基材213の端面を切断する切断装置としては、例えばレーザ発振部において、YAG(Yttrium Aluminum Garnet イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)をレーザ光学媒体として用いるYAGレーザ等が好適に用いられるが、切断に用いられる切断装置はこれに限定されない。
【0073】
第2のガラス基材213の上側(シンチレータ層211に対向する側)には、シンチレータ層211から出力された電磁波(光)を電気エネルギーに変換して蓄積し、蓄積された電気エネルギーに基づく画像信号の出力を行う検出部である信号検出部151が形成されている。
【0074】
このように、本実施形態においては、信号検出部151が、シンチレータ層211の下側に積層されており、信号検出部151の下側に配置された第2のガラス基材213と、シンチレータ層211の上側に配置された第1のガラス基材214との間に、信号検出部151とシンチレータ層211とが対向した状態で挟み込まれる構成となっている。
【0075】
従来は、ハウジングを通じて内部のガラス基材に作用する応力を抑制しなければ、ガラス基材の割れは防止できないと考えられていたため、ハウジングとガラス基材との間にスペースを設け、当該スペースに外力を緩和/減少せしめる緩衝部材を多用していた。このためハウジングが一層大型化するものであった。
【0076】
この点、本発明者等は、ガラス基材の割れは、当該ガラス基材に作用する外力の大きさというよりは、むしろ、ガラス基材断裁時に応力集中の元となる部分的なバリや、部分的な凸凹部が形成されることに起因していることを見出した。そこで、上記の応力集中の元となる前記のバリや、凸凹部を除去すべく、断裁後の端面を平滑化する処理を行い、これにより、前述のような構成のハウジング3に作用する患者の体重等に起因する荷重や撓みに対して、ガラス基材213,214の割れ等の発生を防止することが可能となった。
【0077】
また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との外周縁に沿って封止部材217が設けられており、この封止部材217によって第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とが接着され、結合されている。これにより、曲げ等の負荷に対してより強度を高めることができる。
【0078】
さらに、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213とを接着する際は、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間から空気を吸引する等により脱気した後に封止部材217による接着、結合を行うようになっており、これにより、空気に含まれる湿気がシンチレータ層211等に影響を及ぼすのを防ぐことができ、シンチレータ層211等の長寿命化を図ることができる。
【0079】
また、検出パネル21の各角部及び角部同士の中間近傍には検出パネル21を外部からの衝撃等から保護するための緩衝部材218が設けられている。
【0080】
ここで、検出パネル21の回路構成について説明する。図11は、信号検出部151を構成する1画素分の光電変換部の等価回路図である。
【0081】
図11に示すように、1画素分の光電変換部の構成は、フォトダイオード152と、フォトダイオード152で蓄積された電気エネルギーをスイッチングにより電気信号として取り出す薄膜トランジスタ(以下「TFT」と称する。)153とから構成されている。フォトダイオード152は、電荷を生成し蓄積する撮像素子である。フォトダイオード152から取り出された電気信号は、増幅器154により信号読出し回路17が検出可能なレベルにまで電気信号を増幅するようになっている。
【0082】
具体的には、光の照射を受けるとフォトダイオード152で電荷が発生し、TFT153のゲートGに信号読出し用の電圧が印加されると、TFT153のソースSに接続されたフォトダイオード152から電荷がTFT153のドレインD側に流れ、増幅器154に並列に接続されたコンデンサ154aに蓄積される。そして、増幅器154から、コンデンサ154aに蓄積された電荷に比例して増幅された電気信号が出力されるようになっている。
【0083】
また、増幅器154から増幅された電気信号が出力されて電気信号が取り出されると、増幅器154やコンデンサ154aに並列に接続されたスイッチ154bがオンされてコンデンサ154aに蓄積された電荷が放出されて、増幅器154がリセットされるようになっている。なお、フォトダイオード152は、単に規制キャパシタンスを有した光ダイオードでもよいし、フォトダイオード152と光電変換部のダイナミックレンジを改良するように追加コンデンサを並列に含んでいるものでもよい。
【0084】
図12は、このような光電変換部を二次元に配列した等価回路図であり、画素間には、走査線Llと信号線Lrが直交するように配設されている。TFT153のソースSには前述のフォトダイオード152の一端側が接続されており、TFT153のドレインDは信号線Lrに接続されている。一方、フォトダイオード152の他端側は、各行に配された隣接するフォトダイオード152の他端側と接続されて共通のバイアス線Lbを通じてバイアス電源155に接続されている。
【0085】
このバイアス電源155は制御部27に接続され、制御部27からの指示によりバイアス線Lbを通じてフォトダイオード152に電圧がかかるようになっている。また各行に配されたTFT153のゲートGは、共通の走査線Llに接続されており、走査線Llは走査駆動回路16を介して制御部27に接続されている。同様に、各列に配されたTFT153のドレインDは、共通の信号線Lrに接続されて制御部27に制御される信号読出し回路17に接続されている。
【0086】
信号読出し回路17には、前述した信号線Lrごとの増幅器154が設けられている。信号読出し時には、選択された走査線Llに信号読出し用の電圧が印加され、それによりその走査線Llに接続されている各TFT153のゲートGに電圧が印加され、各TFT153を介して各フォトダイオード152から各信号線Lrにそのフォトダイオード152で発生した電荷が流れる。そして、各増幅器154でフォトダイオード152ごとに電荷が増幅され、1行分のフォトダイオード152の情報が取り出される。そして、この操作を走査線Llをそれぞれ切り替えてすべての走査線Llについて行うことで、全フォトダイオード152から情報を取り出すようになっている。
【0087】
各増幅器154にはそれぞれサンプルホールド回路156が接続されている。各サンプルホールド回路156は信号読出し回路17に設けられたアナログマルチプレクサ157に接続されており、信号読出し回路17により読み出された信号は、アナログマルチプレクサ157からA/D変換器158を介して前述した制御部27に出力されるようになっている。
【0088】
なお、TFT153は、液晶ディスプレイ等に使用されている無機半導体系のもの、有機半導体を用いたもののいずれであってもよい。
【0089】
また、本実施形態では、撮像素子として光電変換素子としてのフォトダイオード152を用いた場合を例示したが、光電変換素子はフォトダイオード以外の固体撮像素子を用いてもよい。
【0090】
この信号検出部151の側部には、各フォトダイオード(光電変換素子)152にパルスを送って当該各フォトダイオード152を走査・駆動させる走査駆動回路16と、各光電変換素子に蓄積された電気エネルギーを読み出す信号読出し回路17とが配されている。
【0091】
次に、本実施形態におけるカセッテ型検出器1の作用について説明する。
【0092】
本実施形態においては、まず、一方の面に信号検出部151を形成した第2のガラス基材213と、一方の面にシンチレータ層211を貼付した第1のガラス基材214とを、シンチレータ層211と信号検出部151とが対向するように積層し、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間の脱気処理を行った後、封止部材217によって両ガラス基材213,214を接着、結合させる。次に、各種電子部品22を配置した回路基板23及び充電池25を所定の位置に搭載した基台24を、回路基板23及び充電池25が搭載された側が下になるように第1のガラス基材214の裏面側に固定する。これにより、検出器ユニット2が完成する。
【0093】
次に、回路基板23や充電池25の配置されていない箇所に適宜緩衝部材26を配置した上で、第1のガラス基材214が上になるように検出器ユニット2をバック部材4の中に収納する。そして、バック部材4の側面に設けられている電源スイッチ46、充電用端子45、インジケータ55と、各電子部品22とを電気的に接続させる。さらに、フロント部材5をバック部材4と接合し、蓋部材8を取出し口31に嵌め込む。これにより、蓋部材8に設けられているアンテナ装置9が検出器ユニット2の電子部品22と電気的に接続される。
【0094】
カセッテ型検出器1を撮影に使用する場合には、例えば、撮影対象である患者をベッドに寝かせ、ベッドと患者の身体との間にシンチレータ層211の設けられている側を上にしてカセッテ型検出器1を差し込み、撮影を行う。また、カセッテ型検出器1を既存のCR用のカセッテによる撮影の際に用いられるブッキーテーブル等にセットして使用することも可能である。
【0095】
特に、カセッテ型検出器1をベッドと患者の身体との間にシンチレータ層211の設けられている側を上にして差し込んで撮影を行うような場合、図5等に示したように、カセッテ型検出器1の放射線入射面部51が検出パネル21の第1のガラス基材214から離間する方向に凸となるように構成されており、本実施形態のように、放射線入射面部51と側壁部52とが一体的に形成されて放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成されていれば、カセッテ型検出器1をベッドと患者の身体との間に差し込み易くなる。
【0096】
また、このような場合には、図1(a)等に示したカセッテ型検出器1の上方から患者の体重等による力が放射線入射面部51に加わるが、図中上方に凸とされた放射線入射面部51の各稜角近傍部のアーチ型構造により上方から加わった患者の体重等による力が放射線入射面部51の面方向に分散されるため、放射線入射面部51の図中下方への撓みや歪みが生じにくくなる。
【0097】
そのため、本実施形態に係るカセッテ型検出器1では、放射線入射面部51が下方に撓んで検出器ユニット2の検出パネル21の第1のガラス基材214に接触したり、第1のガラス基材214を押圧したりする事態が発生することを防止することができる。
【0098】
また、万一、放射線入射面部51が第1のガラス基材214を押圧するとしても、放射線入射面部51の各稜角近傍部のアーチ型構造により上方から加わった力が分散されるため、例えば図13に示すように放射線入射面部51が平板状であり外部からの力に対して撓み易い形状である場合に比べてその押圧力は小さいものとなる。しかも、前述したように、本実施形態では、第1のガラス基材214や第2のガラス基材213は、それらの端面が平滑化処理されたり、それらの外周縁に沿って封止部材217(図10参照)が設けられたりして、曲げ等の負荷に対してより強度が向上されているため、ガラス基材の割れ等の発生を防止することが可能となる。
【0099】
以上のように、本実施形態によれば、ハウジング3の放射線入射方向の厚さが最大で16mmであり、従来のスクリーン/フィルム用のカセッテにおけるJIS規格サイズの範囲内に収まる寸法であるため、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1による撮影を行う場合でもCR用のカセッテ用に設けられているブッキーテーブル等、既存の装置、設備を利用することができる。
【0100】
また、カセッテ型検出器1には撮影時に患者の体重等の負荷がかかるため、負荷に対する剛性(強度)が要求されるが、本実施形態では、検出パネル21を2枚のガラス基材(第2のガラス基材213、第1のガラス基材214)でシンチレータ層211及び信号検出部151を挟み込む構成とするとともに、これらのガラス基材213,214をレーザによって切断することで端面に平滑化処理を施しているので、ガラス基材213,214の曲げ剛性(曲げ強度)が高い。
【0101】
また、放射線入射面部51と側壁部52とが一体的に形成されて放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成され、検出パネル21の第1のガラス基材214から離間する方向に凸となるように構成された放射線入射面部51を有するハウジング3の内部に検出器ユニット2を収納している。
【0102】
このため、カセッテ型のFPDであるカセッテ型検出器1をJIS規格サイズに適合するように薄型化した場合でも、検出パネル21の第1のガラス基材214から離間する方向に凸となるように構成された放射線入射面部51のアーチ型構造が例えば患者の体重等の外部からの負荷による力をその面方向に分散する。
【0103】
本実施形態に係るカセッテ型検出器1では、このようにしてカセッテ型検出器1全体として撓みや変形を生じにくくなるため、検出器全体の剛性(強度)が確保される。また、そのため、放射線入射面部51が下方に撓んで検出器ユニット2の検出パネル21の第1のガラス基材214に接触したり第1のガラス基材214を押圧する事態が発生することを防止することができる。
【0104】
また、ハウジング3内部に収納された検出器ユニット2自体も外部からの負荷(例えば患者の体重)に対してある程度柔軟に撓みを許容するので、検出パネル21等の破損や歪みを生じにくく、高精度の撮影を行うことができる。
【0105】
また、工場における生産過程での検出器ユニット2の組み付け作業精度等についてあまり厳密さが要求されないため、歩留まりの向上が期待できる。
【0106】
また、2枚のガラス基材(第2のガラス基材213、第1のガラス基材214)でシンチレータ層211及び信号検出部151を挟み込んでいるので、外部からの負荷がかかった際等に、シンチレータ層211や信号検出部151が破損するのを防ぐことができる。
【0107】
また、第1のガラス基材214と第2のガラス基材213との間の空間を脱気しているので、空気に含まれている湿気によるシンチレータ層211の腐食等を防止することができる。
【0108】
さらに、電子部品22等を、曲げ剛性(曲げ強度)が高いハウジング3の角部近傍及び放射線入射面部51と側壁部52との稜角近傍部に沿って配置しているので、外部から負荷がかかった際に電子部品22等が破損するのを防止できるとともに、万一フロント部材5の中央部が外部からの負荷によって下方向に撓んだ場合でも電子部品22等がハウジング3の底面に干渉しにくい。
【0109】
また、本実施形態では、アンテナ装置9が、導電性材料で形成されている部材(フロント部材5)から8mm以上離れた位置に配置されているので、アンテナ装置9の受信感度や受信利得を高く維持することができる。
【0110】
なお、本実施形態においては、ハウジング3がバック部材4とフロント部材5とから構成されている場合を例としたが、ハウジング3の構成はこれに限定されない。
【0111】
例えば、図14に示すように、ハウジング6が中空の筒状部材61とその両端部を閉塞する蓋部材62とから構成されているものでもよい。この場合、ハウジング6を構成する筒状部材61は、例えば、心材(型)の上にカーボン繊維を巻回して放射線入射面部611となる部分と側壁部612となる部分を構成し、放射線入射面部611の側壁部612との各稜角近傍部が曲面状になるように形状を整え、巻回したカーボン繊維の上に熱硬化性樹脂を流した上で、高温高圧で焼き固めることにより成型し、その後心材を抜き取ることによって形成する。
【0112】
ハウジング6をこのような構成とする場合には、一方の蓋部材62に電源スイッチ46、充電用端子45、インジケータ55及びアンテナ装置9を設ける。この場合、ハウジング6のうち筒状部材61についてはカーボン繊維によって一体的に形成することができるため、繋ぎ目がなく剛性及び密閉性の高いものとすることができるとともに、製造工程の簡易化を図ることができる。
【0113】
また、以下、図1(b)に示したカセッテ型検知器1の正面図と同様にカセッテ型検知器の変形例を正面図を示して説明する。
【0114】
本実施形態では、フロント部材5の放射線入射面部51の側壁部52との各稜角近傍部が曲面状に形成されている場合について説明したが、例えば図15に示すように、放射線入射面部51と側壁部52とを一体的に形成し、放射線入射面部51を側壁部52との各稜角近傍部から全面的に曲面状に形成することも可能である。
【0115】
この場合も、放射線入射面部51は第1のガラス基材214から離間する方向に凸とされるため、そのアーチ型構造により例えば患者の体重等の外部からの負荷による力がその面方向に分散され、撓みや変形を生じにくくなり、検出器全体の剛性(強度)が確保される。
【0116】
また、例えば図16に示すように、フロント部材5の放射線入射面部51だけでなく、バック部材4の底面部41の側壁部42との各稜角近傍部も曲面状に形成することも可能である。さらに、図示を省略するが、バック部材4の底面部41を、その側壁部42との各稜角近傍部から全面的に曲面状に形成することも可能である。
【0117】
このように形成して底面部42を第2のガラス基材213から離間する方向に凸とすることで、カセッテ型検知器を、放射線入射面51側からの押圧力のみならず底面部41側からの押圧力に対しても撓みや変形を生じにくくすることが可能となり、検出器全体の剛性(強度)が確保される。
【0118】
なお、本実施形態では、検出パネル21がシンチレータ層211と信号検出部151とによって構成されている間接変換方式のFPDを例として説明したが、FPDは間接変換方式のものに限られない。例えば、アモルファス・セレン(a−Se)等で構成され、入射した放射線を吸収し放射線を電荷に直接変換する電荷変換層を第1のガラス基材の一方の面に設け、電荷変換層により変換された電荷を検出する検出部を第2のガラス基材の一方の面に設けて、それらを対向させた状態で2枚のガラス基材の間に挟みこむように構成して、本発明の構成を適用することが可能である。
【0119】
また、本実施形態では、シンチレータ層211が支持体に気相成長させた蛍光体層であり、これを第1のガラス基材214の一方の面に貼付することによってシンチレータ層211を第1のガラス基材214の上に形成する場合を例としたが、シンチレータ層211はこれに限定されず、例えば、第1のガラス基材の下側(放射線入射側とは反対側)の面に蛍光体を直接蒸着させる等の手法により第1のガラス基材の上にシンチレータ層を形成するようにしてもよい。
【0120】
さらに、本実施形態では、第2のガラス基材213上に信号検出部151を形成する構成としたが、信号検出部151を第2のガラス基材とは別個のものとして形成し、これを第2のガラス基材の上に載置する構成としてもよい。
【0121】
また、本実施形態では、端面を平滑化する平滑化処理の手法としてレーザを用いてガラス表面に傷を付ける場合を説明したが、平滑化処理の手法はここに例示したものに限定されない。例えば、超硬合金やダイヤモンド等を用いて第1のガラス基材及び第2のガラス基材を切断した後、その切断端面を研磨したり、又は切断端面をレーザにより加熱処理するといった事後的処理を行うことによって端面の平滑化を行ってもよい。
【0122】
また、本実施形態ではレーザによりガラス表面に傷を付けてから切断(分断)するという2段階の作業工程を踏む場合を例として説明したが、レーザによりガラス基材の切断まで行うような構成としてもよい。
【0123】
また、本実施形態では、電源供給部として、充電可能な二次電池(充電池25)を用いる場合を例として説明したが、電源供給部は二次電池に限定されない。例えば、マンガン電池、ニッケル・カドミウム電池、水銀電池、鉛電池等、電池交換が必要な一次電池を用いてもよい。
【0124】
なお、六切サイズ(8インチ×10インチ)又は四切サイズ(10インチ×12インチ)の場合には本実施形態に示した通りの配置でよいが、半切サイズ(14インチ×17インチ)の場合には、蓋部材8を嵌め込む取出し口31の位置はハウジング3の各角部であることが好ましい。取出し口31のような切り欠き部があると、その部分の強度が弱まってしまい、カセッテ型検出器1のサイズが大きくなるほどその影響が顕著となることから、ハウジング3内で最も強度の高い各角部に取出し口31を配置して、できるだけ強度の低下を防止する必要があるためである。この場合には、充電池25も蓋部材8に対応する位置に配置するようにする。
【0125】
その他、本発明が上記実施の形態に限らず適宜変更可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】図1(a)は、本実施形態に係るカセッテ型検出器を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のカセッテ型検出器の矢視A方向から見た正面図である。
【図2】本実施形態におけるハウジングの分解斜視図である。
【図3】図3(a)は、蓋部材を図2における矢視B方向から見た正面図であり、図3(b)は、図3(a)のC−C断面図である。
【図4】図1(a)に示すカセッテ型検出器の内部構成を示す概略図である。
【図5】図4のD−D断面図である。
【図6】図4のE−E断面図である。
【図7】図4のF−F断面図である。
【図8】本実施形態における検出パネルを示す平面図である。
【図9】図8に示す検出パネルを矢視G方向から見た側面図である。
【図10】図8に示す検出パネルのH−H断面図である。
【図11】信号検出部を構成する光電変換部の1画素分の等価回路構成図である。
【図12】図11に示す光電変換部を二次元に配列した等価回路構成図である。
【図13】放射線入射面部を平板状に形成したカセッテ型検出器の例を示す斜視図である。
【図14】図1(a)に示すカセッテ型検出器の一変形例を示す斜視図である。
【図15】図1(a)に示すカセッテ型検出器の一変形例を示す正面図である。
【図16】図1(a)に示すカセッテ型検出器の一変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0127】
1 カセッテ型検出器(カセッテ型放射線画像固体検出器)
2 検出器ユニット
3 ハウジング
26 緩衝部材
41 底面部
51 放射線入射面部
52 側壁部
151 信号検出部(検出部)
211 シンチレータ層
213 第2のガラス基材
214 第1のガラス基材
217 封止部材(接着部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した放射線を光に変換するシンチレータ層又は入射した放射線を電荷に変換する電荷変換層が一方の面に形成された第1のガラス基材と、前記シンチレータ層又は前記電荷変換層により変換された光又は電荷を検出する検出部が一方の面に形成された第2のガラス基材と、を備え、前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材とが、前記シンチレータ層又は前記電荷変換層と前記検出部とを対向させた状態で前記各ガラス基材の周縁部に設けられた接着手段により結合された検出器ユニットと、
前記検出器ユニットを内蔵し、前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされた放射線入射面部を有するハウジングと、
を備えていることを特徴とするカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記放射線入射面部と一体的に構成された側壁部を備えており、前記放射線入射面部は、前記側壁部との各稜角近傍部が曲面状に形成されて前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴とする請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記放射線入射面部と一体的に構成された側壁部を備えており、前記放射線入射面部は、前記側壁部との各稜角近傍部から全面的に曲面状に形成されて前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴とする請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項4】
前記ハウジングは、底面部を備えており、前記底面部は、前記第2のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項5】
前記ハウジング内には、前記検出器ユニットを所定位置に保持可能な緩衝部材が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項6】
前記第1のガラス基材及び前記第2のガラス基材は、端面を平滑化する平滑化処理を施されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項7】
前記第1のガラス基材及び前記第2のガラス基材は、レーザにより端面を切断することによって前記平滑化処理が施されていることを特徴とする請求項6に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項8】
前記接着手段によって結合された前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材との間の空間が脱気されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項9】
前記ハウジングの放射線入射方向の厚さが16mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項1】
入射した放射線を光に変換するシンチレータ層又は入射した放射線を電荷に変換する電荷変換層が一方の面に形成された第1のガラス基材と、前記シンチレータ層又は前記電荷変換層により変換された光又は電荷を検出する検出部が一方の面に形成された第2のガラス基材と、を備え、前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材とが、前記シンチレータ層又は前記電荷変換層と前記検出部とを対向させた状態で前記各ガラス基材の周縁部に設けられた接着手段により結合された検出器ユニットと、
前記検出器ユニットを内蔵し、前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされた放射線入射面部を有するハウジングと、
を備えていることを特徴とするカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記放射線入射面部と一体的に構成された側壁部を備えており、前記放射線入射面部は、前記側壁部との各稜角近傍部が曲面状に形成されて前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴とする請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記放射線入射面部と一体的に構成された側壁部を備えており、前記放射線入射面部は、前記側壁部との各稜角近傍部から全面的に曲面状に形成されて前記第1のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴とする請求項1に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項4】
前記ハウジングは、底面部を備えており、前記底面部は、前記第2のガラス基材から離間する方向に凸とされていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項5】
前記ハウジング内には、前記検出器ユニットを所定位置に保持可能な緩衝部材が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項6】
前記第1のガラス基材及び前記第2のガラス基材は、端面を平滑化する平滑化処理を施されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項7】
前記第1のガラス基材及び前記第2のガラス基材は、レーザにより端面を切断することによって前記平滑化処理が施されていることを特徴とする請求項6に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項8】
前記接着手段によって結合された前記第1のガラス基材と前記第2のガラス基材との間の空間が脱気されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【請求項9】
前記ハウジングの放射線入射方向の厚さが16mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載のカセッテ型放射線画像固体検出器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
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【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−103609(P2009−103609A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276357(P2007−276357)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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