カセットマガジン及び自動薄切装置
【課題】包埋カセットの誤挿入を防止して装置の自動化に対応するとともに、マガジン本体からの包埋カセットの落下を防止することができるカセットマガジン及び自動薄切装置を提供する。
【解決手段】ピン22は、カセットKが所定の向きで挿入された場合に、カセットKの挿入方向に沿う一端側に形成された傾斜面K1と、マガジン本体20の背面との間に収まる一方、カセットKが所定の向き以外の向きで挿入された場合に、カセットKの傾斜面K1以外の部分と、マガジン本体20の背面との間に配置されて、それ以上のカセットKの開口部20a内への挿入を規制するとともに、開閉扉21がカセットKに干渉して開閉扉21が閉まらないように構成されていることを特徴とする。
【解決手段】ピン22は、カセットKが所定の向きで挿入された場合に、カセットKの挿入方向に沿う一端側に形成された傾斜面K1と、マガジン本体20の背面との間に収まる一方、カセットKが所定の向き以外の向きで挿入された場合に、カセットKの傾斜面K1以外の部分と、マガジン本体20の背面との間に配置されて、それ以上のカセットKの開口部20a内への挿入を規制するとともに、開閉扉21がカセットKに干渉して開閉扉21が閉まらないように構成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カセットマガジン及び自動薄切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製し、この薄切片に対して染色処理を行って、生体試料を観察する方法が知られている。包埋ブロックの作製には、一般的に専用の容器である包埋カセットが使用されおり、この包埋カセット上に包埋剤に包埋された包埋ブロックが固定されている。通常、包埋ブロックから薄切片を作製する場合には、細胞レベルでの観察を可能とするために3μm〜5μm程度の厚さで均一に、且つ包埋されている生体試料を損傷しないように薄切する必要がある。このため、一般的に薄切片を作製する作業は、鋭利な薄い切断刃を使用して、熟練の作業者による手作業で行っていた。
【0003】
ところで、包埋ブロックが固定された包埋カセットの品質管理を行うために、包埋ブロックが固定された複数の包埋カセットを収容し、整理するためのカセットマガジン(以下、マガジンという)が知られている。このマガジンは、例えば特許文献1に示されるように、長辺外壁に設けた仕切板により順次仕切られた複数のカセット収容室を備え、薄切完了した包埋カセットをカセット収容室の一端側から順番に収納するようになっている。そして、マガジンは複数の包埋カセットが収納された状態で、その後のシーリング作業(包埋ブロックを被覆する作業)や、包埋カセットが収容されたマガジンを収納保管する収納ラックへそのまま運び出されるようになっている。
【特許文献1】特開2007−147400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前臨床試験等を行う場合には、一試験当たり数百個の包埋ブロックを作製し、さらに一包埋ブロック当たり数枚の薄切片を作製する必要がある。そのため、膨大な数の薄切片を作製し続ける必要がある。したがって、薄切片を作製する作業を、手作業ではなく、機械による自動化で行うことが望まれている。
【0005】
しかしながら、上述したマガジンは、手動の薄切装置で使用するためのものであり、包埋カセットを単純に収容するのみの構成である。すなわち、マガジンに収容された包埋ブロックを薄切する場合には、まずマガジンに配列された包埋カセットを1枚ずつ取り出して手作業により包埋ブロックを薄切し、薄切完了後に薄切装置からマガジンへ順次手作業で戻していくものである。そのため、包埋カセットをマガジンへ配列する際に、包埋カセットの挿入方向を間違える等(いわゆる、誤挿入)の人為的ミスが生じる虞がある。包埋カセットの誤挿入が発生すると、マガジンに収容されている包埋カセットの向きが異なることとなり、この状態で薄切装置の自動化に対応することは困難である。
【0006】
また、包埋カセットが収容された状態のマガジンを持ち運ぶ際にマガジンを引っ掛けてしまった場合や、作業者がつまずいたりした場合等には、マガジンから包埋カセットが飛び出して落下する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、包埋カセットの誤挿入を防止して装置の自動化に対応するとともに、マガジン本体からの包埋カセットの落下を防止することができるカセットマガジン及び自動薄切装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決して係る目的を達成するために以下の手段を提供する。
本発明に係るカセットマガジンは、生体試料が包埋剤に包埋されてなる包埋ブロックの固定台として使用される複数の包埋カセットを収容保持するカセットマガジンにおいて、前記包埋カセットが挿入される開口部を有する箱型のマガジン本体と、前記マガジン本体に設けられ、前記開口部を覆う方向へ付勢された開閉扉と、前記マガジン本体内に設けられ、前記包埋カセットを前記所定の向きで挿入させるための誤挿入防止部とを備え、前記誤挿入防止部は、前記包埋カセットが所定の向きで挿入された場合に、前記包埋カセットの挿入方向に沿う一端側に形成された凹部と、前記マガジン本体の底面との間に収まる一方、前記包埋カセットが前記所定の向き以外の向きで挿入された場合に、前記包埋カセットの凹部以外の部分と、前記マガジン本体の底面との間に配置されて、それ以上の前記包埋カセットの前記開口部内への挿入を規制するとともに、前記開閉扉が前記包埋カセットに干渉して前記開閉扉が閉まらないように構成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、マガジン本体に、その開口部を覆う開閉扉が設けられているため、開閉扉を開けない限り、包埋カセットがマガジン本体から飛び出して脱落することがない。これにより、作業者は、カセットマガジンからの包埋カセットの落下に注意を払うことないため、安全に持ち運ぶことができ、また作業効率を向上させることもできる。また、開閉扉は、開口部を覆う方向に向けて付勢されているため、カセットマガジンを持ち運びしている際に、不意に開閉扉が開いてしまうこと防止することができる。
ここで、マガジン本体内に包埋カセットの誤挿入を防止するための誤挿入防止部が設けられており、包埋カセットが所定の向きで挿入された場合には、包埋カセットの凸部と、マガジン本体の底面との間に誤挿入防止部が収まるようになっている。
一方、包埋カセットが所定の向き以外の向きで挿入された場合には、包埋カセットの挿入方向に沿う他端側の端面や凸部に接触して、それ以上の包埋カセットの開口部内への挿入が規制される。すなわち、マガジン本体内に包埋カセットが完全に挿入できないようになっている。この場合、カセットがマガジン本体の開口部から過大に突出することで、開閉扉がカセットに干渉してしまい、開閉扉を閉じることができない。そのため、作業者は、この時点で包埋カセットの誤挿入を容易且つ明確に見分けることができる。よって、包埋カセットの挿入時における作業者の人為的ミスを未然に防止して、マガジン本体内に収納された複数のカセットの向きを、確実に全て統一することができる。
【0010】
また本発明に係るカセットマガジンは、前記開閉扉には、前記開閉扉を一定角度開けた状態で保持するストッパが設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、最初に包埋カセットをマガジン本体に挿し込む際および最後に包埋カセットをマガジン本体から引き出す際に、開閉扉を開けたままの状態で作業することができる。これにより、作業者は、開閉扉を気にせずにカセットをマガジン本体に次々と収納することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0011】
一方、本発明に係る自動薄切装置は、上記本発明のカセットマガジンと、前記カセットマガジンが装着されるストッカと、前記カセットマガジンから1枚ずつ取り出される前記包埋カセットに固定された前記包埋ブロックを薄切する切断刃とを備え、前記ストッカには、前記開閉扉の閉状態において前記カセットマガジンが装着されるようになっており、前記ストッカには、前記カセットマガジンに前記包埋カセットが誤挿入されていた場合に、前記カセットマガジンの前記開閉扉に接触して前記カセットマガジンが装着されないように規制するための係合部が設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、包埋カセットが誤挿入されていた場合に、カセットマガジンの開閉扉がストッカの係合部に接触してカセットマガジンが装着されないように構成されているため、カセットマガジンがスムーズに挿入されない場合は、作業者はカセットマガジンに挿入された包埋カセットに誤挿入があるとこの時点でも判断することができる。これにより、ストッカへの装着時において、マガジン本体内に収納される複数のカセットの向きを確実に全て統一した状態で、カセットマガジンを自動薄切装置にセットすることができる。したがって、装置内において包埋カセットの取り出しや搬送等の作業をスムーズに行うことができ、装置の自動化にも上手く対応することができる。
【0012】
また本発明に係る自動薄切装置は、前記ストッカが、前記カセットマガジンが前記ストッカ内に装着されたか否かを検出するマガジン検出センサと、装着された前記カセットマガジンの前記開閉扉を開閉する開閉機構と、前記開閉扉の開閉状態を検出する開閉検出センサと、これら前記マガジン検出センサ、前記開閉機構、及び開閉検出センサを統括的に制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カセットマガジンが前記ストッカに装着され、且つ前記開閉扉が閉状態にある場合に、前記開閉機構により前記開閉扉を開方向に移動させることを特徴としている。
この構成によれば、各センサによりカセットマガジンがストッカに装着され、且つ開閉扉が閉状態にあると検出された場合には、開閉機構により開閉扉を自動的に開くことができる。これにより、包埋カセットの誤挿入があった場合には開閉扉が開かないので、誤挿入があったことをさらに確実に検知することができる。そして、開閉扉を開けてからストッカにカセットマガジンを装着させる場合に比べて、ストッカへのカセットマガジンの装着作業を容易に行うことができるとともに、ストッカへの装着時にカセットマガジンから包埋カセットが落下することがない。
【0013】
また本発明に係る自動薄切装置は、前記ストッカが、前記カセットマガジンが所定の向き以外の向きで装着された場合に、前記カセットマガジンの誤装着を検出する誤装着検出部を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、誤装着検出部により、カセットマガジンの誤装着を検出することで、作業者はカセットマガジンをストッカに対して所定の向きで確実に装着することができる。これにより、カセットの向きが確実に全て統一した状態で配列されたカセットマガジンを、ストッカに確実にセットすることができるため、装置内において包埋カセットの取り出しや搬送等の作業をスムーズに行うことができ、装置の自動化にも上手く対応することができる。
【0014】
また本発明に係る自動薄切装置は、前記カセットマガジンには、前記カセットマガジンに挿入された前記包埋カセットの種類を識別するために、前記包埋カセットの種類に応じて識別マークが設けられ、前記ストッカには、前記ストッカに装着された前記カセットマガジンの前記識別マークの有無または種類を識別する識別センサが設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、カセットマガジンに設けられた識別マークを検出するための識別センサをストッカに設けることで、ストッカに装着されたカセットマガジンの種類を装置側で検出することができる。これにより、カセットマガジンに挿入された包埋カセットの種類を、人為的操作を必要とせずに検出することができるため、装置の自動化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカセットマガジンによれば、包埋カセットの挿入時における作業者の人為的ミスを未然に防止して、マガジン本体内に収納された複数のカセットの向きを、確実に全て統一することができる。
そして、本発明の自動薄切装置によれば、マガジン本体内に収納される複数のカセットの向きを確実に全て統一した状態で、カセットマガジンを自動薄切装置にセットすることができるため、装置内において包埋カセットの取り出しや搬送等の作業をスムーズに行うことができ、装置の自動化にも上手く対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を、図1から図37を参照して説明する。
(包埋ブロック及び包埋カセット)
図1は、自動薄切装置で用いられる包埋ブロック及びカセットの斜視図であり、図2は包埋ブロックから薄切された薄切片がスライドガラス上に固定されて薄切片標本となった状態を示す斜視図である。
自動薄切装置は、図3に示すように、図1に示す生体試料Sが包埋剤であるパラフィンPによって包埋された包埋ブロックBを、所定のすくい角θが付いた状態で薄切(例えば、3μm〜5μmの極薄に薄切)する装置である。このように、すくい角θを付けた状態で包埋ブロックBを薄切することで、切削抵抗を減らしてより円滑な薄切を行うことができる。
【0017】
よって、この自動薄切装置によって、図2に示す薄切片Mを作製することが可能とされている。なお、この薄切片Mは、その後、水やお湯等の液体上に浮かべて、薄切時に生じた皺やカール等の歪みを除去する伸展工程を経た後、スライドガラス等の基板Gに掬い取られて、薄切片標本Hとなるものである。
なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンPによってブロック状に固められたものである。これにより、生体試料SがパラフィンP内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。
【0018】
ところで、本実施形態では、図1に示すように、包埋ブロックBが箱状に形成されたカセットK上に固定されているものとして説明する。
はじめに、このカセットKについて簡単に説明すると、耐薬品性を有する樹脂等により形成されたものであり、包埋ブロックBを固定する固定台としての役割を果している。カセットKの長手方向における一側面は、下方に面が向いた傾斜面K1(凹部)となっている一方、他側面はカセットKの厚さ方向に沿った平坦面K2となっている。なお、この傾斜面K1上には、カセットKの製造番号や、包埋ブロックBの作製日、生体試料Sの各種データ等を含む図示しない識別コードが記録されている。そのため、この識別コードを読み取ることで、包埋ブロックBの品質管理を行えるようになっている。また、本実施形態では、傾斜面K1を形成するためにカセットKの一側面を切り欠くことで傾斜面K1が凹部として形成されている。
【0019】
(自動薄切装置)
続いて、本実施形態の自動薄切装置について、説明する。
図3は自動薄切装置の一実施形態を示す簡略構成図であり、図4は図3に示す自動薄切装置の構成を示す斜視図である。
図3及び図4に示すように、自動薄切装置1は、カセットKを複数収納保持するマガジン2と、マガジン2から1つのカセットKを出し入れすると共に載置台3に載置するオートローダ4と、載置台3とステージ5との間でカセットKを受け渡しするカセットローダ6と、ステージ5上に載置されたカセットKに固定された包埋ブロックBを撮像する撮像カメラ7と、切断刃8と、切断刃8を複数収納する収納ケース9と、切断刃8を固定するホルダ10と、収納ケース9から切断刃8を1枚取り出してホルダ10に搬送してセットする搬送機構11と、使用済みの切断刃8を収容する廃棄用ボトル12と、使用済みの切断刃8をホルダ10から回収して廃棄用ボトル12に排出する排出機構13と、これら各構成品を内部に収容する装置ケース14と、各構成品を総合的に制御する制御部15と、で主に構成されている。
【0020】
(装置ケース)
装置ケース14について、先に説明する。
この装置ケース14は、全体的に箱型に形成されており、内部が密閉可能とされているうえ、湿度や温度等の環境条件を所望する条件に設定可能とされている。また、装置ケース14の内部は、中間パネル14aによって上部空間E1と下部空間E2とに区分けされており、各構成品の大部分が上部空間E1に配置されている。下部空間E2には、主に廃棄用ボトル12が配置されている。
【0021】
装置ケース14の前面には、作業者が開け閉めする2つの出入扉14b、14cが設けられている。一方の出入扉14bは、マガジン2を装着或いは取り出す際に用いる扉であり、該出入扉14bを開けるとマガジン2をセットが装着される後述するストッカ30が露出するようになっている。一方、他方の出入扉14cは、廃棄用ボトル12を装着或いは取り出す際に用いる扉であり、該出入扉14cを開けると廃棄用ボトル12が露出して外部からアクセスできるようになっている。
【0022】
(オートローダ)
次に、オートローダ4について、説明する。
図4に示すように、オートローダ4は、装置ケース14の上部空間E1内にてストッカ30に隣接する位置に配置されている。このオートローダ4は、ストッカ30に装着されたマガジン2に収納されたカセットKを挟持可能なハンド部4aと、ハンド部4aを垂直なZ軸回りに回転自在に固定すると共にストッカ30と載置台3とを結ぶX軸方向に移動可能なX軸スライダ4bと、X軸スライダ4bを支持すると共にX軸及びZ軸の2軸に対して直交するY軸方向に移動可能なY軸スライダ4cと、で主に構成されている。
なお、これらハンド部4a、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0023】
ハンド部4aは、マガジン2の正面側から若干突出したカセットKを両側から挟持することで、カセットKを摘むことが可能とされている。そして、この状態から、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cの移動動作とハンド部4aの回転動作とを適宜組み合わせることで、マガジン2から所望するカセットKを1つだけ出し入れしたり、載置台3上にカセットKを載置したりすることができるようになっている。
【0024】
なお、本実施形態では、オートローダ4をハンド部4aとX軸スライダ4bとY軸スライダ4cとで主に構成したが、この構成に限定されるものではない。マガジン2から所望のカセットKを1つ出し入れでき、且つ、カセットKを載置台3上に載置できるように構成できれば、自由に設計して構わない。
【0025】
(カセットローダ)
次に、カセットローダ6について、説明する。
図4に示すように、カセットローダ6は、装置ケース14の上部空間E1内にて最奥部(開閉扉21が形成されている前面とは反対側の後面に近い部分)に配置されている。このカセットローダ6は、載置台3に載置されたカセットKを挟持可能なハンド部6aと、ハンド部6aをZ軸回りに回転自在に固定すると共にZ軸方向に延びたガイド6bに沿って移動可能な固定プレート6cと、ガイド6bをY軸方向に移動させるY軸移動機構6dと、で主に構成されている。
なお、これらハンド部6a、固定プレート6c及びY軸移動機構6dは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0026】
ハンド部6aは、載置されたカセットKの両側を真上から挟持することで、カセットKを摘むことが可能とされている。そして、この状態から、固定プレート6c及びY軸移動機構6dの移動動作とハンド部6aの回転動作とを適宜組み合わせることで、カセットKを所望する向きでステージ5上に載置したり、ステージ5上から載置台3に戻したりすることができるようになっている。
なお、Y軸移動機構6dは、一対のプーリ40に巻回されてY軸方向に移動する無端ベルト41と、無端ベルト41に連結され、無端ベルト41の移動に伴って移動するスライダ42と、スライダ42と固定プレート6cとを連結する連結プレート43と、で構成されている。なお、一対のプーリ40のうちの一方が、駆動部44によって回転することで無端ベルト41が移動する。
【0027】
なお、本実施形態では、カセットローダ6をハンド部6aと固定プレート6cとY軸移動機構6dとで主に構成したが、この構成に限定されるものではない。載置台3とステージ5との間でカセットKを受け渡しでき、カセットKを所望する向きでステージ5上にセットできるように構成できれば、自由に設計して構わない。
【0028】
ステージ5は、内部に圧電素子等が組み込まれており、制御部15からの指示に基づいて適宜Z軸方向に移動するように構成されている。これにより、ステージ5上に載置されたカセットKに固定された包埋ブロックBを高さ調整することができ、所望する厚み(例えば、5μm)で薄切することが可能とされている。
加えて、このステージ5は、Z軸回りの回転と、X軸回り及びY軸回りの傾きとが自在に調整可能とされた多軸のステージとされている。そのため、包埋ブロックBの姿勢を自在にコントロールして、包埋ブロックBの向きや傾き等を所望する状態に設定することが可能とされている。
【0029】
(撮像カメラ)
次に、撮像カメラ7について、説明する。
図4に示すように、撮像カメラ7は、装置ケース14の上部空間E1内にてステージ5の真上にくるように配置されている。この際、撮像カメラ7は、Z軸方向に移動可能なZ軸移動部7aに支持されている。このZ軸移動部7aは、Y軸移動部7bによってY軸方向に移動可能とされている。よって、撮像カメラ7は、必要に応じてステージ5上の真上から退避可能とされている。具体的には、カセットローダ6によってカセットKが載置台3とステージ5との間で受け渡しする間、カセットローダ6の動きを邪魔しないように撮像カメラ7は退避するようになっている。
なお、これらZ軸移動部7a及びY軸移動部7bは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0030】
また、撮像カメラ7は、ステージ5上にカセットKが載置されると、図示しない光源からの照明光によって照明された包埋ブロックBを撮像するようになっている。この際、照明光の種類(例えば、落射照明光や拡散照明光)によって、包埋ブロックBの表面状態や内部状態を撮像できるようになっている。なお、撮像された撮像画像は、制御部15に送られて記録されると共に、制御部15に接続されたモニタ15aに表示される。
【0031】
(切断刃)
次に、切断刃8について、説明する。図5は、図3に示す自動薄切装置で用いられる切断刃の上面図であり、図6は図18に示す切断刃の側面図である。
図5及び図6に示すように、切断刃8は、一端側が刃先8aとされた長尺な磁性体の刃である。また、切断刃8の刀身には、楕円状に形成された位置決め用の貫通孔8bが間隔を開けて2つ形成されている。なお、本実施形態では、刃先8aが両刃となっている場合を例にしている。片刀でも構わない。
切断刃8のサイズの一例としては、長さLが約80mm、幅Wが約8mm、厚さTが約0.25mmである。
【0032】
図7は図3に示す自動薄切装置を構成する収納ケースの側面図であり、図8は上面図、図9は正面図であり、図10は収納ケースの装着状態を示す図である。
このように構成された切断刃8は、図7から図9に示す収納ケース9内に多段に積層された状態で複数枚収納されている。
この収納ケース9は、ケース本体50と、ケース本体50から切断刃8を1枚だけ取り出すためのレバー部51と、で主に構成されている。ケース本体50は、略直方体状に形成されており、上面には長手方向に沿って長溝50aが形成されている。また、内部に収納された切断刃8は、ケース本体50の底部に設けられた図示しない付勢手段により上面側に常に付勢されている。ケース本体50の一方の側面には、長手方向に沿ってガイド溝50bが対向した状態で形成されている。更に、ケース本体50の側面には、切断刃8が通過する図示しない開口部が形成されており、ケース本体50に収納されている切断刃8のうち1番上方に位置する切断刃8がこの開口部を通って外側に搬出されるようになっている。
【0033】
レバー部51は、断面略コ形状に形成されており、爪部51aが一対のガイド溝50bに嵌った状態でケース本体50の上面に被さっている。そして、レバー部51は、爪部51aがガイド溝50bにガイドされた状態でケース本体50の長手方向に移動自在とされている。また、レバー部51には、ケース本体50の上面に形成された長溝50a内に入り込む突起部51bが形成されている。この突起部51bは、ケース本体50に収納された複数の切断刃8のうち1番上方に位置する切断刃8にのみに接触するように長さが調整されている。これにより、レバー部51を移動させることで、1番上方に位置する切断刃8のみを押しだして、ケース本体50に形成された開口部からケース本体50の外側に搬出することが可能とされている。
【0034】
このように構成された収納ケース9は、図4及び図10に示すように、水平面に対して若干傾くすくい角θ(例えば、27°前後)が付いた状態で、装置ケース14の上部空間E1内に配置されている。
【0035】
(ホルダ)
次に、ホルダ10について説明する。図11は、ホルダの斜視図であり、図12は断面図である。
図4に示すように、ホルダ10は、装置ケース14の上部空間E1内にてステージ5の近傍に配置されている。この際、ホルダ10は、収納ケース9と同様にすくい角θが付いた状態で斜めに配置されている。
具体的には、ホルダ10は、図11及び図12に示すように、刃先8aが外側に露出しながら切断刃8が載置される載置プレート60と、載置された切断刃8を載置プレート60に押さえ付けてクランプ固定する押さえプレート61と、で主に構成されている。
【0036】
載置プレート60は、平面視長方形状に形成されており、切断刃8が載置される載置面60aが長手方向に沿って先端側に形成されている。また、載置プレート60には、載置面60aに隣り合うように載置面60aに沿ってシート板62が固定されている。そして、載置面60a側に向いたシート板62の端面には、間隔を開けて複数の磁石(吸着手段)63が埋め込まれて固定されている。
この磁石63は、載置面60aに載置された切断刃8の基端側(刃先8aとは逆側)を磁力により吸着して、切断刃8の姿勢を保持している。そのため、切断刃8は、すくい角θによってホルダ10が斜めになっていたとしても、重力でずれ落ちることなく載置プレート60に載置されるようになっている。
【0037】
押さえプレート61は、載置プレート60に支持されているシャフト64に回転自在に連結された状態で、載置面60aの全体を覆うように配置されている。この押さえプレート61は、制御部15の指示によって押し出されるロッド65aによって、基端側が上方に押されるようになっている。すると、押さえプレート61はシャフト64を中心に回転するので、先端側が載置プレート60に向けて押し下げられる。これにより、切断刃8を載置プレート60に押さえ付けて、クランプ固定することが可能とされている。
【0038】
また、押さえプレート61は、図示しないコイルバネによって基端側が載置プレート60側に付勢されている。そのため、ロッド65aを引き込んだ場合には、バネ力によって押さえプレート61が逆回転し、先端側が持ち上がるようになる。これにより、切断刃8の押さえ付けが解除されるようになっている。
なお、ロッド65aは、載置プレート60の基端側を支持する支持体66に対して接近離間するスライド部65に連結されており、スライド部65の移動に伴って可動するようになっている。
【0039】
図13はホルダを構成する載置プレートに形成された凹部を示す図であり、図14は押さえプレートに形成された突出ピンを示す図である。
ところで、載置プレート60の載置面60aには、図13に示すように、間隔を開けて載置プレート60を貫通する逃げ孔68が3つ形成されている。なお、本実施形態では、逃げ孔68を貫通孔として説明するが、後述する突出ピン60が入り込んで挿入可能とされる程度に十分深い凹部であっても構わない。
この際、隣り合う逃げ孔68の中心間距離は、切断刃8の貫通孔8bの中心間距離に一致している。一方、押さえプレート61の先端側には、図14に示すように、載置プレート60側に突出して逃げ孔68に入り込む3つの突出ピン69が、逃げ孔68に対向するように設けられている。従って、突出ピン69は、載置プレート60に干渉しないように設計されている。なお、これら突出ピン69は、切断刃8の貫通孔8bを貫通可能なサイズとされている。
【0040】
図15はホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、予め決められた所定位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図であり、図16は図15のC−C図である。また、図17はホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、誤った位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
上述したように、突出ピン69が設けられているので、制御部15は、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを検出するようになっている。
つまり、搬送機構11によって、切断刃8が予め決められた位置に、予め決められた姿勢で、確実に1枚だけ搬送されてきた場合には、図15及び図16に示すように、突出ピン69が貫通孔8bを挿通した後、逃げ孔68に挿入される。従って、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度が一定角度になった状態で、切断刃8をクランプ固定することができる。
ところが、切断刃8が搬送されてきた際に、位置不良や姿勢不良等となっている場合には、貫通孔8bが逃げ孔68上からずれてしまうので、図17に示すように、突出ピン69が切断刃8の刀身に接触して干渉してしまう。そのため、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度が上記角度とは異なる角度になる。つまり、押さえプレート61と載置プレート60との間に隙間が開いてしまう。
【0041】
また、何らかの理由により切断刃8が搬送されてこなかった場合や、2枚同時に搬送されてきた場合等には、予め決められた位置に、予め決められた姿勢でいくら搬送されてきたとしても、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ角度がやはり上記角度とは異なってしまう。
このように、制御部15は、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを容易且つ確実に検出することができるようになっている。なお、制御部15は、ロッド65aのストローク量で押さえプレート61の押さえ付け角度をモニタしている。
【0042】
上述した制御部15、逃げ孔68及び突出ピン69は、上記検出を行う検出機構70として機能する。このように検出機構70を備えているので、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことが可能とされている。
なお、本実施形態では、貫通孔8bが2つ形成されているのに対して、逃げ孔68及び突出ピン69が3つ形成されているので、切断刃8を2つの位置でクランプ固定することが可能である。
【0043】
このように構成されたホルダ10は、図3及び図4に示すように、移動機構71によってステージ5上を往復移動するように設計されている。これにより、クランプ固定した切断刃8によって、ステージ5上に載置された包埋ブロックBを薄切することが可能とされている。この際、ホルダ10は、所定の引き角が付いた状態で包埋ブロックBを薄切するように設計されている。
なお、上述したように切断刃8を2つの位置でクランプ固定が可能であるので、1枚の切断刃8であっても、2箇所のポイントを利用して薄切を行える。そのため、切断刃8を幅広く有効に利用することが可能とされている。
【0044】
なお、本実施形態では、ステージ5に対してホルダ10側を移動させるように移動機構71を構成したが、これとは逆にステージ5側を移動させても構わないし、ホルダ10側及びステージ5側を共に移動させるように構成しても構わない。
いずれにしても、包埋ブロックBとホルダ10とを相対的に移動させて、切断刃8によって薄切を行うことができれば移動機構71は、どのように設計しても構わない。
【0045】
(搬送機構)
次に、搬送機構11について、説明する。
図4に示すように、搬送機構11は、装置ケース14の上部空間E1内において、収納ケース9とホルダ10との間に配置されている。この搬送機構11は、収納ケース9から切断刃8を1枚取り出してホルダ10の載置プレート60にスライド移動により搬送させると共に、薄切が所定回数終了した後、使用した切断刃8をスライド移動によりホルダ10から押し出して交換させる役割を果している。
【0046】
図18は搬送機構の斜視図であり、図19は搬送路の断面図であって、図18の断面矢視D−D図である。
具体的には、搬送機構11は、図18に示すように、収納ケース9から取り出された切断刃8をホルダ10まで搬送するための搬送路80と、収納ケース9のレバー部51を移動させて切断刃8を搬送路80側にスライド移動させる第1の搬送部81と、搬送路80に移動させられた切断刃8をホルダ10の近傍までスライド移動させる第2の搬送部82と、ホルダ10の近傍まで移動してきた切断刃8をホルダ10側に完全にスライド移動させると共に、薄切終了後に、使用した切断刃8をホルダ10から押し出す第3の搬送部83と、で主に構成されている。
【0047】
搬送路80は、図18及び図19に示すように、下部プレート90と、下部プレート90に接合された上部プレート91とで、主に構成されている。下部プレート90は、平面視長方形状に形成されており、切断刃8が搬送される搬送面90aが長手方向に沿って先端側に形成されている。切断刃8は、刃先8a及び貫通孔8bが外側に露出した状態で搬送面90a上を搬送させられるようになっている。
なお、この搬送面90aは、収納ケース9及びホルダ10と同様にすくい角θが付いて斜めになっていると共に、収納ケース9の開口部及びホルダ10の載置面60aに対して面一な高さとなるように高さ調整されている。
【0048】
また、下部プレート90には、搬送面90aに隣り合うように搬送面90aに沿ってシート板92が固定されている。そして、搬送面90a側に向いたシート板92の端面には、間隔を開けて複数の磁石93が埋め込まれて固定されている。この磁石93は、搬送される切断刃8の基端側(刃先8aとは逆側)を磁力により吸着して、切断刃8の姿勢を保持している。そのため、切断刃8は、すくい角θによって斜めになっていたとしても、重力でずれ落ちることなく搬送されるようになっている。
上部プレート91は、切断刃8の厚み以上の隙間を開けた状態で、搬送面90aの上方を覆うように下部プレート90に接合されている。
【0049】
第1の搬送部81は、図18に示すように、移動プレート100に固定されたLアングル101と、Lアングル101に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド102と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド102に固定されたZ軸プレート103と、収納ケース9のレバー部51に嵌合可能な嵌合爪104aを先端に有し、Z軸プレート103の下部に固定された搬送アーム104と、で主に構成されている。
【0050】
移動プレート100は、基礎プレート105上に移動可能に支持されており、収納ケース9やホルダ10の長手方向に移動可能とされている。嵌合爪104aは、Z軸プレート103がZ軸方向に下降したときに、収納ケース9のレバー部51に嵌合してレバー部51を挟持するように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、レバー部51を動かして収納ケース9内から切断刃8を1枚取り出し、搬送路80側にスライド移動させることが可能とされている。
なお、通常、この第1の搬送部81は、収納ケース9の上方に待機している。
【0051】
第2の搬送部82は、移動プレート100に固定されたLアングル110と、Lアングル110に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド111と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド111に固定されたZ軸プレート112と、Z軸プレート112の下部に固定され、搬送路80に移動させられた切断刃8の貫通孔8bに挿入可能な突起部113aを有する搬送ブロック113と、で主に構成されている。
【0052】
図20は、図18に示す状態から切断刃を搬送路に取り出した状態を示す図である。
突起部113aは、Z軸プレート112がZ軸方向に下降したときに、図20に示すように、搬送路80の外側に露出している切断刃8の貫通孔8bに入り込むように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、切断刃8をホルダ10の近傍まで搬送路80に沿ってスライド移動させることが可能とされている。
なお、通常、この第2の搬送部82は、収納ケース9や搬送路80の上方に待機している。
【0053】
第3の搬送部83は、移動プレート100に固定されたLアングル120と、Lアングル120に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド121と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド121に固定されたZ軸プレート122と、Z軸プレート122の下部に固定され、ホルダ10の近傍まで移動させられた切断刃8を押し出す押し出し片123aを有する搬送ブロック123と、で主に構成されている。
【0054】
図21は、図20の状態から切断刃をホルダの近傍までスライド移動させた状態を示す図であり、図22は、図21に示す状態から切断刃をスライド移動させてホルダ側に搬送させた状態を示す図である。
押し出し片123aは、切断刃8と略同じ厚みに形成された薄いプレートであり、Z軸プレート122がZ軸方向に下降したときに、図21に示すように、搬送路80の外側に露出している切断刃8の後端に並ぶように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、切断刃8をホルダ10側に押し出すようにスライド移動させることが可能とされている。これにより、図22に示すように、切断刃8を搬送路80の搬送面90aからホルダ10の載置面60aに移送して、完全に切断刃8をホルダ10側に受け渡すことができる。この際、切断刃8の貫通孔8bが載置面60aに形成された逃げ孔68上に位置するように、切断刃8を受け渡すように調整されている。
なお、通常、この第3の搬送部83は、収納ケース9や搬送路80の上方に待機している。
【0055】
上述したように、第1の搬送部81と、第2の搬送部82と、第3の搬送部83と、移動プレート100とを複合的に作動させることで、切断刃8を収納ケース9から1枚取り出してホルダ10に滑らかに搬送することができるようになっている。なお、これら各構成品は、制御部15からの指示によって作動する。
ところで、制御部15は、包埋ブロックBの薄切が所定回数終了すると、第3の搬送部83と移動プレート100を作動させて、使用した切断刃8をホルダ10から押し出すようにスライド移動させるようになっている。
【0056】
(廃棄用ボトル)
次に、廃棄用ボトル12について、説明する。
図4に示すように、廃棄用ボトル12は、装置ケース14の下部空間E2内に配置されており、装置ケース14の出入扉14cを開けることで外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、外部からアクセスすることができ、手動で廃棄用ボトル12を回収することが可能とされている。
この廃棄用ボトル12は、例えば透明な樹脂材料によって形成されたボトルであり、内部に数百から千枚程度の切断刃8を一度に収容可能とされている。特に、透明であるので、作業者は収容状況を目視で確認可能である。
【0057】
(排出機構)
次に、排出機構13について、説明する。
図4に示すように、排出機構13は、ホルダ10から押し出された切断刃8を回収する回収機構130と、回収した切断刃8を廃棄用ボトル12に排出する排出シュータ140と、で主に構成されている。
なお、本実施形態では、重力による落下を利用して切断刃8を排出する排出シュータ140で案内機構を構成した場合を例に挙げて説明する。
【0058】
図23は、図22に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダから押し出した状態を示す図である。
回収機構130は、装置ケース14の上部空間E1内にてホルダ10に隣接配置されており、回収した切断刃8を排出シュータ140の開口部140aに投入する役割を果たしている。回収機構130は、図23に示すように、ホルダ10の長手方向に延びたガイド131と、ガイド131に沿って移動可能な移動プレート132と、移動プレート132に固定されたLアングル133と、Lアングル133に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド133と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド133に固定されたZ軸プレート134と、Z軸プレート134の下部に固定された搬送ブロック135と、で主に構成されている。
【0059】
搬送ブロック135は、ホルダ10から押し出された切断刃8の貫通孔8bに挿入可能な突起部135aと、切断刃8の刀身を磁力によって吸着する磁性体135bとを有している。
突起部135aは、Z軸プレート134がZ軸方向に下降したときに、ホルダ10の外側に露出している切断刃8の貫通孔8bに入り込むように設計されている。そして、これと同時に磁性体135bが、切断刃8の刀身を吸着して切断刃8を保持するようになっている。そのため、この状態で移動プレート132を移動させることで、切断刃8をホルダ10から完全に抜きとって回収できるようになっている。また、回収された切断刃8は、排出シュータ140の一端側に設けられた開口部140aの真上まで移動させられる。
【0060】
図24は、図23に示す状態から、切断刃を回収して排出シュータの開口部に叩き落としている状態を示す図である。
ところで、Z軸プレート134には、非磁性体の爪部136が突起部135aと磁性体135bとの間に位置するように設けられている。この爪部136は、突起部135a及び磁性体135bがZ軸プレート134に連られて移動するのとは異なり、固定された部材である。そのため、突起部135a及び磁性体135bを上昇させると、相対的に爪部136があたかも下降した形になる。従って、排出シュータ140の開口部140aの真上まで移動させた切断刃8を、図24に示すように排出シュータ140に叩き落とすことが可能とされている。
【0061】
一方、排出シュータ140は、装置ケース14の上部空間E1から下部空間E2を貫くように配置されている。この際、装置ケース14の後面側から前面側に向かって傾斜した状態で配置されている。また、切断刃8が投入される開口部140aが設けられた一端側が回収機構130の近傍に位置し、他端側が廃棄用ボトル12の真上に位置している。
そのため、投入された切断刃8を重力による落下により他端側まで案内した後、廃棄用ボトル12に排出する役割を果たしている。よって、回収機構130で叩き落された切断刃8は、図4に示すように、排出シュータ140を滑り落ちていき、廃棄用ボトル12まで案内された後、排出される。これにより、使用済みの切断刃8を廃棄用ボトル12で回収できるようになっている。これにより、使用済みの切断刃8を廃棄用ボトル12で回収することが可能とされている。
【0062】
ところで、開口部140aは他端側に向かうにつれて漸次窄まる漏斗状に形成されており、切断刃8の長手方向が重力方向を向くように姿勢を規制している。そのため、長尺な切断刃8はほぼ縦向きで排出シュータ140を滑り落ちていき、途中で引っ掛かって詰まることなく他端側まで案内されるようになっている。
【0063】
(カセットマガジン)
ここで、カセットマガジン2(以下、マガジン2という)について、説明する。図25はマガジンの斜視図であり、図26は図25に示すマガジンを矢印A方向から見た側面図であり、図27は図25に示すマガジンを矢印B方向から見た背面図である。
図25から図27に示すように、マガジン2は、全体として縦長の直方体状に形成された収納ケースであり、包埋ブロックBを固定したまま、複数のカセットKを高さ方向に並べた状態で収納できるように設計されている。詳細には、このマガジン2は、正面が開口した箱型のマガジン本体20と、マガジン本体20に固定された開閉扉21と、で主に構成されている。
【0064】
図28はマガジンの一部拡大図であり、図29は図28に示すマガジンを側方から見た図である。
図28及び図29に示すように、マガジン本体20の2つの側面の内側には、カセットKをガイドするガイド溝20aが正面側から背面側に向かって左右で対向するように形成されている。これにより、カセットKを正面側から差し込むように挿入して、マガジン本体20内に収納可能とされている。しかも、このガイド溝20aは、高さ方向に一定の間隔を開けて複数形成されている。これにより、上述したように複数のカセットKを高さ方向に並べた状態で収納可能とされている。
なお、マガジン本体20は、カセットK及び包埋ブロックBが若干正面側に飛び出るように、カセットKに比べて奥行が短くなるようにサイズ設計されている。
【0065】
また、マガジン本体20の2つの側面のうち、一方の側面の外側には側面を厚さ方向に所定深さだけ凹み形成した凹部20c(図25参照)が形成されている。この凹部20cは、マガジン本体20に挿入されるカセットKやカセットKに固定された包埋ブロックBの種類(カセットKに固定された包埋ブロックBの大きさ等)を後述する識別センサによって識別させるための識別マークであり、側面の幅方向(カセットKの挿入方向)一端側の端面から幅方向に沿って形成された略矩形状のものである。具体的には、凹部20cは、側面の幅方向における一端側の端面から他端側に向かって側面の中途部まで形成されている。なお、本実施形態では、識別マークがマガジン本体20の側面を所定深さだけ凹み形成した凹部20cとして説明するが、マガジン本体20に挿入されるカセットKの種類に応じて凹部20cの大きさ(深さ)が異なったり、凹部20が無かったりすることで、マガジン本体20に挿入されたカセットK等の種類を識別している。
【0066】
また、マガジン本体20の側面の内側には、内方に向かって突出したピン(誤挿入防止部)22が複数形成されている。なお、図を見易くするために、各図においてピン22を適宜実線で図示している。このピン22は、カセットKを予め決められた向きで収納させるための誤挿入防止用のピンであって、各ガイド溝20aの背面側近くにそれぞれ形成されている。具体的には、包埋ブロックBを上向きにした状態で傾斜面K1側からカセットKを挿入したときに、傾斜面K1とマガジン本体20の背面との間に確保された隙間に収まるようにピン22が形成されている。そのため、図29に示す向きでカセットKを挿入した場合には、ピン22がカセットKに接触することがない。
【0067】
図30はカセットを誤った向きで差し込んだときのマガジンの側面図であり、図31は斜視図である。
これに対して、図30に示すように、逆向き(傾斜面K1が正面側に向いた状態)でカセットKを挿入してしまった場合には、カセットKの平坦面K2とピン22とが接触してしまい、それ以上のカセットKの挿入が規制される。すなわち、途中でピン22がカセットKに接触してしまい、カセットKを奥まで完全に挿入することができないようになっている。そのため、カセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。この場合には、図31に示すように、開閉扉21がカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができないようになっている。そのため、カセットKの誤挿入を容易且つ明確に見分けることが可能とされている。
【0068】
図32はカセットを上下逆向きで且つ傾斜面が背面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図であり、図33はカセットを上下逆向きで且つ傾斜面が正面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
同様に、包埋ブロックBを下向きにした状態で(上下逆向き)カセットKを挿入してしまった場合には、傾斜面K1が背面側或いは正面側のどちらを向いていても、図32及び図33に示すように、やはり途中でピン22がカセットKに接触してしまい、カセットKを奥まで完全に挿入することができないようになっている。そのため、やはりカセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。
この場合には、同様に開閉扉21がカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができないようになっている。
【0069】
従って、本実施形態のマガジン本体20には、図28及び図29に示す向きでカセットKを挿入しないかぎり開閉扉21が閉まらない設計となっている。つまり、包埋ブロックBが上向きで、且つ、傾斜面K1を背面側に向けた状態で複数のカセットKを全て挿入しない限り、開閉扉21を閉めることができないように構成されている。
【0070】
マガジン本体20の背面には、図27に示すように長穴の開口部20bが複数形成されており、収納されている複数のカセットKを背面側からでも視認できるように設計されている。
【0071】
マガジン本体20の一方の側面の外側には、図26に示すように長手方向に沿って回動軸23が設けられている。そして、この回動軸23にヒンジ部24を介して上記開閉扉21が固定されている。開閉扉21は、図25に示すようにマガジン本体20と同じ長さに設計されるとともに、幅方向一端側にはマガジン保持部21dが形成されている。このマガジン保持部21dは、開閉扉21の厚さ方向に延出する第1規制部28と、開閉扉21の幅方向に延出する第2規制部29とで平面視L字状に形成されたものである。そして、第1規制部28と第2規制部29との間において、開閉扉21が閉状態になったときに、図28及び図29に示すようにマガジン本体20の正面側から若干突出するカセットKの平坦面K2側の一部を覆って脱落を防止している。すなわち、第1規制部28が、カセットKの幅方向に沿う移動を規制する一方で、第2規制部29がカセットKの長手方向(挿入方向)に沿う移動を規制するようになっている。これにより、開閉扉21を開けない限り、収納したカセットKがマガジン本体20から抜け落ちないようになっている。
また、第2規制部29には、開閉扉21の正面(カセットKの挿入方向に沿う前面)に対して傾斜した傾斜部29aが形成されており、カセットKの挿入時において、万が一カセットKの傾斜面K1が開閉扉21に接触してしまった場合でも、カセットKが傾斜部29aを摺接しながらスムーズに挿入されるようになっている。
【0072】
ところで、開閉扉21を固定しているヒンジ部24の内部には、図示しない捩りバネが内蔵されており、開閉扉21が閉まっているときに、この閉状態を維持するように付勢している。これにより、マガジン2を持ち運びしている際に、不意に開閉扉21が開いてしまうことを規制している。
【0073】
図34は図25の状態からマガジンの開閉扉を開けた状態を示す図であり、図35は図34に示すマガジンを背面側から見た斜視図である。
更に、マガジン本体20の側面の外側には、図34及び図35に示すように、ヒンジ部24の下面に摺接するブロック25が回動軸23に隣接して固定されている。このブロック25の上面には、嵌合溝25aが凹み形成されている。そして、ヒンジ部24の内部には、図示しないコイルバネで付勢されたボールプランジャ(ストッパ)26が内蔵されている。このボールプランジャ26は、開閉扉21を閉状態から一定角度以上開けたときに、嵌合溝25aに嵌合して開閉扉21が保持されるようになっている。この際、嵌合したときの力が捩りバネの付勢力に打ち勝つように、コイルバネの付勢力が調整されている。これにより、カセットKをマガジン2に収納する際に、開閉扉21を開けたままの状態で作業できるように設計されている。
【0074】
また、開閉扉21の略中央部分には、図25に示すように、開閉扉21の厚さ方向に凹み形成された薄板部21aが形成されるとともに、開閉扉21の幅方向の一端側が切り欠かれた切欠き部21bが形成されている。そして、この薄板部21aには、扉開閉用のピン27が外方に突出した状態で設けられている。よって、このピン27を利用して開閉扉21を開閉することも可能とされている。
【0075】
図36は、図25に示すマガジンをストッカに装着した状態を示す斜視図である。
このように構成されたマガジン2は、図36に示すように、ストッカ30に装着可能とされている。このストッカ30は、上述したように装置ケース14の出入扉14bを開けることで外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、手動でマガジン2をストッカ30に差し込んで装着したり、ストッカ30から抜き取ったりすることが可能とされている。
【0076】
ストッカ30は、枠型に形成されており、マガジン2を2つ横に並べた状態で保持できるように設計されている。ストッカ30の上枠30aには、長手方向一端側及び中央部分からそれぞれ下方向けて延出する延出部34が設けられている。この延出部34は、ストッカ30の横枠30bと平行に延出する平板であり、その一方の面には図示しない識別センサ(不図示)が設けられている。この識別センサは、上述したマガジン2の側面に形成された識別マーク(本実施形態では、凹部20c)と対向するように配置され、識別マークの有無または種類(凹部20cの深さ等)を検出するものである。具体的には、識別センサはマガジン2の側面に向けて検出光を照射するとともに、照射した検出光がマガジン2で反射した反射光を検出することで、識別マークの有無や種類を検出するようになっている。これにより、ストッカ30に装着されたマガジン2の種類を装置(自動薄切装置1)側で検出することができる。したがって、マガジン2に挿入されたカセットKの種類を、人為的操作を必要とせずに検出することができるため、装置の自動化に寄与することができる。なお、図36では、マガジン2を1つだけ装着した場合を図示している。
【0077】
図37は、図36に示すストッカの一部拡大図である。
また、ストッカ30は、マガジン2が装着されたか否かを検出するマガジン検出センサ31と、装着されたマガジン2の開閉扉21を開閉する開閉機構32と、開閉扉21の開閉状態を検出する開閉検出センサ33と、を備えている。
マガジン検出センサ31は、図37に示すように、ストッカ30の上部に固定されており、下方に向けて検出光Lを照射する機能と、検出光Lがマガジン2で反射した反射光を受光する機能とを有している。そして、反射光を受光した場合には、マガジン2の装着を検出したことを知らせる検出信号を制御部15に出力する。これにより、制御部15は、マガジン検出センサ31から送られてきた検出信号に基づいて、マガジン2が装着されたか否かを把握できるようになっている。
【0078】
同様に、開閉検出センサ33もストッカ30の上部に固定されており、閉状態の開閉扉21に向けて検出光Lを照射する機能と、検出光Lが閉状態の開閉扉21で反射した反射光を受光する機能とを有している。そして、反射光を受光した場合には、開閉扉21が閉状態であることを知らせる検出信号を制御部15に出力する。これにより、制御部15は、開閉検出センサ33から送られてきた検出信号に基づいて、開閉扉21の開閉状態を把握できるようになっている。つまり、マガジン2が装着されたうえで、開閉検出センサ33から検出信号が送られてきた場合には、開閉扉21が閉まっていると判断し、検出信号が送られてこない場合には、開閉扉21が開いていると判断する。
【0079】
開閉機構32は、図36に示すように、開閉扉21に設けられたピン27に引っ掛け可能な鉤型の爪部32aと、爪部32aを可動させて開閉扉21を開閉させるシリンダ機構32bと、で主に構成されている。シリンダ機構32bは、制御部15からの指示を受けて作動するようになっている。
【0080】
ここで、マガジン2の開閉扉21が開いている状態では、すなわち上述したカセットKの誤挿入がある場合に開閉扉21が閉じていない状態では、開閉扉21がストッカ30の下枠30cに形成された係合部(不図示)や開閉機構32の爪部32aに接触してマガジン2がストッカ30内に挿入できないようになっている。そのため、マガジン2がスムーズに挿入されない場合は、作業者はマガジン2に挿入されたカセットKに誤挿入があるとこの時点でも判断することができる。すなわち、マガジン2は開閉扉21が閉じている状態でのみストッカ30内に装着可能とされており、マガジン2の装着直後にあっては、マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33からともに、制御部15に向けて検出信号が送られるようになっている。
【0081】
一方、マガジン2のストッカ30への装着後、マガジン2の開閉扉21が開いている状態では、開閉扉21の背面側がストッカ30の係合部(不図示)に引っ掛かって、ストッカ30からマガジン2を取り外すことができないように設計されている。これにより、マガジン2の装着時には係合部と開閉扉21とが引っ掛かって、ストッカ30に対するマガジン2の抜け止め及び位置決めを行うことができる。一方、マガジン2をストッカ30から取り外す際には、常にマガジン2の開閉扉21は閉状態となるため、マガジン2の取り外し作業時にマガジン2からカセットKが落下することを防止することができる。
【0082】
ここで、マガジン2が前後逆向き(マガジン2を背面側からストッカ30に装着する場合)や、上下逆向き(マガジン2の開閉扉21を、延出部34側を向けた状態でストッカ30に装着する場合)でストッカ30に装着される場合には、開閉扉21が係合部(不図示)や開閉機構32、ストッカ30の横枠30b等に干渉してマガジン2が完全には装着されず、途中で引っ掛かった状態となる(いわゆる、誤装着)。この状態で作業者は、マガジン2の誤装着を判断することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上述したマガジン検出センサ31と開閉検出センサ33とで、ストッカ30に対するマガジン2の誤装着を検出できるように構成されている。具体的には、上述した誤装着を気付かずに自動薄切装置1を作動させようとした場合であっても、装置作動時にマガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33から制御部15へ検出信号が出力されないため、この時点で制御部15からは警告表示等の異常信号が出力される。これにより、作業者はこの時点でもマガジン2の誤装着を判断することができる。
【0084】
ところで、例えばマガジン2が前後逆向きで装着された場合等には、マガジン2が誤装着であるにも関らず開閉扉21がストッカ30に干渉せず、マガジン2がマガジン検出センサ31の検出位置まで挿入されてしまう場合がある。そして、万が一マガジン検出センサ31によってマガジン2の装着が検出されてしまう場合がある。このような場合には、開閉扉21は開閉機構32の反対側を向いているため、開閉検出センサ33では開閉扉21で反射するはずの反射光を受光できず、開閉検出センサ33からの検出信号が制御部15に出力されない。
【0085】
ここで、開閉扉21が開いている状態では、開閉扉21がストッカ30の係合部(不図示)や開閉機構32の爪部32aに接触してマガジン2はストッカ30に装着されないようになっているため、上述したようにマガジン2が所定の向きで装着された場合には、開閉扉21は必ず閉まっている状態にある。すなわち、マガジン2が所定の向きで装着された場合には、マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33からともに、制御部15に向けて検出信号が出力されるようになっている。
これに対して、マガジン検出センサ31によりマガジン2が装着されたことを検出した場合であって、開閉検出センサ33からの検出信号が制御部15に出力されない場合には、制御部15は開閉検出センサ33の検出光L上に開閉扉21が存在しない、すなわちマガジン2が誤装着されていると判断するようになっている。この状態で自動薄切装置1を作動させようとした場合でも、この時点で制御部15から警告表示等の異常信号が出力される。これにより、作業者はマガジン2の誤装着を判断することができる。
【0086】
このように、本実施形態ではマガジン2が装着されたか否かを検出するマガジン検出センサ31と、開閉扉21の開閉状態を検出する開閉検出センサ33とによりマガジン2の誤装着も検出できるようになっている。すなわち、マガジン検出センサ31と開閉検出センサ33とにより、本実施形態の誤装着検出部が構成されている。なお、マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33以外に別途、マガジン2の誤装着を検出するための誤装着検出センサ(誤装着検出部)を設ける構成にしてもよい。
【0087】
(自動薄切装置を用いた薄切方法)
次に、このように構成された自動薄切装置1を利用して、包埋ブロックBを薄切する場合について説明する。
はじめに、事前準備として、図28及び図29に示すように、包埋ブロックBが固定されたカセットKをマガジン2に複数収納する作業を行う。まず、作業者は、手元にカセットKを複数用意した後、マガジン2の開閉扉21を開ける。すると、図34及び図35に示すように、開閉扉21に固定されたヒンジ部24のボールプランジャ26が、ブロック25の嵌合溝25aに嵌まり込むので、最初にカセットKをマガジン本体20に挿し込む際および最後にカセットKをマガジン本体20から引き出す際に、開閉扉21を開けたままの状態に維持することができる。よって、作業者は、開閉扉21を気にせずにカセットKをマガジン本体20に次々と収納することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0088】
この際、作業者は、図28及び図29に示すように、包埋ブロックBを上向きにした状態で傾斜面K1側からカセットKを差し込んで収納する。仮に、逆向き或いは包埋ブロックBを下向きにした状態でカセットKを差し込んでしまったとしても、これらの場合にはカセットKを差し込む際に、マガジン本体20の内部に設けられたピン22がカセットKに接触してしまう。そのため、カセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。よって、作業者は、カセットKを誤った向きで差し込んでしまったことを認識することができる。
【0089】
また、万が一、差し込んでいる段階でカセットKの向きの誤りに気づかなかったとしても、開閉扉21を最後に閉める段階で気づくことができる。つまり、誤った向きに差し込まれたカセットKがある場合には、図31に示すように、開閉扉21が途中でカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができない。そのため、この時点で作業者はカセットKを誤った向きで差し込んでしまったことを認識することができる。
【0090】
そして、複数のカセットKをマガジン本体20内に収納した後、図25に示すように、開閉扉21を閉めてカセットKの脱落を防止する。この際、開閉扉21は、捩りバネによって閉状態が維持されるので、作業者が再度開けない限り、不意に開いてしまうことがない。
【0091】
そして、作業者は、装置ケース14の出入扉14bを開けた後、図4に示すように、複数のカセットKを収納したマガジン2の開閉扉21を閉じた状態でストッカ30内に差し込んで装着する。この際、開閉扉21側からマガジン2を差し込む。ここで、上述したようにカセットKが誤挿入されていた場合には、マガジン2の開閉扉21にストッカ30の係合部や開閉機構32の爪部32aが接触してマガジン2が装着されないように構成されている。そのため、マガジン2がスムーズに挿入されない場合は、作業者はマガジン2に挿入されたカセットKに誤挿入があるとこの時点でも判断することができる。
【0092】
そして、マガジン2をストッカ30に装着する際、マガジン2を前後逆向き、すなわちマガジン2を背面側から装着した場合や上下逆向きに装着した場合には、開閉扉21が係合部(不図示)や開閉機構32、ストッカ30の横枠30b等に干渉してマガジン2が完全には装着されず、途中で引っ掛かった状態となる。この状態で作業者は、マガジン2の誤装着を判断することができる。また、この状態で自動薄切装置1を作動させようとした場合であっても、制御部15から警告表示等の異常信号が出力されることで、作業者はこの時点でもマガジン2の誤装着を判断することができる。
また、マガジン検出センサ31によりマガジン2が装着されたことを検出したにも関わらず、開閉検出センサ33から制御部15に開閉扉21の検出信号が出力されていない場合も、マガジン2が誤装着されていると判断するようになっている。これにより、作業者はマガジン2がストッカ30に対して所定の向きで装着されたことを確実に判断することができる。
【0093】
そして、マガジン2が所定の向きでストッカ30に装着されたことを確認した後、開けていた出入扉14bcを閉める。
次に、廃棄用ボトル12がセットされていること、収納ケース9内に切断刃8がセットされていることを確認して、事前準備が終了する。
【0094】
次に、作業者は、制御部15を介して装置ケース14内の各構成品の作動を開始させる。すると、搬送機構11が収納ケース9内から切断刃8を1枚取り出した後、ホルダ10の載置プレート60に向けてスライド移動により搬送し、載置プレート60上に切断刃8を載置する作業を行う。
【0095】
詳細には、まず、図18に示すように、第1の搬送部81のZ軸プレート103を下降させて、搬送アーム104の嵌合爪104aをレバー部51に嵌合させる。続いて、移動プレート100を移動させて、第1の搬送部81全体を収納ケース9の長手方向に移動させる。これにより、収納ケース9のレバー部51を移動させることができ、収納ケース9の1番上方に位置している切断刃8を、開口部を介して押し出すことができる。
すると、押し出された切断刃8は、図20に示すように、刃先8a及び貫通孔8bが外側に露出した状態で、搬送路80にスライド移動する。この時点で、Z軸プレート103を上昇させて、嵌合爪104aをレバー部51から離間させて嵌合を解除する。そして、移動プレート100を元に位置に戻す。
【0096】
続いて、第2の搬送部82のZ軸プレート112を下降させて、突起部113aを切断刃8の貫通孔8bに差し込む。続いて、移動プレート100を移動させて、第2の搬送部82全体を搬送路80の長手方向に移動させる。これにより、図21に示すように、切断刃8をスライド移動させながらホルダ10の近傍まで移動させることができる。この時点で、Z軸プレート112を上昇させて、突起部113aを貫通孔8bから抜いて切断刃8との係わりを解除する。そして、移動プレート100を元に位置に戻す。
【0097】
続いて、第3の搬送部83のZ軸プレート122を下降させて、押し出し片123aを切断刃8の後端に並ぶように位置させる。続いて、移動プレート100を移動させて、第3の搬送部83全体を搬送路80の長手方向に移動させる。これにより、図22に示すように、切断刃8を押し出すようにスライド移動させて、搬送路80からホルダ10に受け渡すことができる。なお、ホルダ10の押さえプレート61は、この段階では先端側が浮いた状態となっているので、切断刃8をホルダ10側に搬送することができる。
【0098】
切断刃8をホルダ10側に搬送した後、移動プレート100を若干逆方向に移動させて押し出し片123aをホルダ10の外側に露出させる。そして、Z軸プレート122を上昇させて、押し出し片123aを元の位置に戻す。その後、移動プレート100を完全に元の位置に戻す。
一方、ホルダ10に搬送された切断刃8は、図12に示すように、刃先8aが外側に露出した状態で載置面60aに載置されている。この際、切断刃8は、基端側が磁石63によって吸着されているので、すくい角θによってホルダ10が斜めになっていても、重力の影響を受けてずれ落ちることなく姿勢が保持されて安定した状態となっている。
【0099】
切断刃8が載置面60aに載置されると、押さえプレート61が作動して切断刃8を載置プレート60に押さえ付ける。つまり、スライド部65に連結されているロッド65aを押し出して、押さえプレート61の基端側を上方に押し上げる。これにより、押さえプレート61がシャフト64を中心に回転するので、先端側が載置プレート60に向けて押し下げられる。従って、上述したように、切断刃8を載置プレート60に押さえ付けることができ、クランプ固定することができる。
【0100】
この際、検出機構70が、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけクランプ固定されているか否かを検出する。その結果、検出機構70が否と検出した場合、即ち、搬送されてきた切断刃8が何らかの理由(例えば、過度の押し出されや、磁石63の吸着不良による位置ずれ等)によって位置不良や姿勢不良等が生じている場合や、切断刃8そのものが搬送されてきていない場合や、切断刃8が2枚搬送されてきた場合等には、切断刃8のkyランプ不良と判断して以降の薄切を行わない。
従って、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことができる。
【0101】
ところで、制御部15は、上述した工程と同時に、カセットKをステージ5上に載置させる作業を行わせている。この作業について説明する。
まず、ストッカ30にマガジン2が装着された段階で、図37に示すように、マガジン検出センサ31はマガジン2で反射した反射光により、マガジン2が装着されたことを認識し、制御部15に検出信号を出力する。すると、制御部15は、この検出信号を受けてマガジン2が装着されたことを把握する。また、開閉検出センサ33は、閉状態の開閉扉21で反射した反射光により、開閉扉21が閉まっていることを認識し、制御部15に検出信号を出力する。すると、制御部15は、この検出信号を受けてマガジン2の開閉扉21が閉まっていることを把握する。
【0102】
そこで、制御部15は、シリンダ機構32bを作動させて、図36に示すように爪部32aをマガジン2の開閉扉21に設けられたピン27に引っ掛けて、開閉扉21を開状態にさせる。すると、開閉検出センサ33は、反射光を受光しなくなるので、検出信号の出力を停止する。これにより、制御部15は、マガジン2の開閉扉21が開いたことを把握することができる。このように、各センサ(マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33)によりマガジン2がストッカ30に装着され、且つ開閉扉21が閉状態にあると検出された場合には、開閉機構32により開閉扉21を自動的に開くことができる。これにより、カセットKの誤挿入があった場合には開閉扉21が開かないので、誤挿入があったことをさらに確実に検知することができる。そして、開閉扉21を開けてからストッカ30にマガジン2を装着させる場合に比べて、ストッカ30への装着作業を容易に行うことができるとともに、ストッカ30への装着時にマガジン2からカセットKが落下することがない。
【0103】
なお、開閉扉21の略中央部分に切欠き部21bが形成されているため、開閉扉21の開状態時(ストッカ30への装着後)において、開閉機構32によりカセットKが干渉しない位置まで開閉扉21を開くことができるようになっている。また、開閉扉21を開くことで、ストッカ30に形成された係合部(不図示)や開閉機構32の爪部32aと開閉扉21とが引っ掛かって、ストッカ30に対するマガジン2の抜け止め及び位置決めを行うことができる。
【0104】
続いて、制御部15は、オートローダ4を作動させる。すると、オートローダ4は、図4に示すようにX軸スライダ4b及びY軸スライダ4cを適宜作動させながら、ハンド部4aを利用してマガジン2の正面側から若干突出したカセットKを両側から挟持して掴む。そして、この状態から、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cの移動動作とハンド部4aの回転動作とを適宜行わせて、掴んだカセットKをマガジン2取り出した後、載置台3上に載置させる。
【0105】
続いて、制御部15は、カセットローダ6を作動させる。すると、カセットローダ6は、固定プレート6cとY軸移動機構6dとを適宜作動させながら、ハンド部6aを利用して載置台3に置かれたカセットKを挟持して掴む。そして、この状態から、固定プレート6c及びY軸移動機構6dの移動動作とハンド部6aの回転動作とを適宜行わせて、カセットKを所望する向きでステージ5上に載置する。
【0106】
このようにして、カセットKをステージ5上に載置させる作業を、切断刃8の固定作業と平行して行う。そして、切断刃8のクランプ固定作業と、ステージ5上へのカセットKのセット作業とが終了すると、包埋ブロックBの薄切作業を開始する。
まず、ステージ5を高さ調整して、包埋ブロックBの上面を所望する高さ位置に調整する。そして、移動機構71がホルダ10を移動させることで、クランプ固定した切断刃8により包埋ブロックBを薄切する。これにより、包埋ブロックBを粗削りして面だしを行うことができる。
【0107】
ところで、薄切を行っている際、撮像カメラ7が包埋ブロックBを撮像する。この撮像画像は、モニタ15aに表示される。よって、作業者は、包埋ブロックBの表面状態や内部状態をモニタ15aに表示された撮像画像で確認することができる。そして、この撮像画像を参考にして、薄切の合間に、適宜ステージ5を傾斜させたり、回転させたりすることができる。その結果、包埋ブロックBの粗削りによって、最適な面を表面に露出させることができる。
なお、粗削り後、包埋ブロックBを本削りして薄切片Mを作製しても構わない。
【0108】
そして、薄切が所定回数終了すると、制御部15は押さえプレート61による切断刃8の押さえ付けを解除させる。つまり、ロッド65aを引き込んで、バネ力により押さえプレート61の基端側を載置プレート60側に移動させる。これにより、押さえプレート61がシャフト64を中心に逆回転するので、先端側が押し上がる。従って、押さえ付けが解除される。
【0109】
また、制御部15は、これと同時に搬送機構11を作動させて、使用した切断刃8をスライド移動によりホルダ10から押し出させる。つまり、第3の搬送部83のZ軸プレート122を再度下降させた後、移動プレート100を移動させる。これにより、図23に示すように、押し出し片123aを利用して切断刃8を押し出すようにスライド移動させることができ、切断刃8の一部をホルダ10の外側に突出させることができる。これにより、切断刃8の交換を行うことができる。
【0110】
なお、切断刃8がホルダ10から押し出されると、制御部15は、回収機構130を作動させる。すると、回収機構130は、Z軸プレート134を下降させて、ホルダ10の外側に突出している切断刃8の貫通孔8bに突起部135aを挿入させると同時に、切断刃8の刀身を磁性体135bで吸着させて切断刃8を保持させる。その後、移動プレート132を移動させて、切断刃8をホルダ10から完全に抜きとって回収すると共に、回収した切断刃8を排出シュータ140の開口部140aの真上に移動させる。
【0111】
続いて、この位置で、Z軸プレート134を上昇させて、突起部135a及び磁性体135bを上昇させる。これにより、相対的に爪部136があたかも下降した形になるので、図24に示すように、排出シュータ140の開口部140aに切断刃8を叩き落として投入することができる。叩き落された切断刃8は、図4に示すように、排出シュータ140を重力による落下を利用して滑り落ちていき、廃棄用ボトル12まで案内された後に排出される。これにより、使用済みの切断刃8は、廃棄用ボトル12に回収される。このように、本実施形態の自動薄切装置1によれば、薄切を所定回数行う毎に切断刃8の交換と回収とを自動的に行うことができる。従って、作業者の手を煩わせることなく切断刃8を交換でき、作業者にかかる負担を極力低減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃8を使用して薄切を行うことができるので、高品質な薄切片Mの作製を実現することができる。また、各構成品が装置ケース14内に収容されているので、塵埃等の影響を受け難く、薄切を最適な環境下で行うことができる。この点においても、薄切片Mの高品質化に繋げることができる。
【0112】
その後、搬送機構11は、再度収納ケース9内から新たな切断刃8を1枚取り出して、ホルダ10に搬送する。そして、ホルダ10が、新たな切断刃8をクランプ固定して次の薄切に備える。一方、薄切が終了した後のカセットKは、カセットローダ6によってステージ5から載置台3に受け渡される。そして、オートローダ4によって、載置台3からマガジン2内に戻されて、再収納される。
このように、本実施形態の自動薄切装置1によれば、上述した工程を繰り返すことで、マガジン2内の全てのカセットKについて、包埋ブロックBの薄切を自動で行うことができる。
【0113】
特に、本実施形態の自動薄切装置1によれば、マガジン本体20に、その開口部を覆う開閉扉21が設けられているため、開閉扉21を開けない限り、カセットKがマガジン本体20から飛び出して脱落することがない。これにより、作業者は、マガジン2からのカセットKの落下に注意を払うことないため、安全に持ち運ぶことができ、また作業効率を向上させることもできる。また、開閉扉21は、捩りバネにより開口部20bを覆う方向に向けて付勢されているため、マガジン2を持ち運びしている際に、不意に開閉扉21が開いてしまうこと防止することができる。
【0114】
ここで、マガジン本体20内にカセットKの誤挿入を防止するためのピン22が設けられており、カセットKが所定の向きで挿入された場合には、傾斜面K1とマガジン本体20の背面との間に確保された隙間にピン22が収まるようになっている。
一方、カセットKが所定の向き以外の向きで挿入された場合には、カセットKの傾斜面K1や他端側の端面(平坦面K2)に当接して、それ以上のカセットKの開口部21b内への挿入が規制される。すなわち、マガジン本体20内にカセットKが完全に挿入できないようになっている。この場合、カセットKがマガジン本体20の開口部20bから過大に突出することになり、開閉扉21を閉じることができないため、作業者は、この時点でカセットKの誤挿入を容易且つ明確に見分けることができる。よって、カセットKの挿入時における作業者の人為的ミスを未然に防止して、マガジン本体20内に収納された複数のカセットKの向きを、確実に全て統一することができる。
【0115】
また、誤装着検出部(マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33)により、マガジン2の誤装着を検出することで、作業者はマガジン2をストッカ30に対して所定の向きで確実に装着することができる。
【0116】
このように、マガジン本体20内に収納される複数のカセットKの向きを、確実に全て統一した状態でマガジン2を自動薄切装置1のストッカ30に確実にセットすることができるため、装置内においてカセットKの取り出しや搬送等の作業をスムーズに行うことができ、装置の自動化にも上手く対応することができる。したがって、高品質な薄切片Mが自動で、且つ迅速に作製される自動薄切装置1を提供することができる。
【0117】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0118】
例えば、上記実施形態では、カセットKの誤挿入防止部として、マガジン本体20の内側にピン22を形成した場合について説明したが、これに限らずマガジン本体20に誤挿入防止部(例えば、段差や傾斜面等)を一体形成してもよい。また、これに伴い、カセットKの凹部として傾斜面K1を形成する構成に限らず、誤挿入防止部に収まるような凹部を適宜形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明に係る自動薄切装置で用いられる包埋ブロック及びカセットの斜視図である。
【図2】図1に示す包埋ブロックから薄切された薄切片がスライドガラス上に固定されて薄切片標本となった状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る自動薄切装置の一実施形態を示す簡略構成図である。
【図4】図3に示す自動薄切装置の構成を示す斜視図である。
【図5】図3に示す自動薄切装置で用いられる切断刃の上面図である。
【図6】図5に示す切断刃の側面図である。
【図7】図3に示す自動薄切装置を構成する収納ケースの側面図である。
【図8】図7に示す収納ケースの上面図である。
【図9】図7に示す収納ケースの正面図である。
【図10】図7に示す収納ケースの装着状態を示す図である。
【図11】図3に示す自動薄切装置を構成するホルダの斜視図である。
【図12】図11に示すホルダの断面図である。
【図13】図11に示すホルダを構成する載置プレートに形成された凹部を示す図である。
【図14】図11に示すホルダを構成する押さえプレートに形成された突出ピンを示す図である。
【図15】図11に示すホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、予め決められた所定位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
【図16】図15に示す断面矢視C−C図である。
【図17】図11に示すホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、誤った位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
【図18】図3に示す自動薄切装置を構成する搬送機構の斜視図である。
【図19】図18に示す搬送機構を構成する搬送路の断面図であって、断面矢視D−D図である。
【図20】図18に示す状態から、切断刃を搬送路に取り出した状態を示す図である。
【図21】図20に示す状態から、切断刃をホルダの近傍までスライド移動させた状態を示す図である。
【図22】図21に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダ側に搬送させた状態を示す図である。
【図23】図22に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダから押し出した状態を示す図である。
【図24】図23に示す状態から、切断刃を回収して排出シュータの開口部に叩き落としている状態を示す図である。
【図25】図4に示す自動薄切装置を構成するマガジンの斜視図である。
【図26】図25に示すマガジンを矢印A方向から見た側面図である。
【図27】図25に示すマガジンを矢印B方向から見た背面図である。
【図28】図25に示すマガジンの一部拡大図である。
【図29】図28に示すマガジンを側方から見た図である。
【図30】カセットを誤った向きで差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図31】図30に示すマガジンの斜視図である。
【図32】カセットを上下逆向きで且つ傾斜面が背面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図33】カセットを上下逆向きで且つ傾斜面が正面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図34】図25の状態からマガジンの開閉扉を開けた状態を示す図である。
【図35】図34に示すマガジンを背面側から見た斜視図である。
【図36】図25に示すマガジンをストッカに装着した状態を示す斜視図である。
【図37】図36に示すストッカの一部拡大図である。
【符号の説明】
【0120】
B…包埋ブロック
K…カセット(包埋カセット)
K1…傾斜面(凸部)
K2…平坦面(他端側の端面)
S…生体試料
1…自動薄切装置
2…マガジン(カセットマガジン)
8…切断刃
15…制御部
20…マガジン本体
20b…マガジン本体の開口部
21…開閉扉
22…ピン(誤挿入防止部)
26…ボールプランジャ(ストッパ)
32…開閉機構
31…マガジン検出センサ
33…開閉検出センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、カセットマガジン及び自動薄切装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
人体や実験動物等から取り出した生体試料を検査、観察する方法の1つとして、包埋剤によって生体試料を包埋した包埋ブロックから薄切片を作製し、この薄切片に対して染色処理を行って、生体試料を観察する方法が知られている。包埋ブロックの作製には、一般的に専用の容器である包埋カセットが使用されおり、この包埋カセット上に包埋剤に包埋された包埋ブロックが固定されている。通常、包埋ブロックから薄切片を作製する場合には、細胞レベルでの観察を可能とするために3μm〜5μm程度の厚さで均一に、且つ包埋されている生体試料を損傷しないように薄切する必要がある。このため、一般的に薄切片を作製する作業は、鋭利な薄い切断刃を使用して、熟練の作業者による手作業で行っていた。
【0003】
ところで、包埋ブロックが固定された包埋カセットの品質管理を行うために、包埋ブロックが固定された複数の包埋カセットを収容し、整理するためのカセットマガジン(以下、マガジンという)が知られている。このマガジンは、例えば特許文献1に示されるように、長辺外壁に設けた仕切板により順次仕切られた複数のカセット収容室を備え、薄切完了した包埋カセットをカセット収容室の一端側から順番に収納するようになっている。そして、マガジンは複数の包埋カセットが収納された状態で、その後のシーリング作業(包埋ブロックを被覆する作業)や、包埋カセットが収容されたマガジンを収納保管する収納ラックへそのまま運び出されるようになっている。
【特許文献1】特開2007−147400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前臨床試験等を行う場合には、一試験当たり数百個の包埋ブロックを作製し、さらに一包埋ブロック当たり数枚の薄切片を作製する必要がある。そのため、膨大な数の薄切片を作製し続ける必要がある。したがって、薄切片を作製する作業を、手作業ではなく、機械による自動化で行うことが望まれている。
【0005】
しかしながら、上述したマガジンは、手動の薄切装置で使用するためのものであり、包埋カセットを単純に収容するのみの構成である。すなわち、マガジンに収容された包埋ブロックを薄切する場合には、まずマガジンに配列された包埋カセットを1枚ずつ取り出して手作業により包埋ブロックを薄切し、薄切完了後に薄切装置からマガジンへ順次手作業で戻していくものである。そのため、包埋カセットをマガジンへ配列する際に、包埋カセットの挿入方向を間違える等(いわゆる、誤挿入)の人為的ミスが生じる虞がある。包埋カセットの誤挿入が発生すると、マガジンに収容されている包埋カセットの向きが異なることとなり、この状態で薄切装置の自動化に対応することは困難である。
【0006】
また、包埋カセットが収容された状態のマガジンを持ち運ぶ際にマガジンを引っ掛けてしまった場合や、作業者がつまずいたりした場合等には、マガジンから包埋カセットが飛び出して落下する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、包埋カセットの誤挿入を防止して装置の自動化に対応するとともに、マガジン本体からの包埋カセットの落下を防止することができるカセットマガジン及び自動薄切装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決して係る目的を達成するために以下の手段を提供する。
本発明に係るカセットマガジンは、生体試料が包埋剤に包埋されてなる包埋ブロックの固定台として使用される複数の包埋カセットを収容保持するカセットマガジンにおいて、前記包埋カセットが挿入される開口部を有する箱型のマガジン本体と、前記マガジン本体に設けられ、前記開口部を覆う方向へ付勢された開閉扉と、前記マガジン本体内に設けられ、前記包埋カセットを前記所定の向きで挿入させるための誤挿入防止部とを備え、前記誤挿入防止部は、前記包埋カセットが所定の向きで挿入された場合に、前記包埋カセットの挿入方向に沿う一端側に形成された凹部と、前記マガジン本体の底面との間に収まる一方、前記包埋カセットが前記所定の向き以外の向きで挿入された場合に、前記包埋カセットの凹部以外の部分と、前記マガジン本体の底面との間に配置されて、それ以上の前記包埋カセットの前記開口部内への挿入を規制するとともに、前記開閉扉が前記包埋カセットに干渉して前記開閉扉が閉まらないように構成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、マガジン本体に、その開口部を覆う開閉扉が設けられているため、開閉扉を開けない限り、包埋カセットがマガジン本体から飛び出して脱落することがない。これにより、作業者は、カセットマガジンからの包埋カセットの落下に注意を払うことないため、安全に持ち運ぶことができ、また作業効率を向上させることもできる。また、開閉扉は、開口部を覆う方向に向けて付勢されているため、カセットマガジンを持ち運びしている際に、不意に開閉扉が開いてしまうこと防止することができる。
ここで、マガジン本体内に包埋カセットの誤挿入を防止するための誤挿入防止部が設けられており、包埋カセットが所定の向きで挿入された場合には、包埋カセットの凸部と、マガジン本体の底面との間に誤挿入防止部が収まるようになっている。
一方、包埋カセットが所定の向き以外の向きで挿入された場合には、包埋カセットの挿入方向に沿う他端側の端面や凸部に接触して、それ以上の包埋カセットの開口部内への挿入が規制される。すなわち、マガジン本体内に包埋カセットが完全に挿入できないようになっている。この場合、カセットがマガジン本体の開口部から過大に突出することで、開閉扉がカセットに干渉してしまい、開閉扉を閉じることができない。そのため、作業者は、この時点で包埋カセットの誤挿入を容易且つ明確に見分けることができる。よって、包埋カセットの挿入時における作業者の人為的ミスを未然に防止して、マガジン本体内に収納された複数のカセットの向きを、確実に全て統一することができる。
【0010】
また本発明に係るカセットマガジンは、前記開閉扉には、前記開閉扉を一定角度開けた状態で保持するストッパが設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、最初に包埋カセットをマガジン本体に挿し込む際および最後に包埋カセットをマガジン本体から引き出す際に、開閉扉を開けたままの状態で作業することができる。これにより、作業者は、開閉扉を気にせずにカセットをマガジン本体に次々と収納することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0011】
一方、本発明に係る自動薄切装置は、上記本発明のカセットマガジンと、前記カセットマガジンが装着されるストッカと、前記カセットマガジンから1枚ずつ取り出される前記包埋カセットに固定された前記包埋ブロックを薄切する切断刃とを備え、前記ストッカには、前記開閉扉の閉状態において前記カセットマガジンが装着されるようになっており、前記ストッカには、前記カセットマガジンに前記包埋カセットが誤挿入されていた場合に、前記カセットマガジンの前記開閉扉に接触して前記カセットマガジンが装着されないように規制するための係合部が設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、包埋カセットが誤挿入されていた場合に、カセットマガジンの開閉扉がストッカの係合部に接触してカセットマガジンが装着されないように構成されているため、カセットマガジンがスムーズに挿入されない場合は、作業者はカセットマガジンに挿入された包埋カセットに誤挿入があるとこの時点でも判断することができる。これにより、ストッカへの装着時において、マガジン本体内に収納される複数のカセットの向きを確実に全て統一した状態で、カセットマガジンを自動薄切装置にセットすることができる。したがって、装置内において包埋カセットの取り出しや搬送等の作業をスムーズに行うことができ、装置の自動化にも上手く対応することができる。
【0012】
また本発明に係る自動薄切装置は、前記ストッカが、前記カセットマガジンが前記ストッカ内に装着されたか否かを検出するマガジン検出センサと、装着された前記カセットマガジンの前記開閉扉を開閉する開閉機構と、前記開閉扉の開閉状態を検出する開閉検出センサと、これら前記マガジン検出センサ、前記開閉機構、及び開閉検出センサを統括的に制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記カセットマガジンが前記ストッカに装着され、且つ前記開閉扉が閉状態にある場合に、前記開閉機構により前記開閉扉を開方向に移動させることを特徴としている。
この構成によれば、各センサによりカセットマガジンがストッカに装着され、且つ開閉扉が閉状態にあると検出された場合には、開閉機構により開閉扉を自動的に開くことができる。これにより、包埋カセットの誤挿入があった場合には開閉扉が開かないので、誤挿入があったことをさらに確実に検知することができる。そして、開閉扉を開けてからストッカにカセットマガジンを装着させる場合に比べて、ストッカへのカセットマガジンの装着作業を容易に行うことができるとともに、ストッカへの装着時にカセットマガジンから包埋カセットが落下することがない。
【0013】
また本発明に係る自動薄切装置は、前記ストッカが、前記カセットマガジンが所定の向き以外の向きで装着された場合に、前記カセットマガジンの誤装着を検出する誤装着検出部を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、誤装着検出部により、カセットマガジンの誤装着を検出することで、作業者はカセットマガジンをストッカに対して所定の向きで確実に装着することができる。これにより、カセットの向きが確実に全て統一した状態で配列されたカセットマガジンを、ストッカに確実にセットすることができるため、装置内において包埋カセットの取り出しや搬送等の作業をスムーズに行うことができ、装置の自動化にも上手く対応することができる。
【0014】
また本発明に係る自動薄切装置は、前記カセットマガジンには、前記カセットマガジンに挿入された前記包埋カセットの種類を識別するために、前記包埋カセットの種類に応じて識別マークが設けられ、前記ストッカには、前記ストッカに装着された前記カセットマガジンの前記識別マークの有無または種類を識別する識別センサが設けられていることを特徴としている。
この構成によれば、カセットマガジンに設けられた識別マークを検出するための識別センサをストッカに設けることで、ストッカに装着されたカセットマガジンの種類を装置側で検出することができる。これにより、カセットマガジンに挿入された包埋カセットの種類を、人為的操作を必要とせずに検出することができるため、装置の自動化に寄与することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカセットマガジンによれば、包埋カセットの挿入時における作業者の人為的ミスを未然に防止して、マガジン本体内に収納された複数のカセットの向きを、確実に全て統一することができる。
そして、本発明の自動薄切装置によれば、マガジン本体内に収納される複数のカセットの向きを確実に全て統一した状態で、カセットマガジンを自動薄切装置にセットすることができるため、装置内において包埋カセットの取り出しや搬送等の作業をスムーズに行うことができ、装置の自動化にも上手く対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態を、図1から図37を参照して説明する。
(包埋ブロック及び包埋カセット)
図1は、自動薄切装置で用いられる包埋ブロック及びカセットの斜視図であり、図2は包埋ブロックから薄切された薄切片がスライドガラス上に固定されて薄切片標本となった状態を示す斜視図である。
自動薄切装置は、図3に示すように、図1に示す生体試料Sが包埋剤であるパラフィンPによって包埋された包埋ブロックBを、所定のすくい角θが付いた状態で薄切(例えば、3μm〜5μmの極薄に薄切)する装置である。このように、すくい角θを付けた状態で包埋ブロックBを薄切することで、切削抵抗を減らしてより円滑な薄切を行うことができる。
【0017】
よって、この自動薄切装置によって、図2に示す薄切片Mを作製することが可能とされている。なお、この薄切片Mは、その後、水やお湯等の液体上に浮かべて、薄切時に生じた皺やカール等の歪みを除去する伸展工程を経た後、スライドガラス等の基板Gに掬い取られて、薄切片標本Hとなるものである。
なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィンPによってブロック状に固められたものである。これにより、生体試料SがパラフィンP内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。
【0018】
ところで、本実施形態では、図1に示すように、包埋ブロックBが箱状に形成されたカセットK上に固定されているものとして説明する。
はじめに、このカセットKについて簡単に説明すると、耐薬品性を有する樹脂等により形成されたものであり、包埋ブロックBを固定する固定台としての役割を果している。カセットKの長手方向における一側面は、下方に面が向いた傾斜面K1(凹部)となっている一方、他側面はカセットKの厚さ方向に沿った平坦面K2となっている。なお、この傾斜面K1上には、カセットKの製造番号や、包埋ブロックBの作製日、生体試料Sの各種データ等を含む図示しない識別コードが記録されている。そのため、この識別コードを読み取ることで、包埋ブロックBの品質管理を行えるようになっている。また、本実施形態では、傾斜面K1を形成するためにカセットKの一側面を切り欠くことで傾斜面K1が凹部として形成されている。
【0019】
(自動薄切装置)
続いて、本実施形態の自動薄切装置について、説明する。
図3は自動薄切装置の一実施形態を示す簡略構成図であり、図4は図3に示す自動薄切装置の構成を示す斜視図である。
図3及び図4に示すように、自動薄切装置1は、カセットKを複数収納保持するマガジン2と、マガジン2から1つのカセットKを出し入れすると共に載置台3に載置するオートローダ4と、載置台3とステージ5との間でカセットKを受け渡しするカセットローダ6と、ステージ5上に載置されたカセットKに固定された包埋ブロックBを撮像する撮像カメラ7と、切断刃8と、切断刃8を複数収納する収納ケース9と、切断刃8を固定するホルダ10と、収納ケース9から切断刃8を1枚取り出してホルダ10に搬送してセットする搬送機構11と、使用済みの切断刃8を収容する廃棄用ボトル12と、使用済みの切断刃8をホルダ10から回収して廃棄用ボトル12に排出する排出機構13と、これら各構成品を内部に収容する装置ケース14と、各構成品を総合的に制御する制御部15と、で主に構成されている。
【0020】
(装置ケース)
装置ケース14について、先に説明する。
この装置ケース14は、全体的に箱型に形成されており、内部が密閉可能とされているうえ、湿度や温度等の環境条件を所望する条件に設定可能とされている。また、装置ケース14の内部は、中間パネル14aによって上部空間E1と下部空間E2とに区分けされており、各構成品の大部分が上部空間E1に配置されている。下部空間E2には、主に廃棄用ボトル12が配置されている。
【0021】
装置ケース14の前面には、作業者が開け閉めする2つの出入扉14b、14cが設けられている。一方の出入扉14bは、マガジン2を装着或いは取り出す際に用いる扉であり、該出入扉14bを開けるとマガジン2をセットが装着される後述するストッカ30が露出するようになっている。一方、他方の出入扉14cは、廃棄用ボトル12を装着或いは取り出す際に用いる扉であり、該出入扉14cを開けると廃棄用ボトル12が露出して外部からアクセスできるようになっている。
【0022】
(オートローダ)
次に、オートローダ4について、説明する。
図4に示すように、オートローダ4は、装置ケース14の上部空間E1内にてストッカ30に隣接する位置に配置されている。このオートローダ4は、ストッカ30に装着されたマガジン2に収納されたカセットKを挟持可能なハンド部4aと、ハンド部4aを垂直なZ軸回りに回転自在に固定すると共にストッカ30と載置台3とを結ぶX軸方向に移動可能なX軸スライダ4bと、X軸スライダ4bを支持すると共にX軸及びZ軸の2軸に対して直交するY軸方向に移動可能なY軸スライダ4cと、で主に構成されている。
なお、これらハンド部4a、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0023】
ハンド部4aは、マガジン2の正面側から若干突出したカセットKを両側から挟持することで、カセットKを摘むことが可能とされている。そして、この状態から、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cの移動動作とハンド部4aの回転動作とを適宜組み合わせることで、マガジン2から所望するカセットKを1つだけ出し入れしたり、載置台3上にカセットKを載置したりすることができるようになっている。
【0024】
なお、本実施形態では、オートローダ4をハンド部4aとX軸スライダ4bとY軸スライダ4cとで主に構成したが、この構成に限定されるものではない。マガジン2から所望のカセットKを1つ出し入れでき、且つ、カセットKを載置台3上に載置できるように構成できれば、自由に設計して構わない。
【0025】
(カセットローダ)
次に、カセットローダ6について、説明する。
図4に示すように、カセットローダ6は、装置ケース14の上部空間E1内にて最奥部(開閉扉21が形成されている前面とは反対側の後面に近い部分)に配置されている。このカセットローダ6は、載置台3に載置されたカセットKを挟持可能なハンド部6aと、ハンド部6aをZ軸回りに回転自在に固定すると共にZ軸方向に延びたガイド6bに沿って移動可能な固定プレート6cと、ガイド6bをY軸方向に移動させるY軸移動機構6dと、で主に構成されている。
なお、これらハンド部6a、固定プレート6c及びY軸移動機構6dは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0026】
ハンド部6aは、載置されたカセットKの両側を真上から挟持することで、カセットKを摘むことが可能とされている。そして、この状態から、固定プレート6c及びY軸移動機構6dの移動動作とハンド部6aの回転動作とを適宜組み合わせることで、カセットKを所望する向きでステージ5上に載置したり、ステージ5上から載置台3に戻したりすることができるようになっている。
なお、Y軸移動機構6dは、一対のプーリ40に巻回されてY軸方向に移動する無端ベルト41と、無端ベルト41に連結され、無端ベルト41の移動に伴って移動するスライダ42と、スライダ42と固定プレート6cとを連結する連結プレート43と、で構成されている。なお、一対のプーリ40のうちの一方が、駆動部44によって回転することで無端ベルト41が移動する。
【0027】
なお、本実施形態では、カセットローダ6をハンド部6aと固定プレート6cとY軸移動機構6dとで主に構成したが、この構成に限定されるものではない。載置台3とステージ5との間でカセットKを受け渡しでき、カセットKを所望する向きでステージ5上にセットできるように構成できれば、自由に設計して構わない。
【0028】
ステージ5は、内部に圧電素子等が組み込まれており、制御部15からの指示に基づいて適宜Z軸方向に移動するように構成されている。これにより、ステージ5上に載置されたカセットKに固定された包埋ブロックBを高さ調整することができ、所望する厚み(例えば、5μm)で薄切することが可能とされている。
加えて、このステージ5は、Z軸回りの回転と、X軸回り及びY軸回りの傾きとが自在に調整可能とされた多軸のステージとされている。そのため、包埋ブロックBの姿勢を自在にコントロールして、包埋ブロックBの向きや傾き等を所望する状態に設定することが可能とされている。
【0029】
(撮像カメラ)
次に、撮像カメラ7について、説明する。
図4に示すように、撮像カメラ7は、装置ケース14の上部空間E1内にてステージ5の真上にくるように配置されている。この際、撮像カメラ7は、Z軸方向に移動可能なZ軸移動部7aに支持されている。このZ軸移動部7aは、Y軸移動部7bによってY軸方向に移動可能とされている。よって、撮像カメラ7は、必要に応じてステージ5上の真上から退避可能とされている。具体的には、カセットローダ6によってカセットKが載置台3とステージ5との間で受け渡しする間、カセットローダ6の動きを邪魔しないように撮像カメラ7は退避するようになっている。
なお、これらZ軸移動部7a及びY軸移動部7bは、制御部15の指示に基づいて作動するようになっている。
【0030】
また、撮像カメラ7は、ステージ5上にカセットKが載置されると、図示しない光源からの照明光によって照明された包埋ブロックBを撮像するようになっている。この際、照明光の種類(例えば、落射照明光や拡散照明光)によって、包埋ブロックBの表面状態や内部状態を撮像できるようになっている。なお、撮像された撮像画像は、制御部15に送られて記録されると共に、制御部15に接続されたモニタ15aに表示される。
【0031】
(切断刃)
次に、切断刃8について、説明する。図5は、図3に示す自動薄切装置で用いられる切断刃の上面図であり、図6は図18に示す切断刃の側面図である。
図5及び図6に示すように、切断刃8は、一端側が刃先8aとされた長尺な磁性体の刃である。また、切断刃8の刀身には、楕円状に形成された位置決め用の貫通孔8bが間隔を開けて2つ形成されている。なお、本実施形態では、刃先8aが両刃となっている場合を例にしている。片刀でも構わない。
切断刃8のサイズの一例としては、長さLが約80mm、幅Wが約8mm、厚さTが約0.25mmである。
【0032】
図7は図3に示す自動薄切装置を構成する収納ケースの側面図であり、図8は上面図、図9は正面図であり、図10は収納ケースの装着状態を示す図である。
このように構成された切断刃8は、図7から図9に示す収納ケース9内に多段に積層された状態で複数枚収納されている。
この収納ケース9は、ケース本体50と、ケース本体50から切断刃8を1枚だけ取り出すためのレバー部51と、で主に構成されている。ケース本体50は、略直方体状に形成されており、上面には長手方向に沿って長溝50aが形成されている。また、内部に収納された切断刃8は、ケース本体50の底部に設けられた図示しない付勢手段により上面側に常に付勢されている。ケース本体50の一方の側面には、長手方向に沿ってガイド溝50bが対向した状態で形成されている。更に、ケース本体50の側面には、切断刃8が通過する図示しない開口部が形成されており、ケース本体50に収納されている切断刃8のうち1番上方に位置する切断刃8がこの開口部を通って外側に搬出されるようになっている。
【0033】
レバー部51は、断面略コ形状に形成されており、爪部51aが一対のガイド溝50bに嵌った状態でケース本体50の上面に被さっている。そして、レバー部51は、爪部51aがガイド溝50bにガイドされた状態でケース本体50の長手方向に移動自在とされている。また、レバー部51には、ケース本体50の上面に形成された長溝50a内に入り込む突起部51bが形成されている。この突起部51bは、ケース本体50に収納された複数の切断刃8のうち1番上方に位置する切断刃8にのみに接触するように長さが調整されている。これにより、レバー部51を移動させることで、1番上方に位置する切断刃8のみを押しだして、ケース本体50に形成された開口部からケース本体50の外側に搬出することが可能とされている。
【0034】
このように構成された収納ケース9は、図4及び図10に示すように、水平面に対して若干傾くすくい角θ(例えば、27°前後)が付いた状態で、装置ケース14の上部空間E1内に配置されている。
【0035】
(ホルダ)
次に、ホルダ10について説明する。図11は、ホルダの斜視図であり、図12は断面図である。
図4に示すように、ホルダ10は、装置ケース14の上部空間E1内にてステージ5の近傍に配置されている。この際、ホルダ10は、収納ケース9と同様にすくい角θが付いた状態で斜めに配置されている。
具体的には、ホルダ10は、図11及び図12に示すように、刃先8aが外側に露出しながら切断刃8が載置される載置プレート60と、載置された切断刃8を載置プレート60に押さえ付けてクランプ固定する押さえプレート61と、で主に構成されている。
【0036】
載置プレート60は、平面視長方形状に形成されており、切断刃8が載置される載置面60aが長手方向に沿って先端側に形成されている。また、載置プレート60には、載置面60aに隣り合うように載置面60aに沿ってシート板62が固定されている。そして、載置面60a側に向いたシート板62の端面には、間隔を開けて複数の磁石(吸着手段)63が埋め込まれて固定されている。
この磁石63は、載置面60aに載置された切断刃8の基端側(刃先8aとは逆側)を磁力により吸着して、切断刃8の姿勢を保持している。そのため、切断刃8は、すくい角θによってホルダ10が斜めになっていたとしても、重力でずれ落ちることなく載置プレート60に載置されるようになっている。
【0037】
押さえプレート61は、載置プレート60に支持されているシャフト64に回転自在に連結された状態で、載置面60aの全体を覆うように配置されている。この押さえプレート61は、制御部15の指示によって押し出されるロッド65aによって、基端側が上方に押されるようになっている。すると、押さえプレート61はシャフト64を中心に回転するので、先端側が載置プレート60に向けて押し下げられる。これにより、切断刃8を載置プレート60に押さえ付けて、クランプ固定することが可能とされている。
【0038】
また、押さえプレート61は、図示しないコイルバネによって基端側が載置プレート60側に付勢されている。そのため、ロッド65aを引き込んだ場合には、バネ力によって押さえプレート61が逆回転し、先端側が持ち上がるようになる。これにより、切断刃8の押さえ付けが解除されるようになっている。
なお、ロッド65aは、載置プレート60の基端側を支持する支持体66に対して接近離間するスライド部65に連結されており、スライド部65の移動に伴って可動するようになっている。
【0039】
図13はホルダを構成する載置プレートに形成された凹部を示す図であり、図14は押さえプレートに形成された突出ピンを示す図である。
ところで、載置プレート60の載置面60aには、図13に示すように、間隔を開けて載置プレート60を貫通する逃げ孔68が3つ形成されている。なお、本実施形態では、逃げ孔68を貫通孔として説明するが、後述する突出ピン60が入り込んで挿入可能とされる程度に十分深い凹部であっても構わない。
この際、隣り合う逃げ孔68の中心間距離は、切断刃8の貫通孔8bの中心間距離に一致している。一方、押さえプレート61の先端側には、図14に示すように、載置プレート60側に突出して逃げ孔68に入り込む3つの突出ピン69が、逃げ孔68に対向するように設けられている。従って、突出ピン69は、載置プレート60に干渉しないように設計されている。なお、これら突出ピン69は、切断刃8の貫通孔8bを貫通可能なサイズとされている。
【0040】
図15はホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、予め決められた所定位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図であり、図16は図15のC−C図である。また、図17はホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、誤った位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
上述したように、突出ピン69が設けられているので、制御部15は、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを検出するようになっている。
つまり、搬送機構11によって、切断刃8が予め決められた位置に、予め決められた姿勢で、確実に1枚だけ搬送されてきた場合には、図15及び図16に示すように、突出ピン69が貫通孔8bを挿通した後、逃げ孔68に挿入される。従って、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度が一定角度になった状態で、切断刃8をクランプ固定することができる。
ところが、切断刃8が搬送されてきた際に、位置不良や姿勢不良等となっている場合には、貫通孔8bが逃げ孔68上からずれてしまうので、図17に示すように、突出ピン69が切断刃8の刀身に接触して干渉してしまう。そのため、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度が上記角度とは異なる角度になる。つまり、押さえプレート61と載置プレート60との間に隙間が開いてしまう。
【0041】
また、何らかの理由により切断刃8が搬送されてこなかった場合や、2枚同時に搬送されてきた場合等には、予め決められた位置に、予め決められた姿勢でいくら搬送されてきたとしても、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ角度がやはり上記角度とは異なってしまう。
このように、制御部15は、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけ押さえプレート61によってクランプ固定されているか否かを容易且つ確実に検出することができるようになっている。なお、制御部15は、ロッド65aのストローク量で押さえプレート61の押さえ付け角度をモニタしている。
【0042】
上述した制御部15、逃げ孔68及び突出ピン69は、上記検出を行う検出機構70として機能する。このように検出機構70を備えているので、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことが可能とされている。
なお、本実施形態では、貫通孔8bが2つ形成されているのに対して、逃げ孔68及び突出ピン69が3つ形成されているので、切断刃8を2つの位置でクランプ固定することが可能である。
【0043】
このように構成されたホルダ10は、図3及び図4に示すように、移動機構71によってステージ5上を往復移動するように設計されている。これにより、クランプ固定した切断刃8によって、ステージ5上に載置された包埋ブロックBを薄切することが可能とされている。この際、ホルダ10は、所定の引き角が付いた状態で包埋ブロックBを薄切するように設計されている。
なお、上述したように切断刃8を2つの位置でクランプ固定が可能であるので、1枚の切断刃8であっても、2箇所のポイントを利用して薄切を行える。そのため、切断刃8を幅広く有効に利用することが可能とされている。
【0044】
なお、本実施形態では、ステージ5に対してホルダ10側を移動させるように移動機構71を構成したが、これとは逆にステージ5側を移動させても構わないし、ホルダ10側及びステージ5側を共に移動させるように構成しても構わない。
いずれにしても、包埋ブロックBとホルダ10とを相対的に移動させて、切断刃8によって薄切を行うことができれば移動機構71は、どのように設計しても構わない。
【0045】
(搬送機構)
次に、搬送機構11について、説明する。
図4に示すように、搬送機構11は、装置ケース14の上部空間E1内において、収納ケース9とホルダ10との間に配置されている。この搬送機構11は、収納ケース9から切断刃8を1枚取り出してホルダ10の載置プレート60にスライド移動により搬送させると共に、薄切が所定回数終了した後、使用した切断刃8をスライド移動によりホルダ10から押し出して交換させる役割を果している。
【0046】
図18は搬送機構の斜視図であり、図19は搬送路の断面図であって、図18の断面矢視D−D図である。
具体的には、搬送機構11は、図18に示すように、収納ケース9から取り出された切断刃8をホルダ10まで搬送するための搬送路80と、収納ケース9のレバー部51を移動させて切断刃8を搬送路80側にスライド移動させる第1の搬送部81と、搬送路80に移動させられた切断刃8をホルダ10の近傍までスライド移動させる第2の搬送部82と、ホルダ10の近傍まで移動してきた切断刃8をホルダ10側に完全にスライド移動させると共に、薄切終了後に、使用した切断刃8をホルダ10から押し出す第3の搬送部83と、で主に構成されている。
【0047】
搬送路80は、図18及び図19に示すように、下部プレート90と、下部プレート90に接合された上部プレート91とで、主に構成されている。下部プレート90は、平面視長方形状に形成されており、切断刃8が搬送される搬送面90aが長手方向に沿って先端側に形成されている。切断刃8は、刃先8a及び貫通孔8bが外側に露出した状態で搬送面90a上を搬送させられるようになっている。
なお、この搬送面90aは、収納ケース9及びホルダ10と同様にすくい角θが付いて斜めになっていると共に、収納ケース9の開口部及びホルダ10の載置面60aに対して面一な高さとなるように高さ調整されている。
【0048】
また、下部プレート90には、搬送面90aに隣り合うように搬送面90aに沿ってシート板92が固定されている。そして、搬送面90a側に向いたシート板92の端面には、間隔を開けて複数の磁石93が埋め込まれて固定されている。この磁石93は、搬送される切断刃8の基端側(刃先8aとは逆側)を磁力により吸着して、切断刃8の姿勢を保持している。そのため、切断刃8は、すくい角θによって斜めになっていたとしても、重力でずれ落ちることなく搬送されるようになっている。
上部プレート91は、切断刃8の厚み以上の隙間を開けた状態で、搬送面90aの上方を覆うように下部プレート90に接合されている。
【0049】
第1の搬送部81は、図18に示すように、移動プレート100に固定されたLアングル101と、Lアングル101に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド102と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド102に固定されたZ軸プレート103と、収納ケース9のレバー部51に嵌合可能な嵌合爪104aを先端に有し、Z軸プレート103の下部に固定された搬送アーム104と、で主に構成されている。
【0050】
移動プレート100は、基礎プレート105上に移動可能に支持されており、収納ケース9やホルダ10の長手方向に移動可能とされている。嵌合爪104aは、Z軸プレート103がZ軸方向に下降したときに、収納ケース9のレバー部51に嵌合してレバー部51を挟持するように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、レバー部51を動かして収納ケース9内から切断刃8を1枚取り出し、搬送路80側にスライド移動させることが可能とされている。
なお、通常、この第1の搬送部81は、収納ケース9の上方に待機している。
【0051】
第2の搬送部82は、移動プレート100に固定されたLアングル110と、Lアングル110に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド111と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド111に固定されたZ軸プレート112と、Z軸プレート112の下部に固定され、搬送路80に移動させられた切断刃8の貫通孔8bに挿入可能な突起部113aを有する搬送ブロック113と、で主に構成されている。
【0052】
図20は、図18に示す状態から切断刃を搬送路に取り出した状態を示す図である。
突起部113aは、Z軸プレート112がZ軸方向に下降したときに、図20に示すように、搬送路80の外側に露出している切断刃8の貫通孔8bに入り込むように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、切断刃8をホルダ10の近傍まで搬送路80に沿ってスライド移動させることが可能とされている。
なお、通常、この第2の搬送部82は、収納ケース9や搬送路80の上方に待機している。
【0053】
第3の搬送部83は、移動プレート100に固定されたLアングル120と、Lアングル120に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド121と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド121に固定されたZ軸プレート122と、Z軸プレート122の下部に固定され、ホルダ10の近傍まで移動させられた切断刃8を押し出す押し出し片123aを有する搬送ブロック123と、で主に構成されている。
【0054】
図21は、図20の状態から切断刃をホルダの近傍までスライド移動させた状態を示す図であり、図22は、図21に示す状態から切断刃をスライド移動させてホルダ側に搬送させた状態を示す図である。
押し出し片123aは、切断刃8と略同じ厚みに形成された薄いプレートであり、Z軸プレート122がZ軸方向に下降したときに、図21に示すように、搬送路80の外側に露出している切断刃8の後端に並ぶように設計されている。そのため、この状態で移動プレート100を移動させることで、切断刃8をホルダ10側に押し出すようにスライド移動させることが可能とされている。これにより、図22に示すように、切断刃8を搬送路80の搬送面90aからホルダ10の載置面60aに移送して、完全に切断刃8をホルダ10側に受け渡すことができる。この際、切断刃8の貫通孔8bが載置面60aに形成された逃げ孔68上に位置するように、切断刃8を受け渡すように調整されている。
なお、通常、この第3の搬送部83は、収納ケース9や搬送路80の上方に待機している。
【0055】
上述したように、第1の搬送部81と、第2の搬送部82と、第3の搬送部83と、移動プレート100とを複合的に作動させることで、切断刃8を収納ケース9から1枚取り出してホルダ10に滑らかに搬送することができるようになっている。なお、これら各構成品は、制御部15からの指示によって作動する。
ところで、制御部15は、包埋ブロックBの薄切が所定回数終了すると、第3の搬送部83と移動プレート100を作動させて、使用した切断刃8をホルダ10から押し出すようにスライド移動させるようになっている。
【0056】
(廃棄用ボトル)
次に、廃棄用ボトル12について、説明する。
図4に示すように、廃棄用ボトル12は、装置ケース14の下部空間E2内に配置されており、装置ケース14の出入扉14cを開けることで外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、外部からアクセスすることができ、手動で廃棄用ボトル12を回収することが可能とされている。
この廃棄用ボトル12は、例えば透明な樹脂材料によって形成されたボトルであり、内部に数百から千枚程度の切断刃8を一度に収容可能とされている。特に、透明であるので、作業者は収容状況を目視で確認可能である。
【0057】
(排出機構)
次に、排出機構13について、説明する。
図4に示すように、排出機構13は、ホルダ10から押し出された切断刃8を回収する回収機構130と、回収した切断刃8を廃棄用ボトル12に排出する排出シュータ140と、で主に構成されている。
なお、本実施形態では、重力による落下を利用して切断刃8を排出する排出シュータ140で案内機構を構成した場合を例に挙げて説明する。
【0058】
図23は、図22に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダから押し出した状態を示す図である。
回収機構130は、装置ケース14の上部空間E1内にてホルダ10に隣接配置されており、回収した切断刃8を排出シュータ140の開口部140aに投入する役割を果たしている。回収機構130は、図23に示すように、ホルダ10の長手方向に延びたガイド131と、ガイド131に沿って移動可能な移動プレート132と、移動プレート132に固定されたLアングル133と、Lアングル133に固定され、Z軸方向に延びたZ軸ガイド133と、Z軸方向に移動可能にZ軸ガイド133に固定されたZ軸プレート134と、Z軸プレート134の下部に固定された搬送ブロック135と、で主に構成されている。
【0059】
搬送ブロック135は、ホルダ10から押し出された切断刃8の貫通孔8bに挿入可能な突起部135aと、切断刃8の刀身を磁力によって吸着する磁性体135bとを有している。
突起部135aは、Z軸プレート134がZ軸方向に下降したときに、ホルダ10の外側に露出している切断刃8の貫通孔8bに入り込むように設計されている。そして、これと同時に磁性体135bが、切断刃8の刀身を吸着して切断刃8を保持するようになっている。そのため、この状態で移動プレート132を移動させることで、切断刃8をホルダ10から完全に抜きとって回収できるようになっている。また、回収された切断刃8は、排出シュータ140の一端側に設けられた開口部140aの真上まで移動させられる。
【0060】
図24は、図23に示す状態から、切断刃を回収して排出シュータの開口部に叩き落としている状態を示す図である。
ところで、Z軸プレート134には、非磁性体の爪部136が突起部135aと磁性体135bとの間に位置するように設けられている。この爪部136は、突起部135a及び磁性体135bがZ軸プレート134に連られて移動するのとは異なり、固定された部材である。そのため、突起部135a及び磁性体135bを上昇させると、相対的に爪部136があたかも下降した形になる。従って、排出シュータ140の開口部140aの真上まで移動させた切断刃8を、図24に示すように排出シュータ140に叩き落とすことが可能とされている。
【0061】
一方、排出シュータ140は、装置ケース14の上部空間E1から下部空間E2を貫くように配置されている。この際、装置ケース14の後面側から前面側に向かって傾斜した状態で配置されている。また、切断刃8が投入される開口部140aが設けられた一端側が回収機構130の近傍に位置し、他端側が廃棄用ボトル12の真上に位置している。
そのため、投入された切断刃8を重力による落下により他端側まで案内した後、廃棄用ボトル12に排出する役割を果たしている。よって、回収機構130で叩き落された切断刃8は、図4に示すように、排出シュータ140を滑り落ちていき、廃棄用ボトル12まで案内された後、排出される。これにより、使用済みの切断刃8を廃棄用ボトル12で回収できるようになっている。これにより、使用済みの切断刃8を廃棄用ボトル12で回収することが可能とされている。
【0062】
ところで、開口部140aは他端側に向かうにつれて漸次窄まる漏斗状に形成されており、切断刃8の長手方向が重力方向を向くように姿勢を規制している。そのため、長尺な切断刃8はほぼ縦向きで排出シュータ140を滑り落ちていき、途中で引っ掛かって詰まることなく他端側まで案内されるようになっている。
【0063】
(カセットマガジン)
ここで、カセットマガジン2(以下、マガジン2という)について、説明する。図25はマガジンの斜視図であり、図26は図25に示すマガジンを矢印A方向から見た側面図であり、図27は図25に示すマガジンを矢印B方向から見た背面図である。
図25から図27に示すように、マガジン2は、全体として縦長の直方体状に形成された収納ケースであり、包埋ブロックBを固定したまま、複数のカセットKを高さ方向に並べた状態で収納できるように設計されている。詳細には、このマガジン2は、正面が開口した箱型のマガジン本体20と、マガジン本体20に固定された開閉扉21と、で主に構成されている。
【0064】
図28はマガジンの一部拡大図であり、図29は図28に示すマガジンを側方から見た図である。
図28及び図29に示すように、マガジン本体20の2つの側面の内側には、カセットKをガイドするガイド溝20aが正面側から背面側に向かって左右で対向するように形成されている。これにより、カセットKを正面側から差し込むように挿入して、マガジン本体20内に収納可能とされている。しかも、このガイド溝20aは、高さ方向に一定の間隔を開けて複数形成されている。これにより、上述したように複数のカセットKを高さ方向に並べた状態で収納可能とされている。
なお、マガジン本体20は、カセットK及び包埋ブロックBが若干正面側に飛び出るように、カセットKに比べて奥行が短くなるようにサイズ設計されている。
【0065】
また、マガジン本体20の2つの側面のうち、一方の側面の外側には側面を厚さ方向に所定深さだけ凹み形成した凹部20c(図25参照)が形成されている。この凹部20cは、マガジン本体20に挿入されるカセットKやカセットKに固定された包埋ブロックBの種類(カセットKに固定された包埋ブロックBの大きさ等)を後述する識別センサによって識別させるための識別マークであり、側面の幅方向(カセットKの挿入方向)一端側の端面から幅方向に沿って形成された略矩形状のものである。具体的には、凹部20cは、側面の幅方向における一端側の端面から他端側に向かって側面の中途部まで形成されている。なお、本実施形態では、識別マークがマガジン本体20の側面を所定深さだけ凹み形成した凹部20cとして説明するが、マガジン本体20に挿入されるカセットKの種類に応じて凹部20cの大きさ(深さ)が異なったり、凹部20が無かったりすることで、マガジン本体20に挿入されたカセットK等の種類を識別している。
【0066】
また、マガジン本体20の側面の内側には、内方に向かって突出したピン(誤挿入防止部)22が複数形成されている。なお、図を見易くするために、各図においてピン22を適宜実線で図示している。このピン22は、カセットKを予め決められた向きで収納させるための誤挿入防止用のピンであって、各ガイド溝20aの背面側近くにそれぞれ形成されている。具体的には、包埋ブロックBを上向きにした状態で傾斜面K1側からカセットKを挿入したときに、傾斜面K1とマガジン本体20の背面との間に確保された隙間に収まるようにピン22が形成されている。そのため、図29に示す向きでカセットKを挿入した場合には、ピン22がカセットKに接触することがない。
【0067】
図30はカセットを誤った向きで差し込んだときのマガジンの側面図であり、図31は斜視図である。
これに対して、図30に示すように、逆向き(傾斜面K1が正面側に向いた状態)でカセットKを挿入してしまった場合には、カセットKの平坦面K2とピン22とが接触してしまい、それ以上のカセットKの挿入が規制される。すなわち、途中でピン22がカセットKに接触してしまい、カセットKを奥まで完全に挿入することができないようになっている。そのため、カセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。この場合には、図31に示すように、開閉扉21がカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができないようになっている。そのため、カセットKの誤挿入を容易且つ明確に見分けることが可能とされている。
【0068】
図32はカセットを上下逆向きで且つ傾斜面が背面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図であり、図33はカセットを上下逆向きで且つ傾斜面が正面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
同様に、包埋ブロックBを下向きにした状態で(上下逆向き)カセットKを挿入してしまった場合には、傾斜面K1が背面側或いは正面側のどちらを向いていても、図32及び図33に示すように、やはり途中でピン22がカセットKに接触してしまい、カセットKを奥まで完全に挿入することができないようになっている。そのため、やはりカセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。
この場合には、同様に開閉扉21がカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができないようになっている。
【0069】
従って、本実施形態のマガジン本体20には、図28及び図29に示す向きでカセットKを挿入しないかぎり開閉扉21が閉まらない設計となっている。つまり、包埋ブロックBが上向きで、且つ、傾斜面K1を背面側に向けた状態で複数のカセットKを全て挿入しない限り、開閉扉21を閉めることができないように構成されている。
【0070】
マガジン本体20の背面には、図27に示すように長穴の開口部20bが複数形成されており、収納されている複数のカセットKを背面側からでも視認できるように設計されている。
【0071】
マガジン本体20の一方の側面の外側には、図26に示すように長手方向に沿って回動軸23が設けられている。そして、この回動軸23にヒンジ部24を介して上記開閉扉21が固定されている。開閉扉21は、図25に示すようにマガジン本体20と同じ長さに設計されるとともに、幅方向一端側にはマガジン保持部21dが形成されている。このマガジン保持部21dは、開閉扉21の厚さ方向に延出する第1規制部28と、開閉扉21の幅方向に延出する第2規制部29とで平面視L字状に形成されたものである。そして、第1規制部28と第2規制部29との間において、開閉扉21が閉状態になったときに、図28及び図29に示すようにマガジン本体20の正面側から若干突出するカセットKの平坦面K2側の一部を覆って脱落を防止している。すなわち、第1規制部28が、カセットKの幅方向に沿う移動を規制する一方で、第2規制部29がカセットKの長手方向(挿入方向)に沿う移動を規制するようになっている。これにより、開閉扉21を開けない限り、収納したカセットKがマガジン本体20から抜け落ちないようになっている。
また、第2規制部29には、開閉扉21の正面(カセットKの挿入方向に沿う前面)に対して傾斜した傾斜部29aが形成されており、カセットKの挿入時において、万が一カセットKの傾斜面K1が開閉扉21に接触してしまった場合でも、カセットKが傾斜部29aを摺接しながらスムーズに挿入されるようになっている。
【0072】
ところで、開閉扉21を固定しているヒンジ部24の内部には、図示しない捩りバネが内蔵されており、開閉扉21が閉まっているときに、この閉状態を維持するように付勢している。これにより、マガジン2を持ち運びしている際に、不意に開閉扉21が開いてしまうことを規制している。
【0073】
図34は図25の状態からマガジンの開閉扉を開けた状態を示す図であり、図35は図34に示すマガジンを背面側から見た斜視図である。
更に、マガジン本体20の側面の外側には、図34及び図35に示すように、ヒンジ部24の下面に摺接するブロック25が回動軸23に隣接して固定されている。このブロック25の上面には、嵌合溝25aが凹み形成されている。そして、ヒンジ部24の内部には、図示しないコイルバネで付勢されたボールプランジャ(ストッパ)26が内蔵されている。このボールプランジャ26は、開閉扉21を閉状態から一定角度以上開けたときに、嵌合溝25aに嵌合して開閉扉21が保持されるようになっている。この際、嵌合したときの力が捩りバネの付勢力に打ち勝つように、コイルバネの付勢力が調整されている。これにより、カセットKをマガジン2に収納する際に、開閉扉21を開けたままの状態で作業できるように設計されている。
【0074】
また、開閉扉21の略中央部分には、図25に示すように、開閉扉21の厚さ方向に凹み形成された薄板部21aが形成されるとともに、開閉扉21の幅方向の一端側が切り欠かれた切欠き部21bが形成されている。そして、この薄板部21aには、扉開閉用のピン27が外方に突出した状態で設けられている。よって、このピン27を利用して開閉扉21を開閉することも可能とされている。
【0075】
図36は、図25に示すマガジンをストッカに装着した状態を示す斜視図である。
このように構成されたマガジン2は、図36に示すように、ストッカ30に装着可能とされている。このストッカ30は、上述したように装置ケース14の出入扉14bを開けることで外部に露出するようになっている。これにより、作業者は、手動でマガジン2をストッカ30に差し込んで装着したり、ストッカ30から抜き取ったりすることが可能とされている。
【0076】
ストッカ30は、枠型に形成されており、マガジン2を2つ横に並べた状態で保持できるように設計されている。ストッカ30の上枠30aには、長手方向一端側及び中央部分からそれぞれ下方向けて延出する延出部34が設けられている。この延出部34は、ストッカ30の横枠30bと平行に延出する平板であり、その一方の面には図示しない識別センサ(不図示)が設けられている。この識別センサは、上述したマガジン2の側面に形成された識別マーク(本実施形態では、凹部20c)と対向するように配置され、識別マークの有無または種類(凹部20cの深さ等)を検出するものである。具体的には、識別センサはマガジン2の側面に向けて検出光を照射するとともに、照射した検出光がマガジン2で反射した反射光を検出することで、識別マークの有無や種類を検出するようになっている。これにより、ストッカ30に装着されたマガジン2の種類を装置(自動薄切装置1)側で検出することができる。したがって、マガジン2に挿入されたカセットKの種類を、人為的操作を必要とせずに検出することができるため、装置の自動化に寄与することができる。なお、図36では、マガジン2を1つだけ装着した場合を図示している。
【0077】
図37は、図36に示すストッカの一部拡大図である。
また、ストッカ30は、マガジン2が装着されたか否かを検出するマガジン検出センサ31と、装着されたマガジン2の開閉扉21を開閉する開閉機構32と、開閉扉21の開閉状態を検出する開閉検出センサ33と、を備えている。
マガジン検出センサ31は、図37に示すように、ストッカ30の上部に固定されており、下方に向けて検出光Lを照射する機能と、検出光Lがマガジン2で反射した反射光を受光する機能とを有している。そして、反射光を受光した場合には、マガジン2の装着を検出したことを知らせる検出信号を制御部15に出力する。これにより、制御部15は、マガジン検出センサ31から送られてきた検出信号に基づいて、マガジン2が装着されたか否かを把握できるようになっている。
【0078】
同様に、開閉検出センサ33もストッカ30の上部に固定されており、閉状態の開閉扉21に向けて検出光Lを照射する機能と、検出光Lが閉状態の開閉扉21で反射した反射光を受光する機能とを有している。そして、反射光を受光した場合には、開閉扉21が閉状態であることを知らせる検出信号を制御部15に出力する。これにより、制御部15は、開閉検出センサ33から送られてきた検出信号に基づいて、開閉扉21の開閉状態を把握できるようになっている。つまり、マガジン2が装着されたうえで、開閉検出センサ33から検出信号が送られてきた場合には、開閉扉21が閉まっていると判断し、検出信号が送られてこない場合には、開閉扉21が開いていると判断する。
【0079】
開閉機構32は、図36に示すように、開閉扉21に設けられたピン27に引っ掛け可能な鉤型の爪部32aと、爪部32aを可動させて開閉扉21を開閉させるシリンダ機構32bと、で主に構成されている。シリンダ機構32bは、制御部15からの指示を受けて作動するようになっている。
【0080】
ここで、マガジン2の開閉扉21が開いている状態では、すなわち上述したカセットKの誤挿入がある場合に開閉扉21が閉じていない状態では、開閉扉21がストッカ30の下枠30cに形成された係合部(不図示)や開閉機構32の爪部32aに接触してマガジン2がストッカ30内に挿入できないようになっている。そのため、マガジン2がスムーズに挿入されない場合は、作業者はマガジン2に挿入されたカセットKに誤挿入があるとこの時点でも判断することができる。すなわち、マガジン2は開閉扉21が閉じている状態でのみストッカ30内に装着可能とされており、マガジン2の装着直後にあっては、マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33からともに、制御部15に向けて検出信号が送られるようになっている。
【0081】
一方、マガジン2のストッカ30への装着後、マガジン2の開閉扉21が開いている状態では、開閉扉21の背面側がストッカ30の係合部(不図示)に引っ掛かって、ストッカ30からマガジン2を取り外すことができないように設計されている。これにより、マガジン2の装着時には係合部と開閉扉21とが引っ掛かって、ストッカ30に対するマガジン2の抜け止め及び位置決めを行うことができる。一方、マガジン2をストッカ30から取り外す際には、常にマガジン2の開閉扉21は閉状態となるため、マガジン2の取り外し作業時にマガジン2からカセットKが落下することを防止することができる。
【0082】
ここで、マガジン2が前後逆向き(マガジン2を背面側からストッカ30に装着する場合)や、上下逆向き(マガジン2の開閉扉21を、延出部34側を向けた状態でストッカ30に装着する場合)でストッカ30に装着される場合には、開閉扉21が係合部(不図示)や開閉機構32、ストッカ30の横枠30b等に干渉してマガジン2が完全には装着されず、途中で引っ掛かった状態となる(いわゆる、誤装着)。この状態で作業者は、マガジン2の誤装着を判断することができる。
【0083】
また、本実施形態では、上述したマガジン検出センサ31と開閉検出センサ33とで、ストッカ30に対するマガジン2の誤装着を検出できるように構成されている。具体的には、上述した誤装着を気付かずに自動薄切装置1を作動させようとした場合であっても、装置作動時にマガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33から制御部15へ検出信号が出力されないため、この時点で制御部15からは警告表示等の異常信号が出力される。これにより、作業者はこの時点でもマガジン2の誤装着を判断することができる。
【0084】
ところで、例えばマガジン2が前後逆向きで装着された場合等には、マガジン2が誤装着であるにも関らず開閉扉21がストッカ30に干渉せず、マガジン2がマガジン検出センサ31の検出位置まで挿入されてしまう場合がある。そして、万が一マガジン検出センサ31によってマガジン2の装着が検出されてしまう場合がある。このような場合には、開閉扉21は開閉機構32の反対側を向いているため、開閉検出センサ33では開閉扉21で反射するはずの反射光を受光できず、開閉検出センサ33からの検出信号が制御部15に出力されない。
【0085】
ここで、開閉扉21が開いている状態では、開閉扉21がストッカ30の係合部(不図示)や開閉機構32の爪部32aに接触してマガジン2はストッカ30に装着されないようになっているため、上述したようにマガジン2が所定の向きで装着された場合には、開閉扉21は必ず閉まっている状態にある。すなわち、マガジン2が所定の向きで装着された場合には、マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33からともに、制御部15に向けて検出信号が出力されるようになっている。
これに対して、マガジン検出センサ31によりマガジン2が装着されたことを検出した場合であって、開閉検出センサ33からの検出信号が制御部15に出力されない場合には、制御部15は開閉検出センサ33の検出光L上に開閉扉21が存在しない、すなわちマガジン2が誤装着されていると判断するようになっている。この状態で自動薄切装置1を作動させようとした場合でも、この時点で制御部15から警告表示等の異常信号が出力される。これにより、作業者はマガジン2の誤装着を判断することができる。
【0086】
このように、本実施形態ではマガジン2が装着されたか否かを検出するマガジン検出センサ31と、開閉扉21の開閉状態を検出する開閉検出センサ33とによりマガジン2の誤装着も検出できるようになっている。すなわち、マガジン検出センサ31と開閉検出センサ33とにより、本実施形態の誤装着検出部が構成されている。なお、マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33以外に別途、マガジン2の誤装着を検出するための誤装着検出センサ(誤装着検出部)を設ける構成にしてもよい。
【0087】
(自動薄切装置を用いた薄切方法)
次に、このように構成された自動薄切装置1を利用して、包埋ブロックBを薄切する場合について説明する。
はじめに、事前準備として、図28及び図29に示すように、包埋ブロックBが固定されたカセットKをマガジン2に複数収納する作業を行う。まず、作業者は、手元にカセットKを複数用意した後、マガジン2の開閉扉21を開ける。すると、図34及び図35に示すように、開閉扉21に固定されたヒンジ部24のボールプランジャ26が、ブロック25の嵌合溝25aに嵌まり込むので、最初にカセットKをマガジン本体20に挿し込む際および最後にカセットKをマガジン本体20から引き出す際に、開閉扉21を開けたままの状態に維持することができる。よって、作業者は、開閉扉21を気にせずにカセットKをマガジン本体20に次々と収納することができるため、作業効率を向上させることができる。
【0088】
この際、作業者は、図28及び図29に示すように、包埋ブロックBを上向きにした状態で傾斜面K1側からカセットKを差し込んで収納する。仮に、逆向き或いは包埋ブロックBを下向きにした状態でカセットKを差し込んでしまったとしても、これらの場合にはカセットKを差し込む際に、マガジン本体20の内部に設けられたピン22がカセットKに接触してしまう。そのため、カセットKが、マガジン本体20の正面側に過大に突出してしまう。よって、作業者は、カセットKを誤った向きで差し込んでしまったことを認識することができる。
【0089】
また、万が一、差し込んでいる段階でカセットKの向きの誤りに気づかなかったとしても、開閉扉21を最後に閉める段階で気づくことができる。つまり、誤った向きに差し込まれたカセットKがある場合には、図31に示すように、開閉扉21が途中でカセットKに干渉してしまい、開閉扉21を閉じることができない。そのため、この時点で作業者はカセットKを誤った向きで差し込んでしまったことを認識することができる。
【0090】
そして、複数のカセットKをマガジン本体20内に収納した後、図25に示すように、開閉扉21を閉めてカセットKの脱落を防止する。この際、開閉扉21は、捩りバネによって閉状態が維持されるので、作業者が再度開けない限り、不意に開いてしまうことがない。
【0091】
そして、作業者は、装置ケース14の出入扉14bを開けた後、図4に示すように、複数のカセットKを収納したマガジン2の開閉扉21を閉じた状態でストッカ30内に差し込んで装着する。この際、開閉扉21側からマガジン2を差し込む。ここで、上述したようにカセットKが誤挿入されていた場合には、マガジン2の開閉扉21にストッカ30の係合部や開閉機構32の爪部32aが接触してマガジン2が装着されないように構成されている。そのため、マガジン2がスムーズに挿入されない場合は、作業者はマガジン2に挿入されたカセットKに誤挿入があるとこの時点でも判断することができる。
【0092】
そして、マガジン2をストッカ30に装着する際、マガジン2を前後逆向き、すなわちマガジン2を背面側から装着した場合や上下逆向きに装着した場合には、開閉扉21が係合部(不図示)や開閉機構32、ストッカ30の横枠30b等に干渉してマガジン2が完全には装着されず、途中で引っ掛かった状態となる。この状態で作業者は、マガジン2の誤装着を判断することができる。また、この状態で自動薄切装置1を作動させようとした場合であっても、制御部15から警告表示等の異常信号が出力されることで、作業者はこの時点でもマガジン2の誤装着を判断することができる。
また、マガジン検出センサ31によりマガジン2が装着されたことを検出したにも関わらず、開閉検出センサ33から制御部15に開閉扉21の検出信号が出力されていない場合も、マガジン2が誤装着されていると判断するようになっている。これにより、作業者はマガジン2がストッカ30に対して所定の向きで装着されたことを確実に判断することができる。
【0093】
そして、マガジン2が所定の向きでストッカ30に装着されたことを確認した後、開けていた出入扉14bcを閉める。
次に、廃棄用ボトル12がセットされていること、収納ケース9内に切断刃8がセットされていることを確認して、事前準備が終了する。
【0094】
次に、作業者は、制御部15を介して装置ケース14内の各構成品の作動を開始させる。すると、搬送機構11が収納ケース9内から切断刃8を1枚取り出した後、ホルダ10の載置プレート60に向けてスライド移動により搬送し、載置プレート60上に切断刃8を載置する作業を行う。
【0095】
詳細には、まず、図18に示すように、第1の搬送部81のZ軸プレート103を下降させて、搬送アーム104の嵌合爪104aをレバー部51に嵌合させる。続いて、移動プレート100を移動させて、第1の搬送部81全体を収納ケース9の長手方向に移動させる。これにより、収納ケース9のレバー部51を移動させることができ、収納ケース9の1番上方に位置している切断刃8を、開口部を介して押し出すことができる。
すると、押し出された切断刃8は、図20に示すように、刃先8a及び貫通孔8bが外側に露出した状態で、搬送路80にスライド移動する。この時点で、Z軸プレート103を上昇させて、嵌合爪104aをレバー部51から離間させて嵌合を解除する。そして、移動プレート100を元に位置に戻す。
【0096】
続いて、第2の搬送部82のZ軸プレート112を下降させて、突起部113aを切断刃8の貫通孔8bに差し込む。続いて、移動プレート100を移動させて、第2の搬送部82全体を搬送路80の長手方向に移動させる。これにより、図21に示すように、切断刃8をスライド移動させながらホルダ10の近傍まで移動させることができる。この時点で、Z軸プレート112を上昇させて、突起部113aを貫通孔8bから抜いて切断刃8との係わりを解除する。そして、移動プレート100を元に位置に戻す。
【0097】
続いて、第3の搬送部83のZ軸プレート122を下降させて、押し出し片123aを切断刃8の後端に並ぶように位置させる。続いて、移動プレート100を移動させて、第3の搬送部83全体を搬送路80の長手方向に移動させる。これにより、図22に示すように、切断刃8を押し出すようにスライド移動させて、搬送路80からホルダ10に受け渡すことができる。なお、ホルダ10の押さえプレート61は、この段階では先端側が浮いた状態となっているので、切断刃8をホルダ10側に搬送することができる。
【0098】
切断刃8をホルダ10側に搬送した後、移動プレート100を若干逆方向に移動させて押し出し片123aをホルダ10の外側に露出させる。そして、Z軸プレート122を上昇させて、押し出し片123aを元の位置に戻す。その後、移動プレート100を完全に元の位置に戻す。
一方、ホルダ10に搬送された切断刃8は、図12に示すように、刃先8aが外側に露出した状態で載置面60aに載置されている。この際、切断刃8は、基端側が磁石63によって吸着されているので、すくい角θによってホルダ10が斜めになっていても、重力の影響を受けてずれ落ちることなく姿勢が保持されて安定した状態となっている。
【0099】
切断刃8が載置面60aに載置されると、押さえプレート61が作動して切断刃8を載置プレート60に押さえ付ける。つまり、スライド部65に連結されているロッド65aを押し出して、押さえプレート61の基端側を上方に押し上げる。これにより、押さえプレート61がシャフト64を中心に回転するので、先端側が載置プレート60に向けて押し下げられる。従って、上述したように、切断刃8を載置プレート60に押さえ付けることができ、クランプ固定することができる。
【0100】
この際、検出機構70が、載置プレート60に対する押さえプレート61の押さえ付け角度に基づいて、載置プレート60の所定位置で切断刃8が1枚だけクランプ固定されているか否かを検出する。その結果、検出機構70が否と検出した場合、即ち、搬送されてきた切断刃8が何らかの理由(例えば、過度の押し出されや、磁石63の吸着不良による位置ずれ等)によって位置不良や姿勢不良等が生じている場合や、切断刃8そのものが搬送されてきていない場合や、切断刃8が2枚搬送されてきた場合等には、切断刃8のkyランプ不良と判断して以降の薄切を行わない。
従って、姿勢不良やがたつき等がない最適な状態で切断刃8が1枚だけクランプ固定されている場合のみ薄切を行うことができる。
【0101】
ところで、制御部15は、上述した工程と同時に、カセットKをステージ5上に載置させる作業を行わせている。この作業について説明する。
まず、ストッカ30にマガジン2が装着された段階で、図37に示すように、マガジン検出センサ31はマガジン2で反射した反射光により、マガジン2が装着されたことを認識し、制御部15に検出信号を出力する。すると、制御部15は、この検出信号を受けてマガジン2が装着されたことを把握する。また、開閉検出センサ33は、閉状態の開閉扉21で反射した反射光により、開閉扉21が閉まっていることを認識し、制御部15に検出信号を出力する。すると、制御部15は、この検出信号を受けてマガジン2の開閉扉21が閉まっていることを把握する。
【0102】
そこで、制御部15は、シリンダ機構32bを作動させて、図36に示すように爪部32aをマガジン2の開閉扉21に設けられたピン27に引っ掛けて、開閉扉21を開状態にさせる。すると、開閉検出センサ33は、反射光を受光しなくなるので、検出信号の出力を停止する。これにより、制御部15は、マガジン2の開閉扉21が開いたことを把握することができる。このように、各センサ(マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33)によりマガジン2がストッカ30に装着され、且つ開閉扉21が閉状態にあると検出された場合には、開閉機構32により開閉扉21を自動的に開くことができる。これにより、カセットKの誤挿入があった場合には開閉扉21が開かないので、誤挿入があったことをさらに確実に検知することができる。そして、開閉扉21を開けてからストッカ30にマガジン2を装着させる場合に比べて、ストッカ30への装着作業を容易に行うことができるとともに、ストッカ30への装着時にマガジン2からカセットKが落下することがない。
【0103】
なお、開閉扉21の略中央部分に切欠き部21bが形成されているため、開閉扉21の開状態時(ストッカ30への装着後)において、開閉機構32によりカセットKが干渉しない位置まで開閉扉21を開くことができるようになっている。また、開閉扉21を開くことで、ストッカ30に形成された係合部(不図示)や開閉機構32の爪部32aと開閉扉21とが引っ掛かって、ストッカ30に対するマガジン2の抜け止め及び位置決めを行うことができる。
【0104】
続いて、制御部15は、オートローダ4を作動させる。すると、オートローダ4は、図4に示すようにX軸スライダ4b及びY軸スライダ4cを適宜作動させながら、ハンド部4aを利用してマガジン2の正面側から若干突出したカセットKを両側から挟持して掴む。そして、この状態から、X軸スライダ4b及びY軸スライダ4cの移動動作とハンド部4aの回転動作とを適宜行わせて、掴んだカセットKをマガジン2取り出した後、載置台3上に載置させる。
【0105】
続いて、制御部15は、カセットローダ6を作動させる。すると、カセットローダ6は、固定プレート6cとY軸移動機構6dとを適宜作動させながら、ハンド部6aを利用して載置台3に置かれたカセットKを挟持して掴む。そして、この状態から、固定プレート6c及びY軸移動機構6dの移動動作とハンド部6aの回転動作とを適宜行わせて、カセットKを所望する向きでステージ5上に載置する。
【0106】
このようにして、カセットKをステージ5上に載置させる作業を、切断刃8の固定作業と平行して行う。そして、切断刃8のクランプ固定作業と、ステージ5上へのカセットKのセット作業とが終了すると、包埋ブロックBの薄切作業を開始する。
まず、ステージ5を高さ調整して、包埋ブロックBの上面を所望する高さ位置に調整する。そして、移動機構71がホルダ10を移動させることで、クランプ固定した切断刃8により包埋ブロックBを薄切する。これにより、包埋ブロックBを粗削りして面だしを行うことができる。
【0107】
ところで、薄切を行っている際、撮像カメラ7が包埋ブロックBを撮像する。この撮像画像は、モニタ15aに表示される。よって、作業者は、包埋ブロックBの表面状態や内部状態をモニタ15aに表示された撮像画像で確認することができる。そして、この撮像画像を参考にして、薄切の合間に、適宜ステージ5を傾斜させたり、回転させたりすることができる。その結果、包埋ブロックBの粗削りによって、最適な面を表面に露出させることができる。
なお、粗削り後、包埋ブロックBを本削りして薄切片Mを作製しても構わない。
【0108】
そして、薄切が所定回数終了すると、制御部15は押さえプレート61による切断刃8の押さえ付けを解除させる。つまり、ロッド65aを引き込んで、バネ力により押さえプレート61の基端側を載置プレート60側に移動させる。これにより、押さえプレート61がシャフト64を中心に逆回転するので、先端側が押し上がる。従って、押さえ付けが解除される。
【0109】
また、制御部15は、これと同時に搬送機構11を作動させて、使用した切断刃8をスライド移動によりホルダ10から押し出させる。つまり、第3の搬送部83のZ軸プレート122を再度下降させた後、移動プレート100を移動させる。これにより、図23に示すように、押し出し片123aを利用して切断刃8を押し出すようにスライド移動させることができ、切断刃8の一部をホルダ10の外側に突出させることができる。これにより、切断刃8の交換を行うことができる。
【0110】
なお、切断刃8がホルダ10から押し出されると、制御部15は、回収機構130を作動させる。すると、回収機構130は、Z軸プレート134を下降させて、ホルダ10の外側に突出している切断刃8の貫通孔8bに突起部135aを挿入させると同時に、切断刃8の刀身を磁性体135bで吸着させて切断刃8を保持させる。その後、移動プレート132を移動させて、切断刃8をホルダ10から完全に抜きとって回収すると共に、回収した切断刃8を排出シュータ140の開口部140aの真上に移動させる。
【0111】
続いて、この位置で、Z軸プレート134を上昇させて、突起部135a及び磁性体135bを上昇させる。これにより、相対的に爪部136があたかも下降した形になるので、図24に示すように、排出シュータ140の開口部140aに切断刃8を叩き落として投入することができる。叩き落された切断刃8は、図4に示すように、排出シュータ140を重力による落下を利用して滑り落ちていき、廃棄用ボトル12まで案内された後に排出される。これにより、使用済みの切断刃8は、廃棄用ボトル12に回収される。このように、本実施形態の自動薄切装置1によれば、薄切を所定回数行う毎に切断刃8の交換と回収とを自動的に行うことができる。従って、作業者の手を煩わせることなく切断刃8を交換でき、作業者にかかる負担を極力低減することができる。また、常に切れ味の良い切断刃8を使用して薄切を行うことができるので、高品質な薄切片Mの作製を実現することができる。また、各構成品が装置ケース14内に収容されているので、塵埃等の影響を受け難く、薄切を最適な環境下で行うことができる。この点においても、薄切片Mの高品質化に繋げることができる。
【0112】
その後、搬送機構11は、再度収納ケース9内から新たな切断刃8を1枚取り出して、ホルダ10に搬送する。そして、ホルダ10が、新たな切断刃8をクランプ固定して次の薄切に備える。一方、薄切が終了した後のカセットKは、カセットローダ6によってステージ5から載置台3に受け渡される。そして、オートローダ4によって、載置台3からマガジン2内に戻されて、再収納される。
このように、本実施形態の自動薄切装置1によれば、上述した工程を繰り返すことで、マガジン2内の全てのカセットKについて、包埋ブロックBの薄切を自動で行うことができる。
【0113】
特に、本実施形態の自動薄切装置1によれば、マガジン本体20に、その開口部を覆う開閉扉21が設けられているため、開閉扉21を開けない限り、カセットKがマガジン本体20から飛び出して脱落することがない。これにより、作業者は、マガジン2からのカセットKの落下に注意を払うことないため、安全に持ち運ぶことができ、また作業効率を向上させることもできる。また、開閉扉21は、捩りバネにより開口部20bを覆う方向に向けて付勢されているため、マガジン2を持ち運びしている際に、不意に開閉扉21が開いてしまうこと防止することができる。
【0114】
ここで、マガジン本体20内にカセットKの誤挿入を防止するためのピン22が設けられており、カセットKが所定の向きで挿入された場合には、傾斜面K1とマガジン本体20の背面との間に確保された隙間にピン22が収まるようになっている。
一方、カセットKが所定の向き以外の向きで挿入された場合には、カセットKの傾斜面K1や他端側の端面(平坦面K2)に当接して、それ以上のカセットKの開口部21b内への挿入が規制される。すなわち、マガジン本体20内にカセットKが完全に挿入できないようになっている。この場合、カセットKがマガジン本体20の開口部20bから過大に突出することになり、開閉扉21を閉じることができないため、作業者は、この時点でカセットKの誤挿入を容易且つ明確に見分けることができる。よって、カセットKの挿入時における作業者の人為的ミスを未然に防止して、マガジン本体20内に収納された複数のカセットKの向きを、確実に全て統一することができる。
【0115】
また、誤装着検出部(マガジン検出センサ31及び開閉検出センサ33)により、マガジン2の誤装着を検出することで、作業者はマガジン2をストッカ30に対して所定の向きで確実に装着することができる。
【0116】
このように、マガジン本体20内に収納される複数のカセットKの向きを、確実に全て統一した状態でマガジン2を自動薄切装置1のストッカ30に確実にセットすることができるため、装置内においてカセットKの取り出しや搬送等の作業をスムーズに行うことができ、装置の自動化にも上手く対応することができる。したがって、高品質な薄切片Mが自動で、且つ迅速に作製される自動薄切装置1を提供することができる。
【0117】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0118】
例えば、上記実施形態では、カセットKの誤挿入防止部として、マガジン本体20の内側にピン22を形成した場合について説明したが、これに限らずマガジン本体20に誤挿入防止部(例えば、段差や傾斜面等)を一体形成してもよい。また、これに伴い、カセットKの凹部として傾斜面K1を形成する構成に限らず、誤挿入防止部に収まるような凹部を適宜形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明に係る自動薄切装置で用いられる包埋ブロック及びカセットの斜視図である。
【図2】図1に示す包埋ブロックから薄切された薄切片がスライドガラス上に固定されて薄切片標本となった状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る自動薄切装置の一実施形態を示す簡略構成図である。
【図4】図3に示す自動薄切装置の構成を示す斜視図である。
【図5】図3に示す自動薄切装置で用いられる切断刃の上面図である。
【図6】図5に示す切断刃の側面図である。
【図7】図3に示す自動薄切装置を構成する収納ケースの側面図である。
【図8】図7に示す収納ケースの上面図である。
【図9】図7に示す収納ケースの正面図である。
【図10】図7に示す収納ケースの装着状態を示す図である。
【図11】図3に示す自動薄切装置を構成するホルダの斜視図である。
【図12】図11に示すホルダの断面図である。
【図13】図11に示すホルダを構成する載置プレートに形成された凹部を示す図である。
【図14】図11に示すホルダを構成する押さえプレートに形成された突出ピンを示す図である。
【図15】図11に示すホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、予め決められた所定位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
【図16】図15に示す断面矢視C−C図である。
【図17】図11に示すホルダによって切断刃を押さえ付けた状態を示す図であって、誤った位置に切断刃が位置しているときの状態を示す図である。
【図18】図3に示す自動薄切装置を構成する搬送機構の斜視図である。
【図19】図18に示す搬送機構を構成する搬送路の断面図であって、断面矢視D−D図である。
【図20】図18に示す状態から、切断刃を搬送路に取り出した状態を示す図である。
【図21】図20に示す状態から、切断刃をホルダの近傍までスライド移動させた状態を示す図である。
【図22】図21に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダ側に搬送させた状態を示す図である。
【図23】図22に示す状態から、切断刃をスライド移動させてホルダから押し出した状態を示す図である。
【図24】図23に示す状態から、切断刃を回収して排出シュータの開口部に叩き落としている状態を示す図である。
【図25】図4に示す自動薄切装置を構成するマガジンの斜視図である。
【図26】図25に示すマガジンを矢印A方向から見た側面図である。
【図27】図25に示すマガジンを矢印B方向から見た背面図である。
【図28】図25に示すマガジンの一部拡大図である。
【図29】図28に示すマガジンを側方から見た図である。
【図30】カセットを誤った向きで差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図31】図30に示すマガジンの斜視図である。
【図32】カセットを上下逆向きで且つ傾斜面が背面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図33】カセットを上下逆向きで且つ傾斜面が正面側に向いた方向で差し込んだときのマガジンの側面図である。
【図34】図25の状態からマガジンの開閉扉を開けた状態を示す図である。
【図35】図34に示すマガジンを背面側から見た斜視図である。
【図36】図25に示すマガジンをストッカに装着した状態を示す斜視図である。
【図37】図36に示すストッカの一部拡大図である。
【符号の説明】
【0120】
B…包埋ブロック
K…カセット(包埋カセット)
K1…傾斜面(凸部)
K2…平坦面(他端側の端面)
S…生体試料
1…自動薄切装置
2…マガジン(カセットマガジン)
8…切断刃
15…制御部
20…マガジン本体
20b…マガジン本体の開口部
21…開閉扉
22…ピン(誤挿入防止部)
26…ボールプランジャ(ストッパ)
32…開閉機構
31…マガジン検出センサ
33…開閉検出センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料が包埋剤に包埋されてなる包埋ブロックの固定台として使用される複数の包埋カセットを収容保持するカセットマガジンにおいて、
前記包埋カセットが挿入される開口部を有する箱型のマガジン本体と、
前記マガジン本体に設けられ、前記開口部を覆う方向へ付勢された開閉扉と、
前記マガジン本体内に設けられ、前記包埋カセットを前記所定の向きで挿入させるための誤挿入防止部とを備え、
前記誤挿入防止部は、前記包埋カセットが所定の向きで挿入された場合に、前記包埋カセットの挿入方向に沿う一端側に形成された凹部と、前記マガジン本体の底面との間に収まる一方、
前記包埋カセットが前記所定の向き以外の向きで挿入された場合に、前記包埋カセットの凹部以外の部分と、前記マガジン本体の底面との間に配置されて、それ以上の前記包埋カセットの前記開口部内への挿入を規制するとともに、前記開閉扉が前記包埋カセットに干渉して前記開閉扉が閉まらないように構成されていることを特徴とするカセットマガジン。
【請求項2】
前記開閉扉には、前記開閉扉を一定角度開けた状態で保持するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1記載のカセットマガジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のカセットマガジンと、
前記カセットマガジンが装着されるストッカと、
前記カセットマガジンから1枚ずつ取り出される前記包埋カセットに固定された前記包埋ブロックを薄切する切断刃とを備え、
前記ストッカには、前記開閉扉の閉状態において前記カセットマガジンが装着されるようになっており、
前記ストッカには、前記カセットマガジンに前記包埋カセットが誤挿入されていた場合に、前記カセットマガジンの前記開閉扉に接触して前記カセットマガジンが装着されないように規制するための係合部が設けられていることを特徴とする自動薄切装置。
【請求項4】
前記ストッカは、前記カセットマガジンが前記ストッカ内に装着されたか否かを検出するマガジン検出センサと、
装着された前記カセットマガジンの前記開閉扉を開閉する開閉機構と、
前記開閉扉の開閉状態を検出する開閉検出センサと、
これら前記マガジン検出センサ、前記開閉機構、及び開閉検出センサを統括的に制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記カセットマガジンが前記ストッカに装着され、且つ前記開閉扉が閉状態にある場合に、前記開閉機構により前記開閉扉を開方向に移動させることを特徴とする請求項3記載の自動薄切装置。
【請求項5】
前記ストッカは、前記カセットマガジンが所定の向き以外の向きで装着された場合に、前記カセットマガジンの誤装着を検出する誤装着検出部を備えていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の自動薄切装置。
【請求項6】
前記カセットマガジンには、前記カセットマガジンに挿入された前記包埋カセットの種類を識別するために、前記包埋カセットの種類に応じて識別マークが設けられ、
前記ストッカには、前記ストッカに装着された前記カセットマガジンの前記識別マークの有無または種類を識別する識別センサが設けられていることを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れか1項に記載の自動薄切装置。
【請求項1】
生体試料が包埋剤に包埋されてなる包埋ブロックの固定台として使用される複数の包埋カセットを収容保持するカセットマガジンにおいて、
前記包埋カセットが挿入される開口部を有する箱型のマガジン本体と、
前記マガジン本体に設けられ、前記開口部を覆う方向へ付勢された開閉扉と、
前記マガジン本体内に設けられ、前記包埋カセットを前記所定の向きで挿入させるための誤挿入防止部とを備え、
前記誤挿入防止部は、前記包埋カセットが所定の向きで挿入された場合に、前記包埋カセットの挿入方向に沿う一端側に形成された凹部と、前記マガジン本体の底面との間に収まる一方、
前記包埋カセットが前記所定の向き以外の向きで挿入された場合に、前記包埋カセットの凹部以外の部分と、前記マガジン本体の底面との間に配置されて、それ以上の前記包埋カセットの前記開口部内への挿入を規制するとともに、前記開閉扉が前記包埋カセットに干渉して前記開閉扉が閉まらないように構成されていることを特徴とするカセットマガジン。
【請求項2】
前記開閉扉には、前記開閉扉を一定角度開けた状態で保持するストッパが設けられていることを特徴とする請求項1記載のカセットマガジン。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のカセットマガジンと、
前記カセットマガジンが装着されるストッカと、
前記カセットマガジンから1枚ずつ取り出される前記包埋カセットに固定された前記包埋ブロックを薄切する切断刃とを備え、
前記ストッカには、前記開閉扉の閉状態において前記カセットマガジンが装着されるようになっており、
前記ストッカには、前記カセットマガジンに前記包埋カセットが誤挿入されていた場合に、前記カセットマガジンの前記開閉扉に接触して前記カセットマガジンが装着されないように規制するための係合部が設けられていることを特徴とする自動薄切装置。
【請求項4】
前記ストッカは、前記カセットマガジンが前記ストッカ内に装着されたか否かを検出するマガジン検出センサと、
装着された前記カセットマガジンの前記開閉扉を開閉する開閉機構と、
前記開閉扉の開閉状態を検出する開閉検出センサと、
これら前記マガジン検出センサ、前記開閉機構、及び開閉検出センサを統括的に制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記カセットマガジンが前記ストッカに装着され、且つ前記開閉扉が閉状態にある場合に、前記開閉機構により前記開閉扉を開方向に移動させることを特徴とする請求項3記載の自動薄切装置。
【請求項5】
前記ストッカは、前記カセットマガジンが所定の向き以外の向きで装着された場合に、前記カセットマガジンの誤装着を検出する誤装着検出部を備えていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の自動薄切装置。
【請求項6】
前記カセットマガジンには、前記カセットマガジンに挿入された前記包埋カセットの種類を識別するために、前記包埋カセットの種類に応じて識別マークが設けられ、
前記ストッカには、前記ストッカに装着された前記カセットマガジンの前記識別マークの有無または種類を識別する識別センサが設けられていることを特徴とする請求項3ないし請求項5の何れか1項に記載の自動薄切装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【公開番号】特開2010−54473(P2010−54473A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222561(P2008−222561)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]