説明

カゼインナノ粒子

【課題】界面活性剤や合成高分子を使用することなく製造でき、サイズをコントロールできて、かつ酸性で安定であり、さらに活性物質を内包した正電荷であるナノ粒子、並びにその製造方法の提供。
【解決手段】ゼータ電位が正であることを特徴とするカゼイン粒子。該粒子は下記の工程(a)及び(b)によって作製される。(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;及び(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpHをカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライフサイエンス又は医療診断などの分野において使用するためのナノ粒子に関する。より詳細には、本発明は、カゼインナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子材料は、バイオテクノロジーにおいて幅広い利用が期待されている。特に近年、ナノテクノロジーの進展によって生み出されたナノ微粒子材料をバイオテクノロジーや医療に応用することが活発に検討され、研究成果も数多く報告されている。
【0003】
薬剤送達システム(DDS)の分野では早くからナノ粒子への期待が強く、薬剤や遺伝子のキャリアーとしてナノ粒子が極めて有望である。中でも、高分子ミセルを用いた研究は盛んに行われているが、ほとんどの場合、AB型かABA型のブロックコポリマーがその構造の単純さから用いられている。高分子ミセルの特徴として、大きな薬物容量、高い水溶性、高い構造安定性、非蓄積性、小さな粒経(100nm以下)、機能分離性がある。このことから、標的部位へのターゲティングや、疎水性薬物の可溶化を目的とした研究が行われている。
【0004】
近年、化粧品においては、ナノテクノロジーをはじめ様々な新しい技術を取り入れることにより、機能性・使用性の向上、他社品との差別化が計られており、より明確な肌効果が求められるようになってきている。肌は一般的に、角質層がバリアーとして存在するために薬物の皮膚への浸透性が低い。肌効果を十分に発揮させるためには、有効成分の皮膚透過性の改善が不可欠である。また、皮膚に対して高い有効性を持っていても、保存安定性が悪かったり、皮膚に刺激を起こしやすかったりするために製剤化が困難な成分も多い。これらを解決すべく、経皮吸収性の改善および保存安定性の向上、皮膚刺激性の低減など目的とした、様々なカプセルの開発が進められている。現在、超微細乳化やリポソームなど各種素材が研究されている(例えば、非特許文献1)。しかし、乳化に用いられる界面活性剤は安全性に懸念があり、またイオンコンプレックスによる構造形成は共有結合に比べて安定性も劣る。
【0005】
高分子材料を用いれば、保存安定性や生体内における粒子の安定性の点で、大きく改善されることが予想される。しかし、ほとんどの研究は乳化重合をはじめとする合成高分子を用いたものであり、低分子に比べれば毒性は軽減されるものの、ある程度の毒性は覚悟しなければならず、より安全なキャリアーが求められている。
天然高分子は合成高分子と同様に高い構造安定性を示しながら、合成高分子よりも格段に安全性が高く、DDSキャリアーとしての利点を兼ね備えている。しかし、合成高分子に比べて天然高分子キャリアーの困難な点は、粒子作製方法である。天然高分子の粒子作製方法としては、噴霧乾燥、凍結乾燥およびジェットミルが利用できるが、ほとんどの場合、粒子サイズはミクロンサイズであり、大きさの制御が困難である。
【0006】
天然高分子のうち、カゼインは、ミルクに含まれる水に不溶性のタンパク質である。疎水性部分が外に面しているため、集合体を作りやすく、10〜100個のカゼインが集まり、20nm程のサブミセルを形成し、更には100〜1000個のカゼインが集まって90〜150nmのカゼインミセルを形成する。カゼインミセルがさらに集まって、500nm程のミセル会合体を形成する。
【0007】
カゼインミセルのサイズは分布が広く、ナトリウムやマグネシウムなどの塩の添加や、pHを酸性にすると凝集が起こる。このため、従来のカゼインサブミセルの製造方法としては、全てpH6.5以上の塩基性溶液で作成しているため、pHを降下させカゼインの等電点以下にすると、両親媒性タンパク質であるにもかかわらず、沈殿凝集が発生し、カゼインサブミセルの状態を維持できず、正電荷のナノ粒子を作成することが出来なかったため、アニオニックな化合物を内包或いは粒子表面に保持することができなかった(非特許文献2、3及び4、並びに特許文献1)。
【0008】
特許文献2では、例外的に酸性溶液にカゼインを溶解させているが、これはカゼインの分画を意図したものであって、サブミセルの利用を意図しないものである。
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2007/114262号公報(富士フイルム)
【特許文献2】特開平5-146258公報
【非特許文献1】西田 光広、フレグランスジャーナル、11月、17(2005)
【非特許文献2】日本農芸化学会誌、16巻、9号、1087-1092(1987)
【非特許文献3】日本農芸化学会誌、49巻、8号、417-424(1975)
【非特許文献4】Journal of Dairy Reseach、53、547-555(1986)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とする。即ち、本発明は、界面活性剤や合成高分子を使用することなく製造でき、サイズをコントロールできて、かつ酸性で安定であり、さらに活性物質を内包した正電荷であるナノ粒子、並びにその製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、カゼインを酸性溶液に添加した後に、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させることによって、ゼータ電位が正であることを特徴とするカゼイン粒子を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明によれば、ゼータ電位が正であることを特徴とするカゼイン粒子が提供される。
好ましくは、粒子サイズは平均粒経10nm以上300nm未満である。
【0013】
本発明によればさらに、下記の工程(a)及び(b)によって作製される、平均粒経10nm以上300nm未満のカゼイン粒子が提供される。
(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;及び
(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程:
【0014】
好ましくは、本発明のカゼイン粒子は、粒子内および/又は粒子表面に活性物質を含む。
好ましくは、活性物質はイオン性物質又は脂溶性物質である。
好ましくは、活性物質は陰イオン性物質である。
【0015】
本発明によればさらに、下記の工程(a)、(b)及び(c)によって作製される、本発明のカゼイン粒子が提供される。
(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;
(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程:及び
(c)上記(a)又は(b)で得た溶液に少なくとも1種の活性物質を添加する工程:
【0016】
好ましくは、活性物質は、化粧品用成分、機能性食品用成分、又は医薬品成分である。
好ましくは、化粧品用成分は、保湿剤、美白剤、育毛剤、養毛剤、発毛剤、抗白髪剤、染毛剤、トリートメント剤、アンチエイジング剤、抗酸化剤、コラーゲン合成促進剤、抗しわ剤、抗にきび剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、香料、色素剤、制汗剤、冷感剤、温感剤、メラニン生成抑制剤、メラノサイト活性化剤、クレンジング剤、又は痩身剤であり、機能性食品用成分がビタミン、ミネラル、抗酸化剤、抗ストレス剤、栄養補助剤、アミノ酸類、カロテノイド、あるいは果実又は植物の抽出物であり、医薬品成分が、育毛剤、養毛剤、発毛剤、抗生剤、制癌剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、ホルモン剤、抗血栓剤、免疫抑制剤、皮膚疾患治療薬、抗真菌薬、核酸医薬、麻酔薬、解熱剤、鎮痛剤、鎮痒剤、抗浮腫剤、鎮咳裾痰剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、興奮剤、精神神経用剤、筋弛緩剤、抗鬱剤、総合感冒薬剤、自律神経系剤、鎮けい剤、発汗剤、止汗剤、強心剤、不整脈用剤、抗不整脈剤、血管収縮剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、高脂血漿剤、呼吸促進剤、鎮咳剤、ビタミン剤、寄生性皮膚疾患用剤、恒常性剤、ポリペプチド、ホルモン、不全角化抑制剤、ワクチン、又は皮膚軟化剤である。
【0017】
本発明によればさらに、上記した本発明のカゼイン粒子を分散媒中に含む分散物が提供される。
本発明によればさらに、カゼインを、該カゼインの等電点以下の溶液中で分散させることを含む、上記した本発明のカゼイン粒子の製造方法が提供される。
【0018】
本発明によればさらに下記の工程(a)及び(b)を含む、本発明のカゼイン粒子の製造方法が提供される。
(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;及び
(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程:
【0019】
本発明によればさらに、下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、本発明のカゼイン粒子の製造方法が提供される。
(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;
(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程:及び
(c)上記(a)又は(b)で得た溶液に少なくとも1種の活性物質を添加する工程:
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、界面活性剤や合成高分子を使用することなく製造でき、サイズをコントロールできて、かつ酸性で安定であり、さらに活性物質を内包した正電荷であるナノ粒子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明のカゼイン粒子は、ゼータ電位が正であることを特徴とする粒子であり、好ましくは平均粒経10nm以上300nm未満の粒子サイズを有する。
【0022】
本発明においては、所望のサイズのカゼインナノ粒子を作製できる。また、脂溶性の活性物質とカゼイン疎水性部分の相互作用を利用して、カゼインナノ粒子内に活性物質を内包できる。さらに、これらの粒子は水溶液中で安定に存在する。脂溶性の物質としては、好ましくはClogPが0より大きく、より好ましくはClogPが1以上であり、さらに好ましくはCLogPが3以上である。また、カゼインとイオン性化合物またはイオン性多糖または別種のイオン性タンパク質との混合粒子により、イオン性活性物質を内包することができる。すなわち、本発明によれば、界面活性剤や合成高分子を使用することなく、安全性の高い活性物質を内包したナノ粒子を作製することができる。
【0023】
本発明のカゼインナノ粒子は、正電荷を有し、ゼータ電位が正である。ゼータ電位は、粒子の分散・凝集性、相互作用、表面改質を評価する上での指標となり、公知の方法を用いて測定することが出来る。本発明のカゼインナノ粒子のゼータ電位は正であり、好ましくは3〜30(mV)である。
【0024】
本発明のカゼインナノ粒子の平均粒子サイズは、通常は10nm以上300nm未満であり、好ましくは10〜100nmであり、さらに好ましくは、10〜50nmである。
【0025】
本発明のカゼインナノ粒子は、好ましくは、少なくとも1種の活性物質を含む。活性物質の量は特に限定されないが、一般的には、カゼインの重量に対して、0.001〜100倍の活性物質を含有する。
【0026】
本発明で用いるカゼインの由来は特に限定されず、乳由来であっても、豆由来であってもよく、α-カゼイン、β-カゼイン、γ-カゼイン、κ-カゼインおよびそれらの混合物を使用することができる。遺伝子組み換え体を使用することもできる。好ましくは、カゼインナトリウムの形態で用いることができる。カゼインは、単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明のカゼインナノ粒子の作製方法は、(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;及び(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程を含む方法が挙げられる。上記工程(b)は、上記(a)で得た溶液をpH3.5〜12の水性媒体中に注入することによって行うこともできる。
【0028】
活性物質を内包、或いは粒子表面に保持する場合には、上記の工程(a)又は(b)で得た溶液に少なくとも1種の活性物質を添加すればよい。
【0029】
酸性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。酸性水性媒体としては、具体的には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルクロン酸、粘液酸のような有機酸、塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸を用いて、pH0.5以上pH7未満であるが、pHがカゼインの等電点に近いと凝集沈殿を発生するため、好ましくはpH0.5以上pH6未満、さらに好ましくはpH0.5以上pH4以下である。使用する酸として好ましくは有機酸であり、より好ましくはクエン酸、リンゴ酸、酒石酸である。本発明において、カゼインをpH0.5以上の酸性水性媒体に混合させる温度は、0〜80℃が好ましく、10〜60℃が好ましい。より好ましくは、20〜40℃である。
【0030】
カゼインを酸性水性媒体液に混合した後、攪拌しながら、pHを上昇させる方法としては、アルカリを滴下するのが簡便で好ましいが、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。
【0031】
攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0032】
滴下するアルカリとしては、燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基を用いた水溶液、トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基を用いた水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、無機塩基、更に好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。
【0033】
カゼインを酸性水性媒体液に混合し、攪拌しながら、pHを上昇させる方法においては、上昇した後の好ましいpHはカゼインの等電点から±0.5以上離れたpHであり、好ましくは±4以下、さらに好ましくは±3以下である。
【0034】
カゼインを酸性水性媒体液に混合し、pH3.5〜12の水性媒体中に注入する方法としては、シリンジによるのが簡便で好ましいが、注入速度、溶解性、温度、撹拌状態を満足する方法であれば特に限定しない。一般的には、注入速度は、1mL/minから100mL/minで注入することができる。酸性水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から70℃にすることができる。水性媒体の温度は、適宜設定することができるが、標準的には、0℃から80℃にすることができ、好ましくは、25℃から60℃ですることができる。攪拌速度は、適宜設定することができるが、標準的には、100rpmから3000rpmにすることができ、好ましくは、200rpmから2000rpmである。
【0035】
本発明に用いる水性媒体は、有機酸または塩基、無機酸または無機塩基の水溶液、又は緩衝液を用いることができる。
【0036】
具体的には、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、カルボン酸、酒石酸、コハク酸、酢酸またはフタル酸、トリフルオロ酢酸、モルホリノエタンスルホン酸、2-〔4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル〕エタンスルホン酸、乳酸、マロン酸、マレイン酸、リンゴ酸、グルクロン酸、粘液酸のような有機酸;トリス(ヒドロキシメチル)、アミノメタン、アンモニアのような有機塩基;塩酸、過塩素酸、炭酸のような無機酸;燐酸ナトリウム、燐酸カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウムのような無機塩基を用いた水溶液が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
本発明に用いる水性媒体の濃度は、約5mMから約500mMが好ましい。より好ましくは、約5mMから約200mMである。
【0038】
本発明のカゼイン粒子は、好ましくは、粒子内および/又は粒子表面に活性物質を含むことができる。本発明で用いる活性物質の種類は、例えば、化粧品用成分、機能性食品用成分又は医薬品成分から選ぶことができるが、本発明においては、陰イオン性の成分を内包、又は表面に保持できることが特徴である。このため、下記成分のうち、陰イオン性の化合物がより好ましい。
【0039】
化粧品用成分としては、例えば、保湿剤、美白剤、育毛剤、養毛剤、発毛剤、抗白髪剤、アンチエイジング剤、抗酸化剤、コラーゲン合成促進剤、抗しわ剤、抗にきび剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、香料、色素剤、制汗剤、冷感剤、温感剤、メラニン生成抑制剤、メラノサイト活性化剤、クレンジング剤、痩身剤などを挙げることができる。
【0040】
機能性食品用成分としてはビタミン、ミネラル、抗酸化剤、抗ストレス剤、栄養補助剤、アミノ酸類、カロテノイド、果実および植物の抽出物を挙げることができる。
【0041】
また、医薬品成分としては、育毛剤、養毛剤、発毛剤、抗生剤、制癌剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、ホルモン剤、抗血栓剤、免疫抑制剤、皮膚疾患治療薬、抗真菌薬、核酸医薬、麻酔薬、解熱剤、鎮痛剤、鎮痒剤、抗浮腫剤、鎮咳裾痰剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、興奮剤、精神神経用剤、筋弛緩剤、抗鬱剤、総合感冒薬剤、自律神経系剤、鎮けい剤、発汗剤、止汗剤、強心剤、不整脈用剤、抗不整脈剤、血管収縮剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、高脂血漿剤、呼吸促進剤、鎮咳剤、ビタミン剤、寄生性皮膚疾患用剤、恒常性剤、ポリペプチド、ホルモン、不全角化抑制剤、ワクチン、又は皮膚軟化剤などを挙げることができる。上記した活性物質は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0042】
本発明に用いられる保湿剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ヒアルロン酸、セラミド、リピジュア、イソフラボン、アミノ酸、コラーゲンなどが挙げられる。上記した保湿は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0043】
本発明に用いられる美白剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ビタミンC誘導体、ハイドロキノン類、アルブチン、ルシノール、エラグ酸などが挙げられる。上記した美白成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0044】
本発明に用いられるアンチエイジング剤・抗酸化剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。カロテン類、レチノイン酸、レチノール、ビタミンC誘導体、カイネチン、アスタキサンチン、トレチノイン、ビタミンEおよびその誘導体、セサミン、α−リポ酸、コエンザイムQ10、フラボノイド類、など。上記したアンチエイジング剤・抗酸化剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0045】
本発明に用いられる抗にきび剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。サリチル酸、レゾルシン、レチノイン酸、ナジフロキサシン、アミノグリコシド系の抗生物質、テトラサイクリン系の抗生物質、リンコマイシン系の抗生物質など。上記した抗にきび剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0046】
本発明に用いられる制癌剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。フッ化ピリミジン系代謝拮抗薬(5-フルオロウラシル(5FU)やテガフール、ドキシフルリジン、カペシタビンなど);抗生物質(マイトマイシン(MMC)やアドリアシン(DXR)など);プリン代謝拮抗薬(メソトレキサートなどの葉酸代謝拮抗薬、メルカプトプリンなど);ビタミンAの活性代謝物(ヒドロキシカルバミドなどの代謝拮抗薬、トレチノインやタミバロテンなど);分子標的薬(ハーセプチンやメシル酸イマチニブなど);白金製剤(ブリプラチンやランダ(CDDP)、パラプラチン(CBDC)、エルプラット(Oxa)、アクプラなど);植物アルカロイド薬(トポテシンやカンプト(CPT)、タキソール(PTX)、タキソテール(DTX)、エトポシドなど);アルキル化剤(ブスルファンやシクロホスファミド、イホマイドなど);抗男性ホルモン薬(ビカルタミドやフルタミドなど);女性ホルモン薬(ホスフェストロールや酢酸クロルマジノン、リン酸エストラムスチンなど);LH-RH薬(リュープリンやゾラデックスなど);抗エストロゲン薬(クエン酸タモキシフェンやクエン酸トレミフェンなど);アロマターゼ阻害薬(塩酸ファドロゾールやアナストロゾール、エキセメスタンなど);黄体ホルモン薬(酢酸メドロキシプロゲステロンなど);BCGなどが挙げられるが、これに限定されない。上記した制癌剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0047】
本発明に用いられる抗アレルギー剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クロモグリク酸ナトリウムやトラニラストなどのメディエーター遊離抑制薬、フマル酸ケトチフェンや塩酸アゼラスチンなどのヒスタミンH1-措抗薬、塩酸オザグレルなどのトロンボキサン阻害薬、プランルカストなどのロイコトリエン拮抗薬、トシル酸スプラタストなどが挙げられる。上記した抗アレルギー剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0048】
本発明に用いられる免疫抑制剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ラパマイシン、タクロリムス、シクロスポリン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン、ミゾリビンなどが挙げられる。上記した免疫抑制剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0049】
本発明で用いる育毛成分の種類は、特に限定されないが、例えば、化粧品用成分又は医薬品成分から選ぶことができる。本発明において、タンパク質ナノ粒子に内包される育毛成分の具体例としては、グリチルレチン酸又はその誘導体、グリチルリチン酸又はその誘導体、ヒノキチオール、ビタミンE又はその誘導体、ビタミンC誘導体、6-ベンジルアミノプリン、ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸β-ブトキシエステル、イソプロピルメチルフェノール、ペンタデカン酸又はその誘導体、セファラチン、フィナステリド、t-フラバノン、カロテノイドやキネチンなどの抗酸化剤、エチニルエストラジオール、パントテニルアルコール、パントテニルエチルエーテル、ミノキシジルまたはその類縁体、塩化カルプロニウム、アデノシンなどを挙げることができる。上記した育毛成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0050】
本発明においては、活性物質と相互作用を示すイオン性化合物および添加剤を用いることができる。上記イオン性化合物および添加剤は、活性物質のチャージと反対のチャージを持つことが好ましく、添加量は、活性物質の分子量に対して、0.1〜10等量であることが好ましい。
【0051】
上記活性物質と相互作用を示すイオン性化合物および添加剤は、カチオンおよびアニオンでも良いが、分子内に、疎水性部と親水性部有することが好ましく、疎水性部は共役構造もしくは環状構造もしくは長鎖アルキル、長鎖アルキレン構造をひとつもしくはそれ以上有することが好ましい。さらに好ましくは、ステロイド構造もしくはベンゾイル、ビフェニル、フェニル構造を有することが好ましい。
【0052】
上記活性物質と相互作用を示すイオン性化合物および添加剤の具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。特にアニオン系化合物を列挙する。ラウリル硫酸およびその塩、ミリスチル硫酸およびその塩、セチル硫酸およびその塩、ラウリルリン酸およびその塩、トルエンスルホン酸およびその塩、トルイル酸およびその塩、ジメチル安息香酸およびその塩、アセチルベンゼンスルホン酸およびその塩、安息香酸およびその塩、ビフェニルカルボン酸およびその塩、ベンゾイル安息香酸およびその塩、コール酸およびその塩、グリココール酸およびその塩、タウロコール酸およびその塩、ケノデオキシコール酸およびその塩、ヒオコール酸およびその塩、ウルソデオキシコール酸およびその塩、シプリノールおよびその塩、デオキシコール酸およびその塩、リトコール酸およびその塩、ヒオデオキシコール酸およびその塩、グリチルレチン酸およびその塩、ギ酸コレステロールおよびその塩。
【0053】
本明細書中上記した工程(a)又は(b)で得た溶液に少なくとも1種の活性物質を添加する場合は、水または水と少なくとも10重量%混和性である有機溶剤に溶解した活性物質の溶液を添加することができる。本発明に用いられる水と少なくとも10重量%混和性である有機溶剤の具体例としては、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール、グリセリンを初めとする高級アルコール、多価アルコールや、アセトン、THFなどの水溶性有機溶媒が好ましいが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。
【0054】
本発明においては、活性物質は、活性物質を内包したリポソーム水分散液として添加することもできる。本発明に用いられるリポソームを形成するための脂質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。卵黄レシチン、大豆レシチン、卵黄ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、などが挙げられる。これらの他にホスファチジルセリン類、ホスファチジルエタノールアミン類、コレステロールなどを含んでいてもよい。
【0055】
本発明のカゼイン粒子には、シクロデキストリン、脂質、別種のタンパク質、カチオン性またはアニオン性多糖、及びカチオン性タンパク質またはアニオン性タンパク質から選択される1種以上の成分を添加することができる。
【0056】
本発明に用いられるシクロデキストリンとして具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、2,6-ジ-O-メチル-α-シクロデキストリン、2,6-ジ-O-メチル-β-シクロデキストリン、グルクロニルグルコシル-β-シクロデキストリン、ヘプタキス(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン、2-ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、6-O-α-マルトシル-α-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、2,3,6-トリ-O-メチル-β-シクロデキストリン、6-O-α-D-グルコシル-α-シクロデキストリン、などが挙げられる。
【0057】
本発明に用いられる脂質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ホスファチジルコリン(レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、スフィンゴシン類、セラミド、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、大豆油、オリーブ油、スクワラン、などが挙げられる。
【0058】
本発明で用いる別種のタンパク質の種類は特に限定されないが、分子量1万から100万程度のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質の由来は特に限定されないが、ヒト由来のタンパク質を用いることが好ましい。タンパク質として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コラーゲン、ゼラチン、アルブミン、トランスフェリン、フィブリン、フィブリノーゲン、グロブリン、フィブロイン、ラミニン、フィブロネクチン、又はビトロネクチンなどを使用することができる。また、タンパク質の由来は特に限定するものではなく、牛、豚、魚、および遺伝子組み換え体のいずれも用いることができる。その中で好ましいものは、ゼラチン、アルブミンである。
【0059】
本発明に用いられるアニオン性多糖とはカルボキシル基、硫酸基又はリン酸基等の酸性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、カルボキシメチルデキストラン、アルギン酸、ペクチン、カラギーナン、フコイダン、アガロペクチン、ポルフィラン、カラヤガム、ジェランガム、キサンタンガム、ヒアルロン酸類等が挙げられる。
【0060】
本発明に用いられるカチオン性多糖とは、アミノ基等の塩基性極性基を有する多糖類である。以下に具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。キチン、キトサンなどのグルコサミンやガラクトサミンを構成単糖として含むものなどが挙げられる。
【0061】
本発明に用いられるアニオン性タンパク質とは等電点が生理的pHよりも塩基性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、チトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノーゲン、キモトリプシノーゲン、α−キモトリプシンなどが挙げられる。
【0062】
本発明に用いられるカチオン性タンパク質とは等電点が生理的pHよりも酸性側にあるタンパク質およびリポタンパク質である。具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ポリリジン、ポリアルギニン、ヒストン、プロタミン、オバルブミンなどが挙げられる。
【0063】
本発明のカゼインナノ粒子は、その中に活性物質を含むことが好ましく、そのような活性物質を含むカゼインナノ粒子は、疾患部位に投与して用いることができる。即ち、本発明のカゼインナノ粒子は、薬物送達剤として有用である。
【0064】
本発明においては、薬物送達剤の使用は特に限定することはないが、経皮吸収剤、局所治療剤、経口治療剤、化粧品、サプリメントなどが挙げられる。
【0065】
本発明においては、薬物送達剤は0.01〜50重量%のタンパク質ナノ粒子を含有することが好ましく、0.1〜10重量%のタンパク質ナノ粒子を含有することがさらに好ましい。好ましくは、薬物送達剤に含まれるエタノールが20%以下である。より好ましくは10%以下である。
【0066】
本発明においては、薬物送達剤には添加物を含むことができる。添加物としては特に限定することはないが、保湿剤、柔軟剤、経皮吸収促進剤、防腐剤、色素剤、香料、又はpH調整剤などが挙げられる。
【0067】
本発明で用いることができる保湿剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。カンテン、ジグリセリン、ジステアリルジモニウムヘクトライト、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ヒアルロン酸ナトリウム、へキシレングリコール、ヨクイニンエキス、ワセリンが挙げられる。
【0068】
柔軟剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。グリセリン、ミネラルオイル、エモリエント成分(例えば、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸ポリグリセリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソノナン酸オクチル、オレイン酸、オレイン酸グリセリル、カカオ脂、コレステロール、混合脂肪酸トリグリセリド、コハク酸ジオクチル、酢酸ステアリン酸スクロース、シクロペンタシロキサン、ジステアリン酸スクロース、パルミチン酸オクチル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、ベヘン酸アラキル、ポリベヘン酸スクロース、ポリメチルシルセスキオキサン、ミリスチルアルコール、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル)が挙げられる。
【0069】
経皮吸収促進剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。エタノール、ミリスチン酸イソプロピル、クエン酸、スクワラン、オレイン酸、メントール、N-メチル-2-ピロリドン、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、尿素、植物油、動物油が挙げられる。
【0070】
防腐剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。安息香酸、安息香酸ナトリウム、エチルパラベン、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸ナトリウム、ソルビン酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、メチルパラベンが挙げあれる。
【0071】
色素剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。カオリン、カルミン、グンジョウ、酸化クロム、酸化鉄が挙げられる。
【0072】
香料として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。ジャコウ、アカシア油、アニス油、イランイラン油、シナモン油、ジャスミン油、スウィートオレンジ油、スペアミント油、ゼラニウム油、タイム油、ネロリ油、ハッカ油、ヒノキ油、フェンネル油、ペパーミント油、ベルガモット油、ライム油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ローズ油、ローズウッド油、アニスアルデヒド、ゲラニオール、シトラール、シベトン、ムスコン、リモネン、バニリンなどが挙げられる。
【0073】
pH調整剤として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらの化合物に限定されるものではない。クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸が挙げられる。
【0074】
本発明のカゼインナノ粒子の投与方法として好ましいものは、経皮・経粘膜吸収が挙げられる。投与方法として具体例を列挙するが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。外用液剤、湿布剤、塗布剤、清拭剤、浴剤、消毒剤、軟膏剤、ゲル剤、クリーム剤、泥膏剤、パップ剤、硬膏剤、創面被覆剤、創面被覆剤-ガーゼ型、止血剤、接着剤、粘着テープ剤、経皮吸収型粘着テープ、創傷保護剤、エアゾール剤、ローション剤、トニック剤、リニメント剤、乳剤、懸濁剤、飽和剤、チンキ剤、粉剤、泡剤、化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、シート状皮膚外用剤、皮膚粘着タイプの化粧料、口紅、メークアップベース、ファンデーション、シャンプー、リンス、ボディーソープ、石鹸、浴用剤、経爪剤、鼻粘膜剤、口腔粘膜剤、直腸粘膜剤、膣粘膜剤、眼粘膜剤および肺粘膜剤などが挙げられる。
【0075】
本発明のカゼインナノ粒子の投与量は、患者の体重、疾患の状態などに応じて適宜設定することができるが、一般的には、1回の投与につき、10μg〜100mg/kg程度を投与することができ、好ましくは、20μg〜50mg/kg程度を投与することができる。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0076】
実施例1:
カゼイン(乳由来・和光純薬製 等電点4.3) 100mgを10mlの50mMクエン酸溶液(pH1.9)に混合させる。それにNaOHを添加しpH3に安定維持した。上記粒子の平均粒径は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ22nmであり、ゼータ電位は16mVであった(表1)。また、その粒子は4℃で10日間安定分散したことを確認した。
【0077】
実施例2〜3:
NaOHを添加した後の最終pHを2.1(実施例2)又は3.9(実施例3)とする以外は、実施例1と同様にカゼインナノ粒子を作成し、粒子サイズ(nm)とゼータ電位(mV)を測定した。結果を表1に示す。
【0078】
比較例1〜5
NaOHを添加した後の最終pHを5.0(比較例1)、6.5(比較例2)、7.0(比較例3)、7.9(比較例4)又は10.0(比較例5)とする以外は、実施例1と同様にカゼインナノ粒子を作成し、粒子サイズ(nm)とゼータ電位(mV)を測定した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1における比較例1から5は、ゼータ電位が負の粒子となり、本発明の目的を達成できない。また、比較例1から5の粒子を、その後pH3にしても、再分散しなかった。したがって、カゼインナノ粒子のカチオン性を利用する場合は、酸性領域でナノ粒子を作成する必要があることが明らかになった。なお、実施例3では、凝集・沈殿の発生が見られた。
【0081】
実施例4:
実施例1のクエン酸に変えて、リンゴ酸にてカゼインナノ粒子を作成したところ、pH2.4の分散液を得た。上記粒子の平均粒径は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ、38nm、ゼータ電位は24mVであった。また、その粒子は4℃で10日間安定分散したことを確認した。
【0082】
実施例5:
実施例1のクエン酸に変えて、酒石酸にてカゼインナノ粒子を作成したところ、pH2.4の分散液を得た。上記粒子の平均粒径は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ、11nm、ゼータ電位は23mVであった。また、その粒子は4℃で10日間安定分散したことを確認した。
【0083】
実施例6:
実施例1のカゼイン量を200mgに変えて、カゼインナノ粒子を作成したところ、pH2.6の分散液を得た。上記粒子の平均粒径は、光散乱光度計、マルバーン(株)製Nano-ZSを用い測定したところ、26nm、ゼータ電位は18mVであった。
【0084】
比較例6
カゼイン(乳由来・和光純薬製)100mgを、pH10、50mMリン酸バッファー10mLに混合し、攪拌下、塩酸を加えpHを4に調整したところ、白濁、凝集した。
【0085】
比較例7
カゼイン(乳由来・和光純薬製)100mgを、pH10、50mMリン酸バッファー10mLに混合し、攪拌下、塩酸を加えpHを2に調整したところ、白濁、凝集した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゼータ電位が正であることを特徴とするカゼイン粒子。
【請求項2】
粒子サイズが平均粒経10nm以上300nm未満である、請求項1に記載のカゼイン粒子。
【請求項3】
下記の工程(a)及び(b)によって作製される、平均粒経10nm以上300nm未満のカゼイン粒子。
(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;及び
(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程:
【請求項4】
粒子内および/又は粒子表面に活性物質を含む、請求項1から3の何れかに記載のカゼイン粒子。
【請求項5】
活性物質がイオン性物質又は脂溶性物質である、請求項4に記載のカゼイン粒子。
【請求項6】
活性物質が陰イオン性物質である、請求項4に記載のカゼイン粒子。
【請求項7】
下記の工程(a)、(b)及び(c)によって作製される、請求項4から6の何れかに記載のカゼイン粒子。
(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;
(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程:及び
(c)上記(a)又は(b)で得た溶液に少なくとも1種の活性物質を添加する工程:
【請求項8】
活性物質が、化粧品用成分、機能性食品用成分、又は医薬品成分である、請求項4から7の何れかに記載のカゼイン粒子。
【請求項9】
化粧品用成分が、保湿剤、美白剤、育毛剤、養毛剤、発毛剤、抗白髪剤、染毛剤、トリートメント剤、アンチエイジング剤、抗酸化剤、コラーゲン合成促進剤、抗しわ剤、抗にきび剤、ビタミン剤、紫外線吸収剤、香料、色素剤、制汗剤、冷感剤、温感剤、メラニン生成抑制剤、メラノサイト活性化剤、クレンジング剤、又は痩身剤であり、機能性食品用成分がビタミン、ミネラル、抗酸化剤、抗ストレス剤、栄養補助剤、アミノ酸類、カロテノイド、あるいは果実又は植物の抽出物であり、医薬品成分が、育毛剤、養毛剤、発毛剤、抗生剤、制癌剤、抗炎症剤、抗アレルギー剤、ホルモン剤、抗血栓剤、免疫抑制剤、皮膚疾患治療薬、抗真菌薬、核酸医薬、麻酔薬、解熱剤、鎮痛剤、鎮痒剤、抗浮腫剤、鎮咳裾痰剤、抗てんかん剤、抗パーキンソン剤、催眠鎮静剤、抗不安剤、興奮剤、精神神経用剤、筋弛緩剤、抗鬱剤、総合感冒薬剤、自律神経系剤、鎮けい剤、発汗剤、止汗剤、強心剤、不整脈用剤、抗不整脈剤、血管収縮剤、血管拡張剤、抗不整脈剤、血圧降下剤、糖尿治療剤、高脂血漿剤、呼吸促進剤、鎮咳剤、ビタミン剤、寄生性皮膚疾患用剤、恒常性剤、ポリペプチド、ホルモン、不全角化抑制剤、ワクチン、又は皮膚軟化剤である、請求項8に記載のカゼインナノ粒子。
【請求項10】
請求項1から9の何れかに記載のカゼイン粒子を分散媒中に含む、分散物。
【請求項11】
カゼインを、該カゼインの等電点以下の溶液中で分散させることを含む、請求項1から3の何れかに記載のカゼイン粒子の製造方法。
【請求項12】
下記の工程(a)及び(b)を含む、請求項1から3の何れかに記載のカゼイン粒子の製造方法。
(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;及び
(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程:
【請求項13】
下記の工程(a)、(b)及び(c)を含む、請求項4から9の何れかに記載のカゼイン粒子の製造方法。
(a)カゼインをpH0.5以上pH7未満の酸性水性媒体に混合させる工程;
(b)上記(a)で得た溶液を攪拌しながら、該溶液のpH をカゼインの等電点から±pH0.5以上離れたpHまで上昇させる工程:及び
(c)上記(a)又は(b)で得た溶液に少なくとも1種の活性物質を添加する工程:

【公開番号】特開2010−132609(P2010−132609A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−310530(P2008−310530)
【出願日】平成20年12月5日(2008.12.5)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】