説明

カチオン性ラテックスを含む坑井シーラント組成物及びその使用方法

本開示は、セメント質材料及びカチオン性ラテックスを含む坑井シーラント組成物、及び前記シーラント組成物を抗井に配置することを含む、地下層に接する坑井の整備方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は坑井の整備に関する。より具体的には、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物を使用した坑井の整備及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
地下層又は地下帯域に存在するガス、石油、及び水などの天然資源は、通常、坑井中に掘削流体を循環させながら地下層まで坑井を掘削することにより回収される。掘削流体の循環を終了した後、一連のパイプ、例えばケーシングを坑井に通す。その後、掘削流体は、通常、パイプの内部を通って下方へ循環し、且つパイプの外側と坑井の壁との間に位置する環状部を通って上方へ循環する。次に、通常、一次セメンティングが行われる。これによりセメントスラリーが環状部に配置され、これを堅固な塊(即ちシース)へと硬化させる。これにより坑井の壁に一連のパイプが取り付けられ、環状部が密閉される。引き続き二次セメンティング作業を行うこともできる。
【0003】
坑井を整備するのに使用される流体は、坑井中にこの流体を循環させている間に地下層に失われる可能性がある。これらの流体は、欠乏帯域(depleted zones)、比較的低圧の帯域、天然の割れ目がある逸泥帯域(lost circulation zones)、整備用流体の静水圧の方が高い断裂勾配(fracture gradients)を有する弱い帯域などの浸透性帯域を経由して地下層に入る可能性がある。その結果、こうした流体によって提供される整備の実現はより困難となる。更に、こうした流体が失われることは、必要な装備時間が長くなること、この流体が比較的高価であること、おそらくケーシング装着の必要性があることなどにより作業全体のコストを増加させる。
【0004】
掘削流体の循環ロスを抑制するための様々な方法がある。こうした方法としては、掘削流体自体にロス防止材料を加え、流体の循環が回復されるまで、掘削プロセス又は流体の注入を継続することが挙げられる。同様に、セメンティングスラリーも、高い静水圧のために地層の断裂勾配を超えることを含む様々な理由で注入中に地層に失われる可能性がある。流体の循環ロスを防ぐ具体的方法としては、水性又は非水性の流体中にセメントを含むセメントスラリー、珪酸ナトリウム溶液、又はラテックス系流体を注入し、これを別の適切な流体と混合して逸泥帯域に固体のプラグを形成することが挙げられる。
【0005】
こうした方法が掘削流体の逸泥防止に成功した場合、オペレータは坑井をケーシングすることができる、又はドリルアヘッドプロセス(drill ahead process)(下記参照)を使用することができる。例えば、オペレータは、掘削作業を一時的にやめ、坑井をケーシングし、このケーシングをセメントで固めた後に更なる掘削を再開することができる。その結果、その点から先の抗井の径を小さくすることができる。坑井のケーシングは、抗井をケーシングせずに掘削を再開した場合、逸泥処理が十分に強くないため、掘削流体の静水圧に耐えられない場合に行われる。或いは、逸泥処理が逸泥帯域への十分な補強を提供し、その結果坑井をケーシングせずに掘削を続けても静水圧に耐えることができるならば、井戸建設の段階ではより経済的であり、生産段階ではより収益性が高い。これは、ケーシングのコストを省くだけでなく、完成時には抗井の径が広くなることになり、この広い径は流体の生産速度を上昇させることになろう。後者のプロセスは、当業界において「ドリルアヘッド」プロセスと呼ばれる。
【0006】
井戸の建設中又は成熟した油井で発生する、油田に関する別の問題は、望ましくない水の生産である。炭化水素を採収する井戸は、通常、炭化水素を含む地層に作られるが、こうした地層は、水を含んでいる部分を含む可能性があるか、或いは水を含んでいる部分に隣接している可能性がある。一般に、「水を含んでいる部分」という用語は、水を生産する可能性がある地下層の任意の部分を指しており、水の飽和度が十分に高く、炭化水素と共に水が生産される可能性がある、炭化水素を含んでいる部分を含む。水の移動度は高いので、水が、地層に存在する天然の割れ目及び/又は浸透性の高い筋を経由して抗井に流れ込むことを可能にする。油井建設中、清水帯域を通って掘削すると、天然の割れ目又は誘発された割れ目を通って坑井の中へ水を流入させる恐れがある。地下の井戸から炭化水素と共に水が生産されることは、炭化水素の生産において大問題であり出費も大きい。こうした井戸を長年使用した場合、回収された炭化水素に対する水の比率は、水を生産し、炭化水素からこれを分離し、これを処理するコストを考慮すると望ましいことではない可能性がある。これは著しい経済的損失であり得る。
【0007】
抗井への炭化水素の流れを増加させるために、地下刺激処理法(subterranean stimulation treatments)が炭化水素生産の分野で長く使用されてきた。こうした刺激処理法の1つがハイドロリックフラクチャリングである。この方法によると、特殊な流体を十分な圧力で地下層に注入し、層内に少なくとも1つの割れ目を作成するか又は大きくすることにより、この層を通って抗井へと流れる流体の量を増加させる。しかし、水を含んでいる部分が地層にあると、水位は、連続的に徐々に高くなり、この割れ目をふさいで、新しい割れ目を抗井の異なる深さに導入することが必要になる点に達する可能性がある。割れ目から望ましくない水が生産されるのを制御するために、こうした場合にはいつでも、シーラント組成物(例えばセメント質組成物)を含む補修用流体を割れ目に送り込み、これをふさぐ必要がある。水の生産を制御するこうした方法は、しばしば、適合制御(conformance control)と呼ばれる。通常ソーレルセメントと呼ばれるマグネシウム塩系シーラントシステムは、酸化マグネシウム及び可溶の塩、例えば塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、又は第一若しくは第二リン酸アンモニウムを含み、こうした適合制御用途に適していることが分かっている。可溶性塩として塩化マグネシウム及び硫酸マグネシウムをベースとしたソーレルセメントは、水にさらされると不安定となる。この不安定性は、水にさらされると短時間で亀裂の発生として表れ、その後シーラントとしての構造的結合性が失われてしまう。
【0008】
セメントスラリーの特性を改良するために、アニオン性ラテックスが添加剤として使用されている。二酸化炭素又は硫化水素を含む地層流体などの酸性ガスを含む井戸のセメンティングには、高アルミナセメントが一般に使用されている。これらのセメントは、高温の井戸のセメンティングにも使用することができる。流体ロス制御、浸透性低下又は高アルミナセメントの機械特性改良の目的で、アニオン性ラテックスを使用すると、しばしば、流体ロス制御の悪いセメントスラリーが得られ、且つセメントの周りの水性流体へラテックスが浸出するような硬化セメント組成物が得られた。この井戸を長年使用している間、水によってラテックスが浸出すると、硬化セメントの浸透性が上昇し、その強度及び弾性を低下させることによりその機械特性に悪影響を与える。
【0009】
したがって、逸泥用途、特にドリルアヘッド作業を伴う用途に適している、改善された坑井シーラント組成物のニーズがある。更に、構造がより低下しにくい、特に適合制御作業において構造が低下しにくい、改善されたマグネシウム塩系シーラント組成物のニーズもある。更に、シーラント組成物から浸出しないラテックスを含む、改善されたシーラント組成物、特に高アルミナ系シーラント組成物のニーズもある。本開示は、こうしたニーズ、並びに当業者に明白であろうその他のニーズを対象とする。
【発明の開示】
【0010】
(好ましい実施態様のいくつかの簡単な要旨)
本発明は、坑井へ注入するセメント質材料及びカチオン性ラテックスを含む坑井シーラント組成物、並びにその使用方法に関する。
本発明の一態様によれば、セメント質材料及びカチオン性ラテックスを含む坑井シーラント組成物を提供する。この組成物は、坑井へ導入することができる。
本発明の別の態様によれば、セメント質材料及びカチオン性ラテックスを含む坑井シーラント組成物を坑井へ配置することを含む、地下層に接する坑井の整備方法を提供する。
【0011】
上記は、以下の本発明の詳細な説明がよりよく理解されるように、本発明の特徴及び技術的な利点をやや広く概説したものである。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する、本発明のその他の特徴及び利点を以下に記述する。開示された概念及び特定の実施態様は、本発明の同じ目的を実行するための構成を改良する根拠として、又は他の構成を設計する根拠として容易に利用することができることを当業者は理解されたい。更に、こうした等価な構築物は、添付された特許請求の範囲に記載の本発明の趣旨及び範囲から逸脱しないことも当業者は理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
本明細書は、水性流体中で混合された場合約3〜約10の範囲のpHを示すことができるセメント質材料と、カチオン性ラテックスとを含むシーラント組成物を開示する。一実施態様では、前記シーラント組成物は非ポルトランドセメントとカチオン性ラテックスとを含む。別の実施態様では、このシーラント組成物は高アルミナセメントとカチオン性ラテックスとを含む。或いは、このシーラント組成物は、マグネシア(酸化マグネシウム)、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム又はアンモニウム若しくはアルカリ金属イオンの可溶性リン酸塩並びにカチオン性ラテックスを含む。本明細書で使用される「シーラント組成物」とは、坑井が貫いた地下層に存在する材料を回収するために、抗井を掘削し、仕上げ、改修し、修理し、又は任意の方法で坑井を用意するために使用される流体を指す。シーラント組成物の例としては、それだけに限らないが、セメントスラリー、逸泥ピル、硬化性流体、プラグアンドアバンダン(plug-and-abandon)の目的のための充填組成物、ケミカルパッカー、一時的プラグ、スペーサ流体、仕上げ流体、又は補修用流体が挙げられる。これら全ては当技術分野において周知である。こうしたシーラント組成物は、当業者に知られている坑井の整備作業で使用することができる。
【0013】
一実施態様では、シーラント組成物はカチオン性ラテックスを含む。カチオン性ラテックスは、ラテックス形成モノマーと正に帯電しているモノマーとを含むことができる。カチオン性ラテックスを製造するために使用することができるラテックス形成モノマーの例としては、それだけに限らないが、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン系モノマー)、エチレン、ブタジエン、ビニルニトリル(例えば、アクリロニトリル)、C1〜C8アルコールのオレフィン性不飽和エステル、又はこれらの組合せが挙げられる。いくつかの実施態様では、立体効果を示し、長いエトキシレート又は炭化水素尾部を含む非イオン性モノマーも使用することができる。カチオン性ラテックスを製造するために使用することができる正に帯電したモノマーの例としては、それだけに限らないが、約10を超えるpH値で中和することができない正電荷を既に有しているもの、或いは、約10を超えるpH値で中和することができる正に帯電したモノマーを挙げることができる。前者のモノマータイプの例としては、それだけに限らないが、第四級アンモニウム基を含むもの、例えば臭化トリメチルアミノプロピルメタクリルアミド、又はトリアルキルスルホニウム又はテトラアルキルホスホニウム構造などの他のオニウム種を含むモノマーが挙げられる。後者のモノマータイプの例としては、それだけに限らないが、プロトン化第三級アミン含有モノマー、例えば、酸性媒体中で重合した場合、アミン窒素のプロトン付加によってカチオン性になるジメチルアミノメタクリルアミドが挙げられる。市販のカチオン性ラテックスの例としては、それだけに限らないが、それぞれVSS Asphalt Technologies及びUltrapaveから販売されているカチオン性スチレン-ブタジエンラテックスであるROADCHEM 600又はUP-65Kが挙げられる。
【0014】
カチオン性ラテックスの調製方法は当業者に公知である。例えば、カチオン性ラテックスは、2,2'-アゾビス(イソブチルアミジン塩酸塩)などのアゾ系開始剤を使用して、従来の乳化重合によって調製することができる。或いは、カチオン性ラテックスは、カチオン性又はアミン含有コモノマーとラテックスとの共重合によって製造することができる。カチオン性ラテックスの調製方法は、米国特許第4,791,161号;第4,560,736号;第3,108,979号;及び第3,399,159号に開示されており、これらのそれぞれは全体として参照により本明細書に組み込まれている。
【0015】
一実施態様では、シーラント組成物は、ポルトランドセメント以外の任意のセメント質材料を更に含むことができる。一実施態様では、シーラント組成物は、水中で混合された場合、得られたシーラント組成物のpHが約3〜約10であるセメント質材料を更に含むことができる。適切なセメント質材料の例としては、それだけに限らないが、高アルミナセメント、マグネシア系セメント、セッコウセメント、セッコウプラスター、オキシ塩化亜鉛セメント、オキシ塩化アルミニウムセメント、リン酸亜鉛セメント、ケイリン酸塩セメント又はこれらの組合せが挙げられる。
【0016】
一実施態様では、水硬セメントは、高アルミナセメント、セッコウセメント、マグネシア系セメント又はこれらの組合せを含む。或いは、シーラント組成物は、高アルミナセメントを含む。これは、カルシウム、アルミニウム及び酸素を含み、水との反応によって凝結し、硬化する。本明細書では、高アルミナセメントとは、約35重量%〜約80重量%のアルミン酸カルシウムを含むセメントを指す。こうしたセメントは、更に少量の酸化鉄及びシリカを含むことができる。適切な高アルミナセメント質材料の例としては、それだけに限らないが、Lafarge Aluminates, Cheasapeake, VA(バージニア)州から市販されている高アルミナ水硬セメントであるSECAR 60、SECAR 51及びSECAR 71、並びにHalliburton Energy Servicesから市販されている高アルミナセメントであるTHERMALOCKセメントが挙げられる。カチオン性ラテックスは、ポルトランドセメント(例えば、クラスA、C、G及びHセメント)と組み合わせて使用した場合、それほど有効ではない。したがって、セメント質材料は、こうしたポルトランドセメントを除外することが好ましい。
【0017】
一実施態様では、水硬セメントは、ソーレルセメントとしても知られているマグネシア系セメントを含む。ソーレルセメントは、マグネシア(酸化マグネシウム)及び可溶性の塩化物、硫酸塩又はリン酸塩などの可溶性の塩をベースにしている。適切な塩としては、マグネシウム塩、例えば塩化マグネシウム又は硫酸マグネシウム、或いは可溶性リン酸塩、例えば第一若しくは第二リン酸アンモニウムが挙げられる。ソーレルセメント組成物の製造に適している酸化マグネシウムの例としては、それだけに限らないが、細かく粉砕された酸化マグネシウム粉末であるOXYMAGマグネシア系セメント製品、及び水酸化マグネシウム水性懸濁液であるAQUAMAG水酸化マグネシウムが挙げられる。両方とも、Premier Chemicals LLC, King of Prussia, PA(ペンシルベニア)州から市販されている。塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの可溶性マグネシウム塩、及びリン酸アンモニウムなどの可溶性リン酸塩は広く市販されている。様々なマグネシア系セメントの議論は、Peter Hewlett著「Leaによるセメント及びコンクリートの化学」("Lea's Chemistry of Cement and Concrete" by Peter Hewlett: Fourth Edition, pages 813-820: 2003: Elsevier Publishing)で知ることができる。
【0018】
いくつかの実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、注入できるセメント質スラリーを形成するために十分な量の水を含んでいる。水は真水でもよく、塩水でもよい。例えば、ブライン又は海水など、不飽和の塩水溶液でも或いは飽和の塩水溶液でもよい。水は、セメントの約20〜約180重量パーセント、或いはセメントの約28〜約60重量パーセントの量で存在することができる。セメント組成物は、約4ポンド/ガロン〜約23ポンド/ガロンの密度を有することができる。代替実施態様では、セメント組成物は、約12ポンド/ガロン〜約17ポンド/ガロンの密度を有することができる。他の代替実施態様では、セメント組成物は、約6ポンド/ガロン〜約14ポンド/ガロンの密度を有する低密度セメント組成物とすることができる。
【0019】
一実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、更に水硬セメント及び非水性キャリア流体を含む。この非水性キャリア流体は、流体(例えば掘削流体)が失われている坑井帯域で水性流体と混ぜ合わせた場合、増粘又は凝固することができる。こうした実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、注入可能なスラリーを形成するために十分な量の非水性流体を含んでいる。こうした非水性流体は、当業者に周知であり、それだけに限らないが、ディーゼル油、直鎖状α-オレフィン、鉱油、エステル又はこれらの組合せが挙げられる。非水性流体を含むこうしたシーラント組成物は、セメント粒子状物質の沈降を防止するために、懸濁助剤、例えば親有機性の粘土を必要とすることがある。組成物に含まれる非水溶媒の量は、非水性流体の比重及び所望のスラリー密度に左右されることがある。カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物を調製するために必要とされる非水性流体の量を決定する方法は、当業者に公知である。
【0020】
カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、更に1価(例えば、Na+)、2価(例えば、Ca2+、Mg2+)、及び3価のカチオンの塩を含むことができる。こうした実施態様では、この組成物が地下層にある塩帯域を洗い流したり、溶解しないことを確実にするために、この組成物を開示された塩で飽和にすることができる。或いは、例えば酸化マグネシウム系ソーレルセメントの場合のように、シーラント組成物は、それ自身が塩の使用を必要とすることがある。カチオン性ラテックスには塩に対する比較的高い耐性がある。したがって、このラテックスは、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物に含まれる塩の存在下で安定しており、また、このラテックスが抗井中で遭遇する可能性がある塩の存在下で安定しているであろう。したがって、この組成物に追加の安定用界面活性剤(例えば、エトキシ化ノニルフェノール界面活性剤)を導入する必要はない。一実施態様では、坑井中で遭遇する塩は組成物のpHを上げない。もし所要ならば、安定用界面活性剤は、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物中で使用することができ、ラテックスポリマーの骨格に組み込まれたエチレン性不飽和界面活性剤と区別することができることを理解されたい。
【0021】
一実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は更に界面活性剤を含む。この界面活性剤は、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物を安定させる任意の界面活性剤とすることができる。いくつかの実施態様では、この界面活性剤は、アニオン性、或いはカチオン性、或いは中性である。或いは、この界面活性剤は、両性イオン(即ち、アニオン性とカチオン性の電荷を含む)とすることができる。これは一般にベタインと呼ばれる。スルホナート基を含む両性イオン性界面活性剤はスルタインと呼ばれる。一実施態様では、この界面活性剤は、ココアミドプロピルベタインなどのベタインである。或いは、この界面活性剤は、ココアミドプロピルヒドロキシスルタインなどのスルタインである。適切な界面活性剤の例としては、それだけに限らないが、Halliburton Energy Servicesから市販されている両性イオン性界面活性剤であるHC-2表面活性懸濁化剤、及びWitco Corporation, Dublin, Ohio(オハイオ)州から市販されているスルタインであるREWOTERIC AM HCが挙げられる。
【0022】
カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、その特性の改善又は変更のために更に添加剤を含むことができる。適切な添加剤の例としては、流体吸収性材料、中空ガラス又はセラミックビーズ、ヘマタイト、酸化マンガン又は硫酸バリウムなどの密度を高める材料、粒子状材料、親有機性粘土、水性流体用超吸収剤、増粘剤、懸濁助剤、分散剤、凝結遅延剤、流体ロス剤、繊維やエラストマーなどの機械特性改質剤、或いはこれらの組合せが挙げられる。
【0023】
カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、任意の目的に使用することができる。一実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、地下層を貫く坑井を整備するために使用される。「地下層」とは、露出した地面より下の区域、及び海洋又は真水などの水によって覆われた地面より下の区域の両方を包含することを理解されたい。坑井の整備としては、それだけに限らないが、以下の目的でカチオン性ラテックスを含むシーラント組成物を坑井中に配置することが挙げられる:坑井の一部から地下層を分離すること;坑井の中で導管を支持すること;導管の空隙又は亀裂をふさぐこと;坑井の環状部に配置されたセメントシースの空隙又は亀裂をふさぐこと; 穿孔をふさぐこと;セメントシースと導管の間の開口をふさぐこと;空隙、がま帯域(vugular zone)又は割れ目などの逸泥帯域中への水性又は非水性の掘削流体の損失を防ぐこと;放棄目的のために井戸をふさぐこと;処理流体の進路を変える一時的なプラグ;セメンティング作業中のセメントスラリーの前の流体として使用されるケミカルパッカーとして;並びに坑井と伸長式パイプ又はパイプストリングの間の環状部を密閉すること。例えば、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、逸泥帯域で増粘し、それにより循環を回復することができる。増粘した混合物は、柔軟で、弾力があり、強靭な材料へ凝結することができる。この材料は、循環が再開された場合、更なる流体ロスを防止することができる。カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、押しのけられたり押し出されずに、相当な圧力、例えば掘削流体又はセメントスラリーの静水圧に耐えることができる。一実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、約250psi〜約15000psiの圧縮強さを有する硬い塊に凝結する。本明細書では、圧縮強さは、軸方向に向けられたプッシングフォースに耐える材料の能力として定義される。軸力に対する材料の最大耐力は、米国石油研究所(API)規格10A、23版、2002年4月(American Petroleum Institute (API) Specification 10A, 23rd Edition, April 2002)に従って求められる。圧縮強さの限界を超えると、この材料は、非可逆的に変形され、もはや構造の支持及び/又は帯域の分離を提供しない。
【0024】
カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、シーラント組成物を形成することができ、逸泥帯域の内部に比較的粘着性の塊を提供することができる。カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、更に逸泥帯域の内部に非流動性の完全な塊を形成することができる。この塊は、帯域をふさぎ、続いて注入される掘削流体のロスを阻止する。これにより一層の掘削が可能になる。空隙を速やかにふさぐために増粘反応を促進することが望ましい可能性があることを理解されたい。別の実施態様では、空隙の中へより深く浸透させるために、増粘を延長又は遅延することが望ましいであろう。ラテックスエマルジョンの活性ポリマー含有量は、セメント組成物の約0.2重量%〜約30重量%の範囲とすることができる。或いはセメント組成物の約3重量%〜約15重量%とすることができる。
【0025】
一実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、単一の流れとして坑井に入れられ、ダウンホール条件で活性化されて逸泥帯域を実質的に密閉する障壁を形成する。別の実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、2つの流れの組合せとしてダウンホールに入れることができる。こうしたプロセスでは、シーラント系の成分は、水性又は非水性の流体或いはこれらを組み合わせた流体として注入することができる。一実施態様では、カチオン性ラテックスは水性の流れに存在する。セメント質材料は、非水性の流体として坑井へ導入し、カチオン性ラテックスを含む水性流体と混合させることができる。したがって、例えば、セメント質材料がセッコウ又は高アルミン酸塩セメント(例えばアルミン酸カルシウム)などの単一のセメント質材料を含む場合、こうした材料を、非水性流体中に懸濁し、掘削管又はケーシングを下方に向かって注入し、環状部を下に向かって注入されたカチオン性ラテックスを含む水性の流れと接触させることができる。或いは、セメント質材料を含む非水性の流れを、環状部を下に向かって注入することができ、ラテックスを含む水性の流れを掘削管又はケーシングを下方に向かって注入することができる。一方、例えばソーレルセメントの場合のように、セメント質材料の凝結に2つの成分が必要な場合は、1つの成分、例えば酸化マグネシウムを、掘削管又は環状部を下方に向かって非水性懸濁液として注入することができる。カチオン性ラテックスと、セメント質組成物の第二成分、例えば塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、又は第一若しくは第二リン酸アンモニウムなどの可溶性塩とを含む水性の流れは、環状部又は掘削管若しくはケーシングを下方に向かって注入することができる。一実施態様では、マグネシア系セメントと、酸性pHで調製されたためにカチオン性になったラテックスとを含むシーラント組成物が、2つの流れによる方法を使用して調製される。この方法では、非水性懸濁液としての前記セメントを、ダウンホールで混合される第二の水性カチオン性ラテックス流と接触させる。
【0026】
地下帯域を密閉するために坑井へ組成物を導入する方法は、米国特許第5,913,364号;第6,167,967号;及び第6,258,757号に記載されている。これらをそれぞれ全体として参照により本明細書に組み込む。
一実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、第一及び第二のセメンティング作業などの坑井仕上げ作業で使用することができる。前記組成物は、坑井の環状部に入れ、坑井の異なる部分から地下層を分離させるように凝結させることができる。このようにして、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、その地下層中の流体が他の地下層へ移動するのを防ぐ障壁を形成する。環状部内では、流体は、更に、坑井の導管、例えばケーシングを支持する役目をする。
【0027】
一実施態様では、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物が配置される坑井は、多元的坑井形態に属する。多元的坑井形態は、1つ以上の補助的な坑井によって接続している少なくとも2つの主要な坑井を含むことを理解されたい。しばしばスクィーズセメンティング(squeeze cementing)と呼ばれる第二のセメンティングでは、カチオン性ラテックスを含む坑井シーラント組成物は、以下の目的で戦略的に坑井中に配置することができる:導管中の空隙又は亀裂をふさぐこと、環状部にある硬化したシーラント(例えば、セメントシース)中の空隙又は亀裂をふさぐこと、硬化したシーラントと導管の間の微小環状部として知られている比較的小さな開口部をふさぐことなど。このようにして、この組成物はシーラント組成物としての役割を果たす。坑井中でシーラント組成物を使用するために採用することができる様々な手法は、米国特許第5,346,012号及び第5,588,488号に記載されている。これらは全体として参照により本明細書に組み込まれている。
【0028】
他の実施態様では、添加剤も、カチオン性ラテックスを含むシーラント組成物と共に坑井に注入される。例えば、流体吸収性材料、粒子状材料、親有機性粘土、樹脂、水性超吸収剤、増粘剤、懸濁化剤、分散剤、流体ロス剤、繊維やエラストマーなどの機械特性改質剤、或いはこれらの組合せを、開示された組成物と共に流れの中に注入することができる。
【0029】
一実施態様では、高アルミナセメント及びカチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、カチオン性ラテックスが入っていない以外は同一の組成物と比較した場合、セメントスラリーの流体ロス制御が優れており、浸出を低下させた。別の実施態様では、カチオン性ラテックスが入っていない以外は同一の組成物と比較した場合、マグネシア系セメント及びカチオン性ラテックスを含むシーラント組成物は、構造の完全性が増加した。
【実施例】
【0030】
本発明を普遍的に記述してきたが、以下の実施例は、本発明の特定の実施態様として挙げられており、その実行及び利点を実証するためのものである。これらの実施例は例証の目的で挙げられたものであり、どのような方法でも特許請求の範囲の規定を限定する意図はないことを理解されたい。
【0031】
(実施例1)
Dow Reichhold Corporationから入手したカチオン性スチレン-ブタジエンラテックスJG-6082を添加した高アルミン酸塩セメントスラリーと、これを添加しない高アルミン酸塩セメントスラリーの機械特性及び浸出を比較した。THERMALOCKセメント、水39%、クエン酸0.4%、及び添加量0.01 gal/skのD-AIR 3000Lを含むセメントスラリーを調製した。D-AIR 3000L発泡防止剤は消泡剤であり、THERMALOCKセメントは高アルミナセメントである。両方とも、Halliburton Energy Servicesから市販されている。スラリーは、15ppgの最終密度を有していた。示した全ての百分率はセメントの重量に対するものである。0.5gal/sk又は1.0gal/skのカチオン性ラテックス(表示)、0.06gal/skのHC-2、34%の水、及び0.05gal/skのDAIR 3000L消泡剤を含む2つの追加のスラリーを調製した。HC-2界面活性懸濁化剤は、Halliburton Energy Servicesから市販の両性イオン性界面活性剤である。このカチオン性ラテックスを含むスラリーは、14.9ppgの最終密度を有していた。スラリーは全て、3000psiの圧力下で、約87.8℃(190°F)で72時間硬化した。機械特性、即ちヤング率及びポアソン比は、ASTM D 3148-02(一軸圧縮において傷の無い岩石コア試験片の弾性係数の標準試験法(Standard Test Method for Elastic Moduli of Intact Rock Core Specimens in Uniaxial Compression))の方法で測定した。一方、ラテックスの浸出性は、凝結セメントを約26.7℃(80°F)で18時間水の中に置き、水が曇った(溶液中へのラテックスの浸出を示す)かどうかを観察することにより求めた。圧縮強さは、米国石油研究所(API)規格10A、23版、2002年4月(American Petroleum Institute (API) Specification 10A, 23rd Edition, April 2002)の記載に従って測定した。引張強さは、米軍技術者のコンクリート及びセメントハンドブック(U.S. Army Corps of Engineers' Handbook for Concrete and Cement)の試験CRD-C260-01に記載の方法に従って、ドッグボーン形のブリケットで測定された。これらの実験の結果を表1に示す。これらの結果は、カチオン性ラテックスを含むスラリー配合物の浸出性が低下したことを実証している。
【表1】

【0032】
(実施例2)
種々のラテックスについて、浸透性、浸出性、材料強度及び流体ロスを改善する能力を比較した。基本スラリー配合を表2に示した。
【表2】

【0033】
基本スラリー配合物に、Latex 2000又はカチオン性ラテックスを添加した。ラテックス2000セメント添加剤は、Halliburton Energy Servicesから市販されている従来のアニオン性スチレン-ブタジエンラテックスである。実施例1〜4で使用したカチオン性ラテックスは、Dow Reichhold Inc.からJG-6082として市販のカチオン性スチレンブタジエンラテックスである。スラリーは、14.0ppgの最終密度を有しており、約87.8℃(190°F)で72時間硬化した。凝結スラリーの機械特性及び浸出性は実施例1に記載の方法で求め、表3に示す。流体ロスは、米国石油研究所(API)規格10A、23版、2002年4月(American Petroleum Institute (API) Specification 10A, 23rd Edition, April 2002)の記載に従って測定した。セメントの浸透性は、米国石油研究所(API)規格10A、23版、2002年4月(American Petroleum Institute (API) Specification 10A, 23rd Edition, April 2002)に記載の方法よるにセメント浸透計を使用して測定した。
【表3】

これらの結果は、カチオン性ラテックスの添加が流体ロスを改善し、浸透性を下げ、機械的強さを改善し、水にさらされたときの凝結組成物の浸出性を低下させることを実証している。
【0034】
(実施例3)
実施例2の組成物2は、約121℃(250°F)で10日間硬化し、この組成物の機械特性と浸透性を求めた。結果を表4に示す。
【表4】

これらの結果は、カチオン性ラテックスの添加により、弾性が改善され脆さが低下した組成物が得られたことを実証している。
【0035】
(実施例4)
以下の共通スラリーデザインを有するセメント組成物を調製した:MgCl2 690g、MgO 690g、H20 300g。示された量のJG-6082をこの基本スラリーに加えた。JG-6082は、50%水性乳剤としてDow Reichhold Inc.から市販のカチオン性ラテックスである。試料は、蓋を備えたプラスチック容器に注ぎ、60℃(140°F)で72時間オーブンで硬化した。硬化した試料は、プラスチック容器から取り出し、水中に保持した。固体試料に目に見える亀裂が発生するまでに経過した時間を記録した。表5は、亀裂の出現によって明らかになった、構造の完全性が失われた時間を示す。
【表5】

これらの結果は、前記ラテックスを添加しない以外は同一の組成物と比較した場合、カチオン性ラテックスを含むマグネシア系セメント組成物については、構造の完全性が失われるまでに大幅な遅れがあることを実証している。
【0036】
本発明の好ましい実施態様を示し記述してきたが、その修正は、本発明の趣旨及び教示から逸脱することなく、当業者によって行うことができる。本明細書に記載の実施態様は単に代表例に過ぎず、限定的なものではない。本明細書に開示された本発明に多くの変更及び修正を行うことが可能であり、それは本発明の範囲内である。数の範囲又は限界を特定して提示した場合、こうした特定の範囲又は限界は、特定して提示された範囲又は限界内にある同様な大きさの反復する範囲又は限界(例えば、約1〜約10までは、2、3、4などを含んでおり;0.10より大きいは、0.11、0.12、0.13などを含んでいる)を含んでいることを理解されたい。請求項の任意の要素に関して「任意選択で」という用語を使用することは、対象の要素が必要であるか、或いは必要ではないことを意味するものである。どちらの選択肢も、請求項の範囲内であることを意味する。備える(comprises)、含む(includes)、有する(having)などのより広い用語の使用は、からなる(consisting of)、から主としてなる(consisting essentially of)、から実質上なる(comprised substantially of)などのより狭い用語を支持することを理解されたい。
【0037】
したがって、保護の範囲は上述の説明によって限定されるものではなく、頭記の特許請求の範囲のみによって限定される。この範囲は、特許請求の範囲の主題の相当物を全て含む。全ての請求項は、本発明の実施態様として本明細書に組み込まれる。したがって、特許請求の範囲は更なる説明であり、本発明の好ましい実施態様への追加である。本明細書における参考文献、特に刊行日が本出願の優先日の後である可能性がある全ての参考文献の議論は、それが本発明の先行技術であることを認めることではない。本明細書に引用された全ての特許、特許出願、及び刊行物の開示は、それが、本明細書に記載されたものを補足する代表的な詳細、手順的な詳細又は他の詳細を提供する程度まで、参照により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質材料及びカチオン性ラテックスを含む、坑井シーラント組成物。
【請求項2】
約3〜約10のpHを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記セメント質材料が、アルミナセメント、マグネシア系セメント、セッコウセメント、オキシ塩化亜鉛セメント、オキシ塩化アルミニウムセメント、リン酸亜鉛セメント、ケイリン酸塩セメント又はこれらの組合せを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記セメント質材料がセッコウセメントを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記シーラント組成物が、約35重量%〜約80重量%のアルミン酸カルシウムを有するアルミナセメントを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記シーラント組成物が、酸化マグネシウム及び塩を更に含むマグネシア系セメントを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記塩が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、アンモニウムの可溶性リン酸塩、アルカリ金属の可溶性リン酸塩又はこれらの組合せである、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記ラテックスエマルジョンの活性ポリマー含量率が、前記セメント組成物の約0.2重量%〜約30重量%である、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記カチオン性ラテックスが、ラテックス形成モノマー及びカチオン性モノマーを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記ラテックス形成モノマーが、ビニル芳香族モノマー、エチレン、ブタジエン、ビニルニトリル、C1〜C8アルコールのオレフィン性不飽和エステル、長いエトキシレート又は炭化水素尾部を含む化合物又はこれらの組合せである、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記ラテックス形成モノマーが、スチレン、ブタジエン又はこれらの組合せである、請求項9記載の組成物。
【請求項12】
前記カチオン性モノマーが、第四級アンモニウム基、オニウム種、スルホニウム基、ホスホニウム基、第三級アミン又はこれらの組合せを含む、請求項9記載の組成物。
【請求項13】
前記カチオン性ラテックスが、トリメチルアミノプロピルメタクリルアミド、トリアルキルスルホニウム化合物、テトラアルキルホスホニウム化合物、酸重合ジメチルアミノメタクリルアミド又はこれらの組合せを含む、請求項9記載の組成物。
【請求項14】
前記シーラント組成物が、一価カチオンの塩、二価カチオンの塩、三価カチオンの塩又はこれらの組合せを更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記シーラント組成物が、アニオン性、カチオン性、中性、又は両性イオン性の界面活性剤或いはこれらの組合せを更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記シーラント組成物が、スルホナート基を有する両性イオン性界面活性剤を更に含む、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
前記両性イオン性界面活性剤が、ココアミドプロピルベタイン、ココアミドプロピルヒドロキシスラチン又はこれらの組合せを含む、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記セメント質材料がアルミナセメントを含み、前記カチオン性ラテックスがスチレン-ブタジエン共重合体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
両性イオン性界面活性剤を更に含む、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記セメント質材料がマグネシア系セメントを含み、前記カチオン性ラテックスがスチレン-ブタジエン共重合体を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
前記マグネシア系セメントが、酸化マグネシウムと塩化マグネシウムとを含む、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
地下層と接する坑井を整備する方法であって、セメント質材料及びカチオン性ラテックスを含むシーラント組成物を前記坑井に配置することを含む、前記方法。
【請求項23】
前記シーラント組成物が約3〜約10のpHを有する、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記セメント質材料が、アルミナセメント、マグネシア系セメント、セッコウセメント、オキシ塩化亜鉛セメント、オキシ塩化アルミニウムセメント、リン酸亜鉛セメント、ケイリン酸塩セメント又はこれらの組合せを含む、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記セメント質材料がセッコウセメントを含む、請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記シーラント組成物が約35重量%〜約80重量%のアルミン酸カルシウムを有するアルミナセメントを含む、請求項22記載の方法。
【請求項27】
前記シーラント組成物が、酸化マグネシウム及び塩を更に含むマグネシア系セメントを含む、請求項22記載の方法。
【請求項28】
前記塩が、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、アンモニウムの可溶性リン酸塩、アルカリ金属の可溶性リン酸塩又はこれらの組合せである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記ラテックスエマルジョンの活性ポリマー含量率が、前記セメント組成物の約0.2重量%〜約30重量%である、請求項22記載の方法。
【請求項30】
前記カチオン性ラテックスが、ラテックス形成モノマー及びカチオン性モノマーを含む、請求項22記載の方法。
【請求項31】
前記ラテックス形成モノマーが、ビニル芳香族モノマー、エチレン、ブタジエン、ビニルニトリル、C1〜C8アルコールのオレフィン性不飽和エステル、長いエトキシレート又は炭化水素尾部を含む化合物又はこれらの組合せである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記ラテックス形成モノマーが、スチレン、ブタジエン又はこれらの組合せである、請求項30記載の方法。
【請求項33】
前記カチオン性モノマーが、第四級アンモニウム基、オニウム基、スルホニウム基、ホスホニウム基、プロトン化第三級アミン又はこれらの組合せを含む、請求項30記載の方法。
【請求項34】
前記カチオン性モノマーが、トリメチルアミノプロピルメタクリルアミド、トリアルキルスルホニウム化合物、テトラアルキルホスホニウム化合物、酸重合ジメチルアミノメタクリルアミド又はこれらの組合せを含む、請求項30記載の方法。
【請求項35】
前記シーラント組成物が、一価カチオンの塩、二価カチオンの塩、三価カチオンの塩又はこれらの組合せを更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項36】
前記シーラント組成物が、アニオン性、カチオン性、中性、又は両性イオン性の界面活性剤或いはこれらの組合せを更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項37】
前記シーラント組成物が、スルホナート基又はカルボキシレート基を有する両性イオン性界面活性剤を更に含む、請求項22記載の方法。
【請求項38】
前記両性イオン性界面活性剤が、ココアミドプロピルベタイン、ココアミドプロピルヒドロキシスラチン又はこれらの組合せを含む、請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記坑井の整備が、以下の目的で前記シーラント組成物を前記坑井中に配置することを含む、請求項22記載の方法:前記坑井の一部から前記地下層を分離すること;前記坑井の中で導管を支持すること;前記導管の空隙又は亀裂をふさぐこと;前記坑井の環状部に配置されたセメントシースの空隙又は亀裂をふさぐこと;穿孔をふさぐこと;前記セメントシースと前記導管との間の開口をふさぐこと;空隙、がま帯域又は割れ目などの逸泥帯域中への水性又は非水性の掘削流体のロスを防ぐこと;放棄のために坑井をふさぐこと;処理流体の進路を変える一時的なプラグとしての役割を果たすこと;ケミカルパッカーとしての役割を果たすこと;セメンティング作業においてセメントスラリーの前のスペーサ流体としての役割を果たすこと;坑井と伸長式パイプ又はパイプストリングとの間の環状部を密閉すること;又はこれらの組合せ。
【請求項40】
前記坑井の整備が適合制御又は逸泥処理を含む、請求項22記載の方法。
【請求項41】
前記坑井の整備が逸泥処理に続いてドリルアヘッドプロセスを含む、請求項22記載の方法。
【請求項42】
2つの流れによるプロセスを用いて前記シーラント組成物を坑井に配置する、請求項22記載の方法であって、水性の流れが前記シーラント組成物の少なくとも1つの成分を含み、非水性の流れが前記シーラント組成物の別の少なくとも1つの成分を含み、前記2つの流れがダウンホールで接触してその場で前記坑井中に前記シーラント組成物を形成する、前記方法。

【公表番号】特表2009−517519(P2009−517519A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542835(P2008−542835)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004484
【国際公開番号】WO2007/063317
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(507251077)ハルリブルトン エネルギ セルビセス インコーポレーテッド (9)
【Fターム(参考)】