説明

カチオン性基含有共重合体およびその製造方法

【課題】洗濯水中の鉄イオンが繊維に吸着することによる繊維の黄ばみを防ぐため、鉄イオン沈着防止能を有する重合体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】特定のカチオン性基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体(N)由来の構造単位(n)、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)、を必須構成単位として特定割合で有するカチオン性基含有共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カチオン性基含有共重合体、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キレート剤は、2個以上の配位結合を形成することにより金属イオンを封鎖することができることから、金属イオンが存在することによる弊害等を除去するために、洗剤、繊維、紙パルプ、金属表面処理、写真等の様々な分野で用いられており、現在では化学工業や日常生活に欠くことができないものである。例えば、洗剤等の分野では、用いられる水の調製において硬水中のカルシウム、マグネシウム等の金属イオンを除去するために用いられ、繊維、紙パルプ等の分野では、漂白剤である過酸化水素等の金属イオンによる分解を抑制するために用いられている。
また、例えば洗剤分野において、洗剤のコンパクト化の要求が近年強くなってきている。これに伴ない、キレート剤にも複数の機能が要求されてきている。例えば、洗濯水中に鉄イオンが繊維に吸着することにより、繊維の黄ばみが発生するという問題があるが、キレート剤にはカルシウムイオン等に加え、鉄イオン等の重金属イオンをも除去する機能(鉄イオン沈着防止能)が要求される。
鉄イオンのキレート力を有し、鉄イオンが繊維に吸着することを防止する性能(鉄イオン沈着防止能)を改良した高分子キレート剤として、例えば、下記一般式(1)で表される重合体が知られている(特許文献1)。
【0003】
【化1】

【0004】

(上記一般式(1)において、Xはアミド基、アミノ基、チオエーテル基から選ばれる少なくとも1つの官能基であり、Mは互いに独立にHあるいはK、Na等のアルカリ金属あるいはMg、Ca等のアルカリ土類金属を表す。)
しかし、上記高分子キレート剤は製法上の問題から、カルボキシル基やアミノ基の含有量の設計には制限があり、その鉄イオン沈着防止能は、必ずしも満足できるものではなく、より一層の鉄イオン沈着防止能を有する化合物が要求されているのが現状である。
一方、近年では、重合体が洗剤ビルダーとして洗剤組成物に配合されている。
例えば、イミノ基含有化合物とアリルグリシジルエーテルとから合成されるアミノ基含有単量体をアクリル酸などと重合させる方法により製造された共重合体を洗剤ビルダーとして用いること用いることが開示されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−319385号公報
【特許文献2】特開平5−311194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来、様々な重合体が報告されているにもかかわらず、洗剤用途に用いられた場合に十分な鉄イオン沈着防止能を発現する重合体は存在しないのが実情である。
そこで、本発明は、洗剤用途に用いられた場合に従来より一層、鉄イオン沈着防止能を向上させうる重合体およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために様々な重合体/共重合体について鋭意検討を行なった結果、所定のカチオン性基含有単量体由来の構成単位及びカルボキシル基含有単量体の構成単位を特定の割合で導入した共重合体(カチオン性基含有共重合体)は、優れた鉄イオン沈着防止能を有することを知得した。上記知見に基づいて、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、1質量%以上70質量%以下の下記式(N1)、(N2)で表されるカチオン性基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体(N)由来の構造単位(n)、
30質量%以上99質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)、を必須構成単位として有するカチオン性基含有共重合体である。
【0008】
【化2】

【0009】

上記一般式(N1)、(N2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、R、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、Aはカウンターアニオンを表す。
【0010】
本発明の他の一つの形態においては、カチオン性基含有共重合体の製造方法が提供される。すなわち、本発明に係る製造方法は、1質量%以上70質量%以下の下記式(N1)、(N2)で表されるカチオン性基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体、30質量%以上99質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)、を必須として重合開始剤の存在下重合する、カチオン性基含有共重合体の製造方法である。
【0011】
【化3】

【0012】

上記一般式(N1)、(N2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、R、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、Aはカウンターアニオンを表す。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカチオン性基含有共重合体(あるいは本発明の重合体組成物)は、優れた鉄イオン沈着防止能を示す。従って、本発明のカチオン性基含有共重合体を洗剤組成物に用いると、繊維への鉄イオンの沈着を抑制する為、洗剤添加物として好ましく使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
〔本発明のカチオン性基含有共重合体〕
<カチオン性基含有単量体>
本発明のカチオン性基含有共重合体は、下記一般式(N1)、(N2)で表されるカチオン性基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体(N)由来の構造単位(n)を特定の割合で有することを必須としている。
【0016】
【化4】

【0017】

上記一般式(N1)、(N2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、R、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、Aはカウンターアニオンを表す。
上記一般式(N1)、(N2)中、Aは一価のカウンターアニオンであることが好ましく、例えば、Cl、Br、I等のハロゲン原子のイオン;メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等の、アルキル硫酸イオンが好ましい。
【0018】
上記一般式(N1)、(N2)におけるR、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基であるが、炭素数1〜20の有機基としては、有機基全体として炭素数が1〜20であれば、制限はなく、全体として炭素数1〜20であれば無置換の有機基であっても、更にこれらの有機基で置換された有機基であっても良い。具体的には、アルキル基、アリール基、アルケニル基、およびこれらの水素原子の一部が、アルコキシ基、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、アシル基、アミド基、エステル基、ケトン基等で置換された有機基が例示される。
カチオン性基含有共重合体の鉄イオン沈着防止能が向上する傾向にあることから、当該有機基の炭素数は、1〜10であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
、R、Rは、同一の基であっても、異なる基であっても良い。
更に具体的には、炭素数1〜20の有機基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、ヘキサデシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;ベンジル基、フェネチル基、メトキシメチル基、ヒドロキシエチル基等の置換基を有するアルキル基;メチルフェニル基、メトキシフェニル基、2,4−キシリル基、メシチル基等の置換基を有するアリール基等である。
これらの中でも、カチオン性基含有共重合体の鉄イオン沈着防止能が向上することから、メチル基、エチル基、イソプロピル基が特に好ましく、メチル基が最も好ましい。
【0019】
本発明のカチオン性基含有共重合体が、アルカリ条件下においても安定して鉄イオン沈着防止能を発現することから、単量体(N)は、エステル基、アミド基を含有しないことが好ましい。
【0020】
上記一般式(N1)、(N2)において、R、R、Rの内、いずれか2つの基が環状構造となって一体として有機基を形成しても構わない。この場合、環状構造を十分安定なものとするため、環状の有機基の炭素数は4〜20とすることが好ましい。例えば、上記一般式(N1)において、R、Rが環状構造となって一体として無置換のアルキレン基を形成している形態とは、下記一般式(N3)で表される。
【0021】
【化5】

【0022】

上記一般式(N3)、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表わし、Rは、N原子と環状構造を形成し、炭素数2〜40の有機基であり、Aはカウンターアニオンを表す。
とN原子により形成される環状構造としては、ピロリジン環構造、ピペリジン環構造、モルホリン環構造、ピリジン環構造、ピロール環構造、ピペラジン環構造、およびこれらの有する水素原子が他の有機基で置換された構造が挙げられる。
【0023】
上記構成単位(n)は、単量体(N)がラジカル重合することにより形成される構造単位であり、上記式(N1)〜(N2)において、不飽和二重結合(CH=CH−)が単結合(−CH−CH−)になった形態となる。
【0024】
例えば、単量体が、単量体(N1)の場合、単量体(N)由来の構造単位(n)は、下記一般式(n1)で表される。
【0025】
【化6】

【0026】

上記一般式(n1)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、R、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、Aはカウンターアニオンを表す。
【0027】
本発明のカチオン性基含有共重合体は、上記一般式(N1)、(N2)で表されるカチオン性基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体(N)由来の構造単位(n)を全単量体由来の構造100質量%に対して、1質量%以上70質量%以下の割合で有することを必須としている。本発明において、単量体とは、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合をいう)を有する化合物を言う。構造単位(n)が上記範囲内であれば、優れた共重合体の再汚染防止能の向上効果が得られる。全単量体由来の構造100質量%に対する構造単位(n)の割合は、好ましくは5質量%以上60質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以上50質量%以下である。本発明のカチオン性基含有共重合体が、上記範囲で単量体(N)由来の構造単位(n)を有することにより、鉄イオン沈着防止能が向上する。
【0028】
なお、本発明において、カチオン性基含有単量体(N)由来の構造単位(n)の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、4級アミノ基のカウンターアニオンは計算に入れないこととする。カチオン性基含有単量体(N)由来の構造単位(n)にもカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)にも該当する場合は、全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、カチオン性基含有単量体(N)由来の構造単位(n)として計算する。単量体の全組成におけるカチオン性基含有単量体(N)の質量割合(質量%)を計算する場合も同様に計算する。
<カチオン性基含有単量体の製造方法>
カチオン性基含有単量体(N)は、一級若しくは二級のアミノ基を有するアミノ基含有化合物と、(メタ)アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテルから選ばれるグリシジルエーテル化合物とを反応することにより、アミノ基含有単量体を製造した後、ジメチル流酸等のジアルキル硫酸、よう化メチル等のハロゲン化アルキル等の4級化剤で4級化することにより、製造する方法は、好ましい製造方法の一つである。カチオン性基含有単量体(N)の好ましい別の製造方法は、三級アミン塩酸塩等の三級アミン塩と上記グリシジルエーテル化合物とを直接反応させることにより製造する製造方法である。
これらの製造方法において、反応はバルクで、または水や有機溶剤等の溶剤中で実施することができる。反応温度は好ましくは20℃〜150℃、より好ましくは50〜60℃である。反応は、常圧下、減圧下、加圧下で行なわれる。
【0029】
<カルボキシル基含有単量体>
本発明のカチオン性基含有共重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を特定の割合で有することを必須としている。
【0030】
本発明のカルボキシル基含有単量体(B)は、1)不飽和二重結合と2)カルボキシル基および/またはその塩を必須として含有する単量体である(但し単量体(N)に属する単量体は、単量体(B)から除くものとする)。具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、αーヒドロキシアクリル酸、α−ヒドロキシメチルアクリル酸及びその誘導体等の、不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩等;イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、2−メチレングルタル酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩等が挙げられる。この際、不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に1つの不飽和基と2つのカルボキシル基を有する単量体であればよいが、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等や、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩及び有機アンモニウム塩(有機アミン塩)等、又は、それらの無水物が好適である。または、(メタ)アクリル酸系単量体(A)は、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸類と炭素数1〜22のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド等であってもよい。
【0031】
不飽和モノカルボン酸の塩、不飽和ジカルボン酸の塩としては、金属塩、アンモニウム塩または有機アミン塩である。この際、金属塩としては、ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩、ルビジウム塩、セシウム塩等のアルカリ金属の一価の金属の塩;マグネシウム塩、カルシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属の塩;アルミニウム、鉄等の塩等が挙げられる。また、有機アミン塩としては、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩;モノエチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩等のアルキルアミン塩;エチレンジアミン塩、トリエチレンジアミン塩等のポリアミン等の有機アミンの塩が挙げられる。これらのうち、得られる共重合体の鉄イオン沈着防止能の向上効果が高いことから、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩であることが好ましく、より好ましくはナトリウム塩である。
【0032】
カルボキシル基含有単量体(B)の中でも、アクリル酸、アクリル酸塩、マレイン酸、マレイン酸塩が得られる共重合体の鉄イオン沈着防止能の向上効果が高いことから好ましく、アクリル酸、アクリル酸塩を必須とすることがより好ましい。
【0033】
カルボキシル基含有単量体(B)は、1種のみであっても良いが、2種類以上の由来の構造を有しても良い。この場合、本発明のカチオン性基含有共重合体は、全種のカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の合計を特定の割合で有することになる。
【0034】
上記構成単位(b)は、単量体(B)の不飽和二重結合(CH=CH−)が単結合(−CH−CH−)になった形態となる。
【0035】
本発明のカチオン性基含有共重合体は、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)を全単量体由来の構造100質量%に対して、30質量%以上99質量%以下の割合で有することを必須としている。構造単位(b)が上記範囲内であれば、優れた共重合体の再汚染防止能の向上効果が得られる。全単量体由来の構造100質量%に対する構造単位(b)の割合は、好ましくは40質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは50質量%以上90質量%以下である。
【0036】
本発明のカチオン性基含有共重合体は、洗剤ビルダーとして使用した場合、構造単位(b)を特定割合で有することにより、重合体の水溶性が良好になり、構造単位(n)により相互作用した金属イオン水和物の析出を抑制する効果を発揮することが可能となる。
【0037】
なお、本発明において、カルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムに由来の構造単位−CH−CH(COONa)−であれば、対応する酸であるアクリル酸由来の構造単位−CH−CH(COOH)−として、質量割合(質量%)の計算をする。同様に、カルボキシル基含有単量体(B)の全単量体に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算として計算するものとする。例えば、アクリル酸ナトリウムであれば、対応する酸であるアクリル酸として質量割合(質量%)の計算をする。
【0038】
更に、カルボキシル基含有単量体(B)以外の酸基含有単量体由来の構造単位の全単量体由来の構造に対する質量割合(質量%)を計算する場合は、対応する酸換算として計算するものとし、カルボキシル基含有単量体(B)以外の酸基含有単量体の全単量体に対する質量割合(質量%)を計算する場合も、対応する酸換算として計算するものとする。
【0039】
<その他の単量体>
本発明のカチオン性基含有共重合体は、その他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していても構わない。
本発明のカチオン性基含有共重合体が他の単量体(E)を含む際の他の単量体(E)としては、上記単量体(N)若しくは(B)と共重合可能なものであれば特に限定されるものではなく、所望の効果によって適宜選択される。具体的には、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレート、アミノエチルメタクリレート、ジアリルアミン、ジアリルジメチルアミン、およびこれらの4級化物や塩等の上記単量体(N)以外のアミノ基含有単量体;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−アリルオキシプロパンスルホン酸、2−ヒドロキシ−3−メタアリルオキシスルホン酸、イソプレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート等のスルホン酸系単量体及びこれらの塩;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニルオキサゾリドン等のN−ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド等のアミド系単量体;3−(メタ)アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン、3−アリルオキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンにエチレンオキサイドを6〜200モル付加させた化合物(3−アリルオキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン等)、(メタ)アリルアルコール等のアリルエーテル系単量体;イソプレノール、等のイソプレン系単量体;ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル系単量体;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシネオペンチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル系単量体、メトキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(アルキレングリコールの付加モル数1〜300)、フェノキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート(アルキレングリコールの付加モル数1〜300)等のポリアルキレングリコール鎖含有単量体、スチレン、インデン、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体、イソブチレン、酢酸ビニル等が挙げられる。
また、上記他の単量体(E)は、1種を単独で使用してもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0040】
上記他の単量体(E)としてのポリアルキレングリコール鎖含有単量体を共重合する場合、下記一般式(E1)、(E2)で表される単量体から選ばれる1種以上の単量体であることが好ましい。他の単量体(E)として、ポリアルキレングリコール鎖含有単量体を共重合すると、界面活性剤との相溶性が向上する傾向にあるので、液体洗剤に配合する場合等に有利である。
【0041】
【化7】

【0042】

一般式(E1)、(E2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、Yは炭素数2〜20のアルキレン基を表し、Xは、1〜300の数を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表す。
【0043】
一般式(E1)において、RはCHCH基であることが好ましく、(2)において、RはCH基であることが好ましい。
【0044】
一般式(E1)、(E2)において、Yは、上記の通り、炭素数2〜20のアルキレン基を表すが、Yは、得られるカチオン性基含有共重合体の共重合性の面から、好ましくは炭素数2〜4のアルキレン基であり、より好ましくは炭素数2〜3のアルキレン基であり、更に好ましくは炭素数2のアルキレン基である。Yは、1種類のアルキレン基であっても、2種以上のアルキレン基であっても良い。
は具体的には、エチレン基、イソプロピル基、ブチレン基、オクチレン基、フェニルエチレン基、ジフェニルエチレン基等である。Yは、得られるカチオン性基含有共重合体の析出抑制能が向上することから、好ましくはエチレン基、イソプロピル基、ブチレン基が好ましく、より好ましくはエチレン基、イソプロピル基であり、更に好ましくはエチレン基である。
一般式(E1)、(E2)中、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基であるが、具体的な炭素数1〜20の有機基、これらの好ましい形態は、カチオン性基含有単量体における炭素数1〜20の有機基と同様である。
は好ましくはアルキレンオキサイド由来のアルキレン基である。当該アルキレンオキサイドとしては、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、イソブチレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、2−ブテンオキサイド、ブタジエンモノオキサイド、スチレンオキサイド等である。
【0045】
上記の通り、一般式(E1)、(E2)において、Xは、1〜300の数を表すが、Xは10〜150であることが好ましい。
【0046】
一般式(E1)、(E2)において、Rは、上述の通り、水素原子又は炭素数1〜20の有機基であるが、Rは好ましくは炭素数4〜18の有機基であることが好ましく、炭素数6〜16の有機基であることがより好ましい。
【0047】
本発明のカチオン性基含有共重合体が、アルカリ条件下においても安定して鉄イオン沈着防止能を発現することから、単量体(E)は、エステル基、アミド基を含有しないことが好ましい。
【0048】
その他の単量体(E)由来の構成単位(e)は、単量体(E)、すなわち上記式(E1)または(E2)において、不飽和二重結合(CH=CH−)が単結合(−CH−CH−)になった形態となる。
【0049】
本発明のカチオン性基含有共重合体は、任意であるが、所望に応じて単量体(E)由来の構造単位(e)を全単量体由来の構造100質量%に対して、0質量%以上50質量%以下の割合で有することができる。本発明において、単量体とは、不飽和二重結合(炭素炭素二重結合をいう)を有する化合物を言う。
【0050】
<カチオン性基含有共重合体の構造>
本発明のカチオン性基含有共重合体は、上記構成単位(n)、(b)、ならびに必要であれば構成単位(e)が、上記したような特定の割合で導入されていればよく、各構成単位は、ブロック状あるいはランダム状のいずれで存在していてもよい。また、本発明のカチオン性基含有共重合体の重量平均分子量は、適宜設定できるものであり、特に限定されない。具体的には、カチオン性基含有共重合体の重量平均分子量は、2,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜100,000、最も好ましくは4,000〜50,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、鉄イオン沈着防止能が向上する傾向にある。なお、本明細書において、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値であり、具体的な測定方法は実施例に記載される方法に従って算出される。
【0051】
〔本発明のカチオン性基含有共重合体組成物〕
本発明のカチオン性基含有共重合体組成物は、本発明のカチオン性基含有共重合体を必須として含有し、カチオン性基含有共重合体のみを含んでいても良いが、通常はその他に、重合開始剤残渣、残存モノマー、重合時の副生成物、水分から選ばれる1以上を含有する。本発明のカチオン性基含有共重合体組成物は、本発明のカチオン性基含有共重合体組成物100質量%に対し、本発明のカチオン性基含有共重合体を1〜100質量%含有することが好ましい。好ましいカチオン性基含有共重合体組成物の形態の一つは、カチオン性基含有共重合体を40〜60質量%含有し、水を40〜60質量%含有する形態である。
【0052】
〔本発明のカチオン性基含有共重合体の製造方法〕
本発明のカチオン性基含有共重合体の製造方法は、特に断りの無い限りは、公知の重合方法を同様にしてあるいは修飾した方法が使用できる。本発明のカチオン性基含有共重合体を製造する方法としては、カチオン性基含有単量体(N)、カルボキシル基含有単量体(B)を必須成分として含む単量体成分を共重合することにより製造することができる。また、単量体成分を共重合する際には、必要に応じ、上記その他の単量体(E)を更に共重合させてもよい。
【0053】
このような製造方法においては、重合開始剤を用いて単量体成分を共重合すればよい。なお、カチオン性基含有共重合体を構成する構成単位が上述したようになるように、単量体成分に含まれる単量体の種類や使用量を適宜設定することになる。すなわち、上記カチオン性基含有共重合体を形成する各単量体の組成比は、全単量体に対して、カチオン性基含有単量体(N)が1質量%以上70質量%以下、カルボキシル基含有単量体(B)が30質量%以上99質量%以下である。上述したように、さらにこれらと共重合可能な上記その他の単量体(E)を、単量体(A)、(B)の合計を100質量%とした場合に、0〜50質量%の量で使用してもよい。より好ましくは、カチオン性基含有単量体(N)が5質量%以上60質量%以下、カルボキシル基含有単量体(B)が40質量%以上95質量%以下であり、さらに好ましくは、カチオン性基含有単量体(N)が10質量%以上50質量%以下、カルボキシル基含有単量体(B)が50質量%以上90質量%以下である。なお、上記単量体(N)、(B)及び(E)の合計量は100質量%としている。
【0054】
<重合開始剤>
上記開始剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4’−アゾビス−4−シアノパレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物等が好適である。これらの重合開始剤のうち、過酸化水素、過硫酸塩が好ましく、過硫酸塩が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。例えば、過酸化水素と過硫酸塩の組み合わせは好ましい形態である。
【0055】
<連鎖移動剤>
本発明のカチオン性基含有共重合体の製造方法は、必要に応じ、重合に悪影響を及ぼさない範囲内で、重合体の分子量調整剤として連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、具体的には、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2−メルカプトプロピオン際、3−メルカプトプロピオン際、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル、2−メルカプトエタンスルホン酸、n−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ブチルチオグリコレート等の、チオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等の、ハロゲン化物;イソプロパノール、グリセリン等の、第2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸、及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)や、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、及びその塩(亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)等の、低級酸化物およびその塩などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤を使用すると、製造されるカチオン性基含有共重合体が必要以上に高分子量化することを抑制し、低分子量のカチオン性基含有共重合体を効率よく製造することができるという利点がある。これらのうち、本発明に係る共重合反応においては、亜硫酸や亜硫酸塩を用いることが好適である。これにより、得られるカチオン性基含有共重合体の主鎖末端に定量的にスルホン酸基を導入することができるととなり、耐ゲル性を向上することが可能となる。
本発明の製造方法において、上述したように、亜硫酸および/または亜硫酸塩(以下、単に「亜硫酸(塩)」と記載する)を連鎖移動剤として使用することは好ましい形態であるが、その場合、亜硫酸(塩)に加えて開始剤を使用する。さらに、反応促進剤として、重金属イオンを併用してもよい。
上記亜硫酸(塩)としては、亜硫酸若しくは亜硫酸水素またはこれらの塩をいい、亜硫酸/亜硫酸水素が塩である形態が好適である。亜硫酸/亜硫酸水素が塩である場合、上記した例に加えて、金属原子、アンモニウム又は有機アンモニウムの塩が好適である。上記金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の一価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の二価の金属原子;アルミニウム、鉄等の三価の金属原子等の塩が好ましい。また、有機アンモニウム(有機アミン)としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノ
ールアミンや、トリエチルアミン等が好適である。更に、アンモニウムであってもよい。ゆえに、本発明で好ましく使用される亜硫酸塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸アンモニウム等が挙げられ、亜硫酸水素ナトリウムが特に好適である。上記亜硫酸(塩)は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0056】
<反応促進剤>
本発明のカチオン性基含有共重合体の製造方法は、開始剤などの使用量を低減する等の目的で反応促進剤を加えても良い。反応促進剤としては、重金属イオンが例示される。本発明で重金属イオンとは、比重が4g/cm以上の金属を意味する。上記金属イオンとしては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム等が好ましい。これらの重金属は1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、鉄がより好ましい。上記重金属イオンのイオン価は特に限定されるものではなく、例えば、重金属として鉄が用いられる場合、開始剤における鉄イオンとしては、Fe2+であっても、Fe3+であってよく、これらが組み合わされていてもよい。
上記重金属イオンは、イオンの形態として含まれるものであれば特に限定されないが、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いる方法を用いると、取り扱い性に優れるため好適である。その際に用いる重金属化合物は、開始剤に含有することを所望する重金属イオンを含むものであればよく、用いる開始剤に応じて決定することができる。上記重金属イオンとして鉄を用いる場合、モール塩(Fe(NH4)2(SO4)2・6H2O)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄等の重金属化合物等を用いることが好ましい。また、重金属イオンとしてマンガンを用いる場合、塩化マンガン等を好適に用いることができる。これらの重金属化合物を用いる場合においては、いずれも水溶性の化合物であるため、水溶液の形態として用いることができ、取り扱い性に優れることになる。なお、上記重金属化合物を溶解してなる溶液の溶媒としては、水に限定されるものではなく、本発明のカチオン性基含有共重合体の製造において、重合反応を妨げるものでなく、かつ、重金属化合物を溶解するものであればよい。
【0057】
上記重金属イオンの添加方法は特に限定されないが、単量体の滴下終了前までに添加することが好ましく、全量初期仕込することが特に好ましい。また、使用量としては反応液全量に対して100ppm以下であることが好ましいが、より好ましくは70ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下、特に好ましくは30ppm以下である。100ppmを越えると添加した効果はもはや見られず、また得られた共重合体の着色が大きく洗剤組成物として用いる場合などには使用できない恐れがあるため好ましくない。
【0058】
上記重金属イオンの含有量は、また、重合反応完結時における重合反応液の全質量に対して好ましくは0.1〜10ppmであることが好ましい。重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。一方、重金属イオンの含有量が10ppmを超えると、得られる共重合体の色調の悪化を来たすおそれがある。また、重金属イオンの含有量が多いと、生成物である共重合体を洗剤ビルダーとして用いる場合に、着色汚れの原因となるおそれがある。
【0059】
なお、上記重合反応完結時とは、重合反応液中において重合反応が実質的に完了し、所望する重合体が得られた時点を意味する。例えば、重合反応液中において重合された重合体がアルカリ成分で中和される場合には、中和した後の重合反応液の全質量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。
【0060】
本発明のカチオン性基含有共重合体の製造方法において、重合の際には、上述した化合物等に加えて、重合開始剤の分解触媒や還元性化合物を反応系に添加してもよい。重合開始剤の分解触媒としては、例えば、塩化リチウム、臭化リチウム等のハロゲン化金属;酸化チタン、二酸化ケイ素等の金属酸化物;塩酸、臭化水素酸、過塩素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の金属塩;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ラク酸、イソラク酸、安息香酸等のカルボン酸、そのエステルおよびその金属塩;ピリジン、インドール、イミダゾール、カルバゾール等の複素環アミンおよびその誘導体等が挙げられる。これらの分解触媒は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
また、還元性化合物としては、例えば、フェロセン等の有機金属化合物;ナフテン酸鉄、ナフテン酸銅、ナフテン酸ニッケル、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン等の、鉄、銅、ニッケル、コバルト、マンガン等の金属イオンを発生できる無機化合物;三フッ化ホウ素エーテル付加物、過マンガン酸カリウム、過塩素酸等の無機化合物;二酸化硫黄、亜硫酸塩、硫酸エステル、重亜硫酸塩、チオ硫酸塩、スルホキシ酸塩、ベンゼンスルフィン酸とその置換体、パラトルエンスルフィン酸等の環状スルフィン酸の同族体等の硫黄含有化合物;オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、メルカプトエタノール、α−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、チオプロピオン酸、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホプロピルエステル、α−チオプロピオン酸ナトリウムスルホエチルエステル等のメルカプト化合物;ヒドラジン、β−ヒドロキシエチルヒドラジン、ヒドロキシルアミン等の窒素含有化合物;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソバレリアンアルデヒド等のアルデヒド類;アスコルビン酸等が挙げられる。これらの還元性化合物もまた、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。メルカプト化合物等の還元性化合物は、連鎖移動剤として添加してもよい。
上記連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせは、特に制限されず、上記各例示の中から適宜選択できる。例えば、連鎖移動剤、開始剤及び反応促進剤の組み合わせとしては、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/過酸化水素、亜硫酸水素ナトリウム/酸素/Fe等の形態が好ましい。より好ましくは、過硫酸ナトリウム/過酸化水素、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Fe、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Feであり、最も好ましくは亜硫酸水素ナトリウム/過硫酸ナトリウム/Fe、過硫酸ナトリウム/過酸化水素/Feである。
【0062】
<重合開始剤等の使用量>
開始剤の使用量は、単量体(N)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(E)の共重合を開始できる量であれば特に制限されないが、単量体(N)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(E)からなる全単量体成分1モルに対して、15g以下、より好ましくは1〜12gであることが好ましい。
【0063】
開始剤として、過酸化水素を使用する場合、過酸化水素の添加量は、単量体1molに対して1.0〜10.0gであることが好ましく、2.0〜8.0gであることがより好ましい。過酸化水素の添加量が2.0g未満であると、得られる共重合体の重合平均分子量が高くなる傾向にある。一方、添加量が10.0gを超えると過酸化水素の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに残存する過酸化水素量が多くなるなどの悪影響を及ぼす。
【0064】
開始剤として、過硫酸塩を使用する場合、過硫酸塩の添加量は、単量体1molに対して1.0〜5.0gであることが好ましく、2.0〜4.0gであることがより好ましい。過硫酸塩の添加量がこれより少なすぎると、得られる共重合体の分子量が高くなる傾向がある。一方、添加量が多すぎると、過硫酸塩の効果が添加量に伴うほど得られなくなり、さらに、得られる共重合体の純度が低下するなど悪影響を及ぼすことになる。
【0065】
開始剤として過酸化水素と過硫酸塩を併用する場合、過酸化水素および過硫酸塩の添加比率は、重量比で過酸化水素の重量が1としたときに、過硫酸塩の重量が0.1〜5.0であることが好ましく、0.2〜2.0であることがより好ましい。過硫酸塩の重量比が0.1未満であると、得られる共重合体の重量平均分子量も高くなる傾向がある。一方、過硫酸塩の重量比が5.0を超えると、過硫酸塩の添加による分子量低下の効果が添加に伴うほど得られない状態で、重合反応系において過硫酸塩が無駄に消費されることになる。
【0066】
過酸化水素の添加方法としては、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の85重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは90重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過酸化水素は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
【0067】
過酸化水素の滴下は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体(初期仕込みする単量体を除く)の滴下開始後、遅らせて開始することが好ましい。好ましくはカルボキシル基含有単量体の滴下開始後1分以上経過後、更に好ましくは3分以上経過後、より好ましくは5分以上経過後、最も好ましくは10分以上経過後に過酸化水素の滴下を開始することである。過酸化水素の滴下開始時間を遅らすことにより、初期の重合開始をスムーズにし、分子量分布を狭くすることが可能となる。
過酸化水素の滴下開始時間を遅らす時間は、単量体の滴下開始後60分以内であることが好ましく、30分以内であることがより好ましい。
過酸化水素の滴下を単量体の滴下と同時に開始すること、単量体の滴下前に予め過酸化水素を仕込むことも可能であるが、予め過酸化水素を仕込む場合は、必要所定量の10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
単量体の滴下開始時間までに必要所定量の10%を超える過酸化水素を添加すると、例えば過硫酸塩を併用する場合には過硫酸塩に対する過酸化水素の濃度の比率が大きくなり、重合が停止するおそれがある。一方、単量体の滴下開始時間から60分より遅く開始すると、過酸化水素による連鎖移動反応等が起こらなくなる為、重合初期の分子量が高くなる。
【0068】
過酸化水素の滴下終了時間は、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、単量体の滴下終了時間と同時に終了することが好ましく、単量体滴下終了時間よりも10分以上早く終了することがより好ましく、30分以上早く終了することが特に好ましい。なお、単量体の滴下終了時間より遅く終了しても、重合系において特に悪影響を及ぼすものではない。ただ、添加した過酸化水素が重合終了時までに完全には分解しないため、過酸化水素としての効果が得られず無駄となり、また、過酸化水素が多量に残存する恐れがあることから、得られた共重合体の熱的安定性に悪影響を及ぼす可能性があるため好ましくはない。
【0069】
また、過硫酸塩の添加方法としては、その分解性等を鑑み、特に限定はされないが、全使用量に対し、実質的に連続的に滴下する量が必要所定量の50重量%以上であることが好ましく、特に好ましくは80重量%以上であり、全量を滴下することが最も好ましい。過硫酸塩は連続的に滴下するが、その滴下速度は変えてもよい。
【0070】
滴下時間においても特には限定されないが、後述する重合温度、重合時のpHにおける条件下において、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩等、比較的分解の早い開始剤においては、単量体の滴下終了時間まで滴下することが好ましく、単量体滴下終了後から30分以内に終了することがより好ましく、単量体滴下後5分〜20分以内に終了することが特に好ましい。これにより、共重合体における単量体の残量を著しく減じることが出来る効果を見出せる。なお、単量体の滴下終了前に、これら開始剤の滴下を終了しても、重合に特に悪影響を及ぼすものではなく、得られた共重合体中における単量体の残存量に応じて設定すれば良いものである。
【0071】
これら比較的分解の早い開始剤について、滴下終了時間についてのみ好ましい範囲を述べたが、滴下開始時間は何ら限定されるものではなく、適宜設定すれば良い。例えば、場合によっては単量体の滴下開始前に開始剤の滴下を開始しても良いし、或は特に併用系の場合においては、一つの開始剤の滴下を開始し、一定の時間が経過してから、或は終了してから別の開始剤の滴下を開始しても良い。何れも、開始剤の分解速度、単量体の反応性に応じて適宜設定すれば良い。
【0072】
添加時のラジカル重合開始剤の濃度は、特には限定されないが、好ましくは5〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。開始剤の濃度が5重量%未満であると、結果的に重合中の単量体濃度が非常に低くなるので、単量体の重合性が非常に悪くなり得られる共重合体中における単量体の残存量が非常に多くなる。また輸送等の効率や生産性も低くなり経済的な面からも好ましくない。逆に60重量%を超えると、安全性や滴下の簡便性の面で問題となる。
本発明の方法において、連鎖移動剤の添加量は、単量体(N)、(B)ならびに必要であれば他の単量体(E)が良好に重合する量であれば制限されないが、好ましくは単量体(N)、(B)、ならびに必要であれば他の単量体(E)からなる全単量体成分1モルに対して、1〜20g、より好ましくは2〜15gである。1g未満であると、分子量の制御ができないおそれがあり、逆に、20gを超えると、不純物が多量に生成し、重合体純分が低下するおそれがあり、特に亜硫酸塩を使用する場合には、余剰の亜硫酸塩が反応系中で分解され、亜硫酸ガスが発生するおそれがある。しかも、経済的にも不利となるおそれがある。
上記開始剤と連鎖移動剤との組み合わせとしては、過硫酸塩と亜硫酸塩とをそれぞれ1種以上用いることが最も好ましい。この場合、過硫酸塩と亜硫酸塩との混合比は、特に制限されないが、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩0.5〜5質量部を用いることが好ましい。より好ましくは、過硫酸塩1質量部に対して、亜硫酸塩の下限は、1質量部であり、最も好ましくは2質量部である。また、亜硫酸塩の上限は、過硫酸塩1質量部に対して、より好ましくは4質量部であり、最も好ましくは3質量部である。ここで、亜硫酸塩が0.5質量部未満であると、低分子量化する際に開始剤総量が増加するおそれがあり、逆に5質量部を超えると、副反応が増加し、それによる不純物が増加するおそれがある。
上記連鎖移動剤、開始剤、及び反応促進剤の総使用量は、単量体(N)、(B)、ならびに必要であれば他の単量体(E)からなる全単量体成分1モルに対して、2〜20gであることが好ましい。このような範囲とすることで、本発明のカチオン性基含有共重合体を効率よく生産することができ、また、カチオン性基含有共重合体の分子量分布を所望のものとすることができる。より好ましくは、4〜18gであり、更に好ましくは、6〜15gである。
上記重合開始剤及び連鎖移動剤の反応容器への添加方法としては、滴下、分割投入等の連続投入方法を適用することができる。また、連鎖移動剤を単独で反応容器へ導入しても
よく、単量体成分を構成する各単量体(N)、(B)やその他の単量体(E)、溶媒等とあらかじめ混同しておいてもよい。
【0073】
<重合溶媒>
本発明において、単量体(N)、(B)、さらに必要であれば他の単量体(E)の共重合は、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いる、および/または連鎖移動剤の存在下で行なうことが好ましく、使用する溶媒の50質量%以上に水を用い、かつ連鎖移動剤の存在下で行なうことがより好ましい。この際、使用する溶媒の50質量%以上に水を用いることによって、重合に使用される有機溶剤の量を抑制できるため、重合終了後の有機溶剤の留去が容易であるという利点がある。
【0074】
したがって、本発明の製造方法の好ましい形態は、1質量%以上70質量%以下の式(1)のカチオン性基含有単量体(N)、30質量%以上99質量%以下の式(2)のカルボキシル基含有単量体(B)、必要に応じてその他の単量体(E)(ただし、単量体(N)、(B)、及び(E)の合計比率は100質量%である)を、使用する溶媒の50質量%以上に水を用い、かつ連鎖移動剤を用いて重合反応を行なう工程を含む、カチオン性基含有共重合体の製造方法に関するものである。
上記態様で使用される溶媒としては、使用する溶媒全量に対して50質量%の割合で水を含むものであれば特に制限されない。重合に使用される単量体の溶媒への溶解性向上という観点から、必要に応じて、有機溶媒を添加してもよい。この場合においても、全混合溶媒中の水の含量は50質量%以上である。この際使用できる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等の低級ケトン類;ジメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で試用されてもよい。本発明では、水の量は、使用する溶媒全量に対して、好ましくは80質量%以上であることが好ましく、最も好ましくは水単独(即ち、100質量%)である。上記有機溶媒を添加する場合は、単量体成分及び得られる共重合体の溶解性の点から、水及び炭素数1〜4の低級アルコールからなる群より選択される1種又は2種以上の溶媒を用いることが好ましい。
水等の溶媒の使用量としては、単量体成分100質量%に対して40〜200質量%が好ましい。より好ましくは、45質量%以上であり、更に好ましくは、50質量%以上である。また、より好ましくは、180質量%以下であり、更に好ましくは、150質量%以下である。溶媒の使用量が40質量%未満であると、得られる共重合体の分子量が高くなるおそれがあり、200質量%を超えると、得られる共重合体の濃度が低くなり、溶媒除去が必要となるおそれがある。なお、溶媒は、重合初期に一部又は全量を反応容器内に仕込んでおけばよいが、溶媒の一部を重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよいし、単量体成分や開始剤等を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合反応中に反応系内に添加(滴下)してもよい。
上記共重合方法において、単量体成分や重合開始剤等の反応容器への添加方法としては、反応容器に単量体成分の全てを仕込み、重合開始剤を反応容器内に添加することによって共重合を行う方法;反応容器に単量体成分の一部を仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分を反応容器内に連続してあるいは段階的に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法;反応容器に重合溶媒を仕込み、単量体成分と重合開始剤の全量を添加する方法;単量体(N)、(B)、場合により(E)のうちの一(例えば、単量体(B))の一部を反応容器に仕込み、重合開始剤と残りの単量体成分(単量体(B)の残り及び単量体(N)ならびに必要であれば単量体(E)のすべて)を反応容器内に(好ましくは連続して)添加することによって共重合を行う方法等が好適である。このような方法の中でも、得られる共重合体の分子量分布を狭く(シャープに)することができ、洗剤ビルダーとして用いる場合の分散性を向上することができうることから、重合開始剤と単量体成分を反応容器に逐次滴下する方法で共重合を行うことが好ましい。
上記共重合方法としては、例えば、溶液重合やバルク重合、懸濁重合、乳化重合等の通常用いられる方法で行うことができ、特に限定されるものではないが、溶液重合が好ましい。この際使用できる溶媒は、上述したように、全溶媒に対して50質量%が水である混合溶媒または水であることが好ましい。水のみを使用する場合には、脱溶剤工程を省略できる点で好適である。
上記共重合方法は、回分式でも連続式でも行うことができる。
上記共重合方法において、共重合温度等の共重合条件としては、用いられる共重合方法、溶媒、重合開始剤により適宜定められるが、共重合温度としては、通常、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは、40℃以上であり、更に好ましくは、60℃以上であり、特に好ましくは、80℃以上である。また、より好ましくは、120℃以下であり、更に好ましくは、110℃以下である。特に、亜硫酸(塩)を用いる場合には、共重合温度は、通常、60℃〜95℃、好ましくは70℃〜95℃、さらに好ましくは、80℃〜95℃である。この際、60℃未満では、
亜硫酸(塩)由来の不純物が多量に生成するおそれがある。逆に、95℃を越えると、有毒な亜硫酸ガスが放出されるおそれがある。
上記共重合温度は、重合反応において、常にほぼ一定に保持する必要はなく、例えば、室温から重合を開始し、適当な昇温時間又は昇温速度で設定温度まで昇温し、その後、設定温度を保持するようにしてもよいし、単量体成分や開始剤等の滴下方法に応じて、重合反応中に経時的に温度変動(昇温又は降温)させてもよい。
【0075】
<重合時間、重合圧力、重合pH>
重合時間は特に制限されないが、好ましくは30〜420分であり、より好ましくは45〜390分であり、さらに好ましくは60〜360分であり、最も好ましくは90〜300分である。なお、本発明において、「重合時間」とは、特に断らない限り、単量体を添加している時間を表す。
上記共重合方法における反応系内の圧力としては、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下の何れであってもよいが、得られる共重合体の分子量の点で、常圧下、又は、反応系内を密閉し、加圧下で行うのが好ましい。また、加圧装置や減圧装置、耐圧性の反応容器や配管等の設備の点で、常圧(大気圧)下で行うのが好ましい。反応系内の雰囲気としては、空気雰囲気でもよいが、不活性雰囲気とするのが好ましく、例えば、重合開始前に系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。
上記共重合における重合中のpHは、酸性が好ましい。特に、上記開始剤として、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、酸性条件下で行うことが好ましい。酸性条件下で行うことによって、重合反応系の水溶液の粘度の上昇を抑制し、共重合体を良好に製造することができる。また、高濃度の条件下で重合反応を進行させることができるので、製造効率を大幅に上昇することができ、最終固形分濃度が40%以上の高濃度重合とすることができ、含まれる残存モノマーの総濃度が30000ppm以下のものを得ることができる。更に、アミノ基含有単量体の重合性を向上することができる。
上記酸性条件としては、重合中の反応溶液の25℃でのpHが1〜6であることが好ましい。より好ましくは、5以下であり、更に好ましくは、3以下である。上記共重合方法により得られる共重合体は、そのままでも洗剤組成物(洗剤ビルダー)の主成分等として用いることができるが、必要に応じて、更にアルカリ性物質で中和して用いてもよい。アルカリ性物質としては、一価金属及び二価金属の水酸化物、塩化物及び炭酸塩等の無機塩;アンモニア;有機アンモニウム(有機アミン)等を用いることが好ましい。
共重合を行う際の中和率は、開始剤によって適宜変更できる。例えば、過硫酸塩と重亜硫酸塩とを併用する場合は、カルボキシル基含有単量体等の酸基含有単量体の酸基の合計量に対して、単量体の中和率を0〜60モル%として単量体成分の共重合を行うことが好ましい。単量体の中和率は、単量体の全モル数を100モル%としたときに、塩を形成している単量体のモル%で表されることになる。単量体の中和率が60モル%を超えると、共重合工程における重合率が上がらず、得られる共重合体の分子量が低下したり、製造効率が低下したりするおそれがある。より好ましくは、50モル%以下であり、更に好ましくは、40モル%以下、特に好ましくは、30モル%以下であり、より特に好ましくは、20モル%以下であり、最も好ましくは、10モル%以下である。
また、過硫酸塩と過酸化水素を併用する場合は、カルボキシル基含有単量体等の酸基含有単量体の酸基の合計量に対して、99mol%以下、好ましくは50〜95mol%以下である。中和度が50mol%未満であると過酸化水素の分解が十分に起こらず、重量平均分子量が高くなる傾向がある。また99mol%を越えると強アルカリ性の腐食性条件となるため、高温では製造設備が腐食する恐れがあり、さらに、アルカリによって過酸化水素が分解してしまうため、添加量が多くなってしまうという恐れもある。重合終了後(即ち単量体滴下終了後)の中和度は、残存する過酸化水素の分解を促進するために、カルボキシル基含有単量体およびカチオン性基含有単量体の酸量の合計量に対して、好ましくは80mol%以上、より好ましくは90mol%以上、さらに好ましくは95mol%以上とする。
上記単量体の中和率を0〜60モル%として共重合を行う方法としては、例えば、単量体が不飽和カルボン酸系単量体である場合、全て酸型である不飽和カルボン酸系単量体を中和せずに共重合に付することにより行う方法や、不飽和カルボン酸系単量体をアルカリ性物質を用いてナトリウム塩やアンモニウム塩等の塩の形態に中和するときに中和率を0〜60モル%としたものを共重合に付することにより行う方法等が好適である。
【0076】
[共重合体、重合体組成物の用途]
本発明のカチオン性基含有共重合体(または重合体組成物)は、水処理剤、繊維処理剤、分散剤、洗剤ビルダー(または洗剤組成物)、スケール防止剤(スケール抑制剤)、金属イオン封止剤、増粘剤、各種バインダー、乳化剤、スキンケア剤、ヘアケア剤等として用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0077】
<水処理剤>
本発明のカチオン性基含有共重合体(または重合体組成物)は、水処理剤に用いることができる。該水処理剤には、必要に応じて、他の配合剤として、重合リン酸塩、ホスホン酸塩、防食剤、スライムコントロール剤、他のキレート剤を用いても良い。
【0078】
上記水処理剤は、冷却水循環系、ボイラー水循環系、海水淡水化装置、パルプ蒸解釜、黒液濃縮釜等でのスケール防止に有用である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでもよい。
【0079】
<繊維処理剤>
本発明のカチオン性基含有共重合体(または重合体組成物)は、繊維処理剤に用いることができる。該繊維処理剤は、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つと、本発明のカチオン性基含有共重合体(または重合体組成物)を含む。
【0080】
上記繊維処理剤における本発明のカチオン性基含有共重合体の含有量は、繊維処理剤全体に対して、好ましくは1〜100重量%であり、より好ましくは5〜100重量%である。また、性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0081】
以下に、より実施形態に近い、繊維処理剤の配合例を示す。この繊維処理剤は、繊維処理における精錬、染色、漂白、ソーピングの工程で使用することができる。染色剤、過酸化物および界面活性剤としては繊維処理剤に通常使用されるものが挙げられる。
【0082】
本発明のカチオン性基含有共重合体と、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つとの配合比率は、例えば、繊維の白色度、色むら、染色けんろう度の向上のためには、繊維処理剤純分換算で、本発明のカチオン性基含有共重合体1重量部に対して、染色剤、過酸化物および界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも1つを0.1〜100重量部の割合で配合された組成物を繊維処理剤として用いることが好ましい。
【0083】
上記繊維処理剤を使用できる繊維としては、任意の適切な繊維を採用し得る。例えば、木綿、麻等のセルロース系繊維、ナイロン、ポリエステル等の化学繊維、羊毛、絹糸等の動物性繊維、人絹等の半合成繊維およびこれらの織物および混紡品が挙げられる。
【0084】
上記繊維処理剤を精錬工程に適用する場合は、本発明のカチオン性基含有共重合体と、アルカリ剤および界面活性剤とを配合することが好ましい。漂白工程に適用する場合では、本発明のカチオン性基含有共重合体と、過酸化物と、アルカリ性漂白剤の分解抑制剤としての珪酸ナトリウム等の珪酸系薬剤とを配合することが好ましい。
<無機顔料分散剤>
本発明のカチオン性基含有共重合体(または重合体組成物)は、無機顔料分散剤に用いることができる。該無機顔料分散剤には、必要に応じて、他の配合剤として、縮合リン酸およびその塩、ホスホン酸およびその塩、ポリビニルアルコールを用いても良い。
【0085】
上記無機顔料分散剤中における、本発明のカチオン性基含有共重合体の含有量は、無機顔料分散剤全体に対して、好ましくは5〜100重量%である。また性能、効果に影響しない範囲で、任意の適切な水溶性重合体を含んでいてもよい。
【0086】
上記無機顔料分散剤は、紙コーティングに用いられる重質ないしは軽質炭酸カルシウム、クレイの無機顔料の分散剤として良好な性能を発揮し得る。例えば、無機顔料分散剤を無機顔料に少量添加して水中に分散することにより、低粘度でしかも高流動性を有し、かつ、それらの性能の経日安定性が良好な、高濃度炭酸カルシウムスラリーのような高濃度無機顔料スラリーを製造することができる。
【0087】
上記無機顔料分散剤を無機顔料の分散剤として用いる場合、該無機顔料分散剤の使用量は、無機顔料100重量部に対して、0.05〜2.0重量部が好ましい。該無機顔料分散剤の使用量が上記範囲内にあることによって、十分な分散効果を得ることが可能となり、添加量に見合った効果を得ることが可能となり、経済的にも有利となり得る。
【0088】
<洗剤ビルダー>
本発明の重合体、重合体組成物は、洗剤ビルダーとして用いられうる。洗剤ビルダーとしては、衣料用、食器用、住居用、毛髪用、身体用、歯磨き用、及び自動車用など、様々な用途の洗剤に添加されて使用されうる。
【0089】
<洗剤組成物>
本発明のカチオン性基含有共重合体(または重合体組成物)は、洗剤組成物にも添加しうる。
【0090】
洗剤組成物における当該カチオン性基含有共重合体の含有量は特に制限されない。ただし、優れた鉄イオン沈着防止能やビルダー性能を発揮しうるという観点からは、カチオン性基含有共重合体の含有量は、洗剤組成物の全量に対して、好ましくは0.1〜15質量%であり、より好ましくは0.3〜10質量%であり、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0091】
洗剤用途で用いられる洗剤組成物には、通常、洗剤に用いられる界面活性剤や添加剤が含まれる。これらの界面活性剤や添加剤の具体的な形態は特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0092】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される1種または2種以上である。2種以上が併用される場合、アニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤との合計量は、界面活性剤の全量に対して50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、特に好ましくは80質量%以上である。
【0093】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステルまたはその塩、アルケニルリン酸エステルまたはその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0094】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0095】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0096】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10〜60質量%であり、好ましくは15〜50質量%であり、さらに好ましくは20〜45質量%であり、特に好ましくは25〜40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【0097】
添加剤としては、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等の汚れ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適である。また、粉末洗剤組成物の場合にはゼオライトを配合することが好ましい。
【0098】
上記洗剤組成物は、本発明のカチオン性基含有共重合体(または重合体組成物)に加えて、他の洗剤ビルダーを含んでもよい。他の洗剤ビルダーとしては、特に制限されないが、例えば、炭酸塩、炭酸水素塩、珪酸塩などのアルカリビルダーや、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩、ボウ硝、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、クエン酸塩、(メタ)アクリル酸の共重合体塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体、フマル酸塩、ゼオライト等のキレートビルダー、カルボキシメチルセルロース等の多糖類のカルボキシル誘導体等が挙げられる。上記ビルダーに用いられる対塩としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、アンモニウム、アミン等が挙げられる。
【0099】
上記添加剤と他の洗剤用ビルダーの合計の配合割合は、通常、洗浄剤組成物100質量%に対して0.1〜50質量%が好ましい。より好ましくは0.2〜40質量%であり、さらに好ましくは0.3〜35質量%であり、特に好ましくは0.4〜30質量%であり、最も好ましくは0.5〜20質量%以下である。添加剤/他の洗剤ビルダーの配合割合が0.1質量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなる虞があり、50質量%を超えると経済性が低下する虞がある。
【0100】
なお、上記洗剤組成物の概念には、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含まれる。
【0101】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物の全量に対して0.1〜75質量%であることが好ましく、より好ましくは0.2〜70質量%であり、さらに好ましくは0.5〜65質量%であり、さらにより好ましくは0.7〜60質量%であり、特に好ましくは1〜55質量%であり、最も好ましくは1.5〜50質量%である。
【0102】
上記洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、当該洗剤組成物は、カオリン濁度が200mg/L以下であることが好ましく、より好ましくは150mg/L以下であり、さらに好ましくは120mg/L以下であり、特に好ましくは100mg/L以下であり、最も好ましくは50mg/L以下である。
<カオリン濁度の測定方法>
厚さ10mmの50mm角セルに均一に攪拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製NDH2000(商品名、濁度計)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
上記洗浄剤組成物に配合することができる酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ及びアルカリセルラーゼが好ましい。
上記酵素の添加量は、洗浄剤組成物100質量%に対して5質量%以下であることが好ましい。5質量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなり、経済性が低下するおそれがある。
上記アルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。上記キレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸等が好適である。本発明における共重合体以外のその他の水溶性ポリカルボン酸系ポリマーを用いてもよい。
上記洗浄剤組成物は、分散能に優れ、更に、長期間保存した場合の性能低下や低温で保持した場合の不純物析出等が生じにくい極めて高品質剤性能で安定性に優れた洗剤とすることができる。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
また、単量体の定量、共重合体の重量平均分子量の測定及び評価は、下記方法に従って行なった。
【0104】
<カチオン性基含有単量体の測定方法>
カチオン性基含有単量体等の測定は、以下の条件の高速クロマトグラフィーで行った。
測定装置:東ソー株式会社製 8020シリーズ
カラム:株式会社資生堂製 CAPCELL PAK C1 UG120
温度:40.0℃
溶離液:10mmol/Lリン酸水素二ナトリウム・12水和物水溶液
(リン酸でpH7に調整)/アセトニトリル=45/55(体積比)
流速:1.0ml/min
検出器:RI、UV(検出波長215nm)。
【0105】
<カルボキシル基含有単量体の定量方法>
カルボキシル基含有単量体等の含有量の測定は、下記条件で、液体クロマトグラフィーを用いて行なった。
装置:株式会社日立製作所製 L−7000シリーズ
検出器:株式会社日立製作所製 UV検出器 L−7400
カラム:株式会社昭和電工製 Shodex RSpak DE−413
流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
移動相:0.1%リン酸水溶液。
【0106】
<重量平均分子量の測定条件>
装置:日立社製 L−7000シリーズ
検出器:RI
カラム:TSK guard column 、TSK gel α−2500 、TSK gel α−3000(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
流速:0.4ml/min
検量線:ジーエルサイエンス株式会社製 POLYETHYLENE GLYCOL
溶離液:ホウ酸水溶液(pH9.2)/アセトニトリル=5/1(質量比)。
【0107】
<固形分の測定>
窒素雰囲気下、130℃に加熱したオーブンで本発明の共重合体(本発明の共重合体組成物1.0gに水1.0gを加えたもの)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の重量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0108】
<鉄イオン沈着防止能の評価方法>
鉄イオン沈着防止能は以下の手順で測定した。
まず、測定サンプルの水溶液を調整した。即ち、固形分換算で0.03%のサンプル水溶液を150g調製した(A液)。
次に、鉄イオン水溶液を次のように調整した。即ち、塩化鉄(III) 6水和物を1.45gとり、純水を加えて1000gとした(B液)。
さらに、水酸化ナトリウム水溶液を次のように調整した。即ち、ペレット状の水酸化ナトリウムを1.5gとり、純水を加えて1000gとした(C液)。
A液、B液、C液100gずつをこの順に混合し5分間攪拌した後2時間静置した。
5C濾紙(55mm)、ブフナーロートを用いて吸引濾過した後1時間真空デシケータで乾燥させた。
色差計によってろ紙の白度を測定し、下記の式から鉄イオン沈着防止能を算出した。
鉄イオン沈着防止能
=(ポリマー添加時の白度−ポリマー無添加時の白度)/(ろ過前のろ紙の白度−ポリマー無添加時の白度)×100。
【0109】
<単量体等の分析>
カチオン性基含有単量体の製造における反応の進行は、HNMR、液体クロマトグラフィーで確認した。
カルボキシル基含有単量体は、液体クロマトグラフィーにより定量した。
【0110】
<合成例1>
還流冷却器、マグネチックスターラー、温度計、滴下ロートを備えた1000mLのガラス製4つ口フラスコに、トリメチルアミン塩酸塩239g、純水128gを仕込み、混合攪拌しながら、内温50℃に加温した。ここに、アリルグリシジルエーテル(以下、AGEと略す。)285gを内温50℃を維持しながら、3時間かけてゆっくりと滴下し、さらに1時間攪拌した。室温まで放冷した後、反応液をジエチルエーテル30mLで2回洗浄し、さらに残存するジエチルエーテルを留去することで、3−アリルオキシ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロリドを80wt%で含む水溶液640g(単量体(1))を得た(収率96モル%)。生成物は高速液体クロマトグラフィー、および、H−NMRより確認した。
【0111】
<合成例2>
還流冷却器、攪拌機、および、窒素導入管を備えた容量2000mLのガラス製4つ口フラスコに、ジエタノールアミン 315.4gを仕込み、窒素導入、および、攪拌しながら、液温を50℃に調整した。次に、攪拌しながら、AGE 349.3gをゆっくりと2時間かけて滴下した。液温は50℃〜60℃を保持した。滴下終了後、さらに、2時間、液温60℃で熟成して、中間体を得た。中間体(アリルグリシジルエーテルのエポキシ基にジエタノールアミンが付加した単量体)の生成は、高速液体クロマトグラフィー、および、H−NMRより確認した。
次に、還流冷却器、攪拌機、および、窒素導入管を備えた容量200mLのガラス製4つ口フラスコに、中間体 66.5gを仕込み、窒素導入、および、攪拌しながら、液温を50℃に調整した。次に、攪拌しながら、ヨウドメタン 43.5gをゆっくりと2時間かけて滴下した。液温は50℃〜60℃を保持した。滴下終了後、さらに、2時間、液温60℃で熟成して、単量体(2)を得た。単量体(2)(上記中間体のメチル化物)の生成は、高速液体クロマトグラフィー、および、1H−NMRより確認した。
【0112】
<実施例1>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 292.1gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、80%アクリル酸水溶液(以下、80%AAと略す。) 315.0g、80%単量体(1)水溶液 135.0g、15%過硫酸ナトリウム水溶液(以下、15%NaPSと略す。) 82.4g、および、35%亜硫酸水素ナトリウム水溶液(以下、35%SBSと略す。) 70.6gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAについては180分間、80%単量体(1)水溶液については160分間、15%NaPS、および、35%SBSについては190分間とした。滴下は連続的に行い、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%水酸化ナトリウム水溶液(以下、48%NaOHと略す。) 204.2gを、攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(1)の水溶液を得た。
【0113】
<実施例2>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 246.3gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、80%AA 342.0g、80%単量体(1)水溶液 85.5g、15%NaPS 83.9g、および、35%SBS 71.9gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAについては180分間、80%単量体(1)水溶液については160分間、15%NaPS、および、35%SBSについては190分間とした。滴下は連続的に行い、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH 221.7gを、攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(2)の水溶液を得た。
【0114】
<実施例3>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 146.9g、無水マレイン酸98.0g、および、80%単量体(1)水溶液 217.5gを仕込み、攪拌しながら、65℃まで昇温させた。次に、65℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、15%NaPS 66.7gを滴下した。滴下時間は、60分間とした。滴下は連続的に行い、滴下を通じて、滴下速度は一定とした。滴下終了後、さらに、60分間、重合反応液を65℃で熟成して、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH 150.0g、および、純水 89.7gを、攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(3)の水溶液を得た。
【0115】
<実施例4>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 380.5gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、80%AA 315.0g、80%単量体(2)水溶液 135.0g、15%NaPS 79.2g、および、35%SBS 67.9gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAについては180分間、80%単量体(2)水溶液については160分間、15%NaPS、および、35%SBSについては190分間とした。滴下は連続的に行い、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH 204.2gを、攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(4)の水溶液を得た。
【0116】
<実施例5>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2000mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水 302.3gを仕込み、攪拌しながら、90℃まで昇温させた。次に、90℃に保持された重合反応系中に、攪拌しながら、80%AA 342.0g、80%単量体(2)水溶液 85.5g、15%NaPS 81.8g、および、35%SBS 70.2gを、別々のノズルより、それぞれ滴下した。それぞれの滴下時間は、80%AAについては180分間、80%単量体(2)水溶液については160分間、15%NaPS、および、35%SBSについては190分間とした。滴下は連続的に行い、滴下を通じて、各成分の滴下速度は一定とした。滴下終了後、さらに、30分間、重合反応液を90℃で熟成して、重合を完結させた。その後、重合反応液を放冷し、48%NaOH 221.7gを、攪拌しながら重合反応液に徐々に滴下し、重合反応液を中和した。このようにして、重合体(5)の水溶液を得た。
【0117】
<比較例1>
還流冷却器、攪拌機を備えた容量2.5リットルのSUS製セパラブルフラスコに純水118gを仕込み、エチレンジアミン60gを添加した。その後、攪拌下、氷冷により15℃以下に保ちながら、乳鉢にて粉砕した無水マレイン酸98gを徐々に添加した。添加終了後30分以上反応させた後、48%の水酸化ナトリウム水溶液84gを徐々に添加し、マレイン酸−エチレンジアミンモノアミドモノマーの水溶液を得た。この水溶液を80℃で1時間攪拌することにより固形分濃度50%の比較重合体を得た。
【0118】
<実施例6>
実施例6では、実施例1〜5及び比較例1で得られた重合体について、上記方法に従って鉄イオン沈着防止能について評価を行なった。結果を表1にまとめた。
【0119】
【表1】

【0120】

表1から明らかなように、本発明の重合体は、従来の重合体と比較して良好な鉄イオン沈着防止能を有することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明のカチオン性基含有共重合体は、高い鉄イオン沈着防止能を有する。したがって、水処理剤、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、分散剤、洗浄剤、等の添加剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1質量%以上70質量%以下の下記式(N1)、(N2)で表されるカチオン性基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体(N)由来の構造単位(n)、
30質量%以上99質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)由来の構造単位(b)、を必須構成単位として有するカチオン性基含有共重合体。
【化1】


上記一般式(N1)、(N2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、R、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、Aはカウンターアニオンを表す。
【請求項2】
1質量%以上70質量%以下の下記式(N1)、(N2)で表されるカチオン性基含有単量体から選ばれる1種以上の単量体、
30質量%以上99質量%以下のカルボキシル基含有単量体(B)、
を必須として重合開始剤の存在下重合する、
カチオン性基含有共重合体の製造方法。
【化2】


上記一般式(N1)、(N2)中、Rは、水素原子またはCH基を表し、Rは、CH基、CHCH基または単結合を表わし、R、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜20の有機基を表し、Aはカウンターアニオンを表す。
【請求項3】
請求項1に記載のカチオン性基含有共重合体からなる洗剤ビルダー。

【公開番号】特開2011−116811(P2011−116811A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273195(P2009−273195)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】