説明

カチオン電着塗料の付き回り性の向上方法

【課題】高固形分型カチオン電着塗料を用いる電着塗装方法、特に持出し塗料のUFろ液洗浄回収工程を行なう電着塗装方法において、当該電着塗料の付き回り性を向上させること。
【解決手段】塗料固形分濃度が23.0〜30.0質量%、及び塗料灰分濃度が25.0〜30.0質量%であり、塗膜形成成分としてアミン変性エポキシ樹脂を含有する高固形分型カチオン電着塗料の付き回り性の向上方法であって、数平均分子量が2000以下であり、アミン価が150〜500mmol/100gであるアミノ基含有化合物を該高固形分型カチオン電着塗料に添加する工程を包含する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカチオン電着塗装方法に関し、特に塗装水洗工程時間が短縮されたカチオン電着塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、自動車車体等の大型で複雑な形状を有し、高い防錆性が要求される被塗物の下塗り塗装方法として汎用されている。また、他の塗装方法と比較して、塗料の使用効率が極めて高いことから経済的であり、工業的な塗装方法として広く普及している。カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料中に被塗物を陰極として浸漬させ、電圧を印加することにより行われる。
【0003】
カチオン電着塗装の過程における塗膜の析出は電気化学的な反応によるものであり、電圧の印加により、被塗物表面に塗膜が析出する。析出した塗膜は絶縁性を有するので、塗装過程において、塗膜の析出が進行して析出膜の膜厚が増加するのに従い、塗膜の電気抵抗は大きくなる。
【0004】
その結果、当該部位への塗料の析出は低下し、代わって未析出部位への塗膜の析出が始まる。このようにして、順次未被着部分に塗料固形分が被着して塗装を完成させる。本明細書中、被塗物の未着部位に塗膜が順次形成される性質を付き回り性という。
【0005】
カチオン電着塗装においては、上述したように被塗物表面に絶縁性の塗膜が順次形成されて行くので、理論的には無限の付き回り性を有しており、被塗物の全ての部分に均一に塗膜を形成することができるはずである。
【0006】
しかしながら、被塗物の未着部位においては、被着部位と比較して浴中で印加される電圧が弱くなるため塗料固形分が着き難く、電着塗料の付き回り性は必ずしも充分でなく、膜厚のムラが生じる。
【0007】
電着塗料の付き回り性を向上されるために取られる一般的な手法として、塗料の固形分の調整がある。塗料固形分が23.0%未満の場合、塗料中の付き回り性が低くなるおそれがあり、逆に塗料固形分が30.0%を超える場合、電着塗料を循環、攪拌するポンプのフィルター詰まりや、塗料の沈降安定性低下などの問題があり、望ましくない。
また、塗料中の灰分(顔料)濃度を高くすることでも、塗料の付き回りを向上させることができる。これは、樹脂よりも電気抵抗の高い顔料を多く添加することで、得られる電着塗膜の絶縁性を高めることで付き回り性を向上させることができる。塗料中の灰分濃度が25.0%以下の場合、高い塗膜抵抗が得られないおそれがあり、逆に灰分濃度が30.0%以上の場合、塗膜粘度が高くなりすぎて、塗膜外観を著しく損なうため、望ましくない。
【0008】
電着塗装方法に起因する付き回り性低下の要因もある。電着塗装方法では、電着槽に充填した電着塗料に被塗物を浸漬し、被塗物に通電して塗膜形成を行い、塗膜形成終了後に電着塗装物を電着槽から引き上げて、付着している余分な塗料(一般に「持出し塗料」と呼ばれる。)の洗浄及び焼付けの工程が行われる。
【0009】
電着塗装を工業的規模で行う場合、持出し塗料は回収して電着槽に循環させて再利用する。洗浄回収した持出し塗料をそのまま電着槽に循環させても電着塗料の組成に影響を与えないように、持出し塗料の洗浄液には、電着槽に充填された当該電着塗料をろ過して高分子量成分を除去したろ液が用いられる。
【0010】
その際に、電着塗料のろ過に用いるフィルターを一般に「UFフィルター」という。ろ過の工程は「UFろ過」という。また、UFろ過で得られたろ液は「UFろ液」という。
【0011】
しかし、塗装水洗工程時間短縮のため、UFろ液水洗工程後の被塗物に付着した液のタレ切れ時間が短くなってしまった場合、UFろ液成分の持出し量が多くなる。その結果、UFろ液に含有される成分が、電着槽の電着塗料から選択的に徐々に減少する現象が発生する。
【0012】
電着塗装工程のろ過で用いられるUFフィルターには、分子量3000以下の成分が透過するものを用いる。分子量が3000を超える成分が透過するUFフィルターを用いると、UFろ液水洗工程の洗浄水において溶解している成分の濃度が高くなり、洗浄性が著しく低下する。一方、透過する成分の分子量が3000よりも小さなUFフィルターを用いると、フィルターの目詰まりが早くなってUFフィルターの交換頻度が増加し、経済的でない。つまり、本願発明においてUFろ液成分とは、分子量3000以下の成分であり、この成分が減少すると、塗膜形成成分の分子量分布バランスが崩れ、付き回り性の低下をもたらすことが明らかになった。
【0013】
カチオン電着塗装は、通常は下塗り塗装に使用され、防錆等を主目的として行われることから、複雑な構造を有する被塗物であっても、すべての部分でその塗膜の膜厚を所定値以上にする必要がある。そのため、膜厚にムラがあると、厚い部分は塗り過ぎであり、塗装が過剰に行われていることになる。塗装を過剰に行うことは塗装時間の延長を意味し、生産効率の向上のためには好ましくない。
【0014】
特許文献1には、カチオン電着塗料の電導度を制御して付き回り性を向上させる技術が記載されている。例えば、カチオン電着塗料を低固形分の組成に調整する場合、塗料の電導度が低下して付き回り性が低下する場合があるが、その場合には、塗料に電導度制御剤を添加して電導度を上昇させることにより、付き回り性も向上させるのである。電導度制御剤としては、アミン変性エポキシ樹脂やアミン変性アクリル樹脂などの高分子量のカチオン性樹脂が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2008−37889
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、塗装時間の短縮化に有効な、高固形分型カチオン電着塗料を用いる電着塗装方法、特にUF水洗槽からのUFろ液の持出し量が多い電着塗装工程において、当該電着塗料の付き回り性を維持、向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、塗料固形分濃度が23.0〜30.0質量%、及び塗料灰分濃度が25.0〜30.0質量%であり、塗膜形成成分としてアミン変性エポキシ樹脂を含有する高固形分型カチオン電着塗料の付き回り性の向上方法であって、
数平均分子量2000以下であり、アミン価が150〜500mmol/100gであるアミノ基含有化合物を該高固形分型カチオン電着塗料に添加する工程を包含する方法を提供する。
【0018】
ある一形態においては、前記高固形分型カチオン電着塗料中の分子量が3000以下の固形分の濃度を0.5〜1.5質量%に調整する工程が更に包含される。
【0019】
ある一形態においては、前記アミノ基含有化合物はビスフェノールA型エポキシ樹脂をアミンと反応させて得られたものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のカチオン電着塗料の付き回り性の向上方法及びカチオン電着塗料用付き回り性向上剤を用いることにより、塗装工程時間の短縮と付き回り性の向上が両立される。
本発明は高固形分、高灰分のカチオン電着塗料を用いたカチオン電着塗装方法において、特に効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】付き回り性を評価する際に用いるボックスの一例を示す斜視図である。
【図2】付き回り性の評価方法を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
カチオン電着塗料用付き回り性向上剤
カチオン電着塗料用付き回り性向上剤とはカチオン電着塗料に含有させて、そのカチオン電着塗料の付き回り性を向上させる添加剤をいう。本発明のカチオン電着塗料用付き回り性向上剤はカチオン電着塗料の通電性を向上させる必要があり、アミン価が150〜500mmol/100g、好ましくは250〜450mmol/100gのアミノ基含有化合物を含むものである。このアミン価が150mmol/100g未満であると水への分散性が不十分であるおそれがあり、500mmol/100gを超えると亜鉛鋼板に対する適性が低下するおそれがあり好ましくない。
【0023】
また、前記アミノ基含有化合物は、数平均分子量2000以下、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1000と比較的低分子量である。
【0024】
UF水洗槽からのUFろ液の持出し量の多い工程の電着塗装方法においては、UFろ液の持出しが発生して高分子量でない成分が選択的に減少することから、これを補充することを行う。比較的分子量の小さい成分を補充することでカチオン電着塗料に含まれる塗膜形成成分の分子量分布バランスが回復し、付き回り性や塗膜品質の低下が解消される。
【0025】
前記アミノ基含有化合物の数平均分子量が300未満であると形成される電着塗膜の耐食性が低下するおそれがある。また、UFフィルターを通過する分子量の最大値は約3000であり、分子量が3000を超える成分はUFフィルターを通過しない。そのため、前記アミノ基含有化合物の数平均分子量が2000を超えると塗膜形成成分の分子量分布バランスが適切に回復せず、付き回り性や塗膜品質が低下するおそれがある。
【0026】
カチオン電着塗料用付き回り性向上剤としての前記アミノ基含有化合物はアミン変性エポキシ樹脂が好ましい。アミン変性エポキシ樹脂はエポキシ樹脂のエポキシ基をアミン化合物で変性することにより得られる。エポキシ樹脂は、一般的なものが使用できるが、ビスフェノール型エポキシ樹脂、t−ブチルカテコール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であって、分子量が300〜600を有するものが好適である。これらのエポキシ樹脂の中で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が特に好ましい。ビスフェノールA型エポキシ樹脂は、例えば、式
【0027】
【化1】

【0028】
[式中、nは0又は2までの整数、好ましくは0である。]
で表される。
【0029】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および
単官能性のアルキルフェノールのような樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエ
ポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0030】
エポキシ樹脂にアミノ基を導入する化合物としては、一級アミン、二級アミン、三級アミンなどが挙げられる。それらの具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ブチルアミン、ジメチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフイド・酢酸混合物などの外、アミノエチルエタノールアミンのジケチミン、ジエチルヒドロアミンのジケチミンなどの一級アミンのブロックした二級アミンが挙げられる。アミン類は複数のものを使用してもよい。
【0031】
得られるアミン変性エポキシ樹脂は、あらかじめ中和酸により中和させて用いることもできる。中和に用いる酸は、塩酸、硝酸、リン酸、スルファミン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
【0032】
対象となるカチオン電着塗料
本発明において、付き回り性を向上させる対象となるカチオン電着塗料は塗膜形成成分としてアミン変性エポキシ樹脂を含有する比較的高固形分型のカチオン電着塗料である。本発明のカチオン電着塗料用付き回り性向上剤を適量含有させることにより、高固形分型カチオン電着塗料は通電性が向上し、付き回り性も向上する。高固形分型カチオン電着塗料は、カチオン性エポキシ樹脂、硬化剤、顔料や添加剤などを含む電着塗料組成物である。以下、それぞれの成分について説明する。
【0033】
カチオン性エポキシ樹脂
カチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。このカチオン性エポキシ樹脂は、特開昭54−4978号、同昭56−34186号などに記載されている公知の樹脂でよい。
【0034】
カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
【0035】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807、(同、エポキシ当量170)などがある。
【0036】
特開2000−128959に記載のような、式
【0037】
【化2】

【0038】
[式中、Rはジエポキシドからエポキシ基を除いた残基であり、R’はポリウレタンジイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基であり、そしてnは1〜5の整数である。]
で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
【0039】
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックポリイソシアネートとポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
【0040】
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
【0041】
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されている。
【0042】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0043】
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
【0044】
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。本発明の1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
【0045】
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数のものを併用して用いてもよい。
【0046】
ブロックイソシアネート硬化剤
本発明のブロックイソシアネート硬化剤で使用するポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれのものであってもよい。
【0047】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で、または2種以上併用することができる。
【0048】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもプロックイソシアネート硬化剤に使用してよい。
【0049】
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0050】
ブロック剤としては、ε−カプロラクタムやブチルセロソルブ等通常使用されるものを用いることができる。しかしながら、これらの内、揮発性のブロック剤はHAPsの対象として規制されているものが多く、使用量は必要最小限とすることが好ましい。
【0051】
顔料
一般に、電着塗料には着色剤として顔料を含有させる。本発明のカチオン電着塗料にも必要に応じて通常用いられる顔料を含有させる。かかる顔料の例としては、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料、カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカ、クレー及びシリカのような体質顔料、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等が挙げられる。
【0052】
顔料分散ペースト
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0053】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂と共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は5〜40質量部、顔料は20〜50質量部の固形分比で用いる。
【0054】
カチオン電着塗料の調製
カチオン電着塗料は、カチオン性エポキシ樹脂、硬化剤、及び顔料分散ペーストを水性媒体中に分散することによって調製される。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂の分散性を向上させるために中和剤を含有させる。中和剤は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。その量は少なくとも20%、好ましくは30〜60%の中和率を達成する量である。
【0055】
硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級又は/及び3級アミノ基、水酸基等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂の硬化剤に対する固形分質量比で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
【0056】
電着塗料は、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジブチルスズオキサイドのようなスズ化合物や、通常のウレタン開裂触媒を含むことができる。鉛を実質的に含まないものが好ましいため、その量はブロックポリイソシアネート化合物の0.1〜5質量%とすることが好ましい。
【0057】
電着塗料は、水混和性有機溶剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び顔料などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
【0058】
本発明の方法で用いるカチオン電着塗料は、上記記載の成分を含むものであれば、特に限定するものではないが、高固形分型であることが好ましい。例えば、塗料固形分濃度が23.0〜30.0質量%、及び塗料灰分濃度が25.0〜30.0質量%であるカチオン電着塗料は高固形分型に該当する。かかる高固形分型カチオン電着塗料は塗装時間の短縮を目的とする電着塗装方法又はラインで用いられるからである。ここで灰分濃度とは、本カチオン電着塗料を燃焼した場合に残存する質量の、本カチオン電着塗料の全固形分質量に対して占める割合をいう。
【0059】
付き回り性の向上方法
本発明では、上述のカチオン電着塗料用付き回り性向上剤をカチオン電着塗料に含有させることにより、塗料の通電性を向上させる。そして、特に、持出し塗料のUFろ液洗浄回収工程のタレ切れ時間が短く、回収効率の低いラインにおいては、分子量3000以下の塗膜形成成分が優先して減少し、塗膜形成成分の分子量分布バランスが乱れ、付き回り性等が低下し易いからである。
【0060】
カチオン電着塗料用付き回り性向上剤は、高固形分型のカチオン電着塗料に含まれる、UFフィルターを通過する固形分の濃度が0.5〜1.5質量%、好ましくは0.7〜1.2質量%、より好ましくは0.8〜1.0質量%になるように適量が添加される。例えば、前記アミノ基含有化合物には、塗膜形成成分として高固形分型のカチオン電着塗料に含まれるアミン変性エポキシ樹脂のうち分子量(数平均分子量)が2000以下のものが含まれる。そのため、前記アミノ基含有化合物は上記UFフィルターを通過する固形分に含まれる。
【0061】
カチオン電着塗料用付き回り性向上剤は、電着塗装に用いられたことによりUFフィルターを通過する固形分の濃度が低下した電着塗料、たとえば当該固形分の濃度が0.5質量%未満となった電着塗料の本槽に直接添加される。
【0062】
UFろ液洗浄回収工程を行なう電着塗装方法においては、UFフィルターを通過する程度の分子量を有するアミン変性エポキシ樹脂がアミノ基含有化合物に該当することが好ましい。なおアミノ基化合物等の分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレンを基準として測定することができる。
【0063】
カチオン電着塗料を用いて電着塗装を行う場合の被塗物は、予め、浸漬、スプレー方法等によりリン酸亜鉛処理等の表面処理の施された導体であることが好ましいが、この表面処理が施されていないものであっても良い。また、導体とは、電着塗装を行うに当り、陰極になり得るものであれば特に制限はなく、金属基材が好ましい。
【0064】
電着が実施される条件は一般的に他の型の電着塗装に用いられるものと同様である。印加電圧は大きく変化してもよく、1ボルト〜数百ボルトの範囲であってよい。電流密度は通常約10アンペア/m〜160アンペア/mであり、電着中に減少する傾向にある。
【0065】
電着塗装工程を短縮するため、UF水洗後のタレ切れ時間が短縮された工程では、回収効率が悪くなり、数平均分子量3000以下のUFろ液成分が選択的に減少する。それ故、本発明の方法は、かかる回収効率が悪い電着塗装方法に対して適用するのに特に有用である。
【0066】
本発明の電着塗装方法によって電着した後、被膜を昇温下に通常の方法、例えば焼付炉中、焼成オーブン中あるいは赤外ヒートランプで焼付ける。焼付け温度は通常約140℃〜180℃である。本発明のカチオン電着塗料によって塗装された塗装物は、最終水洗の後、乾燥、焼付けされることによって、硬化電着塗膜が形成され、これにより塗装工程が完了する。
【実施例】
【0067】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれら実施例に限定されるものと解してはならない。実施例中、部および%は、別途指示しない限り質量に基づく。
【0068】
製造例1
アミン変性エポキシ樹脂の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコを用意した。このフラスコにビスフェノールAとエピクロルヒドリンから合成したエポキシ当量188のエポキシ樹脂(ダウ・ケミカル社製「DER331J」)440g、メチルイソブチルケトン30g、メタノール5g、ビスフェノールA−エチレンオキシド6モル付加物(三洋化成工業(株)製BPE−60)75gおよびジブチルチンジラウレート0.01gを加え、これを攪拌しながらジフェニルメタンジイソシアネート60gを滴下した。反応は室温から始め、発熱により60℃まで昇温した。その後、30分間反応を継続した後に、さらに、反応は、主に60℃〜65℃の範囲で行い、IRスペクトルを測定しながらイソシアネート基が消失するまで継続した。次に、ジメチルベンジルアミン1gを加え、副生するメタノールをデカンターを用いて留去させながら、エポキシ当量263になるまで130℃で反応させた。その後、赤外線分光計によれば、オキサゾリドン環のカルボニル基に基づく1750cm−1の吸収が確認された。続いてビスフェノールA135gと2−エチルヘキサン酸50gの反応容器に加えて120℃で反応させ、エポキシ当量は1118になるまで継続した。その後冷却し、N−メチルエタノールアミン40g、およびアミノエチルエタノールアミンのケチミン化物(79質量/メチルイソブチルケトン溶液)45gを加え、110℃で2時間反応させた。その後、メチルイソブチルケトンで不揮発分80%になるまで希釈し、オキサゾリドン環含有基体樹脂を得た。
【0069】
製造例2
ブロックイソシアネート硬化剤の製造
ジフェニルメタンジイソシアナート1250部およびメチルイソブチルケトン(MIBK)266.4部を反応容器に仕込み、これを80℃まで加熱した後、ジブチル錫ジラウレート2.5部を加えた。ここに、ε−カプロラクタム226部をブチルセロソルブ944部に溶解させたものを80℃で2時間かけて滴下した。さらに100℃で4時間加熱した後、IRスペクトルの測定において、イソシアネート基に基づく吸収が消失したことを確認し、放冷後、MIBK336.1部を加えてブロックイソシアネート硬化剤を得た。
【0070】
製造例3
顔料分散樹脂の製造
まず、攪拌装置、冷却管、窒素導入管および温度計を装備した反応容器に、イソホロンジイソシアネート(IPDI)222.0部を入れ、MIBK39.1部で希釈した後、ここヘジブチル錫ジラウレート0.2部を加えた。その後、これを50℃に昇温した後、2−エチルヘキサノール131.5部を攪拌下、乾燥窒素雰囲気中で2時間かけて滴下した。適宜、冷却することにより、反応温度を50℃に維持した。その結果、2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(樹脂固形分90.0%)が得られた。
【0071】
次いで、適当な反応容器に、ジメチルエタノールアミン87.2部、75%乳酸水溶液117.6部およびエチレングリコールモノブチルエーテル39.2部を順に加え、65℃で約半時間攪拌して、4級化剤を調製した。
【0072】
次に、エポン(EPON)829(シェル・ケミカル・カンパニー社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量193〜203)710.0部とビスフェノールA289.6部とを適当な反応容器に仕込み、窒素雰囲気下、150〜160℃に加熱したところ、初期発熱反応が生じた。反応混合物を150〜160℃で約1時間反応させ、次いで、120℃に冷却した後、先に調製した2−エチルヘキサノールハーフブロック化IPDI(MIBK溶液)498.8部を加えた。
【0073】
反応混合物を110〜120℃に約1時間保ち、次いで、エチレングリコールモノブチルエーテル463.4部を加え、混合物を85〜95℃に冷却し、均一化した後、先に調製した4級化剤196.7部を添加した。酸価が1となるまで反応混合物を85〜95℃に保持した後、脱イオン水964部を加えて、エポキシ−ビスフェノールA樹脂において4級化を終了させ、4級アンモニウム塩部分を有する顔料分散用樹脂を得た(樹脂固形分50%)。
【0074】
製造例4
顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散用樹脂を120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン80.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水144.3部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分56%)。
【0075】
製造例5
カチオン電着塗料の製造
製造例1で得られたアミン変性エポキシ樹脂と製造例2で得られたブロックイソシアネート硬化剤とを固形分比で70/30で均一になるよう混合した。これに樹脂固形分100g当たり酸のミリグラム当量が35になるよう氷酢酸を添加し、さらにイオン交換水をゆっくりと加えて希釈した。減圧下でMIBKを除去することにより、固形分が36%のエマルションを得た。
【0076】
このエマルション1875部および製造例4で得られた顔料分散ペースト564部と、イオン交換水1552部とジブチル錫オキサイド9部とを混合して、固形分25.0%質量%及び塗料灰分濃度25.0質量%のカチオン電着塗料を得た。
【0077】
得られたカチオン電着塗料について、以下に説明するように、UFモジュールを透過する分子量が3000以下の固形分の濃度を測定した。
【0078】
UFモジュールを透過する固形分の濃度測定方法
最低分離分子量3000以上のUFフィルターを有するUFモジュール(旭化成ケミカルズ社製 型式KCP−1010)を用いて、カチオン電着塗料4000gからUFろ液を採取した。UFろ液は1000g毎に分取し、1000g分取する毎に純水1000gをカチオン電着塗料に添加し、塗料量を3000〜4000gに保った。上記分取作業を、6回繰り返した。
得られたろ液サンプル計6つ(UF1〜UF6)を105℃で3時間加熱して乾燥させ、固形分測定を実施した。
【0079】
測定された固形分は以下の通りであった。
【0080】
[表1]

【0081】
この固形分を、初項a、公比rの等比数列で表されると仮定すると、総和Snは以下の式で表される。
【0082】
[数1]
Sn=a/(1−r) [r≦1の場合]
【0083】
ここに、a=10.4、r=0.68を代入すると、Sn=32.5gとなる。この値は、カチオン電着塗料4000g中に含まれるUFフィルターを通過する固形分の総量と考えられるので、その濃度を計算すると、
32.5/4000×100=0.81%
となる。
【0084】
製造例6
UFフィルターを通過する固形分の除去
製造例5で得られたカチオン電着塗料4000gについてUFろ過を実施した。得られたUFろ液2000gは廃却し、電着塗料には、純水を2000g添加した。UFフィルターとしては、最低分離分子量3000以上のもの(旭化成ケミカルズ社製「マイクローザUF」)を用いた。
【0085】
このUFろ液成分を一部廃却したカチオン電着塗料を用いること以外は製造例5と同様にしてUFフィルターを通過する固形分の濃度を測定したところ、0.46質量%であった。
【0086】
製造例7
付き回り性向上剤1の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコを用意した。このフラスコにエポキシ当量490のエポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂「E1001」)490gおよびMIBK123gを仕込み(固形分濃度80%)50℃に昇温して溶解した後、ジエタノールアミン(DEA)105gを3分割して仕込んだ。この際に、2回目の仕込みは75℃以下まで冷却、また3回目の仕込みは90℃以下まで冷却して実施した。DEAを全量加えた後110〜115℃で1時間攪拌し、アミン価(mmol/100g)及び数平均分子量を測定した。測定結果を表2に示す。
【0087】
反応物を80℃まで冷却し、これに90%酢酸(中和率15%)10.00gを加え、10分間攪拌した。その後、純水152.77gを加え(固形分濃度60%)、30分後、純水97.67gを加え(固形分濃度50%)、さらに30分攪拌した後、純水979.00gを加えた(固形分濃度20%)。このようにして、DEA変性エポキシ樹脂からなる付き回り性向上剤1を得た。
【0088】
製造例8
付き回り性向上剤2の製造
ジエタノールアミンの代わりにメチルメタノールアミン(MMA)75.1gを用いること以外は製造例7と同様にして、MMA変性エポキシ樹脂からなる付き回り性向上剤2を得た。
【0089】
製造例9
付き回り性向上剤3の製造
製造例7と同様の器具を取り付けたフラスコにエポキシ当量188のエポキシ樹脂(ダウ・ケミカル社製「DER−331J」)235.0gおよびビスフェノールA125.4gおよびMIBK39.5gを仕込み(固形分濃度90%)、窒素雰囲気下で100℃まで昇温した。その後、ジメチルベンジルアミン0.9gを加え、130〜140℃まで加熱、攪拌し、エポキシ当量が2400になるまで反応を続けた。その後、110℃まで冷却して、MIBKを26.3g加えた後、ジエタノールアミンを47.3g加えて、120℃で1時間反応させた。アミン価および数平均分子量を測定した。測定結果を表2に示す。
【0090】
反応物を80℃まで冷却して、これに90%酢酸10.0gを加え、10分間攪拌した。その後、純水174g(固形分濃度60%)を加え、30分後、純水125.4gを加え(固形分濃度50%)、さらに30分攪拌した後、純水を292.6g加えた(固形分濃度36%)。さらに10分後836gを加え(固形分20%)てエマルションとし、DEA変性エポキシ樹脂からなる付き回り性向上剤3を作成した。
【0091】
[表2]
付き回り性向上剤の特性

【0092】
<付き回り性の評価>
付き回り性は、いわゆる4枚ボックス法により評価した。すなわち、図1に示すように、4枚のリン酸亜鉛処理鋼鈑(JIS G3141 SPCC−SDのサーフダインSD−5000(日本ペイント社製)処理)11〜14を、立てた状態で間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調製した。なお、鋼鈑14以外の鋼鈑11〜13には下部に8mmφの貫通穴15が設けられている。
【0093】
参考例
製造例5(参考例)もしくは製造例6(参考例)で得られたカチオン電着塗料4リットルを塩ビ製容器に移して第1の電着浴とした。図2に示すように、上記ボックス10を、被塗装物として電着塗料21を入れた電着塗料容器20内に浸漬した。この場合、各貫通穴15からのみ塗料21がボックス10内に侵入する。
【0094】
マグネチックスターラー(非表示)で塗料21を攪拌した。そして、各鋼鈑11〜14を電気的に接続し、最も近い鋼鈑11との距離が150mmとなるように対極22を配置した。各鋼鈑11〜14を陰極、対極22を陽極として電圧を印加して、鋼鈑にカチオン電着塗装を行なった。塗装は、印加開始から5秒間で電圧250Vまで昇圧し、その後115秒間電圧250Vを維持することにより行った。
【0095】
塗装後の各鋼鈑は、水洗した後、170℃で25分間焼き付けし、空冷後、対極22から最も近い鋼鈑11のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極22から最も遠い鋼鈑14のG面に形成された塗膜の膜厚とを測定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比(G/A値)により付き回り性を評価した。この値が50%を超えた場合を良好、この値が50%以下の場合を不良と評価した。
【0096】
実施例1及び2
次いで、付き回り性向上剤1(実施例1)、もしくは付き回り性向上剤2(実施例2)を上記電着塗料に追加して、いずれの場合においても分子量が3000以下の固形分の濃度を0.79%に調整した。得られた電着塗料を用いること以外は上記と同様にして電着塗装を行い、電着塗料の付き回り性を試験した。これら付き回り性の試験結果を表3に示す。
【0097】
比較例
付き回り性向上剤1を用いる代わりに、実施例1における付き回り性向上剤1と同量の付き回り性向上剤3を用いた以外は実施例1と同様にして電着塗装を行い、電着塗料の付き回り性を試験した。付きまわり性の試験結果を表3に示す。
【0098】
[表3]

※1:UFフィルターを通過する固形分の濃度
【符号の説明】
【0099】
10…ボックス、
11〜14…リン酸亜鉛処理鋼板、
15…貫通穴、
20…電着塗装容器、
21…電着塗料、
22…対極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料固形分濃度が23.0〜30.0質量%、及び塗料灰分濃度が25.0〜30.0質量%であり、塗膜形成成分としてアミン変性エポキシ樹脂を含有する高固形分型カチオン電着塗料の付き回り性の向上方法であって、
数平均分子量が2000以下であり、アミン価が150〜500mmol/100gであるアミノ基含有化合物を該高固形分型カチオン電着塗料に添加する工程を包含する方法。
【請求項2】
前記高固形分型カチオン電着塗料中の分子量が3000以下の固形分の濃度を0.5〜1.5質量%に調整する工程を更に包含する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アミノ基含有化合物はビスフェノールA型エポキシ樹脂をアミンと反応させて得られたアミン変性エポキシ樹脂である請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−280787(P2010−280787A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−134172(P2009−134172)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】