説明

カチオン電着塗装用金属表面処理液

【課題】表面処理した金属基材に対して、カチオン電着塗装を行った場合、充分なつきまわり性の発現が可能であり、防食性に優れている、ジルコニウムイオンによる表面処理を提供すること。
【解決手段】ジルコニウムイオンおよび錫イオンを含む、pHが1.5〜6.5のカチオン電着塗装用金属表面処理液であって、上記ジルコニウムイオンの濃度が10〜10000ppm、かつ、上記ジルコニウムイオンに対する錫イオンの含有量が質量換算で0.005〜1であるカチオン電着塗装用金属表面処理液であって、さらに、ポリアミン化合物、銅イオン、フッ素イオン、キレート化合物を含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面処理液、特にカチオン電着塗装に適した金属表面処理液、および金属表面処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の金属基材に対して防食性を付与するため、従来から表面処理が行われている。特に自動車を構成する金属基材に対しては、リン酸亜鉛処理が一般的に用いられてきた。しかし、このリン酸亜鉛処理は、副生成物としてスラッジが発生する問題を有している。このため、リン酸亜鉛を使用しない、次世代の表面処理が求められており、ジルコニウムイオンによる表面処理はそのひとつである(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、高い防食性が必要とされる、自動車を構成する金属基材に対しては、表面処理後にカチオン電着塗装が施される。カチオン電着塗装が施される理由として、カチオン電着塗装で得られる塗膜が防食性に優れていることに加え、複雑な形状を有する自動車ボディに対して、隅々まで塗装することができるという性質、いわゆる「つきまわり性」を有していることが大きい。
【0004】
ところが、最近になって、上記ジルコニウムイオンによる表面処理を行った金属基材にカチオン電着塗装を行った場合、上記つきまわり性において十分な効果が得られにくい場合があり、例えば冷延鋼板に対するつきまわり性が充分でない場合があることがわかってきた。このように、カチオン電着塗装を行った場合に、つきまわり性が充分でないと、充分な防食性を得ることはできない。
【特許文献1】特開2004−218070号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表面処理した金属基材に対して、カチオン電着塗装を行った場合、充分なつきまわり性の発現が可能であり、防食性に優れている、ジルコニウムイオンによる表面処理を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のものである。
(1)ジルコニウムイオン、および、錫イオンを含む、pHが1.5〜6.5のカチオン電着塗装用金属表面処理液であって、前記ジルコニウムイオンの濃度が10〜10000ppm、かつ、前記ジルコニウムイオンに対する錫イオンの濃度比が質量換算で0.005〜1である、カチオン電着塗装用金属表面処理液。
【0007】
(2)上記(1)カチオン電着塗装用金属表面処理液として、さらにポリアミン化合物を含むカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【0008】
(3)上記(1)〜(2)のカチオン電着塗装用金属表面処理液として、さらに銅イオンを含むカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【0009】
(4)上記(1)〜(3)のカチオン電着塗装用金属表面処理液として、さらにフッ素イオンを含み、pHが3.0である場合のフリーなフッ素イオン量が0.1〜50ppmであるカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【0010】
(5)上記(1)〜(4)のカチオン電着塗装用金属表面処理液として、さらにキレート化合物を含むカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【0011】
(6)上記(5)のカチオン電着塗装用金属表面処理液として、キレート化合物が、スルホン酸であるカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【0012】
(7)上記(1)〜(6)のカチオン電着塗装用金属表面処理液として、さらに酸化剤を含むカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【0013】
(8)更にアルミニウムイオンおよび/またはインジウムイオンを含む、(1)〜(7)のいずれかに記載のカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【0014】
(9)上記(1)〜(8)のカチオン電着塗装用金属表面処理液を用いて、金属基材に対して表面処理を行う工程を含む金属表面処理方法。
【0015】
(10)上記(9)の金属表面処理方法で得られる、表面処理による皮膜が形成された金属基材。
【0016】
(11)上記(10)の金属基材に形成された皮膜におけるジルコニウム/錫の元素比率が質量換算で1/10〜10/1である金属基材。
【0017】
(12)上記(1)〜(8)のカチオン電着塗装用金属表面処理液を用いて、金属基材に対して表面処理を行う工程と、前記表面処理が行われた金属基材に対してカチオン電着塗装を行う工程とを含む、カチオン電着塗装方法。
【0018】
(13)上記(12)のカチオン電着塗装方法で得られる、カチオン電着塗装された金属基材。
【0019】
すなわち、本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、ジルコニウムイオンおよび錫イオンを含む、pHが1.5〜6.5の化成処理液であって、上記ジルコニウムイオンの濃度が10〜10000ppm、かつ、上記ジルコニウムイオンに対する錫イオンの含有量が質量換算で0.005〜1である。また、さらに、ポリアミン化合物、銅イオン、フッ素イオン、キレート化合物、酸化剤、防錆剤を含んでいてもよい。フッ素イオンを含む場合、pHが3.0のときのフリーなフッ素イオン量が0.1〜50ppmであってよい。
【0020】
本発明の金属表面処理方法は、先の金属表面処理液を用いて、金属基材に対して表面処理を行う工程を含むものである。
【0021】
本発明の表面処理された金属基材には、先の表面処理により得られた皮膜が形成されている。その皮膜におけるジルコニウム/錫の元素比率は質量換算で1/10〜10/1であってよい。
【0022】
本発明のカチオン電着塗装方法は、先の金属表面処理液を用いて、金属基材に対して表面処理を行う工程と、上記表面処理が行われた金属基材に対してカチオン電着塗装を行う工程とを含んでいる。
【0023】
本発明のカチオン電着塗装された金属基材は、先の塗装方法で得られるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、ジルコニウムイオンに加えて、錫イオンを含むことで、この処理液により化成皮膜を形成した後にカチオン電着塗装を行った場合につきまわり性が向上するものと考えられる。その理由は明確ではないものの、以下のように考えられる。
【0025】
すなわち、ジルコニウムイオンを単独で用いた場合、その酸化物皮膜の形成は、酸性雰囲気下で金属基材がエッチングされると同時に行われるものと考えられる。ところが、冷延鋼板上には、シリカのほか、ケイ素や炭素を含有する化合物の偏析物などが存在しており、そのような部分にはエッチングが行われにくい。このため、ジルコニウム酸化物による皮膜形成は均一に行われず、皮膜が形成されなかった部分が存在する。皮膜が形成された部分と形成されなかった部分とでは電流の流れ方が異なることから、電着が均一に行われず、その結果、充分なつきまわり性が得られないと考えられる。
【0026】
ここに、錫イオンが存在した場合には、さらに以下のように考えられる。錫イオンはジルコニウムイオンに比べて鋼板上の影響を受けにくいため、基材上に酸化物皮膜を形成しやすい。錫イオンがジルコニウムイオンの析出しにくい部分に特異的に皮膜を形成するわけではないが、錫イオンは特定の部分に対して酸化物皮膜を形成したりしなかったりということがない。その結果、錫イオンはジルコニウムイオンが皮膜形成できなかった部分を補って皮膜形成を行っていることとなる。
【0027】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、ポリアミン化合物を含むことによって、カチオン電着塗膜に対する密着性を向上させることができ、その結果、より厳しい条件であるSDT試験をもクリアすることが可能となる。また、本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、銅イオンを含むことによって、防食性を向上させることができる。その理由は明確ではないが、皮膜形成時に銅とジルコニウムとの間に何らかの相互作用が働いているのではないかと考えられる。さらに、本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、ジルコニウム以外の金属を多量に含む場合、キレート化合物を含むことにより、安定してジルコニウム酸化物皮膜を形成することができる。これは、キレート化合物が、ジルコニウムよりも析出しやすい金属イオンを捕捉しているためであると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、ジルコニウムイオンおよび錫イオンを含む、pHが1.5〜6.5の化成処理液である。
【0029】
上記ジルコニウムイオンの濃度は10〜10000ppmである。10ppm未満だとジルコニウム皮膜の析出が十分でないため充分な防食性が得られず、10000ppmを超えても、ジルコニウム被膜の析出量が増加しない上、塗膜密着性が低下してSDT等の防食性能が劣るおそれがあり、それに見合うだけの効果が得られない。好ましい下限値および上限値は、それぞれ、100ppmおよび500ppmである。
【0030】
なお、本明細書における金属イオンの濃度についての表記は、錯体や酸化物を形成している場合において、その錯体や酸化物中の金属原子のみに着目した、金属元素換算濃度で表すものとする。例えば、錯イオンZrF2−(分子量205)100ppmのジルコニウムの金属元素換算濃度は100×(91/205)の計算により44ppmと算出される。なお、本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液において金属化合物(ジルコニウム化合物、錫化合物、銅化合物その他の金属化合物)は、一部が酸化物など非イオンの状態で存在しているとしてもその割合はごくわずかであり、ほぼ金属イオンとして存在すると考えられる。従って、本明細書における金属イオン濃度は、一部が非イオンとして存在しているか否かにかかわらず、100%解離して金属イオンとして存在する場合の金属イオン濃度をいう。
【0031】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液に含まれる錫イオンは、2価のカチオンであることが好ましい。これ以外の価数では、目的とする効果が得られないおそれがある。ただし、錫イオンは2価のカチオンに限られず、金属基材上に析出しうるものであれば本発明に用いることができる。例えば、錫イオンが錯体を形成している場合は4価のカチオンである場合があるが、これも本発明に用いることができる。上記錫イオンの濃度は、上記ジルコニウムイオンの濃度に対して、質量換算で0.005〜1である。0.005未満だと添加の効果が得られず、1を超えると、ジルコニウムが析出しにくくなるおそれがある。好ましい下限値および上限値は、それぞれ、0.02および0.2である。ただし、ジルコニウムイオンおよび錫イオンの合計量が少なすぎると、本発明の効果が得られないおそれがあるため、本発明の金属表面処理液中の上記ジルコニウムイオンの濃度と錫イオンの濃度との合計が、15ppm以上であることが好ましい。
【0032】
本発明の金属表面処理液中の錫イオンの含有量としては、1〜100ppmであることが好ましい。1ppm未満である場合には、ジルコニウムが皮膜を形成できなかった部分に対する錫の析出が不十分となり、SDT等の防食性が劣りやすい。100ppmを超えるとジルコニウム皮膜が析出しにくくなり、防食性および塗装外観が劣りやすい。上記含有量は5〜100ppmがより好ましく、5〜50ppmがさらに好ましい。
【0033】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、そのpHが1.5〜6.5である。1.5未満では、金属基材のエッチングが充分に行われないため、皮膜量が少なくなり、充分な防食性を得ることができない。また、処理液の安定性が充分でないおそれがある。一方、6.5を超えると、エッチングが過剰となり充分な皮膜形成ができなくなる場合や、皮膜の付着量および膜厚が不均一となって、塗装外観等に悪影響を与えたりするおそれがある。上記下限値および上限値は、それぞれ2.0および5.5であることが好ましく、2.5および5.0であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、表面処理後に形成されるカチオン電着塗膜との密着性を高めるために、さらにポリアミン化合物を含んでいてもよい。本発明において用いられるポリアミン化合物は、アミノ基を有する有機分子であることに本質的な意味があると考えられる。すなわち、以下は推測ではあるが、アミノ基は、金属基板上に皮膜として析出するジルコニウム酸化物や当該金属基板との化学的作用により、当該皮膜中に取り込まれると考えられる。また、有機分子であるポリアミン化合物は当該皮膜が形成された金属基板上に設けられる塗膜との密着性に寄与すると考えられる。従って、アミノ基を有する有機分子であるポリアミン化合物を用いると、金属基板と当該塗膜との密着性が格段に向上し、優れた耐食性が得られるようになる。上記ポリアミン化合物としては、アミノシランの加水分解縮合体、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、アミノ基を有する水溶性フェノール樹脂等が挙げられる。自由にアミンの量が調整可能なことから、アミノシランの加水分解縮合体が好ましい。従って、本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液としては、例えば、ジルコニウムイオン、錫イオン、およびアミノシランの加水分解縮合体を含むカチオン電着塗装用金属表面処理液、ジルコニウムイオン、錫イオン、およびポリアリルアミンを含むカチオン電着塗装用金属表面処理液、ジルコニウムイオン、錫イオン、およびアミノ基を有する水溶性フェノール樹脂を含むカチオン電着塗装用金属表面処理液が挙げられる。また、これらのカチオン電着塗装用金属表面処理液に、後述するフッ素を含有してもよい。
【0035】
上記アミノシランの加水分解縮合体は、アミノシラン化合物を加水分解縮合して得られるものである。上記アミノシラン化合物として、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)−プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシランの塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤を挙げることができる。また、市販されているものとして、「KBM−403」、「KBM−602」、「KBM−603」、「KBE−603」、「KBM−903」、「KBE−903」、「KBE−9103」、「KBM−573」、「KBP−90」(いずれも商品名、信越化学工業社製)、「XS1003」(商品名、チッソ社製)等を使用することができる。
【0036】
上記アミノシランの加水分解縮合は、当業者によく知られた方法により行うことができる。具体的には、少なくとも1種のアミノシラン化合物にアルコキシシリル基が加水分解するのに必要な水を加え、必要に応じて加熱撹拌することにより行うことができる。なお、用いる水の量によって縮合度を制御することができる。
【0037】
上記アミノシランの加水分解縮合体の縮合度は高いほうが、ジルコニウムが酸化物として析出する際に、その中に取り込まれやすい傾向にあるため、好ましい。例えば、アミノシランの全量中、2量体以上のアミノシランの割合が質量換算で40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることがよりさらに好ましい。このため、アミノシランを加水分解縮合反応で反応させる際には、溶媒としてアルコールおよび酢酸等の触媒を含む水性溶媒を用いる等、アミノシランがより加水分解しやすく、縮合しやすい条件下で反応させることが好ましい。また、アミノシラン濃度が比較的高い条件で反応させることによって、縮合度の高い加水分解縮合体が得られる。具体的にはアミノシラン濃度が5質量%以上50質量%以下の範囲で加水分解縮合させることが好ましい。なお、縮合度は、29Si−NMR測定により求めることができる。
【0038】
上記ポリビニルアミンおよびポリアリルアミンとしては、市販されているものを使用することができる。ポリビニルアミンの例として、「PVAM−0595B」(商品名、三菱化学社製)等を、ポリアリルアミンの例として、「PAA−01」、「PAA−10C」、「PAA−H−10C」、「PAA−D−41HCl」(いずれも商品名、日東紡績社製)等をそれぞれ挙げることができる。
【0039】
上記ポリアミン化合物の分子量は、150〜500000であることが好ましい。150未満だと充分な密着性を有する化成皮膜が得られないおそれがある。分子量が500000を超える場合には皮膜形成を阻害するおそれがある。さらに好ましい下限値および上限値は、それぞれ5000および70000である。なお、上記ポリアミン化合物は、アミノ基の量が多すぎると皮膜に悪影響を及ぼすおそれがあり、少なすぎるとアミノ基による皮膜との密着性向上の効果が得られにくいため、固形分1gあたり0.1ミリモル以上17ミリモル以下の1級及び/又は2級アミノ基を有することが好ましく、固形分1gあたり3ミリモル以上15ミリモル以下の1級及び/又は2級アミノ基を有することが好ましい。
【0040】
なお、ポリアミン化合物の固形分1gあたりの1級及び/又は2級アミノ基のモル数は、下記数式(1)により求めることができる。
【0041】
【数1】

【0042】
(数式中、ポリアミン化合物と、官能基A及び/又は官能基Bを有する化合物との固形分質量比を、m:nとすると、官能基A及び/又は官能基Bを有する化合物1gあたりの官能基A及び/又は官能基Bのミリモル数をYとし、上記官能基A及び/又は官能基Bを有する化合物が金属表面処理用組成物に含有されていない場合のポリアミン化合物1gあたりに含まれる1級及び/又は2級アミノ基のミリモル数をXとした。)。
【0043】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液における上記ポリアミン化合物の含有量は、表面処理液中に含まれるジルコニウムの金属換算質量に対して、1〜200%とすることができる。1%未満だと目的とする効果が得られず、200%を超えると皮膜が充分に形成されないおそれがある。当該含有量の上限値としては、120%がより好ましく、100%がより好ましく、80%が更に好ましく、60%がより更に好ましい。
【0044】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、さらに防食性を向上させるため、銅イオンを含んでいてよい。上記銅イオンの量は、上記錫イオンの濃度に対して、10〜100%となる濃度であることが好ましい。10%未満では目的とする効果が得られないおそれがあり、錫イオンの濃度を超えると、錫イオンの場合と同様にジルコニウムが析出しにくくなるおそれがある。本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液としては、例えば、ジルコニウムイオン、錫イオンおよび銅イオンを含むカチオン電着塗装用金属表面処理液が挙げられる。この場合、さらに後述するフッ素イオンを含有することができ、上記ポリアミン化合物を含有することができる。
【0045】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液には、フッ素イオンが含まれていることが好ましい。上記フッ素イオンの濃度はpHによって変化するので、特定のpHにおけるフリーなフッ素イオン量を規定することとする。本発明では、pHが3.0である場合のフリーなフッ素イオン量が0.1〜50ppmである。0.1ppm未満では、金属基材のエッチングが充分に行われないため、皮膜量が少なくなり、充分な防食性を得ることができない。また、処理液の安定性が充分でないおそれがある。50ppmを超えると、エッチングが過剰となり充分な皮膜形成ができなくなる場合や、皮膜の付着量および膜厚が不均一となって、塗装外観等に悪影響を与えたりするおそれがある。好ましい下限値および上限値は、それぞれ、0.5ppmおよび10ppmである。本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液としては、例えば、ジルコニウムイオン、錫イオン、およびフッ素イオンを含むカチオン電着塗装用金属表面処理液が挙げられる。
【0046】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、キレート化合物を含んでいてもよい。キレート化合物を含むことで、当該処理液中でジルコニウム以外の金属の析出を抑制し、ジルコニウム酸化物の皮膜を安定に形成することができる。上記キレート化合物として、アミノ酸、アミノカルボン酸、フェノール化合物、芳香族カルボン酸、スルホン酸、アスコルビン酸等を挙げることができる。なお、従来からキレート剤として知られているクエン酸やグルコン酸等の水酸基を有するカルボン酸は、本発明ではその機能を充分に発現することができない。
【0047】
上記アミノ酸としては、各種天然アミノ酸および合成アミノ酸の他、1分子中に少なくとも1つのアミノ基および少なくとも1つの酸基(カルボキシル基やスルホン酸基等)を有するアミノ酸を広く利用することができる。この中でも、アラニン、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、フェニルアラニン、アスパラギン、アルギニン、グルタミン、システイン、ロイシン、リジン、プロリン、セリン、トリプトファン、バリン、および、チロシン、ならびに、これらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を好ましく使用することができる。また、アミノ酸に光学異性体が存在する場合、L体、D体、ラセミ体を問わず、いずれも好適に使用することができる。
【0048】
また、上記アミノカルボン酸としては、上記アミノ酸以外で、1分子中にアミノ基とカルボキシル基との両方の官能基を有する化合物が広く利用可能である。この中でも、ジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラアミン6酢酸(TTHA)、1,3−プロパンジアミン4酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−6−ヒドロキシプロパン4酢酸(DPTA−OH)、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、グリコールエーテルジアミン4酢酸(GEDTA)、ジカルボキシメチルグルタミン酸(CMGA)、(S,S)−エチレンジアミンジコハク酸(EDDS)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)、ニトリロ3酢酸(NTA)および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を好ましく使用することができる。
【0049】
さらに、上記フェノール化合物としては、2個以上のフェノール性水酸基を有する化合物、これらを基本骨格とするフェノール系化合物を挙げることができる。前者の例として、カテコール、没食子酸、ピロガロール、タンニン酸等が挙げられる。一方、後者の例として、フラボン、イソフラボン、フラボノール、フラバノン、フラバノール、アントシアニジン、オーロン、カルコン、エピガロカテキンガレート、ガロカテキン、テアフラビン、ダイズイン、ゲニスチン、ルチン、ミリシトリン等のフラボノイド、タンニン、カテキン等を包含するポリフェノール系化合物、ポリビニルフェノールや水溶性レゾール、ノボラック樹脂等、リグニン等を挙げることができる。中でも、タンニン、没食子酸、カテキンおよびピロガロールが特に好ましい。
【0050】
また、上記スルホン酸としては、メタスルホン酸、イセチオン酸、タウリン、ナフタレンジスルホン酸、アミノナフタレンジスルホン酸、スルホサリチル酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アルキルナフタレンスルホン酸等および、これらの塩からなる群から選択される少なくとも一種を好ましく使用することができる。
【0051】
スルホン酸を用いると、化成処理後の被処理物の塗装性・耐食性が向上しうる。そのメカニズムは明らかではないが、次の2つの理由が考えられる。
【0052】
まず一つは、鋼板等の被処理物の表面にはシリカ偏析物等があり表面組成が不均一であるため、化成処理におけるエッチングされにくい部分があるが、スルホン酸を添加することによりそのようなエッチングされにくい部分を特にエッチングすることができ、その結果、被処理物表面に均一な金属酸化膜が形成されやすくなるものと推測される。すなわち、スルホン酸は、エッチング促進剤として作用するものと推測される。
【0053】
もう一つは、化成処理時においては化成反応により発生しうる水素ガスが、界面の反応を妨げている可能性があり、スルホン酸は復極作用として水素ガスを取り除き、反応を促進しているものと推測される。
【0054】
中でも、タウリンを用いると、アミノ基とスルホン基を両方もっている点で好ましい。スルホン酸の含有量としては、0.1〜10000ppmが好ましく、1〜1000ppmがより好ましい。当該含有量が0.1ppm未満であると、効果が得られにくく、10000ppmを超えるとジルコニウムの析出を阻害する可能性がある。
【0055】
アスコルビン酸を用いると、化成処理によって被処理物表面にジルコニウム酸化物、錫酸化物等の金属酸化膜が均一に形成され、塗装性、耐食性が向上しうる。そのメカニズムは明らかではないが、化成処理におけるエッチング作用が鋼板等の被処理物に対して均一に行われ、その結果、当該エッチングされた部分にジルコニウム酸化物および/または錫酸化物が析出して全体として均一な金属酸化膜が形成されるものと推測される。また、錫が何らかの影響により金属界面において錫金属として析出しやすくなる結果、当該錫金属の析出部位にジルコニウム酸化物が析出し、全体として被処理物に対する表面被覆性が向上するものと推測される。アスコルビン酸の含有量としては、5〜5000ppmが好ましく、20〜200ppmがより好ましい。当該含有量が5ppm未満であると、効果が得られにくく、5000ppmを超えるとジルコニウムの析出を阻害する可能性がある。
【0056】
上記キレート剤を含む場合、その含有量は、ジルコニウム以外の錫イオンおよび銅イオンなどのその他のカチオンの合計濃度に対して、0.5〜10倍の濃度であることが好ましい。0.5倍未満では、目的とする効果が得られず、10倍を超えると皮膜形成に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0057】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、さらに窒素、硫黄および/またはフェノール系防錆剤を含有させることができる。当該防錆剤は、金属表面に防食皮膜を形成し腐食を抑制しうるものである。窒素、硫黄、フェノール系防錆剤としては、ヒドロキノン、エチレン尿素、キノリノール、チオ尿素、ベンゾトリアゾール等、およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種を用いることができる。本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液に窒素、硫黄、フェノール系防錆剤を用いた場合は、化成処理によって被処理物表面にジルコニウム酸化物、錫酸化物等の金属酸化膜が均一に形成され、塗装性、耐食性が向上しうる。そのメカニズムは明らかではないが、次のことが推測される。
【0058】
すなわち、鋼板表面にはシリカ偏析物などがあり表面組成が不均一であるため、化成処理においてエッチングされて化成皮膜が形成される部分と、エッチング挙動が違うために化成皮膜が形成されず鉄酸化物となってしまう部分がある。窒素、硫黄、フェノール系防錆剤は、化成処理中に化成皮膜が形成されなかった部分に吸着して金属界面を被覆することで一次防錆性を向上させ、結果として、化成処理後の被処理物の塗装性、耐食性を向上させることができるものと推測される。
【0059】
また、化成皮膜において銅が過剰に析出した場合には、この銅がカソード基点となって電気的に不均一な化成皮膜となることがあるが、当該過剰な銅の析出部位に防錆剤を吸着させることにより、化成処理後の被処理物において均一な電着塗装性が得られ、耐食性を向上させることができるものと推測される。
【0060】
窒素、硫黄および/またはフェノール系防錆剤の含有量としては、0.1〜10000ppmが好ましく、1〜1000ppmがより好ましい。当該含有量が0.1ppm未満であると、効果が得られにくく、10000ppmを超えるとジルコニウムの析出を阻害する可能性がある。
【0061】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、さらにアルミニウムイオンおよび/またはインジウムイオンを含有していてよい。これらのカチオンは、錫イオンと同様の機能を有しているので、錫イオンだけでは効果がない場合に併用して用いることができる。中でも、アルミニウムがより好ましい。アルミニウムイオンおよび/またはインジウムイオンの含有量は、10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmがより好ましく、100〜300ppmがさらに好ましい。上記アルミニウムイオンおよびインジウムイオンの量は、ジルコニウムイオンの濃度に対して、例えば、2〜1000%に相当する濃度とすることができる。本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液としては、ジルコニウムイオン、錫イオン、およびアルミニウムイオンを含むカチオン電着塗装用金属表面処理液が挙げられ、さらに後述するフッ素を含有することができ、また、後述するポリアミン化合物を含有することができる。
【0062】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、上記成分以外に、種々のカチオンを含有していてもよい。上記カチオンの例として、マグネシウム、亜鉛、カルシウム、ガリウム、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、銀などが挙げられる。これら以外にも、pH調製の目的で加えられる、塩基や酸から由来したり、上記成分のカウンターイオンとして含まれたりするカチオンやアニオンが存在する。
【0063】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、上記各成分そのもの、および/または、これを含有する化合物を水に投入して混合することで製造することができる。
【0064】
上記ジルコニウムイオンを供給する化合物として、例えば、フッ化ジルコン酸、フッ化ジルコン酸カリウムおよびフッ化ジルコン酸アンモニウム等のフッ化ジルコン酸の塩、フッ化ジルコニウム、酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムコロイド、硝酸ジルコニル、ならびに炭酸ジルコニウム等を挙げることができる。
【0065】
また、錫イオンを供給する化合物として、例えば、硫酸錫、酢酸錫、フッ化錫、塩化錫、硝酸錫等を挙げることができる。一方、フッ素イオンを供給する化合物として、例えば、フッ化水素酸、フッ化アンモニウム、フッ化ホウ素酸、フッ化水素アンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素ナトリウム等のフッ化物を挙げることができる。また、錯フッ化物を供給源とすることも可能であり、例えば、ヘキサフルオロケイ酸塩、具体的には、ケイフッ化水素酸、ケイフッ化水素酸亜鉛、ケイフッ化水素酸マンガン、ケイフッ化水素酸マグネシウム、ケイフッ化水素酸ニッケル、ケイフッ化水素酸鉄、ケイフッ化水素酸カルシウム等を挙げることができる。また、ジルコニウムイオンを供給する化合物で錯フッ化物であるものであってもよい。さらに銅イオンを供給する化合物として、酢酸銅、硝酸銅、硫酸銅、塩化銅等を、アルミニウムイオンを供給する化合物として、硝酸アルミニウム、フッ化アルミニウム等を、また、インジウムイオンを供給する化合物として硝酸インジウム、塩化インジウム等を、それぞれ挙げることができる。
【0066】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、これらを混合した後、硝酸、硫酸等の酸性化合物、及び、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物を使用して、所定のpH値になるよう、調整することができる。
【0067】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、酸化剤を含んでいてもよい。酸化剤としては特に硝酸、亜硝酸、過酸化水素、臭素酸等およびこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。当該酸化剤は、被処理物の表面に金属酸化膜を均一に形成させ、被処理物の塗装性、耐食性を向上させることができる。
【0068】
そのメカニズムは明らかではないが、当該酸化剤を所定量用いることにより、化成処理におけるエッチング作用が鋼板等の被処理物に対して均一に行われ、当該エッチングされた部分にジルコニウム酸化物および/または錫酸化物が析出して全体として均一な金属酸化膜が形成されるものと推測される。また、当該所定量の酸化剤により、錫が金属界面において錫金属として析出し易くなり、当該錫金属の析出部位にジルコニウム酸化物が析出し、全体として被処理物に対する表面被覆性が向上するものと推測される。
【0069】
このような作用を奏させるためには、各酸化剤の含有量は次のとおりである。すなわち、硝酸の含有量としては100〜100000ppmが好ましく、1000〜20000ppmがより好ましく、2000〜10000ppmがさらに好ましい。亜硝酸、臭素酸の含有量としては5〜5000ppmが好ましく、20〜200ppmがより好ましい。亜硝酸、臭素酸の含有量としては5〜5000ppmが好ましく、20〜200ppmがより好ましい。過酸化水素の含有量としては1〜1000ppmが好ましく、5〜100ppmがより好ましい。各含有量が下限値未満であると、上記効果が得られにくく、上限値を超えるとジルコニウムの析出を阻害する可能性がある。
【0070】
本発明の金属表面処理方法は、先の金属表面処理液を用いて、金属基材に対して表面処理を行う工程を含むものである。
【0071】
上記金属基材としては、カチオン電着可能なものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、鉄系金属基材、アルミニウム系金属基材、亜鉛系金属基材等を挙げることができる。
【0072】
鉄系金属基材としては、例えば、冷延鋼板、熱延鋼板、軟鋼板、高張力鋼板等を挙げることができる。また、アルミニウム系金属基材としては、例えば、5000番系アルミニウム合金、6000番系アルミニウム合金、アルミニウム系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき等のアルミニウムめっき鋼板等を挙げることができる。また、亜鉛系金属基材としては、例えば、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板等の亜鉛系の電気めっき、溶融めっき、蒸着めっき鋼板等の亜鉛または亜鉛系合金めっき鋼板等を挙げることができる。なお、上記高張力鋼板としては、強度や製法により多種多様なグレードが存在し、例えば、JSC400J、JSC440P、JSC440W、JSC590R、JSC590T、JSC590Y、JSC780T、JSC780Y、JSC980Y、JSC1180Y等を挙げることができる。
【0073】
また、上記金属基材として、鉄系、アルミニウム系、亜鉛系等の複数種類の金属の組み合わせ(異種金属同士の接合部及び接触部を含む)からなる金属基材に対しても、同時に適用することができる。
【0074】
上記表面処理工程は、先の金属表面処理液を上記金属基材に接触させることによって行われる。具体的な方法として、浸漬法、スプレー法、ロールコート法、流しかけ処理法等を挙げることができる。
【0075】
上記表面処理工程における処理温度は、20〜70℃の範囲内であることが好ましい。20℃未満では、十分な皮膜形成が行われない可能性があり、70℃を超えても、それに見合う効果が期待できない。さらに好ましい下限値および上限値は、それぞれ30℃および50℃である。
【0076】
上記表面処理工程における処理時間は、2〜1100秒であることが好ましい。2秒未満では、十分な皮膜量が得られないおそれがあり、1100秒を超えても、それに見合う効果が期待できない。さらに好ましい下限値および上限値は、それぞれ30秒および120秒である。このようにして上記金属基材上に皮膜が形成される。
【0077】
本発明の表面処理された金属基材は先の表面処理方法で得られたものである。上記金属基材の表面には、ジルコニウムおよび銅を含む皮膜が形成されている。上記皮膜におけるジルコニウム/錫の元素比率は質量換算で1/10〜10/1であることが好ましい。この範囲外では、目的とする性能が得られないおそれがある。
【0078】
上記皮膜におけるジルコニウムの含有量は、鉄系金属基材の場合、10mg/m以上であることが好ましい。10mg/m未満だと、十分な防食性が得られない。より好ましくは20mg/m以上、さらに好ましくは30mg/m以上である。上限は特に規定されないが、皮膜量が多すぎると、防錆皮膜にクラックが発生しやすくなり、均一な皮膜を得ることが困難となる。この点で、上記皮膜におけるジルコニウムの含有量は、1g/m以下であることが好ましく、800mg/m以下であることがさらに好ましい。
【0079】
上記皮膜が、銅イオンを含む金属表面処理液を用いて形成された場合、皮膜中の銅の含有量は、目的とする効果を得るために、0.5mg/m以上であることが好ましい。
【0080】
本発明のカチオン電着塗装方法は、先の金属表面処理液を用いて、金属基材に対して表面処理を行う工程と、上記表面処理が行われた金属基材に対してカチオン電着塗装を行う工程とを含んでいる。
【0081】
上記カチオン電着塗装方法における表面処理工程は、先の表面処理方法における表面処理工程と同じである。上記表面処理工程で得られた表面処理された金属基材は、そのまま、あるいは洗浄して、カチオン電着塗装工程に入る。
【0082】
上記カチオン電着塗装工程では、表面処理が行われた金属基材に対して、カチオン電着塗装が行われる。上記カチオン電着塗装は、カチオン電着塗料に上記表面処理が行われた金属基材を浸漬し、これを陰極として50〜450Vの電圧を所定時間印加する。電圧の印加時間は、電着条件により異なるが、一般には2〜4分である。
【0083】
上記カチオン電着塗料としては、一般的によく知られたものが使用できる。具体的には、エポキシ樹脂やアクリル樹脂が有するエポキシ基に、アミンやスルフィドを付加し、酢酸などの中和酸を加えることによってカチオン化したバインダー、硬化剤としてのブロックイソシアネート、および、防錆性を有する顔料を樹脂で分散した顔料分散ペーストを加えて塗料化したものが一般的である。
【0084】
カチオン電着塗装工程終了後、そのまま、または水洗した後、所定温度で焼き付けることにより硬化塗膜が得られる。焼き付け条件は、用いたカチオン電着塗料の種類により異なるが、通常120〜260℃であり、140〜220℃であることが好ましい。焼き付け時間は10〜30分とすることができる。
このようにして得られるカチオン電着塗装された金属基材も、本発明の1つである。
【実施例】
【0085】
製造例1 アミノシランの加水分解縮合体の製造 その1
アミノシランとしてKBE603(3−アミノプロピル−トリエトキシシラン、有効濃度100%、信越化学工業社製)、5質量部を滴下漏斗から、脱イオン水47.5質量部とイソプロピルアルコール47.5質量部の混合溶媒中(溶媒温度:25℃)に60分かけて均一に滴下した後、窒素雰囲気下、25℃で24時間反応を行った。その後、反応溶液を減圧することにより、イソプロピルアルコールを蒸発させ、さらに脱イオン水を加え、有効成分5%のアミノシランの加水分解縮合体を得た。
【0086】
製造例2 アミノシランの加水分解縮合体の製造 その2
製造例1において、KBE603の量を20質量部に、脱イオン水の量を40質量部に、イソプロピルアルコールの量を40質量部に変更すること以外は同様にして、有効成分20%のアミノシランの加水分解縮合体を得た。
【0087】
実施例1
ジルコニウムイオン供給源としての40%ジルコン酸水溶液、錫イオン供給源としての硫酸錫、および、フッ化水素酸を混合した後、これを希釈してジルコニウムイオン濃度が500ppm、錫イオン濃度が30ppmとなるようにするとともに、硝酸と水酸化ナトリウムとを用いてpHが3.5となるよう調整を行い、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調製した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0088】
実施例2
実施例1において、さらに製造例1で得られたアミノシランの加水分解縮合体を200ppmとなるよう加え、また、硫酸錫を酢酸錫に変えて錫イオン濃度が10ppmとなるように変更し、さらに、pHを2.75としたこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調整した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0089】
実施例3
実施例1において、さらにポリアリルアミン「PAA−H−10C」(商品名、日東紡績社製)を25ppmとなるよう加え、また、ジルコニウムイオン濃度が250ppmとなるように変更し、さらに、pHを3.0としたこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液について、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0090】
実施例4
実施例1において、さらに硝酸銅を銅イオン濃度が10ppmとなるよう加え、また、錫イオン濃度が10ppmとなるように変更し、さらに、pHを3.0としたこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液について、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0091】
実施例5
実施例4において、さらに製造例2で得られたアミノシランの加水分解縮合体を200ppmとなるよう加え、また、錫イオン濃度が30ppmとなるように変更したこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液について、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0092】
実施例6
実施例2において、さらに硝酸アルミニウムをアルミニウムイオン濃度が200ppmとなるよう加え、また、硫酸錫を酢酸錫に変更して、錫イオン濃度が30ppmとなるように変更したこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調整した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0093】
実施例7および8
実施例6において、pHを3.5および4.0とした点以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調整した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を表1に示した。
【0094】
実施例9〜16
実施例7において、ジルコニウムイオン濃度、錫イオン濃度、およびアルミニウムイオン濃度が表1に示した濃度となるよう、40%ジルコン酸水溶液、硫酸錫、硝酸アルミニウムの添加量を変更した点以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調整した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を表1に示した。
【0095】
実施例17
実施例2において、さらに硝酸インジウムをインジウムイオン濃度が200ppmとなるよう加え、また、硫酸錫をフッ化錫に変えて錫イオン濃度が30ppmとなるように変更し、さらに、pHを3.5としたこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調整した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0096】
実施例18
実施例2において、さらにキレート剤としてジエチレントリアミン5酢酸(DTPA)を濃度が100ppmとなるよう加え、また、酢酸錫を硫酸錫に変えて錫イオン濃度が30ppmとなるように変更し、さらに、ジルコニウムイオン濃度を1000ppmに変更したこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調整した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は10ppmであった。
【0097】
実施例19
実施例2において、さらに硝酸ナトリウムをナトリウムイオン濃度が5000ppmとなるよう加え、また、錫イオン濃度が30ppmとなるように変更したこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調整した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0098】
実施例20
実施例5において、さらにキレート剤としてのグリシンおよび硝酸銅を、それぞれ50ppmおよび銅イオン濃度が10ppmとなるよう加え、また、ポリアミンの濃度が100ppmとなるように変更したこと以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液について、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度は5ppmであった。
【0099】
実施例21〜31
実施例1において、表1に記載されたポリアミンを所定量加えるとともに、その他の成分の濃度を表1に記載されたように変更する以外は同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液をそれぞれ得た。なお、これらの処理液について、pH3.0の条件下でフッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を併せて表1に示した。
【0100】
実施例32〜50
表2に記載されたスルホン酸を所定量加えるとともに、ポリアミンその他の成分を表2のとおりにしたこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液をそれぞれ得た。なお、これらの処理液について、pH3.0の条件下でフッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を併せて表2に示した。
なお、表2中、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物は、花王製デモールNL、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウムは、花王製ペレックスNBL、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムは、東ソー製P−NASS−1を用いた。
【0101】
実施例51
表3に記載されたアスコルビン酸を所定量加えるとともに、ポリアミンその他の成分を表3のとおりにしたこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液をそれぞれ得た。なお、これらの処理液について、pH3.0の条件下でフッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を併せて表3に示した。
【0102】
実施例52〜59
表3に記載された酸化剤を所定量加えるとともに、ポリアミンその他の成分を表3のとおりにしたこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液をそれぞれ得た。なお、これらの処理液について、pH3.0の条件下でフッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を併せて表3に示した。
【0103】
実施例60〜74
実施例1において、表3に記載された窒素系防錆剤、硫黄系防錆剤、フェノール系防錆剤を所定量加えるとともに、ポリアミンその他の成分を表3のとおりにしたこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液をそれぞれ得た。なお、これらの処理液について、pH3.0の条件下でフッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を併せて表3に示した。
【0104】
実施例75〜77
被処理物である基板を冷延鋼板(SPC)ではなく高張力鋼板を用い、表3に記載されたポリアミンその他の成分を表2のとおりにしたこと以外は実施例1と同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液をそれぞれ得た。なお、これらの処理液について、pH3.0の条件下でフッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を併せて表3に示した。
【0105】
実施例78〜106
実施例2、3、及び5〜31について、ポリアミンを添加しなかった点以外は、各実施例と同様にして、カチオン電着塗装用金属表面処理液を得た。なお、この処理液をpH3.0に調整した後、フッ素イオンメーターを用いて測定した際のフリーフッ素イオン濃度を表4に示した。
【0106】
比較例1〜6 比較用金属表面処理液の調製
表1、表3の記載に基づき、上記実施例に基づいて、比較用金属表面処理液をそれぞれ得た。得られた金属表面処理液について表1、表3にまとめた。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
【表4】

【0111】
<表面処理>
金属基材として、実施例1〜74、実施例78〜106、比較例1〜5では市販の冷延鋼板(SPC、日本テストパネル社製、70mm×150mm×0.8mm)を用意し、実施例75〜77、比較例6では高張力鋼板(70mm×150mm×1.0mm)を用意し、これに対し、アルカリ脱脂処理剤として「サーフクリーナーEC92」(商品名、日本ペイント社製)を使用して、40℃で2分間、脱脂処理を行った。これを水洗槽で浸漬洗浄した後、水道水で約30秒間スプレー洗浄を行った。
【0112】
脱脂処理後の金属基材に、実施例および比較例で調製した金属表面処理液に、40℃で90秒間浸漬することにより表面処理を行った。ただし、実施例21および22については、それぞれ240秒間および15秒間の処理時間とした。表面処理終了後、40℃で5分以上乾燥を行い、表面処理された金属基材を得た。特に断らない限り、以下の評価では、この表面処理された金属基材を試験板として用いた。
【0113】
<皮膜中の元素含有量の測定>
皮膜中に含まれる各元素の含有量は、島津製作所製蛍光X線分析装置「XRF1700」を用いて測定した。
【0114】
<一次防錆>
【0115】
試験板を25℃の純水に5時間浸漬した後の錆の発生状態を目視観察で観察した。
○:錆の発生全く認められず
△:ごくわずかに錆発生
×:錆の発生がはっきりと確認できる
【0116】
<スラッジの観察>
実施例および比較例の表面処理液10Lについて、200枚のテストパネルを表面処理し、室温で30日経過した際に、スラッジの発生による濁りが表面処理液中に生じたかどうかを目視により、下記の基準で評価した。
◎:透明液体
○:わずかにうすく濁る
△:濁る
×:沈殿物(スラッジ)発生
【0117】
<つきまわり性の評価>
つきまわり性は、特開2000−038525号公報に記載された「4枚ボックス法」により評価した。すなわち、図1に示すように、試験板1〜4を立てた状態で、間隔20mmで平行に配置し、両側面下部および底面を布粘着テープ等の絶縁体で密閉したボックス10を調整した。なお、金属材料4を除く金属材料1、2、3には下部に直径8mmの貫通穴5を設けた。
【0118】
このボックス10を、カチオン電着塗料「パワーニクス110」(商品名、日本ペイント社製)で満たした電着塗装容器20内に浸漬した。この場合、各貫通穴5のみからカチオン電着塗料がボックス10の内部に浸入する。
【0119】
マグネチックスターラーでカチオン電着塗料を攪拌しながら、各試験板1〜4を電気的に接続し、試験板1との距離が150mmとなるように対極21を配置した。各試験板1〜4を陰極、対極21を陽極として電圧を印加し、カチオン電着塗装を行った。塗装は、印加開始から30秒かけて目的とする電圧(210Vおよび160V)まで昇圧し、その後150秒間、その電圧を維持することにより行った。このときの浴温は30℃に調製した。
【0120】
塗装後の各試験板1〜4は水洗した後、170℃で25分間焼き付けを行った後、空冷し、対極21に最も近い試験板1のA面に形成された塗膜の膜厚と、対極21からもっとも遠い試験板4のG面に形成された塗膜の膜厚とを測定し、膜厚(G面)/膜厚(A面)の比を求めることにより、つきまわり性を評価した。この値が大きいほど、つきまわり性がよいと評価できる。合格レベルは40%以上である。
【0121】
<塗装電圧>
実施例および比較例の表面処理液を用いて、冷延鋼板および亜鉛メッキ鋼板に対し、表面処理を行い、試験板を得た。これらの試験板に対して、先のカチオン電着塗料「パワーニクス110」を用いて、20μmの電着塗膜を得るために必要な電圧を求めた。金属基材が亜鉛メッキ鋼板の場合と冷延鋼板の場合とにおける、上記20μmの電着塗膜を得るために必要な塗装電圧の差を求めた。その差が小さいほど、表面処理皮膜として優れていることを示している。40V以下が合格である。
【0122】
なお、20μmの電着塗膜を得るために必要な電圧は以下のようにして求めた。すなわち、電着条件として、30秒で所定電圧に昇圧し、その後、150秒保持し、得られた膜厚を測定する。これを150V、200V、250Vについて行い、得られた電圧と膜厚との関係式から、20μmの膜厚が得られる電圧を求める。
【0123】
<塗装外観>
試験板にカチオン電着塗装を行い、得られた電着塗膜の外観を下記基準により評価した。結果を表5〜8に示す。
◎:均一な塗膜が得られている
○:ほぼ均一な塗膜が得られている
△:塗膜にややムラがある
×:塗膜にムラが認められる
【0124】
<二次密着試験(SDT)>
試験板に対して20μmの電着塗膜を形成した後に、金属素地まで達する縦平行のカットを2本入れ、55℃で240時間、5%塩化ナトリウム水溶液に浸漬した。次いで、水洗および風乾を行った後、カット部に密着テープ「エルパックLP−24」(商品名、ニチバン社製)を密着させてから、密着テープを急激に剥離した。剥離した密着テープに付着した塗料の最大幅(片側)の大きさを測定した。
◎:0mm
○:2mm未満
△:2mm以上5mm未満
×:5mm以上
【0125】
<サイクル腐食試験(CCT)>
試験板に対して20μmの電着塗膜を形成した後に、エッジおよび裏面をテープシールし、金属素地まで達するクロスカット疵を入れた。これを、35℃、湿度95%に保たれた塩水噴霧試験器中で、35℃に保温した5%塩化ナトリウム水溶液を2時間連続噴霧した。次いで60℃、湿度20〜30%の条件下で4時間乾燥した。これを24時間の間に3回繰り返したものを1サイクルとし、200サイクルの後に塗膜の膨れ幅(両側)を測定した。
◎:6mm未満
○:6mm以上8mm未満
△:8mm以上10mm未満
×:10mm以上
【0126】
<塩水噴霧試験(SST)>
試験板に対して20μmの電着塗膜を形成した後に、エッジおよび裏面をテープシールし、金属素地まで達するクロスカット疵を入れた。これを、35℃、湿度95%に保たれた塩水噴霧試験器中で、35℃に保温した5%塩化ナトリウム水溶液を840時間連続噴霧した。次いで、水洗および風乾を行った後、カット部に密着テープ「エルパックLP−24」(商品名、ニチバン社製)を密着させてから、密着テープを急激に剥離した。剥離した密着テープに付着した塗料の最大幅(片側)の大きさを測定した。
○:2mm未満
△:2mm以上5mm未満
×:5mm以上
【0127】
評価結果を表5〜8にまとめた。
【0128】
【表5】

【0129】
【表6】

【0130】
【表7】

【0131】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明のカチオン電着塗装用金属表面処理液は、カチオン電着が施される金属基材、例えば、自動車ボディや部品等に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】つきまわり性を評価する際に用いるボックスの一例を示す斜視図である。
【図2】つきまわり性の評価を模式的に示す図面である。
【符号の説明】
【0134】
1、2、3、4…試験板、5…貫通穴、10…ボックス、20…電着塗装容器、21…対極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウムイオン、および、錫イオンを含む、pHが1.5〜6.5のカチオン電着塗装用金属表面処理液であって、
前記ジルコニウムイオンの濃度が10〜10000ppm、かつ、
前記ジルコニウムイオンに対する錫イオンの濃度比が質量換算で0.005〜1である、
カチオン電着塗装用金属表面処理液。
【請求項2】
さらにポリアミン化合物を含む、請求項1記載のカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【請求項3】
さらに銅イオンを含む、請求項1または2いずれかに記載のカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【請求項4】
さらにフッ素イオンを含み、pHが3.0である場合のフリーなフッ素イオン量が0.1〜50ppmである、請求項1〜3いずれかに記載のカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【請求項5】
さらにキレート化合物を含む、請求項1〜4いずれかに記載のカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【請求項6】
キレート化合物が、スルホン酸である請求項5記載のカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【請求項7】
さらに酸化剤を含む、請求項1〜6いずれかに記載のカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【請求項8】
更にアルミニウムイオンおよび/またはインジウムイオンを含む、請求項1〜7のいずれかに記載のカチオン電着塗装用金属表面処理液。
【請求項9】
請求項1〜8いずれかに記載の金属表面処理液を用いて、金属基材に対して表面処理を行う工程を含む、金属表面処理方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法で得られる、表面処理による皮膜が形成された金属基材。
【請求項11】
前記皮膜におけるジルコニウム/錫の元素比率が質量換算で1/10〜10/1である請求項10記載の金属基材。
【請求項12】
請求項1〜8いずれかに記載の金属表面処理液を用いて、金属基材に対して表面処理を行う工程と、前記表面処理が行われた金属基材に対してカチオン電着塗装を行う工程とを含む、カチオン電着塗装方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法で得られる、カチオン電着塗装された金属基材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−291345(P2008−291345A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303746(P2007−303746)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】