説明

カッティング装置およびそのカット方法

【課題】カッティングヘッドと対象媒体との位置精度を確保した状態でカット加工が可能なカッティング装置を提供する。
【解決手段】カッティング装置1は、プラテン30と対向したガイドレール40aと、シート材8に画像およびトンボを印刷するプリンタヘッド62と、シート材8にカット加工を施すカッタ刃53と、シート材8を前後に送る媒体送り機構と、トンボの位置を検出するトンボ検出部54と、画像の印刷位置に対応させてカット加工位置を設定するコントローラとを有し、シート材8を前方に送りながら画像およびトンボを印刷し、トンボの位置をトンボ検出部54により検出して、コントローラにおいて設定されたカット加工位置にカッタ刃53によりカット加工を施す。カット加工を開始する前に複数の画像のうち最も後側に印刷された画像の周囲に印刷されたトンボの位置を検出し、当該画像にカット加工を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象媒体に対してカット加工を施すカッティングヘッドを備えたカッティング装置、およびこのカッティング装置を用いたカット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記のようなカッティング装置の一例として、プラテンに支持された対象媒体に対して、カッティングヘッドを左右に往復移動させる作動と対象媒体を前後に送る作動とを組み合わせて行うことにより、対象媒体にカット加工を施すものが知られている。一方で、上記カッティングヘッドに代えて、吐出ノズルからインクを吐出するプリンタヘッドを用いて、対象媒体の表面に画像を印刷するように構成されたプリンタ装置も知られている。
【0003】
ところで近年、対象媒体に対して画像を印刷するとともに、この印刷された画像に対応させたカット加工を施したいという要求がある。この要求に応えるべく、カッティングヘッドおよびプリンタヘッドを搭載したカッティング装置が開発されており、このカッティング装置により、印刷およびカット加工を連続して行うことが可能となる。例えば特許文献1の図1には、インクジェット・ヘッド26が搭載されたキャリッジ22、およびカッティング・ヘッド28が搭載されたキャリッジ24が、ガイド・レール18に沿って移動可能となった構成が開示されている。この構成により、ベース部材12に載置されたシート100に対して、印刷およびカット加工を施すことができるようになっている。
【0004】
上記カッティング装置においては、まず、プリンタヘッドを用いて画像およびこの画像を囲むように例えば4つの基準マーク(以下、トンボを称す)を印刷する。そして、カッティングヘッドを用いてカット加工を行う際に、これらのトンボの位置を検出することによりトンボに対する画像の印刷位置が把握でき、画像に対応した位置にカット加工を施すことができるようになっている。シート状の対象媒体に対して印刷およびカット加工を施す場合、例えば対象媒体を前方に送りながら対象媒体の印刷領域全体に印刷を施して、ロール状に巻き取っておく。
【0005】
上記の印刷終了が終了した後、カット加工を開始する前に、このロール状に巻き取られた対象媒体を一旦後方へバックフィードして、対象媒体における最初に印刷された部分(印刷開始位置)をプラテン上に位置させる。そして、対象媒体の前端に印刷された画像に対応する4つの基準マークのうち、第1基準マークの位置をトンボ検出部により検出し、対象媒体を前後へ送って第2基準マークの位置を検出し、トンボ検出部を左右へ移動させて第3基準マークの位置を検出し、対象媒体を再び前後へ送って第4基準マークの位置を検出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−297248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述のカッティング装置を用いた場合、1つの画像に対応する基準マークの位置を検出する際に、対象媒体を2度にわたって前後に送る必要がある。上記バックフィードを考慮すると、カット加工を開始するまでに対象媒体を3度にわたって前後に送る必要がある。そのため、例えば前後に長い画像(例えば、前後長さが約1m)を印刷して、この画像の輪郭に沿ってカット加工を施す場合、基準マークの位置を検出する際に対象媒体を前後に大きく(約1m)2回送る必要がある。このように、対象媒体が前後に大きく送られるときには、前後方向に対して若干斜めの状態で送られて位置ずれが発生しやすく、そのため、カッティングヘッドと対象媒体との位置精度を確保することが困難であるという課題があった。
【0008】
また、例えば前後に短い画像を、前後に複数並べて印刷するような場合、上記の基準マークの位置を検出する際における位置ずれは発生しにくい一方で、カット加工を開始する前に対象媒体が一旦バックフィードされて後方に送られるため、このときに位置ずれが発生しやすいという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、カッティングヘッドと対象媒体との位置精度を確保した状態でカット加工が可能なカッティング装置、およびそのカット方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明に係るカッティング装置は、対象媒体(例えば、実施形態におけるシート材8)を支持する媒体支持手段(例えば、実施形態におけるプラテン30)と対向して走査方向に延びて設けられたガイドレールと、前記ガイドレールに沿って移動自在に設けられて、前記媒体支持手段に支持された対象媒体に向けてインクを吐出して画像および前記画像の周囲に基準マーク(例えば、実施形態におけるトンボT1,T2,T3,T4)を印刷するプリンタヘッドと、前記ガイドレールに沿って移動自在に設けられて、前記媒体支持手段に支持された対象媒体に対してカット加工を施すカッティングヘッド(例えば、実施形態におけるカッタ刃53)と、前記走査方向に対して直交する搬送方向に対象媒体を送る媒体送り機構と、前記ガイドレールに沿って移動自在に設けられて、前記基準マークの位置を検出するマーク位置検出部(例えば、実施形態におけるトンボ検出部54)と、前記マーク位置検出部において得られた前記基準マークの位置を基に、前記基準マークに対する前記画像の印刷位置を検出するとともに、前記画像の印刷位置に対応させてカット加工位置を設定するカット位置設定部(例えば、実施形態におけるコントローラ9)とを有し、前記媒体送り機構により対象媒体を前記搬送方向における一方側に送りながら前記画像および前記基準マークを印刷し、前記カット位置設定部において設定されたカット加工位置にカット加工を施すように構成されており、カット加工を開始する前に複数の前記画像のうちの前記搬送方向における最も他方側に印刷された他方側画像(例えば、実施形態における画像N1)の周囲に印刷された前記基準マークの位置を検出し、前記他方側画像に対してカット加工を施すようになっている。
【0011】
なお、上記カッティング装置において、前記プリンタヘッドにより、前記画像の周囲に少なくとも3つの前記基準マークが印刷され、カット加工を開始する前に、前記マーク位置検出部により、前記他方側画像の周囲に印刷された少なくとも3つの前記基準マークの位置を検出することが好ましい。
【0012】
また、上記カッティング装置において、前記画像に対するカット加工を開始する前に、前記画像の周囲に印刷された前記基準マークのうち前記マーク位置検出部に対して最も近くに位置した第1基準マーク(例えば、実施形態におけるトンボT1)の位置を前記マーク位置検出部により検出し、前記マーク位置検出部を前記走査方向に移動させて前記第1基準マークに対して前記走査方向に位置して印刷された第2基準マーク(例えば、実施形態におけるトンボT2)の位置を検出し、前記媒体送り機構により前記対象媒体を前記搬送方向に送り前記第2基準マークに対して前記搬送方向に位置して印刷された第3基準マーク(例えば、実施形態におけるトンボT3)の位置を検出して、前記画像の印刷位置を検出することが好ましい。
【0013】
本発明に係るカット方法は、対象媒体を搬送方向における一方側に送りながら画像および前記画像の周囲に基準マークを印刷し、前記基準マークの位置を基に前記基準マークに対する前記画像の印刷位置を検出して、カッティングヘッドによりカット加工を施す位置を設定してカット加工を施すカッティング装置のカット方法であって、カット加工を開始する前に、複数の前記画像のうちの前記搬送方向における最も他方側に印刷された他方側画像の周囲に印刷された前記基準マークの位置を検出する第1のステップと、前記他方側画像に対してカット加工を施す第2のステップとを有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るカッティング装置は、対象媒体を搬送方向における一方側に送りながら画像および基準マークを印刷した後カット加工を開始する前に、搬送方向における最も他方側に印刷された他方側画像の周囲に印刷された基準マークの位置を検出し、他方側画像に対してカット加工を施すように構成されている。このように、印刷完了後、印刷開始位置に戻すバックフィードを行いながらカット加工を施す構成とすることで、カット加工を施すときにおける対象媒体を前後に送る回数(頻度)を減らすことができる。そのため、対象媒体が斜めに搬送されることが少なくなり、斜めに搬送されることに起因した位置ずれを低減でき、カッティングヘッドと対象媒体との位置精度を確保すること可能となる。
【0015】
なお、上記カッティング装置おいて、プリンタヘッドにより画像の周囲に少なくとも3つの基準マークが印刷され、これらの位置を基にカット加工位置が設定される構成が好ましい。このように、複数の基準マークの位置を基にカット加工位置を設定することで、搬送方向および走査方向に対する距離補正、並びに傾き補正を行うことが可能となる。そのため、例えば印刷後に対象媒体が伸縮したような場合においても、画像に対応させた位置精度の高いカット加工を施すことができる。
【0016】
また、複数の基準マークのうちマーク位置検出部に対して最も近くに位置した第1基準マークの位置を検出し、マーク位置検出部を走査方向に移動させて第2基準マークの位置を検出し、媒体送り機構により対象媒体を搬送方向に送り第3基準マークの位置を検出して画像の印刷位置を検出する構成が好ましい。このように構成すると、搬送方向に1度だけ対象媒体を移動させることにより、3つの基準マークの位置を検出するとともに、基準マークに対する画像の位置を検出できる。従来の構成では、画像の位置を検出するために対象媒体を2度にわたって搬送方向に送る必要があったが、本発明に係るカッティング装置においては、1度の送りのみにより画像の位置を検出可能となる。そのため、対象媒体が搬送方向へ送られる頻度を減らすことにより、対象媒体に対する位置ずれの発生を低減して、カッティングヘッドと対象媒体との位置精度を確保することが可能となる。
【0017】
本発明に係るカット方法は、カット加工を開始する前に、複数の画像のうちの他方側画像の周囲に印刷された基準マークの位置を検出する第1のステップと、他方側画像に対してカット加工を施す第2のステップとを有している。この構成により、この構成から、搬送方向に1度だけ対象媒体を送ることにより、基準マークに対する画像の印刷位置を検出することができる。そのため、対象媒体が搬送方向へ送られる頻度を減らし、対象媒体に対する位置ずれの発生を低減することにより、カッティングヘッドと対象媒体との位置精度を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るカッティング装置の斜視図である。
【図2】上記カッティング装置のガイド部材近傍を示した正面図である。
【図3】ユニット駆動装置の平面図である。
【図4】上記カッティング装置のガイド部材近傍を示した斜視図である。
【図5】上記カッティング装置の制御系統図である。
【図6】印刷が施されたシート材の平面図である。
【図7】上記カッティング装置のフローチャートである。
【図8】図6とは異なる印刷が施されたシート材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下においては便宜上、各図に示す矢印方向をそれぞれ、前後、左右および上下と定義して説明を行う。
【0020】
図1〜5を参照しながら、本発明を適用したカッティング装置1の構成について説明する。図1はカッティング装置1の斜視図を、図2は後述する本体部3の内部構造を、図3は後述するユニット駆動装置80の平面図を、図4は後述する印刷ユニット60周辺の斜視図を、図5はカッティング装置1の制御系統図をそれぞれ示す。
【0021】
カッティング装置1は、図1に示すように、左右一対の支持脚2a,2aからなる支持部2と、この支持部2に支持されて左右に延びる本体部3とを主体に構成される。本体部3の左右端部にはそれぞれ、左本体部5および右本体部6が形成されており、これらの外周部分は本体カバー4により覆われている。左本体部5の前面側には、操作スイッチ類や表示装置類等からなる操作部7が設けられている。左本体部5の内部には、操作部7からの操作信号が入力されるコントローラ9が設けられている。
【0022】
上記コントローラ9は、後述する各構成部材と電気接続されており、これらに作動信号を出力して作動制御を行うようになっている。具体的には、図5に示すように、後述する前後駆動モータの駆動、左揺動機構11aの駆動、右揺動機構13aの駆動、カッタホルダ52の上下動、プリンタヘッド62(吐出ノズル)からのインクの吐出、上下移動機構74の駆動、左右駆動モータ83の駆動、第1連結機構86による連結、および第2連結機構87による連結を制御するようになっている。また、コントローラ9には、後述するトンボ検出部54における検査光の受光結果が入力される。
【0023】
左本体部5と右本体部6との間には、媒体送り機構20、印刷およびカット加工の対象であるシート材8を支持する平板状のプラテン30、このプラテン30の上方を左右に延びて設けられたガイド部材40、カッティングユニット50、印刷ユニット60、メンテナンス装置70およびユニット駆動装置80等が配設されている。
【0024】
媒体送り機構20は、図4に示すように、ガイド部材40の下部に左右に並ぶように配設されて回転自在な複数のピンチローラ15、およびこのピンチローラ15の下方においてプラテン30に露出するように設けられた送りローラ16を主体に構成される。この送りローラ16は、図示しない前後駆動モータにより回転されるようになっている。この構成から、送りローラ16とピンチローラ15との間にシート材8を挟んだ状態で、前後駆動モータにより送りローラ16を回転させることにより、シート材8を所定距離だけ前後に送ることができる。
【0025】
カッティングユニット50は、図2に示すように、カッティングキャリッジ51、カッタホルダ52およびトンボ検出部54を主体に構成される。カッティングキャリッジ51は、ガイド部材40の前面側に形成されたガイドレール40aに対して左右へ移動可能に取り付けられており、カッタホルダ52およびトンボ検出部54の取り付けベースとなっている。また、カッティングキャリッジ51の右面には、後述する右フック14と係合可能な係合部(図示せず)が形成されている。
【0026】
カッタホルダ52は、上記カッティングキャリッジ51に対して上下移動可能に搭載されており、このカッタホルダ52の下端部にはカッタ刃53が着脱可能に取り付けられている。トンボ検出部54は、その下面に発光部(図示せず)および受光部(図示せず)を備えている。この発光部から下方に向けて発射された検査光の反射光が、受光部で受光される構成となっている。例えば、印刷が施されていないシート材8の表面においては、検査光(強度の高い検査光)が反射されて受光部で受光される一方、後述するトンボT1〜T4が印刷された部分においては検査光が反射されない(強度の低い検査光が反射される)ように、受光部の受光感度が設定されている。
【0027】
印刷ユニット60は、印刷キャリッジ61および複数のプリンタヘッド62を主体に構成される。印刷キャリッジ61は、上記カッティングキャリッジ51と同様に、ガイドレール40aに対して左右へ移動可能に取り付けられており、プリンタヘッド62の取り付けベースとなっている。また、印刷キャリッジ61の左面には、後述する左フック12と係合可能な係合部61aが形成されている(図4参照)。複数のプリンタヘッド62は、例えばマゼンダ、イエロー、シアン、ブラックの各色から構成される。また、各プリンタヘッド62の下面には、下方に向けてインクが吐出される複数の吐出ノズル(図示せず)が形成されている。
【0028】
図2および図4に示すように、左本体部5の内部には、メンテナンス装置70が設けられている。メンテナンス装置70は、プリンタヘッド62の下面の形状に応じて形成された(4つの)吸引キャップ71、この吸引キャップ71が搭載されたステージ72、装置本体73、およびこの装置本体73の内部に設けられた上下移動機構74を主体に構成される。この構成より、プリンタヘッド62と吸引キャップ71とを上下に対向させた状態で、上下移動機構74によりステージ72を上動させて、プリンタヘッド62の下面を吸引キャップ71で覆うことができるようになっている。このようにして、プリンタヘッド62の下面を覆うことにより、吐出ノズルにおけるインクの乾燥(増粘)を防止可能である。
【0029】
ユニット駆動装置80は、図2および図3に示すように、ガイド部材40の左右端部に位置して設けられた駆動プーリ81および従動プーリ82、この駆動プーリ81を回転駆動する左右駆動モータ83、両プーリ81,82に掛け回された帯状の歯付駆動ベルト84、および歯付駆動ベルト84に連結された駆動キャリッジ85を主体に構成される。駆動キャリッジ85の左面側には、印刷キャリッジ61と駆動キャリッジ85とを分離可能に連結する第1連結機構86が形成されている。一方、駆動キャリッジ85の右面側には、上記第1連結機構86と同様に構成されて、カッティングキャリッジ51と駆動キャリッジ85とを分離可能に連結する第2連結機構87が形成されている。なお、上記第1連結機構86および第2連結機構87としては、例えば係止孔に係合突起を係合させて連結させる構成や、磁気を利用して連結させる構成等を用いることが可能である。
【0030】
この構成から、コントローラ9により左右駆動モータ83、第1連結機構86および第2連結機構87の駆動制御が行われることにより、カッティングユニット50または印刷ユニット60を駆動キャリッジ85に連結させた状態で、ガイドレール40aに沿って左右に移動させる制御を行うことができるようになっている。
【0031】
図2に示すように、左本体部5の内部には、左揺動機構11aが内蔵された左フック支持部11が固設されている。この左揺動機構11aにより左フック12を上下に揺動させて、印刷キャリッジ61の係合部61aと左フック12とを係合させたり、または係合を解除させることができるようになっている。一方、右本体部6の内部には、右揺動機構13aが内蔵された右フック支持部13が固設されている。上記左フック支持部11と同様に、右揺動機構13aにより右フック14を上下に揺動させて、カッティングキャリッジ51の係合部と右フック14とを係合させたり、または係合を解除させることができる。
【0032】
以上ここまでは、カッティング装置1の構成について説明した。以下においては、上述のように構成されたカッティング装置1を用いて、まず長尺状のシート材8を前方へ送りながら印刷領域全体に対して印刷を施した後、このシート材8をカッティング装置1から取り外すことなくカットする場合の各構成部材の作動について、図6および図7を追加参照しながら説明する。図6は印刷が施されたシート材8の平面図を、図7はカッティング装置1のフローチャートをそれぞれ示す。
【0033】
なお、以下の説明では、図6に示すように、得ようとする画像A1等とともに、各画像を囲むように4つのトンボT1〜T4が印刷され、この画像A1等の輪郭に沿ってカット加工を施す場合を例示している。また、カッティング装置1は、以下に説明するように、印刷およびカット加工を連続して行う以外にも、例えばシート材8に対して印刷のみを施したり、またはカット加工のみを施すことも可能である。
【0034】
印刷開始前(待機状態)において駆動キャリッジ85は、カッティングユニット50および印刷ユニット60のどちらとも連結されていないものとする。この状態においては、カッティングキャリッジ51の係合部と右フック14とが係合されて、カッティングユニット50がガイドレール40aの右端に保持され、一方、印刷キャリッジ61の係合部61aと左フック12とが係合されて、印刷ユニット60がガイドレール40aの左端に保持されている。また、吸引キャップ71により、プリンタヘッド62の下面が覆われている。
【0035】
まず、図7に示すステップS101において、オペレータが操作部7を操作して印刷が開始されると、コントローラ9からの作動信号に基づいて駆動キャリッジ85が左動されて、第2連結機構87により駆動キャリッジ85と印刷キャリッジ61とが連結される。そして、吸引キャップ71が下動されるとともに、係合部61aと左フック12との係合が解除され、印刷ユニット60をガイドレール40aに沿って移動可能な状態とする。
【0036】
この状態において、印刷ユニット60を左右に往復移動させながらプリンタヘッド62から下方に向けてインクを吐出させる制御と、前後駆動モータによるシート材8を前方に送る制御とを組み合わせて行うことにより、シート材8の印刷領域全体に対して印刷を施す。このようにして印刷が施されたシート材8の一例を図6に示しており、シート材8に対して前方側から順に印刷が施される。この図6から分かるように、複数の画像A1,A2,B1,B2,…,N1,N2とともに、各画像を囲むように印刷されたL字状のトンボT1〜T4が、1つの画像につき4つ印刷されている。また、各画像に対して、左後側にトンボT1、右後側にT2、右前側にT3、左前側にT4がそれぞれ印刷されるものとする。
【0037】
上述の印刷が完了するとステップS102に進み、印刷ユニット60が左動されてガイドレール40aの左端に保持されるとともに、第1連結機構86による駆動キャリッジ85と印刷キャリッジ61との連結が解除される。そして、駆動キャリッジ85が右動されて、第2連結機構87により駆動キャリッジ85とカッティングキャリッジ51とが連結された後、カッティングキャリッジ51の係合部と右フック14との係合が解除され、カッティングユニット50をガイドレール40aに沿って移動可能な状態とする。
【0038】
続いてステップS103に進み、画像N1に対応するトンボT1〜T4の位置を検出する。このとき、シート材8は印刷完了時の前後位置のままであり、つまり、画像N1,N2が印刷された部分近傍がプラテン30に載置されている。そのため、駆動キャリッジ85に連結されたカッティングユニット50を左動させるだけで、自動的に画像N1に対応させて印刷されたトンボT1の上方にトンボ検出部54を位置させることができて、後述するように順次トンボの位置検出が可能となる。よって、新たにカット加工を開始する位置を設定する必要がなく、自動的にカット加工の開始位置が設定できるので、制御構成をシンプルに構成可能である。
【0039】
この位置にカッティングユニット50を保持した状態で、シート材8を前後に移動させることにより、トンボT1の左右ラインh1がトンボ検出部54の下方を通過する。上述のように、トンボT1〜T4が印刷された部分においては検査光が反射しないため、受光部における検査光の受光結果より、左右ラインh1の前後位置を検出できる。左右ラインh1の前後位置を検出した後、シート材8の前後位置を固定した状態で、カッティングユニット50を左右に移動させることにより、トンボT1の前後ラインv1がトンボ検出部54の下方を通過し、前後ラインv1の左右位置が検出できる。
【0040】
上記のようにして検出された前後位置および左右位置から、左右ラインh1と前後ラインv1とが交差する第1基準位置t1を算出できる。第1基準位置t1を算出した後、カッティングユニット50を右動させて、トンボT2近傍に位置させる。そして、上記トンボT1の場合と同様にして、トンボT2の左右ラインと前後ラインとが交差する第2基準位置t2を算出する。そして、シート材8を後方に送って位置トンボT3の第3基準位置t3を算出し、続いて、カッティングユニット50を左動させてトンボT4の第4基準位置t4を算出する。
【0041】
算出された第1基準位置t1〜第4基準位置t4を基にして、コントローラ9において、第1基準位置t1〜第4基準位置t4に対する画像N1の印刷位置が算出される。そして、シート材8に対して、どの位置にカット加工を施すのかを示したカット用位置データが設定される。なお、印刷時に用いられる印刷用位置データに基づいて、予めカット用位置データを設定しておき、算出された画像N1の印刷位置に応じてカット用位置データを補正して設定するように構成しても良い。このように構成すると、インクの乾燥に伴って画像N1の形状が、印刷直後と比較して若干変形したような場合においても、この変形後の形状に対応させた位置にカット加工を施すことが可能となる。例えば、画像N1の後部が前部に対して広がるように変形(台形状に変形)しても、画像N1にカット位置を合わせる台形補正ができる。
【0042】
ステップS104において、設定されたカット用位置データに基づいて、カッティングユニット50を左右に移動させるとともにシート材8を前後に送りながら、シート材8にカッタ刃53を食い込ませることにより、画像N1の輪郭に沿ってカット加工を施す。
【0043】
このように、本発明に係るカッティング装置1は、印刷完了後、従来のようにシート材8を大きく後方へバックフィードすることなく、後端に印刷された画像N1からカット加工を行う構成となっている。よって、前後方向へのシート材8の送り量、およびシート材8を送る頻度を減らすことにより、この送り時に発生しやすいシート材8の位置ずれを低減し、シート材8とカッタ刃53との位置精度を確保することが可能である。また従来は、後方へバックフィードした際に大きな位置ずれが生じて、これにより、トンボ検出部54の下方にトンボが位置せずトンボが検出できない検出エラーが発生し、一連の作動が中断されることがあった。一方、本発明に係るカッティング装置1においては、上記のように位置ずれの発生が低減できるので、このような検出エラーを発生させず効率良く一連の作動を実行できる。
【0044】
ところで、例えば前後方向に数十メートルにも及ぶ印刷を一度に行う場合、従来の方法においては、カット加工を開始する前にシート材8を数十メートルにわたってバックフィードさせる必要があり、その分作業時間が余分にかかっていた。一方、本発明に係るカッティング装置1においては、後端に(最後に)印刷された画像から順にカットを行う構成となっているので、上記バックフィードに要する作業時間を短縮でき、印刷およびカット加工の一連の作業に要する時間を短縮して作業効率を向上させることが可能となる。
【0045】
次にステップS105に進み、画像N1に対するカット加工が完了した後、カッティングユニット50を右動させ、上記画像N1と同様にして、画像N2に対応するトンボT1〜T4の第1基準位置t1〜第4基準位置t4を算出する。この算出された第1基準位置t1〜第4基準位置t4を基にカット用位置データが設定され、画像N2の輪郭に沿ってカット加工を施す。
【0046】
画像N2に対するカットが完了した後、カッティングユニット50を左動させるとともにシート材8を後方へ送り、画像N1の前方に隣接する画像(図示せず)に対して同様にカット加工を施す。このように、後端に印刷された画像から順にカットを行っていく。そして、ステップS106において、前端部に印刷された画像A1に対してカットを行い、その後ステップS107に進み、画像A1の右方に印刷された画像A2に対してカットを施すことにより、このフローは終了する。上記のフローにより、画像が印刷されるとともに、その輪郭形状にカットされた複数の結果物を得ることができる。
【0047】
図8には、上記図6とは異なる形状の画像R1,R2が左右に並んで印刷されたシート材8の平面図を示す。図8から分かるように、この画像R1,R2は、上記画像A1等と比較して、前後に長い形状となっている。以下において、プリンタヘッド62により、図8のような画像R1,R2が印刷されたシート材8に対してカット加工を行う際の、カッティング装置1の作動について説明する。
【0048】
この場合においても前方から後方へと印刷が施され、印刷完了時には、トンボT1,T2近傍がプラテン30上に位置している。そして、上述と同様に、画像P1に対応したトンボT1の第1基準位置t1から、第2基準位置t2、第3基準位置t3、第4基準位置t4をこの順に検出して、画像P1に対してカット加工を施す。画像P1に対するカット加工が完了した後、画像P2に対応するトンボT1〜T4の位置を検出して、画像P2に対してカット加工を施す。
【0049】
ここで、画像P1に対するカット加工が終了したときのカッティングユニット50の位置が、例えば完了位置aまたは完了位置bの場合には、これらの完了位置に最も近い画像P2対応したトンボT1の第1基準位置t1をまず検出する。続いて、第2基準位置t2、第3基準位置t3、第4基準位置t4をこの順に検出して、画像P2に対してカット加工を施す。一方、例えば完了位置cでカット加工が終了した場合には、完了位置cに最も近い画像P2対応したトンボT4の第4基準位置t4をまず検出する。その後、第3基準位置t3、第2基準位置t2、第1基準位置t1をこの順に検出して、画像P2に対してカット加工を施す。
【0050】
このように、カット加工が終了した完了位置に応じて、隣接した画像に対応する複数のトンボのうち、その完了位置から最も近い位置(前後へのシート材8の送り量が少なくて済む位置)のトンボから順に位置検出を行う。そうすることにより、前後方向へのシート材8の送り量を減らすことができ、シート材8の位置ずれを低減してシート材8とカッタ刃53との位置精度を保つことができる。
【0051】
上述の実施形態において、本発明を、プリンタヘッド62を備えて印刷も施すことが可能なカッティング装置1に適用した場合を例示したが、例えば、プリンタヘッド62を備えずカット加工のみが可能なカッティング装置にも適用可能である。
【0052】
上述の実施形態においては、1つの画像に対してL字状の4つのトンボT1〜T4を印刷する構成を例示して説明したが、この構成に限定されない。例えば、1つの画像に対して3つのトンボを印刷する構成でも良く、また、トンボの形状もL字状に限定されない。
【0053】
上述の実施形態においては、1つの画像に対して4つのトンボT1〜T4を印刷し、このトンボT1〜T4の位置を検出して画像の印刷位置を算出する構成を説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、4つのトンボT1〜T4のうち、検出された任意の第1トンボの位置を原点と設定する構成も可能である。また、検出された第1トンボに対して左右方向に位置して印刷された第2トンボを検出して、左右方向の補正と傾き補正とを行う方法や、検出された第1トンボに対して前後方向に位置して印刷された第2トンボを検出して、前後方向の補正と傾き補正とを行う方法も可能である。さらに、検出された第1トンボに対して対角線上に位置して印刷された第2トンボを検出、または、第1〜第3トンボを検出することにより、左右方向の補正、前後方向の補正および傾き補正を行う方法も可能である。
【符号の説明】
【0054】
A1 画像
N1 画像(他方側画像)
T1〜T4 トンボ(基準マーク)
1 カッティング装置
8 シート材(対象媒体)
9 コントローラ(カット位置設定部)
20 媒体送り機構
30 プラテン(媒体支持手段)
40a ガイドレール
51 カッティングキャリッジ
53 カッタ刃(カッティングヘッド)
54 トンボ検出部(マーク位置検出部)
62 プリンタヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象媒体を支持する媒体支持手段と対向して走査方向に延びて設けられたガイドレールと、
前記ガイドレールに沿って移動自在に設けられて、前記媒体支持手段に支持された対象媒体に向けてインクを吐出して画像および前記画像の周囲に基準マークを印刷するプリンタヘッドと、
前記ガイドレールに沿って移動自在に設けられて、前記媒体支持手段に支持された対象媒体に対してカット加工を施すカッティングヘッドと、
前記走査方向に対して直交する搬送方向に対象媒体を送る媒体送り機構と、
前記ガイドレールに沿って移動自在に設けられて、前記基準マークの位置を検出するマーク位置検出部と、
前記マーク位置検出部において得られた前記基準マークの位置を基に、前記基準マークに対する前記画像の印刷位置を検出するとともに、前記画像の印刷位置に対応させてカット加工位置を設定するカット位置設定部とを有し、
前記媒体送り機構により対象媒体を前記搬送方向における一方側に送りながら前記画像および前記基準マークを印刷し、前記カット位置設定部において設定されたカット加工位置にカット加工を施すカッティング装置において、
カット加工を開始する前に複数の前記画像のうちの前記搬送方向における最も他方側に印刷された他方側画像の周囲に印刷された前記基準マークの位置を検出し、前記他方側画像に対してカット加工を施すことを特徴とするカッティング装置。
【請求項2】
前記プリンタヘッドにより、前記画像の周囲に少なくとも3つの前記基準マークが印刷され、
カット加工を開始する前に、前記マーク位置検出部により、前記他方側画像の周囲に印刷された少なくとも3つの前記基準マークの位置を検出することを特徴とする請求項1に記載のカッティング装置。
【請求項3】
前記画像に対するカット加工を開始する前に、
前記画像の周囲に印刷された前記基準マークのうち前記マーク位置検出部に対して最も近くに位置した第1基準マークの位置を前記マーク位置検出部により検出し、前記マーク位置検出部を前記走査方向に移動させて前記第1基準マークに対して前記走査方向に位置して印刷された第2基準マークの位置を検出し、前記媒体送り機構により前記対象媒体を前記搬送方向に送り前記第2基準マークに対して前記搬送方向に位置して印刷された第3基準マークの位置を検出して、前記画像の印刷位置を検出することを特徴とする請求項1または2に記載のカッティング装置。
【請求項4】
対象媒体を搬送方向における一方側に送りながら画像および前記画像の周囲に基準マークを印刷し、前記基準マークの位置を基に前記基準マークに対する前記画像の印刷位置を検出して、カッティングヘッドによりカット加工を施す位置を設定してカット加工を施すカッティング装置のカット方法であって、
カット加工を開始する前に、複数の前記画像のうちの前記搬送方向における最も他方側に印刷された他方側画像の周囲に印刷された前記基準マークの位置を検出する第1のステップと、
前記他方側画像に対してカット加工を施す第2のステップとを有することを特徴とするカット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−51192(P2011−51192A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201303(P2009−201303)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】