説明

カットバター風固型調味油、及びその製造方法

【課題】本発明は、ラーメン店等でラーメンのトッピングに使用されるスライスされたバター様の形状で、湯戻し食品の湯戻し後に湯熱により融解し、見た目にもおいしさを感じられる湯戻し食品にバターの風味を付与することのできるカットバター風固型調味油の提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明に係るカットバター風固型調味油18は、融点が40℃〜60℃になる油脂類30〜100重量部と呈味原料0〜70重量部とからなる油脂混合物100重量部を、又は前記油脂混合物100重量部に対して乳化剤を1.0重量%以下で添加した油脂混合物を、又は更に適宜その他フレーバー、色素等を添加した油脂混合物を加熱混合し、次に前記油脂混合物を連続的に、所定の厚みに伸展させ、油脂混合物が適度の硬さになるよう冷却し、第1切断器具で板状に切断し、第2切断器具でカットバター形状に切断し、最後に冷却して充分固化することによって実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即席麺など湯戻しする食品に使用されるバター風味の調味料(以下、カットバター風固型調味油という。)、及びその製造方法に関する発明である。ここで、カットバター風調味油とは、ラーメン店等でラーメンのトッピングに使用されるスライスされたバター様の形状で、湯戻し食品にバターの風味を付与することのできる常温で固体状の調味料のことである。
【背景技術】
【0002】
最近、即席麺に本格的なラーメンのおいしさが求められている。ラーメンのおいしさは、麺の食感、具材、スープの風味できまる。スープの風味を向上する調味料として、種々の調味料があるが、油脂類は最も重要な調味料の一つである。ラーメンに油脂類を添加するのは、スープに風味や濃厚さを付与するためである。添加する油脂類は常温では液状のものから半流動体、固体と様々である。
【0003】
固型油脂であるカットバターをラーメンにトッピングすることは一般的に行われている。ラーメンに濃厚さとバター本来の風味を付与するとともに、見た目にもおいしさ、高級感が増すためである。そこで、本格的なラーメンの味を再現するためには、即席麺にカットバターを添付することが考えられる。しかし、即席麺にカットバターを添付することは、バターが流通段階で溶解し、腐敗してしまうことから現実的ではない。即席麺は、流通段階において、特に、夏場などは40℃を超える温度環境下にさらされることがあるためである。
【0004】
そこで、上述のような流通環境でのカットバターの溶解の問題を解決すべく特許文献1記載のカットバター様の固型調味料がある。特許文献1の固型調味料は、多孔質化した吸油性のある加工デンプンと40℃で固体状の油脂類を1:3〜6の配合割合(重量比)で混合して成型固化してなることを特徴とする。
【0005】
その結果、即席麺入り容器に添付された前記固型調味料が、容器入り即席麺とともに流通されたとしても、高温環境下に置かれても溶解しにくく、かつ、熱湯を注いで食するとき融解し、良好の風味を即席麺に付与することができることとなる。
【0006】
流通段階の高温環境下では、固型調味料から溶け出した油脂類を多孔質の加工デンプンが吸収して油脂のにじみ出しを防止し、固型調味油の形状を維持することができるというものである。
【0007】
一方、前記固型調味料は、即席麺の湯戻し時に、固型調味料に使用されている多孔質の加工デンプン等が、湯戻しされる熱湯によって膨潤し多量の湯を吸収する。その結果、加工デンプン等の表面が水分で覆われ、多孔質内に閉じ込められた油脂類が即席麺のスープに放出される。従って、可食時には油脂類の濃厚な風味を即席麺に付与することができるというものである。
【0008】
【特許文献1】特開2002−218938
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記固型調味料は、3分間の湯戻し時間で完全に膨潤、溶解しないこと、さらには即席麺の喫食終了まで完全に膨潤、溶解しないこともある。即席麺を湯戻しする場合、熱湯で湯戻しすることはあるにせよ、通常いわゆるポットなどの保温器に保温されたお湯で湯戻しすることが一般的であるためである。その結果、固型調味料が本来有する風味づけ機能を充分発揮することができない。従って、即席麺に本格的なラーメンの風味を求める現状において、即席麺の風味を満足させることのできるバター様の固型調味料とはいえない。さらには、溶け残ったバター様の固型調味料を塊のまま食することもあり、とても消費者の嗜好を満足させることはできない。
【0010】
また、上記固型調味料は即席麺に湯戻し湯を注ぐ前、又は湯戻し湯を注いだ直後で、3分間の湯戻し前に投入必要がある。前述したように3分間の湯戻し時間で充分に溶解しないことがあるからである。したがって、ラーメン店等でバターをトッピングし、バターが溶ける様子を見ることはできない。
【0011】
さらに、本格的な風味の即席麺の開発に伴い流通環境も改善(空調輸送、空調された販売店による販売)され、流通時の固型調味料の溶解防止機能を固型油脂自体に付与することは期待されなくなっている。また、冬場においては、外気温も低下しており、上記固型調味料は、過度の溶解防止機能が逆に、本来発揮されるスープへの油脂成分に由来した風味、濃厚さの付与機能を阻害してしまう欠点がある。
【0012】
そこで、本発明は、即席麺等に求められる本格的はバター風味や油脂に由来した濃厚感を付与するために、また、バターの溶ける様子を再現し見た目にもおいしさを感じさせるカットバター風固型調味料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
融点が40℃〜60℃になる油脂類30〜100重量部と呈味原料0〜70重量部とからなる油脂混合物100重量部を、又は前記油脂混合物100重量部に対して乳化剤を1.0重量%以下で添加した油脂混合物を、成型固化したことを特徴とするカットバター風固型調味油8、18とした。
【発明の効果】
【0014】
本発明であるカットバター風固型調味料は、常温で固型状態であるから、他の具材との別包装を必要とせず、即席麺等の湯戻しする食品の容器内に直接封入することができる。風味保持のため小袋に入れることも当然可能である。さらに、連続的に成型することによって、生産性を向上させることができた。従って、カットバター風固型調味油を使用する最終製品の製造コストを抑えることができた。また、本発明であるカットバター風固型調味油を即席麺等の湯戻しする食品に添加する場合、湯戻し湯により、完全に溶解する組成であるから、溶け残ることがなく、即席麺の湯戻し後にトッピングしても喫食終了後までに完全に溶けことができるため、より本格的なバター風味を即席麺等に付与することができた。また、カットバター風固型調味油の溶ける様子を見ることも可能であるから、見た目にもおいしさを感じることができた。従って、即席麺等の湯戻し食品に、より本格的な風味を求める消費者の嗜好を満足させることができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
カットバター風固型調味油18は、融点が40℃〜60℃になる油脂類30〜100重量部と呈味原料0〜70重量部とからなる100重量部の油脂混合物と、前記100重量部の混合物に対して乳化剤が1.0重量%以下と、その他フレーバー、色素等を添加した油脂混合物15を加熱混合し、次に前記油脂混合物15を連続的に、所定の厚みに伸展させ、油脂混合物が適度の硬さになるよう冷却し、縦刃13aで板状に切断し、横刃13bでカットバター形状に切断し、最後に冷却固化することによって実現した。
【0016】
以下に、添付図面に基づいて、本発明であるカットバター風固型調味油について、詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明であるカットバター風固型調味油の製造工程の一例(バッチ式)を示した図である。図1に示すように、本発明であるカットバター風固型調味油は、予め油脂類と乳化剤等を完全に加熱溶解して混合物(以下混合油脂という。)を得る工程(以下加熱溶解工程1という。)と、前記混合油脂と糖類、乳製品、調味料等(以下呈味原料という。)と、適宜添加されるフレーバー、色素等を充分に撹拌混合して混合物(以下油脂混合物という。)を得る工程(以下混合工程2という。)と、用途に応じた所定の形状に成型容器等を用いて成型固化させる工程(以下成型工程3という。)と、必要に応じて成型個化したカットバター風固型調味油を包装する工程(以下包装工程7という。)からなる。以下、各工程を詳述する。
【0018】
加熱溶解工程1は、混合油脂と呈味原料とを充分に撹拌混合するため、油脂類と乳化剤等を液状に加熱溶解する工程である。よって、一般に使用されている加熱機能付き撹拌機、例えば2軸ミキサー、縦型ミキサー等のミキサーが使用できる。他の加熱機械で予め油脂類を溶解して、前記ミキサーに移送してもよい。
【0019】
混合工程2は、油脂類と乳化剤等と呈味原料とを均一に混合する工程であり、前記ミキサー等によって行われる。また、カットバター風固型調味油に油脂類の比率が高く、呈味原料の比率が少ない場合、特に、乳糖を使用する場合等には、5段ロール等によって呈味原料を微粉化することが望ましい。前記ミキサーによっても乳糖の結晶を微粉化することができなく、大きい乳糖の結晶が残存してしまうと、油脂混合物を冷却固化させるとき、乳糖の結晶が沈降してしまうからである。
【0020】
前記5段ロール掛けを行う場合には、油脂混合物が一定の粘度範囲にあることが必要である。そのため加熱溶解工程1で溶解した一部の混合油脂と呈味原料とを混合して、油脂混合物の粘度を調整してロール掛けする。その後、残りの溶解した混合油脂にロール掛けした油脂混合物を戻し混合すればよい。
【0021】
乳化剤、フレーバー、香料は、油脂類とともに、予め加熱溶解させてもよいし、油脂混合物に投入してもよい。乳化剤の融点、香料の揮発性等の性質により、投入タイミングを適宜変更することができる。
【0022】
容器成型工程3は、上述の油脂混合物をバッチ式に、用途に応じた所定の大きさの成型容器に流し込む方法、或いは粘度が高い場合はヘラ等により平らに埋め込む等の方法で充填する工程(以下充填工程4いう。)と、カットバター風固型調味油に使用された油脂類が完全に固化するまで油脂混合物を成型容器の中で冷却する工程(以下冷却工程5という。)と、冷却固化した油脂混合物を成型容器から取り出しカットバター風固型調味油8を得る工程(以下型抜き工程6という。)とからなる。
【0023】
包装工程7は、必要に応じて一般に使用されている充填機で個別にパックすることや、直接湯戻し食品に封入する工程である。
【0024】
図2は、本発明であるカットバター風固型調味油8の成型容器4bによる成型方法の一例を示した図である。図2(1)は、約60℃程度に温調された一定粘度以下の油脂混合物4aが、格子状の成型容器4bに流し込まれ、或いはヘラなどで埋め込まれて、冷風5aによって充分に冷却固化する冷却工程5を表している。
【0025】
図2(2)は、前記冷却工程5によって冷却固化した油脂混合物4aを、成型容器4bを裏返して底面を叩くなどして、カットバター風固型調味油8を取り出す型抜き工程6を表している。
【0026】
上記成型容器4bによる成型方法は、呈味原料が多く油脂混合物4aの粘度が高い場合、或いは、小ロット多品種のカットバター風固型調味油8を製造する場合等に特に有効な方法である。
【0027】
なお、カットバター風固型調味油8は用途に応じて、粒状化することもできる。カットバター風固型調味油8の粒状化は、油脂混合物4aをある大きさの成型容器4bの中で冷却固化し、成型容器4bから取り出して、粉砕機などで小さく砕き、篩で所定の大きさの顆粒を選別することで容易に可能である。
【0028】
図3は、本発明であるカットバター風固形調味油の製造工程の一例(連続法)を示した図である。図1で示した容器成型工程3に代えて、レイヤーラインを用いて連続的にカットバター風調味油を成型する方法である。レイヤーラインとは、油脂混合物をシート状に伸展成型し、所定の大きさに切断することでカットバター形状に連続的に成型し、さらに冷却固化させることができるラインのことである。
【0029】
本発明であるカットバター風固型調味油は、加熱溶解工程1と、前記加熱溶解工程1で加熱溶解させた油脂類と乳化剤等と呈味原料とを充分撹拌混合して油脂混合物4aを得る混合工程2と、前記混合工程2で得た油脂混合物4aを、レイヤーラインにおいて連続的に成型してカットバター風固型調味油を得る工程(以下レイヤーライン成型工程9という。)とからなる。なお、必要に応じて、カットバター風固型調味油をフィルムなどに包装する包装工程7をとる。以下、レイヤーライン成型工程9について詳述する。
【0030】
レイヤーライン成型工程9は、60℃程度に保持された油脂混合物4aをレイヤーライン上に流し込む工程(以下流し込み工程10という。)と、前記流し込まれた油脂混合物を板或いは回転ローラー等とコンベアー等によって保持された一定の隙間を通過させて、所定の厚みのシート状の油脂混合物に調整する工程(以下伸展工程11という。)と、前記シート状油脂を後に切断するために、冷却して適度の硬さのシート状油脂を調節する工程(以下第一次冷却工程12という。)と、最終的にカットバター形状に切断する工程(以下切断工程13という。)と、カットバター形状に切断された油脂混合物を完全に冷却固化させてカットバター風固型調味油を得る工程(以下二次冷却工程14という。)からなる。
【0031】
このような連続成型ラインであるレイヤーラインを用いることで、カットバター風固型調味油を生産性よく連続的に製造することができる。また、成型容器4bを使用するバッチ式成型法に比べ、カットバター風固形調味油を用途に応じた多様な形状にカット設定を変更するだけで成型できる点、有効である。なお、レイヤーライン成型工程9以外の工程は先に説明した成型容器4bによるバッチ式カットバター風固型調味油の製造方法と同様である。
【0032】
図4は、レイヤーライン9aによるカットバター風固型調味油18の連続的な成型方法を示す図である。以下、レイヤーライン成型工程9を構成する各工程について詳しく説明する。
【0033】
流し込み工程10は、上述のようにして得られた油脂混合物15(4a)を貯蔵タンク10aで一定温度(使用油脂により異なる)に保温し、ポンプ10bにより配管10cを通じてレイヤーライン9aを構成するベルトコンベアー16のベルト16aの上に流し込み輸送する工程である。このとき、油脂混合物15の粘度が高すぎると、一般に使用されているポンプ10bで油脂混合物15を輸送することができない。さらに、ポンプ10bで輸送できる粘度であったとしても、流し込まれた油脂混合物15aがベルトコンベアー16のベルト16aの所定の幅に広がる程度の粘度でなければならない。以後の工程である伸展油脂15bを所定の幅に伸展することができず、最終的にカットバター風固型調味油18の歩留まりが低下してしまうからである。一方、流し込まれた油脂混合物15aの粘度が低すぎると伸展油脂15bの厚みを一定にすることができない、また流し込まれた油脂混合物15aがベルト16aの進行方向と逆方向に流れ出すため、必要以上にべルトコンベアー16の長さを要し、レイヤーライン9aの設置スペースを過度に必要としてしまい問題となる。
【0034】
従って、流し込み工程10において、油脂混合物15の粘度が適度であることが重要である。この粘度を決定する要因は、配合組成中の粉末呈味原料及び貯蔵タンク10a内での保管温度(使用油脂により異なる)である。また、油脂混合物15に乳化剤を添加することで、油脂混合物の粘度をより適切に調整することができる。
【0035】
伸展工程11は、前記の流し込まれた油脂混合物15aを、カットバター風固型調味油18の用途に応じた一定の厚みにするため、ベルトコンベアー16ーと板11aにより保持された一定の隙間を、ベルトコンベアー16の移動に伴って通過させることで、シート状の油脂混合物(以下伸展油脂15bという。)を連続的に成型する工程である。ここで、油脂混合物が冷却固化しないよう隙間を確保する板は金属性とし、ヒーター等で加熱できるものであることが望ましい。流し込まれた油脂混合物15aが、レイヤーライン9aの起動時に冷えている板11aと、また、運転時に外気より冷やされ板11aと接触すると固化していまい、以後一定の厚みのシート状油脂を成型できなくなることがあるためである。
【0036】
なお、流し込まれた油脂混合物15a及び伸展油脂15bは、まだ流動性のある粘稠な状態である。従って、ベルトコンベアー16の両端には、流し込まれた油脂混合物15a、伸展油脂15bが横漏れしないようにガード16bが取り付けてある。なお、図中の湾曲矢印は、ベルトコンベアー16、17の回転方向を示している。
【0037】
一次冷却工程12は、後の工程である切断工程13で前記伸展油脂15bを切断しやすくするため、伸展油脂15bを冷却し、適度の硬さに温度調整した伸展油脂(以下シート状油脂15cという。)を得る工程である。冷却方法は、クーラーなどの第1空調機12aにより冷風を送風することで容易に行うことができる。また、ベルトコンベアー16、17を一定温度に設定された空調室で覆うことでも伸展油脂15bを冷却することができる。シート状油脂15cの調節温度は、カットバター風固型調味油18に使用する油脂の油脂融点により異なる。なお、下向矢印は、冷風を意味する。
【0038】
ここで、一次冷却工程12を経たシート状油脂15cの温度が所定の温度より高いと、切断されたシート状油脂15cが、切断後に型くずれ、又は再度結合してしまう。一方、シート状油脂15cの冷却温度が低すぎると、油脂類が硬く固化するため、後の切断工程13で切断できないか、また不定形に割れてしまう。このような重さにばらつきのあるカットバター風固型調味油18は商品として販売することはできないから、製品歩留まりが悪くなってしまう。
【0039】
従って、連続的なレイヤーライン成型工程9で、カットバター風固型調味油18を固化成型させるためには、一次冷却工程12での温度調節が最も重要である。
【0040】
切断工程13は、例えば、前記シート状油脂15cをベルトコンベアー16、17の進行方向である縦方向に切断し、板状に成型(以下板状油脂15dという。)するための一次切断工程と、前記板状油脂15dを最終的なカットバター風固型調味油18の形状に切断し、成型する二次切断工程とからなる。
【0041】
一次切断工程は、ラインに備え付けの固定された鋭利な縦刃13a、細いワイヤー、回転する丸刃等を用いる。このような方法であれば、ベルトコンベアー16上を移動してきたシート状油脂15cを連続的に容易に縦方向に切断し、板状油脂15dとすることができる。
【0042】
二次切断工程は、一定のタイミングで上下運動する横刃13b、板状油脂15dの進行方向と垂直方向に左右に移動するスライドカッター等を用いる。このような方法であれば、ベルトコンベアー17上を移動してきた板状油脂15dを連続的に容易に所定の、例えばカットバター形状の油脂混合物(以下カットバター形状油脂15e)に切断することができる。
【0043】
二次冷却工程14は、前記カットバター形状油脂15eに使用されている油脂類が完全に固化するまで冷却して、カットバター風固型調味油18を得る工程である。一次工程と同様な方法で冷却することができる。ここでは、第2空調機14aによる冷却方法を示した。
【0044】
図5は、特殊形状に絞り出し成型したバター風固形調味油を成型する方法を表す図である。
【0045】
ここでは、ホイップクリーム形状にしたバター風味固型調味油21の一例を示す。先ず、上述のカットバター風固型調味油8、18と同様に得た油脂混合物4a、15を用意する。前記油脂混合物4a、15は貯蔵タンク10aなどで所定温度に保温し、充填機19のホッパー19aにポンプ10b等により輸送する。そして、特殊形状をしたノズル19bを有する充填機19によって、ベルトコンベアー22の上にホイップ形状に絞り出し、前記ホイップ形状の成型油脂20を冷風5a等によって冷却固化させてバター風味固型調味油21を得ることができる。なお、右向き矢印はベルトコンベアー22の移動方向を意味する。
【0046】
図6は、本発明であるカットバター風固型調味油の実施例1〜4の組成を示す図である。
【実施例1】
【0047】
実施例1の組成のカットバター風固型調味油18は、以下に示す方法によって得た。先ず、パーム硬化油(融点52℃)20重量部とバター分離油(融点32℃)50重量部を2軸ミキサーに投入し、撹拌混合しながら60℃まで加熱し、完全溶解させて混合油脂とした。なお、前記混合油脂の融点は46℃であった。次に呈味原料である乳糖5重量部と、粉あめ4重量部、ホエー蛋白濃縮精製物(以下WPCという。)20重量部、食塩1重量部を前記混合油脂の一部である10重量部の混合油脂と撹拌混合した。それによって得られたドウ状の混合物をクリアランス20マイクロメーターの5段ロールに掛け、呈味原料の微粉化と均一化を図った。その後5段ロールを掛けして得られた混合物を残りの前記混合油脂に投入し、撹拌混合した。更に、混合油脂と呈味原料との混合物100重量部に対して着色料0.1%、香料0.1%の重量比率になるよう各々添加し、撹拌分散させ油脂混合物15を得た。続いて前記油脂混合物15をレイヤーライン9aによって連続的にカットバター形状に成型して、カットバター風固型調味油18を得た。
【0048】
レイヤーライン成型工程9ついて具体的に説明する。前記5段ロール掛けした油脂混合物15を、加熱撹拌機能を有する貯蔵タンク10a(2軸ミキサー)で60℃に保持した。前記60℃に保持された油脂混合物15は、ポンプ10bによって配管10cを通して、レイヤーライン9aを構成するベルトコンベアー16のベルト16aの上に流し込み(流し込み工程10)、流し込まれた油脂混合物15aはベルトコンベアー16の移動とともに、回転するベルトコンベアー16と板11aとの7mmの隙間を通過させ、厚さ7mmのシート状の伸展油脂15bに成型した(伸展工程11)。
【0049】
次に、前記伸展油脂15bを、第1空調機12aから送風される冷風によって冷却して軟状のシート状油脂15cとした(一次冷却工程12)。続けて適度の硬さに冷却したシート状油脂15cをライン中に設置された鋭利な縦刃13aによってベルコンベアー16、17の移動方向である縦方向に切断し、幅15mmの板状油脂15dとした(一次切断工程)。前記板状油脂15dを直ちに一定間隔で上下運動する鋭利な横刃13bよって15mmの長さに切断した(二次切断工程)。切断工程13を経たカットバター形状油脂15eは、カットバター風固型調味油18の形状である厚さ7mm、幅15mm、長さ15mmに成型された。最終的に前記カットバター形状油脂15eを、第2空調機14aから送風される冷風によって充分に冷却し(二次冷却工程14)、カットバター風固型調味油18に使用した油脂類を完全に固化させて、カットバター風固型調味油18を得た。
【0050】
実施例1の作業性等について説明する。上述の配合でつくられた油脂混合物15は、配管10cを詰まらせることなくポンプ輸送でき、ベルト16aの上でベルト16a幅になめらかに広がった。また、切断工程13での切断によってカットバター風固型調味油18が定型性よく成型できた。実施例1によるカットバター風固型調味油18の形状、色調、風味は、ラーメン店等で使用される本もののバターと酷似したもであった。
【実施例2】
【0051】
実施例2の組成のカットバター風固型調味油18は、以下に示す方法によって得た。先ず、大豆硬化油(融点68℃)40重量部とラード硬化油(融点45℃)10重量部を2軸ミキサーに投入し、撹拌混合しなが70℃まで加熱し、完全溶解させて混合油脂とした。なお、前記混合油脂の融点は、60℃であった。次に呈味原料である乳糖20重量部と、デキストリン9重量部、脱脂粉乳20重量部、化学調味料1重量部を投入し、撹拌混合した。更に、混合油脂と呈味原料100重量部に対して乳化剤0.1重量%(レシチン:ショ糖エステル=1:1)、着色料0.1重量%、香料0.1%の重量比率になるよう各々添加し、撹拌分散させ油脂混合物15を得た。以後の作業は、実施例1と同一条件のレイヤーライン9aによる連続成型によってカットバター風固型調味油18を得た。
【0052】
実施例2の作業性等について、説明する。実施例2は実施例1と比べ油脂類が少なく、また、使用油脂類の融点が高いことが特徴である。実施例2の配合に乳化剤を添加しなくとも、レイヤーラインによって、連続的にカットバター風固型調味油18を成型することができるが、油脂混合物15の粘度が高く、やや作業性が実施例1より劣ることとなる。そこで、乳化剤を添加し、油脂化合物15の粘度を低下させ、作業性の改善を図った。合わせて、一次冷却工程12の冷却によって急激な結晶化を防止することができた。これにより、実施例2の作業性も実施例1と同様に何ら問題となる点はない。加えて、乳化剤を添加したことから、ブルーミングの発生もより効果的に抑制することができた。
【実施例3】
【0053】
実施例3の組成のカットバター風固型調味油8は、以下に示す方法によって得た。先ず、ナタネ硬化油(融点48℃)50重量部とバター分離油50(32℃)重量部を2軸ミキサーに投入し、撹拌混合しながら60℃まで加熱し、完全溶解させて混合油脂とした。なお、前記混合油脂の融点は40℃であった。次に混合油脂100重量部に対して乳化剤1.0%(ポリグリセリン脂肪酸エステル)、着色料0.1%、香料0.1%の重量比率になるよう各々前記混合油脂に添加し、撹拌分散させて油脂混合物4aを得た。更に、前記油脂混合物4aを60℃に保ちながら、所定の成型容器4b(実施例1と同一の形状になる格子状容器)に充填機19を用いて流し込み、空調機の冷風5aを油脂混合物4aに送風して冷却固化させた。油脂混合物4aが充分に冷却固化した後、成型容器4bから取り出して、カットバター風固型調味油8を得た。
【0054】
実施例3の作業性等について説明する。実施例3は、呈味原料を使用していないことに大きな特徴がある。そのため、実施例1、2で使用した5段ロール掛けを必要としない。実施例3の組成は、呈味原料を使用していないことから60℃における混合油脂は液状である。よって、カットバター形状の成型には、容易に成型することのできる成型容器4bを用いたバッチ式を採用した。なお、実施例3の組成であっても、混合油脂に乳化剤を添加すること、流し込み工程10での混合油脂の温度を調整すること等によって、適度な粘度の混合油脂をとすることで、レイヤーライン9aで連続的に成型することは勿論可能である。
【実施例4】
【0055】
実施例4の組成のカットバター風固型調味油18は、以下に示す方法によって得た。先ず、パーム硬化油(融点52℃)30重量部を2軸ミキサーに投入し、撹拌混合しながら60℃まで加熱し、完全溶解させた。次に、呈味原料である粉あめ10重量部、WPC10重量部、脱脂粉乳10重量部、全脂粉乳20重量部、チーズパウダー20重量部を投入し、撹拌混合した。更に、溶解油脂と呈味原料との混合物100重量部に対して乳化剤1.0%(レシチン:ポリグリセリン脂肪酸エステル=1:1)、着色料0.1%、香料0.1%の重量比率になるよう各々添加し、溶解分散させて油脂混合物15を得た。以後の作業は、実施例1と同一条件のレイヤーライン9aによる連続成型によってカットバター風固型調味油18を得た。
【0056】
実施例4の作業性等について説明する。実施例4は実施例中最も油脂類の使用量が少ないことから、油脂混合物15の粘度が高くなった。しかし、乳化剤の添加と、油脂混合物15の温度を適度に調節することで、何ら問題なくレイヤーライン9aによって連続成型することができた。
【0057】
ここで、本発明において使用できる油脂類、糖類、呈味原料、乳化剤としては、実施例1〜4に限定されることはない。
【0058】
本発明において使用できる油脂類は、動物油、植物油、動物油の硬化油、植物油の硬化油、動物油の分油、植物油の分別油のうち一種又は二種以上を選択でき、かつ、総使用油脂の融点が40℃〜60℃の範囲になる油脂が使用できる。
【0059】
本発明において使用できる糖類は、砂糖、乳糖、ブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、デキストリン、水あめ、澱粉、加工澱粉等のうち一種又は二種以上を選択でき、保存性の観点から水分が少ないものが適している。従って、水あめは粉末状の粉あめなどがよい。
【0060】
本発明において使用できる呈味原料は、ホエー蛋白濃縮精製物及びカゼイン又はこれらの加工品、全脂粉乳、脱脂粉乳、粉末チーズ、バターを加工した粉末等の乳製品、糖類、食塩、調味料等のうち一種又は二種以上を選択でき、目的の風味を発揮するよう適宜使用料を変更する。
【0061】
また、本発明おいて使用できる調味料は、化学調味料、コンソメ、スパイス、ピザソース、ゴマ等がある。これらの調味料は、加熱溶解工程1、混合工程2に投入する。特にゴマについては、粒として残したい場合は、5段ロール掛けの後に撹拌混合する必要がある。
【0062】
本発明おいて使用できる乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等の粘度調整、油脂結晶調整、ブルーミング防止機能を有する乳化剤のうち一種又は二種以上を選択でき、好ましくは、HLB7以下の親油性乳化剤がよい。
【0063】
図7は、本発明であるカットバター風固型調味油の比較例1〜4の組成を示す図である。
【0064】
[比較例1]
比較例1の組成のカットバター風固型調味油18は、実施例1の配合組成において、パーム硬化油の融点を40℃とした他は同一組成とし、実施例1と同様に油脂混合物15調整し、同一条件のレイヤーライン9aによって連続的に成型固化して得た。なお、一次冷却工程12での冷却温度は、実施例1より低く設定し、シート状油脂が適度に固化(軟状)する温度とした。また、混合油脂の融点は、34℃であった。
【0065】
[比較例2]
比較例2の組成のカットバター風固型調味油18は、実施例1の配合組成において、大豆硬化油の融点を70℃に、ラード硬化油の融点を45℃とした他は同一の組成とし、実施例1と同様に油脂混合物15調整し、同一条件のレイヤーライン9aによって連続的に成型固化して得たカットバター風固型調味油18である。なお、一次冷却工程12での冷却温度は、実施例1より高く設定し、シート状油脂が適度に固化(軟状)する温度とした。また、混合油脂の融点は、65℃であった。
【0066】
[比較例3]
比較例3の組成のカットバター風固型調味油18は、実施例4の配合組成において、パーム硬化油を20重量部に減少し、チーズパウダーを30重量部に増加した他は同一の組成とし、実施例4と同様に油脂混合物15調整し、同様にレイヤーライン9aによって連続的に成型固化して得たカットバター風固型調味油18である。ただし、油脂類量が20重量部と少ないことから、油脂混合物15の粘度が高くなってしまったため、ポンプ10bによる配管輸送を行うことができなかった。そこで、油脂混合物15をレイヤーライン9aで成型するため、レイヤーライン9aのベルトコンベアー16のベルト16a上に手作業で油脂混合物15を運び、無理に伸展工程11、切断工程13等の成型工程を行いカットバター風固型調味油18を得た。
【0067】
[比較例4]
比較例4の組成のカットバター風固型調味油8は、実施例3の配合組成において、乳化剤(ポリグリセリン脂肪酸エステル)を2.0%に増加して、実施例3と同様に油脂混合物15調整し、成型容器4bを用いてバッチ式に成型固化して得た。
【0068】
図8は、本発明であるカットバター風固型調味油8、18の実施例A及び比較例Bの評価を示す図である。なお、評価項目である流し込み適性、充填・切断適性、融点、溶解適性、風味、流通保管性についての評価は、以下に示す方法によって行った。
【0069】
流し込み適性は、溶解油脂類と乳化剤等と呈味原料等を混合したて得た油脂混合物4a、15を成型容器4bに充填するとき、又はレイヤーライン9aに輸送し流し込むとき、油脂混合物4a、15の粘度が適正か否かで判断した。○は油脂混合物4a、15を充填機19で粘度が高く輸送できないなどの問題がなく絞り出せたこと、或いはポンプ10bによって輸送できたことを意味する。×は粘度が高すぎ充填機19で絞りだすことができないこと、或いはポンプ10bによって輸送できなかったこと意味する。
【0070】
充填・切断適性は、成型容器4bによる成型においては、均一に容器内に充填(広がり)できたかによって判断する。一方、レイヤーライン9aの連続成型においては、切断工程13で、定型性良く切断できたか否かによって判断した。○は油脂混合物4a、15を成型容器4bに均一に流し込むことができたこと、又は、レイヤーライン9aの切断工程13で、ほぼ一定の形状で切断できたことを意味する。×は油脂混合物4aを成型容器4bに均一に流し込むことができなかったこと、又は、切断工程13で切断できないこと、切断後に再結合おきたこと、不定形のカットバター風固型調味油18が多くみられたことを意味する。
【0071】
融点は、使用した混合油脂を上昇融点にて測定した値である。
【0072】
溶解適性は、市販されている即席麺に70℃のお湯を注ぎ、3分間の湯戻し時間を経過後、同一形状で同重量のカットバター風固型調味油8、18を1つ投入し、喫食終了後カットバター風固型調味油8、18の溶け残りの有無で判断した。○はカットバター風固型調味油8、18が完全溶解したことを意味する。×は溶け残りがあったことを意味する。
【0073】
風味は、市販されている味噌風味の即席麺に70℃のお湯を注ぎ、3分間の湯戻し時間を経過後、その後同一形状で同重量のカットバター風固型調味油8、18を1つ投入し、熟練したパネラー5名によってスープのバター風味(香り、濃厚さ)を評価した。風味項目に記載の数字は、バター風味が良く出ていると感じた人数である。良いと感じた人数が4名以上であれば、バター風味が良好と判断した。
【0074】
流通保管性は、30℃の恒温器で2時間放置したときのカットバター風固型調味油8、18の形状変化を観察して判断した。保管条件は本発明のカットバター風固型調味油8、18が最終製品である湯戻し食品に添付された場合の最終商品の商品流通・販売温度環境(冬場・空調のされた販売店温度)を想定している。○は油脂の溶け出しがなく、カットバター風固型調味油8、18の形状変化が少ないことを意味する。×は油脂の溶け出し、形状変化が著しことを意味する。
【0075】
実施例1〜4では、何れの評価項目においても良好な評価が得られた。一方、比較例1〜4では、何れかの評価項目において不満足な評価があった。以下、実施例、比較例毎の特徴について、詳細に説明する。
【0076】
実施例1では、油脂混合物15の粘度が適当で、ポンプ輸送を問題無く行うことができ、ベルト16a上でも流し込まれた油脂混合物15aは適度に広がった。従って、流し込み適性は良好であるといえる。また、一次冷却工程12によって、適度な硬さに固化(軟状)できたことから、割れ、切断屑等が発生することなく板状、カットバター形状に切断することができた。従って、不定形に成型されることによる歩留まりの低下はなく、作業性評価の一つである切断適性は良好であるといえる。
【0077】
実施例1のカットバター風固型調味油18は、使用油脂の融点が46℃であることから、カットバター風固型調味油18の投入後、素早くの溶解、拡散し、即席麺のスープにバター様の風味を付与することができた。従って、従来技術の問題点とされる溶け残りもなく溶解性は良好であるといえる。また、流通保管性についても、使用油脂の融点が46℃であることから、上述の保管試験の設定条件では、カットバター風固形調味油は、油脂の溶け出し、形状が変化することは無かった。従って、流通保管性も良好であるといえる。
【0078】
一方、比較例1では、流通保管性以外の評価項目は、良好であったが、混合油脂の融点が34℃であることから、上述の保管試験の設定条件では、油脂分の溶け出しが著しく、もとのカットバター風固型調味油18の形状を維持することができなかった。従って、流通保管性について満足することはできない。
【0079】
また、比較例2では、製造作業性について良好であったが、混合油脂の融点が65℃であることから、3分間の湯戻し時間を経過後、カットバター風固型調味油18を投入した後、喫食終了時点においてもカットバター風固形調味油は完全に溶解することがなかった。そのため、バター風味をスープに充分付与することができず、また、誤ってカットバター風固型調味油18の塊を食するともあった。従って、溶解性及び、風味について満足することはできなかった。
【0080】
実施例2では、乳化剤が混合油脂と呈味原料100重量部に対して、乳化剤0.1%(レシチン:ショ糖エステル=1:1)が添加されていることから、流し込み工程10の粘度を適切にし、冷却によるシート状油脂15cの急激な固化を抑制して切断に適度なシート状油脂15cの硬さを維持することができた。
【0081】
実施例2のカットバター風固形調味油は、使用油脂の融点が60℃であることから、溶解性も良好で、バター風味も満足できるものであった。また、流通保管性についても、使用油脂の融点が60℃であることから良好であった。
【0082】
実施例3では、乳化剤が混合油脂100重量に対して、1.0%添加してあることから、、成型容器4bへの流れ込みも問題なくでき、また、保管中のブルーミングの発生を効果的に抑制することができた。さらに、即席麺に良好なバター風味を付与することができた。
【0083】
実施例4では、油脂類量が30重量部と実施例中で最も少なく、呈味原料が多いため、溶解油脂と呈味原料とを混合すると粘度が高くなった。しかし、乳化剤の粘度低下作用及び結晶抑制作用により、流し込み工程10、切断工程13の作業性は適性範囲にあった。風味についても、満足することができた。しかし、油脂分が低いことから、やや実施例1〜3に比べ即席麺へのバターの風味付与、特に濃厚さにやや欠けることとなった。
【0084】
一方、比較例3では、油脂類量が20重量部と実施例3よりさらに少ないことから、油脂混合物15の粘度が特に高くなってしまった。乳化剤が混合油脂と呈味原料100重量部に対して、1.0%添加してあるものの充填機19による流し込みを行うことができなかった。そこで、油脂混合物15をレイヤーライン9aで成型するため、レイヤーライン9aのベルトコンベアー16に手作業で油脂混合物15を運び、無理に伸展工程11、切断工程13等の成型工程をおこないカットバター風固型調味油18得て、風味評価を行った。その結果、カットバター風固型調味油18の溶解性が悪かった。これはカットバター風固型調味油18に含まれる粉あめ、呈味原原料が、いわゆるママコを形成するため、比較例3の油脂量では呈味原料を充分に分散させることができないことに起因する。従って、風味項目について、湯戻し湯によって、カットバター風固型調味油18が溶解、分散しないことから、バター風味がスープ全面に広がることができなく、バター様の風味を即席麺に付与することはでず、バター風味を満足することができなかった。
【0085】
比較例4では、乳化剤が混合油脂と呈味原料100重量部に対して、2.0%添加されていることから、作業性は何れも良好であったが、風味の項目についてバター風味を満足させることができなかった。これは乳化剤が過剰に添加されたため、乳化剤独特の風味が感じられためである。
【0086】
図8で示した結果から、融点が40℃〜60℃になる油脂類30〜100重量部と呈味原料0〜70重量部とからなる油脂混合物100重量部を、又は前記油脂混合物100重量部に対して乳化剤を1.0重量%以下で添加した油脂混合物を、成型固化したことを特徴とすることで、カットバター風固型調味油8、18は即席麺にバター風味を付与することができ、一定の流通環境に耐える機能を発揮することができるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明であるカットバター風固型調味油の製造工程(バッチ式)を示した図である。
【図2】本発明であるカットバター風固型調味油の成型方法(バッチ式)の一例を示した図である。
【図3】本発明であるカットバター風固型調味油の製造工程(連続式)を示した図である。
【図4】本発明であるカットバター風固形調味油の成型方法(連続式)の一例であるレイヤーラインによる成型方法を示した図である。
【図5】特殊形状に成型したバター風味形状油を示す図である。
【図6】本発明であるカットバター風固型調味油の実施例1〜4の組成を示す図である。
【図7】本発明であるカットバター風固型調味油の比較例1〜4の組成を示す図である。
【図8】本発明であるカットバター風固型調味油の評価を示した図である。
【符号の説明】
【0088】
1 加熱溶解工程
2 混合工程
3 容器成型工程
4 充填工程
4a 油脂混合物
4b 成型容器
5 冷却工程
5a 冷風
6 型抜き工程
7 包装工程
8 カットバター風固型調味油
9 レイヤーライン成型工程
9a レイヤーライン
10 流し込み工程
10a 貯蔵タンク
10b ポンプ
10c 配管
11 伸展工程
11a 板
12 一次冷却工程
12a 第1空調機
13 切断工程
13a 縦刃
13b 横刃
14 二次冷却工程
14a 第2空調機
15 油脂混合物
15a 流し込まれた油脂混合物
15b 伸展油脂
15c シート状油脂
15d 板状油脂
15e カットバター形状油脂
16 ベルトコンベアー
16a ベルト
16b ガード
17 ベルトコンベアー
18 カットバター風固型調味油
19 充填機
19a ホッパー
19b ノズル
20 成型油脂
21 バター風味固型調味油
22 ベルトコンベアー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が40℃〜60℃になる油脂類30〜100重量部と呈味原料0〜70重量部とからなる油脂混合物100重量部を、又は前記油脂混合物100重量部に対して乳化剤を1.0重量%以下で添加した油脂混合物を、成型固化したことを特徴とするカットバター風固型調味油。
【請求項2】
融点が40℃〜60℃になる油脂類30〜100重量部と呈味原料0〜70重量部とからなる油脂混合物100重量部と、又は前記油脂混合物100重量部に対して乳化剤を1.0重量%以下で添加した油脂混合物と、又は更に適宜その他フレーバー、色素等を添加した油脂混合物を加熱混合し、次に前記油脂混合物を所定の大きさの成型容器に流し込み、冷却固化した後、前記成型容器から取り出してなることを特徴とするカットバター風固型調味油の製造方法。
【請求項3】
融点が40℃〜60℃になる油脂類30〜100重量部と呈味原料0〜70重量部とからなる油脂混合物100重量部と、又は前記油脂混合物100重量部に対して乳化剤を1.0重量%以下で添加した油脂混合物と、又は更に適宜その他フレーバー、色素等を添加した油脂混合物を加熱混合し、次に前記油脂混合物を連続的に、所定の厚みに伸展させ、油脂混合物が適度の硬さになるよう冷却し、第1切断器具で板状に切断し、第2切断器具でカットバター形状に切断し、最後に冷却固化してなること特徴とするカットバター風固型調味油の製造方法。
【請求項4】
油脂類としては、動物油、植物油、動物油の硬化油、植物油の硬化油、動物油の分別油、植物油の分別油のうち一種又は二種以上を使用していることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のカットバター風固型調味油。
【請求項5】
呈味原料としては、ホエー蛋白濃縮精製物及びカゼイン又はこれらの加工品、全脂粉乳、脱脂粉乳、粉末チーズ、バターを加工した粉末等の乳製品、糖類、食塩、調味料等のうち一種又は二種以上を使用していることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のカットバター風固型調味油。
【請求項6】
糖類としては、砂糖、乳糖、ブドウ糖、麦芽糖、オリゴ糖、デキストリン、水あめ、澱粉、加工澱粉等のうち一種又は二種以上を使用していることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のカットバター風固型調味油。
【請求項7】
乳化剤としは、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン等のうちうち一種又は二種以上を使用していることを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3に記載のカットバター風固型調味油。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−288314(P2006−288314A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115647(P2005−115647)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(391005569)東京フード株式会社 (6)
【Fターム(参考)】