説明

カップリング

【課題】ミスアライメント対策を必要とするカップリングを提供すること。
【解決手段】第1ハブ10及び第2ハブ20と、第1ハブ10と第2ハブ20とを相互に連結する連結部材50とを備えるカップリングにおいて、連結部材50は、複数の柱状部59〜62と、各柱状部59〜62を相互に接続する梁部51,52,57,58とを有し、各梁部51,52,57,58のうち相互に隣接する梁部51,58は、一方が各柱状部53,54を第1ハブ10側の端部で接続し、他方が各柱状部54,55を第2ハブ20側の端部で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カップリングに関し、特に、自動車、航空機、船舶や産業機械などの動力伝達部に用いられるオルダム型カップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本発明者による、ハブの凸部の側面を精度よく加工する技術が開示されている。この技術は、平板のスライダーに形成されている直線状の凹部に結合される直線状の凸部が形成されているオルダムカップリング用ハブにおいて、オルダムカップリング用ハブを焼結合金によって成形し、凸部の両側面を両側から挟み込むようにプレスすることによって加工してある。そして、スライダーは、スーパーエンプラ、プラスチックなどの樹脂を材料としていて、ガラス、カーボンなどの強化剤が含有されているため、強度が担保されると記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−29400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る技術は、ミスアライメント対策を必要としないシャフト間の接続においては、非常に好適に適用することができるものであるが、ミスアライメント対策を必要とする場合には、スライダーが所要の強度を有するため不向きである。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決したカップリングを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のカップリングは、
複数のハブ(例えば、図1の第1ハブ10及び第2ハブ20)と、当該各ハブを相互に連結する連結部材(例えば、図1の連結部材50)と、を備えるカップリングにおいて、
前記連結部材は、硬度80乃至90であり、
複数の柱状部(例えば、図1の柱状部59〜62)と、
前記各柱状部を相互に接続する梁部(例えば、図1の梁部51,52,57,58)とを有し、
前記各梁部のうち相互に隣接する梁部は、一方が前記各柱状部を第1端部(例えば、図1の第1ハブ10側の端部)で接続し、他方が前記各柱状部を第2端部(例えば、図1の第2ハブ20側の端部)で接続する。
【0007】
各柱状部には、空洞部(例えば、図1の空洞部53〜56)を形成してもよく、当該空洞部には軸部材を挿入してもよい。さらに、連結部材は、当該シャフトが貫通可能な開口を有する略輪状としてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係るオルダム型カップリングの分解斜視図である。図1には、以下説明する、第1ハブ10と、第2ハブ20と、連結部材50と、シャフト30,40とを示している。
【0010】
第1ハブ10と第2ハブ20とは、同一形状で構成されていて、本体部分が略円柱状である。第1ハブ10と第2ハブ20とは、連結部材50を通じて相互に連結される。第1ハブ10及び第2ハブ20は、プラスチック製、金属製などとすればよい。第1ハブ10及び第2ハブ20は、ダイカスト成型を含む金型鋳造法などで製造すればよい。
【0011】
第2ハブ20は、シャフト40を受けるための開口部25が形成されている。開口部25は、シャフト30,40が同一軸状に位置していても、これらをカップリングに取り付けやすくするために貫通孔としている。開口部25には、一体的にスリット23が形成されている。
【0012】
また、第2ハブ20には、開口部25で受けたシャフト40を、固定するための螺子を受ける螺子穴26が側面に形成されている。さらに、第2ハブ20には、連結部材50との連結のための一対の爪部21,22が形成されている。爪部21,22の側面は、略円弧状の一部を形成している。爪部21,22間には、第2ハブ20の製造コストを低廉化するための一対の窪部24が形成されている。
【0013】
第1ハブ10と第2ハブ20とは、同一形状で構成されているので、第1ハブ10は、第2ハブ20と同じく、シャフト30を受けるためのスリット13付きの開口部15、さらには、螺子穴16、爪部11を含む一対の爪部(図1では爪部11のみ示す)、窪部24に対応する窪部(図示せず)が形成されている。
【0014】
図2は、図1に示す連結部材50の詳細図である。図2(a)には平面図を、図2(b)には図2(a)の左方向から見た側面図を、図2(c)には図2(a)の下方向から見た側面図を、それぞれ示している。
【0015】
図1,図2に示すように、連結部材50は、スペーサ或いはスライダーとも称されるものである。連結部材50は、対象性のある形状が一般的であり、本実施形態のものは、第1,第2ハブ10,20に形成されている開口部15,25に対応した位置に、シャフト30,40が貫通可能な開口を有する略輪状としている。
【0016】
また、連結部材50は、選択的に空洞部53〜56が形成されている、柱状部59〜62を備える。すなわち、連結部材50には、空洞部53〜56が形成されていてもよいし、空洞部53〜56が形成されていなくてもよい。空洞部53〜56の大きさは、不問であるが、柱状部59〜62の直径の1/3から1/2程度とすればよい。
【0017】
柱状部59,60は、梁部51によって相互に接続されている。柱状部60,61は、梁部58によって相互に接続されている。柱状部61,62は、梁部52によって相互に接続されている。柱状部62,59は、梁部57によって相互に接続されている。
【0018】
ここで、相互に隣接する梁部51,58に関し、梁部51が柱状部59,60を第1ハブ10側の端部(第1端部)で相互に接続し、かつ、梁部58が柱状部60,61を第2ハブ20側の端部(第2端部)で相互に接続している。同様に、他の相互に隣接する梁部についても、一方の梁部が各柱状部を第1端部で接続し、他方の梁部が各柱状部を第2端部で相互に接続している。
【0019】
したがって、図1に示す各部材を組み立てて、本実施形態のカップリングを製造した場合には、例えば、第2ハブ20の爪部21,22の各端面が、それぞれ梁部52,51に対向し、かつ、第2ハブ20の溝部24の各端面が、それぞれ梁部57,58に対向することになる。
【0020】
連結部材50は、エチレン・プロピレンゴム,ニトリルゴムなどの耐油性に優れたゴム製、或いは、シリコン樹脂などの耐油性に優れた樹脂製とすることができる。連結部材50は、一例としては、硬度80乃至90から選択すれば(例えば、硬度85)、使用時に柱状部59〜62がその硬度に起因して変形可能であることから、シャフト30,40間のミスアライメントを補償することが可能となる。
【0021】
ここで、連結部材50の硬度を上記範囲外とした場合には、実験により、以下のような不都合が生じることがわかった。すなわち、硬度80未満のものを採用した場合には、連結部材50が使用により破損してしまうという問題があった。一方、硬度100より上のものを採用した場合には、ゴム製、樹脂製のものを採用することによる所望のねじればね特性が得られず、ミスアライメント対策を必要とするカップリングを実現できないという問題があった。
【0022】
また、本実施形態の連結部材50は、空洞部53〜56が形成されているため、ゴム製、樹脂製、或いは、金属製等の軸部材を挿入することで、連結部材50の実質的な硬度を向上させることができるというメリットがある。
【0023】
シャフト30,40は、ステンレス、セラミックなどから成り、その寸法は開口部15,25の直径程度となる。
【0024】
なお、本実施形態では、図1に示すように、第2ハブ20には一対の爪部21,22が形成された場合を例示しているが、爪部の数は3つ、或いは4つとしてもよい。係る場合であっても、連結部材50は、他の相互に隣接する梁部に関し、一方が第1端部、他方が第2端部で各柱状部を相互に接続するように構成すればよい。
【0025】
図3は、図1に示すオルダム型カップリングのねじればね特性の測定結果を示す図である。図3の横軸には許容曲角[deg]を示し、図3の縦軸にはねじりばね定数 [N・m /rad]を示している。
【0026】
図3に示すように、許容曲角が増大するにつれて、0[deg]〜7[deg]程度までは、緩やかに線形的にねじりばね定数が0[N・m /rad]〜4[N・m /rad]程度まで増加している。また、許容曲角が増大するにつれて、7[deg]〜12[deg]程度までは、急に線形的にねじりばね定数 [N・m /rad]が4[N・m /rad]〜18[N・m /rad]程度まで増加している。そして、その後、許容曲角が増大すると、ねじりばね定数は減少に転じる。
【0027】
図3によれば、このオルダム型カップリングは、許容曲角が7[deg]あたりを基準にして、2段階でねじりばね定数が変化していることがわかる。これは、許容曲角が当初増大しているときは、空洞部53〜56が変形することで、例えば、第1ハブ10から第2ハブ20に対するトルク伝達がされにくく、ねじりばね定数の増加が限定的となるためであるといえる。
【0028】
このオルダム型カップリングは、常用トルクとしては約3[N・m]程度と考えられ、図4に示すように、このオルダム型カップリングは、当該常用トルクに対して十分なトルクマージンを有しているといえる。
【0029】
図4は、空洞部53〜56が形成されていないオルダム型カップリングのねじればね特性の測定結果を示す図である。まず、図3,図4を対比すると、図4に示す測定結果は、図3に示す測定結果に比して、許容曲角が0[deg]〜13[deg]まで変化するにつれて、線形的に変化していることがわかる。
【0030】
具体的には、許容曲角が13[deg]程度の場合には、ねじりばね定数は 約25[N・m/rad]となる。このような測定結果となる理由は、このオルダム型カップリングには、空洞部53〜56が形成されていないので、第1ハブ10から第2ハブ20に対するトルク伝達がされやすいことによる。
【0031】
このオルダム型カップリングは、常用トルクとしては約5.5[N・m]程度と考えられ、図4に示すように、このオルダム型カップリングは、当該常用トルクに対して十分なトルクマージンを有しているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るオルダム型カップリングの分解斜視図である。
【図2】図1に示す連結部材50の詳細図である。
【図3】図1に示すオルダム型カップリングのねじればね特性の測定結果を示す図である。
【図4】空洞部53〜56が形成されていないオルダム型カップリングのねじればね特性の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 第1ハブ
20 第2ハブ
30,40 シャフト
50 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のハブと、当該各ハブを相互に連結する連結部材と、を備えるカップリングにおいて、
前記連結部材は、硬度80乃至90であり、
複数の柱状部と、
前記各柱状部を相互に接続する梁部とを有し、
前記各梁部のうち相互に隣接する梁部は、一方が前記各柱状部を第1端部で接続し、他方が前記各柱状部を第2端部で接続するカップリング。
【請求項2】
前記各柱状部は、空洞部が形成されている、請求項1記載のカップリング。
【請求項3】
前記各柱状部に形成されている空洞部には軸部材が挿入される、請求項1記載のカップリング。
【請求項4】
前記連結部材は、前記各ハブに形成されているシャフト受部に対応した位置に、当該シャフトが貫通可能な開口を有する略輪状である、請求項1記載のカップリング。
【請求項5】
請求項1記載のカップリング用の連結部材であって、
複数の柱状部と、
前記各柱状部を相互に接続する梁部とを有し、
前記各梁部のうち相互に隣接する梁部は、一方が前記各柱状部を第1端部で接続し、他方が前記各柱状部を第2端部で接続する連結部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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