説明

カテナリーサポートトロリロープ掛け方法

【課題】アウターロープの交換作業をブーム後端部及びガーダ先端部の固定踊り場で安全に行えるようにする一方、カテナリートロリの横行時にカテナリートロリのスキュー(Skew)を防止する。
【解決手段】主トロリ2の中央に装着したインナーロープ8の一端を陸側のカテナリートロリ3上のシーブ13を経てガーダ5に繋着すると共に、他の一方のインナーロープ8を海側のカテナリートロリ4上のシーブ19を経てガーダ5に繋着し、更に、インナーロープ8の両側にそれぞれアウターロープ7,17を配置すると共に、各アウターロープ7,17の一端をブーム海側端のエンドシーブ12と海側のカテナリートロリ4上のシーブ22に巻回してブーム6の海側端に繋着23し、各アウターロープ7,17の他端をガーダ5の陸側端のエンドシーブ11と陸側のカテナリートロリ3上のシーブ24に巻回してガーダ5の陸側端に繋着25する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテナリーサポートトロリロープ掛け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、図2のロープ掛け図に示すシーブ配置となっている。橋形クレーン1aでは、大型になると、巻き上げロープ(図示せず)のたわみに起因する吊り具の振れを抑制するため、巻き上げロープたわみ(カテナリー)を支える台車を巻き上げロープの中間位置に配置している。
【0003】
この台車は、主トロリに対してカテナリーサポートトロリ(以下、カテナリートロリと称する。)と呼ばれている。カテナリートロリ3a,4aの駆動は、通常、主トロリ2aの駆動によりロープに牽引され、ガーダ及びブームのレール上(5a及び6a)を横行する。そのため、添付図のようにアウターロープ7aとインナーロープ8aとを巻回することで、主トロリ2aの横行にしたがってカテナリートロリ3a,4aも横行するようになっている。また、このローピングにより、カテナリートロリ3a,4aの横行距離は、常に、主トロリ2aの横行距離の半分になっている。
【0004】
ところが、このローピングでは、アウターロープ7aの端部9aがカテナリートロリ3a,4a上にある。そのため、アウターロープ7aを交換する時は、カテナリトロリ3a,4a上でアウターロープ7aの交換作業が必要になり、作業性が悪い。
【0005】
他方、図3に示すように、主桁又は俯仰桁に沿って移動可能な横行トロリ4’より、吊り具9’を支持する巻上ロープ10’を吊下げ、横行用ドラム7’と主巻ドラム8’とを主桁上に設けた橋形クレーンにおいて、横行トロリ4’の1/2の速度で移動するカテナリートロリ5’,6’を主桁又は俯仰桁上の巻上ロープ用エンドシーブ11’,14’と横行トロリ4’の中間に設け、カテナリートロリ5’,6’上のたるみ受けローラ29’によって巻上ロープ10’の自重によるたるみを防止することが提案されている(特許文献1参照。)。
【0006】
しかし、この場合は、2台のカテナリートロリ5’,6’を繋ぐ連結ロープ28’の端部がカテナリートロリ5’,6’上に固定されているため、カテナリートロリ5’,6’上で連結ロープ28’の交換作業が必要になり、作業性が悪い。
【0007】
また、カテナリートロリ用横行ロープ21’は、横行用ドラム7’の中央部に巻回され、その一端が陸側エンドシーブ22’を通って補助トロリ5’上のシーブ23’で折り返し、主桁の陸側端に繋着24’され、かつ、他端が横行用ドラム7’から海側エンドシーブ25’、カテナリートロリ6’上のシーブ26’を通り、主桁の海側端に繋着27’されているため、カテナリートロリ5’,6’の横行時にスキュー(Skew)が発生し、車輪鍔の磨耗が生じ易い。
【0008】
他方、図4に示すように、横行用ドラム7’を横行トロリ専用とし、横行用ドラム7’にスプロケット31’,32’とチエン33’及びクラッチ34’を介して接続された横行用ドラム7’の1/2のロープ繰り出し量に作ったカテナリートロリ横行用の小ドラム35’を設け、この小ドラム35’にカテナリートロリ用横行ロープ21’を巻回し、カテナリートロリ用横行ロープ21’は、陸側、海側のエンドシーブ36’,37’を通ってカテナリートロリ5’,6’上の繋着具38’に繋着し、更に、2つのカテナリートロリ5’,6’の繋着具38’,38’間に張り渡している。
【0009】
したがって、この例の場合も、カテナリートロリ5’,6’上でカテナリートロリ用横行ロープ21’の交換作業が必要になり、作業性が悪い。また、カテナリートロリ5’,6’を1本の横行ロープ21’で牽引しているため、カテナリートロリ5’,6’の横行時にスキュー(Skew)が発生し、車輪鍔の磨耗が生じ易い。また、ブームを起伏した状態で、カテナリートロリの自重はロープ1本のみで吊り下げられるため、ロープが破断した場合、カテナリートロリが落下する問題も生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実願昭62−27449号(実開昭63−136689号)のマイクロフィルム
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、アウターロープの交換作業をガーダの陸側端やブームの海側端に設けた固定踊り場で安全に行えるようにする一方、カテナリートロリの横行時にカテナリートロリのスキュー(Skew)を防止し、更に、ブーム起伏時でも、カテナリートロリが安全に保持されているようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るカテナリーサポートトロリロープ掛け方法は、ガーダの陸側端に設けたエンドシーブと主トロリの中間に陸側のカテナリートロリを設けると共に、ブームの海側端に設けたエンドシーブと前記主トロリの中間に海側のカテナリートロリを設け、前記各カテナリートロリ上で巻き上げロープの自重によるたるみを防止する方法において、前記主トロリの中央に装着したインナーロープの一端を陸側のカテナリートロリ上のシーブを経て前記ガーダに繋着すると共に、他の一方のインナーロープを海側のカテナリートロリ上のシーブを経て前記ガーダに繋着し、更に、前記インナーロープの両側にそれぞれアウターロープを配置すると共に、各アウターロープの一端をブーム海側端のエンドシーブと海側のカテナリートロリ上のシーブに巻回してブームの海側端に繋着し、各アウターロープの他端をガーダの陸側端のエンドシーブと陸側のカテナリートロリ上のシーブに巻回してガーダの陸側端に繋着することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インナーロープの両側に配置した各アウターロープの一端をブーム海側端のエンドシーブと海側のカテナリートロリ上のシーブに巻回してブームの海側端に繋着し、各アウターロープの他端をガーダの陸側端のエンドシーブと陸側のカテナリートロリ上のシーブに巻回してガーダの陸側端に繋着したので、アウターロープの交換作業をガーダの陸側端やブームの海側端に設けた固定踊り場で安全に行うことができる。
【0014】
また、インナーロープの両側にそれぞれアウターロープを配置したので、カテナリートロリの横行時にカテナリートロリのスキュー(Skew)を防止することができる。
【0015】
更に、ブーム起伏状態で、カテナリートロリの自重をロープ2本で安全に保持することができる。(アウターロープをインナーロープと同じ中央1本に配置したロープ掛けも可能である。しかし、中央1本の配置は、安全性が劣り、スキューが生じることが課題である。)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るカテナリーサポートトロリロープ掛け方法を示す概略構成図である。
【図2】従来のロープ掛け方法を示す概略構成図である。
【図3】従来のロープ掛け方法を示す概略構成図である。
【図4】従来のロープ掛け方法を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本発明の橋形クレーン1は、ガーダ5の後端部に設けた陸側のエンドシーブ11と自走式の主トロリ2の中間に陸側のカテナリートロリ3を設けると共に、ブーム6の先端部に設けた海側のエンドシーブ12と前記主トロリ2の中間に海側のカテナリートロリ4を設け、前記各カテナリートロリ3,4上で巻き上げロープ(図示せず)の自重によるたるみを防止するようになっている。符号10はブーム6の起伏点を示している。
【0018】
主トロリ2中央の所定箇所9に装着されたインナーロープ8は、その一端が陸側のカテナリートロリ3に設けたシーブ13と、ガーダ5に設けたロープガイド14を経てガーダ5に繋着15され、他の一端が海側のカテナリートロリ4に設けたシーブ19と、ガーダ5に設けたロープガイド20を経てガーダ5に繋着21されている。
【0019】
前記インナーロープ8の両側に配置した2本のアウターロープ7,17は、その一端をブーム6の海側端のエンドシーブ12と海側のカテナリートロリ4上のシーブ22に巻回してブーム6の海側端に繋着23する。また、各アウターロープ7,17の他の一端をガーダ5の陸側端のエンドシーブ11と陸側のカテナリートロリ3上のシーブ24に巻回してガーダ5の陸側端に繋着25する。
【0020】
上記ガーダ5の陸側端に設けたエンドシーブ11は、油圧シリンダ26によってガーダ5の陸側端とブーム6の海側端の方向に位置調整でき、常に、ロープへ一定の張力を与えることができる。
【0021】
今、自走式の主トロリ2がガーダ5の陸側端の方向に移動すると、海側のインナーロープ8に引かれて海側のカテナリートロリ4がガーダ5の陸側端の方向に移動する。カテナリートロリ4のこの動きに伴って海側のカテナリートロリ4上のシーブ22とブーム6の海側端に設けたエンドシーブ12の間隔が広がる。
【0022】
他方、自走式の主トロリ2がブーム6の海側端の方向に移動すると、陸側のインナーロープ8に引かれて陸側のカテナリートロリ3がブーム6の海側端の方向に移動する。カテナリートロリ3のこの動きに伴って陸側のカテナリートロリ3上のシーブ24とガーダ5の陸側端に設けたエンドシーブ11の間隔が広がる。
【0023】
アウターロープ7,17の交換作業は、ガーダ5の陸側端に設けた固定踊り場28やブーム6の海側端に設けた固定踊り場29で行う。
【符号の説明】
【0024】
2 主トロリ
3 陸側のカテナリートロリ
4 海側のカテナリートロリ
5 ガーダ
6 ブーム
7,17 アウターロープ
8 インナーロープ
11,12 エンドシーブ
22,24 シーブ
23,25 繋着

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガーダの陸側端に設けたエンドシーブと主トロリの中間に陸側のカテナリートロリを設けると共に、ブームの海側端に設けたエンドシーブと前記主トロリの中間に海側のカテナリートロリを設け、前記各カテナリートロリ上で巻き上げロープの自重によるたるみを防止する方法において、前記主トロリの中央に装着したインナーロープの一端を陸側のカテナリートロリ上のシーブを経て前記ガーダに繋着すると共に、他の一方のインナーロープを海側のカテナリートロリ上のシーブを経て前記ガーダに繋着し、更に、前記インナーロープの両側にそれぞれアウターロープを配置すると共に、各アウターロープの一端をブーム海側端のエンドシーブと海側のカテナリートロリ上のシーブに巻回してブームの海側端に繋着し、各アウターロープの他端をガーダの陸側端のエンドシーブと陸側のカテナリートロリ上のシーブに巻回してガーダの陸側端に繋着することを特徴とするカテナリーサポートトロリロープ掛け方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−201450(P2012−201450A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66380(P2011−66380)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】