説明

カテーテルの製造方法

【課題】環状部材の位置ずれや歪みを抑制することができるカテーテルの製造方法を提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル10において、ディスタールシャフト13に内挿させて設けられたインナーシャフト14は、ディスタールシャフト13よりも先端側に延長されている。インナーシャフト14は、段差部37から先端側に向けて設けられた小径領域25と、段差部37から基端側に向けて設けられた大径領域26とを有しており、これら各領域25,26はチューブ成形工程により形成されたシャフト本体が軸線方向に引っ張られて延伸されることにより形成されている。インナーシャフト14において延伸された小径領域25の外周面には、造影環47が組み付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは体内の腔、管、血管等に挿入する中空状の医療器具であり、例えば血栓の吸引、閉塞状態又は狭窄状態にある血管の通路確保、血管造影剤の注入などに際して用いられる。カテーテルは、樹脂材料からなるチューブを備えて構成されており、かかるチューブは例えば押し出し成形により形成される。
【0003】
カテーテルのチューブには、例えば特許文献1において示されているように、その先端部などに造影標識として造影リングが設けられるのが一般的である。かかる造影リングは、チューブの外周面に対して組み付けられる。このように造影リングが設けられていることにより、体内に挿入されたカテーテルの位置を体外から良好に確認できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−200317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、押し出し成形により形成されたチューブでは、外径寸法にばらつきが生じたり、その外表面に凹凸が発生したりする場合がある。この場合、チューブの寸法ばらつきや凹凸に起因して、造影リングの位置ずれや歪みといった不都合が発生するおそれがあり好ましくない。
【0006】
なお、かかる問題は、チューブの外周面に造影リング以外の環状部材が組み付けられる場合にも同様に生じうる。例えば、チューブの外周面における先端側にステントを配置した状態で、当該ステントを体内の治療対象部位に搬送する搬送用のカテーテルでは、ステントの位置ずれを規制するための環状ストッパをチューブの外周面に組み付けることがあるが、かかる場合にも上記同様の問題が生じうると考えられる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、環状部材の位置ずれや歪みを抑制することができるカテーテルの製造方法を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、第1の発明のカテーテルの製造方法は、合成樹脂材料によりチューブを形成するチューブ形成工程と、前記チューブの外径を予め定める外径に均す均し工程と、前記チューブにおいて予め定める外径に均された均し領域の外周面に環状部材を組み付ける組付工程と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、チューブ形成工程により形成されたチューブにおいて、その外径寸法にばらつきが生じたり、その外表面に凹凸が発生したりしても、その後チューブの外径を予め定めた外径に均すことで、外径寸法のばらつきを低減させたり外表面に生じた凹凸を小さくしたりすることができる。そして、このチューブの外径が均された均し領域の外周面に環状部材が組み付けられるため、環状部材の位置ずれや歪みを抑制することができる。
【0010】
第2の発明のカテーテルの製造方法は、第1の発明において、前記均し工程は、前記チューブを軸線方向に引っ張って延伸させることにより、前記チューブの外径を予め定める外径に均す延伸工程であることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、チューブを軸線方向に延伸させることにより、チューブの外径を予め定めた外径に均すことができ、しかも延伸により均された領域では樹脂の分子配向が軸線方向に揃うためチューブの引っ張りや曲げの強度を高めることもできる。よって、この場合、上記第1の発明の効果を得ることができるとともに、環状部材の組み付けに伴ってチューブがつぶれるのを抑制することができる。
【0012】
第3の発明のカテーテルの製造方法は、第2の発明において、前記延伸工程では、前記チューブの外径よりも小さい内径を有する小孔部に、前記チューブを当該小孔部を基準として一方の側から通し他方の側に引っ張ることで、該チューブを軸線方向に延伸させることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、チューブを小孔部に、当該小孔部を基準として一方の側から通し他方の側に引っ張ることで、チューブを軸線方向に延伸させることができるとともに、チューブの外径を予め定めた外径寸法に均すことができる。この場合、上記第2の発明の作用効果を奏する上で、実用上好ましい構成といえる。
【0014】
第4の発明のカテーテルの製造方法は、第2又は第3の発明において、前記延伸工程の前に、前記チューブの内腔に芯材を挿入する挿入工程を備え、前記延伸工程では、前記チューブの内腔に前記芯材を挿入した状態で、前記チューブを軸線方向に引っ張って延伸させることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、チューブの内腔に挿入された芯材によりチューブの内側への変形を規制しながら、チューブを軸線方向に延伸させることができるため、チューブの延伸によりチューブ外径を予め定めた外径寸法に均す場合において好適な構成といえる。また、第3の発明と第4の発明とを併せ持つ構成とすれば、より一層好適にチューブ外径を予め定めた外径寸法に均すことができる。
【0016】
また、第4の発明において、延伸工程が行われた後、組付工程の前に、チューブの内腔に芯材を挿入したまま該チューブの内部応力を緩和させる応力緩和工程を備える構成としてもよい。そうすれば、チューブの内腔に芯材を挿入したままチューブの内部応力が緩和されるため、かかる挿入状態のままチューブの形状付けが行われる。これにより、芯材をチューブから引き抜いた際にチューブが内側へ変形するのが抑制されるため、芯材を用いてチューブ外径を均す上で好適な構成といえる。
【0017】
第5の発明のカテーテルの製造方法は、第2乃至第4のいずれかの発明において、前記延伸工程は、前記チューブにおける軸線方向の一部の領域を前記軸線方向に延伸させることにより、当該一部の領域をそれと隣接する領域よりも前記チューブの外径が小さくなるように縮径させる縮径延伸工程であり、前記組付工程では、前記チューブにおいて前記縮径された領域に前記環状部材を組み付けることを特徴とする。
【0018】
チューブの外周面に環状部材を組み付ける構成では、環状部材の組み付け部位において剛性が局所的に高まるおそれがある。そこで、かかる局所的な剛性の高まりを抑制すべく、チューブの軸線方向における一部の領域を縮径させ、その縮径させた領域に環状部材を組み付けることが考えられる。その一方で、チューブを縮径させると、その縮径させた領域ではチューブの強度が低下するため、環状部材の組み付けに伴うチューブのつぶれがより懸念される。そこで、本発明では、この点に鑑み、かかる縮径領域を、チューブを軸線方向に延伸させることにより形成している。この場合、チューブの縮径領域においてある程度の強度を確保できるため、チューブの縮径領域に環状部材を組み付ける場合において好適な構成であるといえる。
【0019】
第6の発明のカテーテルの製造方法は、第5の発明において、前記縮径延伸工程の前に、前記チューブの軸線方向において当該縮径延伸工程により縮径される領域を少なくとも含む所定の領域について軸線方向に延伸させる縮径前延伸工程をさらに備えることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、チューブの縮径領域について複数回軸線方向への延伸が行われるため、当該縮径領域において樹脂の分子配向をより一層軸線方向に揃えることができる。この場合、チューブの縮径領域においてチューブの強度がより一層高められるため、当該縮径領域に環状部材を組み付ける上記第5の発明において、チューブのつぶれをより一層抑制することができる。
【0021】
また、第5又は第6の発明において、延伸工程の前に、チューブの内腔に芯材を挿入する挿入工程を備え、縮径延伸工程では、チューブの内腔に芯材を挿入した状態で、チューブにおける軸線方向の一部の領域を軸線方向に延伸させて縮径させるようにしてもよい。そうすれば、チューブにおいて縮径された領域とそれと隣接する領域との間でチューブの内周面に段差が生じないようにすることができるため、チューブの内腔にガイドワイヤを挿通したり流体を流通させたりする場合に、通過性を低下させることなく上記の効果を得ることができる。
【0022】
第7の発明のカテーテルの製造方法は、第2乃至第6のいずれかの発明において、流体が流通する外側チューブと、当該外側チューブの内腔を通るようにして設けられるとともに、外側チューブよりも先端側に延長させて設けられ、内腔にガイドワイヤが挿通される内側チューブと、前記外側チューブの先端部に接続されるとともに前記内側チューブの延長部を覆うように設けられ、前記外側チューブの内腔を流体が流通することにより膨張又は収縮するバルーンと、を備えるバルーンカテーテルを製造する場合に適用され、前記チューブ形成工程により形成されるチューブは、前記内側チューブであり、前記延伸工程では、前記内側チューブを軸線方向に延伸させることにより、前記延長部を含む所定長さ領域を前記均し領域として形成し、前記組付工程では、前記内側チューブにおける前記均し領域の外周面に前記環状部材としての造影環を組み付けることを特徴とする。
【0023】
バルーンカテーテルでは、体内に挿入されたバルーンの位置を確認するために、造影環が内側チューブに組み付けられる場合がある。本発明では、内側チューブにおいて軸線方向への延伸により形成された均し領域に造影環を組み付けており、これにより造影環をバルーンカテーテルに組み付ける構成において上記第2の発明の効果を得ることができる。また、バルーンカテーテルでは、バルーンの内部がバルーンの拡張に際し正圧とされるため、これに伴いバルーン内において内側チューブが径方向に収縮する場合が考えられる。その場合、内側チューブの内腔に挿通されるガイドワイヤの通過性が低下することが懸念される。この点、本発明では、内側チューブにおいてバルーン内に覆われた延長部を含む所定の領域が軸線方向に延伸されているため、チューブの強度が延長部において高められており、バルーン内において内側チューブが径方向に収縮するのを抑制できる。したがって、この場合、上記第2の発明の効果を奏することができるとともに、ガイドワイヤの通過性の低下を抑制することができる。
【0024】
第8の発明のカテーテルの製造方法は、第7の発明において、前記内側チューブを軸線方向に延伸させる縮径前延伸工程を備え、前記延伸工程は、当該縮径前延伸工程により延伸された領域を軸線方向に延伸させることにより、前記延伸された領域の少なくとも一部の領域をそれに隣接する領域よりも縮径させて前記延長部の少なくとも一部を形成する縮径延伸工程であり、前記組付工程では、前記内側チューブの前記延長部において前記縮径された領域に、前記造影環を組み付けることを特徴とする。
【0025】
バルーンカテーテルでは、体内に挿入されたバルーンの位置を正確に把握すべく、造影環がバルーン内において内側チューブに組み付けられる場合がある。この場合、バルーン内における内側チューブの外周面には、バルーン内が正圧とされることに伴う内側への押圧力の他に、内側チューブに組み付けられた造影環による内側への押圧力が付与されるため、造影環がバルーンの外部に組み付けられる場合と比べると、内側チューブがつぶれ易くなっていると考えられる。そこで、本発明では、この点に鑑み、内側チューブの延長部の少なくとも一部を複数回延伸させることにより、バルーン内に内側チューブの強度をより一層高めた領域を形成し、その領域に造影環を組み付けることとしている。このため、かかる構成においても、内側チューブのつぶれを好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】バルーンカテーテルの概略全体側面図。
【図2】バルーン周辺の構成を説明するための説明図。
【図3】インナーシャフトの製造工程及び造影環の組付工程を説明するための説明図。
【図4】別例におけるインナーシャフトに造影環を組み付けた状態を示す構成図。
【図5】別例におけるインナーシャフトに造影環を組み付けた状態を示す構成図。
【図6】別例におけるチューブにストッパが組み付けられた状態を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を具体化した第1の実施形態を図面に基づいて説明する。図1はバルーンカテーテル10の概略全体側面図である。
【0028】
図1に示すように、バルーンカテーテル10は、カテーテルシャフト11〜14と、当該カテーテルシャフト11〜14の基端部(近位端部)に取り付けられたハブ15と、カテーテルシャフト11〜14の先端部(遠位端部)に取り付けられたバルーン16とを備えている。
【0029】
カテーテルシャフト11〜14は、複数の管状シャフト(チューブ)から構成されており、基端側から見て、基端シャフトとしてのプロキシマルシャフト11と、中間シャフトとしてのミッドシャフト12と、先端シャフトとしてのディスタールシャフト13とがある。また、ディスタールシャフト13には、インナーシャフト14が内挿されている。この点、ディスタールシャフト13を外側シャフト(外側チューブ)と称することができ、インナーシャフト14を内側シャフト(内側チューブ)と称することができる。
【0030】
これら各シャフト11〜14のうち、プロキシマルシャフト11,ミッドシャフト12及びディスタールシャフト13の各内腔11a〜13aにより、ハブ15を介して供給された圧縮流体をバルーン16内に導く流体用ルーメンが形成されている。また、インナーシャフト14の内腔14aにより、ガイドワイヤ用ルーメンが形成されている。
【0031】
プロキシマルシャフト11は、ステンレスやニッケルチタン合金などといった金属により形成されている。なお、金属製に限定されることはなく、合成樹脂製としてもよい。プロキシマルシャフト11は1m強の長さを有しており、その基端部に上記ハブ15が接合され、先端部にミッドシャフト12が接合されている。なお、プロキシマルシャフト11の外周に、PTFEといったフッ素樹脂などをコーティングしてもよい。
【0032】
ミッドシャフト12は、合成樹脂製であり、剛性がプロキシマルシャフト11よりも低くなるように、その材料、肉厚及び外径などが設定されている。バルーンカテーテル10においては、要求される主たる性能の一部として、屈曲血管(又は、ガイドワイヤG)への追随性(trackability)と、体内へバルーンカテーテル10を挿入する際の力の伝達性(pushability)とがある。そして、これら両性能を高めるためには、バルーンカテーテル10の先端側の剛性を基端側に対して低くする必要がある。この場合に、上記のようにプロキシマルシャフト11よりも剛性が低いミッドシャフト12を設けることで、上記追随性及び伝達性が高められている。
【0033】
ミッドシャフト12の先端部には、ディスタールシャフト13の基端部が接合されている。ディスタールシャフト13は、合成樹脂製であり、剛性がミッドシャフト12よりも低くなるように、その材料、肉厚及び外径などが設定されている。また、ディスタールシャフト13には、上述したようにインナーシャフト14が内挿されている。
【0034】
インナーシャフト14は、合成樹脂製であり、剛性がミッドシャフト12よりも低くなるように、その材料、肉厚及び外径などが設定されている。さらに言うと、ディスタールシャフト13とインナーシャフト14との二重構造となった部位の剛性がミッドシャフト12よりも低くなるように、それらディスタールシャフト13及びインナーシャフト14の材料、肉厚及び外径などが設定されている。
【0035】
ディスタールシャフト13の基端部には、インナーシャフト14用のポート部31が形成されている。このポート部31に対してインナーシャフト14の基端部が挿入され接合されている。
【0036】
次に、バルーン16周辺の構成(図1におけるC1の領域)について図2を用いて詳細に説明する。図2はバルーン16周辺の構成を説明するための説明図である。なお、図2はバルーン16が膨張状態である場合を示す。
【0037】
図2に示すように、ディスタールシャフト13に内挿させて設けられたインナーシャフト14は、ディスタールシャフト13よりも先端側に延長されている。このインナーシャフト14の延長領域36の先端部に対して先端チップ体18が設けられている。かかる構成において、バルーン16は、その基端側がディスタールシャフト13に対して接合されるとともに、その先端側が先端チップ体18に対して接合され、インナーシャフト14の延長領域36の外周面を覆うようにして設けられている。
【0038】
バルーン16は、合成樹脂製であり、膨張状態において内径及び外径が複数段階で代わるように形成されている。つまり、バルーン16は、ディスタールシャフト13に接合される基端側レッグ領域41と、先端側に向けて内径及び外径が拡径されるようにテーパ状をなす基端側コーン領域42と、長さ方向の全体に亘って内径及び外径が同一でありバルーン16の最大外径領域をなす直管領域43と、先端側に向けて内径及び外径が縮径されるようにテーパ状をなす先端側コーン領域44と、先端チップ体18に接合される先端側レッグ領域45とを、基端側からこの順で有している。
【0039】
バルーン16の先端側レッグ領域45は、先端チップ体18の外周面に対して接合されている。これに対して、基端側レッグ領域41は、ディスタールシャフト13の先端部を外側から覆うようにして接合されている。なお、各接合は熱溶着により行われているが、接着剤を用いて接合するようにしてもよい。
【0040】
次に、インナーシャフト14の構成について延長領域36を中心に説明する。
【0041】
インナーシャフト14は、複数種類の樹脂が積層されてなる3層構造をなしており、具体的には外層がポリアミドエラストマ、内層が高密度ポリエチレン、中間層が低密度ポリエチレンにより形成されている。なお、図2(後述の図3を含む)では便宜上、インナーシャフト14を単一の層として図示している。インナーシャフト14の延長領域36には、長さ方向の途中位置に、外径が基端側から先端側に向けて段階的に小さくなるように段差部37が形成されている。したがって、インナーシャフト14は、段差部37を挟んで両側に設けられた外径の異なる複数の領域25,26を有しており、詳しくは、段差部37から先端側に向けて設けられた小径領域25と、段差部37から基端側に向けて設けられた大径領域26とを有している。また、図2(b)に示すように、インナーシャフト14において小径領域25と大径領域26とは外径が異なるものの内径は同一となっている。したがって、小径領域25では大径領域26よりも肉厚が薄肉化されている。
【0042】
また、延長領域36に段差部37が設けられていることにより、延長領域36では軸線方向に対して垂直方向の断面積が先端側に向けて段階的に小さくなっており、その結果延長領域36の剛性(曲げこわさ又は曲げモーメント)が先端側に向けて段階的に低くなっている。このため、バルーンカテーテル10のバルーン16が設けられている領域において、先端側が低くなるように剛性を変化させることができる。
【0043】
インナーシャフト14の小径領域25には、その外周面に金属製の造影環47が取り付けられている。造影環47は、X線投影下においてバルーン16の視認性を向上させ、目的とする治療箇所へのバルーン16の位置決めを容易に行うための環状部材である。造影環47は、小径領域25において基端側の端面47aを段差部37に当接させて設けられている。これにより、バルーンカテーテル10の体内への挿入時や、血管の狭窄部位をバルーン16周辺が通過する際に、造影環47に対して基端側に向けて負荷が掛かったとしてもその負荷が段差部37にて受けられ、造影環47の位置ずれ等の変位が防止される。また、造影環47をインナーシャフト14に取り付ける際の位置決めの容易化が図られる。さらにまた、剛性がバルーン16などより高い造影環47を、インナーシャフト14において段差部37よりも先端側の剛性が低下された領域に配置することで、造影環47による剛性の変化の影響が低減される。ちなみに、造影環47は造影機能を果たすのであれば、金属製に限定されることはなく合成樹脂製であってもよい。
【0044】
なお、インナーシャフト14に内層(高密度ポリエチレン)を設けることに代えて、インナーシャフト14の内腔14aに、ガイドワイヤGの滑り性を高めるために、コーティング層を形成してもよい。このコーティング層として、ポリエチレンオキサイドや無水マレイン酸といった親水性の材料を用いてもよく、PTFE等のフッ素樹脂といった疎水性の材料を用いてもよい。疎水性の材料を用いることにより、コーティング層の膨潤を防ぐことができる。
【0045】
延長領域36のシャフト先端部38には、上記先端チップ体18が取り付けられている。先端チップ体18は、合成樹脂により管状に形成されており、剛性がインナーシャフト14よりも低くなるように、その材料、肉厚及び外径などが設定されている。
【0046】
先端チップ体18のチップ基端部51は延長領域36のシャフト先端部38を覆っている。そして、チップ基端部51の内周面とシャフト先端部38の外周面とが熱溶着により接合されている。先端チップ体18の内腔18aはインナーシャフト14の内腔14aに連通されており、さらに両内腔14a,18aは同一軸線上にある。これら両内腔14a,18aにより、ガイドワイヤ用ルーメンが形成されている。なお、先端チップ体18の内径は、ガイドワイヤGの外径と略同一となっており、具体的には0.014mmとなっている。
【0047】
次に、バルーンカテーテル10の製造工程について説明する。ここでは、インナーシャフト14の製造工程及び同シャフト14に対する造影環47の組付工程を中心として説明する。なお、図3は、インナーシャフト14の製造工程及び造影環47の組付工程を説明するための説明図である。
【0048】
まず、インナーシャフト14を構成するシャフト本体33を成形するチューブ成形工程を行う。本工程を行うことにより、外径及び内径がそれぞれ軸線方向全域に亘って同一となったシャフト本体33が形成される。具体的には、シャフト本体33の外径D0(図3(b)参照)は、0.58±0.03mm(0.55〜0.61mm)となる。シャフト本体33は、上述したように、外層がポリアミドエラストマ、内層が高密度ポリエチレン、中間層が低密度ポリエチレンにより形成され、これら各層が例えば押し出し成形により形成される。本インナーシャフト14の製造工程においては、このシャフト本体33に対して後述する各工程を実施することにより、インナーシャフト14を形成する。
【0049】
次に、図3(a)に示すように、シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入する挿入工程を行う。マンドレル53は、シャフト本体33の内径と略同じ外径を有した金属製の棒材であり、芯材に相当するものである。本工程では、シャフト本体33の内腔33aにおいて軸線方向のほぼ全域に亘りマンドレル53が位置するように、当該マンドレル53を挿入する。具体的には、シャフト本体33の先端側の所定範囲(例えば先端から5〜10mmの範囲)を除く全域にマンドレル53を配置する。これにより、シャフト本体33の内側への変形がマンドレル53により規制され、シャフト本体33の内径が保持される。
【0050】
なお、シャフト本体33においてマンドレル53が配置されていない上記所定範囲は余剰部分33bであり、後述する各工程を行った後に切り落とされる。シャフト本体33にマンドレル53を挿入した後、この余剰部分33bをペンチ等を用いて軸線方向に引っ張り細くするとともに、その細くした部分の先端側を軸線方向に対して斜めにカットする。これにより、後述する延出工程においてシャフト本体33を、余剰部分33bを先端としてダイス55,56内に挿入する際に挿入し易くなる。
【0051】
次に、シャフト本体33を軸線方向に引っ張ることにより延伸させる延伸工程を行う。延伸工程は、縮径前延伸工程としての第1延伸工程と、縮径工程としての第2延伸工程とからなる。まず、第1延伸工程について説明する。
【0052】
図3(b)に示すように、第1延伸工程では、シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入した状態で、シャフト本体33を金属製の大径ダイス55の孔部55aに通して引き抜くことにより、当該シャフト本体33を軸線方向に延伸させる。具体的には、シャフト本体33の軸線方向全域(詳しくは余剰部分33bを除く)を大径ダイス55内に通して引き抜くことにより延伸させる。この場合、シャフト本体33の各層において軸線方向への延伸が行われる。
【0053】
大径ダイス55の孔部55aは断面が円形状をなしており、その内径がシャフト本体33の外径D0よりも小さい寸法に設定されている。具体的には、シャフト本体33の外径D0が上述したように0.58±0.03mmであるのに対し、大径ダイス55の孔部55aの内径は0.0215インチ(0.5461mm)に設定されている。このため、シャフト本体33を大径ダイス55内に通して引き抜くことにより、シャフト本体33の壁部(肉厚部分)が大径ダイス55(孔部55a)の内周面とマンドレル53の外周面との間で軸線方向に圧延される。これにより、シャフト本体33の内径がマンドレル53により保持されたまま、シャフト本体33の外径がD0からD1に縮径される(D0>D1)換言すると、この縮径によってシャフト本体33の外径が予め定められた外径寸法D1に均される。具体的には、シャフト本体33の外径D1は、0.555±0.015mm(0.54〜0.57mm)となる。この場合、シャフト本体33は、第1延伸工程を経ることによって薄肉化される。なお、延伸加工(後述する第2延伸工程も含む)に際しては、ヒータ等によるシャフト本体33の加熱は行わないこととしており、また延伸加工を行う際の周囲温度(室温)の条件としては、例えば25℃を想定している。
【0054】
また、本実施形態では、図3(c)に示すように、シャフト本体33の延伸加工を専用の延伸加工装置60を用いて行う。ここで、延伸加工装置60について説明すると、同加工装置60は、ベース61と、ベース61上に設けられ大径ダイス55が取り付けられる取付孔部62aを有するダイス取付部62と、ベース61上において大径ダイス55の孔部55aの軸線方向に移動可能に設けられた移動ステージ63と、移動ステージ63を駆動させる駆動装置64とを備える。移動ステージ63上には、大径ダイス55の軸線延長線上にシャフト本体33を同ステージ63に固定するためのチャック65が設けられている。
【0055】
ここで、第1延伸工程において、上記延伸加工装置60を用いて行う具体的な作業手順について説明すると、まずシャフト本体33を、余剰部分33bを先端として、大径ダイス55に対してチャック65とは反対側から大径ダイス55の孔部55aに挿入し、その挿入した部分の先端側をペンチ等でつかんでチャック65側に引き出す。そして、その引き出したシャフト本体33の先端部をチャック65を用いて移動ステージ63に固定する。なお、この際、シャフト本体33の余剰部分33b(すなわち圧延加工の対象ではない部分)を固定する。その後、駆動装置64を駆動させることにより、移動ステージ63を大径ダイス55から遠ざかる向きに所定の速度で移動させる。これにより、シャフト本体33は大径ダイス55内を順次通過して引き抜かれる。そして、シャフト本体33全体が大径ダイス55内を通過し終えることで、本工程を終了する。
【0056】
なお、シャフト本体33の延伸加工は、必ずしも駆動装置64を用いて行う必要はなく、作業者による手作業で行ってもよい。すなわち、大径ダイス55内に通したシャフト本体33を作業者が手で引っ張ることにより行ってもよい。
【0057】
次に、第2延伸工程について説明する。第2延伸工程では、図3(d)に示すように、シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入した状態で、シャフト本体33の先端側の所定範囲を小径ダイス56の孔部56aに通して引き抜くことで、当該所定範囲を軸線方向に延伸させる。なお、本延伸工程を行う前にあらかじめダイス取付部62の取付孔部62aに取り付けられている大径ダイス55を小径ダイス56に交換しておく。
【0058】
小径ダイス56の孔部56aは断面が円形状をなしており、その内径がシャフト本体33の外径D1よりも小さい寸法に設定されている。具体的には、シャフト本体33の外径D1が上述したように0.555±0.015mmであるのに対し、小径ダイス56の孔部56aの内径は0.0200インチ(0.508mm)に設定されている。このため、シャフト本体33の所定範囲を小径ダイス56内に通して引き抜くことにより、当該所定範囲の壁部(肉厚部分)が小径ダイス56(孔部56a)の内周面とマンドレル53の外周面との間で軸線方向に圧延される。これにより、シャフト本体33の当該所定範囲では内径が保持されたまま外径がD1からD2に縮径される(D1>D2)。換言すると、この縮径によって当該所定範囲ではシャフト本体33の外径が予め定められた外径寸法D2に均される。具体的には、外径寸法D2は、0.52±0.01mm(0.51〜0.53mm)となる。なお、シャフト本体33においてこの縮径された所定範囲がインナーシャフト14の小径領域25を構成し、それ以外の領域が同シャフト14の大径領域26を構成する。また、これら各領域25,26は軸線方向への延伸加工が施された延伸領域に相当する。延伸工程の終了後、シャフト本体33の余剰部分33bをカットする。
【0059】
次に、シャフト本体33の内側にマンドレル53を挿入したままの状態で、シャフト本体33をアニール処理するアニール工程を行う。アニール工程では、シャフト本体33を恒温槽に入れて所定の条件で加熱する。例えば、シャフト本体33を120℃の温度条件下で25分加熱する。これにより、シャフト本体33の内部応力が緩和される。
【0060】
アニール工程の終了後、マンドレル53をシャフト本体33から引き抜く引き抜き工程を行う。この場合、アニール工程においてシャフト本体33の内部応力が緩和されているため、マンドレル53を引き抜いた後、シャフト本体33の内部応力により当該シャフト本体33が内側へ変形するのが抑制される。このため、シャフト本体33の外径寸法が小さくなるのが抑制される。具体的には、シャフト本体33の外径寸法は、小径領域25では0.53±0.01mm(0.52〜0.54mm)となり、大径領域26では0.565±0.015mm(0.55〜0.58mm)となる。この引き抜き工程の終了をもって、シャフト本体33に延伸加工等が施されたインナーシャフト14が形成される。
【0061】
次に、図3(e)に示すように、インナーシャフト14の小径領域25における外周面に造影環47を組み付ける組付工程を行う。組付工程では、造影環47の基端側の端面47aをインナーシャフト14の段差部37に当接させた状態で造影環47を組み付ける作業を行う。この組み付けは、例えば造影環47をその外周側から専用の治具等を用いて打ち付けることにより行う。これにより、造影環47がインナーシャフト14に加締められた状態で装着される。
【0062】
その後、後工程として、造影環47が組み付けられたインナーシャフト14のシャフト先端部38に先端チップ体18を接合し、その接合状態でインナーシャフト14を予め形成しておいたディスタールシャフト13の内腔13aに挿入するシャフト内挿工程を行う。また、後工程として、バルーン16の基端側レッグ領域41及び先端側レッグ領域45をそれぞれディスタールシャフト13の先端部及び先端チップ体18に接合するバルーン接合工程を行う。その他、後工程として、プロキシマルシャフト11とミッドシャフト12との接合工程や、それら各シャフト11,12とディスタールシャフト13及びインナーシャフト14との接合工程などを行う。
【0063】
上記構成のバルーンカテーテル10は、以下のように使用される。
【0064】
先ず血管内に挿入されたシースイントロデューサにガイディングカテーテルを挿通し、押引操作して冠動脈入口部まで挿入する。次いで、ガイドワイヤGをバルーンカテーテル10のガイドワイヤ用ルーメン及びガイディングカテーテル内に挿通し、冠動脈入口部から治療対象箇所(例えば、狭窄箇所)を経て抹消部位まで挿入する。続いて、ガイドワイヤGに沿ってバルーンカテーテル10を、押引又は捻り操作を加えながら治療対象箇所まで挿入する。この場合、造影環47によりバルーン16の位置を確認しながら挿入を行う。バルーン16が治療対象箇所に到達したら、加圧器でバルーン16を拡張し治療を行う。
【0065】
なお、バルーンカテーテル10は上記のように主として血管内を通されて、当該血管内の狭窄箇所や閉塞箇所を拡張するために用いられるが、血管以外の尿管や消化管などの生体内の「管」や、体腔にも適用可能である。
【0066】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0067】
合成樹脂材料によりシャフト本体33を形成し、そのシャフト本体33を軸線方向に引っ張って延伸させることで、インナーシャフト14の小径領域25において同シャフト14の外径を予め定めた外径寸法D2に均した。そして、インナーシャフト14において外径寸法がD2に均された均し領域(具体的には小径領域25)の外周面に造影環47を組み付けた。この場合、チューブ形成工程により形成されたシャフト本体33において、その外径寸法にばらつきが生じたり、その外表面に凹凸が発生したりしても、その後シャフト本体33の外径をD2に均すことで、外径寸法のばらつきを低減させたり外表面の凹凸を小さくしたりすることができる。そして、インナーシャフト14において外径が均されたかかる領域に造影環47が組み付けられるため、造影環47の位置ずれや歪みを抑制することができる。また、インナーシャフト14の小径領域25では軸線方向への延伸により樹脂の分子配向が軸線方向に揃うため、インナーシャフト14の引っ張りや曲げの強度を高めることができる。したがって、この場合上記の効果を得つつ、造影環47の組み付けに伴いインナーシャフト14がつぶれるのを抑制できる。
【0068】
シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入し、その後かかるマンドレル53の挿入状態でシャフト本体33を小径ダイス56内に通し引き抜くことで、シャフト本体33を延伸させた。この場合、シャフト本体33を軸線方向に延伸させることができるとともに、シャフト本体33の外径を予め定めた外径D2に均すことができるため、上記の効果を実現するに際し実用上好ましい構成といえる。
【0069】
ところで、インナーシャフト14に造影環47を加締めにより組み付ける場合には、まず造影環47をインナーシャフト14の外周側に配置し、その後造影環47を治具等を用いて内側に変形させる。これにより、造影環47は、その内周面がインナーシャフト14の外周面に接触された状態で同シャフト14に組み付けられる。ここで、インナーシャフト14の外径寸法のばらつきが大きい場合には、造影環47の内径寸法をインナーシャフト14の外径に対してばらつき分大きめに設定しておく必要がある。この場合、仮にインナーシャフト14が、規定寸法よりも小さい外径寸法で形成された場合には、造影環47を内側に大きく変形させてインナーシャフト14の外周面に接触させる必要がある。そうなると、造影環47全体を内側に変形させる(絞る)ことが困難となるため、造影環47の一部を内側に凹ませて、その凹ませた端部をインナーシャフト14の外周面に接触させることで造影環47を組み付けることとなる。この場合、造影環47とインナーシャフト14との接触面積が小さくなり、造影環47を安定した状態でインナーシャフト14に組み付けるのが困難になるおそれがある。この点、インナーシャフト14の外径寸法を予め定めた外径寸法に均す上記の構成であれば、かかる不都合を回避でき、安定した状態で造影環47をインナーシャフト14に組み付けることができる。
【0070】
マンドレル53を挿入したままシャフト本体33を軸線方向に延伸させた後、シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入したままアニール処理を行うようにした。この場合、シャフト本体33にマンドレル53を挿入したままシャフト本体33の内部応力が緩和されるため、マンドレル53をシャフト本体33から引き抜いた際にシャフト本体33が内側へ変形するのが抑制される。このため、マンドレル53を用いてインナーシャフト14の外径を均すに際し好適な構成といえる。
【0071】
シャフト本体33における軸線方向の一部の領域(小径領域25)を軸線方向に延伸させることにより、当該一部の領域をそれと隣接する領域(大径領域26)よりもインナーシャフト14の外径が小さくなるように縮径させ、インナーシャフト14においてその縮径された小径領域25に造影環47を組み付けた。一般に、インナーシャフト14を縮径させると、その縮径された領域では強度が低下するため、縮径領域では造影環47の組み付けに伴うつぶれが生じ易いと考えられる。この点、上記の構成では、小径領域25を、シャフト本体33を軸線方向に延伸させることにより形成しているため、小径領域25においてある程度の強度を確保することができる。この場合、インナーシャフト14の縮径領域(つまり小径領域25)に造影環47を組み付ける場合において、好適な構成であるといえる。
【0072】
シャフト本体33における軸線方向の所定領域(小径領域25)を延伸させて縮径する前に、当該所定領域を少なくとも含む領域について軸線方向に延伸させるようにした。この場合、インナーシャフト14の小径領域25について複数回軸線方向への延伸が行われるため、樹脂の分子配向をより一層軸線方向に揃えることができる。これにより、縮径することにより強度が低下することとなる小径領域25において、より大きな強度を確保できるため、小径領域25に造影環47を組み付ける場合においてインナーシャフト14のつぶれをより一層抑制できる。
【0073】
シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入した状態で、シャフト本体33における所定範囲を延伸させて縮径させたため、インナーシャフト14において縮径された領域とそれと隣接する領域との間でインナーシャフト14の内周面に段差が生じないように同シャフト14を形成できる、この場合、インナーシャフト14を縮径させる構成において、インナーシャフト14の内腔14aにガイドワイヤGを挿通する際の通過性が低下するのを抑制できる。
【0074】
シャフト本体33(インナーシャフト14)においてバルーン16により覆われる延長領域36を含む所定長さ領域(小径領域25及び大径領域26)を軸線方向に延伸させたため、インナーシャフト14の径方向の強度が少なくとも延長領域36において高められている。このため、バルーン16の拡張に際しバルーン16内が正圧とされることに伴いバルーン16内でインナーシャフト14が径方向に収縮するのを抑制でき、ひいてはかかる収縮によりガイドワイヤGの通過性が低下するのを抑制できる。
【0075】
シャフト本体33において延長領域36を含む所定長さ領域(小径領域25及び大径領域26)を軸線方向に延伸させ、その後、シャフト本体33において当該延伸された延長領域36の一部(小径領域25)を軸線方向に延伸させることで、当該延伸された領域をそれと隣接する領域よりもインナーシャフト14の外径が小さくなるように縮径させた。そして、インナーシャフト14の延長領域36において縮径された領域に、造影環47を組み付けた。この場合、インナーシャフト14の延長領域36の一部を複数回延伸させることで、バルーン16内にインナーシャフト14の径方向の強度をより一層高めた領域を形成し、その領域に造影環47を組み付けることができる。このため、バルーン16の位置を正確に把握すべくバルーン16内に造影環47が組み付けられる構成においても、インナーシャフト14のつぶれを好適に抑制することができる。
【0076】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0077】
(1)上記実施形態では、シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入した状態でシャフト本体33をダイス55,56内に通し引き抜くことで、シャフト本体33を軸線方向に延伸させ、シャフト本体33の外径を予め定めた外径に均す構成としたが、シャフト本体33の外径を均すためにシャフト本体33を軸線方向に延伸させる方法は必ずしもこれに限定されない。例えば、ダイス55,56を用いないで、シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入した状態でシャフト本体33を軸線方向に引っ張ることにより延伸させてもよい。この場合、ダイス55,56を不要とできるためダイス55,56の寸法管理等の手間をなくすことができる。また、かかる場合に、シャフト本体33の内腔33aにマンドレル53を挿入しないで、シャフト本体33を軸線方向に引っ張ることにより延伸させてもよい。この場合、さらにマンドレル53についても寸法管理等の手間をなくすことができる。
【0078】
また、上記実施形態では、シャフト本体33において縮径対象とされている所定範囲(小径領域25となる部分)を小径ダイス56内に通して引き抜くことにより縮径させるようにしたが、小径ダイス56を用いないで、シャフト本体33の所定範囲を軸線方向に引っ張って縮径させてもよい。また、この際、マンドレル53を用いないで縮径させてもよい。
【0079】
(2)上記実施形態では、インナーシャフト14において外径の異なる2つの領域25,26(延伸領域)を延伸加工により形成したが、外径の異なる3つ以上の延伸領域を形成してもよい。例えば、上記実施形態において、インナーシャフト14の小径領域25の先端側にさらに延伸加工することにより縮径された領域(第2小径領域)を設け、インナーシャフト14に外径の異なる3つの領域を設けることが考えられる。この場合、第2延伸工程の後、シャフト本体33において第2小径領域に対応する長さ範囲を軸線方向に延伸する第3延伸工程をさらに行えばよい。そして、その後、造影環47を、例えばインナーシャフト14において第2小径領域に組み付ける。
【0080】
また、インナーシャフト14を、延伸加工により、軸線方向全域において外径が同一となるように形成し、その外周面に造影環47を組み付けるようにしてもよい。
【0081】
(3)上記実施形態では、インナーシャフト14の小径領域25において造影環47を段差部37に当接させて組み付けたが、小径領域25において段差部37に当接させないですなわち小径領域25において段差部37から離間させて造影環47を組み付けてもよい。
【0082】
(4)上記実施形態では、インナーシャフト14の延長領域36に造影環47を組み付けたが、延長領域36よりも基端側の領域すなわちバルーン16により覆われていない領域に組み付けてもよい。例えば、図4に示すように、インナーシャフト14の小径領域25(均し領域)を延長領域36よりも基端側から先端に向かって形成し、造影環47を小径領域25において延長領域36よりも基端側の部位に組み付けることが考えられる。この場合においても、造影環47の位置ずれや歪みを抑制することができる。
【0083】
(5)上記実施形態では、インナーシャフト14の延長領域36における先端側に小径領域25(均し領域)を延伸加工により形成したが、延長領域36におけるその他の部位に小径領域25を形成してもよい。例えば、図5に示すように、インナーシャフト14の延長領域36における軸線方向の中間部に小径領域25を形成してもよい。この場合、小径領域25の軸線方向における両端部には段差部71,72が形成されている。小径領域25には、一対の造影環73,74がそれぞれ各々の段差部71,72に当接されて組み付けられている。したがって、本例では、上記実施形態の場合よりもバルーン16の直管領域43の視認性の向上が図られており、バルーン16を目的の治療対象箇所に配置し易くなっている。なお、インナーシャフト14の小径領域25に組み付ける造影環の数は2つに限定することなく、3つ以上であってもよい。
【0084】
(6)上記実施形態では、シャフト本体33において小径領域25に対応する所定範囲を2回軸線方向に延伸させる(すなわち第1延伸工程及び第2延伸工程を行う)ことにより、インナーシャフト14の小径領域25を形成したが、3回以上軸線方向に延引させることにより小径領域25を形成してもよい。軸線方向への延伸の回数を多くすればシャフト本体33において樹脂の分子配向が軸線方向により揃うため、インナーシャフト14の強度をより一層高めることができ、その結果、インナーシャフト14において造影環47の組み付けに伴うインナーシャフト14のつぶれをより一層抑制することができる。
【0085】
また、シャフト本体33の所定範囲(小径領域25に対応する範囲)を1回だけ延伸させることにより、小径領域25を形成してもよい。例えば、上記実施形態において、第1延伸工程を行わないで、第2延伸工程のみを行ってもよい。この場合、少ない工程で小径領域25を形成できるため、製造効率の向上を図ることができる。
【0086】
(7)上記実施形態では、シャフト本体33を軸線方向に延伸させることにより、インナーシャフト14の外径を予め定めた外径に均したが、延伸以外の方法によりインナーシャフト14の外径を均してもよい。例えば、シャフト本体33の外表面を研磨することにより、インナーシャフト14の外径を予め定めた外径に均してもよい。
【0087】
(8)上記実施形態では、インナーシャフト14(チューブに相当)においてその外径が予め定めた外径寸法D2に均された領域(具体的には小径領域25)に環状部材としての造影環47を組み付けたが、その他の環状部材を組み付けてもよい。例えば、図6に示すように、チューブ81の先端側にステント82を装着して当該ステント82を所定の治療対象部位に搬送する搬送用のカテーテル80では、チューブ81の軸線方向へのステント82の位置ずれを規制する等のために、チューブ81の外周面に環状のストッパ83,84が設けられている場合がある。そこで、かかる場合に、上記チューブ81を押し出し成形等により形成した後、チューブ81における所定長さ領域についてチューブ81の外径を予め定められた外径寸法に均し、その外径が均された領域にストッパ83,84を組み付けることが考えられる。
【0088】
(9)上記実施形態では、バルーンカテーテルに対して本発明を適用したが、造影環47(ひいては環状部材)をチューブ外周面に取り付ける構成を有したその他のカテーテル(例えば、吸引カテーテルやステント搬送用のカテーテル)に対して適用してもよい。
【符号の説明】
【0089】
10…バルーンカテーテル、14…インナーシャフト、16…バルーン、25…均し領域としての小径領域、26…大径領域、33…シャフト本体、37…段差部、47…環状部材としての造影環。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料によりチューブを形成するチューブ形成工程と、
前記チューブの外径を予め定める外径に均す均し工程と、
前記チューブにおいて予め定める外径に均された均し領域の外周面に環状部材を組み付ける組付工程と、
を備えることを特徴とするカテーテルの製造方法。
【請求項2】
前記均し工程は、前記チューブを軸線方向に引っ張って延伸させることにより、前記チューブの外径を予め定める外径に均す延伸工程であることを特徴とする請求項1に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項3】
前記延伸工程では、前記チューブの外径よりも小さい内径を有する小孔部に、前記チューブを当該小孔部を基準として一方の側から通し他方の側に引っ張ることで、該チューブを軸線方向に延伸させることを特徴とする請求項2に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項4】
前記延伸工程の前に、前記チューブの内腔に芯材を挿入する挿入工程を備え、
前記延伸工程では、前記チューブの内腔に前記芯材を挿入した状態で、前記チューブを軸線方向に引っ張って延伸させることを特徴とする請求項2又は3に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項5】
前記延伸工程は、前記チューブにおける軸線方向の一部の領域を前記軸線方向に延伸させることにより、当該一部の領域をそれと隣接する領域よりも前記チューブの外径が小さくなるように縮径させる縮径延伸工程であり、
前記組付工程では、前記チューブにおいて前記縮径された領域に前記環状部材を組み付けることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか一項に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項6】
前記縮径延伸工程の前に、前記チューブの軸線方向において当該縮径延伸工程により縮径される領域を少なくとも含む所定の領域について軸線方向に延伸させる縮径前延伸工程をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項7】
流体が流通する外側チューブと、当該外側チューブの内腔を通るようにして設けられるとともに、外側チューブよりも先端側に延長させて設けられ、内腔にガイドワイヤが挿通される内側チューブと、前記外側チューブの先端部に接続されるとともに前記内側チューブの延長部を覆うように設けられ、前記外側チューブの内腔を流体が流通することにより膨張又は収縮するバルーンと、を備えるバルーンカテーテルを製造する場合に適用され、
前記チューブ形成工程により形成されるチューブは、前記内側チューブであり、
前記延伸工程では、前記内側チューブを軸線方向に延伸させることにより、前記延長部を含む所定長さ領域を前記均し領域として形成し、
前記組付工程では、前記内側チューブにおける前記均し領域の外周面に前記環状部材としての造影環を組み付けることを特徴とする請求項2乃至6のいずれか一項に記載のカテーテルの製造方法。
【請求項8】
前記内側チューブを軸線方向に延伸させる縮径前延伸工程を備え、
前記延伸工程は、当該縮径前延伸工程により延伸された領域を軸線方向に延伸させることにより、前記延伸された領域の少なくとも一部の領域をそれに隣接する領域よりも縮径させて前記延長部の少なくとも一部を形成する縮径延伸工程であり、
前記組付工程では、前記内側チューブの前記延長部において前記縮径された領域に、前記造影環を組み付けることを特徴とする請求項7に記載のカテーテルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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