説明

カテーテルコネクタ

【課題】カテーテルコネクタにおいて、カテーテルの固定力を適正化しつつ、カテーテルの不用意な固定解除を防止する。
【解決手段】筒部18は軸方向へ所定長さの収納空間29を画定し、クランプ12は傾動自在に筒部18に結合する。弾性チューブ21は、中心孔にカテーテル20を挿通され、外周側にクリップ22を嵌装されて、収納空間29内に収納される。クランプ12の嵌合溝51は、収納空間29の外部開放部30側を開口し、奥側に嵌合部52をもつ。解除傾動位置では、クリップ22は、嵌合溝51から離脱しており、筒部18の幅方向への縮閉を解除されて、弾性チューブ21を介するカテーテル20の挟圧を解除する。固定傾動位置では、嵌合溝51は外部開放部30から収納空間29内へ進入して、クリップ22は、嵌合溝51の嵌合部52に嵌合し、筒部18の幅方向へ縮閉する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルと輸液器具とを接続するカテーテルコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ワニ口型、すなわち本体に対して操作部材を傾動させてカテーテルを固定するカテーテルコネクタを開示する(特許文献1の図1及び図3)。該カテーテルコネクタによれば、半円横断面の半溝が本体の台面に本体の長手方向へ形成されているとともに、カテーテルの端部部分が、所定長さの弾性筒部材の中心孔を貫通して、該弾性筒部材と共に本体の台部の半溝に沿って支持される(特許文献1の図6)。そして、傾動式の操作部材を台部の方へ傾動して、弾性筒部材を操作部材と台部との半溝同士で形成される通路内に挟み込んで、弾性部材を介してカテーテルを挟圧して、固定するようにしている(特許文献1の図5)。該カテーテルコネクタは、また、装備カテーテルを固定位置に保持するために、ロック素子を装備し、該ロック素子は、操作部材が、その合わせ面を台部の合わせ面に合わせる傾動位置にある時に、操作部材の自由端部を台部の長手方向端部に係止するようになっている(特許文献1の図1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−245850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のカテーテルコネクタは、半円横断面溝同士により形成される通路内に弾性筒部材を嵌入することにより、カテーテルの固定力を適正化することができるものの、カテーテルが操作部材と本体との間に傾動方向へ挟圧する形式となっているので、カテーテルの固定時では、操作部材と本体との合わせ面同士が傾動方向へ分離しないようにするために、ロック素子が必須となる。また、特許文献1のカテーテルコネクタでは、ロック素子は鉤爪と該鉤爪の先端が回り込んで係止する湾曲部とから成り、かつ該ロック素子はカテーテルコネクタの自由端の端面から軸方向外方へ突設されているため、カテーテルコネクタが周囲のものに不用意にぶつかったり、引っ掛かったりした時に、ロック素子の係止が解除され易い。
【0005】
本発明の目的は、適切な固定力でのカテーテル固定操作を簡単化できるとともに、カテーテルの不用意な固定解除を防止することができるカテーテルコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカテーテルコネクタは、カテーテルと輸液器具とを着脱自在に接続するカテーテルコネクタであって、軸方向一端側から挿入された前記カテーテルの一端部分を収納するとともに軸方向中間部において外部へ開放されている筒部と、該筒部の他端側に連設され前記輸液器具が接続される器具接続部とを有するコネクタ本体と、前記筒部内に収納され前記カテーテルの前記一端部分が挿通される弾性筒部材と、前記筒部内に収納され縮閉自在に前記弾性筒部材の外周側に嵌装される嵌装体と、前記筒部の外部開放範囲の前記嵌装体へ向かって進退するように前記筒部の他端側に傾動自在に結合し第1傾動位置では前記筒部の前記外部開放範囲において前記嵌装体を内面側の嵌合部に受け入れて傾動面に対して直角方向へ縮閉させ第2傾動位置では前記筒部の前記外部開放範囲から離反して前記嵌装体の縮閉を解除する操作部材とを備え、前記操作部材の傾動面に対して直角方向の寸法に関して、前記嵌合部の嵌装体出入り端は、該嵌合部内の最大寸法部よりも小さくされ、前記操作部材の自由端側の端部は、前記第1傾動位置において前記筒部の前記一端側の端部を前記第2傾動位置からの接近側の外周範囲を覆いつつ前記筒部の前記一端側の前記端部を軸方向へ外側へ越えた位置まで延在していることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、操作部材が嵌装体を内面側の嵌合部に受け入れるので、嵌装体は、嵌合部においてその寸法に応じた寸法に縮閉して、弾性筒部材を介してカテーテルを挟圧する。したがって、カテーテルはばらつきなく適正な力でカテーテルコネクタに固定されるとともに、その固定操作が簡単となる。
【0008】
本発明によれば、嵌装体は、操作部材の傾動面に対して直角方向へ縮閉するとともに、嵌合部に嵌合して縮閉した後、嵌合部から抜けようとする場合には、嵌合部の最大寸法部より小寸法の出入り部を通る必要があるので、カテーテルを固定位置に安定して嵌合部に保持することができる。そして、カテーテルの固定位置を保持するために、操作部材とコネクタ本体とを相互に係止する係止部材をカテーテルの挟圧部とは別に設けることを省略することができる。
【0009】
本発明によれば、操作部材の自由端側の端部は、第1傾動位置において筒部の一端側の端部に対し第2傾動位置からの接近側の外周範囲を覆いつつ筒部の一端側の端部を軸方向へ外側へ越えた位置まで延在しているので、周囲の物が操作部材の自由端側においてカテーテルコネクタに不用意に当たったとしても、その当接に因る外力は、操作部材の自由端側の端部を筒部に対して傾動させる力としては作用せず、その結果、カテーテルの不用意な固定解除を防止することができる。
【0010】
好ましくは、前記操作部材には、それが第1傾動位置にあるときに、前記筒部を前記操作部材から離反させる傾動方向へ前記操作部材に対して相対変位自在の固定解除部材が組付けられている。
【0011】
これによれば、傾動方向へほぼ同一位置になっている操作部材及びコネクタ本体に対し、術者は、操作部材における固定解除部材を操作するだけで、操作部材を簡単に第2傾動位置に切り換えることができる。
【0012】
好ましくは、前記固定解除部材は、その非操作時には、前記操作部材の前記自由端側の前記端部の外面から外方へ突出しない形状及び寸法とされている。
【0013】
これによれば、物が不用意に固定解除部材に当たって、カテーテルが不用意に固定解除されることを防止することができる。
【0014】
好ましくは、前記嵌装体は、内面側に前記弾性筒部材を半径方向内方へ押圧する突条を有している。
【0015】
これによれば、嵌装体から弾性筒部材への挟圧力は嵌装体の突条の部位に集中するので、嵌装体は、弾性筒部材を効率良く挟圧することができる。
【0016】
好ましくは、前記嵌装体は、縮閉方向へかみ合い量を増減自在に周方向端部において相互にかみ合う1対の半環状部材から構成される。
【0017】
これによれば、嵌装体の縮閉は、弾性変形によるものではなく、かみ合い量の増減によるものとなるので、嵌装体の縮閉量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】カテーテルコネクタの外観構造図。
【図2】図1のカテーテルコネクタの断面図。
【図3】筒部の構造図。
【図4】コネクタ本体の構造図。
【図5】押しボタンの構造図。
【図6】クリップ片の構造図。
【図7】クリップの構造図。
【図8】クリップ片の種々の変形例の構造図
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1において、(a)はカテーテル20の固定解除時のカテーテルコネクタ10の正面図、(b)はカテーテル20の固定解除時のカテーテルコネクタ10の左側面図である。なお、(a)では、クランプ12については、カテーテル20の固定解除時の傾動位置は実線で示し、カテーテル20の固定時の傾動位置は二点鎖線で示している。
【0020】
説明の便宜のために、カテーテルコネクタ10の上下方向を図1(a)の上下方向と定義し、カテーテルコネクタ10の幅方向を図1(b)の左右方向と定義する。軸方向は長手方向と同一に定義する。ただし、説明の便宜上、使用したカテーテルコネクタ10の上下方向は、カテーテルコネクタ10を現実に使用する際の上下方向を規定するものではないとする。例えば、コネクタ本体11の軸方向又は長手方向は、図1(a)の左右方向となっており、クランプ12の軸方向又は長手方向は、カテーテル20の固定解除時のクランプ12の傾動位置では、図1(a)の右肩下がり方向となっている。
【0021】
図1において、カテーテルコネクタ10は、コネクタ本体11と、コネクタ本体11に組付けられるクランプ12と、クランプ12に組付けられる押しボタン13とを備える。このカテーテルコネクタ10は使い捨てタイプとなっている。コネクタ本体11は、さらに、軸方向へ相互に固着して結合する基部17及び筒部18を備える。
【0022】
図2において、(a)はカテーテル20の固定解除時のカテーテルコネクタ10の正面視の断面図、(b)は図1(a)のIIb−IIbの断面図である。図3において、(a)は中心線より上側を断面とした筒部18の正面視の外観図、(b)は一方の半部を断面とした筒部18の平面視の外観図、(c)は(a)のIIIc−IIIc矢視断面図、(d)は筒部18の右側面図である。
【0023】
図2及び図3を参照して、筒部18について説明する。筒部18は、軸方向へ基部17から遠い方の端部に筒壁26を、また、軸方向へ基部17に結合する端部に筒壁27を、軸方向中間部に底壁28をそれぞれ有し、内部には収納空間29を画定している。なお、収納空間29の基部17側の端部部分は、基部17内に達し、基部17の内面により画定されている。筒部18は、軸方向へ底壁28の範囲では、周方向へ底壁28以外の部位を外部開放部30とし、外部開放部30により収納空間29を外部へ開放している。換言すると、収納空間29は、下側の底壁28側を除き、外部開放部30により上側と幅方向両側とにおいて外部へ開放されている。
【0024】
収納空間29の横断面輪郭は、図3(c)及び(d)から分かるように、円を上下方向へ少し押し潰した形状となっており、幅方向寸法は上下寸法より長くなっている。案内平面25(図3(b)及び(c))は、収納空間29の下面部位において軸方向へ収納空間29の両端間に延在し、クリップ22の案内面となっている。
【0025】
筒部18は、筒壁26側の端において閉鎖壁をもち、該閉鎖壁は、外面側に軸方向外方へ突出する凸部32を有している。通孔31は、凸部32をその中心線に沿って貫通し、収納空間29を筒部18の外へ連通させている。張出し壁34(図3(b)及び(d))は、筒壁26の閉鎖側の端部の幅方向両側の内周面部位において幅方向へ内側へ向けて突設されている。張出し壁34は、後述のクリップ片66の係止溝71(図6)に嵌入して、収納空間29内におけるクリップ片66の周方向位置決めを行う。円柱ボス33は、筒壁27の、幅方向両側の外周面部位に幅方向外側に向いて突設されている。
【0026】
図2を参照して、基部17について説明する。基部17は、筒部18側の端部において筒壁27の内周に嵌入され、固着される。基部17は貫通孔を有し、該貫通孔は、筒部18側から軸方向へ順番に大径部35、中径部36、小径部37、最小径部38、及びテーパ部39,40を有している。大径部35、中径部36及び小径部37は収納空間29の基部17側の端部を画定している。大径部35の横断面は、筒壁26の横断面とは形状及び寸法共に同一とされる。中径部36、小径部37及び最小径部38の横断面は円形である。
【0027】
図2において、カテーテル20、弾性チューブ21及びクリップ22は、それらの中心線を揃えて収納空間29内に配設され、軸方向へ延在している。カテーテル20は弾性チューブ21内を通過し、クリップ22は弾性チューブ21の外周側に嵌装されている。クリップ22の端部は大径部35に挿入され、弾性チューブ21の端部は中径部36に挿入され、カテーテル20の端部は小径部37に挿入される。
【0028】
基部17内の貫通孔は、最小径部38において最小径となり、テーパ部39では最小径部38から軸方向へ遠ざかるに連れて漸増し、テーパ部40ではテーパ部39から軸方向へ遠ざかるに連れて径を漸増する。テーパの勾配は、テーパ部39の方がテーパ部40より大となっている。テーパ部40には、注射器や輸液管路等の輸液器具が挿入されて、接続される。
【0029】
弾性チューブ21は、クリップ22からの挟圧力の解除時では、内径がカテーテル20の外径より大となる。カテーテル20は、弾性チューブ21からの挟圧を解除されているときに、基端部(カテーテル20について、患者側の方を先端部、カテーテルコネクタ10の方を基端部と定義する。)の端を凸部32の外面側から通孔31へ挿入され、該端は、収納空間29内において弾性チューブ21の中心孔を基部17の方へ通り抜けている。
【0030】
図4において、(a)はクランプ12の正面視の断面図、(b)はクランプ12の底面図、(c)はクランプ12の左側面図である。
【0031】
図1、図2及び図4を参照して、クランプ12について説明する。クランプ12は、上側の頂壁41と、幅方向両側の側壁42とを有している。切欠き部45は、クランプ12の自由端(図4の左端)側に頂壁41及び側壁42の所定部分を確保して、該所定部分より長手方向内側の部位に穿設される。切欠き部45には、押しボタン13が上下方向へ変位自在に組み付けられる。切欠き部45の形成範囲では、頂壁41は完全に欠落し、側壁42は下端部のみを残して欠落している。切欠き部45より自由端側の頂壁41の部分は、術者がクランプ12を筒部18の方へ押し込む際に指を当てる部位として使用される。
【0032】
係止溝48は、軸方向へ切欠き部45の範囲における自由端(図4の左端)側の側壁42の端部おいて下端欠落部として形成され、爪59(図5)が側壁42の内面側から嵌入して係止されるようになっている。各側壁42は、支点側(軸方向へ自由端側とは反対側。円形孔47の中心が支点に相当し、図4の右側が支点側となる。)では、頂壁41を越えてクランプ12の長手方向へ張出している。2つの円形孔47は、各側壁42の張出し端部に穿設され、円柱ボス33(図3)が回動可能に嵌入される。クランプ12は、円柱ボス33に軸支されて、円柱ボス33の中心線の周りに回転自在にコネクタ本体11に結合する。
【0033】
底壁43は、クランプ12の自由端部において、側壁42の下端から幅方向内方へ張り出す。間隙44は、幅方向へ底壁43の張出し端の間に形成され、カテーテル20の外径より大きい幅となっている。
【0034】
垂下部50は、クランプ12において切欠き部45より長手方向へ支点側の頂壁41の範囲において頂壁41の下面から垂下して設けられ、内面側に嵌合溝51を有している。嵌合溝51は、下側において開口しており、奥側(上側)の嵌合部52と、開口側(下側)の出入り口面部53とを溝面としてもつ。嵌合部52は、円弧であり、その直径は、クリップ22が嵌合部52に嵌合しているときに、クリップ22を縮閉状態に保持する寸法とされる。両出入り口面部53の間の幅方向距離は、嵌合部52の直径より小さくなっている。嵌合溝51は、クリップ22が嵌合部52への出入りのために両出入り口面部53の間を通過する際に、弾性的に両出入り口面部53間を拡開するようになっている。
【0035】
図5において、(a)は押しボタン13の正面図、(b)は押しボタン13の左側面図である。図1、図2及び図5を参照して、押しボタン13について説明する。
【0036】
押しボタン13は、押圧壁57、脚部58及び爪59を備える。押圧壁57は、その軸方向寸法は切欠き部45(図4)の軸方向寸法に等しく、その幅方向寸法はクランプ12の頂壁41の幅寸法に等しくなっている。脚部58は、押圧壁57の軸方向一端の下面から垂下し、内面側には下端の開口側に近い位置ほど幅が増大するU字状輪郭の溝を有している。爪59は、脚部58の下端の外面側から幅方向外方へ張出している。脚部58の内面側のU字状輪郭の溝にはクリップ22(図2)が挿入される。
【0037】
押しボタン13は、両爪59を切欠き部45(図4)の範囲において切欠き部45の方から両側壁42の内面側を通過させ、係止溝48に係止される。脚部58は、その薄さのために、該溝の開口幅を弾性的に縮閉自在になっている。したがって、脚部58の下端の開口の幅は、両爪59が両側壁42の内面側を通過する際は、弾性的に縮閉され、両爪59が係止溝48に達すると、元の幅に復帰して、両爪59が両係止溝48の幅より大きく開いて、係止溝48に係止される。以降、押しボタン13が上方向へクランプ12から離脱しようとする時は、爪59が係止溝48の下面に当接して、離脱が阻止される。
【0038】
図6において、(a)はクリップ片66の正面図、(b)は(a)のVIb−VIb矢視断面図、(c)は(a)のVIc−VIc矢視断面図、(d)は(a)のVId−VId矢視断面図である。クリップ22(図2)は、2つのクリップ片66を、内周側を相互に対峙させ、対峙方向へ相互にかみ合わせたものから成る。クリップ片66は、円弧部70と、円弧部70の内周面から半径方向内方へ突出する突条69とを有している。
【0039】
円弧部70は、周方向の両側の端部において、長手方向へ凸部67と凹部68とを交互に有している。係止溝71は、円弧部70における突条69と同一の周方向位置において、クリップ片66の長手方向へ円弧部70の端から突条69の端まで形成されている。係止溝71には、筒部18の張出し壁34(図3(b))が嵌入されて、収納空間29におけるクリップ片66の周方向位置決めを行う。
【0040】
図7において、(a)はクリップ22の拡開時の平面図、(b)はクリップ22の縮閉時の平面図、(c)は(a)のVIIc−VIIc矢視断面図、(d)は(b)のVIId−VIId矢視断面図である。なお、図7において、2つのクリップ片66を区別するため、一方及び他方のクリップ片66に対してa及びbの添え字を付けている。a,bは、クリップ片66a,bの各部位にも付けている。1対のクリップ片66a,bは、凸部67aが凹部68bへ、また、凸部67bが凹部68aへ、それぞれ嵌入するように、相互に組付けられて、1つのクリップ22を構成する。
【0041】
1対のクリップ片66a,bは、内周側を相互に対峙させた対峙方向へ相互にかみ合わせられるために、対峙方向の相互の距離を増減自在になっている。1対のクリップ片66a,bは、その係止溝71へ筒部18の張出し壁34(図3(b))が嵌入されて収納空間29内に組み付けられることにより、1対のクリップ片66a,bの対峙方向は筒部18の幅方向に一致させられ、クリップ22は筒部18の幅方向へ縮閉自在になる。収納空間29への1対のクリップ片66a,bの組付け状態において、突条69a,b間の間隙の中心点は弾性チューブ21及びカテーテル20の中心点の位置となっている。これにより、1対のクリップ片66a,bが対峙方向へ縮閉するのに伴い、弾性チューブ21は筒部18の幅方向に一致するカテーテル20の半径方向へカテーテル20を挟圧する。1対のクリップ片66a,bが縮閉したときのクリップ22の横断面は円形になる。
【0042】
クリップ22が拡開状態にあるときは、図7(a)及び(c)に示すように、間隙73が一方のクリップ片66の凸部67と他方のクリップ片66の凹部68との間に存在し、両クリップ片66の対峙方向距離は増大している。これに対し、クリップ22が縮閉状態にあるときは、図7(b)及び(d)に示すように、一方のクリップ片66の凸部67の頂面は他方のクリップ片66の凹部68の底面に当接し、間隙73は喪失し、両クリップ片66の対峙方向距離は減少している。クリップ22は、クランプ12(図4)の嵌合部52に嵌合しているとき、幅方向へ縮閉状態になり、嵌合溝51から離脱しているとき、幅方向へ拡開状態になる。クリップ22の上下方向寸法は縮閉及び拡開にもかかわらず一定に保持される。
【0043】
カテーテルコネクタ10の作用を説明する。なお、クランプ12は本発明の操作部材に相当し、押しボタン13は本発明の固定解除部材に相当し、基部17は本発明の器具接続部に相当し、筒部18は本発明の筒部に相当し、弾性チューブ21は本発明の弾性筒部材に相当し、クリップ22は本発明の嵌装体に相当し、外部開放部30は本発明の外部開放範囲に相当し、出入り口面部53は本発明の嵌装体出入り端に相当し、クリップ片66は本発明の半環状部材に相当する。
【0044】
コネクタ本体11へのカテーテル20の挿入の際には、クランプ12はカテーテル20の固定解除の傾動位置(図1の実線位置。以下、適宜、「解除傾動位置」という。)にされている。
【0045】
クランプ12は、解除傾動位置では、自由端(円柱ボス33から遠い方の端)側をコネクタ本体11の自由端(円柱ボス33から遠い方の端)側から十分に離される。これにより、クリップ22は、クランプ12の嵌合溝51から離脱しており、嵌合部52からのコネクタ本体11の幅方向への縮閉を解除されている。その結果、弾性チューブ21は、クリップ22からの半径方向内方への挟圧力から解放され、弾性の復帰力により内径を十分に増大させた状態にある。
【0046】
術者は、クランプ12の解除傾動位置において、カテーテル20の基端を凸部32の通孔31から収納空間29内へ挿入する。術者は、カテーテル20の基端が、収納空間29内の弾性チューブ21の中心孔を通過して、小径部37の最小径部38側の端の段部に突き当たるまで、カテーテル20の基端部分を通孔31へ押込んでいく。
【0047】
術者は、次に、カテーテル20が通孔31から外へ抜けないように、カテーテル20を保持しつつ、クランプ12の自由端側の頂壁41の端部を筒部18の方へ押込む。クランプ12の自由端側の頂壁41の端部とは、押しボタン13に対してクランプ12の自由端側の頂壁41の部分である。クランプ12は円柱ボス33の周りに回動して、クランプ12の自由端は筒部18の方へ傾動し、やがて、嵌合溝51の出入り口面部53がクリップ22の上面部に接触する。
【0048】
術者がさらに頂壁41を押込むと、クリップ22は、円弧部70の外周面を両出入り口面部53の内側に滑り込んで、嵌合部52へ嵌入する。クリップ22は、嵌合溝51の両出入り口面部53の間を通過する際、両出入り口面部53から幅方向の挟圧力を受けて縮閉するとともに、垂下部50は、クリップ22からの所定値以上の押込み力により出入り口面部53において幅方向へ弾性的に大きく拡開し、出入り口面部53におけるクリップ22の通過を許容する。
【0049】
術者による嵌合溝51へのクリップ22の押込み力はクリップ22が嵌合部52に嵌合しだい、解除され、垂下部50は出入り口面部53における拡開を解除されて、出入り口面部53間の幅は元の寸法に戻る。クリップ22は、それが嵌合部52に嵌合した状態では、縮閉状態を維持する。
【0050】
こうして、クランプ12はカテーテル20を固定する傾動位置(図1のニ点鎖線位置。以下、適宜、「固定傾動位置」という。)となる。クランプ12の固定傾動位置では、クリップ22は、弾性チューブ21を介してカテーテル20を挟圧し、カテーテル20はカテーテルコネクタ10に固定される。また、クリップ22は、押しボタン13の脚部58の内面側に嵌入しており、押しボタン13の押圧壁57は、クランプ12の頂壁41の面に揃っており、頂壁41からの突出無しの状態になっている。
【0051】
カテーテル20は弾性チューブ21を介して半径方向へ挟圧されているとき、軸方向へ少し伸びるが、この伸びは、カテーテル20の基端を小径部37における最小径部38側の段部に押し付けるように作用するので、カテーテル20の基端におけるシール性が向上する。
【0052】
クランプ12の固定傾動位置における弾性チューブ21からのカテーテル20の挟圧力は、嵌合部52の寸法により定まるので、カテーテル20の固定力は、ばらつきを防止され、適正化される。
【0053】
クランプ12の固定傾動位置では、クランプ12の頂壁41及び側壁42は、軸方向へ筒部18の自由端を越えて外方へ張出しているとともに、頂壁41の外面は筒部18の自由端部の上面より上にあり、側壁42の外面は、筒部18の自由端部の両側面より幅方向外になっている。同様に、クランプ12の固定傾動位置では、押しボタン13の押圧壁57は側壁42から上方及び幅方向外側へ突出しない寸法及び形状になっている。
【0054】
したがって、周囲の物体が、カテーテルコネクタ10の自由端部側に当たったとしても、筒部18とクランプ12とを自由端部側において回動方向へ相互に開く外力が生じることが排除される。この結果、カテーテル20の不用意な固定解除が防止される。
【0055】
術者は、カテーテルコネクタ10へのカテーテル20の固定を解除して、カテーテルコネクタ10からカテーテル20の基端部分を引き抜くときは、クランプ12の両側壁42を把持しつつ、押しボタン13の押圧壁57を押圧して、押しボタン13をクランプ12に対して押し下げる。
【0056】
これに伴い、クリップ22は、押しボタン13の脚部58の内面により下向きの力を受け、嵌合部52から出入り口面部53の方へ移動して、嵌合溝51から離脱する。筒部18は、クリップ22と一体に円柱ボス33の回転軸線の周りにクランプ12に対して相対回転し、クランプ12は固定傾動位置から解除傾動位置へ切り替わる。これにより、クリップ22のクリップ片66は嵌合溝51からの対峙方向の縮閉を解除され、弾性チューブ21は、弾性復帰力により自由状態の径へ戻り、内面側におけるカテーテル20への固着を解除される。
【0057】
術者は、その後、カテーテル20を通孔31から引き抜き、カテーテル20をカテーテルコネクタ10から分離する。
【0058】
本発明を実施例について説明したが、本発明の用紙の範囲内で種々に変更して、実施することができる。
【0059】
例えば、クリップ22を構成するクリップ片66の構造について、図6及び図7に示す構造以外に、図8に示す種々の構造を採用することができる。図8を参照して、クリップ22の各構造例を説明する。なお、図8では、1対のクリップ片66の一方及びその部位には添え字aを付け、他方及びその部位には添え字bを付けている。また、図8の(a)〜(d)において、上側は拡開状態、下側は縮閉状態を示している。
【0060】
図8において、(a)では、クリップ片66a,bは、突条69a,bを共に有する同一構造とされ、組付け時に、内周側を向き合わされる。(b)では、クリップ片66aのみが突条69aを有し、クリップ片66bは突条を有しない。(b)の突条69aは(a)の突条69aより突出量がほぼ倍になっている。
【0061】
(c)では、クリップ片66a,bは共に突条を有しない。代わりに、円弧部70a,bの肉厚が(a)及び(b)の円弧部70a,bの肉厚より増大され、半径方向への弾性変形量を増大化されている。(d)では、クリップ片66a,bはヒンジ74により連結している。(d)のクリップ片66a,bでは凸部67,68(図6)は省略することができる。
【符号の説明】
【0062】
10・・・カテーテルコネクタ、11・・・コネクタ本体、12・・・クランプ(操作部材)、13・・・押しボタン(固定解除部材)、17・・・基部(器具接続部)、18・・・筒部(筒部)、20・・・カテーテル、21・・・弾性チューブ(弾性筒部材)、22・・・クリップ(嵌装体)、29・・・収納空間、30・・・外部開放部(外部開放範囲)、41・・・頂壁、42・・・側壁、52・・・嵌合部、53・・・出入り口面部(嵌装体出入り端)、66・・・クリップ片(半環状部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルと輸液器具とを着脱自在に接続するカテーテルコネクタであって、
軸方向一端側から挿入された前記カテーテルの一端部分を収納するとともに軸方向中間部において外部へ開放されている筒部と、該筒部の他端側に連設され前記輸液器具が接続される器具接続部とを有するコネクタ本体と、
前記筒部内に収納され前記カテーテルの前記一端部分が挿通される弾性筒部材と、
前記筒部内に収納され縮閉自在に前記弾性筒部材の外周側に嵌装される嵌装体と、
前記筒部の外部開放範囲の前記嵌装体へ向かって進退するように前記筒部の他端側に傾動自在に結合し第1傾動位置では前記筒部の前記外部開放範囲において前記嵌装体を内面側の嵌合部に受け入れて傾動面に対して直角方向へ縮閉させ第2傾動位置では前記筒部の前記外部開放範囲から離反して前記嵌装体の縮閉を解除する操作部材とを備え、
前記操作部材の傾動面に対して直角方向の寸法に関して、前記嵌合部の嵌装体出入り端は、該嵌合部内の最大寸法部よりも小さくされ、
前記操作部材の自由端側の端部は、前記第1傾動位置において前記筒部の前記一端側の端部を前記第2傾動位置からの接近側の外周範囲を覆いつつ前記筒部の前記一端側の前記端部を軸方向へ外側へ越えた位置まで延在していることを特徴とするカテーテルコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載のカテーテルコネクタにおいて、
前記操作部材には、それが第1傾動位置にあるときに、前記筒部を前記操作部材から離反させる傾動方向へ前記操作部材に対して相対変位自在の固定解除部材が組付けられていることを特徴とするカテーテルコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載のカテーテルコネクタにおいて、
前記固定解除部材は、その非操作時には、前記操作部材の前記自由端側の前記端部の外面から外方へ突出しない形状及び寸法とされていることを特徴とするカテーテルコネクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のカテーテルコネクタにおいて、
前記嵌装体は、内面側に前記弾性筒部材をその半径方向内方へ押圧する突条を有していることを特徴とするカテーテルコネクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のカテーテルコネクタにおいて、
前記嵌装体は、縮閉方向へかみ合い量を増減自在に周方向端部において相互にかみ合う1対の半環状部材から構成されることを特徴とするカテーテルコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−5865(P2013−5865A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139323(P2011−139323)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】