説明

カテーテルトンネラ

トンネラ(110,210,310)と、カテーテルによる皮下トンネル作製中にカテーテル(12)を収容するための長尺状ケース(102,202,302)とを備えるトンネラ/ケースアセンブリ(100,200,300)。トンネラは、トンネル作製後に、カテーテルの先導端を露出させて直接トンネル内で引っ張ることができるようにケースから取り外し可能であり、あるいは、カテーテルの先導端をその目的のために露出させるべくカテーテル出口側面開口(324)を備える。トンネラの鈍端を有する先導端(112,212,312)は、皮下トンネル(26)を作製するための非外傷性の形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療器具の分野に関するものであり、より詳細には、患者の脈管系にカテーテルを植え込む間に、カテーテル基端側部分を皮下固定するためにカテーテルとともに使用されるトンネラに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルアセンブリが患者の脈管系に植え込まれるときに、カテーテルの先端側部分は、切開部を介して、先端チップが望ましい場所に正確に配置されるまで脈管系に挿入されるが、基端側部分は、脈管系の外に残る。基端部は、流体の注入又は回収のために、あるいは血液透析装置への接続のために、カテーテルにアクセスできるように患者の体外に残ったままである。カテーテルアセンブリに生じる応力及び歪みによって、先端チップが適切な位置から移動してしまうことにないように、かつ感染を防止するために、特に長期使用のカテーテルの場合、長さが可変のカテーテルが皮下トンネル内に配置される。これは、トンネラ又はトロカールを用いて行うことができる。標準的なトンネラは、皮下組織を介して、カテーテルの一端に連結した後に該カテーテルを引っ張る。トンネルは、脈管系への挿入前にトンネラをカテーテル先端に取り付けることによって、あるいは先端部が静脈内に配置された後にトンネル作製用カテーテルの基端に取り付ける(逆行性トンネル作製(retrograde tunnelling) という)ことによって、作製することができる。
【0003】
一般的に、トンネラはほぼ非可撓性の円筒シャフトであり、カテーテルの静脈進入部位近傍の位置とトンネル出口との間で皮下的に進行させられてトンネルを作製するための、鈍端チップを備える。トンネラの反対側の端又は連結端は、最初にカテーテル端に取り付け可能であり、トンネル作製後に、後でカテーテル端から取り外し可能となっている。カテーテル/トンネラの公知の取付方法は、特許文献1乃至9に説明されるものを含め、多数ある。器具をカテーテル端に取り付ける他の連結方法については、特許文献10及び11に開示されており、カテーテルの基端は、確実に連結するために外側固定スリーブを利用して、返し付きロック装置に外嵌される。
【0004】
特許文献9には、トンネラの連結端に取り付け可能なアダプタが開示されており、該アダプタの開放端がカテーテル端(例えば先端部)の挿入を可能にしており、その後、複数の把持セクションがカテーテルの外面を把持するように移動されて、所定の位置に固定され、トンネル作製後に、把持セクションの固定状態が解除され、カテーテルを抜去のために解放する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,453,928号明細書
【特許文献2】米国特許第4,832,687号明細書
【特許文献3】米国特許第5,190,529号明細書
【特許文献4】米国特許第5,944,732号明細書
【特許文献5】米国特許第6,453,185号明細書
【特許文献6】米国特許第6,872,198号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2004/0176739号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0193119号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0027282号明細書
【特許文献10】米国特許第5,360,407号明細書
【特許文献11】米国特許第5,637,102号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PICC(末梢から中心静脈まで挿入可能なカテーテル)又は中心静脈へ挿入可能な特定のカテーテルのような、小径のカテーテルとともに容易に用いられるトンネラを提供することが求められている。
【0007】
また、トンネル作製中にトンネラに隣接するカテーテル端に損傷を与えることなく、トンネル作製後にカテーテルから取り外すことが可能なトンネラを提供することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
端的に説明すると、本発明は、トンネラ及び該トンネラに取り付けられた長尺状ケースを有するトンネラセンブリを提供し、トンネル作製工程中にはケース内にカテーテルが配置され、あるいはトンネル作製後であるがケースがまだトンネル内に留まっている間は、ケース内をカテーテルが通過することができ、これにより、カテーテルを機械的にトンネル作製器具に接続したり、そこから取り外したりする必要がなくなる。好ましくは、トンネラは、丸みを帯びた縁部及び角部を有して非外傷性である鈍端先導チップを有し、該チップからケースの先導端に向かって後方に延びる長尺状傾斜面を備える。トンネラは、トンネル作製後にケース先導端から除去されることが好ましく、その後、カテーテルの固定すべき部分がトンネル内の所定の位置に配置されるまでの間、カテーテルの先導端が把持されてさらに引っ張ることができるようになるまでカテーテルをケースの後続端から前方へ押し込むことができる。
【0009】
本願に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、本発明の現時点で好適な実施形態を示すものであり、上記概略的な説明及び以下の詳細な説明とともに、本発明の特徴を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】カテーテルを収容し、U字形状をなす本発明のトンネラ/ケースアセンブリの第1実施形態の斜視図。
【図2】入口及び出口を有する皮下トンネルの典型例を示した、図1のアセンブリの先導端の拡大断面図。
【図3】トンネル作製が終了し、かつカテーテルの固定されるべき部分がトンネル内に残っているがケースがトンネルから引き出された後の、図1及び図2のアセンブリの斜視図。
【図4】本発明のトンネラ/ケースアセンブリの第2実施形態の斜視図。
【図5】図4のトンネラの斜視図。
【図6】図4のトンネラの側面図。
【図7】図4のトンネラの上面図。
【図8】本発明のトンネラ/ケースアセンブリの第3実施形態の先導端の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を通して、類似する符号は類似する要素を示す。特定の用語は、本願において便宜上使用されるにすぎず、本発明を限定するものではない。「先端側」及び「基端側」という語はそれぞれ、植え込み可能なカテーテルアセンブリのカテーテルの挿入チップから見てより近い方向及びより遠い方向を指すものである。「先導端」及び「後続端」という語は、皮下トンネル内でのケース/トンネラセンブリ又はカテーテルの移動方向に対する、ケース/トンネラセンブリの端又はカテーテルの端を示すものであり、先導端はカテーテルの先端である場合もそうでない場合もある。これらの用語は、特に言及された用語とともに、これに派生する語や同様の意味を有する語を含むものである。以下に示す実施形態は、包括的なものではなく、開示される正確な形態に本発明を限定するものでもない。これらの実施形態は、本発明の原理及び応用ならびに実際の使用を最も良好に説明するように、かつ当業者が本発明を最良に実施できるように選択され、説明されているものである。
【0012】
図1乃至図3には、トンネラ/ケースアセンブリ100の第1実施形態が示されており、該アセンブリ100は、先導端及び後続端104、106を有する円筒ケース102と、先導端104においてケース102に取り付けられるトンネラ110とを備える。トンネラ110は、鈍端を有する非外傷性チップ112及び連結セクション114を備え、連結セクション114によって、例えばケースの先導端104に圧力嵌めすることにより、トンネラ110がケース102に固定される。トンネラ110は、鈍端を有する丸みを帯びたチップ112からケースの先導端に向かって後方に延びる長尺状傾斜表面116を形成し、このチップと長尺状傾斜表面との組み合わせにより、トンネラの、患者の皮下組織を分離させてトンネルを作製する能力が得られる。
【0013】
図1において、カテーテルアセンブリ10は、カテーテル12、ハブ14、一対の延長管アセンブリ16(カテーテル12のそれぞれの内腔に関連付けられる)、及びカテーテル先端18を有するものとして示されている。カテーテル12は、その長さの大半がケース102内に配置され、カテーテル先端18が、ケースの先導端104においてトンネラ110に隣接している様子が示されている。好ましくは、カテーテルアセンブリは、トンネル内部における組織の内方成長を促進する組織内方成長カフ30を備え、カテーテルの固定力を高める。カテーテルアセンブリ10は、ケース102内に配置された状態で出荷されてもよいが、トンネラセンブリ100に取り付けられている必要はない。カテーテルは、ケース基端においてクランプによりケースに固定することができ、これにより、所望される場合に、医師がトンネルを作製する前に、トンネル作製具アセンブリからカテーテルを取り外しやすくすることができる。カテーテルを固定するための患者の身体に作製される典型的な皮下トンネルは、約5〜10cmの長さを有する。典型的なカテーテルの長さは、約60cmとすることができるであろうし、トンネラ/ケースアセンブリ100の長さは約15〜20cmとすることができよう。本発明のトンネラは、例えば4〜6Fの小径カテーテルにおいて特に有用である。
【0014】
図1においては、トンネラセンブリ100は、U字形状をなすように形成されている。この形状は、全長を減らすことによって、輸送、取扱い、及び保管を容易にし、輸送中、取扱い中、保管中において、カテーテルをトンネラセンブリ内で非コイル形状に保持するのに役立つ。ケースの形成材料は、トンネル通過のためにケースに直線形態をとらせるよう医師が容易に操作できるように、十分な可撓性を有することが好ましい。
【0015】
図3は、患者20に、進入切開部22から出口切開部24まで延びる皮下トンネル26が作製された後における、カテーテル12が内部に配置されたトンネラ/ケースアセンブリ100を示している。トンネラ110は、既に完全にトンネル26を通過しており(この通過により、トンネル26が作製される)、ケース102は、トンネル26を通して実質的に引っ張られ、ひいてはカテーテル先導端18もケースとともに引っ張られる。あるいは、トンネラ/ケースアセンブリ100は、カテーテル12が内部になくても、トンネルを作製するために使用することができ、トンネル作製後、カテーテル12は、その先導端18をケース102内へ進入させることによってケース102に挿入することができ、一方で、ケースはトンネル内に留まる。カテーテル先導端18は、トンネル作製後にトンネラ110が(例えばケース端とのスナップ嵌合が解除されることにより、あるいはケース端から切断されることにより)ケース先導端104から係脱された後に、医師によって把持され得る。カテーテルアセンブリ10がトンネルを作製した後に、カテーテル12のアンカー部分28がトンネル26(長さ約5〜10cm)内の所定の位置に配置され、好ましくはアンカー部分28が従来の組織内方成長カフ30を備える。カテーテル先導端18がカテーテルの先端である場合には、カテーテルは、先導端18にて終端するような長さに切断して、(例えば、全て従来のものである、剥ぎ取り式イントロデューサシース、ダイレータ、及びガイドワイヤ(図示しない)を使用して)静脈切開術により患者の脈管系に挿入するように準備することができる。
【0016】
図4乃至図7は、本発明のトンネラ/ケースアセンブリ200の第2実施形態を示し、該アセンブリ200は、先導端204及び後続端206を有するケース202と、鈍端チップ212、連結セクション214、及び鈍端チップ212まで延びる長尺状傾斜表面216を有するトンネラ210とを備える。図5は、鈍端チップ212が丸みを帯びた縁部と、一対の丸みを帯びた角部218とを備えていることを特に示しており、これにより、本発明の全ての実施形態において好ましいものである非外傷性が得られる。トンネラ210の連結セクション214は、ケースの先導端204に螺入されることによりケース202に連結することができるように、外ねじ部220を備えることが示されている。トンネラ210は、同様に、単に螺合を解除することによりケース202の先導端から容易に取り外される。必要に応じて、連結セクションは、ねじの代わりに1つ以上の返し(図示しない)を備えてもよい。アセンブリ200のケース202は、第1実施形態のケースと同じ材料で形成することができ、トンネルを作製するために皮下組織内に押し込みやすくする、全体が湾曲した形状を有するものとして示されている。
【0017】
トンネラ/ケースアセンブリ300の第3実施形態が図8に示される。トンネラ310は、図1乃至図3の実施形態と同様に、ケース302の先導端304に圧力嵌めできるように構成された連結セクション314を備える。トンネラ310はまた、鈍端を有する丸みを帯びた非外傷性チップ312と、該チップ312からケースの先導端304に向かって後方に延びるテーパ表面316とを備える。トンネラ310には、ケース302の中空通路328まで延びる中央通路326と連通する側面開口324が形成される。側面開口324は、トンネラ/ケースアセンブリ300に対して、カテーテルの先導端14が通路326内を通って側面開口324においてトンネラ/ケースアセンブリ300の外へ脱出するまで医師がカテーテル12の後続端をケース及びトンネル内へ押し込むことができるという選択肢を付与する。これにより、先導端18は、医師によって把持されることができ、ケース及びトンネル内で直接引っ張られることができる。その後、トンネラ/ケースアセンブリをカテーテル及びトンネルから抜去し、廃棄することができる。
【0018】
本発明のトンネラは、例えばポリプロピレン又はナイロン6/ABSブレンドのような、プラスチックから成形することができる。本発明のケースは、例えばポリエチレンのようなプラスチックから押出成形することができる。ケースは、好ましくは、トンネルに所望される長さよりも長く、好ましくは10cmよりも長く、より好ましくは15cmよりも長い。ケースの長さの方が長くされていることにより、トンネル作製中にケース内でカテーテルが自留できる確実性が高まる。ケースの全長は、医師が単にケースの基端から余剰部分を切り取ることにより、トンネル作製前に短くすることができる。
【0019】
当業者であれば、本発明の広い技術思想から逸脱することなく、上述した実施形態に変更を加え得ることが理解されよう。したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内の改変をも包含するものであることが理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈管用カテーテルの皮下トンネル作製のためのトンネル作製装置であって、
先導端及び後続端を有する長尺状円筒ケースと、該ケースの先導端において該ケースに対して取り外し可能に取り付けられ、かつそこから延びるトンネラとを備え、該トンネラは、鈍端を有する非外傷性先導チップと、ケースの先導端に向かって延びる長尺状傾斜表面とを有する、トンネル作製装置。
【請求項2】
前記トンネラがケースの先導端内に延びる連結セクションを備える、請求項1に記載のトンネル作製装置。
【請求項3】
前記連結セクションが圧力嵌めによってケースの先導端内に保持される、請求項2に記載のトンネル作製装置。
【請求項4】
前記連結セクションがねじ切りされており、前記ケースの先導端に螺入されることによって該ケースの先導端内に保持される、請求項2に記載のトンネル作製装置。
【請求項5】
前記トンネラが連結セクションを通って側面開口まで延びる通路を備える、請求項2に記載のトンネル作製装置。
【請求項6】
前記トンネラ/ケースアセンブリが、概ね可撓性を有する材料からU字形状をなすように形成される、請求項1に記載のトンネル作製装置。
【請求項7】
前記トンネラ/ケースアセンブリが少なくとも10cmの長さを有する、請求項1に記載のトンネル作製装置。
【請求項8】
前記トンネラ/ケースアセンブリが少なくとも15cmの長さを有する、請求項1に記載のトンネル作製装置。
【請求項9】
カテーテルアセンブリと、該カテーテルアセンブリのカテーテルの皮下トンネル作製用のトンネル作製装置とからなるアセンブリであって、
カテーテル後続端に向かって延びるカテーテル先導端を備えたカテーテルを有するカテーテルアセンブリと、
先導端及び後続端を有する長尺状円筒ケースと、
前記ケース先導端において前記ケースに対して取り外し可能に取り付けられ、かつそこから延びるトンネラと
を備え、前記トンネラは、鈍端を有する非外傷性先導チップと、前記ケース先導端に向かって延びる長尺状傾斜表面とを有し、
前記カテーテルは、カテーテル先導端が前記トンネラに隣接し、かつカテーテル後続端が前記ケースの後続端から外方に延びるように、前記ケース内に配置され、前記ケースの内径は、前記カテーテルが前記長尺状ケース内で軽度の摩擦嵌めによって保持されることにより、前記カテーテルがトンネラによるトンネル作製中に前記ケース内に留まるように選択され、その後、前記トンネラ/ケースアセンブリ及びカテーテルはトンネル内で引っ張られ、前記カテーテル先導端において前記カテーテルから取り外し可能である、アセンブリ。
【請求項10】
前記トンネラが前記ケース先導端内へ延びる連結セクションを備える、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記連結セクションが前記ケース先導端内で圧力嵌めによって保持される、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記連結セクションがねじ切りされており、前記ケース先導端に螺入されることにより該ケース先導端内に保持される、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記トンネラが前記連結セクションを通って側面開口まで延びる通路を備える、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記トンネラ/ケースアセンブリが少なくとも10cmの長さを有する、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記トンネラ/ケースアセンブリが少なくとも15cmの長さを有する、請求項9に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−502556(P2011−502556A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518308(P2010−518308)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/070462
【国際公開番号】WO2009/015016
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(500053263)メデイカル コンポーネンツ,インコーポレーテツド (36)
【出願人】(508348772)イノベイティブ・メディカル・ディバイシーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (2)
【氏名又は名称原語表記】Innovative Medical Devices, LLC
【Fターム(参考)】