説明

カテーテル型の光音響プローブおよびそれを備えた光音響撮像装置

【課題】光音響イメージング用のカテーテル装置や内視鏡において、カテーテル装置や内視鏡の先端部に複雑な構造の光学系を設けることなく、測定光の照射範囲の制御を可能とする。
【解決手段】カテーテル型の光音響プローブ1において、カテーテル4と、カテーテル4に挿通された、コア径の異なる複数のコア50および51を有するマルチコア光ファイバ5と、マルチコア光ファイバ5の入射端面5a側に設けられた第1の光学系41、42および43と、第1の光学系によって導光されたレーザ光Lが、上記入射端面5aに入射する際のレーザ光Lのビーム径が複数のコアのうち所望の1つのコアのコア径と略一致する状態で、その1つのコアの上記入射端面5aに入射するように、第1の光学系の構成および/または上記入射端面5aの位置を制御するビーム径制御手段45とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響イメージングに使用されるカテーテル型の光音響プローブおよびそれを備えた光音響撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検体の内部の断層画像を取得する方法としては、超音波が被検体内に照射されることにより被検体内で反射した超音波を検出して超音波画像を生成し、被検体内の形態的な断層画像を得る超音波イメージングが知られている。一方、被検体の検査においては形態的な断層画像だけでなく機能的な断層画像を表示する装置の開発も近年進められている。そして、このような装置の一つに光音響分析法を利用した装置がある。この光音響分析法は、所定の波長を有する光(例えば、可視光、近赤外光又は中間赤外光)を被検体に照射し、被検体内の特定物質がこの光のエネルギーを吸収した結果生じる弾性波である光音響波を検出して、その特定物質の濃度を定量的に計測するものである。被検体内の特定物質とは、例えば血液中に含まれるグルコースやヘモグロビンなどである。このように光音響波を検出しその検出信号に基づいて光音響画像を生成する技術は、光音響イメージング(PAI:Photoacoustic Imaging)或いは光音響トモグラフィーと呼ばれる。
【0003】
近年では、例えば特許文献1のようなカテーテル装置、または内視鏡に光音響イメージングを応用する試みもなされ始めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−178676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光音響イメージングをカテーテル装置や内視鏡に応用する場合には、その先端部の小型化に伴う空間的な制約によって、測定光を観察対象に照射するための先端光学系の構造や配置場所が制限されてしまうという問題がある。つまり、カテーテル装置や内視鏡の先端部に複雑な構造の光学系を設けることが困難となる。
【0006】
一方、カテーテル装置や内視鏡では、目的に応じて測定光の照射範囲を広げたり狭くしたりしたいという要望もある。
【0007】
したがって、カテーテル装置や内視鏡の先端部に複雑な構造の光学系を設けることなく、上記のような要望を満足させられる解決策が望まれている。
【0008】
本発明は上記要望に応えてなされたものであり、光音響イメージング用のカテーテル装置や内視鏡において、カテーテル装置や内視鏡の先端部に複雑な構造の光学系を設けることなく、測定光の照射範囲の制御を可能とするカテーテル型の光音響プローブおよびそれを備えた光音響撮像装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るカテーテル型の光音響プローブは、
被検体内に測定光を照射し、この測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換し、この電気信号に基づいて行われる光音響測定に用いられるカテーテル型の光音響プローブにおいて、
光透過性を有する先端部を備えるカテーテルと、
先端部にまでレーザ光を導光するようにカテーテルに挿通された、コア径の異なる複数のコアを有するマルチコア光ファイバと、
マルチコア光ファイバの入射端面側に設けられた第1の光学系であって、光源側から入射したレーザ光を上記入射端面に導光する第1の光学系と、
マルチコア光ファイバの出射端面側に設けられた第2の光学系であって、上記出射端面から出射したレーザ光を偏向して上記測定光とする第2の光学系と、
第1の光学系によって導光されたレーザ光が、上記入射端面に入射する際のレーザ光のビーム径が複数のコアのうち所望の1つのコアのコア径と略一致する状態で、その1つのコアの上記入射端面に入射するように、第1の光学系の構成および/または上記入射端面の位置を制御するビーム径制御手段と、
先端部に設けられた、光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する電気音響変換手段とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る光音響プローブは、マルチコア光ファイバが、第1のコアおよびこの第1のコアの周囲を順次被覆する第1から第n番目のクラッドを備え、第1から第n番目のクラッドのそれぞれの屈折率が、第1のコアの屈折率よりも小さくかつ段階的に順次小さくなり、第1のコアから第n−1番目のクラッドまでが第nのコアとして機能するものであり、
ビーム径制御手段が、測定光の照射範囲を広げる場合にはビーム径が小さくなるように、測定光の照射範囲を狭める場合にはビーム径が大きくなるように制御するものであることが好ましい。
【0011】
また本発明に係る光音響プローブは、ビーム径制御手段を、測定光の照射範囲を広げる場合に、第1の光学系によって導光されたレーザ光が第1のコアにのみ入射するように制御するものとすることができる。
【0012】
また本発明に係る光音響プローブは、第1の光学系が、円錐レンズを含むものであり、リング形状に成形されたレーザ光を上記入射端面に導光するものであることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明に係る光音響プローブは、ビーム径制御手段を、測定光の照射範囲を狭める場合に、リング形状に成形されたレーザ光が第1から第n−1番目のクラッドのうち1以上のクラッドの上記入射端面にのみ入射するように制御するものとすることができる。
【0014】
このビーム径制御手段は、測定光の照射範囲を狭める場合に、リング形状に成形されたレーザ光が第1から第n−1番目のクラッドのうち1のクラッドの上記入射端面にのみ入射するように制御するものとすることができる。
【0015】
また、このビーム径制御手段は、測定光の照射範囲を狭める場合に、リング形状に成形されたレーザ光が第n−1番目のクラッドの上記入射端面にのみ入射するように制御するものとすることができる。
【0016】
また、前記マルチコア光ファイバは、上記nが2であるダブルコア光ファイバとすることができる。
【0017】
そして、このマルチコア光ファイバが第1のコアおよびこの第1のコアの周囲を順次被覆する第1から第n番目のクラッドを備える場合において、
第1の光学系を球面収差を生じるレンズを含むものとし、
ビーム径制御手段を、測定光の照射範囲を狭める場合に、所望のパターン形状が得られるデフォーカス面が上記入射端面と一致するように制御するものとすることができる。
【0018】
或いは、本発明に係る光音響プローブは、複数のコアが、それぞれ異なる光軸を有するものであり、ビーム径制御手段が、測定光の照射範囲を広げる場合には複数のコアのうちコア径の小さいものに入射するように、測定光の照射範囲を狭める場合には複数のコアのうちコア径の大きいものに入射するように制御するものとすることもできる。
【0019】
本発明に係る光音響撮像装置は、
被検体内に測定光を照射し、この測定光の照射により被検体内で発生した光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換し、この電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置において、
光透過性を有する先端部を備えるカテーテルと、
先端部にまでレーザ光を導光するようにカテーテルに挿通されたマルチコア光ファイバと、
マルチコア光ファイバの入射端面側に設けられた第1の光学系であって、光源側から入射したレーザ光を上記入射端面に導光する第1の光学系と、
マルチコア光ファイバの出射端面側に設けられた第2の光学系であって、上記出射端面から出射したレーザ光を偏向して測定光とする第2の光学系と、
第1の光学系によって導光されたレーザ光が、上記入射端面に入射する際のレーザ光のビーム径が複数のコアのうち所望の1つのコアのコア径と略一致する状態で、その1つのコアの上記入射端面に入射するように、第1の光学系の構成および/または上記入射端面の位置を制御するビーム径制御手段と、
先端部に設けられた、光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する電気音響変換手段と、
電気信号に基づいて光音響画像を生成する画像生成手段とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
そして、本発明に係る光音響撮像装置は、前記マルチコア光ファイバが、第1のコアおよびこの第1のコアの周囲を順次被覆する第1から第n番目のクラッドを備え、第1から第n番目のクラッドのそれぞれの屈折率が、第1のコアの屈折率よりも小さくかつ段階的に順次小さくなるものであり、第1のコアから第n−1番目のクラッドまでが第n番目のコアとして機能するものであり、
ビーム径制御手段が、測定光の照射範囲を広げる場合にはビーム径が小さくなるように、測定光の照射範囲を狭める場合にはビーム径が大きくなるように制御するものであることが好ましい。
【0021】
或いは、本発明に係る光音響撮像装置は、複数のコアが、それぞれ異なる光軸を有するものであり、ビーム径制御手段が、測定光の照射範囲を広げる場合には複数のコアのうちコア径の小さいものに入射するように、測定光の照射範囲を狭める場合には複数のコアのうちコア径の大きいものに入射するように制御するものとすることもできる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るカテーテル型の光音響プローブおよび光音響撮像装置は、先端部にまでレーザ光を導光するようにカテーテルに挿通された、コア径の異なる複数のコアを有するマルチコア光ファイバと、マルチコア光ファイバの入射端面側に設けられた第1の光学系であって、光源側から入射したレーザ光を上記入射端面に導光する第1の光学系と、マルチコア光ファイバの出射端面側に設けられた第2の光学系であって、上記出射端面から出射したレーザ光を偏向して上記測定光とする第2の光学系と、第1の光学系によって導光されたレーザ光が、上記入射端面に入射する際のレーザ光のビーム径が複数のコアのうち所望の1つのコアのコア径と略一致する状態で、その1つのコアの上記入射端面に入射するように、第1の光学系の構成および/または上記入射端面の位置を制御するビーム径制御手段とを備えることを特徴とする。これにより、マルチコア光ファイバの入射端面へレーザ光が入射するコアのコア径を、目的に応じて入射端面側の光学系の構成および/または上記入射端面の位置のみに基づいて変更することができる。一般に、光ファイバの出射端面から出射したレーザ光の出射角度は、実際にレーザ光が出射した出射端面の面積と反比例の関係を有する。この結果、光音響イメージング用のカテーテル装置や内視鏡において、カテーテル装置や内視鏡の先端部に複雑な構造の光学系を設けることなく、測定光の照射範囲の制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態の光音響プローブの構成を示す概略断面図である。
【図2】本実施形態の光音響撮像装置の構成を示す概略構成図である。
【図3】ダブルコア光ファイバの光軸に垂直な断面における構造と有効屈折率の関係を示す概略断面図である。
【図4A】レーザ光をリング形状に成形する光学系の構成およびビーム径制御手段の動作機構を示す概略断面図である。
【図4B】レーザ光をリング形状に成形する光学系の構成およびビーム径制御手段の動作機構を示す概略断面図である。
【図5A】第1のコアから出射するレーザ光の出射角度を示す概略断面図である。
【図5B】第2のコアから出射するレーザ光の出射角度を示す概略断面図である。
【図6】レーザ光の出射時における光音響プローブの先端部の構造を示す概略断面図である。
【図7】レーザ光をリング形状に成形する光学系の他の構成を示す概略断面図である。
【図8】ダブルコア光ファイバの他の構成を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明するが、本発明はこれに限られるものではない。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。
【0025】
図1は、本実施形態の光音響プローブの構成を示す概略断面図である。また図2は、本実施形態の光音響撮像装置の構成を示す概略断面図である。また図3は、ダブルコア光ファイバの光軸に垂直な断面における構造と有効屈折率の関係を示す概略断面図である。
【0026】
本実施形態の光音響プローブ1は、図1に示されるように、光結合部2および挿入部3から構成される。
【0027】
より具体的には、本実施形態の光音響プローブ1は、図1から図3に示されるように、光透過性を有する先端部を備えるカテーテル4と、先端部にまでレーザ光Lを導光するようにカテーテル4に挿通された、コア径の異なる複数のコアを有するダブルコア光ファイバ5と(図3)、ダブルコア光ファイバ5の入射端面5a側に設けられた第1の光学系41、42および43であって、光源13側から入射したレーザ光Lを上記入射端面5aに導光する第1の光学系41、42および43と、ダブルコア光ファイバの出射端面5b側に設けられた第2の光学系6であって、上記出射端面5bから出射したレーザ光Lを観察部位に向けて偏向する第2の光学系6と、第1の光学系41、42および43によって導光されたレーザ光Lが、上記入射端面5aに入射する際のレーザ光Lのビーム径が複数のコアのうち所望の1つのコアのコア径と略一致する状態で、その1つのコアの上記入射端面5aに入射するように、第1の光学系41、42および43の構成および/または上記入射端面5aの位置を制御するビーム径制御手段45と、先端部に設けられた、光音響波を検出してこの光音響波を電気信号に変換する超音波探触子7とを備えるものである。
【0028】
光結合部2は、光源から出力されたレーザ光を挿入部3のダブルコア光ファイバの入射端面に導光するものである。本実施形態では、光結合部2は、円錐レンズ41および42、集光レンズ43並びにビーム径制御手段45を含んでいる。円錐レンズ41および42、集光レンズ43が、本発明における第1の光学系に相当する。
【0029】
第1の光学系41、42および43は、光源から出力されたレーザ光をリング形状に成形するものである。より具体的には、光源から出力されたレーザ光は外部の光ファイバ40を伝搬し、その後円錐レンズ41に入射した後円錐レンズ42に入射する。円錐レンズ41と円錐レンズ42は、頂点が対向するように配置されている。これにより、レーザ光Lは、円錐レンズ41に入射することによりリング形状に成形され、リング形状のまま拡散するレーザ光Lは円錐レンズ42により平行光化される(図4Aおよび図4B)。そして、平行光化されたレーザ光Lは、集光レンズ43により集光される(図4Aおよび図4B)。
【0030】
ビーム径制御手段45は、第1の光学系41、42および43によって導光されたレーザ光Lが、上記入射端面5aに入射する際のレーザ光Lのビーム径が複数のコアのうち所望の1つのコアのコア径と略一致する状態で、その1つのコアの上記入射端面5aに入射するように、第1の光学系41、42および43の構成および/または上記入射端面5aの位置を制御するものである。本明細書において、ビーム径が「所望の1つのコアのコア径と略一致する状態」とは、ビーム径が、所望の1つのコアのコア径以下であり、かつ、当該所望の1つのコアの次に小さいコアを有するコアのコア径よりも大きいことを意味する。本実施形態では、ビーム径制御手段45は、集光レンズ43によって集光されたレーザ光Lの焦点の位置を調整するため、集光レンズ43の位置を光軸方向に沿って変化させて第1の光学系の構成を制御している。これにより、レーザ光Lがダブルコア光ファイバ5の入射端面5aに入射する際のビーム径が制御される。
【0031】
挿入部3は、例えば被検体の血管内に挿入され、光音響測定を行う部分である。本実施形態では、挿入部3は、カテーテル4、ダブルコア光ファイバ5、第2の光学系6および電気音響変換手段7を含んでいる。
【0032】
カテーテル4は、軸方向の内孔を有する細長い管状構造を有する。カテーテル4の内孔には、ダブルコア光ファイバ5、超音波探触子7、第2の光学系6およびその他配線等が収納される。カテーテル4は、柔軟すなわち屈曲可能な任意の適切な材料から作製することができる。通常、カテーテルの外壁には、制御ハンドルが回転する際のカテーテル4の剛性を高めるために、ステンレス鋼等からなる編み込みメッシュが埋め込まれている。カテーテル4の外径は、特に限定されないが、好ましくは3mm以下、より好ましくは1mmである。また、カテーテル4の厚さも、特に限定されず、ダブルコア光ファイバ等の要素が収納できる程度に十分に薄いことが好ましい。
【0033】
ダブルコア光ファイバ5は、レーザ光Lをカテーテル4の先端部まで導光するものである。ダブルコア光ファイバ5は、図3に示されるように、第1のコア50およびこの第1のコア50の周囲を被覆する第1のクラッド51、この第1のクラッド51の周囲を被覆する第2のクラッド52およびこの第2のクラッド52の周囲を被覆する被覆部材53とから構成されている。また、第1から第2番目のクラッドのそれぞれの屈折率は、第1のコアの屈折率よりも小さくかつ段階的に順次小さくなるように設計されている。つまり、図3に示すように、第1のコア50の屈折率nよりも第1のクラッド51の屈折率nが小さく、第1のクラッド51の屈折率nよりも第2のクラッド52の屈折率nが小さくなっている。このような構成の結果、本実施形態では、第1のコアおよび第1番目のクラッドが第2のコアとして機能する。第1のコアは、シングルモード用に細くてもよいし、マルチモード用に太くてもよい。ダブルコア光ファイバ5の構成材料は、特に限定されない。しかしながら、第1のコアは石英から構成されることが好ましく、クラッド51および52は石英系ガラスから構成されることが好ましく、被覆部材53は樹脂から構成されることが好ましい。ダブルコア光ファイバ5の太さは、上記カテーテル4に挿通可能な程度に細いことが必要である。
【0034】
第2の光学系6は、ダブルコア光ファイバ5の出射端面から出射したレーザ光Lを被検体の観察部位に向けて偏向するものである。
【0035】
超音波探触子7は、被検体に向けて超音波を照射し、被検体内を伝搬する音響波を検出するものである。すなわち、超音波探触子7は、被検体に対する超音波の照射(送信)、および被検体から反射して戻って来るその超音波の反射波の検出(受信)を行う。さらに超音波探触子7は、被検体内の観察対象物がレーザ光を吸収することにより被検体内に発生した光音響波の検出も行う。なお本明細書において、「音響波」とは超音波および光音響波を含む意味である。ここで、「超音波」とは電気音響変換部の振動により被検体内に発生した弾性波およびその反射波を意味し、「光音響波」とは測定光の照射による光音響効果により被検体内に発生した弾性波を意味する。そのために超音波探触子7は、例えば一次元または二次元に配列された複数の超音波振動子から構成される振動子アレイを有する。この超音波振動子が本発明における電気音響変換手段に相当する。超音波振動子11は、例えば、圧電セラミクス、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような高分子フィルムから構成される圧電素子である。超音波振動子11は、音響波を受信した場合にその受信信号を電気信号に変換する機能を有している。この電気信号は後述する受信回路21に出力される。この超音波探触子7は、セクタ走査対応、リニア走査対応、コンベックス走査対応等の中から診断部位に応じて選択される。
【0036】
超音波探触子7は、音響波を効率よく検出するために音響整合層を振動子アレイの表面に備えてもよい。一般に圧電素子材料と生体では音響インピーダンスが大きく異なるため、圧電素子材料と生体が直接接した場合には、界面での反射が大きくなり音響波を効率よく検出することができない。このため、圧電素子材料と生体の間に中間的な音響インピーダンスを有する音響整合層が配置されることにより、音響波を効率よく検出することができる。音響整合層を構成する材料の例としては、エポキシ樹脂や石英ガラスなどが挙げられる。また同様の理由により、カテーテル内を音響整合液で満たすことも好ましい。音響整合液を構成する材料の例としては、水などが挙げられる。
【0037】
以下、本実施形態の光音響プローブ1の作用効果を説明する。
【0038】
図4Aは、レーザ光をリング形状に成形する光学系の構成およびビーム径制御手段の動作機構を示す概略断面図である。図4Bは、レーザ光をリング形状に成形する光学系の構成およびビーム径制御手段の動作機構を示す概略断面図である。また、図5Aは、第1のコアから出射するレーザ光の出射角度を示す概略断面図である。図5Bは、第2のコアから出射するレーザ光の出射角度を示す概略断面図である。
【0039】
本実施形態の光音響プローブ1では、ビーム径制御手段45が、集光レンズ43の位置を光軸方向に沿って変化させることにより、ダブルコア光ファイバ5の出射端面5bから出射したレーザ光Lの出射角度が制御される。より具体的には、ビーム径制御手段45が、集光レンズ43の位置を光軸方向に沿って変化させると、ダブルコア光ファイバ5の入射端面5aに入射する際のレーザ光Lのビーム径が光軸を中心として変化する。これにより、レーザ光Lが第1のコア50のみに入射する場合と第2のコア(第1のコア50および第1のクラッド51)に入射する場合とで切り換えることができる。そして、レーザ光が第1のコア50のみに入射した場合(図4A)には、そのレーザ光Lは第1のコア50のみを伝搬し、ダブルコア光ファイバ5の出射端面5bのうち第1のコア50の部分のみから出射することになる(図5A)。一方、レーザ光Lが第2のコア50および51に入射した場合(図4B)には、そのレーザ光Lは第2のコア50および51を伝搬し、ダブルコア光ファイバ5の出射端面5bのうち第2のコア50および51の部分から出射することになる(図5B)。一般に、光ファイバの出射端面から出射したレーザ光の出射角度は、実際にレーザ光が出射した出射端面の面積と反比例の関係を有する(エタンデュの保存則)。したがって、レーザ光Lが第1のコア50のみに入射した場合におけるレーザ光Lwの出射角度θ1は、レーザ光Lが第2のコア50および51に入射した場合におけるレーザ光Lnの出射角度θ2に比べて大きい。この結果、図6に示されるように、光音響イメージング用のカテーテル装置や内視鏡において、カテーテル装置や内視鏡の先端部に複雑な構造の光学系を設けることなく、レーザ光の出射時における開口数(NA)を切り換えることが可能となり、測定光の照射範囲の制御が可能となる。
【0040】
さらに、上記では、出射角度を小さくする際にレーザ光Lが第2のコア50および51に入射した場合を想定して説明を行った。しかしながら、この場合、第1のコア50の部分に入射したレーザ光は結局第1のコア50のみを伝搬することになる。したがって、厳密には、レーザ光Lのすべてについて出射角度を小さくするには至っていない。そこで、レーザ光Lをリング形状に成形し、特に、第2のコアのうち第1のコアを除いた部分、すなわち第1のクラッドにのみレーザ光が入射するように、ビーム径制御手段45を作動させた場合には、効率よく測定光の照射範囲の制御することが可能となる(図4B)。
【0041】
なお、上記の実施形態では、レーザ光Lを導光する光ファイバとしてダブルコア光ファイバを例にして説明したが、本発明はこれに限られない。すなわち、本発明ではより一般的に、第1のコアおよびこの第1のコアの周囲を順次被覆する第1から第n番目のクラッドを備え、第1から第n番目のクラッドのそれぞれの屈折率が、第1のコアの屈折率よりも小さくかつ段階的に順次小さくなり、第1のコアから第n−1番目のクラッドまでが第nのコアとして機能するマルチコア光ファイバを適用することができる。本明細書において、「第1のコアの周囲を順次被覆する」とは、第1から第n番目のクラッドに関して、第1のコアの周囲を第1のクラッドが被覆し、第1のクラッドの周囲を第2のクラッドが被覆するというように、nが2以上において第n−1のクラッドの周囲を第nのクラッドが被覆することを意味する。また、本明細書において、「第1のコアの屈折率よりも小さくかつ段階的に順次小さくなり」とは、第1のコアおよび第1から第n番目のクラッドに関して、マルチコア光ファイバの外周に行くにつれて段階的に屈折率が小さくなることを意味する。さらに、本明細書において、「第1のコアから第n−1番目のクラッドまでが第nのコアとして機能する」とは、例えば、n=4の場合において、第1のコアおよび第1のクラッドが第2のコアとして機能し、第1のコア、第1のクラッドおよび第2のクラッドが第3のコアとして機能し、第1のコア、第1のクラッド、第2のクラッドおよび第3のクラッドが第4のコアとして機能することにより、当該マルチコア光ファイバには4つのコアが存在することを意味する。n=4以外の場合についても同様である。
【0042】
上記のようなマルチコア光ファイバを用いた場合には、ビーム径制御手段は、測定光の照射範囲を広げる場合にはビーム径が小さくなるように、測定光の照射範囲を狭める場合にはビーム径が大きくなるように、光軸を中心に制御するものであることが好ましい。例えば、集光レンズの位置を光軸に沿って移動させるだけで、レーザ光のビーム径を制御することができるためである。そして、マルチコア光ファイバを用いた場合には、ビーム径制御手段は、測定光の照射範囲を狭める場合に、リング形状に成形されたレーザ光が第1から第n−1番目のクラッドのうち1以上のクラッドの上記入射端面にのみ入射するように制御するものとすることができる。少なくとも第1のコアにレーザ光を入射させなければ、測定光の照射範囲を制御するという本発明の課題を解決することが可能である。さらに、マルチコア光ファイバを用いた場合には、ビーム径制御手段は、測定光の照射範囲を狭める場合に、リング形状に成形されたレーザ光が第1から第n−1番目のクラッドのうち1のクラッドの上記入射端面にのみ入射するように制御するものとすることができる。このようにすることで、測定光の照射範囲の制御を段階的に実施することが可能となる。さらに、マルチコア光ファイバを用いた場合には、ビーム径制御手段は、測定光の照射範囲を狭める場合に、リング形状に成形されたレーザ光が第n−1番目のクラッドの上記入射端面にのみ入射するように制御するものとすることができる。この場合、測定光の照射範囲を最も狭くすることが可能となる。
【0043】
また、上記の実施形態では、ビーム径制御手段45が集光レンズ43の位置を制御する場合について説明したが、本発明はこれに限られない。つまり、ビーム径制御手段45は、入射端面の位置を制御してもよい。
【0044】
また、上記の実施形態では、レーザ光Lをリング形状に成形する方法として円錐レンズを用いた場合について説明したが、本発明はこれに限られない。この他には、例えば図7に示されるように、第1の光学系は、球面収差を生じるレンズ44を含むものであり、ビーム径制御手段45は、測定光の照射範囲を狭める場合に、所望のパターン形状が得られるデフォーカス面(焦点面Sfに平行でかつ焦点面Sfからずれた位置にある面)が上記入射端面5aと一致するように制御するものとすることができる。球面収差によっても、リング形状のレーザ光を生成するこが可能だからである。
【0045】
また、上記の実施形態では、複数のコアの中心が同軸である場合について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば図8に示されるように、複数のコア55および56が、それぞれ異なる光軸を有するものであり、ビーム径制御手段45が、測定光の照射範囲を広げる場合には複数のコアのうちコア径の小さいコア55に入射するように、測定光の照射範囲を狭める場合には複数のコアのうちコア径の大きいコア56に入射するように制御するものとすることもできる。つまり、この場合、マルチコア光ファイバ54は、それぞれ異なる光軸を有する複数のコア55および56と、これらのコアを包含するクラッド57と、クラッド57の周囲を被覆する被覆部材58とから構成される。
【0046】
次に本実施形態の光音響撮像装置10について詳細に説明する。本実施形態の光音響撮像装置10は、上記光音響プローブ1、超音波ユニット12、およびレーザ光源ユニット13を備えている。なおこの光音響撮像装置10は、超音波画像と光音響画像との双方を生成可能に構成されている。
【0047】
光音響プローブ1については、上記の実施形態におけるプローブである。したがって、詳細な説明は省略する。光音響プローブ1は、例えば血管に挿入され血管壁の光音響イメージングに使用される。光音響プローブ1を用いることにより、例えば、光音響プローブ1を引きながら測定した場合には二次元画像を生成することができる。この場合、測定範囲の広さに応じて測定光の照射範囲が制御される。また、図6に示されるように、光音響プローブ1を引きながらR方向に回転させた場合には、三次元画像を生成することができる。この場合、三次元画像を高速で取得したいのか或いは高精細に取得したいのかに応じて測定光の照射範囲が制御される。三次元画像を高速で取得したい場合には、光音響プローブ1の走査を速く行うため測定光の照射範囲は広いことが好ましく、三次元画像を高精細に取得したい場合には、S/N比の高い信号を検出するため測定光の照射範囲は絞ることが好ましいためである。なお、図6では、効率よく超音波探触子7で音響波を検出できるように、音響整合液8が注入されている。
【0048】
レーザユニット13は、被検体に照射すべきレーザ光を測定光として出射する。レーザユニット13は、例えば所定の波長の光を発生する1以上の光源を有する。光源として、特定の波長成分又はその成分を含む単色光を発生する半導体レーザ(LD)、固体レーザ、ガスレーザ等の発光素子を用いることができる。例えば本実施形態においてレーザユニット13は、励起光源であるフラッシュランプ35とレーザ発振を制御するQスイッチ36とを含むQスイッチパルスレーザ光源である。レーザユニット13は、トリガ制御回路32がフラッシュランプトリガ信号を出力すると、フラッシュランプ35を点灯し、Qスイッチパルスレーザを励起する。
【0049】
レーザユニット13は、レーザ光として1〜100nsecのパルス幅を有するパルス光を出力するものであることが好ましい。レーザ光の波長は、計測の対象となる被検体内の物質の光吸収特性によって適宜決定される。生体内のヘモグロビンは、その状態(酸化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン、メトヘモグロビン、炭酸ガスヘモグロビン、等)により光学的な吸収係数が異なる。たとえば計測対象が生体内のヘモグロビンである場合(つまり、生体内部の血管を撮像する場合)には、生体の光透過性が良く、かつ各種ヘモグロビンが光の吸収ピークを持つ600〜1000nm程度とすることが好ましい。さらに、被写体の深部まで届くという観点からも、上記レーザの波長は600〜1000nmであることが好ましい。そして、上記レーザ光の出力は、レーザ光と光音響波の伝搬ロス、光音響変換の効率および現状の検出器の検出感度等の観点から、10μJ/cm〜数10mJ/cmであることが好ましい。さらに、パルス光出力の繰り返しは、画像構築速度の観点から、10Hz以上であることが好ましい。また、レーザ光は上記パルス光が複数並んだパルス列とすることもできる。レーザ光源ユニット13から出力されたレーザ光は、例えば本実施形態の光音響プローブ1を用いて超音波探触子7の近傍まで導光され、超音波探触子7の近傍から被検体に照射される。
【0050】
超音波ユニット12は、本発明における画像生成手段に相当する。より具体的には超音波ユニット12は、受信回路21、AD変換手段22、受信メモリ23、データ分離手段24、光音響画像再構成手段25a、光音響画像再構成手段25aからの信号を受信する検波・対数変換手段26a、光音響画像を構築する光音響画像構築手段27a、超音波画像再構成手段25b、超音波画像再構成手段25bからの信号を受信する検波・対数変換手段26b、超音波画像を構築する超音波画像構築手段27b、画像合成手段28、トリガ制御回路32、送信制御回路33および制御手段34を有している。制御手段34は、超音波ユニット12内の各部を制御する。
【0051】
受信回路21は、超音波探触子7から出力された音響波の電気信号を受信する。AD変換手段22はサンプリング手段であり、受信回路21が受信した電気信号を例えばクロック周波数40MHzのADクロック信号に同期してサンプリングしてデジタル信号に変換する。AD変換手段22は、例えば外部から入力されるADクロック信号に同期して、所定のサンプリング周期で上記電気信号をサンプリングする。
【0052】
AD変換手段22は、サンプリングしたデジタル信号(サンプリングデータ)を受信メモリ23に格納する。受信メモリ23に格納されたサンプリングデータは、光音響波に関するデータ(光音響データ)、超音波に関するデータ(超音波データ)またはこれらの混合データである。
【0053】
データ分離手段24は、受信メモリ23に格納されたサンプリングデータを光音響データと超音波データとに分離する。サンプリングデータを分離する方法は特に限定されない。例えば、超音波の照射とレーザ光の照射とを時間的にずらして実施した場合には、サンプリングデータをある時刻で分けることによりサンプリングデータを光音響データと超音波データとに分離することができる。また例えば、光音響データおよび超音波データそれぞれに関する周波数や遅延量の違いを利用してもサンプリングデータを光音響データと超音波データとに分離することができる。データ分離手段24は、分離された光音響データを光音響画像再構成手段25aに入力し、超音波データを超音波画像再構成手段25bに出力する。
【0054】
光音響画像再構成手段25aは、例えば超音波探触子7の64個の超音波振動子の各出力信号から得られた上記光音響データを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。なお、この光音響画像再構成手段25aは、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行うものでもよい。あるいは光音響画像再構成手段25aは、ハフ変換法又はフーリエ変換法を用いて再構成を行うものでもよい。光音響画像再構成手段25aは、上記のようにして加算整合された光音響データを検波・対数変換手段26aに出力する。
【0055】
検波・対数変換手段26aは、光音響画像再構成手段25aから出力された光音響データの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。そして、検波・対数変換手段26aは、上記のようにして信号処理した光音響データを光音響画像構築手段27aに出力する。
【0056】
光音響画像構築手段27aは、対数変換が施された各ラインの光音響データに基づいて、断層画像(光音響画像)を構築する。光音響画像構築手段27aは、例えば光音響データの時間軸の位置を、断層画像における深さを表す変位軸の位置に変換して光音響画像を構築する。
【0057】
一方、超音波画像再構成手段25bは、例えば超音波探触子7の64個の超音波振動子の各出力信号から得られた上記超音波データを、超音波振動子の位置に応じた遅延時間で加算し、1ライン分のデータを生成する(遅延加算法)。なお、この超音波画像再構成手段25bは、遅延加算法に代えて、CBP法(Circular Back Projection)により再構成を行うものでもよい。あるいは超音波画像再構成手段25bは、ハフ変換法又はフーリエ変換法を用いて再構成を行うものでもよい。超音波画像再構成手段25bは、上記のようにして加算整合された超音波データを検波・対数変換手段26bに出力する。
【0058】
検波・対数変換手段26bは、超音波画像再構成手段25bから出力された超音波データの包絡線を生成し、次いでその包絡線を対数変換してダイナミックレンジを広げる。そして、検波・対数変換手段26bは、上記のようにして信号処理した超音波データを超音波画像構築手段27bに出力する。
【0059】
超音波画像構築手段27bは、対数変換が施された各ラインの超音波データに基づいて、断層画像(超音波画像)を構築する。超音波画像構築手段27bは、例えば超音波データの時間軸の位置を、断層画像における深さを表す変位軸の位置に変換して超音波画像を構築する。
【0060】
トリガ制御回路32は、レーザ光源ユニット13にフラッシュランプトリガ信号及びQスイッチトリガ信号を出力し、レーザ光源ユニット13からレーザ光を出射させる。また、トリガ制御回路32は、送信制御回路33に超音波送信トリガ信号を出力し、プローブ11から超音波を出力させる。更に、トリガ制御回路32は、レーザ光の照射又は超音波送信と同期してAD変換手段22に対してADトリガ信号を出力し、AD変換手段22におけるサンプリングを開始させる。
【0061】
トリガ制御回路32は、レーザ光源ユニット13に対してレーザ光の出力を指示するフラッシュランプトリガ信号を出力する。これによりレーザ光源ユニット13では、フラッシュランプトリガ信号に応答してフラッシュランプ35が点灯し、レーザ励起が開始される。その後、トリガ制御回路32は、所定のタイミングでQスイッチトリガ信号を出力する。これによりレーザ光源ユニット13では、Qスイッチレーザ36のQスイッチがQスイッチトリガ信号に応答してON状態となり、レーザ光が出力されて、被検体にレーザ光が照射される。フラッシュランプ35の点灯からQスイッチレーザ36が十分な励起状態となるまでに要する時間は、Qスイッチレーザ36の特性などから見積もることができる。トリガ制御回路32からQスイッチを制御するのに代えて、レーザ光源ユニット13内において、Qスイッチレーザ36を十分に励起させた後にQスイッチをON状態にしてもよい。その場合は、QスイッチをON状態にした旨を示す信号を超音波ユニット12側に通知してもよい。
【0062】
またトリガ制御回路32は、超音波送信を指示する超音波トリガ信号を送信制御回路33に出力する。送信制御回路33は、上記超音波トリガ信号を受けると、超音波探触子7から超音波を送信させる。トリガ制御回路32は、先にフラッシュランプトリガ信号を出力し、その後超音波トリガ信号を出力する。つまりトリガ制御回路32は、フラッシュランプトリガ信号の出力に後続して、超音波トリガ信号を出力する。フラッシュランプトリガ信号が出力されることで被検体に対するレーザ光の照射および光音響波の検出が行われた後、超音波トリガ信号が出力されることで被検体に対する超音波の送信およびその反射波の検出が行われる。
【0063】
トリガ制御回路32はさらに、AD変換手段22に対して、サンプリング開始を指示するサンプリングトリガ信号を出力する。このサンプリングトリガ信号は、上記フラッシュランプトリガ信号が出力された後で、かつ超音波トリガ信号が出力される前、より好ましくは被検体に実際にレーザ光が照射されるタイミングで出力される。そのためにサンプリングトリガ信号は、例えばトリガ制御回路32がQスイッチトリガ信号を出力するタイミングに同期して出力される。AD変換手段22は上記サンプリングトリガ信号を受けると、超音波探触子7にて検出された上記電気信号のサンプリングを開始する。
画像合成手段28は、画像構築手段27aおよび27bにそれぞれ構築された光音響画像および超音波画像を合成する。画像合成手段28は、合成されて得られた画像を表示画像生成手段29に出力する。なお、合成画像を表示しない場合には光音響画像および超音波画像はそれぞれ合成処理されないまま、画像合成手段28から出力されてもよい。
【0064】
表示画像生成手段29は、画像合成手段28により合成されて得られた画像に必要な処理を施して画像表示手段14に表示するための最終的な画像(表示画像)を生成する。
【0065】
画像表示手段14は、表示画像生成手段29により生成された表示画像を表示する。
【符号の説明】
【0066】
1 光音響プローブ
2 光結合部
3 挿入部
4 カテーテル
5 ダブルコア光ファイバ
6 第2の光学系
7 超音波探触子
8 音響整合液
10 光音響撮像装置
12 超音波ユニット
13 レーザ光源ユニット
14 画像表示手段
21 受信回路
22 AD変換手段
23 受信メモリ
24 データ分離手段
25a 光音響画像再構成手段
25b 超音波画像再構成手段
27a 光音響画像構築手段
27b 超音波画像構築手段
28 画像合成手段
33 送信制御回路
34 制御手段
41 、42 円錐レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体内に測定光を照射し、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換し、該電気信号に基づいて行われる光音響測定に用いられるカテーテル型の光音響プローブにおいて、
光透過性を有する先端部を備えるカテーテルと、
前記先端部にまでレーザ光を導光するように前記カテーテルに挿通された、コア径の異なる複数のコアを有するマルチコア光ファイバと、
該マルチコア光ファイバの入射端面側に設けられた第1の光学系であって、光源側から入射したレーザ光を前記入射端面に導光する前記第1の光学系と、
前記マルチコア光ファイバの出射端面側に設けられた第2の光学系であって、前記出射端面から出射したレーザ光を偏向して前記測定光とする前記第2の光学系と、
前記第1の光学系によって導光されたレーザ光が、前記入射端面に入射する際の該レーザ光のビーム径が前記複数のコアのうち所望の1つのコアのコア径と略一致する状態で、該1つのコアの前記入射端面に入射するように、前記第1の光学系の構成および/または前記入射端面の位置を制御するビーム径制御手段と、
前記先端部に設けられた、前記光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換する電気音響変換手段とを備えることを特徴とする光音響プローブ。
【請求項2】
前記マルチコア光ファイバが、第1のコアおよび該第1のコアの周囲を順次被覆する第1から第n番目のクラッドを備え、前記第1から第n番目のクラッドのそれぞれの屈折率が、前記第1のコアの屈折率よりも小さくかつ段階的に順次小さくなり、前記第1のコアから第n−1番目のクラッドまでが第nのコアとして機能するものであり、
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を広げる場合には前記ビーム径が小さくなるように、前記測定光の照射範囲を狭める場合には前記ビーム径が大きくなるように制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響プローブ。
(nは2以上の整数を表す。)
【請求項3】
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を広げる場合に、前記第1の光学系によって導光されたレーザ光が前記第1のコアにのみ入射するように制御するものであることを特徴とする請求項2に記載の光音響プローブ。
【請求項4】
前記第1の光学系が、円錐レンズを含むものであり、リング形状に成形された前記レーザ光を前記入射端面に導光するものであることを特徴とする請求項2または3に記載の光音響プローブ。
【請求項5】
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を狭める場合に、前記リング形状に成形されたレーザ光が第1から第n−1番目のクラッドのうち1以上のクラッドの前記入射端面にのみ入射するように制御するものであることを特徴とする請求項4に記載の光音響プローブ。
【請求項6】
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を狭める場合に、前記リング形状に成形されたレーザ光が前記第1から第n−1番目のクラッドのうち1のクラッドの前記入射端面にのみ入射するように制御するものであることを特徴とする請求項5に記載の光音響プローブ。
【請求項7】
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を狭める場合に、前記リング形状に成形されたレーザ光が第n−1番目のクラッドの前記入射端面にのみ入射するように制御するものであることを特徴とする請求項6に記載の光音響プローブ。
【請求項8】
前記マルチコア光ファイバが、前記nが2であるダブルコア光ファイバであることを特徴とする請求項7に記載の光音響プローブ。
【請求項9】
前記第1の光学系が、球面収差を生じるレンズを含むものであり、
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を狭める場合に、所望のパターン形状が得られるデフォーカス面が前記入射端面と一致するように制御するものであることを特徴とする請求項2または3に記載の光音響プローブ。
【請求項10】
前記複数のコアが、それぞれ異なる光軸を有するものであり、
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を広げる場合には前記複数のコアのうちコア径の小さいものに入射するように、前記測定光の照射範囲を狭める場合には前記複数のコアのうちコア径の大きいものに入射するように制御するものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響プローブ。
【請求項11】
被検体内に測定光を照射し、該測定光の照射により前記被検体内で発生した光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換し、該電気信号に基づいて光音響画像を生成する光音響撮像装置において、
光透過性を有する先端部を備えるカテーテルと、
前記先端部にまでレーザ光を導光するように前記カテーテルに挿通されたマルチコア光ファイバと、
該マルチコア光ファイバの入射端面側に設けられた第1の光学系であって、光源側から入射したレーザ光を前記入射端面に導光する前記第1の光学系と、
前記マルチコア光ファイバの出射端面側に設けられた第2の光学系であって、前記出射端面から出射したレーザ光を偏向して前記測定光とする前記第2の光学系と、
前記第1の光学系によって導光されたレーザ光が、前記入射端面に入射する際の該レーザ光のビーム径が前記複数のコアのうち所望の1つのコアのコア径と略一致する状態で、該1つのコアの前記入射端面に入射するように、前記第1の光学系の構成および/または前記入射端面の位置を制御するビーム径制御手段と、
前記先端部に設けられた、前記光音響波を検出して該光音響波を電気信号に変換する電気音響変換手段と、
前記電気信号に基づいて光音響画像を生成する画像生成手段とを備えることを特徴とする光音響撮像装置。
【請求項12】
前記マルチコア光ファイバが、第1のコアおよび該第1のコアの周囲を順次被覆する第1から第n番目のクラッドを備え、前記第1から第n番目のクラッドのそれぞれの屈折率が、前記第1のコアの屈折率よりも小さくかつ段階的に順次小さくなるものであり、前記第1のコアから第n−1番目のクラッドまでが第n番目のコアとして機能するものであり、
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を広げる場合には前記ビーム径が小さくなるように、前記測定光の照射範囲を狭める場合には前記ビーム径が大きくなるように制御するものであることを特徴とする請求項11に記載の光音響撮像装置。
(nは2以上の整数を表す。)
【請求項13】
前記複数のコアが、それぞれ異なる光軸を有するものであり、
前記ビーム径制御手段が、前記測定光の照射範囲を広げる場合には前記複数のコアのうちコア径の小さいものに入射するように、前記測定光の照射範囲を狭める場合には前記複数のコアのうちコア径の大きいものに入射するように制御するものであることを特徴とする請求項11に記載の光音響撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−27482(P2013−27482A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164583(P2011−164583)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】