説明

カテーテル

【課題】
本発明は、近位シャフトと遠位シャフトとの接合部分が塑性変形しにくいカテーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】
近位シャフトと、上記近位シャフトの先端領域が後端領域の内腔内に嵌め込まれた遠位シャフトと、上記遠位シャフトの内腔内を挿通しており、上記近位シャフトの先端領域に形成された切欠部と後端部が接合したコアワイヤとを備えるカテーテルであって、上記コアワイヤの後端部と上記切欠部との接合面には、上記接合面に沿って接合手段が形成されており、上記カテーテルの長手軸に沿って上記接合手段を第一接合手段と第二接合手段とに分けた場合、上記第一接合手段及び上記第二接合手段のうちのいずれかがより多く形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、腹腔等の体腔や、尿管や血管等の管腔内に挿入し、薬剤等を病変部へ注入したり、体液を排出したりするために用いる医療用機械器具としてカテーテルが知られている。
【0003】
そのようなカテーテルの一種であるバルーンカテーテルは、経皮的血管形成術に使用されるカテーテルであり、先行して血管内に挿入されたガイドワイヤに導かれて狭窄又は閉塞した病変部まで移動し、バルーンで病変部を拡張することにより血流を回復させることが可能なカテーテルである。
【0004】
バルーンカテーテルは、一般的に、手技者の操作側に位置する近位シャフトと、近位シャフトと接合しており病変部側に位置する遠位シャフトと、遠位シャフトの先端部に形成された膨張又は収縮自在なバルーンと、遠位シャフトの内腔に配置されておりバルーンの内腔を貫通している内側シャフトとから形成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
遠位シャフトと遠位シャフトの内腔に配置された内側シャフトとの間には、空間が形成されており、近位シャフトの内腔と遠位シャフトの内腔とバルーンの内腔とは連通している。
そのため、近位シャフトから遠位シャフトを介してバルーンに至るまでそれらの内腔内に造影剤や生理食塩水等の液体を流通させることが可能であり、バルーンを自在に膨張又は収縮させることができる。
【0006】
また、内側シャフトは、近位シャフト、遠位シャフト及びバルーンの各内腔とは隔離された別の内腔を有しており、ガイドワイヤを当該内腔に挿通させることにより、カテーテルを病変部まで導くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−164528号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された従来のバルーンカテーテルの構成について、図4(a)〜図4(c)を用いて以下に説明する。
【0009】
図4(a)は、従来のバルーンカテーテルのコアワイヤと近位シャフトとの接合部分を拡大して示す部分拡大平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示す接合部分の部分拡大側面図であり、図4(c)は、図4(b)に示す接合部分に曲げ力が加えられた場合における部分拡大側面図である。
なお、各図中、左側が先端側であり、右側側が後端側である。
【0010】
図4(a)及び図4(b)に示すように、遠位シャフト430の後端領域の内腔内には、近位シャフト420の先端領域421が嵌め込まれている。
また、遠位シャフト430及び近位シャフト420の先端領域421の内腔内には、コアワイヤ440が挿通されており、コアワイヤ440の後端部と近位シャフト420の先端領域421の内側面とが溶接等の接合手段450により接合されている。
【0011】
特許文献1に記載の従来のバルーンカテーテル400では、遠位シャフト430の後端領域の内腔内に嵌め込まれた近位シャフト420の先端領域421が先端側に向かって傾斜しており、近位シャフト420から遠位シャフト430への剛性変化をよりなだらかにすることができるとされている。
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の従来のバルーンカテーテル400では、図4(c)に示すように、湾曲させることにより接合部分に曲げ力が加えられると、コアワイヤ440のうちで近位シャフト420の先端領域421の端部421aと接触している部分に曲げ力が集中することにより、コアワイヤ440が塑性変形を起こしやすいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明のカテーテルは、近位シャフトと、
上記近位シャフトの先端領域が後端領域の内腔内に嵌め込まれた遠位シャフトと、
上記遠位シャフトの内腔内を挿通しており、上記近位シャフトの先端領域に形成された切欠部と後端部が接合したコアワイヤとを備えるカテーテルであって、
上記コアワイヤの後端部と上記切欠部との接合面には、上記接合面に沿って接合手段が形成されており、
上記接合手段を上記カテーテルの長手軸に沿って第一接合手段と第二接合手段とに分けた場合、上記第一接合手段及び上記第二接合手段のうちのいずれかがより多く形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のカテーテルにおいて、上記接合面の平面視形状は、上記長手軸に対して平行に配置されており、互いに対向する第一直線部及び第二直線部と、
上記長手軸に対して垂直に配置されており、上記第一直線部及び上記第二直線部を連結する第三直線部とからなるコ字状であり、
上記第一接合手段は、上記第一直線部を接合しており、
上記第二接合手段は、上記第二直線部を接合しており、
上記第一接合手段の長さと上記第二接合手段の長さとが異なることが望ましい。
なお、本明細書において、上記第三直線部を接合する第三接合手段をさらに有する場合、第三接合手段を上記カテーテルの長手軸に沿って分けた上で、第一接合手段又は第二接合手段にそれぞれ組み入れるものとする。
【0015】
本発明のカテーテルにおいて、上記第一接合手段の一の端部は、上記近位シャフトの先端領域の端部まで達しており、
上記第二接合手段の一の端部は、上記近位シャフトの先端領域の端部から離間していることが望ましい。
【0016】
本発明のカテーテルにおいて、上記第一接合手段の一の端部と、上記第二接合手段の一の端部とは、ともに上記近位シャフトの先端領域の端部から離間していることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態に係るカテーテルを模式的に示す全体図である。
【図2】図2(a)は、図1に示すカテーテルにおけるコアワイヤと近位シャフトとの接合部分を拡大して示す部分拡大平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示す接合部分の部分拡大側面図であり、図2(c)は、図2(b)とは反対の方向から見た場合における接合部分の部分拡大側面図である。図2(d)は、図1に示すカテーテルのA−A線断面図であり、図2(e)は、図1に示すカテーテルのB−B線断面図である。
【図3】図3(a)は、第二実施形態に係るカテーテルにおけるコアワイヤと近位シャフトとの接合部分を拡大して示す部分拡大平面図であり、図3(b)及び図3(c)は、本発明の別の実施形態に係るカテーテルにおけるコアワイヤと近位シャフトとの接合部分を拡大して示す部分拡大平面図である。
【図4】図4(a)は、従来のバルーンカテーテルのコアワイヤと近位シャフトとの接合部分を拡大して示す部分拡大平面図であり、図4(b)は、図4(a)に示す接合部分の部分拡大側面図であり、図4(c)は、図4(a)に示す接合部分に曲げ力が加えられた場合における部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
本実施形態のカテーテルを図1及び2を参照しつつ説明する。
【0019】
図1は、本発明の第一実施形態に係るカテーテルを模式的に示す全体図である。
図2(a)は、図1に示すカテーテルにおけるコアワイヤと近位シャフトとの接合部分(図1中、Xで示す部分)を拡大して示す部分拡大平面図であり、図2(b)は、図2(a)に示す接合部分の部分拡大側面図であり、図2(c)は、図2(b)とは反対の方向から見た場合における接合部分の部分拡大側面図である。
図2(d)は、図1に示すカテーテルのA−A線断面図であり、図2(e)は、図1に示すカテーテルのB−B線断面図である。
なお、図1、図2(a)〜図2(c)及び後述の図3においては、図示左側が体内に挿入される遠位側(先端側)であり、右側が医師等の手技者によって操作される近位側(後端側、基端側)である。
また、図2及び後述の図3では、理解を容易にするため、遠位シャフトを省略して図示している。
【0020】
図1に示す本実施形態のカテーテル10は、近位シャフト20と、近位シャフト20の先端領域21が後端領域32の内腔内に嵌め込まれた遠位シャフト30と、遠位シャフト30の内腔内を挿通しており、近位シャフト20の先端領域に形成された切欠部23と後端部42が接合したコアワイヤ40とを含んで形成されている。
【0021】
図2(a)〜図2(e)に示すように、コアワイヤ40の後端部42と切欠部23との接合面51の平面視形状は、カテーテル10の長手軸Lに対して平行に配置されており互いに対向する第一直線部61及び第二直線部62と、長手軸Lに対して垂直に配置されており、第一直線部61及び第二直線部62を連結する第三直線部63とからなるコ字状である。
【0022】
第一直線部61と第二直線部62とは、その長さが同じである。
第一直線部61の長さ又は第二直線部62の長さ(全長l)は、例えば、1〜10mmであることが接合強度向上の観点から望ましく、2〜5mmであることがより望ましい。
また、第三直線部63の長さは、第一直線部又は第二直線部の長さよりも短いことが接合強度向上の観点から望ましく、例えば、0.2〜1mmであることがより望ましい。
【0023】
接合手段50は、接合面51に沿って形成されている。
具体的に説明すると、第一接合手段52は第一直線部61を接合しており、第二接合手段53は第二直線部62を接合しており、第一接合手段52の長さは第二接合手段53の長さよりも長い。
また、第三接合手段54は、第三直線部63の全体を接合している。
なお、第三接合手段は形成されていなくてもよく、第三直線部の一部のみを接合していてもよい。
【0024】
第一接合手段52の一の端部52aは、近位シャフト20の先端領域21の端部21aまで達しており、第二接合手段53の一の端部53aは、近位シャフト20の先端領域21の端部21aから離間している。
即ち、接合手段50をカテーテル10の長手軸Lに沿って第一接合手段52と第二接合手段53とに分けた場合には、第一接合手段52及び第二接合手段53のうちで第一接合手段52がより多く形成されていることになる。
【0025】
本実施形態のカテーテル10では、第一接合手段52が第二接合手段53よりも多く形成されているので、カテーテル10の長手軸Lを中心として左右で接合手段50による近位シャフト20とコアワイヤ40との接合強度が異なる。
そのため、カテーテル10を湾曲させた場合に接合手段50に加えられる曲げ力を、効果的に分散させることが可能となり、コアワイヤ40が塑性変形しにくい。
【0026】
特に、接合面51の平面視形状が第一〜第三直線部(61、62、63)からなるコ字状であり、第一直線部61を接合している第一接合手段52と、第二直線部62を接合している第二接合手段53との長さが異なっているので、カテーテル10を湾曲させた場合に接合手段50に加えられる曲げ力を、カテーテル10の長手軸L方向に沿ってより効果的に分散させることが可能となり、コアワイヤ40がより塑性変形しにくい。
【0027】
また、曲げ力が特に集中しやすいのは、第二接合手段53の一の端部53a近傍、及び、近位シャフト20の先端領域21の端部21a近傍であると考えられるが、第二接合手段53の一の端部53aは、近位シャフト20の先端領域21の端部21aから離間しており、曲げ力が特に集中しやすい部分が長手軸L方向にずれているので、コアワイヤ40がさらに塑性変形しにくい。
【0028】
第二接合手段53の一の端部53aと、近位シャフト20の先端領域21の端部21aとの最短距離lは、第二直線部62の全長lの1/5〜4/5の長さであることが望ましい。
上記最短距離lが上記全長lの1/5〜4/5の長さである場合には、第二接合手段53の端部53aと近位シャフト20の先端領域21の端部21aとの位置ずれ量が長手軸L方向に最適化されることとなり、コアワイヤ40がさらにより塑性変形しにくい。
一方、上記最短距離lが上記全長lの1/5未満の長さである場合には、第二接合手段の端部と近位シャフトの先端領域の端部との位置ずれ量が小さすぎて曲げ力を分散させにくくなることがあり、上記最短距離lが上記全長lの4/5を超える長さである場合には、第二接合手段の長さが短すぎて接合強度が低くなることがある。
また、第二接合手段53の一の端部53aと、近位シャフト20の先端領域21の端部21aとの最短距離lが第二直線部62の全長lの1/5〜4/5の長さである場合、第二接合手段53の一の端部53aと、近位シャフト20の先端領域21の端部21aとの最短距離lは、0.2〜8mmであることが望ましく、0.4〜3mmであることがより望ましい。
【0029】
接合手段50は、例えば、溶接、接着剤等であってもよい。
これらの中では、接合手段は溶接であることが溶接強度確保の観点から望ましく、YAGレーザー等を用いたレーザー溶接であることがより望ましい。
接合手段が溶接である場合には、隣り合う溶接痕が重なるようにして溶接手段を形成することが溶接強度確保の観点からさらに望ましい。
【0030】
本実施形態のカテーテル10におけるその他の構成について、図1を参照しながら、以下に詳しく説明する。
【0031】
近位シャフト20は、ステンレスやNi−Ti等の金属からなる管状部材である。
近位シャフト20の後端領域22には、コネクタ70が取り付けられている。
【0032】
遠位シャフト30は、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等の樹脂からなる管状部材である。
【0033】
遠位シャフト30の内腔には、遠位シャフト30と同様の樹脂からなる管状部材である内側シャフト90が所定の空間を空けて挿通している。
内側シャフト90の後端部91は、遠位シャフト30の中間部において、内側シャフト90の内腔が外部に開口してなる開口部93を形成しており、内側シャフト90の先端部92は、遠位シャフト30の先端領域31から前方に突出している。
【0034】
内側シャフト90の先端部92には、所定の距離離間した一対の放射線不透過性のリング状マーカー100が取り付けられている。
【0035】
遠位シャフト30の先端領域31には、バルーン80の後端取付部81が固着されており、遠位シャフト30の先端領域31から前方に突出した内側シャフトの先端部92には、バルーン80の先端取付部82が固着されており、バルーン80の両端部が密着されることによりバルーン80がカテーテル10の先端に形成されている。
【0036】
バルーン80の材質としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、ポリアミド等の樹脂が挙げられる。
【0037】
コアワイヤ40は、バルーンカテーテル10が先端に向かって柔軟となるような剛性変化を付与するために、後端部42から先端部41に向かって細径化されている。
コアワイヤ40の材質としては、例えば、ステンレス(SUS)、Ni−Ti合金のような超弾性合金、ピアノ線等が挙げられる。
【0038】
このような各部材からなるカテーテル10では、近位シャフト20の内腔と遠位シャフト30の内腔とバルーン80の内腔とが連通しており、コネクタ70に取り付けられた図示しないインデフレータからバルーン80を拡張するための造影剤や生理食塩水等の液体が供給されると、液体が上述した各内腔を通ってバルーン80を拡張又は収縮させるように構成されている。
【0039】
また、先に病変部に導入されたガイドワイヤを内側シャフト90内の内腔を通過させて、開口部92から延出させることができる。
これにより、ガイドワイヤに沿ってカテーテル10を病変部まで移動させることができる。
【0040】
本実施形態のカテーテルは、例えば、円筒状の近位シャフトの先端領域の一部を切除することにより上記形状の切欠部を形成し、切欠部にコアワイヤの後端部を嵌め込んだ後、第一接合手段が第二接合手段より多く形成されるように、切欠部と後端部とを溶接すること以外は、従来公知のカテーテルの製造方法と同様にして製造することができる。
【0041】
(第二実施形態)
本実施形態のカテーテルは、第一接合手段の一の端部と第二接合手段の一の端部とがともに近位シャフトの先端領域の端部から離間していること以外は、第一実施形態のカテーテルと同様の構成を有しているので、重複する事項については説明を省略する。
【0042】
図3(a)は、第二実施形態に係るカテーテルにおけるコアワイヤと近位シャフトとの接合部分を拡大して示す部分拡大平面図である。
【0043】
図3(a)に示すように、第一接合手段152の一の端部152aは、近位シャフト120の先端領域121の端部121aから離間しており、第二接合手段153の一の端部153aは、近位シャフト120の先端領域121の端部121aから離間している。
【0044】
本実施形態のカテーテルにおいても、接合手段150をカテーテルの長手軸Lに沿って第一接合手段152と第二接合手段153とに分けた場合、第一接合手段152及び第二接合手段153のうちで第一接合手段152がより多く形成されていることになる。
そのため、本実施形態のカテーテルでも、上述した第一実施形態のカテーテルの作用効果と同様の作用効果を発揮することができる。
【0045】
また、本実施形態に特有の効果として、以下の効果を発揮することができる。
本実施形態のカテーテルでは、第一接合手段152の一の端部152aが近位シャフト120の先端領域121の端部121aから離間しているとともに、第二接合手段153の一の端部153aが近位シャフト120の先端領域121の端部121aから離間している。
ここで、曲げ力が特に集中しやすいのは、第一接合手段152の一の端部152a近傍、第二接合手段153の一の端部153a近傍、及び、近位シャフト120の先端領域121の端部121a近傍であると考えられる。
しかしながら、第一接合手段152の一の端部152a及び第二接合手段153の一の端部153aは、近位シャフト120の先端領域121の端部121aから離間しており、曲げ力が特に集中しやすい部分が長手軸L方向にずれているので、コアワイヤ140がさらに塑性変形しにくい。
【0046】
第二接合手段153の一の端部153aと、近位シャフト120の先端領域121の端部121aとの最短距離lは、第二直線部162の全長lの2/5〜4/5の長さであることが望ましい。
上記最短距離lが上記全長lの2/5〜4/5の長さである場合には、第二接合手段153の端部153aと、近位シャフト120の先端領域121の端部121aとの位置ずれ量が長手軸L方向に最適化されることとなり、コアワイヤ140がさらにより塑性変形しにくい。
この場合、上記最短距離lは、0.4〜8mmであることが望ましく、0.6〜3mmであることがより望ましい。
一方、上記最短距離lが上記全長lの2/5未満の長さである場合には、第二接合手段の端部と近位シャフトの先端領域の端部との位置ずれ量が小さすぎて曲げ力を分散させにくくなることがあり、上記最短距離lが上記全長lの4/5を超える長さである場合には、第二接合手段の長さが短すぎて接合強度が低くなることがある。
【0047】
第一接合手段152の一の端部152aと、近位シャフト120の先端領域121の端部121aとの距離lは、上記距離lより短く、第一直線部161の全長lの1/5〜3/5の長さであることが望ましい。
上記最短距離lが上記全長lの1/5〜3/5の長さである場合には、第一接合手段152の端部152aと、近位シャフト120の先端領域121の端部121aとの位置ずれ量が長手軸L方向に最適化されることとなり、コアワイヤ140がさらにより塑性変形しにくい。
この場合、上記最短距離lは、0.2〜6mmであることが望ましく、0.4〜2mmであることがより望ましい。
一方、上記最短距離lが上記全長lの1/5未満の長さである場合には、第一接合手段の端部と近位シャフトの先端領域の端部との位置ずれ量が小さすぎて曲げ力を分散させにくくなることがあり、上記最短距離lが上記全長lの3/5を超える長さである場合には、第一接合手段の長さが短すぎて接合強度が低くなることがある。
【0048】
また、上記最短距離lが上記全長lの2/5〜4/5の長さであり、かつ、上記距離lが上記最短距離lより短く、上記全長lの1/5〜3/5の長さであると、コアワイヤ140がさらに塑性変形しにくくなるのでより望ましい。
この場合、第一直線部161の長さ(全長l)及び第二直線部162の長さ(全長l)が1〜10mmであり、上記最短距離lが0.4〜8mmであり、上記最短距離lが0.2〜6mmであることがさらにより望ましい。
さらには、第一直線部161の長さ(全長l)及び第二直線部162の長さ(全長l)が2〜5mmであり、上記最短距離lが0.8〜1.5mmであり、上記最短距離lが0.4〜1.0mmであることが極めて望ましい。
【0049】
本実施形態のカテーテルは、第一接合手段の一の端部と第二接合手段の一の端部とがともに近位シャフトの先端領域の端部から離間するようにして接合手段を形成すること以外は、第一実施形態のカテーテルと同様にして製造することができる。
【0050】
(その他の実施形態)
本発明のカテーテルにおいては、接合手段をカテーテルの長手軸に沿って第一接合手段と第二接合手段とに分けた場合、第一接合手段及び第二接合手段のうちのいずれかがより多く形成されていればよく、例えば、図3(b)又は図3(c)に示す実施形態も本発明の技術的範囲に包含される。
【0051】
図3(b)及び図3(c)は、本発明の別の実施形態に係るカテーテルにおけるコアワイヤと近位シャフトとの接合部分を拡大して示す部分拡大平面図である。
【0052】
図3(b)に示す実施形態では、第一接合手段252は、第一直線部261の全体を接合しており、第三接合手段254は、第三直線部263の全体を接合している。
一方、第二接合手段253は、第二直線部262を部分的に接合しており、第二接合手段253の一の端部253aは、近位シャフト220の先端領域221の端部221aまで達しているが、第二接合手段253の他の端部253bは第三接合手段254まで達していない。
【0053】
図3(c)に示す実施形態では、第一接合手段352は、第一直線部361の全体を接合しており、第二接合手段353は、第二直線部362の全体を接合している。
第一接合手段352の長さと第二接合手段353の長さとは、同じである。
【0054】
一方、第三接合手段354は、カテーテルの長手軸Lよりも第一接合手段352側に位置する第三直線部363のみを接合しており、カテーテルの長手軸Lよりも第二接合手段353側に位置する第三直線部363を接合していない。
【0055】
図3(c)に示す実施形態では、カテーテルの長手軸Lよりも第一接合手段352側に位置する第三直線部363のみを接合している第三接合手段354は、第一接合手段352に組み入れられる。
その結果、接合手段をカテーテルの長手軸に沿って第一接合手段と第二接合手段とに分けた場合、第一接合手段及び第二接合手段のうちで第一接合手段がより多く形成されていることとなる。
【0056】
図3(b)及び図3(c)に示す実施形態では、接合手段をカテーテルの長手軸に沿って第一接合手段と第二接合手段とに分けた場合、第一接合手段及び第二接合手段のうちで第一接合手段がより多く形成されているので、本発明のカテーテルの作用効果を好適に享受することができる。
【0057】
本発明のカテーテルにおいて、コアワイヤの後端部と切欠部との接合面の平面視形状は、上述したコ字状に限定されず、例えば、円弧状等の形状であってもよい。
また、コアワイヤの後端部と切欠部との接合面の平面視形状がコ字状である場合、第一直線部の長さと第二直線部との長さが異なっていてもよい。
また、コアワイヤの後端部と切欠部との接合面の平面視形状がコ字状である場合、第三直線部の長さは、第一直線部又は第二直線部の長さよりも長くてもよい。
【0058】
上述した各実施形態では、接合手段をカテーテルの長手軸に沿って第一接合手段と第二接合手段とに分けた場合に、第一接合手段及び第二接合手段のうちで第一接合手段がより多く形成されている実施形態について説明したが、本発明のカテーテルではこれに限定されず、第一接合手段及び第二接合手段のうちで第二接合手段がより多く形成されていてもよい。
【0059】
本発明のカテーテルにおいて、各実施形態では迅速交換型のバルーンカテーテルを例にして説明したが、本発明に係る構成は、オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルにも好適に適用することが可能であり、上述した本発明に係る作用効果を好適に享受することができる。なお、オーバーザワイヤ型のバルーンカテーテルとは、内側チューブをバルーンカテーテルの後端領域(近位部)まで配置した構成である。
また、本発明に係る構成は、バルーンカテーテル以外のカテーテル、例えば狭窄部貫通用の穿通カテーテルや、治療物質を投与する注入カテーテル等にも好適に適用することが可能である。
【0060】
本発明のカテーテルの一例であるバルーンカテーテルは、心臓の血管の治療に用いるものであるが、下肢の血管や透析のためのシャントを拡張する手技等、各種の手技に用いてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 カテーテル
20 近位シャフト
21 近位シャフトの先端領域
23 切欠部
30 遠位シャフト
32 遠位シャフトの後端領域
40 コアワイヤ
42 コアワイヤの後端部
50 接合手段
51 コアワイヤの後端部と切欠部との接合面
52 第一接合手段
53 第二接合手段
L カテーテルの長手軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位シャフトと、
前記近位シャフトの先端領域が後端領域の内腔内に嵌め込まれた遠位シャフトと、
前記遠位シャフトの内腔内を挿通しており、前記近位シャフトの先端領域に形成された切欠部と後端部が接合したコアワイヤとを備えるカテーテルであって、
前記コアワイヤの後端部と前記切欠部との接合面には、前記接合面に沿って接合手段が形成されており、
前記接合手段を前記カテーテルの長手軸に沿って第一接合手段と第二接合手段とに分けた場合、前記第一接合手段及び前記第二接合手段のうちのいずれかがより多く形成されていることを特徴とするカテーテル。
【請求項2】
前記接合面の平面視形状は、前記長手軸に対して平行に配置されており、互いに対向する第一直線部及び第二直線部と、
前記長手軸に対して垂直に配置されており、前記第一直線部及び前記第二直線部を連結する第三直線部とからなるコ字状であり、
前記第一接合手段は、前記第一直線部を接合しており、
前記第二接合手段は、前記第二直線部を接合しており、
前記第一接合手段の長さと前記第二接合手段の長さとが異なる請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記第一接合手段の一の端部は、前記近位シャフトの先端領域の端部まで達しており、
前記第二接合手段の一の端部は、前記近位シャフトの先端領域の端部から離間している請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第一接合手段の一の端部と、前記第二接合手段の一の端部とは、ともに前記近位シャフトの先端領域の端部から離間している請求項2に記載のカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−17717(P2013−17717A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154444(P2011−154444)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】