説明

カドミウム−112同位元素の回収方法

【課題】カドミウム−112同位元素の回収方法を提供する。
【解決手段】
カドミウム−112ターゲット材料の化学分離液や電気メッキ液の残留液を、水酸化物と反応させることにより、水酸化カドミウム沈殿物を生成し、また、濾過と洗浄を行ってカドミウム−112同位元素を回収し、回収されたカドミウム−112同位元素は、か焼により、或いは、シアン化ナトリウムとアルカリ性溶液に溶解することにより、それぞれ、固体酸化カドミウムやカドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液が形成され、人体器官のイメージング剤として、医学診断の用途に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウム−112同位元素の回収方法に関し、特に、カドミウム−112ターゲット材料の化学分離液や電気メッキ液の残留液から、水酸化物と反応して、水酸化カドミウム沈殿物を生成し、また、濾過して洗浄することにより、カドミウム−112同位元素を回収できる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インジウム−111放射性同位元素の核子特性は、電子を捕獲して、二つのガンマ線特性エネルギースペクトルを釈放し、その半減期が短くエネルギーが適当であるため、人体器官病理変化の診断や生理機能研究のために、幅広く核医学単光子放出計算機トモグラフィー(Single Photon Emission Computerized Tomography、SPECT)に適用される。
【0003】
インジウム−111の標識化合物は、例えば、111InCl3、111In−bleomysin及び111In−DTPA(オクトレオチド)で、器官の局部腫瘍を鑑定することに適用でき、また、111In−Oxine脂肪親和性錯化合物は、白血球を標識して膿瘍の造影や炎症等の病変を診断でき、また、111Inや単クローン抗体、血小板、グロブリン、巨大分子γt−PA(recombinant tissue plasminogen activator)或いはFab、(Fab`)2 (immunoglobulin fragments)等により形成された錯化合物は、応用可能性が非常に高いイメージング剤であり、心筋梗塞や血栓の正しい位置を走査でき、また、トロンビンや腎機能等の生理研究に適用できる。
【0004】
インジウム−111同位元素の主な生産経路は、112Cd(p、2n)や111Cd(p、n)、natCd(p、xn)、110Cd(d、n)及び109Ag(α、2n)等があり、その中、同位体濃縮112Cd(97%)固体ターゲットを利用して、適当なターゲットの厚さ(〜100μm)と陽子線エネルギー(〜22MeV)の条件で、111In最大の産出高が得られる。
【0005】
核医学製薬センターにおいて、サイクロトロンにより核医学薬品であるオクトレオチド(インジウム−111)を作製し、わが国では、類似する同位元素を作製できず、毎年に核医学薬品であるオクトレオチド(インジウム−111)を生産するため、海外から濃縮カドミウム−112同位元素を輸入し、手に入れることが容易ではない。それは、至急に解決しなければならない課題である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主な目的は、原料費用の節約とコストの低下ができ、回収率が高く、高い純度のカドミウム−112同位元素が得られるカドミウム−112同位元素の回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、硫化物溶液を、カドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液の残留液に添加して、硫化カドミウム沈殿物を生成し、また、該硫化カドミウム沈殿物を塩酸に溶解して窒化カドミウム溶液を形成し、そして、水酸化物溶液を混合し、水酸化カドミウム沈殿物を生成し、最後に、該水酸化カドミウム沈殿物について、濾過して洗浄し、カドミウム−112同位元素を回収するカドミウム−112同位元素の回収方法である。
【0008】
また、本発明は、カドミウム−112ターゲット材料化学分離液と臭素化カドミウム溶液とを混合することにより、混合液が形成され、また、水酸化物溶液を該混合液に混合して撹拌することにより、水酸化カドミウム沈殿物を生成し、最後に、該水酸化カドミウム沈殿物を濾過して洗浄し、カドミウム−112同位元素を回収してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1と図2は、本発明の第1の実施例の流れの概念図と本発明の第2の実施例の流れの概念図である。図のように、本発明は、カドミウム−112同位元素の回収方法であり、カドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液の残留液やカドミウム−112ターゲット材料化学分離液から、カドミウム−112同位元素を回収することができ、また、カドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液の残留液から、回収する方法は、少なくとも、次のステップが備えられる。
【0010】
ステップ(A1)は、硫化カドミウム沈殿物11を生成し、硫化物溶液をカドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液の残留液に添加することにより、硫化カドミウム沈殿物を生成し、また、該硫化物溶液は、硫化ナトリウム溶液である。
【0011】
ステップ(B1)は、窒化カドミウム溶液12を形成し、該硫化カドミウム沈殿物を、塩酸に溶解することにより、窒化カドミウム溶液を形成する。
【0012】
ステップ(C1)は、水酸化カドミウム沈殿物13を生成し、該窒化カドミウム溶液を水酸化物溶液に混合することにより、水酸化カドミウム沈殿物を生成し、また、該水酸化物溶液は、水酸化カリウム溶液や水酸化ナトリウム溶液である。
【0013】
ステップ(D1)は、カドミウム−112同位元素14を回収し、該水酸化カドミウム沈殿物を半自動化真空ろ過システムに移入し、濾過と洗浄を行ってカドミウム−112同位元素を回収する。
【0014】
また、本発明は、カドミウム−112ターゲット材料化学分離液から回収する方法は、少なくとも、次のステップが備えられる。
【0015】
ステップ(A2)は、混合液21を形成し、カドミウム−112ターゲット材料化学分離液と臭素化カドミウム溶液を混合することにより、混合液を形成する。
【0016】
ステップ(B2)は、水酸化カドミウム沈殿物22を生成し、水酸化物溶液を上記の混合液に混合して撹拌することにより、水酸化カドミウム沈殿物を生成し、また、該水酸化物溶液は、水酸化カリウム溶液や水酸化ナトリウム溶液である。
【0017】
ステップ(C2)は、カドミウム−112同位元素23を形成し、該水酸化カドミウム沈殿物を半自動化真空ろ過システムに移入して、濾過と洗浄を行ってカドミウム−112同位元素を回収する。
【0018】
上記の2種類の方法により回収されたカドミウム−112同位元素は、か焼により、固体酸化カドミウムになり、或いは、シアン化物溶液とアルカリ性溶液に溶解してカドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液を形成し、該カドミウム−112同位元素の回収率が、98%以上まで上り、純度が99%程度になり、また保管が容易である。
【0019】
以上のように、本発明に係わるカドミウム−112同位元素の回収方法は、カドミウム−112同位元素を回収してリサイクルでき、その回収率と純度が98%以上で、原料費用や核医学製薬コストを節約できるため、本発明は、より進歩的かつより実用的で、法に従って特許請求を出願する。
【0020】
以上は、ただ、本発明のより良い実施例であり、本発明はそれによって制限されることが無く、本発明に係わる特許請求の範囲や明細書の内容に基づいて行った等価の変更や修正は、全てが本発明の特許請求の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施例の流れの概念図
【図2】本発明の第2の実施例の流れの概念図
【符号の説明】
【0022】
11 ステップ(A1)
12 ステップ(B1)
13 ステップ(C1)
14 ステップ(D1)
21 ステップ(A2)
22 ステップ(B2)
23 ステップ(C2)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫化物溶液をカドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液の残留液に添加して硫化カドミウム沈殿物を生成する(A1)ステップと、該硫化カドミウム沈殿物を塩酸に溶解して窒化カドミウム溶液を形成する(B1)ステップと、該窒化カドミウム溶液を水酸化物溶液に混合して、水酸化カドミウム沈殿物を生成する(C1)ステップと、該水酸化カドミウム沈殿物を濾過して洗浄し、カドミウム−112同位元素を回収する(D1)ステップとが、含有されることを特徴とするカドミウム−112同位元素の回収方法。
【請求項2】
該硫化物溶液は、硫化ナトリウム溶液であることを特徴とする請求項1に記載のカドミウム−112同位元素の回収方法。
【請求項3】
該水酸化物溶液は、水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液であることを特徴とする請求項1に記載のカドミウム−112同位元素の回収方法。
【請求項4】
該回収されたカドミウム−112同位元素は、か焼により形成された固体酸化カドミウムであることを特徴とする請求項1に記載のカドミウム−112同位元素の回収方法。
【請求項5】
該回収されたカドミウム−112同位元素は、シアン化物溶液とアルカリ性溶液とに溶解されることにより、カドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液が形成されることを特徴とする請求項1に記載のカドミウム−112同位元素の回収方法。
【請求項6】
カドミウム−112ターゲット材料化学分離液と臭素化カドミウム溶液とを混合することにより、混合液が形成される(A2)ステップと、水酸化物溶液を該混合液に混合して撹拌することにより、水酸化カドミウム沈殿物を生成する(B2)ステップと、該水酸化カドミウム沈殿物を濾過して洗浄し、カドミウム−112同位元素を回収する(C2)ステップとが、含有されることを特徴とするカドミウム−112同位元素の回収方法。
【請求項7】
該水酸化物溶液は、水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液であることを特徴とする請求項6に記載のカドミウム−112同位元素の回収方法。
【請求項8】
該回収されたカドミウム−112同位元素は、か焼により形成された固体酸化カドミウムであることを特徴とする請求項6に記載のカドミウム−112同位元素の回収方法。
【請求項9】
該回収されたカドミウム−112同位元素は、シアン化物溶液とアルカリ性溶液に溶解されることにより、カドミウム−112ターゲット材料電気メッキ液が形成されることを特徴とする請求項6に記載のカドミウム−112同位元素の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−7633(P2009−7633A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170278(P2007−170278)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(595165656)行政院原子能委員会核能研究所 (51)
【Fターム(参考)】