説明

カニ脚様魚肉製品の製造方法

【課題】形状および呈味が天然のカニ肉に類似したカニ脚様魚肉製品の製造方法、その装置およびカニ脚様魚肉製品を提供すること。
【解決手段】 第1の魚肉すり身から調製された基部と、該基部上に積層された第2の魚肉すり身から調製された収縮層と、を有するカニ脚様魚肉製品であって、収縮層は、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製されている。製造方法は、第1の魚肉すり身から調製された帯状の第1魚肉シート31の少なくとも片面に、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製された第2魚肉シート32を積層して積層シート33を形成し、その後加熱する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然カニ脚に形態および味が類似したカニ脚様魚肉製品の製造方法、製造装置およびカニ脚様魚肉製品に関する。
【背景技術】
【0002】
カニ抜身に似せた繊維束状練製品は、組織が繊維束状になっているので、天然カニに近い食感が得られる。このようなカニ脚様魚肉製品の製造方法が、例えば特許第2688989号に示されている。この特許に開示された製造方法は、以下のとおりである。
(1)魚肉すり身を主原料とする魚肉原料を例えば、厚さが0.5〜2.0mm程度の帯状に延展させた状態で、ベルトコンベア上に連続して供給する。この帯状原料シートを加熱して、保形性のあるシート状態に変性させる。
(2)ベルトコンベア上に平行に載置した2本の帯状の魚肉シートを、長手方向に沿って送りながらスリッターにて麺状に(例えば、0.5〜2.0mm幅に)細断し、これをガイドローラによって各々束状に集束する。
(3)集束された魚肉製品を、各々進行方向に沿って外側部が鋭角になるようカッターにて斜めに切断して菱形片を得る。
(4)先頭の菱形片の先端外側部を、押圧具にて前方内側に押圧し、左右に対応する切断面相互を突合せて矢筈状に形成し、この矢筈状の一組を、隣接させて前方に設けた高速コンベアにて早送りし、後方の菱形片と切り離す。
(5)矢筈状の一組の形成に際しては、高速コンベアの上部に、逆V字状の上下動可能なガイドを配置しておき、左右一対の先頭の菱形片の切断面を突合せた際、瞬間的にこのガイドに当てて先を揃え、その後ガイドを上昇させることにより、矢筈状の一組を前方へ早送りする。
(6)高速コンベアの前方に隣接して配置したベルトコンベア上にて、順次送られてくる矢筈状魚肉製品の先行部の後部に、後方の先端を嵌め込むように順次接続して長尺状に形成する。この際、嵌め込み接続は、通常スピードのベルトコンベア上に位置する矢筈状の一組に対して、後方から高速にて押し付けるように次の一組が送られるため、一定の押圧力が加わることになり、隙間なく接続される。
(7)この棒状の魚肉製品を着色フィルムにて包装した後(色を転写した後)、二次加熱し、その後フィルムを剥がす。その後、包装する。
【0003】
以上のように、従来の製造法では、細断によって太さ1mm程度の麺状の魚肉製品を作成、集束後、切断する。次いで、着色された魚肉すり身を塗布したプラスチックフィルムに棒状体を包み込み、二次加熱し着色する。プラスチックフィルムを取り除いて完成品とする。
【0004】
しかし、従来の方法で得られたカニ脚様魚肉製品は、天然のカニ肉と比べて形状および呈味が単調なものとなっており、天然のカニ肉に一層近づいた食感(歯ざわり、舌ざわり)が得られるカニ風練り製品が望まれていた。
【特許文献1】特許第2688989号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の点に着目してなされたものであり、形状および呈味が天然のカニ肉に類似したカニ脚様魚肉製品の製造方法、その装置およびカニ脚様魚肉製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、例えば、以下の手段を提供する:
項目1.第1の魚肉すり身から調製された帯状の第1魚肉シートの少なくとも片面に、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製された第2魚肉シートを積層して積層シートを形成する工程、2つの該積層シートを搬送装置上にそれぞれ載置し、該各積層シートを長手方向に沿って送りながら細断し、これを束状に集束する工程、束状に集束された長尺の束状体の各々に対し、進行方向に向かって斜めに切断して菱形片を形成する工程、該一対の菱形片の切断面を相互に突合せて矢筈状の組合せ体を形成する工程、該組合せ体を、先行の組合せ体の後部に、後方の先部が嵌め込まれるように順次接続して棒状体を形成する工程、該棒状体を着色する工程、および該棒状体を加熱する工程、を包含するカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【0007】
項目2.前記第1魚肉シートが一次加熱され、その加熱された第1魚肉シートの表面に未加熱の第2魚肉シートが積層される、項目1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【0008】
項目3.前記第2の魚肉すり身を第1魚肉シートの表面にラミネートすることにより前記第2魚肉シートが形成される、項目1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【0009】
項目4.前記第2の魚肉すり身を第1魚肉シートの表面に吹き付けることにより前記第2魚肉シートが形成される、項目1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【0010】
項目5.前記棒状体を加熱する工程が、着色フィルムにて包装した後、加熱する工程を有し、さらに適宜長さに切断する工程を包含する、項目1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【0011】
項目6.前記食用の収縮性材料が、イカ、タコのすり身、コラーゲン、ケラチンおよびシルクからなる群から選択される少なくとも一種である、項目1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【0012】
項目7.第1の魚肉すり身を主原料とする魚肉原料を帯状に延展させて形成した第1魚肉シートを連続供給する第1魚肉シート供給装置と、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製された第2魚肉シートを第1魚肉シート上に積層する第2魚肉シート供給装置と、前記第1魚肉シートおよび第2魚肉シートからなる積層シートを搬送する搬送装置と、該搬送装置上の2つの該積層シートを長手方向に沿って送りながら麺状に細断する細断機と、該麺状に細断された麺状体を各々束状に集束する集束機4と、該束状に集束された長尺の束状体の各々に対し、進行方向に向かって斜めに切断する切断機と、該切断機によって形成された菱形片の一対を、その菱形片の切断面同士を相互に突合せて矢筈状の組合せ体を形成する突合せ装置と、該組合せ体を、先行の組合せ体の後部に、後方の先部が嵌め込まれるように順次接続して棒状体を形成する装置と、該棒状体を加熱する装置と、を備えた、カニ脚様魚肉製品の製造装置。
【0013】
項目8.さらに、前記棒状体を加熱する前に、前記棒状体を食用フィルムにて包装する装置を備える、項目7に記載のカニ脚様魚肉製品の製造装置。
【0014】
項目9.第1の魚肉すり身から調製された基部と、該基部上に積層された第2の魚肉すり身から調製された収縮層と、を有するカニ脚様魚肉製品であって、
該収縮層は、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製されている、カニ脚様魚肉製品。
【0015】
項目10.前記食用の収縮性材料が、イカ、タコのすり身、コラーゲン、ケラチンおよびシルクからなる群から選択される少なくとも一種である、項目9に記載のカニ脚様魚肉製品。
【0016】
項目11. 前記基部は、第1の魚肉すり身から調製された帯状の第1魚肉シートをその長さ方向に細断して得られる複数の麺状体を集合して形成され、前記収縮層は、第2の魚肉すり身から調製された帯状の第2魚肉シートをその長さ方向に細断して得られる複数の麺状体を集合して形成されている、項目9に記載のカニ脚様魚肉製品。
【0017】
項目12.前記収縮層の表面に着色層が形成されている、項目9に記載のカニ脚様魚肉製品。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、魚肉すり身を帯状に作成するときに、ドラムスチーマーなどの加熱搬送装置上に魚肉すり身をコーティングした後、その第1の魚肉シート上に、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製された第2魚肉シートを積層し、この積層シートを加工した後、加熱する。この加熱によって、第2魚肉シートが収縮するため、縮れ状の繊維肉を呈するカニ脚様魚肉製品が得られ、天然のカニ脚に類似した味および食感を有するものである。
【0019】
上記収縮性材料としては、熱によって縮む物性を有するものであればよく、例えば、イカ、タコのすり身、コラーゲン、ケラチン、シルクが使用できる。これらの原料は単独でも、または混合しても使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
図1に、本発明のカニ脚様魚肉製品の製造方法を実施するための装置を示す。
【0022】
このカニ脚様魚肉製品の製造装置Aは、第1の魚肉すり身を主原料とする魚肉原料を帯状に延展させて形成した第1の魚肉シート31を連続供給する第1魚肉シート供給装置21と、第1魚肉シート31を搬送しながら加熱(半凝固)する加熱搬送装置5と、成形された第1魚肉シート31の表面に、以下に説明する第2魚肉シート32を形成するための第1魚肉シート供給装置22と、第1魚肉シート31および第2魚肉シート31からなる積層シート33を2つ平行に載置してその長手方向に送るベルトコンベアなどの搬送装置2と、この積層シート33を移送しながら一次加熱する加熱装置28と、該搬送装置2上に配置され、搬送装置2上の該積層シート33を長手方向に沿って送りながら麺状に細断する細断機3と、麺状に細断された麺状体34を各々束状に集束する集束機4と、該束状に集束された長尺の束状体5の各々に対し、進行方向に向かって斜めに切断する切断機6と、該切断機6によって形成された菱形片7の一対を、その菱形片7の切断面同士を相互に突合せて矢筈状の組合せ体10を形成する突合せ装置8と、該組合せ体10を、先行の組合せ体10の後部に、後方の先部が嵌め込まれるように順次接続して長尺の棒状体15を形成する装置12,13と、該棒状体15を着色フィルムにて包装した後、二次加熱する加熱装置(図示せず)と、適宜長さに切断する切断装置(図示せず)と、を備えている。
【0023】
上記第1魚肉シート供給装置21は、従来より公知のものが使用され、魚肉を撹拌してらい潰するホッパーと、ホッパーの下部に設けられた押出し装置と、を有する。
【0024】
上記加熱搬送装置5としては、例えば、ドラムスチーマーを使用することができる。この加熱搬送装置(以下、ドラムスチーマーともいう)5は、内部に蒸気による加熱部が配設された回転体にて構成され、その表面に第1魚肉シート供給装置21の押出し装置から押し出された第1の魚肉すり身をコーティングして帯状の第1魚肉シート31が成形される。
【0025】
このドラムスチーマー5の上方位置において、第1魚肉シート31の上に第2魚肉シート32を形成するための第2魚肉シート供給装置22が配置されている。
【0026】
該第2魚肉シート供給装置22は、第1魚肉シート供給装置21と同様に公知のものを使用することができ、第2の魚肉すり身を収容してらい潰するホッパーと、ホッパーの下部に設けられた押出し装置とを有する。この第2魚肉シート供給装置22から第1魚肉シート31上に帯状に第2魚肉シート32を送り出して図2に示すように積層する。
【0027】
第1魚肉シート31の厚みは0.5〜2.0mm程度が好ましく、0.8〜1.2mmがさらに好ましい。第2魚肉シート32の幅寸法は、第1魚肉シート31の幅寸法と略等しく設定される。第2魚肉シート32の厚みは0.05〜0.2mm程度が好ましく、0.08〜0.12mmがさらに好ましい。
【0028】
ドラムスチーマー5から送り出された第1魚肉シート31および第2魚肉シート32からなる積層シート33は、ベルトコンベア2上に載せられる。
【0029】
ドラムスチーマー5の近傍位置においてベルトコンベア2の下方位置には上記した一次加熱機28が配置され、ベルトコンベア2を通して積層シート33が一次加熱され、半凝固される。ベルトコンベア2としては、例えば、スチール製コンベアを使用することができる。このベルトコンベア2上では2つの積層シート33が略平行に長手方向に送られる。
【0030】
ベルトコンベア2上に配置された細断機3は、複数の刃を軸方向に有し、ベルトコンベア2上の該積層シート33を長手方向に沿って送りながら麺状に細断する。この一本の麺状体34の太さは、0.5〜2.0mm程度とすることができ、好ましくは0.8〜1mm程度である。
【0031】
上記集束機4は、鉛直方向に軸を有する回転ローラー(ガイドローラー)などで構成することができ、麺状に細断された麺状体34の両側方に配置され、麺状体34を各々束状に集束する。
【0032】
切断機6は、ベルトコンベア2の上方位置に上下移動可能に配置され、束状に集束された長尺の束状体5の各々に対し、進行方向に向かって斜めに切断する。この切断により平面視で菱形の菱形片7が形成される。
【0033】
ベルトコンベア2の送り方向側において、該ベルトコンベア2よりも送り速度の速い高速コンベア12が設置されている。そして、ベルトコンベア2上に突合せ装置8が配置されている。この突合せ装置8は、一対の菱形片7の切断面同士を相互に突合せて矢筈状の組合せ体10を形成する押圧具41を有し、押圧具41により一対の菱形片7の切断面同士を相互に突合せて矢筈状の組合せ体10を形成する。棒状体15を形成する装置は、高速コンベア12と、この上に配置された上下移動可能なガイド13とを有し、組合せ体10を高速コンベア12によって早送りして後方の菱形片7と切り離す。
【0034】
そして、ガイド13に組合せ体10の先端部を当てる。ガイド13が上昇すると、高速コンベア12によって送られた組合せ体10は、先行する矢筈状の魚肉製品の後部に、後方の組合せ体10の先部を嵌め込むようにして順次接続される。この魚肉製品は第3のベルトコンベア14によって送られる。このようにして長尺の棒状体15が形成される。
【0035】
この棒状体15を着色フィルムにて包装した後、二次加熱し、着色される。
【0036】
着色フィルムとしては、プラスチックフィルムに、着色された魚肉すり身などを塗布したもので形成できる。着色された魚肉すり身を棒状体15表面に転写し、加熱によって成形した後に、フィルムは取り除かれる。
【0037】
その後、切断装置によって適宜長さに切断され、完成品が得られる。完成品は、その後、真空包装し加熱殺菌後冷却される。
【0038】
なお、上記実施形態では、第1魚肉シート31の上に第2魚肉シート32を積層した積層シート33を一次加熱した後、この成形された積層シート33を細断するようにしたが、第2魚肉シート32を第1魚肉シート31の上に塗布した後細断し、その後積層シート33を加熱するようにしてもよい。
【0039】
また、ドラムスチーマー5に替えて、加熱装置を備えたコンベアを使用してもよい。
【0040】
上記第1魚肉シート31を形成するために使用される魚肉すり身は、冷凍すり身、卵白、澱粉、食塩、カニエキス、調味料および水等を混合して得ることができる。これらの材料を混合、らい潰して魚肉すり身原料糊が得られる。そして、この魚肉すり身原料糊を第1魚肉シート供給装置21によりシート状に成形され、加熱凝固して第1の魚肉シートが得られる。
【0041】
上記第2魚肉シート32を形成する魚肉すり身は、上記第1魚肉シート31を形成する魚肉すり身原料糊に、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を添加混合して得ることができる。
【0042】
収縮性材料としては、熱によって縮む物性を有するものであれば特に限定されない。通常はイカ、タコのすり身、コラーゲン、ケラチン、シルクが使用できる。これらの原料は単独でも、または混合しても使用可能である。最も好ましいのは魚肉すり身に混合して使用するのが好ましい。例えば、イカすり身10kgに対して、卵白0.2〜1.0kg、澱粉0.2〜0.6kg、食塩0.1〜0.3kg、水3〜6kgを混練して、第2の魚肉すり身としてのイカすり身を得ることができる。
【0043】
第2魚肉シート32は、第1魚肉シート31上に、上記収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身をラミネート又は吹き付けることによって形成することができる。
【0044】
得られたカニ脚様魚肉製品は、上記第1の魚肉すり身から調製された基部と、基部上に積層された上記第2の魚肉すり身から調製された収縮層と、を有するものである。また、収縮層の表面には着色層が形成されている。よって、縮れ状の繊維肉を有するカニ脚様魚肉製品が得られる。
【0045】
なお、図3に示す実施例は、出発原料である2本の帯状の魚肉製品をV字状に配置した2本のベルトコンベア2により別方向から送る形態のもので、カッター6による切断は、棒状体33の進行方向と同方向に切断され、逆V字状配置のベルトコンベア2の合流点となる高速コンベア12上にて対向する切断面が衝合すると同時に、上下可動ガイド13により切断面が圧着されるものである。菱形片7の長さや切断面の角度は適宜変更し得る。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。もちろん、本発明は本実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
スケトウすり身100kg、卵白5kg、澱粉3kg、食塩1.8kg、カニエキス1.5kg、味醂1.2kg、水40kgより調製されたスケソウすり身を、ノズルから95℃に設定されたドラムスチーマーの表面上に厚さ、1.0mmでコーティングした。続いて、イカすり身10kg、卵白0.5kg、澱粉0.4kg、食塩0.2kg、水5kgより調製されたイカすり身を、スケソウすり身の上に厚さ0.1mmでラミネートした。
【0047】
次に、特許第2688989号に示されている以下の方法に従って葉脈状カニカマボコを作成した。
(1)上記で得られた2本の帯状の魚肉シートを、ベルトコンベア上に平行に載置し、長手方向に沿って送りながらスリッターにて麺状に(1mm幅に)細断し、これをガイドローラによって各々束状に集束した。
(2)集束された魚肉製品を、各々進行方向に沿って外側部が鋭角になるようカッターにて斜めに切断して菱形片を得た。
(3)先頭の菱形片の先端外側部を、押圧具にて前方内側に押圧し、左右に対応する切断面相互を突合せて矢筈状に形成し、この矢筈状の一組を、隣接させて前方に設けた高速コンベアにて早送りし、後方の菱形片と切り離した。
(4)矢筈状の一組の形成に際しては、高速コンベアの上部に、逆V字状の上下動可能なガイドを配置しておき、左右一対の先頭の菱形片の切断面を突合せた際、瞬間的にこのガイドに当てて先を揃え、その後ガイドを上昇させることにより、矢筈状の一組を前方へ早送りした。
(5)高速コンベアの前方に隣接して配置したベルトコンベア上にて、順次送られてくる矢筈状魚肉製品の先行部の後部に、後方の先端を嵌め込むように順次接続して長尺状に形成した。この際、嵌め込み接続は、通常スピードのベルトコンベア上に位置する矢筈状の一組に対して、後方から高速にて押し付けるように次の一組が送られるため、一定の押圧力が加わることになり、隙間なく接続される。
(6)この棒状の魚肉製品を着色フィルムにて包装した後(色を転写した後)、二次加熱し、その後フィルムを剥がした。
【0048】
通常のスケソウすり身だけで製造されたカニカマボコの繊維肉は、ストレートの棒状を呈しているのに対し、本実施例の方法で製造したものは繊維肉が縮れ状の棒状を呈し、本物のカニに近い繊維肉となり、しかも食感も味もカニに近くなった。
(実施例2)
実施例1と同じく調製したスケソウすり身を、ノズルから95℃に設定されたドラムスチーマーの表面上に厚さ、1.0mmでコーティングした。続いて、コラーゲン(川上食品(株)製:ケイミート)1kg、スケソウすり身9kg、卵白0.5kg、澱粉0.4kg、食塩0.2kg、水5kgより調製されたコラーゲン入りすり身を、スケソウすり身の上に0.1mmをラミネートした。後の工程は、実施例1と同様の方法で葉脈状カニカマボコを作成した。
【0049】
通常のスケソウすり身だけで製造されたカニカマボコの繊維肉は、ストレートの棒状を呈しているのに対し、本願の方法で製造したものは繊維肉が縮れ状の棒状を呈し、本物のカニに近い繊維肉となり、しかも食感も味もカニに近くなった。
(実施例3)
実施例1と同じく調製したスケソウすり身を、ノズルから95℃に設定されたドラムスチーマーの表面上に厚さ、1.0mmでコーティングした。続いて、シルクパウダー(ネイチャーワクス製)1kg、スケソウすり身9kg、卵白0.5kg、澱粉0.4kg、食塩0.2kg、水5kgより調製されたシルクパウダー入りすり身を、スケソウすり身の上に噴霧した。
【0050】
後の工程は、実施例1と同様の方法で葉脈状カニカマボコを作成した。
【0051】
通常のスケソウすり身だけで製造されたカニカマボコの繊維肉は、ストレートの棒状を呈しているのに対し、本願の方法で製造したものは繊維肉が縮れ状の棒状を呈し、本物のカニに近い繊維肉となり、しかも食感も味もカニに近くなった。
(実施例4)
実施例1と同じく調製したスケソウすり身を、ノズルから98℃に設定されたドラムスチーマー5の表面上に厚さ、1.0mmでコーティングした。続いて、イカすり身9kg、コラーゲン(川上食品(株)製:ケイミート)1kg、卵白0.5kg、澱粉0.4kg、食塩0.2kg、水5kgより調製されたイカすり身、コラーゲンからなる混合すり身を、スケソウすり身の上に0.2mmをラミネートした。
【0052】
後の工程は、実施例1と同様の方法で葉脈状カニカマボコを作成した。
【0053】
通常のスケソウすり身だけで製造されたカニカマボコの繊維肉は、ストレートの棒状を呈しているのに対し、本願の方法で製造したものは繊維肉が縮れ状の棒状を呈し、本物のカニに近い繊維肉となり、しかも食感も味もカニに近くなった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の製造装置の一実施例の該略図。
【図2】積層シートの概略断面図。
【図3】本発明の製造装置の他の実施例の該略図。
【符号の説明】
【0055】
2 ベルトコンベア
3 細断機
4 集束装置
6 切断機
7 菱形片
8 突合せ装置
21 第1魚肉シート供給装置
22 第2魚肉シート供給装置
31 第1魚肉シート
32 第2魚肉シート
33 積層シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の魚肉すり身から調製された帯状の第1魚肉シートの少なくとも片面に、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製された第2魚肉シートを積層して積層シートを形成する工程、
2つの該積層シートを搬送装置上にそれぞれ載置し、該各積層シートを長手方向に沿って送りながら細断し、これを束状に集束する工程、
束状に集束された長尺の束状体の各々に対し、進行方向に向かって斜めに切断して菱形片を形成する工程、
該一対の菱形片の切断面を相互に突合せて矢筈状の組合せ体を形成する工程、
該組合せ体を、先行の組合せ体の後部に、後方の先部が嵌め込まれるように順次接続して棒状体を形成する工程、
該棒状体を着色する工程、および
棒状体を加熱する工程、
を包含するカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【請求項2】
前記第1魚肉シートが一次加熱され、その加熱された第1魚肉シートの表面に未加熱の第2魚肉シートが積層される、請求項1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【請求項3】
前記第2の魚肉すり身を第1魚肉シートの表面にラミネートすることにより前記第2魚肉シートが形成される、請求項1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【請求項4】
前記第2の魚肉すり身を第1魚肉シートの表面に吹き付けることにより前記第2魚肉シートが形成される、請求項1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【請求項5】
前記棒状体を加熱する工程が、着色フィルムにて包装した後、加熱する工程を有し、さらに適宜長さに切断する工程を包含する、請求項1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【請求項6】
前記食用の収縮性材料が、イカ、タコのすり身、コラーゲン、ケラチンおよびシルクからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載のカニ脚様魚肉製品の製造方法。
【請求項7】
第1の魚肉すり身を主原料とする魚肉原料を帯状に延展させて形成した第1魚肉シートを連続供給する第1魚肉シート供給装置と、
加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製された第2魚肉シートを第1魚肉シート上に積層する第2魚肉シート供給装置と、
前記第1魚肉シートおよび第2魚肉シートからなる積層シートを搬送する搬送装置と、
該搬送装置上の2つの該積層シートを長手方向に沿って送りながら麺状に細断する細断機と、
該麺状に細断された麺状体を各々束状に集束する集束機と、
該束状に集束された長尺の束状体の各々に対し、進行方向に向かって斜めに切断する切断機と、
該切断機によって形成された菱形片の一対を、その菱形片の切断面同士を相互に突合せて矢筈状の組合せ体を形成する突合せ装置と、
該組合せ体を、先行の組合せ体の後部に、後方の先部が嵌め込まれるように順次接続して棒状体を形成する装置と、
該棒状体を加熱する装置と、
を備えた、カニ脚様魚肉製品の製造装置。
【請求項8】
さらに、前記棒状体を加熱する前に、前記棒状体を食用フィルムにて包装する装置を備える、請求項7に記載のカニ脚様魚肉製品の製造装置。
【請求項9】
第1の魚肉すり身から調製された基部と、該基部上に積層された第2の魚肉すり身から調製された収縮層と、を有するカニ脚様魚肉製品であって、
該収縮層は、加熱によって縮む性質を有する食用の収縮性材料を含有する第2の魚肉すり身から調製されている、カニ脚様魚肉製品。
【請求項10】
前記食用の収縮性材料が、イカ、タコのすり身、コラーゲン、ケラチンおよびシルクからなる群から選択される少なくとも一種である、請求項9に記載のカニ脚様魚肉製品。
【請求項11】
前記基部は、第1の魚肉すり身から調製された帯状の第1魚肉シートをその長さ方向に細断して得られる複数の麺状体を集合して形成され、前記収縮層は、第2の魚肉すり身から調製された帯状の第2魚肉シートをその長さ方向に細断して得られる複数の麺状体を集合して形成されている、請求項9に記載のカニ脚様魚肉製品。
【請求項12】
前記収縮層の表面に着色層が形成されている、請求項9に記載のカニ脚様魚肉製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−295897(P2007−295897A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128602(P2006−128602)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000132172)株式会社スギヨ (23)
【Fターム(参考)】