説明

カバーの取付け構造

【課題】トリムの曲面部に対してカバーの曲面部が重なっている場合において、その重なっている部分に隙間が発生することを防止することのできるカバーの取付け構造を提供する。
【解決手段】車体の一部を構成するパネル28に対してエアコンユニット26が取り付けられており、エアコンユニット26の後方側の表面はトリム14によって覆われており、エアコンユニット26に対してトリム14を介在させた状態でカバー30が取り付けられている。トリム14の曲面部14aに対してカバー30の曲面部30aが重なっており、カバー30には、カバー30に対するトリム14の相対位置を矯正するリブ44a〜44cが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバーの取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被取付け体に樹脂クリップ等を用いて取付け体を取り付ける取付け構造が知られている(特許文献1、2を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2008−149975号公報
【特許文献2】特開2002−362249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、従来、図8に示すようなカバー100の取付け構造が知られている。
図8に示すカバー100の取付け構造では、カバー100の下端に形成された曲面部100aが、トリム102の下端に形成された曲面部102aに対して重なっている。このため、カバー100に対するトリム102の相対位置が上方向もしくは下方向にずれてしまった場合には、トリム102の曲面部102aとカバー100の曲面部100aとの間に隙間104が発生してしまい、この隙間104がカバー100の下端の見栄えを悪化させる要因となっていた。
【0005】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであって、トリムの曲面部に対してカバーの曲面部が重なっている場合において、その重なっている部分に隙間が発生することを防止することのできるカバーの取付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカバーの取付け構造は、車体に対して部品が取り付けられており、前記部品の少なくも一部の表面はトリムによって覆われており、前記部品に対して前記トリムを介在させた状態でカバーが取り付けられているカバーの取付け構造であって、前記トリムの曲面部に対して前記カバーの曲面部が重なっており、前記カバーには、前記カバーに対する前記トリムの相対位置を矯正する矯正部が設けられていることを特徴とするカバーの取付け構造である。
【0007】
本発明のカバーの取付け構造によれば、カバーには矯正部が設けられているために、この矯正部によってカバーに対するトリムの相対位置を矯正することが可能である。したがって、トリムの曲面部に対してカバーの曲面部が重なっている場合において、その重なっている部分に隙間が発生することを防止することが可能となる。
【0008】
本発明のカバーの取付け構造において、前記部品には、係止孔が設けられており、前記カバーには、前記係止孔に差し込まれることで当該係止孔に係止する係止部が設けられており、前記係止孔に前記係止部が差し込まれる過程において、前記矯正部が前記カバーに対する前記トリムの相対位置を矯正することが好ましい。
【0009】
このような構成によれば、係止孔に係止部を差し込むことでカバーを取り付ける操作と、係止部に設けられた矯正部によってカバーに対するトリムの相対位置を矯正する操作が同時に行われることになる。したがって、より簡単な操作でカバーに対するトリムの相対位置を矯正することが可能となる。
【0010】
本発明のカバーの取付け構造において、前記矯正部は、前記係止部に一体的に設けられていることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、矯正部を形成するための別個の部品を準備する必要がなくなるために、カバーを取り付けるための部品点数を削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トリムの曲面部に対してカバーの曲面部が重なっている場合において、その重なっている部分に隙間が発生することを防止することのできるカバーの取付け構造を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両の後部の断面図である。
【図2】トリム、エアコンユニット、及びカバーの斜視図である。
【図3】カバーの裏面側の斜視図である。
【図4】カバーの裏面に設けられたクリップの拡大斜視図である。
【図5】係止孔にクリップを差し込む前の状態を示している。
【図6】係止孔にクリップを途中まで差し込んだ状態を示している。
【図7】係止孔にクリップを差し込んだ後の状態を示している。
【図8】従来のカバーの取付け構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、車両10の後部の断面図である。図1において、左側が車両前方側であり、右側が車両後方側である。
図1に示すように、車両10の後部には、荷物を収容することのできるラゲッジルーム12が設けられている。ラゲッジルーム12の前方側には、内張材としてのトリム14が配設されている。トリム14は、車両10の車体の一部を構成している金属製のパネル16に対して、ブラケット18を介してクリップ20によって取り付けられている。
【0015】
一方、車両10の車室内には、乗員が着座することのできるリヤシート22が設置されている。リヤシート22の後方側には、パッケージトレイ24が配設されている。パッケージトレイ24の下方には、エアコンユニット26が配設されている。エアコンユニット26は、車両10の車体の一部を構成している金属製のパネル28に対して、図示しないビス等によって取り付けられている。エアコンユニット26が、本発明の「部品」に対応している。
【0016】
エアコンユニット26は、ラゲッジルーム12よりも前方側の空間23に配設されている。エアコンユニット26の後方側の表面は、トリム14によって覆われた状態となっている。また、エアコンユニット26の後方側には、カバー30が取り付けられている。カバー30は、エアコンユニット26に対してトリム14を間に介在させた状態で取り付けられている。
【0017】
図2は、トリム14、エアコンユニット26、及びカバー30の斜視図である。
図2に示すように、トリム14は、ある程度の剛性を有する板状の部材であり、例えば樹脂単体や樹脂と繊維の混合物などを圧縮成形して板状に成形したものである。トリム14は、ラゲッジルーム12の容積をできるだけ大きく確保するために、エアコンユニット26が存在しない下方側が車両前方側に向かって屈曲した形状を有している。
【0018】
エアコンユニット26は、車室内の空調のために設置されたものであり、車室内あるいは車室外から取り込んだ空気を熱交換器によって冷却あるいは加温した後に、ダクト27(図1参照)を介して車室内に送風する装置である。エアコンユニット26の後方側の表面には、エアフィルタを交換するための交換口32が設けられている。交換口32の周囲には、当該交換口32を塞ぐためのカバー30を取り付けるための複数の係止孔34が設けられている。一方、トリム14には、エアコンユニット26に設けられた交換口32をラゲッジルーム12側に露出させるための開口部36が形成されている。
【0019】
カバー30は、例えばポリプロピレンなどの合成樹脂材料によって形成された略長方形の板状の部材である。カバー30は、トリム14に設けられた開口部36よりもやや大きく形成されている。カバー30の下縁部は、トリム14の下方側の屈曲形状に重なり合うため、トリム14の下方側の形状に合わせて車両前方側に向かって屈曲している。
【0020】
図3は、カバー30の裏面側の斜視図である。
図3に示すように、カバー30の裏面には、その周縁部に沿って5つのクリップ38a〜38eが設けられている。このうち2つのクリップ38a、38bは、カバー30の裏面の上縁部に沿って設けられており、3つのクリップ38c、38d、38eは、カバー30の裏面の下縁部に沿って設けられている。
【0021】
一方、図2に示すように、トリム14には、カバー30の下縁部の左右両端に設けられたクリップ38c、38eをそれぞれ挿通させるための切欠部50及び挿通孔52が設けられている。
【0022】
図3に示すように、カバー30の裏面のほぼ中央部には、環状のシール部材31が接着剤などによって取り付けられている。シール部材31は、例えば発泡ウレタンなどの柔軟性のある材料によって形成されている。エアコンユニット26に対してカバー30を取り付けた際には、交換口32の周囲がシール部材31によってシールされるために、交換口32を介してエアコンユニット26からラゲッジルーム12内に空気が流出することが防止される。
【0023】
図4は、カバー30の裏面に設けられたクリップ38eの拡大斜視図である。
図4に示すように、クリップ38eは、板状部材からなる一対の脚部40a、40bを備えており、その一対の脚部40a、40bの間には金属製の弾性係止片42が組み付けられている。弾性係止片42には爪部43が形成されており、クリップ38eをエアコンユニット26に設けられた係止孔34に差し込むことによって、爪部43が係止孔34の孔縁部に弾性的に係止するようになっている。
【0024】
図4に示すように、一対の脚部40a、40bは、その向きが水平方向となるように設けられている。一対の脚部40a、40bのうち上方側に位置する脚部40aの上面40a1には、3つの板状のリブ44a〜44cが略垂直にかつ一体的に設けられている。3つのリブ44a〜44cが、本発明の「矯正部」に対応している。
【0025】
3つのリブ44a〜44cのうち、真ん中に位置するリブ44bは、両隣に位置する2つのリブ44a、44cよりも先端側に向かって長く延びた形状を有しており、トリム14に設けられた挿通孔52の上縁部52aを当接案内している。また、リブ44bの両側のリブ44a、44cは、リブ44bで案内された挿通孔52の上縁部52aをリブ44bとともに支持し、トリム14を矯正した位置に保持させている。
【0026】
また、3つのリブ44a〜44cの先端側には、それぞれテーパー部46が形成されている。テーパー部46は、クリップ38eが係止孔34に挿入される方向に対して斜めに形成されている。
【0027】
つぎに、カバー30をエアコンユニット26に対して取り付ける際の態様について、図5〜図7を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
図5は、係止孔34にクリップ38a〜38eを差し込む前の状態を示している。図5に示すように、係止孔34にクリップ38a〜38eを差し込む前の状態では、トリム14が本来の位置よりも下方に下がった状態となっている。したがって、カバー30に対するトリム14の相対位置は下方にずれた状態となっており、エアコンユニット26の下端部26aとトリム14の間には隙間48が生じている。
【0029】
図6は、係止孔34にクリップ38a〜38eを途中まで差し込んだ状態を示している。図6に示すように、係止孔34にクリップ38a〜38eを途中まで差し込んだ状態では、脚部40aの上面40a1に設けられた真ん中のリブ44bが、トリム14に設けられた挿通孔52の上縁部52aを上方に向かって押圧している。これにより、トリム14が上方に向かって徐々に押し上げられている。
【0030】
図7は、係止孔34にクリップ38a〜38eを完全に差し込んだ後の状態を示している。図7に示すように、係止孔34にクリップ38a〜38eを完全に差し込んだ後の状態では、脚部40aの上面40a1に設けられた3つのリブ44a〜44cが、トリム14に設けられた挿通孔52の上縁部52aを上方に向かって押圧している。これにより、トリム14が上方に押し上げられており、カバー30に対するトリム14の相対位置が下方にずれた状態から元の位置に矯正されている。
【0031】
このように、本実施形態のカバー30の取付け構造によれば、係止孔34にクリップ38a〜38eを差し込む過程において、脚部40aの上面40a1に設けられた3つのリブ44a〜44cが、トリム14に設けられた挿通孔52の上縁部52aを上方に向かって押圧するために、カバー30に対するトリム14の相対位置を下方にずれた状態から元の位置に矯正することが可能である。
【0032】
図5〜図7に示すように、トリム14の下縁部には、車両前方側に屈曲した曲面部14aが形成されており、カバー30の下縁部にも、車両前方側に屈曲した曲面部30aが形成されている。カバー30の曲面部30aは、トリム14の曲面部14aに対して車両後方側から重なっている。
【0033】
ところで、カバー30に対するトリム14の相対位置が上下方向にずれてしまった場合には、トリム14の曲面部14aと、カバー30の曲面部30aとの間には、隙間が発生してしまう。
【0034】
しかし、本実施形態のカバー30の取付け構造によれば、3つのリブ44a〜44cによってカバー30に対するトリム14の相対位置を矯正することが可能であるために、トリム14の曲面部14aとカバー30の曲面部30aとの間に隙間が発生することを防止することが可能となっている。
【0035】
また、本実施形態のカバー30の取付け構造によれば、係止孔34にクリップ38a〜38eを差し込むことでエアコンユニット26に対してカバー30を取り付ける操作と、3つのリブ44a〜44cによってカバー30に対するトリム14の相対位置を矯正する操作が同時に行われることになる。したがって、より簡単な操作でカバー30に対するトリム14の相対位置を矯正することが可能となる。
【0036】
また、本実施形態のカバー30の取付け構造によれば、3つのリブ44a〜44cが、クリップ38の一方の脚部40aの上面40a1に対して一体的に設けられているために、リブ44a〜44cを形成するための別個の部品を準備する必要がなく、カバー30を取り付けるための部品点数を削減することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態のカバー30の取付け構造によれば、3つのリブ44a〜44cには、先端側に向けて次第に細くなったテーパー部46が形成されている。したがって、3つのリブ44a〜44cから挿通孔52の上縁部52aに対して徐々に上方への押圧力が加わることになる。この結果、挿通孔52の上縁部52aに対して上方への押圧力が急激に加わることを防止することが可能であり、クリップ38eを係止孔34に差し込む際に、挿通孔52の上縁部52aが破れてしまうことを防止することが可能である。
【0038】
また、本実施形態のカバー30の取付け構造によれば、クリップ38eには3つのリブ44a〜44cが設けられている。したがって、リブが1つだけ設けられている場合よりも、挿通孔52の上縁部52aに対して広い範囲で押圧力が加わるために、挿通孔52の上縁部52aが破れてしまうことをより効果的に防止することができる。
【0039】
また、本実施形態のカバー30の取付け構造によれば、クリップ38eには3つのリブ44a〜44cが設けられており、真ん中に位置するリブ44bが、両隣に位置する2つのリブ44a、44cよりも先端側に向かって長く延びた形状を有している。したがって、クリップ38eを係止孔34に差し込む過程において、まず真ん中に位置するリブ44bが挿通孔52の上縁部52aを上方に押し上げた後に、両隣に位置する2つのリブ44a、44cが挿通孔52の上縁部52aを上方に押し上げることになる。つまり、3つのリブ44a〜44cが挿通孔52の上縁部52aを段階的に上方に押圧するために、挿通孔52の上縁部52aが破れてしまうことをより効果的に防止することができる。
【0040】
なお、上記の説明では、トリム14に設けられた挿通孔52とクリップ38eとの関係を例にとって説明したが、トリム14に設けられた切欠部50とクリップ38cとの関係についても同様である。すなわち、クリップ38cを係止孔34に差し込む過程において、クリップ38cに設けられた3つのリブ45a〜45c(図3参照)が、トリム14に設けられた切欠部50の上縁部50a(図2参照)を上方に向かって押圧する。これにより、カバー30に対するトリム14の相対位置を下方にずれた状態から元の位置に矯正することが可能である。
【0041】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態では、車体に取り付けられている「部品」がエアコンユニット26である例を示したが、本発明はこれ以外の部品に対しても適用することが可能である。例えば、車体に取り付けられる「部品」が車室内の天井部に設置されたスピーカである場合であっても、本発明を適用することが可能である。
(2)上記実施形態では、「部品」の表面を覆うトリム14がラゲッジルーム12の内張材である例を示したが、本発明はこれ以外のトリムに対しても適用することが可能である。例えば、「部品」が車室内の天井部に設置されたスピーカであって、「トリム」がスピーカの車室内側の表面を覆うルーフライニングである場合であっても、本発明を適用することが可能である。
(3)上記実施形態では、クリップ38eに対して3つのリブ44a〜44cが設けられている例を示したが、クリップ38eに対して1つないし2つ、あるいは、4つ以上のリブが設けられている場合であっても、本発明を適用することが可能である。
(4)上記実施形態では、トリム14の下縁部が車両前方側に屈曲しており、カバー30の下縁部も車両前方側に屈曲している例を示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、トリム14の上縁部または側縁部が車両前方側に屈曲しており、カバー30の上縁部または側縁部も車両前方側に屈曲している場合であっても、本発明を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0042】
10…車両
14…トリム
14a…曲面部
26…エアコンユニット(部品)
28…パネル(車体)
30…カバー
30a…曲面部
34…係止孔
38a〜38e…クリップ(係止部)
44a〜44c…リブ(矯正部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に対して部品が取り付けられており、前記部品の少なくも一部の表面はトリムによって覆われており、前記部品に対して前記トリムを介在させた状態でカバーが取り付けられているカバーの取付け構造であって、
前記トリムの曲面部に対して前記カバーの曲面部が重なっており、
前記カバーには、前記カバーに対する前記トリムの相対位置を矯正する矯正部が設けられていることを特徴とするカバーの取付け構造。
【請求項2】
請求項1に記載のカバーの取付け構造であって、
前記部品には、係止孔が設けられており、
前記カバーには、前記係止孔に差し込まれることで当該係止孔に係止する係止部が設けられており、
前記係止孔に前記係止部が差し込まれる過程において、前記矯正部が前記カバーに対する前記トリムの相対位置を矯正することを特徴とするカバーの取付け構造。
【請求項3】
請求項2に記載のカバーの取付け構造であって、
前記矯正部は、前記係止部に一体的に設けられていることを特徴とするカバーの取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−93399(P2011−93399A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248172(P2009−248172)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】