カバー付きロボットハンド
【課題】搬送中のワークの落下や位置ずれを防止しつつワークの高速な搬送を可能にするカバー付きロボットハンドを提供する。
【解決手段】搬送されるワーク13を把持するカバー付きロボットハンド12が、ロボットアーム11の先端に取り付けられる基部14と、基部14に配置され且つワーク13を把持する把持部15と、基部14に配置されたカバー16と、把持部15に対するカバー16の相対位置を変更するカバー位置変更部16dとを具備し、カバー位置変更部16dが、カバー16の相対位置を、ワーク13の搬送中にワーク13の一部を包囲する保護位置と、ワーク13を把持又は解放する際にワーク13の把持又は解放を阻害しない開放位置との間で変更する。
【解決手段】搬送されるワーク13を把持するカバー付きロボットハンド12が、ロボットアーム11の先端に取り付けられる基部14と、基部14に配置され且つワーク13を把持する把持部15と、基部14に配置されたカバー16と、把持部15に対するカバー16の相対位置を変更するカバー位置変更部16dとを具備し、カバー位置変更部16dが、カバー16の相対位置を、ワーク13の搬送中にワーク13の一部を包囲する保護位置と、ワーク13を把持又は解放する際にワーク13の把持又は解放を阻害しない開放位置との間で変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー付きロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
基板等のワークを搬送するロボットにおいて、アーム先端に、真空ポンプによってワークを吸着して把持する把持部を有するロボットハンドを備えたものが公知である(特許文献1参照)。特許文献1に記載のロボットハンドは、搬送中のハンドの損傷を防止するために、ワークを把持した状態で、ハンドの側面部と、上面及び下面の一部とを覆うように装着される保護カバーを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−176945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットハンドによって把持されたワークを搬送する際に、搬送中のワークは、その移動によって相対的に生じる風から受ける風力等の、移動に起因する外力に曝される。その結果、ワークが、搬送中に把持部から外れて落下してしまったり、把持部に対するワークの位置がずれてしまい、意図した場所へワークを搬送できなくなったりする場合がある。
【0005】
ワーク搬送中に相対的に生じる風の風力を小さくするように、ロボットハンドの搬送速度を遅くすることが考えられる。しかしながら、搬送速度を遅くすると、単位時間当たりのワークの搬送処理能力が低下してしまう。また、ハンドの把持力を増大させると、剛性の低いワークを搬送する際にワークが塑性変形してしまう恐れがある。
【0006】
特許文献1に記載のロボットハンドは、保護カバーがハンドの損傷を防止するために設けられており、ワークの搬送中に受ける風力からワークを保護するものではない。
【0007】
本発明は、一態様において、搬送中のワークの落下や位置ずれを防止しつつワークの高速な搬送を可能にするカバー付きロボットハンドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、搬送されるワークを把持するロボットハンドにおいて、ロボットアームの先端に取り付けられる基部と、該基部に配置され且つワークを把持する把持部と、前記基部に配置されたカバーと、前記把持部に対する前記カバーの相対位置を変更するカバー位置変更部と、を具備し、該カバー位置変更部が、前記カバーの相対位置を、ワークの搬送中にワークの一部を包囲する保護位置と、ワークを把持又は解放する際にワークの把持又は解放を阻害しない開放位置との間で変更することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記カバーが前記基部に対して回動可能に基部に連結され、前記カバー位置変更部が、前記保護位置にある前記カバーが前記開放位置にある前記カバーよりも前記把持部に近接するように回転角度を変更し、前記保護位置にある前記カバーが、前記把持部に把持されたワークを越えて延びていることを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0010】
すなわち、請求項1及び2に記載の発明では、搬送中のワークの落下や位置ずれを防止しつつワークの高速な搬送が可能になるという効果を奏する。
【0011】
また、請求項3に記載の発明によれば請求項2に記載の発明において、ワークが当該ロボットハンドによって鉛直上方から把持された状態で水平方向に搬送される場合において、搬送中に前記カバーが自重により前記保護位置を維持し、前記カバー位置変更部が、前記カバーに設けられた滑動部を具備し、ワークを把持又は解放する際に目標とする平面に対して当該ロボットハンドを下降させると、前記滑動部が前記平面に当接しつつ該平面上を滑ることで前記カバーを前記基部に対して回動させ、前記カバーが前記開放位置へと変更することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0012】
すなわち、請求項3に記載の発明では、駆動装置や制御装置等を用いる必要がないため、簡略な機構でカバー位置を制御することができるという効果を奏する。
【0013】
また、請求項4に記載の発明によれば請求項3に記載の発明において、前記カバーを前記保護位置へ付勢する付勢部材をさらに具備することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0014】
すなわち、請求項4に記載の発明では、付勢部材によってカバーを保護位置へと付勢しているため、搬送中のワークを風力等からより確実に保護することが可能となる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明によれば請求項2に記載の発明において、前記カバー位置変更部が、前記カバーの回転角度を変更する駆動装置を具備することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0016】
すなわち、請求項5に記載の発明では、カバーの回転角度を自在に制御できるため、搬送される方向に対してワークを確実に保護できるような最適な回転角度にカバーを維持することが可能となる。また、駆動装置を用いることによって、カバー位置の変更を迅速に行うことができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記カバー位置変更部が、前記カバーを並進運動させて、前記保護位置と前記開放位置との間で前記カバーの相対位置を変更する駆動装置を具備することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0018】
また、請求項7に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記基部が、ロボットアームの先端に取り付けられ且つ前記カバーが配置された第1基部と、前記把持部が配置された第2基部とを有し、前記カバー位置変更部が、前記第1基部又は第2基部の一方を他方に対して並進運動させて、前記保護位置と前記開放位置との間で前記カバーの相対位置を変更する駆動装置を具備することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0019】
すなわち、請求項6及び7に記載の発明では、カバーの位置を自在に制御できるため、搬送される方向に対してワークを確実に保護できるような最適な位置にカバーを維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
各請求項に記載の発明によれば、搬送中のワークの落下や位置ずれを防止しつつ、ロボットアームの性能を最大限活用したワークの高速な搬送が可能になるという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一態様によるロボットハンドの第1の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたロボットハンドのカバーが保護位置にある状態を示す側面図である。
【図3】図1に示されたロボットハンドのカバーが開放位置にある状態を示す側面図である。
【図4】本発明の一態様によるロボットハンドの第2の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一態様によるロボットハンドの第3の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一態様によるロボットハンドの第4の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示されたロボットハンドのカバーが保護位置にある状態を示す側面図である。
【図8】図6に示されたロボットハンドのカバーが開放位置にある状態を示す側面図である。
【図9】本発明の一態様によるロボットハンドの第5の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図10】図9に示されたロボットハンドのカバーが保護位置にある状態を示す側面図である。
【図11】図9に示されたロボットハンドのカバーが開放位置にある状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各実施形態で示されるロボットハンドは、基板等のワークを搬送するロボットに用いられるものであり、ロボットは、ロボットアームを介してロボットハンドによってワークを把持し、把持されたワークを目標の位置へ搬送し、そこで解放するような構成である。
【0023】
図1は、本発明の一態様によるロボットハンドの第1の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図1を参照すると、ロボットアーム11の先端にロボットハンド12が設けられ、ロボットハンド12が基板等の平板状のワーク13を把持している状態が示されている。ロボットハンド12は、基部14と把持部15とカバー16とを有している。
【0024】
ロボットハンド12は、矩形の平板状をした基部14を介してロボットアーム11に連結され、基部14には、少なくとも1個、本実施形態では3個ずつ2列に並んだ合計6個の把持部15が、基部14の表面14aに対して垂直に外方へ同じ長さだけ突出するように配置されている。把持部15のロボットアーム11側の端部は、真空ポンプに接続されたエアチューブに接続されている(図示せず)。把持部15は、真空ポンプの作用によって、その他方の端部近傍に配置されたワーク13を吸引して吸着し、把持するような構造となっている。把持されたワーク13は、把持部15における吸引を停止することによって解放される。図1に示された状態が、水平面に配置されたワーク13を把持した直後の状態、すなわち、ロボットハンド12がワーク13を鉛直上方から把持した状態であり、基部14側を上方とし、ワーク13側を下方とする。すなわち、ワーク13の表面13a又は基部14の表面14aに対して垂直に上下方向が延びている。これは、後述する図4、5、6及び9に示される実施形態においても同様である。
【0025】
矩形の基部14の一辺には、蝶番等の連結部材17が配置され、カバー16を当該辺に対して回動可能に連結している。カバー16は、連結部材17が配置された頂面16aと、頂面16aに対して垂直な矩形のカバー面16bと、これら面に対して垂直で且つ対向する同一形状をした2つの側面16cとを有している。頂面16aは、基部14が連結された辺に対して垂直な基部14の辺の側まで延び、上方から見るとコの字形状をしている。なお、連結部材17がカバー面16bに直接連結している構成でもよい。
【0026】
カバー面16bの下端部は、把持部15に把持されたワーク13の下面よりも下方へ延びている。側面16cの、頂面16a及びカバー面16bから離れた側の端縁は、滑動部16dを形成している。滑動部16dは、側面16cがカバー面16bと交わる辺の下端部又は先端部から上方へ向けて下に凸の円弧状又は曲線状に形成されており、後述するように、カバー16を開放位置に移動させる、カバー位置変更部として機能する。対向する2つの側面16cの滑動部16dの対応する曲率中心を結んだ線は、連結部材17によって回動するカバー16の回転中心軸線と平行ではあるが異なる位置にある。図1に示されたロボットハンド12に対するカバー16の位置を保護位置とすると、カバー16は、保護位置にある場合には、ワーク13の一部を接触することなく包囲している。
【0027】
図2は、図1に示されたロボットハンド12のカバー16が保護位置にある状態を示す側面図である。この状態で、ロボットハンド12によって把持されたワーク13は、基部14の表面14a又はワーク13の表面13aと平行に、すなわち、矢印Mの方向に搬送される。そうすると、仮にロボットハンド12の周囲の環境が無風状態であったとしても、ロボットハンド12の周囲には、当該搬送によって搬送方向とは逆の方向、すなわち、矢印Wで示される方向の風であって搬送速度と同じ風速の風が、相対的に生じる。しかしながら、ワーク13は、その一部がカバー16によって包囲されているため、この相対的に生じた風に対して保護され、その結果、ワーク13が風力を直接受けることはない。従って、当該カバー16付きのロボットハンド12によれば、搬送中のワーク13の落下や位置ずれが生じることなく、また、搬送中の相対的に生じる風の影響を考慮する必要がないため、ワーク13の高速な搬送が可能となる。
【0028】
図3は、図1に示されたロボットハンド12のカバー16が開放位置にある状態を示す側面図である。ここで、開放位置とは、カバー16が平面上に配置されたワーク13を把持又は解放する際に、カバー16自体がそれを阻害しないような位置に退避した状態であり、上述した保護位置は、カバー16がワーク13を搬送中に相対的に生じる風からワーク13を保護する位置にある状態である。
【0029】
ワーク13をロボットハンド12に把持又はロボットハンド12から解放するために、ロボットハンド12を目標とする平面Sに対して接近させると、保護位置の滑動部16dの最下端が最初に平面Sに当接する。この状態では、把持部15は平面Sとは離間している。その後、ロボットハンド12をさらに平面Sに対して押し込むと、滑動部16dがその曲線形状に沿って平面S上を滑り、それによってカバー16が連結部材17の回転中心周りを外方に回動する。すなわち、滑動部16dは、平面Sに対して押し込まれた際に受ける、平面Sに対して垂直方向の力を、連結部材17の回転中心周りのトルクに変換する形状を有している。
【0030】
カバー16が連結部材17の回転中心周りを外方に回動した結果、把持部15が平面Sと当接又は近接することが可能となり、カバー16自体がワーク13の把持又は解放を阻害しないような位置に退避される。すなわち、本実施形態において、保護位置にあるカバー16は、開放位置にあるカバー16よりもカバー面16bが把持部15に近接している。
【0031】
なお、本実施形態におけるカバー16は、基部14に対して連結部材17を介して回動自在に連結され、且つ、把持部15が鉛直下方を向いた状態でワークが搬送されるため、カバー16がその自重によって開放位置にある場合以外は保護位置となるように、重心位置が定められている。
【0032】
図4は、本発明の一態様によるロボットハンドの第2の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図4を参照すると、ロボットアーム21の先端にロボットハンド22が設けられ、ロボットハンド22が基板等の平板状のワーク23を把持している状態が示されている。ロボットハンド22は、基部24と把持部25とカバー26とを有している。
【0033】
本実施形態におけるロボットアーム21、ワーク23、基部24、把持部25、カバー26及び連結部材27は、第1の実施形態と同様である。従って、カバー26は、頂面26aと、カバー面26bと、側面26cと、滑動部26dとを有する。第2の実施形態は、基部24に対してカバー26を連結する連結部材27近傍に、カバー26を保護位置に付勢するように配置された付勢部材28を有する点で第1の実施形態に較べて異なる。すなわち、第1の実施形態では、カバー16の自重で保護位置を維持する構成であるが、これに対して、本実施形態は、付勢部材28を有することによって、より確実に保護位置を維持することが可能となる。なお、当然のことながら、第1の実施形態について図3を参照しながら説明したように、本実施形態においても滑動部26dがカバー位置変更部として機能する。従って、平面にカバー26の最下端を当接させ、さらに押し込むことによって、滑動部26dの作用でカバー26を開放位置にすることができる。
【0034】
図5は、本発明の一態様によるロボットハンドの第3の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図5を参照すると、ロボットアーム31の先端にロボットハンド32が設けられ、ロボットハンド32が基板等の平板状のワーク33を把持している状態が示されている。ロボットハンド32は、基部34と把持部35とカバー36とを有している。
【0035】
本実施形態におけるロボットアーム31、ワーク33、基部34及び把持部35は、第1の実施形態と同様である。一方、カバー36は、カバー面36aと、側面36bとを有する。カバー面36aは、基部34よりも上方へ突出して延びている。さらに、基部34の一辺には、連結部材37が配置され、カバー36を当該辺に対して回動可能に連結している。
【0036】
基部34の上面には、カバー36に連結され、カバー36の連結部材37周りの回転角を変更する駆動装置38が配置され、駆動装置38がカバー位置変更部として機能する。このような駆動装置は種々考えられるが、本実施形態では、駆動装置38が前後に摺動するロッド38aを有し、図示しない制御装置(例えば、ロボットコントローラ)によってその摺動が制御される。ロッド38aの先端は、上述したカバー面36aの突出した部分に回動可能に連結されている。ロッド38aが引っ込むと、カバー面36aの突出した部分も内方へ引っ張られ、その結果、カバー36は開放位置に移動する。一方、ロッド38aが突出すると、カバー面36aの突出した部分も外方へ押し出され、その結果、カバー36は保護位置に移動する。すなわち、カバーの側面の形状が異なるが、本実施形態におけるカバーの保護位置及び開放位置の状態は、図2及び図3と同様である。さらに、本実施形態では、これら位置の中間の位置でカバー36を静止させることも可能である。
【0037】
第3の実施形態によれば、駆動装置38を用いることによって、ワーク33が受ける風力の方向に応じてカバー36の回転角を自由に制御できるため、ワーク33を保護するのに最適なカバー36の角度を維持することが可能となる。また、駆動装置38を用いることによって、カバー36を開放位置に迅速に配置することもでき、さらに、カバー36の重心位置にかかわらず、カバー36を確実且つ迅速に保護位置に配置することが可能となる。当該カバー36付きのロボットハンド32によれば、搬送中のワーク33の落下や位置ずれが生じることなく、また、搬送中の相対的に生じる風の影響を考慮する必要がないため、ワーク33の高速な搬送が可能となる。
【0038】
図6は、本発明の一態様によるロボットハンドの第4の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図6を参照すると、ロボットアーム41の先端にロボットハンド42が設けられ、ロボットハンド42が基板等の平板状のワーク43を把持している状態が示されている。ロボットハンド42は、基部44と把持部45とカバー46とを有している。
【0039】
本実施形態におけるロボットアーム41、ワーク43、基部44及び把持部45は、第1の実施形態と同様である。一方、カバー46は、カバー面46aと、側面46bとを有する。基部44には、基部44の表面44a又はワーク43の表面43aに対して垂直な方向、すなわち、上下方向に沿ってカバーを移動させる駆動装置47が設けられている。駆動装置47は、カバー位置変更部として機能し、カバーを移動させる方向は、並進方向であればこれに限定されない。このような駆動装置は種々考えられるが、本実施形態では、駆動装置47が上下に摺動するロッド47aを有し、図示しない制御装置(例えば、ロボットコントローラ)によってその摺動が制御される。カバー46はロッド47aに取り付けられているため、ロッド47aの上下動に合わせてカバー46全体を上下動させることが可能となる。
【0040】
図7は、図6に示されたロボットハンド42のカバー46が保護位置にある状態を示す側面図である。保護位置では、カバー面46aの下端部は、駆動装置47によって、ワーク43の面よりも下方へ移動されている。図2を参照しながら説明したように、この状態で、ロボットハンド42によって把持されたワーク43は、基部44の表面44a又はワーク43の表面43aと平行に、すなわち、矢印Mの方向に搬送される。そうすると、仮にロボットハンド42の周囲の環境が無風状態であったとしても、ロボットハンド42の周囲には、当該搬送によって搬送方向とは逆の方向、すなわち、矢印Wで示される方向の風であって搬送速度と同じ風速の風が、相対的に生じる。しかしながら、ワーク43は、その一部がカバー46によって包囲されているため、この相対的に生じた風に対して保護され、その結果、ワーク43が風力を直接受けることはない。
【0041】
図8は、図6に示されたロボットハンド42のカバー46が開放位置にある状態を示す側面図である。開放位置では、カバー面46aの下端部が、駆動装置47によって、ワーク43の下面又は把持部45の先端部よりも上方へ移動されている。従って、ロボットハンド42は、ワーク43をロボットハンド42に把持又はロボットハンド42から解放することが可能となる。さらに、本実施形態では、これら保護位置と開放位置との中間の位置でカバー46を静止させることも可能である。
【0042】
第4の実施形態によれば、駆動装置47を用いることによって、カバー46の上下の位置を自由に制御できるため、ワーク43を保護するのに最適なカバー46の位置を維持することが可能となる。また、駆動装置47を用いることによって、カバー46を保護位置又は開放位置に迅速に配置することもできる。従って、当該カバー46付きのロボットハンド42によれば、搬送中のワーク43の落下や位置ずれが生じることなく、また、搬送中の相対的に生じる風の影響を考慮する必要がないため、ワーク43の高速な搬送が可能となる。
【0043】
図9は、本発明の一態様によるロボットハンドの第5の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図9を参照すると、ロボットアーム51の先端にロボットハンド52が設けられ、ロボットハンド52が基板等の平板状のワーク53を把持している状態が示されている。ロボットハンド52は、第1基部54と把持部55とカバー56とを有している。
【0044】
本実施形態におけるロボットアーム51、ワーク53及び把持部55は、第1の実施形態と同様である。本実施形態におけるロボットハンド52は、第1基部54の表面54aと平行に配置された第2基部57及び第2基部57に配置された駆動装置58を介してロボットアーム51に連結されている。すなわち、本実施形態の基部は、矩形の平板状をした第1基部54及び第2基部57を有している。第1基部54は、第1の実施形態における基部14に相当し、把持部55が配置されている。駆動装置58は上下に摺動するロッド58aを有し(図11参照)、ロッド58aが第1基部54に対して上方から取り付けられている。従って、図示しない制御装置(例えば、ロボットコントローラ)によって駆動装置58のロッド58aの上下動が制御されると、それに合わせて第1基部54を上下動させることが可能となる。なお、駆動装置58は、第1基部54に配置されてもよい。すなわち、駆動装置58は、カバー位置変更部として機能し、カバーを移動させる方向は、並進方向であればこれに限定されない。
【0045】
カバー56は、カバー面56aと、側面56bとを有し、第2基部57の一辺に連結されている。従って、第1基部54の上下動にかかわらず、カバー56は、第2基部57に固定されたままであり、カバー56と把持されたワーク53は、駆動装置58のロッド58aの上下動によって、その相対的な位置が制御される。
【0046】
図10は、図9に示されたロボットハンド52のカバー56が保護位置にある状態を示す側面図である。保護位置では、ワーク53の面は、駆動装置58によって、カバー面56aの下端部よりも上方へ移動されている。図2を参照しながら説明したように、この状態で、ロボットハンド52によって把持されたワーク53は、第1基部54の表面54a又はワーク53の表面53aと平行に、すなわち、矢印Mの方向に搬送される。そうすると、仮にロボットハンド52の周囲の環境が無風状態であったとしても、ロボットハンド52の周囲には、当該搬送によって搬送方向とは逆の方向、すなわち、矢印Wで示される方向の風であって搬送速度と同じ風速の風が、相対的に生じる。しかしながら、ワーク53は、その一部がカバー56によって包囲されているため、この相対的に生じた風に対して保護され、その結果、ワーク53が風力を直接受けることはない。
【0047】
図11は、図9に示されたロボットハンド52のカバー56が開放位置にある状態を示す側面図である。開放位置では、ワーク53の面又は把持部55の先端部は、駆動装置58によって、カバー面56aの下端部よりも下方へ移動されている。従って、ロボットハンド52は、ワーク53をロボットハンド52に把持又はロボットハンド52から解放することが可能となる。さらに、本実施形態では、これら保護位置と開放位置との中間の位置でカバー56を静止させることも可能である。
【0048】
第5の実施形態によれば、駆動装置58を用いることによって、ワーク53又は把持部55の先端部の上下の位置を自由に制御できるため、ワーク53を保護するのに最適なカバー56との相対的な位置を維持することが可能となる。また、駆動装置58を用いることによって、カバー56を保護位置又は開放位置に迅速に配置することもできる。従って、当該カバー56付きのロボットハンド52によれば、搬送中のワーク53の落下や位置ずれが生じることなく、また、搬送中の相対的に生じる風の影響を考慮する必要がないため、ワーク53の高速な搬送が可能となる。
【0049】
なお、第4の実施形態及び第5の実施形態では、駆動装置及びロッドによってカバーとワーク又は把持部との相対位置を並進方向に制御したが、これを同様の並進運動を可能にする単なるレール等に置き換えてもよい。すなわち、カバーは、ワークの搬送中はその自重によって保護位置を維持し、ワークを把持又は解放する際に目標とする平面に対してロボットハンドを下降させると、まずカバーが平面に当接し、次いで、レールに沿って把持部が下降した結果、開放位置になるようにしてもよい。
【0050】
上述の実施形態では、矩形のワークの一辺に対して垂直な方向からの風力等の外力からワークを保護するようカバーのカバー面を配置したが、外力の働く方向に応じてカバー面の形状や保護する範囲を変更してもよい。また、把持部は真空ポンプを用いた吸着によってワークを把持する構成であったが、ワークの材質によっては、把持部を電磁石によって構成してもよい。また、基部は矩形の平板状であったが、円形等その他の形状でもよい。同様に、ワークは平板状以外にも直方体や球形等その他の形状であってもよい。また、カバーの全体形状を流線形等、風の抵抗を軽減するような形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
11 ロボットアーム
12 ロボットハンド
13 ワーク
14 基部
15 把持部
16 カバー
【技術分野】
【0001】
本発明は、カバー付きロボットハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
基板等のワークを搬送するロボットにおいて、アーム先端に、真空ポンプによってワークを吸着して把持する把持部を有するロボットハンドを備えたものが公知である(特許文献1参照)。特許文献1に記載のロボットハンドは、搬送中のハンドの損傷を防止するために、ワークを把持した状態で、ハンドの側面部と、上面及び下面の一部とを覆うように装着される保護カバーを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−176945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットハンドによって把持されたワークを搬送する際に、搬送中のワークは、その移動によって相対的に生じる風から受ける風力等の、移動に起因する外力に曝される。その結果、ワークが、搬送中に把持部から外れて落下してしまったり、把持部に対するワークの位置がずれてしまい、意図した場所へワークを搬送できなくなったりする場合がある。
【0005】
ワーク搬送中に相対的に生じる風の風力を小さくするように、ロボットハンドの搬送速度を遅くすることが考えられる。しかしながら、搬送速度を遅くすると、単位時間当たりのワークの搬送処理能力が低下してしまう。また、ハンドの把持力を増大させると、剛性の低いワークを搬送する際にワークが塑性変形してしまう恐れがある。
【0006】
特許文献1に記載のロボットハンドは、保護カバーがハンドの損傷を防止するために設けられており、ワークの搬送中に受ける風力からワークを保護するものではない。
【0007】
本発明は、一態様において、搬送中のワークの落下や位置ずれを防止しつつワークの高速な搬送を可能にするカバー付きロボットハンドを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、搬送されるワークを把持するロボットハンドにおいて、ロボットアームの先端に取り付けられる基部と、該基部に配置され且つワークを把持する把持部と、前記基部に配置されたカバーと、前記把持部に対する前記カバーの相対位置を変更するカバー位置変更部と、を具備し、該カバー位置変更部が、前記カバーの相対位置を、ワークの搬送中にワークの一部を包囲する保護位置と、ワークを把持又は解放する際にワークの把持又は解放を阻害しない開放位置との間で変更することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0009】
また、請求項2に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記カバーが前記基部に対して回動可能に基部に連結され、前記カバー位置変更部が、前記保護位置にある前記カバーが前記開放位置にある前記カバーよりも前記把持部に近接するように回転角度を変更し、前記保護位置にある前記カバーが、前記把持部に把持されたワークを越えて延びていることを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0010】
すなわち、請求項1及び2に記載の発明では、搬送中のワークの落下や位置ずれを防止しつつワークの高速な搬送が可能になるという効果を奏する。
【0011】
また、請求項3に記載の発明によれば請求項2に記載の発明において、ワークが当該ロボットハンドによって鉛直上方から把持された状態で水平方向に搬送される場合において、搬送中に前記カバーが自重により前記保護位置を維持し、前記カバー位置変更部が、前記カバーに設けられた滑動部を具備し、ワークを把持又は解放する際に目標とする平面に対して当該ロボットハンドを下降させると、前記滑動部が前記平面に当接しつつ該平面上を滑ることで前記カバーを前記基部に対して回動させ、前記カバーが前記開放位置へと変更することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0012】
すなわち、請求項3に記載の発明では、駆動装置や制御装置等を用いる必要がないため、簡略な機構でカバー位置を制御することができるという効果を奏する。
【0013】
また、請求項4に記載の発明によれば請求項3に記載の発明において、前記カバーを前記保護位置へ付勢する付勢部材をさらに具備することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0014】
すなわち、請求項4に記載の発明では、付勢部材によってカバーを保護位置へと付勢しているため、搬送中のワークを風力等からより確実に保護することが可能となる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明によれば請求項2に記載の発明において、前記カバー位置変更部が、前記カバーの回転角度を変更する駆動装置を具備することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0016】
すなわち、請求項5に記載の発明では、カバーの回転角度を自在に制御できるため、搬送される方向に対してワークを確実に保護できるような最適な回転角度にカバーを維持することが可能となる。また、駆動装置を用いることによって、カバー位置の変更を迅速に行うことができる。
【0017】
また、請求項6に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記カバー位置変更部が、前記カバーを並進運動させて、前記保護位置と前記開放位置との間で前記カバーの相対位置を変更する駆動装置を具備することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0018】
また、請求項7に記載の発明によれば請求項1に記載の発明において、前記基部が、ロボットアームの先端に取り付けられ且つ前記カバーが配置された第1基部と、前記把持部が配置された第2基部とを有し、前記カバー位置変更部が、前記第1基部又は第2基部の一方を他方に対して並進運動させて、前記保護位置と前記開放位置との間で前記カバーの相対位置を変更する駆動装置を具備することを特徴とするカバー付きロボットハンドが提供される。
【0019】
すなわち、請求項6及び7に記載の発明では、カバーの位置を自在に制御できるため、搬送される方向に対してワークを確実に保護できるような最適な位置にカバーを維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
各請求項に記載の発明によれば、搬送中のワークの落下や位置ずれを防止しつつ、ロボットアームの性能を最大限活用したワークの高速な搬送が可能になるという共通の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一態様によるロボットハンドの第1の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示されたロボットハンドのカバーが保護位置にある状態を示す側面図である。
【図3】図1に示されたロボットハンドのカバーが開放位置にある状態を示す側面図である。
【図4】本発明の一態様によるロボットハンドの第2の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の一態様によるロボットハンドの第3の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の一態様によるロボットハンドの第4の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図7】図6に示されたロボットハンドのカバーが保護位置にある状態を示す側面図である。
【図8】図6に示されたロボットハンドのカバーが開放位置にある状態を示す側面図である。
【図9】本発明の一態様によるロボットハンドの第5の実施形態の全体構成を示す斜視図である。
【図10】図9に示されたロボットハンドのカバーが保護位置にある状態を示す側面図である。
【図11】図9に示されたロボットハンドのカバーが開放位置にある状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、各実施形態で示されるロボットハンドは、基板等のワークを搬送するロボットに用いられるものであり、ロボットは、ロボットアームを介してロボットハンドによってワークを把持し、把持されたワークを目標の位置へ搬送し、そこで解放するような構成である。
【0023】
図1は、本発明の一態様によるロボットハンドの第1の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図1を参照すると、ロボットアーム11の先端にロボットハンド12が設けられ、ロボットハンド12が基板等の平板状のワーク13を把持している状態が示されている。ロボットハンド12は、基部14と把持部15とカバー16とを有している。
【0024】
ロボットハンド12は、矩形の平板状をした基部14を介してロボットアーム11に連結され、基部14には、少なくとも1個、本実施形態では3個ずつ2列に並んだ合計6個の把持部15が、基部14の表面14aに対して垂直に外方へ同じ長さだけ突出するように配置されている。把持部15のロボットアーム11側の端部は、真空ポンプに接続されたエアチューブに接続されている(図示せず)。把持部15は、真空ポンプの作用によって、その他方の端部近傍に配置されたワーク13を吸引して吸着し、把持するような構造となっている。把持されたワーク13は、把持部15における吸引を停止することによって解放される。図1に示された状態が、水平面に配置されたワーク13を把持した直後の状態、すなわち、ロボットハンド12がワーク13を鉛直上方から把持した状態であり、基部14側を上方とし、ワーク13側を下方とする。すなわち、ワーク13の表面13a又は基部14の表面14aに対して垂直に上下方向が延びている。これは、後述する図4、5、6及び9に示される実施形態においても同様である。
【0025】
矩形の基部14の一辺には、蝶番等の連結部材17が配置され、カバー16を当該辺に対して回動可能に連結している。カバー16は、連結部材17が配置された頂面16aと、頂面16aに対して垂直な矩形のカバー面16bと、これら面に対して垂直で且つ対向する同一形状をした2つの側面16cとを有している。頂面16aは、基部14が連結された辺に対して垂直な基部14の辺の側まで延び、上方から見るとコの字形状をしている。なお、連結部材17がカバー面16bに直接連結している構成でもよい。
【0026】
カバー面16bの下端部は、把持部15に把持されたワーク13の下面よりも下方へ延びている。側面16cの、頂面16a及びカバー面16bから離れた側の端縁は、滑動部16dを形成している。滑動部16dは、側面16cがカバー面16bと交わる辺の下端部又は先端部から上方へ向けて下に凸の円弧状又は曲線状に形成されており、後述するように、カバー16を開放位置に移動させる、カバー位置変更部として機能する。対向する2つの側面16cの滑動部16dの対応する曲率中心を結んだ線は、連結部材17によって回動するカバー16の回転中心軸線と平行ではあるが異なる位置にある。図1に示されたロボットハンド12に対するカバー16の位置を保護位置とすると、カバー16は、保護位置にある場合には、ワーク13の一部を接触することなく包囲している。
【0027】
図2は、図1に示されたロボットハンド12のカバー16が保護位置にある状態を示す側面図である。この状態で、ロボットハンド12によって把持されたワーク13は、基部14の表面14a又はワーク13の表面13aと平行に、すなわち、矢印Mの方向に搬送される。そうすると、仮にロボットハンド12の周囲の環境が無風状態であったとしても、ロボットハンド12の周囲には、当該搬送によって搬送方向とは逆の方向、すなわち、矢印Wで示される方向の風であって搬送速度と同じ風速の風が、相対的に生じる。しかしながら、ワーク13は、その一部がカバー16によって包囲されているため、この相対的に生じた風に対して保護され、その結果、ワーク13が風力を直接受けることはない。従って、当該カバー16付きのロボットハンド12によれば、搬送中のワーク13の落下や位置ずれが生じることなく、また、搬送中の相対的に生じる風の影響を考慮する必要がないため、ワーク13の高速な搬送が可能となる。
【0028】
図3は、図1に示されたロボットハンド12のカバー16が開放位置にある状態を示す側面図である。ここで、開放位置とは、カバー16が平面上に配置されたワーク13を把持又は解放する際に、カバー16自体がそれを阻害しないような位置に退避した状態であり、上述した保護位置は、カバー16がワーク13を搬送中に相対的に生じる風からワーク13を保護する位置にある状態である。
【0029】
ワーク13をロボットハンド12に把持又はロボットハンド12から解放するために、ロボットハンド12を目標とする平面Sに対して接近させると、保護位置の滑動部16dの最下端が最初に平面Sに当接する。この状態では、把持部15は平面Sとは離間している。その後、ロボットハンド12をさらに平面Sに対して押し込むと、滑動部16dがその曲線形状に沿って平面S上を滑り、それによってカバー16が連結部材17の回転中心周りを外方に回動する。すなわち、滑動部16dは、平面Sに対して押し込まれた際に受ける、平面Sに対して垂直方向の力を、連結部材17の回転中心周りのトルクに変換する形状を有している。
【0030】
カバー16が連結部材17の回転中心周りを外方に回動した結果、把持部15が平面Sと当接又は近接することが可能となり、カバー16自体がワーク13の把持又は解放を阻害しないような位置に退避される。すなわち、本実施形態において、保護位置にあるカバー16は、開放位置にあるカバー16よりもカバー面16bが把持部15に近接している。
【0031】
なお、本実施形態におけるカバー16は、基部14に対して連結部材17を介して回動自在に連結され、且つ、把持部15が鉛直下方を向いた状態でワークが搬送されるため、カバー16がその自重によって開放位置にある場合以外は保護位置となるように、重心位置が定められている。
【0032】
図4は、本発明の一態様によるロボットハンドの第2の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図4を参照すると、ロボットアーム21の先端にロボットハンド22が設けられ、ロボットハンド22が基板等の平板状のワーク23を把持している状態が示されている。ロボットハンド22は、基部24と把持部25とカバー26とを有している。
【0033】
本実施形態におけるロボットアーム21、ワーク23、基部24、把持部25、カバー26及び連結部材27は、第1の実施形態と同様である。従って、カバー26は、頂面26aと、カバー面26bと、側面26cと、滑動部26dとを有する。第2の実施形態は、基部24に対してカバー26を連結する連結部材27近傍に、カバー26を保護位置に付勢するように配置された付勢部材28を有する点で第1の実施形態に較べて異なる。すなわち、第1の実施形態では、カバー16の自重で保護位置を維持する構成であるが、これに対して、本実施形態は、付勢部材28を有することによって、より確実に保護位置を維持することが可能となる。なお、当然のことながら、第1の実施形態について図3を参照しながら説明したように、本実施形態においても滑動部26dがカバー位置変更部として機能する。従って、平面にカバー26の最下端を当接させ、さらに押し込むことによって、滑動部26dの作用でカバー26を開放位置にすることができる。
【0034】
図5は、本発明の一態様によるロボットハンドの第3の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図5を参照すると、ロボットアーム31の先端にロボットハンド32が設けられ、ロボットハンド32が基板等の平板状のワーク33を把持している状態が示されている。ロボットハンド32は、基部34と把持部35とカバー36とを有している。
【0035】
本実施形態におけるロボットアーム31、ワーク33、基部34及び把持部35は、第1の実施形態と同様である。一方、カバー36は、カバー面36aと、側面36bとを有する。カバー面36aは、基部34よりも上方へ突出して延びている。さらに、基部34の一辺には、連結部材37が配置され、カバー36を当該辺に対して回動可能に連結している。
【0036】
基部34の上面には、カバー36に連結され、カバー36の連結部材37周りの回転角を変更する駆動装置38が配置され、駆動装置38がカバー位置変更部として機能する。このような駆動装置は種々考えられるが、本実施形態では、駆動装置38が前後に摺動するロッド38aを有し、図示しない制御装置(例えば、ロボットコントローラ)によってその摺動が制御される。ロッド38aの先端は、上述したカバー面36aの突出した部分に回動可能に連結されている。ロッド38aが引っ込むと、カバー面36aの突出した部分も内方へ引っ張られ、その結果、カバー36は開放位置に移動する。一方、ロッド38aが突出すると、カバー面36aの突出した部分も外方へ押し出され、その結果、カバー36は保護位置に移動する。すなわち、カバーの側面の形状が異なるが、本実施形態におけるカバーの保護位置及び開放位置の状態は、図2及び図3と同様である。さらに、本実施形態では、これら位置の中間の位置でカバー36を静止させることも可能である。
【0037】
第3の実施形態によれば、駆動装置38を用いることによって、ワーク33が受ける風力の方向に応じてカバー36の回転角を自由に制御できるため、ワーク33を保護するのに最適なカバー36の角度を維持することが可能となる。また、駆動装置38を用いることによって、カバー36を開放位置に迅速に配置することもでき、さらに、カバー36の重心位置にかかわらず、カバー36を確実且つ迅速に保護位置に配置することが可能となる。当該カバー36付きのロボットハンド32によれば、搬送中のワーク33の落下や位置ずれが生じることなく、また、搬送中の相対的に生じる風の影響を考慮する必要がないため、ワーク33の高速な搬送が可能となる。
【0038】
図6は、本発明の一態様によるロボットハンドの第4の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図6を参照すると、ロボットアーム41の先端にロボットハンド42が設けられ、ロボットハンド42が基板等の平板状のワーク43を把持している状態が示されている。ロボットハンド42は、基部44と把持部45とカバー46とを有している。
【0039】
本実施形態におけるロボットアーム41、ワーク43、基部44及び把持部45は、第1の実施形態と同様である。一方、カバー46は、カバー面46aと、側面46bとを有する。基部44には、基部44の表面44a又はワーク43の表面43aに対して垂直な方向、すなわち、上下方向に沿ってカバーを移動させる駆動装置47が設けられている。駆動装置47は、カバー位置変更部として機能し、カバーを移動させる方向は、並進方向であればこれに限定されない。このような駆動装置は種々考えられるが、本実施形態では、駆動装置47が上下に摺動するロッド47aを有し、図示しない制御装置(例えば、ロボットコントローラ)によってその摺動が制御される。カバー46はロッド47aに取り付けられているため、ロッド47aの上下動に合わせてカバー46全体を上下動させることが可能となる。
【0040】
図7は、図6に示されたロボットハンド42のカバー46が保護位置にある状態を示す側面図である。保護位置では、カバー面46aの下端部は、駆動装置47によって、ワーク43の面よりも下方へ移動されている。図2を参照しながら説明したように、この状態で、ロボットハンド42によって把持されたワーク43は、基部44の表面44a又はワーク43の表面43aと平行に、すなわち、矢印Mの方向に搬送される。そうすると、仮にロボットハンド42の周囲の環境が無風状態であったとしても、ロボットハンド42の周囲には、当該搬送によって搬送方向とは逆の方向、すなわち、矢印Wで示される方向の風であって搬送速度と同じ風速の風が、相対的に生じる。しかしながら、ワーク43は、その一部がカバー46によって包囲されているため、この相対的に生じた風に対して保護され、その結果、ワーク43が風力を直接受けることはない。
【0041】
図8は、図6に示されたロボットハンド42のカバー46が開放位置にある状態を示す側面図である。開放位置では、カバー面46aの下端部が、駆動装置47によって、ワーク43の下面又は把持部45の先端部よりも上方へ移動されている。従って、ロボットハンド42は、ワーク43をロボットハンド42に把持又はロボットハンド42から解放することが可能となる。さらに、本実施形態では、これら保護位置と開放位置との中間の位置でカバー46を静止させることも可能である。
【0042】
第4の実施形態によれば、駆動装置47を用いることによって、カバー46の上下の位置を自由に制御できるため、ワーク43を保護するのに最適なカバー46の位置を維持することが可能となる。また、駆動装置47を用いることによって、カバー46を保護位置又は開放位置に迅速に配置することもできる。従って、当該カバー46付きのロボットハンド42によれば、搬送中のワーク43の落下や位置ずれが生じることなく、また、搬送中の相対的に生じる風の影響を考慮する必要がないため、ワーク43の高速な搬送が可能となる。
【0043】
図9は、本発明の一態様によるロボットハンドの第5の実施形態の全体構成を示す斜視図である。図9を参照すると、ロボットアーム51の先端にロボットハンド52が設けられ、ロボットハンド52が基板等の平板状のワーク53を把持している状態が示されている。ロボットハンド52は、第1基部54と把持部55とカバー56とを有している。
【0044】
本実施形態におけるロボットアーム51、ワーク53及び把持部55は、第1の実施形態と同様である。本実施形態におけるロボットハンド52は、第1基部54の表面54aと平行に配置された第2基部57及び第2基部57に配置された駆動装置58を介してロボットアーム51に連結されている。すなわち、本実施形態の基部は、矩形の平板状をした第1基部54及び第2基部57を有している。第1基部54は、第1の実施形態における基部14に相当し、把持部55が配置されている。駆動装置58は上下に摺動するロッド58aを有し(図11参照)、ロッド58aが第1基部54に対して上方から取り付けられている。従って、図示しない制御装置(例えば、ロボットコントローラ)によって駆動装置58のロッド58aの上下動が制御されると、それに合わせて第1基部54を上下動させることが可能となる。なお、駆動装置58は、第1基部54に配置されてもよい。すなわち、駆動装置58は、カバー位置変更部として機能し、カバーを移動させる方向は、並進方向であればこれに限定されない。
【0045】
カバー56は、カバー面56aと、側面56bとを有し、第2基部57の一辺に連結されている。従って、第1基部54の上下動にかかわらず、カバー56は、第2基部57に固定されたままであり、カバー56と把持されたワーク53は、駆動装置58のロッド58aの上下動によって、その相対的な位置が制御される。
【0046】
図10は、図9に示されたロボットハンド52のカバー56が保護位置にある状態を示す側面図である。保護位置では、ワーク53の面は、駆動装置58によって、カバー面56aの下端部よりも上方へ移動されている。図2を参照しながら説明したように、この状態で、ロボットハンド52によって把持されたワーク53は、第1基部54の表面54a又はワーク53の表面53aと平行に、すなわち、矢印Mの方向に搬送される。そうすると、仮にロボットハンド52の周囲の環境が無風状態であったとしても、ロボットハンド52の周囲には、当該搬送によって搬送方向とは逆の方向、すなわち、矢印Wで示される方向の風であって搬送速度と同じ風速の風が、相対的に生じる。しかしながら、ワーク53は、その一部がカバー56によって包囲されているため、この相対的に生じた風に対して保護され、その結果、ワーク53が風力を直接受けることはない。
【0047】
図11は、図9に示されたロボットハンド52のカバー56が開放位置にある状態を示す側面図である。開放位置では、ワーク53の面又は把持部55の先端部は、駆動装置58によって、カバー面56aの下端部よりも下方へ移動されている。従って、ロボットハンド52は、ワーク53をロボットハンド52に把持又はロボットハンド52から解放することが可能となる。さらに、本実施形態では、これら保護位置と開放位置との中間の位置でカバー56を静止させることも可能である。
【0048】
第5の実施形態によれば、駆動装置58を用いることによって、ワーク53又は把持部55の先端部の上下の位置を自由に制御できるため、ワーク53を保護するのに最適なカバー56との相対的な位置を維持することが可能となる。また、駆動装置58を用いることによって、カバー56を保護位置又は開放位置に迅速に配置することもできる。従って、当該カバー56付きのロボットハンド52によれば、搬送中のワーク53の落下や位置ずれが生じることなく、また、搬送中の相対的に生じる風の影響を考慮する必要がないため、ワーク53の高速な搬送が可能となる。
【0049】
なお、第4の実施形態及び第5の実施形態では、駆動装置及びロッドによってカバーとワーク又は把持部との相対位置を並進方向に制御したが、これを同様の並進運動を可能にする単なるレール等に置き換えてもよい。すなわち、カバーは、ワークの搬送中はその自重によって保護位置を維持し、ワークを把持又は解放する際に目標とする平面に対してロボットハンドを下降させると、まずカバーが平面に当接し、次いで、レールに沿って把持部が下降した結果、開放位置になるようにしてもよい。
【0050】
上述の実施形態では、矩形のワークの一辺に対して垂直な方向からの風力等の外力からワークを保護するようカバーのカバー面を配置したが、外力の働く方向に応じてカバー面の形状や保護する範囲を変更してもよい。また、把持部は真空ポンプを用いた吸着によってワークを把持する構成であったが、ワークの材質によっては、把持部を電磁石によって構成してもよい。また、基部は矩形の平板状であったが、円形等その他の形状でもよい。同様に、ワークは平板状以外にも直方体や球形等その他の形状であってもよい。また、カバーの全体形状を流線形等、風の抵抗を軽減するような形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
11 ロボットアーム
12 ロボットハンド
13 ワーク
14 基部
15 把持部
16 カバー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるワークを把持するロボットハンドにおいて、
ロボットアームの先端に取り付けられる基部と、
該基部に配置され且つワークを把持する把持部と、
前記基部に配置されたカバーと、
前記把持部に対する前記カバーの相対位置を変更するカバー位置変更部と、
を具備し、
該カバー位置変更部が、前記カバーの相対位置を、ワークの搬送中にワークの一部を包囲する保護位置と、ワークを把持又は解放する際にワークの把持又は解放を阻害しない開放位置との間で変更することを特徴とするカバー付きロボットハンド。
【請求項2】
前記カバーが前記基部に対して回動可能に基部に連結され、前記カバー位置変更部が、前記保護位置にある前記カバーが前記開放位置にある前記カバーよりも前記把持部に近接するように回転角度を変更し、前記保護位置にある前記カバーが、前記把持部に把持されたワークを越えて延びていることを特徴とする請求項1に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項3】
ワークが当該ロボットハンドによって鉛直上方から把持された状態で水平方向に搬送される場合において、搬送中に前記カバーが自重により前記保護位置を維持し、前記カバー位置変更部が、前記カバーに設けられた滑動部を具備し、ワークを把持又は解放する際に目標とする平面に対して当該ロボットハンドを下降させると、前記滑動部が前記平面に当接しつつ該平面上を滑ることで前記カバーを前記基部に対して回動させ、前記カバーが前記開放位置へと変更することを特徴とする請求項2に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項4】
前記カバーを前記保護位置へ付勢する付勢部材をさらに具備することを特徴とする請求項3に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項5】
前記カバー位置変更部が、前記カバーの回転角度を変更する駆動装置を具備することを特徴とする請求項2に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項6】
前記カバー位置変更部が、前記カバーを並進運動させて、前記保護位置と前記開放位置との間で前記カバーの相対位置を変更する駆動装置を具備することを特徴とする請求項1に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項7】
前記基部が、ロボットアームの先端に取り付けられ且つ前記カバーが配置された第1基部と、前記把持部が配置された第2基部とを有し、前記カバー位置変更部が、前記第1基部又は第2基部の一方を他方に対して並進運動させて、前記保護位置と前記開放位置との間で前記カバーの相対位置を変更する駆動装置を具備することを特徴とする請求項1に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項1】
搬送されるワークを把持するロボットハンドにおいて、
ロボットアームの先端に取り付けられる基部と、
該基部に配置され且つワークを把持する把持部と、
前記基部に配置されたカバーと、
前記把持部に対する前記カバーの相対位置を変更するカバー位置変更部と、
を具備し、
該カバー位置変更部が、前記カバーの相対位置を、ワークの搬送中にワークの一部を包囲する保護位置と、ワークを把持又は解放する際にワークの把持又は解放を阻害しない開放位置との間で変更することを特徴とするカバー付きロボットハンド。
【請求項2】
前記カバーが前記基部に対して回動可能に基部に連結され、前記カバー位置変更部が、前記保護位置にある前記カバーが前記開放位置にある前記カバーよりも前記把持部に近接するように回転角度を変更し、前記保護位置にある前記カバーが、前記把持部に把持されたワークを越えて延びていることを特徴とする請求項1に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項3】
ワークが当該ロボットハンドによって鉛直上方から把持された状態で水平方向に搬送される場合において、搬送中に前記カバーが自重により前記保護位置を維持し、前記カバー位置変更部が、前記カバーに設けられた滑動部を具備し、ワークを把持又は解放する際に目標とする平面に対して当該ロボットハンドを下降させると、前記滑動部が前記平面に当接しつつ該平面上を滑ることで前記カバーを前記基部に対して回動させ、前記カバーが前記開放位置へと変更することを特徴とする請求項2に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項4】
前記カバーを前記保護位置へ付勢する付勢部材をさらに具備することを特徴とする請求項3に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項5】
前記カバー位置変更部が、前記カバーの回転角度を変更する駆動装置を具備することを特徴とする請求項2に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項6】
前記カバー位置変更部が、前記カバーを並進運動させて、前記保護位置と前記開放位置との間で前記カバーの相対位置を変更する駆動装置を具備することを特徴とする請求項1に記載のカバー付きロボットハンド。
【請求項7】
前記基部が、ロボットアームの先端に取り付けられ且つ前記カバーが配置された第1基部と、前記把持部が配置された第2基部とを有し、前記カバー位置変更部が、前記第1基部又は第2基部の一方を他方に対して並進運動させて、前記保護位置と前記開放位置との間で前記カバーの相対位置を変更する駆動装置を具備することを特徴とする請求項1に記載のカバー付きロボットハンド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−255480(P2011−255480A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134201(P2010−134201)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】
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