説明

カバー及び筐体

【課題】不用意に開くことを防止でき、しかも、電子機器の小型化を図れるカバーを提供すること。
【解決手段】カバー5に、2つの主面と側面とを有する第1の平板の端部から前記主面の平面方向に突出したフック52を設ける。フックの先端には、フックの突出方向とは異なる前記平面方向に突出して係合部を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用い得るカバー、及びそのカバーを用いた筺体に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ又は携帯音楽再生装置等の電子機器には、メモリカードが使用されている。最近では、携帯電話においてもメモリカードが使用されることがある。メモリカードを使用可能にするために、電子機器の内部にメモリカードコネクタが設置されている。メモリカードコネクタは、保護カバーにより覆われている。メモリカードコネクタに対しメモリカードを挿抜する時には、保護カバーが開けられる。
【0003】
この種の保護カバーを備えた電子機器は、例えば特許文献1に開示されている。図1を参照して、その電子機器の概要を説明する。
【0004】
電子機器は、上ケース1と下ケース2と保護カバー5とを含んでいる。上ケース1と下ケース2との間の空間には、パネル3が備えられ、パネル3上には、メモリカードコネクタ(図示せず)が実装されている。メモリカード(図示せず)は、メモリカードコネクタに対して挿抜可能である。
【0005】
保護カバー5は、平面視が長方形状で、断面が略L字形状を有している。保護カバー5の長辺端の両側には、差し込みリブ51が設けられ、短辺端の両側付近には、略L字形状のフック54が設けられている。
【0006】
上ケース1の一長辺の内側には、保護カバー5の両フック54に対応して、それぞれフック受け14が設けられている。両フック54と下ケース2の内側上端部との間には、スペースSが形成されている。
【0007】
保護カバー5を開く場合には、次のように操作する。まず、保護カバー5の図1における右側面に設けられている凹部(図示せず)を手指により引き上げると、両フック54は上ケース1の両フック14からそれぞれ離脱してスペースSの範囲内で左方向に弾性変形する。続いて、保護カバー5は、両差し込みリブ51を中心として矢印方向に回転する。したがって、保護カバー5が開放されるので、パネル3上のメモリカードコネクタに対してメモリカードを挿入抜出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−218549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した電子機器では、保護カバー5の両フック54が弾性変形する方向は、保護カバー5の回転中心線(両差し込みリブ51を結ぶ直線)に直交しているので、触手などにより保護カバー5が上ケース1から不用意に開き易い。
【0010】
保護カバー5が上ケース1から不用意に開くことを防止するためには、保護カバー5の両フック54と上ケース1の両フック14とがかみ合う深さを深くせざるを得ない。その場合は、図7におけるスペースSを大きくする必要が生じ、上ケース1と下ケース2の図7における左右方向の寸法が長くなり、電子機器が大型化する。
【0011】
それ故に本発明の目的は、不用意に開くことを防止でき、しかも、電子機器の小型化を図れるカバーを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、上記カバーを用いた筐体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によるカバーは、2つの主面と側面とを有する第1の平板と、前記第1の平板の端部から前記主面の平面方向に突出して設けられたフックと、前記フックの先端に前記フックの突出方向とは異なる前記平面方向に突出して設けられた係合部とを有する。
【0014】
本発明の他の態様による筺体は、前記カバーとそのカバーを装着するケースとを備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、不用意に開くことを防止でき、しかも、電子機器の小型化を図れるカバー、及び上記カバーを用いた筐体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来の電子機器の要部の断面図。
【図2】本発明の第1の実施例に係る筺体を備えた電子機器の斜視図。
【図3】同筺体から保護カバーが外された状態をメモリカードと共に示す斜視図。
【図4】同筺体をメモリカードと共に示す分解斜視図。
【図5】図2の線V―Vに沿って得られた断面図。
【図6】図2の線VI−VIに沿って得られた断面図。
【図7】本発明の第2の実施例に係る筺体をメモリカードと共に示す分解斜視図。
【図8】本発明の第3の実施例に係る筺体から保護カバーが外された状態をメモリカードと共に示す斜視図。
【図9】図8の筺体の保護カバーが開かれた状態を示す概略側面図。
【図10】図8の筺体の保護カバーが閉じられた状態を示す概略下面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2〜図6を参照して、本発明の第1の実施例に係る筺体を備えた電子機器について説明する。
【0018】
図2〜図6において、電子機器は、上ケース1とこれに結合される下ケース2とからなるケースを含んでいる。上ケース1には保護カバー5が設けられている。ケースの内部には、上ケース1と下ケース2との間に、回路板又はパネル3が備えられている。上ケース1、下ケース2、パネル3、及び保護カバー5の組み合わせを、ここでは電子機器用筐体と呼ぶ。
【0019】
パネル3の上面には、部品接続部としてメモリカードコネクタ31が実装されている。メモリカード4は、メモリカードコネクタ31に対して挿抜可能である。なお、ケースの内部にはメモリカード4に加えて、パネル3の利用などを伴って携帯電話又はデジタルカメラ又は携帯音楽再生装置のための内部機構(図示省略)が備えられる。
【0020】
保護カバー5の平面視は、第1の方向(左右方向)A1及びこれに直交する第2の方向(前後方向)A2に広がった長方形状を有している。保護カバー5の第1の方向Aに垂直な平面での断面は略L字形状をなしている。保護カバー5は、第2の方向A2における端部即ち後端に、第1の方向A1で互いに離間した対の差し込みリブ51を有している。また、保護カバー5はその前端に、第1の方向A1で互いに離間した対のフック52を有している。図5から明らかなように、フック52はいずれも、第1の方向A1で外向き形成されている。なお、保護カバー5の前端中央には、凹部53が設けられている。
【0021】
上ケース1は、保護カバー5と実質的に合同な形状をもつカバー受け穴12を規定する縁部1aを有している。カバー受け穴12は上ケース1の上面から前面にかけて広がっている。縁部1aの後辺には、フランジ13が設けられている。保護カバー5はカバー受け穴12に嵌合するように装着される。このとき保護カバー5はフランジ13に支えられ、カバー受け穴12を通してケース内に落下することが防止される。
【0022】
上ケース1の縁部1aの前辺には、第1の方向A1で互いに離間したフック穴11がフック52と一対一で対応して形成されている。フック穴11の奥部にはフック受け11aが設けられている。フック受け11aはいずれも、フック52と係合し得るように、第1の方向A1で内向きに形成されている。
【0023】
図3の状態にあるメモリカード4をメモリカードコネクタ31に挿入する。次に、保護カバー5の両差し込みリブ51を上ケース1の縁部1aの後部内面に引っ掛ける。続いて、保護カバー5を両差し込みリブ51を中心として、約90度右回転させて図2の位置を目指して保護カバー5を閉じる。この際、両差し込みリブ51を結ぶ直線が、保護カバー5の回転中心線となる。したがって、この回転中心線は第1の方向A1にのびていることになる。
【0024】
保護カバー5が閉じられると、保護カバー5の両フック52が上ケース1の両フック穴11に挿入される。最終的には、図5及び図6に示すように、保護カバー5の両フック52が第1の方向A1で内側に少し撓みつつ凸部11bを乗り越えてフック受け11aに係合する。かくして、図2に示されるように、保護カバー5は閉じられた状態で上ケース1にしっかりと保持される。
【0025】
図2の状態から保護カバー5を開く場合には、次のように操作する。保護カバー5の凹部53に手指を掛けて引き上げる。すると、保護カバー5の両フック52が上ケース1の両フック受け11aからそれぞれ離脱する。したがって、保護カバー5を容易に開くことができる。
【0026】
図7を参照して、本発明の第2の実施例に係る筺体を備えた電子機器について説明する。同様な部分については同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0027】
図7に示す上ケース1は、図2〜図6に示した電子機器のフック穴11及びフック受け11aに相当するものを備えていない。その代わりに、下ケース2の前面に第1の方向A1で離間した対のフック溝21とその外側で前方に突出したフック受け21aとが形成されている。勿論、フック溝21とフック受け21の各セットは、保護カバー5のフック52に対応するように配置されている。
【0028】
この電子機器において、保護カバー5が閉じられると、保護カバー5の両フック52が下ケース2の両フック溝21に挿入され、保護カバー5の両フック52が第1の方向A1で内側に少し撓むことを伴ってフック受け21aに上下方向で係合する。かくして、保護カバー5は閉じられた状態でケースにしっかりと保持される。なお、保護カバー5を開く作業は図2〜図6に示した電子機器と同様に行われる。
【0029】
図7の電子機器によると、上ケース1のカバー受け穴12の構造が簡素化される。さらに、上ケース1を製造する際に使用する金型を簡略化できる。
【0030】
図3又は図7に示す電子機器では保護カバー5を上ケース1から完全に分離することができるが、使い勝手をよくするために保護カバー5を上ケース1にゴム部品などで緩やかに接続されてもよい。
【0031】
図8〜図10を参照して、本発明の第3の実施例に係る筺体を備えた電子機器について説明する。同様な部分については同じ参照符号を付して説明を省略する。
【0032】
図8〜図10に示す電子機器では、保護カバー5を上ケース1に可撓性を有するゴムからなる接続部材6を介して接続している。したがって、この場合には、保護カバー5は開閉可能なカバーであるといえる。
【0033】
上ケース1はその下面に形成された抜け止め部13を有している。保護カバー5はその下面に形成された突起54を有している。接続部材6は一般的にU字形状を有し、保護カバー5の突起54に固定された固定部61と、固定部61から互いに平行にのびた対の脚部62とを含んでいる。各脚部62は、上ケース1の抜け止め部13に第1の方向A2で係合する係合部63を有している。こうして、上ケース1に対する保護カバー5の離脱が防止されている。保護カバー5が上ケース1に正常に装着されている状態では、係合部63は抜け止め部13から離間していることが好ましい。
【0034】
フック52を上ケース1から外し、保護カバー5を第2の方向A2で前方へ少し移動させつつ、第1の方向A1及び第2の方向A2に直交する第3の方向(垂直方向)A3に沿うように起こすことで、保護カバー5を容易に開くことができる。なお、保護カバー5を閉じる作業は図2〜図6に示した電子機器と同様に行われる。
【0035】
図8〜図10に示す電子機器によると、保護カバー5は上ケース1に対し比較的自由な状態で接続されて離脱が防止されているので、保護カバー5の開け閉めに際し使い勝手がよい。
【0036】
なお、上述した電子機器はいずれも、フックとフック受けとの組み合わせを2セット備えているが、1セットのみ備える形態に変更することができる。また、上述ではメモリカードを使用する場合を説明したが、メモリカードに限らず、SIMカードや、交換可能な電池を使用する場合にも同様に適用可能である。SIMカードを使用する場合は、部品接続部としてSIMカードコネクタが用いられる。交換可能な電池を使用する場合は、部品接続部として電池を接続するための接点が用いられる。
【0037】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0038】
(付記1)2つの主面と側面とを有する第1の平板と、前記第1の平板の端部から前記主面の平面方向に突出して設けられたフックと、前記フックの先端に前記フックの突出方向とは異なる前記平面方向に突出して設けられた係合部とを有するカバー。
【0039】
(付記2)前記第1の平板の端部に前記フックが2つ設けられている付記1に記載のカバー。
【0040】
(付記3)前記フックの前記係合部が互いに逆向きに突出している付記2に記載のカバー。
【0041】
(付記4)前記第1の平板の一方の端部には前記フックが形成され、他方の端部には第2の平板を有する付記1から3のいずれかに記載のカバー。
【0042】
(付記5)前記第2の平板の端部に付加フックを有する付記4に記載のカバー。
【0043】
(付記6)付記1から5のいずれかに記載のカバーと前記カバーを装着するケースとを備える筐体。
【0044】
(付記7)前記フックの突出方向と前記係合部の突出方向とを含む平面が、前記ケースの天面もしくは側壁と対向するように前記カバーが前記ケースに装着され、前記ケースは前記係合部と係合するフック受けを有している付記6に記載の筐体。
【0045】
(付記8)前記ケースは前記フックと嵌合する凹みを有し、前記フック受けが前記凹みの端部に形成されている付記7に記載の筐体。
【0046】
(付記9)前記ケースは前記カバーの前記付加フックと嵌合する付加フック受けを有する付記6から8のいずれかに記載の筐体。
【0047】
(付記10)前記ケースは開口部を有し、前記開口部上に前記カバーが配置されている付記6から9のいずれかに記載の筐体。
【0048】
(付記11)前記ケースは前記開口部の周囲の少なくとも一部にフランジを有し、前記フランジ上に前記カバーが配置されている付記10に記載の筐体。
【0049】
(付記12)前記フランジの前記付加フック受けが挿入される部分には切り欠きが形成されている付記11に記載の筐体。
【0050】
(付記13)前記ケースと前記カバーとが可撓性材料によって接続されている付記6から12のいずれかに記載の筐体。
【産業上の利用可能性】
【0051】
メモリカード、SIMカード、交換可能な電池の容易な着脱を実現するためには、ばねを利用した複雑なロック機構を用いる場合が多いが、本発明を利用することで、これらの機構が不要になり、電子機器の信頼性を安価な代替手段で実現することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 上ケース
1a 縁部
2 下ケース
3 パネル
4 メモリーカード
5 保護カバー
6 接続部材
11 フック穴
11a フック受け
11b 凸部
12 カバー受け穴
13 フランジ又は抜け止め部
14 フック
21 フック溝
21a フック受け
31 メモリーカードコネクタ
51 差し込みリブ
52 フック
53 凹部
54 突起
61 固定部
62 脚部
63 係合部
A1 第1の方向(左右方向)
A2 第2の方向(前後方向)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの主面と側面とを有する第1の平板と、
前記第1の平板の端部から前記主面の平面方向に突出して設けられたフックと、
前記フックの先端に前記フックの突出方向とは異なる前記平面方向に突出して設けられた係合部とを有するカバー。
【請求項2】
前記第1の平板の端部に前記フックが2つ設けられている請求項1に記載のカバー。
【請求項3】
前記フックの前記係合部が互いに逆向きに突出している請求項2に記載のカバー。
【請求項4】
前記第1の平板の一方の端部には前記フックが形成され、他方の端部には第2の平板を有する請求項1から3のいずれかに記載のカバー。
【請求項5】
前記第2の平板の端部に付加フックを有する請求項4に記載のカバー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のカバーと前記カバーを装着するケースとを備える筐体。
【請求項7】
前記フックの突出方向と前記係合部の突出方向とを含む平面が、前記ケースの天面もしくは側壁と対向するように前記カバーが前記ケースに装着され、前記ケースは前記係合部と係合するフック受けを有している請求項6に記載の筐体。
【請求項8】
前記ケースは前記フックと嵌合する凹みを有し、前記フック受けが前記凹みの端部に形成されている請求項7に記載の筐体。
【請求項9】
前記ケースは前記カバーの前記付加フックと嵌合する付加フック受けを有する請求項6から8のいずれかに記載の筐体。
【請求項10】
前記ケースは開口部を有し、前記開口部上に前記カバーが配置されている請求項6から9のいずれかに記載の筐体。
【請求項11】
前記ケースは前記開口部の周囲の少なくとも一部にフランジを有し、前記フランジ上に前記カバーが配置されている請求項10に記載の筐体。
【請求項12】
前記フランジの前記付加フック受けが挿入される部分には切り欠きが形成されている請求項11に記載の筐体。
【請求項13】
前記ケースと前記カバーとが可撓性材料によって接続されている請求項6から12のいずれかに記載の筐体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−15533(P2012−15533A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177639(P2011−177639)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【分割の表示】特願2007−526944(P2007−526944)の分割
【原出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】